特許第6048600号(P6048600)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6048600円筒マスク作製方法、露光方法、及びパターン形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048600
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】円筒マスク作製方法、露光方法、及びパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20161212BHJP
   G03F 1/24 20120101ALI20161212BHJP
   G03F 1/00 20120101ALI20161212BHJP
   G03F 1/70 20120101ALI20161212BHJP
【FI】
   G03F7/20 501
   G03F1/24
   G03F1/00 Z
   G03F1/70
【請求項の数】12
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-17951(P2016-17951)
(22)【出願日】2016年2月2日
(62)【分割の表示】特願2014-503882(P2014-503882)の分割
【原出願日】2013年3月6日
(65)【公開番号】特開2016-66105(P2016-66105A)
(43)【公開日】2016年4月28日
【審査請求日】2016年2月2日
(31)【優先権主張番号】特願2012-50664(P2012-50664)
(32)【優先日】2012年3月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 雅人
【審査官】 植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−203311(JP,A)
【文献】 特開2007−227438(JP,A)
【文献】 特開2006−093318(JP,A)
【文献】 特開2005−331893(JP,A)
【文献】 特開2001−343589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
G03F 1/00〜1/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の軸線上に中心点が設けられる所定の曲率半径の球面の一部を成すと共に、前記軸線回りに帯状に形成される部分球面となる外周面にパターンが形成された円筒マスクを作製する円筒マスク作製方法であって、
前記曲率半径に対応する大きさの負のペッツバール和を有する投影光学系の物面側に原版となるパターンを配置し、前記原版となる前記パターンを前記物面に沿って一次元に移動させることと、
前記円筒マスクとなる円筒体の前記部分球面となる外周面を、前記投影光学系の像面側に配置し、前記パターンの一次元の移動の速度に対応した速度で前記円筒体を前記軸線回りに回転させて、前記パターンを前記円筒体の前記部分球面となる外周面に転写することと、
を含む円筒マスク作製方法。
【請求項2】
前記投影光学系は、前記物面側の前記パターンを前記像面側に配置される前記円筒体の外周面上に、等倍、拡大、縮小のいずれか1つの倍率で投影する、
請求項1に記載の円筒マスク作製方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2によって作製された前記円筒マスクを、前記曲率半径に対応する大きさの負のペッツバール和を有する投影光学系の物面側に配置し、前記所定の軸線の回りに回転させることと、
前記円筒マスクのパターンが露光される基板を前記投影光学系の像面側に配置し、前記円筒マスクの回転速度に対応した速度で前記基板を一次元に移動させることと、
を含む露光方法。
【請求項4】
マスクのパターンを基板上に投影露光する露光方法であって、
所定の軸線上に中心点が設けられる所定の曲率半径の球面の一部を成すと共に、前記軸線回りに帯状に形成される部分球面となる外周面にパターンが形成されたマスクを、前記曲率半径に対応する大きさの負のペッツバール和を有する投影光学系の物面側に配置し、前記所定の軸線の回りに回転させることと、
前記基板を前記投影光学系の像面側に配置し、前記マスクの回転速度に対応した速度で移動させることと、
を含む露光方法。
【請求項5】
前記マスクの前記パターンは露光用の照明光に対して反射性を有し、
前記投影光学系は前記マスクのパターンで反射された光を入射して、前記基板上に前記パターンの像を結像する、
請求項4に記載の露光方法。
【請求項6】
前記基板は、前記移動の方向を長尺方向とする可撓性のシート基板である、
請求項5に記載の露光方法。
【請求項7】
前記投影光学系は、前記マスクのパターンからの光を透過すると共に、光学面を非球面とした光学素子を含む、
