(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板の表面の一部が局所的に覆われるように液浸空間を形成し、光学部材の射出面と前記基板との間の液体を介して露光光で前記基板を露光する液浸露光装置で用いられ、前記光学部材の下方で移動可能な物体上に液浸空間を形成する液浸部材であって、
前記露光光が通過可能な開口、及び前記開口の周囲に配置された第1下面を有する第1部材と、
前記物体が対向可能な第2下面を有する第2部材と、
液体供給口と、
前記第2部材に設けられ、前記第1部材と前記第2部材との間の空隙から液体を回収可能な液体回収部と、を備え、
前記第1部材と前記第2部材は、前記空隙に通ずる第1開口部および第2開口部が形成されるように配置され、
前記第1部材と前記第2部材は、前記液浸空間形成時に、前記液浸空間の界面が前記空隙に形成されるように配置され、
前記第2部材は、駆動装置によって前記第1部材に対して相対的に移動する液浸部材。
前記駆動装置により前記第2部材を動かすことによって、前記光学部材の光軸と平行な方向に関する前記第2下面の位置が変化する請求項1〜17のいずれか一項に記載の液浸部材。
前記基板の表面の一部が局所的に覆われるように液浸空間を形成するときに、前記液浸部材の前記液体供給口から液体供給を行うとともに、前記液浸部材の前記液体回収部から液体回収を行う請求項24に記載の液浸露光装置。
前記液浸部材は、前記露光光の光路に対して前記第1開口部よりも外側に液浸空間の界面の少なくとも一部が位置するように、前記物体上に液浸空間を形成可能である請求項23〜30のいずれか一項に記載の液浸露光装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。なお、以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。そして、水平面内の所定方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれと直交する方向(すなわち鉛直方向)をZ軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわりの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。
【0019】
<第1実施形態>
第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態に係る露光装置EXを示す概略構成図である。
図1において、露光装置EXは、マスクMを保持しながら移動可能なマスクステージ1と、基板Pを保持しながら移動可能な基板ステージ2と、マスクMを露光光ELで照明する照明系ILと、露光光ELで照明されたマスクMのパターンの像を基板Pに投影する投影光学系PLと、露光装置EX全体の動作を制御する制御装置3とを備えている。
【0020】
なお、ここでいう基板Pは、デバイスを製造するための基板であって、例えばシリコンウエハのような半導体ウエハ等の基材に感光材(フォトレジスト)等の膜が形成されたもの、あるいは感光膜に加えて保護膜(トップコート膜)などの各種の膜を塗布したものを含む。マスクMは、基板Pに投影されるデバイスパターンが形成されたレチクルを含む。
また、本実施形態においては、マスクとして透過型のマスクを用いるが、反射型のマスクを用いることもできる。透過型マスクMは、遮光膜でパターンが形成されるバイナリーマスクに限られず、例えばハーフトーン型、あるいは空間周波数変調型などの位相シフトマスクも含む。
【0021】
本実施形態の露光装置EXは、液体LQを介して露光光ELで基板Pを露光する液浸露光装置であって、露光光ELの光路空間Kの少なくとも一部を液体LQで満たすように液浸空間LSを形成する。なお、露光光ELの光路空間Kは、露光光ELが通過する光路を含む空間である。液浸空間LSは、液体LQで満たされた空間である。本実施形態においては、液体LQとして、水(純水)を用いる。
【0022】
本実施形態においては、投影光学系PLの複数の光学素子のうち、投影光学系PLの像面に最も近い終端光学素子4の像面側の光路空間Kを液体LQで満たすように液浸空間LSが形成される。終端光学素子4は、投影光学系PLの像面に向けて露光光ELを射出する射出面5を有する。液浸空間LSは、終端光学素子4の射出側(像面側)の光路空間Kを液体LQで満たすように形成される。
【0023】
露光装置EXは、液浸空間LSを形成可能な液浸部材6を備えている。液浸部材6は、終端光学素子4の近傍に配置されている。
【0024】
液浸部材6は下面7を有する。終端光学素子4の射出側(像面側)で移動可能な物体は、終端光学素子4の射出面5と対向する位置に移動可能であり、かつ液浸部材6の下面7と対向する位置に移動可能である。物体が終端光学素子4の射出面5と対向する位置に配置されたとき、液浸部材6の下面7の少なくとも一部と物体の表面とが対向する。液浸部材6の下面7と物体の表面とが対向しているとき、液浸部材6の下面7と物体の表面との間に液体LQを保持できる。また、終端光学素子4の射出面5と物体の表面とが対向しているとき、終端光学素子4の射出面5と物体の表面との間に液体LQを保持できる。一方側の液浸部材6の下面7及び終端光学素子4の射出面5と他方側の物体の表面との間に液体LQを保持することによって、終端光学素子4の射出面5と物体の表面との間の光路空間Kを液体LQで満たすように液浸空間LSを形成可能である。
【0025】
また、露光装置EXは、液体LQを供給する供給機構8と、液体LQを回収する回収機構9とを備えている。供給機構8は、液浸部材6の下面7及び終端光学素子4の射出面5と物体の表面との間に液体LQを供給可能である。回収機構9は、液浸部材6の下面7及び終端光学素子4の射出面5と物体の表面との間の液体LQを回収可能である。
【0026】
本実施形態においては、液浸部材6の下面7及び終端光学素子4の射出面5と対向可能な物体は、基板ステージ2、及びその基板ステージ2に保持された基板Pの少なくとも一方を含む。なお、以下においては、説明を簡単にするために、主に、液浸部材6の下面7及び終端光学素子4の射出面5と基板Pとが対向している状態を説明する。
【0027】
本実施形態においては、液浸部材6の下面7及び終端光学素子4の射出面5と対向する位置に配置された物体の表面の一部の領域(局所的な領域)が液体LQで覆われるように液浸空間LSが形成され、その物体の表面と液浸部材6の下面7との間に液体LQの界面(メニスカス、エッジ)LGが形成される。すなわち、本実施形態においては、露光装置EXは、基板Pの露光時に、投影光学系PLの投影領域PRを含む基板P上の一部の領域が液体LQで覆われるように液浸空間LSを形成する局所液浸方式を採用する。
【0028】
照明系ILは、マスクM上の所定の照明領域IRを均一な照度分布の露光光ELで照明する。照明系ILから射出される露光光ELとしては、例えば水銀ランプから射出される輝線(g線、h線、i線)及びKrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光)、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)及びF
2レーザ光(波長157nm)等の真空紫外光(VUV光)等が用いられる。本実施形態においては、露光光ELとして、紫外光(真空紫外光)であるArFエキシマレーザ光が用いられる。
【0029】
マスクステージ1は、リニアモータ等のアクチュエータを含む駆動システム1Dにより、マスクMを保持した状態で、X軸、Y軸、及びθZ方向に移動可能である。マスクステージ1(マスクM)のX軸、Y軸、及びθZ方向の位置情報はレーザ干渉計1Sによって計測される。レーザ干渉計1Sは、マスクステージ1に設けられた反射ミラー1Rを用いて位置情報を計測する。制御装置3は、レーザ干渉計1Sの計測結果に基づいて駆動システム1Dを駆動し、マスクステージ1に保持されているマスクMの位置制御を行う。
【0030】