請求項5に記載の露光方法。
【請求項8】
前記投影光学系は、さらに前記マスクのパターンからの光を反射する反射鏡を含む、
請求項5に記載の露光方法。
【請求項9】
基板上にマスクのパターンの露光光による像を投影露光し、前記基板上に電子デバイス用のパターンを形成するパターン形成方法であって、
所定の軸線上に中心点が設けられる所定の曲率半径の球面の一部を成すと共に、前記軸線回りに帯状に形成される部分球面となる外周面にパターンが形成されたマスクを、前記曲率半径に対応する大きさの負のペッツバール和を有する投影光学系の物面側に配置し、前記所定の軸線の回りに回転させることと、
現像を伴う感光剤、露光光によって撥液性と親液性との状態が変化する感光性SAM剤、及び露光光によってメッキ還元能が発現する材料のいずれか1つが表面に塗布された基板を、前記投影光学系の像面側に配置し、前記マスクの回転位置に対応して移動させることと、
を含むパターン形成方法。
【請求項10】
前記マスクの前記パターンは露光用の照明光に対して反射性を有し、
前記投影光学系は前記マスクのパターンで反射された光を入射して、前記基板上に前記パターンの像を結像する、
請求項9に記載のパターン形成方法。
【請求項11】
前記感光剤が塗布された前記基板の露光の後に、前記基板を現像して形成される前記感光剤のパターン層を介して前記基板を加工する工程、
前記感光性SAM剤が塗布された前記基板の露光の後に、前記基板上の親液性が高くなった部分にインク、ペースト、又は溶液を選択的に塗布する工程、及び、
前記メッキ還元能が発現する材料が塗布された前記基板の露光の後に、前記基板をメッキ液に漬けて金属層を形成する工程、
のうちの少なくとも1つの工程を行う、
請求項9又は請求項10に記載のパターン形成方法。
【請求項12】
前記基板は、前記移動の方向を長尺方向とする可撓性のシート基板である、
請求項9〜請求項11のうちのいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒マスク作製方法、露光方法、及びパターン形成方法に関する。
本願は、2012年3月7日に出願された特願2012−50664号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ装置などの表示装置を構成する表示素子として、例えば液晶表示素子、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子、電子ペーパに用いられる電気泳動素子などが知られている。
現在、これらの表示素子として、基板表面に薄膜トランジスタと呼ばれるスイッチング素子(Thin Film Transistor:TFT)を形成し、その上にそれぞれの表示デバイスを形成する能動的素子(アクティブデバイス)が主流となってきている。
【0003】
近年では、シート状の基板(例えばフィルム部材など)上に表示素子を形成する技術が提案されている。このような技術として、例えばロール・トゥ・ロール方式(以下、単に「ロール方式」と表記する)と呼ばれる手法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
ロール方式は、基板供給側の供給用ローラーに巻かれた1枚のシート状の基板(例えば、帯状のフィルム部材)を送り出すと共に送り出された基板を基板回収側の回収用ローラーで巻き取りながら基板を搬送する。
【0004】
基板が送り出されてから巻き取られるまでの間、複数の処理装置により、TFTを構成するゲート電極、ゲート酸化膜、半導体膜、ソース・ドレイン電極等が形成される。その後、表示素子の他の構成要素が基板上に順次形成される。例えば基板上に有機EL素子を形成する場合には、発光層や陽極、陰極、電気回路などが基板上に順次形成される。
これらの構成要素は、例えばマスクを介した露光光で基板を露光する露光装置などを用いて、例えばフォトリソグラフィ法を用いて形成される場合がある。
【0005】
露光装置のマスクの一例として、例えば円筒型のマスクが知られている。このような円筒型マスクは、パターンを有する回転体を有している。この回転体は、例えば円筒形状又は円柱形状に形成されており、その円筒面上にパターンが形成されている。
円筒型のマスクを用いることにより、ステージを往復運動させたり、マスクを保持する複数のステージを用いたりする必要が無く、コストを低減することができる。また、被露光体を一方向に移動させることで被露光体上の複数箇所にパターンを転写することができるため、ステージの加減速の回数を低減させることができる。その結果として、露光精度を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2006/100868号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の露光処理において円筒面上のパターン像を平面である基板上に投影するためには、像面を補正するための光学設計が必要になり、構造が複雑になるという問題が生じる。
【0008】
本発明の態様は、構造の複雑化を防止できる円筒マスク作製方法、露光方法、及びパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様に従えば、所定の軸線上に中心点が設けられる所定の曲率半径の球面の一部を成すと共に、前記軸線回りに帯状に形成される部分球面となる外周面にパターンが形成された円筒マスクを作製する円筒マスク作製方法であって、前記曲率半径に対応する大きさの負のペッツバール和を有する投影光学系の物面側に原版となるパターンを配置し、前記原版となる前記パターンを前記物面に沿って一次元に移動させることと、前記円筒マスクとなる円筒体の前記部分球面となる外周面を、前記投影光学系の像面側に配置し、前記パターンの一次元の移動の速度に対応した速度で前記円筒体を前記軸線回りに回転させて、前記パターンを前記円筒体の前記部分球面となる外周面に転写することと、を含む円筒マスク作製方法が提供される。
【0010】
本発明の第2の態様に従えば、本発明の第1の態様の円筒マスク作製方法によって作製された前記円筒マスクを、前記曲率半径に対応する大きさの負のペッツバール和を有する投影光学系の物面側に配置し、前記所定の軸線の回りに回転させることと、前記円筒マスクのパターンが露光される基板を前記投影光学系の像面側に配置し、前記円筒マスクの回転速度に対応した速度で前記基板を一次元に移動させることと、を含む露光方法が提供される。
【0011】
本発明の第3の態様に従えば、マスクのパターンを基板上に投影露光する露光方法であって、所定の軸線上に中心点が設けられる所定の曲率半径の球面の一部を成すと共に、前記軸線回りに帯状に形成される部分球面となる外周面にパターンが形成されたマスクを、前記曲率半径に対応する大きさの負のペッツバール和を有する投影光学系の物面側に配置し、前記所定の軸線の回りに回転させることと、前記基板を前記投影光学系の像面側に配置し、前記マスクの回転速度に対応した速度で移動させることと、を含む露光方法が提供される。
【0012】
本発明の第4の態様に従えば、基板上にマスクのパターンの露光光による像を投影露光し、前記基板上に電子デバイス用のパターンを形成するパターン形成方法であって、所定の軸線上に中心点が設けられる所定の曲率半径の球面の一部を成すと共に、前記軸線回りに帯状に形成される部分球面となる外周面にパターンが形成されたマスクを、前記曲率半径に対応する大きさの負のペッツバール和を有する投影光学系の物面側に配置し、前記所定の軸線の回りに回転させることと、現像を伴う感光剤、露光光によって撥液性と親液性との状態が変化する感光性SAM剤、及び露光光によってメッキ還元能が発現する材料のいずれか1つが表面に塗布された基板を、前記投影光学系の像面側に配置し、前記マスクの回転位置に対応して移動させることと、を含むパターン形成方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の態様では、構造の複雑化を防止できる円筒マスク作製方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る基板処理装置の構成を示す図。
図2】露光装置の概略構成を示す図。
図3】マスクを−X側から視た正面図。
図4】投影光学系の諸元の値を示す図。
図5】非球面に形成される面番号毎の非球面データを示す図。
図6】第2実施形態に係る露光装置の概略構成を示す図。
図7】第2実施形態に係る投影光学系の諸元の値を示す図。
図8】第2実施形態に係る非球面に形成される面番号毎の非球面データを示す図。
図9】第3実施形態に係る露光装置の概略構成を示す図。
図10】第3実施形態に係る投影光学系の諸元の値を示す図。
図11】第3実施形態に係る非球面に形成される面番号毎の非球面データを示す図。
図12】マスクユニットを有する露光装置の概略構成を示す図。
図13】マイクロデバイスの製造工程の一例を説明するためのフローチャート。
図14】本実施形態に係るマスクを作成する方法の一例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のマスク、マスクユニット、露光装置、基板処理装置、及びデバイス製造方法の実施の形態を、図1から図14を参照して説明する。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る基板処理装置FPAの構成を示す図である。
図1に示すように、基板処理装置FPAは、シート基板(例えば、帯状のフィルム部材)FBを供給する基板供給部SU、シート基板FBの表面(被処理面)に対して処理を行う基板処理部PR、シート基板FBを回収する基板回収部CL、及び、これらの各部を制御する制御部CONTを有している。基板処理装置FPAは、例えば工場などに設置される。
【0017】