投影光学系PLは、マスクMのパターンの像を所定の投影倍率で基板Pに投影する。投影光学系PLの複数の光学素子は、鏡筒PKに保持されている。本実施形態の投影光学系PLは、その投影倍率が例えば1/4、1/5、又は1/8等の縮小系である。なお、投影光学系PLは縮小系、等倍系及び拡大系のいずれでもよい。本実施形態においては、投影光学系PLの光軸AXはZ軸方向と平行である。また、投影光学系PLは、反射光学素子を含まない屈折系、屈折光学素子を含まない反射系、反射光学素子と屈折光学素子とを含む反射屈折系のいずれであってもよい。また、投影光学系PLは、倒立像と正立像とのいずれを形成してもよい。
【0031】
基板ステージ2は、リニアモータ等のアクチュエータを含む駆動システム2Dにより、基板Pを保持した状態で、X軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向の6自由度の方向に移動可能である。基板ステージ2(基板P)のX軸、Y軸、及びθZ方向の位置情報はレーザ干渉計2Sによって計測される。レーザ干渉計2Sは、基板ステージ2に設けられた反射ミラー2Rを用いて位置情報を計測する。また、基板ステージ2に保持されている基板Pの表面の面位置情報(Z軸、θX、及びθY方向に関する位置情報)は、不図示のフォーカス・レベリング検出システムによって検出される。制御装置3は、レーザ干渉計2Sの計測結果及びフォーカス・レベリング検出システムの検出結果に基づいて駆動システム2Dを駆動し、基板ステージ2に保持されている基板Pの位置制御を行う。
【0032】
基板ステージ2は、基板Pを保持する基板ホルダ2Hと、基板ホルダ2Hの周囲に配置され、終端光学素子4の射出面5と対向可能な上面2Tとを有する。基板ホルダ2Hは、基板ステージ2上に設けられた凹部2Cに配置されている。基板ホルダ2Hは、基板Pの表面とXY平面とがほぼ平行となるように、基板Pを保持する。基板ホルダ2Hに保持された基板Pの表面は、終端光学素子4の射出面5と対向可能である。また、基板ステージ2の上面2Tは、XY平面とほぼ平行な平坦面である。基板ホルダ2Hに保持された基板Pの表面と基板ステージ2の上面2Tとは、ほぼ同一平面内に配置され、ほぼ面一である。上面2Tは、例えばフッ素を含む材料で形成されており、液体LQに対して撥液性を有する。
【0033】
露光装置EXは、基板ステージ2を移動可能に支持するガイド面10を有する定盤11を備えている。本実施形態においては、ガイド面10は、XY平面とほぼ平行である。基板ステージ2は、ガイド面10に沿って、XY方向(二次元方向)に移動可能である。
【0034】
本実施形態の露光装置EXは、マスクMと基板Pとを所定の走査方向に同期移動しつつ、マスクMのパターンの像を基板Pに投影する走査型露光装置(所謂スキャニングステッパ)である。本実施形態においては、基板Pの走査方向(同期移動方向)をY軸方向とし、マスクMの走査方向(同期移動方向)もY軸方向とする。露光装置EXは、基板Pを投影光学系PLの投影領域PRに対してY軸方向に移動するとともに、その基板PのY軸方向への移動と同期して、照明系ILの照明領域IRに対してマスクMをY軸方向に移動しつつ、投影光学系PLと液体LQとを介して基板Pに露光光ELを照射する。これにより、マスクMのパターンの像が基板Pに投影され、基板Pは露光光ELで露光される。
【0035】
次に、液浸部材6、供給機構8、及び回収機構9について、
図1〜
図4を参照して説明する。
図2は、液浸部材6の近傍を示す側断面図、
図3は、液浸部材6を示す斜視図、
図4は、液浸部材6を下面7側から見た図である。なお、
図3は、分解された状態の液浸部材6を示す。
【0036】
なお、以下の説明においては、液浸部材6の下面7及び終端光学素子4の射出面5と対向する位置に基板Pが配置されている場合を例にして説明するが、上述のように、液浸部材6の下面7及び終端光学素子4の射出面5と対向する位置には、基板ステージ2等、基板P以外の物体も配置可能である。また、以下の説明においては、終端光学素子4の射出面5を適宜、終端光学素子4の下面5、と称する。
【0037】
図1〜
図4において、液浸部材6は、第1部材12と、第1部材12とは異なる第2部材13とを含む。第1部材12及び第2部材13のそれぞれは、環状の部材である。第1部材12は、終端光学素子4の近傍において、露光光ELの光路を囲むように設けられている。本実施形態においては、第1部材12は、露光光ELの光路に対して終端光学素子4の外側に、空隙14を介して、終端光学素子4を囲むように配置されている。第2部材13は、露光光ELの光路に対して第1部材12の外側に、空隙15を介して、第1部材12を囲むように設けられている。
【0038】
本実施形態において、終端光学素子4は、投影光学系PLの物体面からの露光光ELが入射する入射面16と、投影光学系PLの像面に向けて露光光ELを射出する射出面(下面)5と、入射面16の外周と射出面5の外周とを結ぶ外周面(側面)17とを有する。
本実施形態においては、射出面(下面)5は、XY平面とほぼ平行である。外周面17は、露光光ELの光路から外側に離れるにつれて基板Pの表面との距離が大きくなるように傾斜している。
【0039】
第1部材12は、終端光学素子4の外周面17と対向し、その外周面17に沿うように形成された内周面18と、終端光学素子4に対して内周面18の外側に配置された外周面19と、終端光学素子4の下面5の一部と対向する上面20と、基板Pの表面と対向する下面21とを有する。
【0040】
第1部材12は、Z軸方向に関して少なくとも一部が終端光学素子4の下面5と基板Pの表面との間に配置される下板部12Aと、下板部12Aの外周に接続され、終端光学素子4の外周面17を囲むように配置される側板部12Bと、側板部12Bの上端の外周に接続され、終端光学素子4の外周面17を囲むように配置される上板部12Cとを含む。
下板部12Aの外周は、側板部12Bの下端の内周と接続される。
【0041】
なお、本実施形態においては、第1部材12は、下板部12A、側板部12B、及び上板部12Cを有する1つの部材で形成されているが、下板部12A、側板部12B、及び上板部12Cを複数の部材で形成し、それらを接続して第1部材12を形成してもよい。
【0042】
第1部材12の内周面18は、側板部12Bの一方の面を含み、終端光学素子4の外周面17と空隙14を介して対向するように配置される。第1部材12の外周面19は、側板部12Bの他方の面を含み、内周面18とほぼ平行である。なお、外周面19は、内周面18と平行でなくてもよい。
【0043】
第1部材12の上面20は、下板部12Aの上面を含み、終端光学素子4の下面5と空隙22を介して対向するように配置される。第1部材12の上面20は、XY平面とほぼ平行な平坦面である。
【0044】
第1部材12の下面21は、下板部12Aの下面を含む。例えば、基板Pの露光中、基板Pの表面は、空隙23を介して第1部材12の下面21と対向するように配置される。
第1部材12の下面21は、XY平面とほぼ平行な平坦面である。
【0045】
また、下板部12Aは、中央に開口24を有する。開口24は、終端光学素子4の下面5から射出された露光光ELを通過可能である。例えば、基板Pの露光中、終端光学素子4の下面5から射出された露光光ELは、開口24を通過して、基板Pの表面に照射される。本実施形態においては、開口24における露光光ELの断面形状はX軸方向を長手方向とする略矩形状(スリット状)である。開口24は、XY平面における露光光ELの断面形状に応じて、XY方向において略矩形状(スリット状)に形成されている。また、開口24における露光光ELの断面形状と、基板Pにおける投影光学系PLの投影領域PRの形状とはほぼ同じである。第1部材12の上面20及び下面21は、開口24の周囲に形成されている。
【0046】
以下の説明において、第1部材12の下面21を適宜、第1ランド面21、と称する。
【0047】
第2部材13は、第1部材12の外周面19と対向し、その外周面19に沿うように形成された内周面25と、第1部材12に対して、内周面25の外側に配置された外周面26と、第1部材12の上板部12Cの下面27と対向する上面28と、基板Pの表面と対向する下面29とを有する。
【0048】
第2部材13は、基板Pの表面と対向する下板部13Aと、第1部材12の上板部12Cと対向する上板部13Cと、下板部13Aの外周と上板部13Cの外周とを結ぶように配置された側板部13Bと、下板部13Aの内周の近傍と上板部13Cの内周の近傍とを結ぶように配置された多孔部材30とを含む。なお、本実施形態においては、第2部材13は、下板部13A、側板部13B、及び上板部13Cを有する1つの部材で形成されていてもよいし、下板部13A、側板部13B、及び上板部13Cを複数の部材で形成し、それらを結合して第2部材13を形成してもよい。
【0049】
第2部材13の内周面25は、多孔部材30の表面、下板部13Aの内側面、及び上板部13Cの内側面を含み、第1部材12の外周面19と空隙15を介して対向するように配置される。本実施形態において、第1部材12の外周面19と第2部材13の内周面25とはほぼ平行である。なお、第1部材12の外周面19と第2部材13の内周面25とは平行でなくてもよい。
【0050】
第2部材13の上面28は、上板部13Cの上面を含み、第1部材12の上板部12Cの下面27と空隙31を介して対向するように配置される。第2部材13の上面28及び第1部材12の上板部12Cの下面27は、XY平面とほぼ平行な平坦面である。
【0051】
第2部材13の下面29は、下板部13Aの下面を含む。例えば基板Pの露光中、基板Pの表面は空隙32を介して第2部材13の下面29と対向するように配置される。第2部材13の下面29は、XY平面とほぼ平行な平坦面である。
【0052】
以下の説明において、第1ランド面21の周囲に配置された第2部材13の下面29を適宜、第2ランド面29、と称する。
【0053】
本実施形態においては、第1部材12及び第2部材13のそれぞれは、不図示の支持機構によって、所定の位置関係で支持されている。本実施形態においては、第1部材12の外周面19と第2部材13の内周面25とが対向するように、第1部材12と第2部材13とが所定の位置関係で配置される。また、本実施形態においては、第1ランド面21と第2ランド面29とが、同一平面内(XY平面内)に配置されるように(ほぼ面一となるように)、第1部材12と第2部材13とが所定の位置関係で配置される。
【0054】
第1ランド面21と第2ランド面29との間には、第1開口部33が形成されている。
第1開口部33は、空隙15の下端に配置されており、基板Pの表面は、第1開口部33と対向する位置に移動可能である。第1開口部33は、スリット状であって、第1ランド面21を囲むように、環状に設けられている。本実施形態においては、第1開口部33は、円環状に設けられている。第1開口部33の幅(スリットの幅)は、空隙15のサイズに応じた大きさを有する。本実施形態において、第1部材12の外周面19と第2部材13の内周面25との間隔は、第1開口部33の幅(第1ランド面21と第2ランド面29との間隔)とほぼ等しい。また、空隙15も、第1部材12を囲むように、第1開口部33に沿って環状に設けられている。
【0055】
第1部材12の上板部12Cの下面27の外周と第2部材13の上面28の外周との間には、第2開口部34が形成されている。第2開口部34は、露光光ELの光路に対して空隙31の外側の端に配置されており、基板Pの表面と対向しない位置に配置されている。第2開口部34は、第1開口部33よりも+Z側に配置されている。また、本実施形態においては、第2開口部34は、露光光ELの光路に対して第1開口部33の外側に配置されている。
【0056】
本実施形態においては、第1開口部33、第2開口部34、及び空隙15のそれぞれが、第1部材12と第2部材13との間に設けられている。
【0057】
本実施形態において、液浸部材6の下面7は、露光光ELの光路に対して第1開口部33の内側に配置された第1ランド面21、及び露光光ELの光路に対して第1開口部33の外側に配置された第2ランド面29を含む。液浸部材6と基板Pとが対向しているとき、第1ランド面21と基板Pの表面との間、及び第2ランド面29と基板Pの表面との間には、それぞれ液体LQを保持できる。例えば、
図2においては、基板P上の液体LQの一部は、基板Pの表面と第1ランド面21との間に保持され、かつ基板Pの表面と第2ランド面29との間に保持されている。例えば基板Pの露光中、第1ランド面21及び第2ランド面29を含む液浸部材6の下面7と基板Pの表面との間に液体LQを保持することによって、液浸空間LSが形成される。
【0058】
本実施形態においては、第1部材12及び第2部材13のうち、第1ランド面21及び第2ランド面29は、例えばチタンで形成されており、液体LQに対して親液性を有する。例えば、第1ランド面21と液体LQとの接触角CA1、及び第2ランド面29と液体LQとの接触角CA2は、それぞれ40度以下であり、好ましくは20度以下である。なお、接触角CA1と接触角CA2が異なっていてもよい。
【0059】
図2に示すように、第1開口部33は、基板P上の液体LQ(液浸空間LSの液体LQ)と接触可能である。すなわち、第1開口部33は、基板P上の液体LQが流入可能な位置に設けられている。
【0060】
一方、本実施形態において、第2開口部34は、基板Pの表面と対向しない位置に配置されている。第2開口部34は、第1開口部33よりも高い位置に配置されている。第2開口部34は、第1開口部33よりも基板Pの表面から離れている。また本実施形態において、第2開口部34は、基板P上の液体LQ(液浸空間LSの液体LQ)と接触不能である。すなわち、第2開口部34は、第1開口部33と対向する基板P上の液体LQが流入しない位置に設けられている。
【0061】
第2開口部34は、液浸部材6(液浸空間LS)の周囲の外部空間(周囲環境)の気体と接触可能な位置に配置されている。すなわち、第2開口部34は、外部空間の気体が流入可能な位置に設けられている。
【0062】
外部空間の気体は、第2開口部34を介して、空隙15、31に流入可能であるとともに、空隙15、31の気体は、第2開口部34を介して、外部空間に流出可能である。なお、空隙15と空隙31とは接続されている(一体である)。以下の説明において、空隙15と空隙31とを合わせて適宜、空隙35、と称する。
【0063】
本実施形態においては、空隙35とその空隙35の外側の外部空間(大気空間)との間において、第2開口部34を介して、常に気体が出入り可能となっている。すなわち、空隙35は、第2開口部34を介して、大気開放されている。
【0064】
空隙35が大気開放されている状態とは、空隙35が液浸部材6の周囲(液浸空間LSの周囲)の気体空間と常に連通している状態を含む。例えば、空隙35が大気開放されている状態では、第1開口部33の全域が液浸空間LSの液体LQに覆われている場合であっても、空隙35と外部空間(周囲環境)との間において、第2開口部34を介して、気体が出入り可能である。なお、露光装置EXは、通常、環境制御されたチャンバ内に配置されており、上述の「大気開放」は、空隙35がチャンバ内の気体空間と連通している状態も含む。また、外部空間の気体は、必ずしも空気でなくてもよく、例えば窒素であってもよい。
【0065】
供給機構8は、清浄で温度調整された液体LQを送出可能な液体供給装置36と、光路空間Kの近傍に配置された供給口37と、液体供給装置36と供給口37とを接続する流路38とを含む。
【0066】
本実施形態においては、供給口37は、第1部材12に形成されている。流路38は、第1部材12の内部に形成された供給流路38A、及びその供給流路38Aと液体供給装置36とを接続する供給管で形成される流路38Bを含む。液体供給装置36から送出された液体LQは、流路38を介して、供給口37に供給される。供給口37は、液体供給装置36からの液体LQを光路空間Kに供給する。
【0067】
本実施形態においては、供給口37は、終端光学素子4の下面5と第1部材12の上面20との間の空隙22に接続されており、その空隙22に液体LQを供給可能である。また、本実施形態においては、2つの供給口37が、光路空間Kに対してY軸方向両側のそれぞれに設けられている。なお、2つの供給口37は、光路空間Kに対してX軸方向の両側に設けられていてもよい。供給口37の数は2に限らず、任意に設定可能である。
【0068】
本実施形態においては、供給口37は、露光光ELの光路に対して、第1開口部33の内側に配置されている。
【0069】
回収機構9は、真空システムを含み、液体LQを吸引して回収可能な液体回収装置39と、液体LQを回収可能な回収部40と、液体回収装置39と回収部40とを接続する流路41とを含む。なお、回収機構9の真空システムは、真空ポンプを備えていなくてもよく、露光装置EXが設置される工場などの真空ポンプを用いてもよい。
【0070】
本実施形態においては、空隙15は、第1開口部33と対向する基板P上の液体LQが第1開口部33を介して流入可能に設けられている。すなわち、液浸部材6の下面7(第1ランド面21、第2ランド面29)と基板Pの表面との間の液体LQの少なくとも一部は、第1開口部33を介して、空隙15に流入可能である。回収部40は、第1開口部33を介して空隙15に流入した液体LQを吸引可能な位置に配置されている。換言すれば、回収部40は、第1開口部33を介して空隙15に流入した液体LQと接触可能な位置に配置されている。回収部40は、空隙15の内側において、第1開口部33の上方に配置されている。
【0071】
回収部40は、液浸部材6の下面7(第1ランド面21、第2ランド面29)とは異なる方向に向く面に配置され、液体LQを吸引して回収可能な吸引口を含む。本実施形態においては、回収部40は、第1部材12の外周面19と対向する第2部材13の一部分に配置されている。
【0072】
本実施形態においては、第2部材13には、下板部13A、上板部13C、及び側板部13Bによって、第1部材12の外周面19と対向する開口を有する吸引流路(空間部)41Aが形成されており、その空間部41Aの開口に、回収部40が配置されている。本実施形態においては、回収部40は、空隙15に沿って環状に設けられている。
【0073】
回収部40は、吸引口を覆うように配置された多孔部材(メッシュ部材)30を有する。本実施形態において、多孔部材30は、プレートに複数の孔(貫通孔)を形成したものを用いているが、複数の孔(pore)が形成された焼結部材(例えば、焼結金属)、発泡部材(例えば、発泡金属)などを用いてもよい。多孔部材30の表面は、第1部材12の外周面19と対向する第2部材13の内周面25の少なくとも一部を形成する。
【0074】
本実施形態においては、回収部40は、第1開口部33を介して空隙15に流入した液体LQの少なくとも一部を多孔部材30を介して吸引する。
【0075】
本実施形態においては、流路41は、第2部材13の内部に形成された吸引流路41A、及びその吸引流路41Aと液体回収装置39とを接続する回収管で形成される流路41Bを含む。液体回収装置39によって、吸引流路41Aの負圧が調整され、空隙15内の液体LQの少なくとも一部は回収部40より吸引される。回収部40から吸引された液体LQは、流路41を介して、液体回収装置39に回収される。すなわち、多孔部材30は、第1部材12に面する第1面と、吸引流路41Aに面する第2面と、第1面と第2面とに連通する(第1面と第2面とを流体的につなぐ)複数の孔とを有する。液体回収装置39は、多孔部材30の第1面側と第2面側との圧力差を発生させる。その結果、空隙15内の液体LQの少なくとも一部が多孔部材30を介して吸引流路41A内に引き込まれ、液体回収装置39に回収される。
【0076】
多孔部材30の表面(第1面)は、第1部材12の外周面19との間で空隙15を形成する。多孔部材30の表面は、第1開口部33の上方において、第1開口部33を介して空隙15に流入した液体LQが接触可能な位置に配置されている。
【0077】
本実施形態においては、空隙15は、露光光ELの光路から外側に離れるにつれて基板Pの表面との距離が大きくなるように傾斜している。多孔部材30の表面は、第1部材12の外周面19と対向しており、液浸部材6の下面7(第1ランド面21、第2ランド面29)とは異なる方向に向いている。すなわち、回収部40(多孔部材30の表面)は、基板Pの表面と対向しないように配置されている。具体的には、多孔部材30の表面は、露光光ELの光路から外側に離れるにつれて基板Pの表面との距離が大きくなるように、上方(+Z方向)を向くように傾斜している。
【0078】
このように、空隙15が、傾斜しているので、液体LQは、第1開口部33を介して、空隙15内に円滑に流入可能である。
【0079】
また、空隙15は、第2開口部34を介して大気開放されているので、液体LQは、第1開口部33を介して、空隙15内に円滑に流入可能である。
【0080】
また、空隙15は、第1開口部33の近傍の空隙15Mを含む。空隙15Mは、第2部材13の下板部13Aの内側面と第1部材12の外周面19との間に形成されている。本実施形態においては、第1開口部33の近傍の空隙15Mは、毛管現象によって液体LQを保持可能である。すなわち空隙15Mは、毛管現象によって液体LQを保持可能な大きさ(幅)を有する。例えば、第2部材13の下板部13Aの内側面と第1部材12の外周面19との間隔は、0.5〜2.0mmである。空隙15Mは、毛管力によって液体LQを引き込むことができる。すなわち、空隙15Mは、液体LQが毛管現象によって流入可能な毛管路15Mを形成している。
【0081】
本実施形態において、多孔部材30の表面は、第1開口部33の上方において、第1開口部33を介して毛管路15Mに流入し、その毛管路15Mの毛管現象によって上昇(移送)する液体LQと接触可能な位置に配置されている。換言すれば、第1開口部33から流入した液体LQが毛管現象によって多孔部材30の表面に到達するように、毛管路15Mの長さ(多孔部材30の下端と第1開口部33との距離)が設定されている。第1開口部33に接触した液体LQは、毛管現象によって毛管路15M内に引き込まれ、多孔部材30の表面と接触する。
【0082】
また、本実施形態の回収機構9においては、例えば国際公開第2005/024517号パンフレット、米国特許出願公開第2007/0222959号公報等に開示されているように、空隙15内の気体の多孔部材30の通過が抑制されるように、多孔部材30の孔の大きさ、多孔部材30の液体LQとの表面張力、空隙15(35)の圧力(外部空間の圧力)に対する吸引流路41Aの圧力(多孔部材30の第1面と第2面の圧力差)等を含む液体回収条件が設定されている。すなわち、本実施形態においては、空隙35内の液体LQのみが、多孔部材30を通過して吸引流路41Aに流入するように液体回収条件が設定されており、空隙35内の気体は、多孔部材30をほぼ通過しない。換言すれば、本実施形態の回収部40は、液体LQのみを吸引(回収)し、気体は吸引しない。
【0083】
回収部40が液体LQと気体とを一緒に吸引した場合、振動が発生する可能性がある。
本実施形態においては、回収部40は、多孔部材30を介して、液体LQのみを吸引するので、振動の発生を抑制できる。
【0084】
次に、上述の構成を有する露光装置EXを用いて基板Pを液浸露光する方法について説明する。
【0085】
液浸空間LSを形成するために、制御装置3は、供給機構8を用いて、露光光ELの光路空間Kに液体LQを供給する。液体LQを供給するときには、制御装置3は、液浸部材6の下面7及び終端光学素子4の下面5と対向する位置に、基板P(基板ステージ2)等の物体を配置する。液体供給装置36から送出された液体LQは、流路38を介して供給口37に供給される。供給口37は、終端光学素子4の下面5と第1部材12の上面20との間の空隙22に液体LQを供給する。液体LQは、終端光学素子4の下面5と第1部材12の上面20との間の空隙22を流れ、開口24を介して、第1部材12の第1ランド面21と基板Pの表面との間の空隙23に流入し、その第1部材12の第1ランド面21と基板Pの表面との間に保持される。また、液体LQの少なくとも一部は、第2部材13の第2ランド面29と基板Pの表面との間の空隙32に流入し、その第2部材13の第2ランド面29と基板Pの表面との間に保持される。こうして、空隙22及び空隙23が液体LQで満たされ、終端光学素子4の下面5と基板Pの表面との間の光路空間Kを液体LQで満たすように液浸空間LSが形成される。
【0086】
また、本実施形態においては、制御装置3は、供給機構8による液体供給動作と並行して、回収機構9による液体回収動作を行う。基板P上の液体LQの少なくとも一部は、第1開口部33を介して空隙15に流入する。基板P上の液体LQは、例えば毛管現象によって空隙15内(毛管路15M内)を上昇する。空隙15内において、多孔部材30の表面に接触した液体LQを、回収部40の多孔部材30を介して吸引される。回収部40より吸引された液体LQは、流路41を介して、液体回収装置39に回収される。
【0087】
制御装置3は、供給機構8による液体供給動作と回収機構9による液体回収動作とを並行して行うことで、常に所望状態(温度、クリーン度等)の液体LQで、基板P上に液浸領域を局所的に形成できる。
【0088】
液浸空間LSが形成された後、制御装置3は、基板Pの露光を開始する。上述のように、本実施形態の露光装置EXは走査型露光装置である。制御装置3は、液浸部材6の下面7と基板Pの表面との間に液体LQを保持して液浸空間LSを形成した状態で、露光光ELの光路及び液浸空間LSに対して、基板Pの表面をY軸方向に移動しつつ、投影光学系PLと基板P上の液体LQとを介して露光光ELを基板Pに照射する。これにより、マスクMのパターンの像が基板Pに投影され、基板Pは露光光ELで露光される。
【0089】
また、制御装置3は、例えば基板P上の第1のショット領域の露光が終了した後、第2のショット領域の露光を開始するために、液浸空間LSを形成した状態で、基板Pの表面をX軸方向(あるいはXY平面内においてX軸方向に対して傾斜する方向)に移動する動作を実行する。
【0090】
本実施形態においては、基板Pの表面をXY方向に移動した場合においても、液浸部材6の下面7と基板Pの表面との間の液体LQが、その液浸部材6の下面7と基板Pの表面との間の空間(空隙32)の外側に漏出しない。
【0091】
図5A及び5Bは、露光光ELの光路及び液浸空間LSに対して、基板Pの表面をY軸方向に移動している状態を示す模式図であって、
図5Aは側断面図、
図5Bは液浸部材6を下方から見た図である。
図5A及び5Bに示すように、本実施形態においては、基板Pの停止中のみならず、基板Pの移動中においても、液浸空間LSの液体LQの界面(メニスカス、エッジ)LGが、基板Pの表面と第2ランド面29との間に形成されるように、露光条件が設定されている。本実施形態においては、基板Pの移動中においても、液体LQの界面LGが、第2ランド面29と接するように、露光条件が設定されている。露光条件は、基板Pの移動条件、及び液浸空間LSを形成する液浸条件を含む。基板Pの移動条件は、基板Pの移動速度、加速度、減速度、所定方向の一方向(例えば+Y方向)に移動するときの距離、及び移動方向を含む。液浸条件は、供給口37の単位時間当たりの液体LQの供給量などを含む。したがって、基板Pの移動中においても、第1開口部33の全部が液浸空間LSの液体LQで常に覆われる。第1開口部33を常に液体LQで覆うことによって、例えば空隙15の気体が液浸空間LSの液体LQに混入したり、液体LQ中に気泡が生成されたりすることを抑制できる。また、第1開口部33を常に液体LQで覆うことによって、第1開口部33が液体LQの界面LGの内側に配置されているので、液体LQの界面LGの状態が乱されることも抑制できる。また、第1開口部33を液体LQで常に覆うことによって、液浸空間LSの液体LQは、第1開口部33を介して空隙15に円滑に流入し、回収部40で回収することができる。
【0092】
また、本実施形態においては、回収部40は、基板Pの表面と対向しない面(本実施形態では第2部材13の内周面25)に配置されており、第1開口部33を介して空隙15に流入した液体LQを多孔部材30を介して吸引する。これにより、液浸空間LSに対して基板PをXY方向に移動した場合でも、液体LQが漏出したり、基板Pの表面に液体LQ(液体LQの膜、滴など)が残留したりすることを抑制できる。
【0093】
このように、回収部40(多孔部材30)を基板Pの表面と対向しない位置に設けたのは、以下のような発明者の知見による。
【0094】
図6Aは、液浸空間LSの液体LQを回収する回収部40Jが、基板Pの表面と対向する液浸部材6Jの下面7Jに配置されている状態を示す模式図である。このような液浸部材6Jを用いて、液浸空間LS(液浸部材6J)に対して基板PをXY平面内の一方向(ここでは−Y方向)に高速で移動すると、回収部40Jと基板Pとの間において液体LQが基板P上で薄い膜となり、基板P上の液体LQが回収部40Jの外側、具体的には、基板Pの移動方向の前方側(−Y側)において、回収部40Jの外側に漏出する場合がある。この現象は、液浸部材6Jの下面7Jと基板Pの表面との間において、液浸部材6Jの下面7J近傍、すなわち回収部40J近傍の液体LQが、回収部40Jの吸引動作によって上方(+Z方向)に流れ、その回収部40Jに回収されるが、基板Pの表面近傍の液体LQは、基板Pとの表面張力等により、回収部40Jから回収されずに、基板P上で薄い膜となり、基板Pの移動とともに、基板Pの移動方向の前方側において回収部40Jの外側へ引き出されることによって生じる。このような現象が生じると、回収部40Jの外側に引き出された液体LQが、例えば滴となって基板P上に残留し、パターンの欠陥等を引き起こす原因となる。そして、このような現象は、基板Pの移動速度の高速化に伴って発生しやすくなることが、発明者の知見により明らかになった。
【0095】
図6Bは、本実施形態に係る液浸部材6を示す模式図である。本実施形態においては、基板Pの表面と対向する液浸部材6の下面7には回収部40が設けられていないので、液浸部材6の下面7近傍(第1ランド面21及び第2ランド面29近傍)において、上方(+Z方向)への液体LQの強い流れが生じない。また、空隙15は大気開放状態であり、第1開口部33から空隙15への液体LQの流入は専ら空隙15の毛管力に依存しているので、第1開口部33の近傍においても、液体LQの上方(+Z方向)への強い流れが生じない。したがって、液浸空間LS(液浸部材6)に対して基板PをXY平面内の一方向(−Y方向)に高速で移動した場合でも、本実施形態に係る液浸部材6を用いることによって、基板Pの移動方向の前方側(−Y側)において基板P上の液体LQが薄膜になる現象が抑制され、第2ランド面29と基板Pの表面との間において所望状態に維持される。
すなわち、基板Pを移動した場合でも、第2ランド面29と基板Pの表面との間の液体LQが第2ランド面29から剥離することが抑制される。このように、本実施形態においては、第2ランド面29と基板Pの表面との間において液体LQが第2ランド面29と接しているので、基板Pの移動方向の前方側(−Y側)においても、液体LQの界面LGの状態は所望状態に維持される。したがって、液体LQが、液浸部材6と基板Pとの間の空間の外側へ漏出したり、基板P上に液体LQ(滴など)が残留したりすることが抑制される。
【0096】
以上説明したように、本実施形態によれば、液体LQを良好に回収でき、液浸空間LSに対する基板Pの移動に伴う基板Pの表面における、液体LQの漏出、残留等の不具合の発生を抑制できるので、露光不良の発生を抑制できる。また、露光不良の発生を抑制しつつ、基板Pの移動速度を高速化できる。したがって、良好なデバイスを生産性良く製造できる。
【0097】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0098】
図7A及び7Bは、第2実施形態を示す図であって、露光光ELの光路及び液浸空間LSに対して、基板Pの表面を−Y方向に移動している状態を示す模式図であって、
図7Aは側断面図、
図7Bは液浸部材6を下方から見た図である。液浸部材6等の構成は、上述の第1実施形態と同等である。上述の第1実施形態においては、基板Pの移動中においても、第1開口部33の全部が液体LQで覆われている場合を例にして説明したが、
図7A及び7Bに示すように、第1開口部33の一部(+Y側の一部分)は、液体LQで覆われていなくてもよい。
図7A及び7Bに示す状態は、例えば
図5A及び5Bの実施形態よりも基板Pの−Y方向への移動速度を更に高速にすることによって発現する。
【0099】
図7A及び7Bに示す状態であっても、基板Pの移動方向の前方側(−Y側)において液体LQの界面LGの状態(形状など)は、第2ランド面29と基板Pの表面との間において所望状態に維持される。したがって、基板Pの移動方向の前方側において、液体LQの漏出等の不具合の発生を抑制しつつ、液体LQを良好に回収できる。
【0100】
上述の第1実施形態で説明したように、第1開口部33の近傍の空隙15Mは、本実施形態においても毛管路を形成している。したがって、基板Pの移動に伴って、第1開口部33が液浸空間LSの液体LQと接触していない部分が発生しても、その第1開口部33の近傍の空隙(毛管路)15Mには毛管現象によって液体LQが保持されている可能性が高く、その第1開口部33が再び液浸空間LSの液体LQと接触したときに、空隙15の気体が液浸空間LSの液体LQに混入することが抑制され、液浸空間LSの液体LQを空隙15に円滑に流入させることができる。
【0101】
また、
図7A及び7Bに示すように、第1開口部33の近傍の空隙(毛管路)15Mの一部に液体LQが保持されない状況が発生する可能性もあるが、本実施形態においては、第1開口部33(空隙15)が環状に設けられているため、基板Pの移動方向を変更した場合にも、空隙15Mの毛管力を利用して、空隙15内に液体LQを円滑に流入させることができる。例えば基板Pを−Y方向に移動した後、+Y方向に移動する場合にも、液浸空間LSの液体LQへの気体の混入を抑制しつつ、第1開口部33の+Y側の一部分の近傍の空隙(毛管路)15Mに液体LQを円滑に流入させることができる。
【0102】
また、
図7A及び7Bにおいては、基板Pを−Y方向に移動する場合を説明したが、基板PをXY平面内のいずれの方向に移動した場合でも、基板Pの移動方向の前方側において、基板P上の液体LQは、薄膜にならず、常に第2ランド面29と接する。したがって、液体LQへの気体の混入、液体LQの漏出等の不具合の発生を抑制しつつ、液体LQを良好に回収できる。
【0103】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態について説明する。上述の実施形態においては、第1ランド面21と第2ランド面29とがほぼ面一である場合を例にして説明したが、第1ランド面21と第2ランド面29とが互いに平行でなくてもよい。
【0104】
図8は、第3実施形態に係る液浸部材6Bを示す側断面図、
図9は下方から見た図である。
図8及び
図9に示すように、本実施形態においては、第2ランド面29は、基板Pの表面に対して第1ランド面21よりも離れた位置に配置される。本実施形態においては、第1部材12の第1ランド面21に対して、第2部材13の第2ランド面29が傾斜している。具体的には、第2ランド面29は、露光光ELの光路から外側に離れるにつれて基板Pの表面との間隔が大きくなるように傾斜している。第1ランド面21は、XY平面(基板Pの表面)とほぼ平行である。
【0105】
本実施形態においては、第2ランド面29は、互いに異なる4つの方向を向く4つの平面29A〜29Dで形成されている。
図9に示すように、平面29A〜29Dのそれぞれは、平面視において、露光光ELの光路から外側に離れるにつれて拡がるように、ほぼ台形状に形成されている。
【0106】
図10は、第3実施形態に係る液浸部材6Bを用いて形成された液浸空間LSに対して基板Pを−Y方向に移動させたときの液浸空間LSの状態を示す図である。本実施形態においても、液浸部材6Bの下面7Bには回収部40が無いので、液体LQの界面LGは所望状態に維持される。また、第2ランド面29は傾斜しているので、液浸空間LSの液体LQには、第2ランド面29に沿って斜め上方に移動する成分F1と、水平方向に移動する成分F2とが生成される。また、基板Pと第2ランド面29との間の空間の体積を大きくすることができる。したがって、液浸空間LSの拡大(大型化)を抑制できる。なお、第2ランド面29と基板Pとの間の液体LQが、第2ランド面29から剥離しないように第2ランド面29のXY平面(第1ランド面21)に対する傾斜角度が調整されることは言うまでもなく、例えばその傾斜角度は2〜10°以下である。
【0107】
以上説明したように、本実施形態によれば、液浸空間LSの拡大を抑制しつつ、液体LQを良好に回収できる。
【0108】
なお、本実施形態においては、第2ランド面29は、互いに異なる方向を向く4つの平面29A〜29Dによって形成されているが、曲面でもよい。あるいは、5つ以上の複数の平面を組み合わせることによって第2ランド面29を形成してもよい。
【0109】
<第4実施形態>
次に、第4実施形態について説明する。
図11は、第4実施形態に係る液浸部材6Cを示す側断面図である。本実施形態においては、液浸部材6Cの下面7Cの第1ランド面21と第2ランド面29とは、互いに平行であるが、基板Pの表面の法線方向(Z軸方向)に関して互いに異なる位置に配置されている。本実施形態においては、第1ランド面21及び第2ランド面29のそれぞれは、XY平面とほぼ平行であり、第2ランド面29は、基板Pの表面に対して第1ランド面21よりも離れた位置に配置される。本実施形態においても、液浸空間LSの拡大を抑制しつつ、液体LQを良好に回収できる。なお、第2ランド面29が、第1ランド面21より基板Pの表面に近くてもよい。
【0110】
<第5実施形態>
次に、第5実施形態について説明する。
図12は、第5実施形態に係る液浸部材6Dを示す側断面図である。本実施形態においては、液浸部材6Dの下面7Dの第2ランド面29に段差42が形成されている。第1ランド面21は、XY平面とほぼ平行である。第2ランド面29のうち、露光光ELの光路に対して段差42の内側の第1領域42Aは、第1ランド面21とほぼ面一であり、露光光ELの光路に対して段差42の外側の第2領域42Bは、基板Pの表面に対して第1領域42Aよりも離れた位置に配置される。本実施形態においても、液浸空間LSの拡大を抑制しつつ、液体LQを良好に回収できる。なお、第1領域42Aが第1ランド面21と面一でなくてもよい。また、第2ランド面29の第2領域42Bが第1領域42Aよりも基板Pの表面に近くてもよい。その場合、第2領域42Bが第1ランド面21より基板Pの表面に近くてもよい。
【0111】
<第6実施形態>
次に、第6実施形態について説明する。
図13は、第6実施形態に係る露光装置EXを示す側断面図である。本実施形態においては、第1部材12と第2部材13とは、相対的に移動可能である。また、本実施形態においては、露光装置EXは、第1部材12と第2部材13とを相対的に移動する駆動機構43を有する。本実施形態においては、第1部材12は、不図示の支持機構で支持されており、第1部材12の位置は支持機構によって固定されている。本実施形態においては、駆動機構43は、第2部材13を移動する。駆動機構43は、第2部材13に接続された接続部材44と、その接続部材44を移動することによって第2部材13を移動するアクチュエータ45と、アクチュエータ45を露光装置EXのボディ等の支持部材BDに連結する連結部材46とを含む。制御装置3は、駆動機構43を用いて、第1部材12に対して第2部材13を移動する。
【0112】
制御装置3は、駆動機構43を用いて第2部材13の第2ランド面29の位置を移動することができる。例えば、
図8などに示したように、第2ランド面29に傾斜させたり、
図11で説明したように、第1ランド面21と第2ランド面29のZ方向に位置を異ならせたりすることができる。
【0113】
また、第1部材12と第2部材13との間の空隙15(15M)の間隔を調整するようにしてもよい。空隙15(15M)の間隔を調整することによって、空隙15(15M)の毛管力を調整したり、空隙15内における液体LQの界面の位置を調整したりすることができ、空隙15への液体LQの流入を円滑に行うことができる。この場合、第2部材13が複数に分割されていてもよい。
【0114】
制御装置3は、例えば基板Pの移動条件(移動速度、移動方向等)、液体LQの物性、基板Pと液体LQとの接触状態(接触角)などに応じて、基板Pの表面と第2ランド面29との位置関係を調整するように、第2部材13を移動することができる。本実施形態においても、基板Pの表面における、液体LQの漏洩、残留などを防止することができる。
【0115】
なお、本実施形態においては、第2部材13のみを動かしているが、第1部材12のみを動かしてもよいし、両方を動かしてもよい。
【0116】
<第7実施形態>
次に、第7実施形態について説明する。
図14は、第7実施形態に係る液浸部材6Eを示す側断面図である。上述の各実施形態においては、第1部材12の下板部12Aの少なくとも一部が終端光学素子4の下面5と基板Pの表面との間に配置されている場合を例にして説明したが、
図14に示すように、第1部材12の下板部を省略してもよい。また、
図14において、終端光学素子4の下面5と、第1部材12の第1ランド面21と、第2部材13の第2ランド面29とは、ほぼ面一である。供給口37は、終端光学素子4の外周面17と対向する位置に配置されており、外周面17に向けて液体LQを供給する。本実施形態においても、液体LQを良好に回収できる。なお、終端光学素子4の下面5と、第1部材12の第1ランド面21と、第2部材13の第2ランド面29とは、面一でなくてもよい。
【0117】
なお、上述の各実施形態においては、液浸部材6が第1部材12と第1部材12とは異なる第2部材13とを含む場合を例にして説明したが、液浸部材6が、1つの部材で形成されていてもよい。その場合、一つの部材で形成された液浸部材6が、第1開口部33、第2開口部34、空隙35、第1ランド面21、及び第2ランド面29を有する。
【0118】
また、
図15に示すように、液浸部材6Fの環状の第1開口部33が複数に分割されていてもよい。この場合、
図15に示すように、複数の第1開口部33が周方向に離散的に設けられていてもよい。
図15に示す第1開口部33は、XY平面内において円弧状に形成された4つのスリット33A〜33Dで形成されている。スリット33A〜33Dは、露光光ELの光路に対して基板Pの走査方向(Y軸方向)の両側、及び非走査方向(X軸方向)の両側に配置されている。
【0119】
また、上述の第1〜第7実施形態において、第2部材13の回収部40は環状に設けられているが、環状の回収部40が複数に分割されていてもよい。この場合、複数の回収部40が周方向に離散的に配置されていてもよい。
また、上述の各実施形態において、供給口37を−Z方向を向くように(すなわち−Z方向に沿うように)設けてもよい。すなわち、第1部材12の下面21に供給口37を設けてもよい。
また、上述の各実施形態において、多孔部材30の表面(第1面)は、+Z方向を向くように斜めに(すなわち斜め上向きに)配置されている。他の実施形態において、多孔部材30の表面(第1面)が、露光光ELの光路を向くように、かつZ方向とほぼ平行に配置してもよい。また多孔部材30の表面(第1面)が、+Z方向を向くように、かつXY平面とほぼ平行に配置してもよい。この場合、第1部材12の上板部12cと第2部材13との間の空隙31まで毛管力によって引きこまれた液体LQを多孔部材30を介して回収すればよい。
【0120】
なお、上述の第1〜第7実施形態において、投影光学系PLは、終端光学素子4の射出側(像面側)の光路空間を液体LQで満たしているが、国際公開第2004/019128号パンフレットに開示されているように、終端光学素子4の入射側(物体面側)の光路空間も液体LQで満たす投影光学系を採用することもできる。
【0121】
なお、上述の実施形態の液体LQは水であるが、水以外の液体であってもよい。液体LQとしては、露光光ELに対する透過性があってできるだけ屈折率が高く、投影光学系PL、あるいは基板Pの表面を形成する感光材(フォトレジスト)の膜に対して安定なものが好ましい。例えば、液体LQとして、ハイドロフロロエーテル(HFE)、過フッ化ポリエーテル(PFPE)、フォンブリンオイル、セダー油等を用いることも可能である。
また、液体LQとして、屈折率が1.6〜1.8程度のものを使用してもよい。液体LQと接触する投影光学系PLの光学素子(終端光学素子4など)は、例えば石英(シリカ)、あるいは、フッ化カルシウム(蛍石)、フッ化バリウム、フッ化ストロンチウム、フッ化リチウム、及びフッ化ナトリウム等のフッ化化合物の単結晶材料で形成してもよい。更に、終端光学素子4は、石英及び蛍石よりも屈折率が高い(例えば1.6以上)材料で形成してもよい。屈折率が1.6以上の材料としては、例えば、国際公開第2005/059617号パンフレットに開示されるサファイア、二酸化ゲルマニウム等、あるいは、国際公開第2005/059618号パンフレットに開示される塩化カリウム(屈折率は約1.75)等を用いることができる。さらに、終端光学素子の表面の一部(少なくとも液体との接触面を含む)又は全部に、親液性及び/又は溶解防止機能を有する薄膜を形成してもよい。なお、石英は液体との親和性が高く、かつ溶解防止膜も不要であるが、蛍石は少なくとも溶解防止膜を形成することができる。液体LQとして、種々の流体、例えば、超臨界流体を用いることも可能である。純水よりも屈折率が高い(例えば1.5以上)の液体としては、例えば、屈折率が約1.50のイソプロパノール、屈折率が約1.61のグリセロール(グリセリン)といったC−H結合あるいはO−H結合を持つ所定液体、ヘキサン、ヘプタン、デカン等の所定液体(有機溶剤)、あるいは屈折率が約1.60のデカリン(Decalin: Decahydronaphthalene)などが挙げられる。また、液体は、これら液体のうち任意の2種類以上の液体を混合したものでもよいし、純水にこれら液体の少なくとも1つを添加(混合)したものでもよい。さらに、液体は、純水にH
+、Cs
+、K
+、Cl
−、SO
42−、PO
42−等の塩基又は酸を添加(混合)したものでもよいし、純水にAl酸化物等の微粒子を添加(混合)したものでもよい。なお、液体としては、光の吸収係数が小さく、温度依存性が少なく、投影光学系、及び/又は基板の表面に塗布されている感光材(又はトップコート膜あるいは反射防止膜など)に対して安定なものであることが好ましい。基板には、液体から感光材や基材を保護するトップコート膜などを設けることができる。
【0122】
また、例えば露光光ELがF
2レーザ光である場合、このF
2レーザ光は水を透過しないので、液体LQとしてはF
2レーザ光を透過可能なもの、例えば、過フッ化ポリエーテル(PFPE)、フッ素系オイル等のフッ素系流体を用いることができる。この場合、液体LQと接触する部分には、例えばフッ素を含む極性の小さい分子構造の物質で薄膜を形成することで親液化処理する。
【0123】
なお、上述の各実施形態の基板Pとしては、半導体デバイス製造用の半導体ウエハのみならず、ディスプレイデバイス用のガラス基板、薄膜磁気ヘッド用のセラミックウエハ、あるいは露光装置で用いられるマスクまたはレチクルの原版(合成石英、シリコンウエハ)、またはフィルム部材等が適用される。また、基板はその形状が円形に限られるものでなく、矩形など他の形状でもよい。
【0124】
露光装置EXとしては、マスクMと基板Pとを同期移動してマスクMのパターンを走査露光するステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置(スキャニングステッパ)の他に、マスクMと基板Pとを静止した状態でマスクMのパターンを一括露光し、基板Pを順次ステップ移動させるステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(ステッパ)にも適用することができる。
【0125】
さらに、ステップ・アンド・リピート方式の露光において、第1パターンと基板Pとをほぼ静止した状態で、投影光学系を用いて第1パターンの縮小像を基板P上に転写した後、第2パターンと基板Pとをほぼ静止した状態で、投影光学系を用いて第2パターンの縮小像を第1パターンと部分的に重ねて基板P上に一括露光してもよい(スティッチ方式の一括露光装置)。また、スティッチ方式の露光装置としては、基板P上で少なくとも2つのパターンを部分的に重ねて転写し、基板Pを順次移動させるステップ・アンド・スティッチ方式の露光装置にも適用できる。
【0126】
また、例えば特表2004−519850号公報(対応米国特許第6,611,316号)に開示されているように、2つのマスクのパターンを、投影光学系を介して基板上で合成し、1回の走査露光によって基板上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置などにも本発明を適用することができる。また、プロキシミティ方式の露光装置、ミラープロジェクション・アライナーなどにも本発明を適用することができる。
【0127】
また、本発明は、特開平10−163099号公報、特開平10−214783号公報、特表2000−505958号公報、米国特許6,341,007号、米国特許6,400,441号、米国特許6,549,269号、及び米国特許6,590,634号、米国特許6,208,407号、米国特許6,262,796号などに開示されているような複数の基板ステージを備えたツインステージ型の露光装置にも適用できる。
【0128】
更に、例えば特開平11−135400号公報、特開2000−164504号公報(対応米国特許第6,897,963号)等に開示されているように、基板を保持する基板ステージと基準マークが形成された基準部材及び/又は各種の光電センサを搭載した計測ステージとを備えた露光装置にも本発明を適用することができる。また、複数の基板ステージと計測ステージとを備えた露光装置にも適用することができる。
【0129】
露光装置EXの種類としては、基板Pに半導体素子パターンを露光する半導体素子製造用の露光装置に限られず、液晶表示素子製造用又はディスプレイ製造用の露光装置や、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD)、マイクロマシン、MEMS、DNAチップ、あるいはレチクル又はマスクなどを製造するための露光装置などにも広く適用できる。
【0130】
なお、上述の各実施形態においては、レーザ干渉計1S、2Sを含む干渉計システムを用いてマスクステージ1及び基板ステージ2の各位置情報を計測するものとしたが、これに限らず、例えば各ステージ1、2に設けられるスケール(回折格子)を検出するエンコーダシステムを用いてもよい。この場合、干渉計システムとエンコーダシステムとの両方を備えるハイブリッドシステムとし、干渉計システムの計測結果を用いてエンコーダシステムの計測結果の較正(キャリブレーション)を行うことが好ましい。また、干渉計システムとエンコーダシステムとを切り換えて用いる、あるいはその両方を用いて、ステージの位置制御を行うようにしてもよい。
【0131】
また、上述の各実施形態では、露光光ELとしてArFエキシマレーザ光を発生する光源装置として、ArFエキシマレーザを用いてもよいが、例えば、国際公開第1999/46835号パンフレット(対応米国特許7,023,610号)に開示されているように、DFB半導体レーザ又はファイバーレーザなどの固体レーザ光源、ファイバーアンプなどを有する光増幅部、及び波長変換部などを含み、波長193nmのパルス光を出力する高調波発生装置を用いてもよい。さらに、上記実施形態では、前述の各照明領域と、投影領域がそれぞれ矩形状であるものとしたが、他の形状、例えば円弧状などでもよい。
【0132】
なお、上述の各実施形態においては、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスクを用いたが、このマスクに代えて、例えば米国特許第6,778,257号公報に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する可変成形マスク(電子マスク、アクティブマスク、あるいはイメージジェネレータとも呼ばれる)を用いてもよい。可変成形マスクは、例えば非発光型画像表示素子(空間光変調器:Spatial Light Modulator (SLM)とも呼ばれる)の一種であるDMD(Digital Micro-mirror Device)等を含む。なお、DMDを用いた露光装置は、例えば米国特許第6,778,257号公報に開示されている。また、可変成形マスクとしては、DMDに限られるものでなく、DMDに代えて、以下に説明する非発光型画像表示素子を用いても良い。ここで、非発光型画像表示素子は、所定方向へ進行する光の振幅(強度)、位相あるいは偏光の状態を空間的に変調する素子であり、透過型空間光変調器としては、透過型液晶表示素子(LCD:Liquid Crystal Display)以外に、エレクトロクロミックディスプレイ(ECD)等が例として挙げられる。また、反射型空間光変調器としては、上述のDMDの他に、反射ミラーアレイ、反射型液晶表示素子、電気泳動ディスプレイ(EPD:Electro Phonetic Display)、電子ペーパー(または電子インク)、光回折型ライトバルブ(Grating Light Valve)等が例として挙げられる。
【0133】
また、非発光型画像表示素子を備える可変成形マスクに代えて、自発光型画像表示素子を含むパターン形成装置を備えるようにしても良い。この場合、照明系は不要となる。ここで自発光型画像表示素子としては、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)、無機ELディスプレイ、有機ELディスプレイ(OLED:Organic Light Emitting Diode)、LEDディスプレイ、LDディスプレイ、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)、プラズマディスプレイ(PDP:Plasma Display Panel)等が挙げられる。また、パターン形成装置が備える自発光型画像表示素子として、複数の発光点を有する固体光源装置、チップを複数個アレイ状に配列した固体光源チップアレイ、または複数の発光点を1枚の基板に作り込んだタイプのもの等を用い、該固体光源チップを電気的に制御してパターンを形成しても良い。なお、固体光源素子は、無機、有機を問わない。
【0134】
上述の各実施形態においては、投影光学系PLを備えた露光装置を例に挙げて説明してきたが、投影光学系PLを用いない露光装置及び露光方法に本発明を適用することができる。このように投影光学系PLを用いない場合であっても、露光光はレンズ等の光学部材を介して基板に照射され、そのような光学部材と基板との間の所定空間に液浸空間が形成される。
【0135】
また、例えば国際公開第2001/035168号パンフレットに開示されているように、干渉縞を基板P上に形成することによって、基板P上にライン・アンド・スペースパターンを露光する露光装置(リソグラフィシステム)にも本発明を適用することができる。
【0136】
なお、法令で許容される限りにおいて、上述の各実施形態及び変形例で引用した露光装置などに関する全ての公開公報及び米国特許の開示を援用して本文の記載の一部とする。
【0137】
以上のように、上記実施形態の露光装置EXは、各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置EXへの組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置EXへの組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置EXへの組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置EX全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置EXの製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
【0138】
半導体デバイス等のマイクロデバイスは、
図16に示すように、マイクロデバイスの機能・性能設計を行うステップ201、この設計ステップに基づいたマスク(レチクル)を製作するステップ202、デバイスの基材である基板を製造するステップ203、上述の実施形態に従って、マスクのパターンを用いて露光光で基板を露光すること、及び露光された基板を現像することを含む基板処理(露光処理)を含む基板処理ステップ204、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程などの加工プロセスを含む)205、検査ステップ206等を経て製造される。