以下、基板処理装置FPAの説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。
XYZ直交座標系のうちシート基板FBの搬送方向(シート基板FBの長手方向)をX軸方向とし、シート基板FBの搬送方向と直交する方向(シート基板FBの短手方向、又はシート基板FBの幅方向)をY軸方向とし、X軸方向及びY軸方向のそれぞれと直交する方向をZ軸方向とする。
【0018】
基板処理装置FPAは、基板供給部SUからシート基板FBが送り出されてから、基板回収部CLでシート基板FBを回収するまでの間に、シート基板FBの表面に各種処理を実行するロール・トゥ・ロール方式(以下、単に「ロール方式」と表記する)の装置である。
基板処理装置FPAは、シート基板FB上に例えば有機EL素子、液晶表示素子等の表示素子(電子デバイス)を形成する場合に用いることができる。勿論、これらの素子以外の素子を形成する場合において基板処理装置FPAを用いても構わない。
【0019】
基板処理装置FPAにおいて処理対象となるシート基板FBとしては、例えば樹脂フィルムやステンレス鋼などの箔(フォイル)を用いることができる。
例えば、樹脂フィルムは、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレンビニル共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、などの材料を用いることができる。
【0020】
シート基板FBのY方向(短尺方向)の寸法は、例えば1m〜2m程度に形成されており、X方向(長尺方向)の寸法は、例えば10m以上に形成されている。
勿論、この寸法は一例に過ぎず、これに限られることは無い。例えばシート基板FBのY方向の寸法が1m又は50cm以下であっても構わないし、2m以上であっても構わない。また、シート基板FBのX方向の寸法が10m以下であっても構わない。
【0021】
シート基板FBは、例えば可撓性を有するように形成されている。ここで可撓性とは、例えば基板に少なくとも自重程度の所定の力を加えても線断したり破断したりすることはなく、その基板を撓めることが可能な性質をいう。また、例えば上記所定の力によって屈曲する性質も可撓性に含まれる。また、上記可撓性は、基板の材質、大きさ、厚さ、又は温度などの環境、等に応じて変わる。
なお、シート基板FBとしては、1枚の帯状の基板を用いても構わないが、複数の単位基板を接続して帯状に形成される構成としても構わない。
【0022】
シート基板FBは、比較的高温(例えば200℃程度)の熱を受けても寸法が実質的に変わらない(熱変形が小さい)ように熱膨張係数を小さくすることができる。例えば、無機フィラーを樹脂フィルムに混合して熱膨張係数を小さくすることができる。無機フィラーの例としては、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、酸化ケイ素などが挙げられる。
【0023】
基板供給部SUは、例えばロール状に巻かれたシート基板FBを基板処理部PRへ送り出して供給する。基板供給部SUには、例えばシート基板FBを巻きつける軸部や、その軸部を回転させる回転駆動源などが設けられている。この他、例えばロール状に巻かれた状態のシート基板FBを覆うカバー部などが設けられた構成であっても構わない。
【0024】
基板回収部CLは、基板処理部PRからのシート基板FBを例えばロール状に巻きとって回収する。基板回収部CLには、基板供給部SUと同様に、シート基板FBを巻きつけるための軸部や、その軸部を回転させる回転駆動源、回収したシート基板FBを覆うカバー部などが設けられている。
なお、基板処理部PRにおいてシート基板FBが例えばパネル状に切断される場合などには、例えばシート基板FBを重ねた状態に回収するなど、ロール状に巻いた状態とは異なる状態でシート基板FBを回収する構成であっても構わない。
【0025】
基板処理部PRは、基板供給部SUから供給されるシート基板FBを基板回収部CLへ搬送すると共に、搬送の過程でシート基板FBの被処理面Fpに対して処理を行う。基板処理部PRは、例えば処理装置60、搬送装置70及びアライメント装置80などを有している。
【0026】
処理装置60は、シート基板FBの被処理面Fpに対して例えば有機EL素子を形成するための各種装置を有している。このような装置としては、例えば被処理面Fp上に隔壁を形成するための隔壁形成装置、有機EL素子を駆動するための電極を形成するための電極形成装置、発光層を形成するための発光層形成装置などが挙げられる。
より具体的には、液滴塗布装置(例えばインクジェット型塗布装置、スピンコート型塗布装置など)、蒸着装置、スパッタリング装置、大気圧CVD装置、ミストデポジション装置、無電解メッキ装置などの成膜装置や、露光装置、現像装置、表面改質装置、洗浄装置などが挙げられる。これらの各装置は、例えばシート基板FBの搬送経路上に適宜設けられている。
本実施形態では、処理装置60を構成する各種装置のうち、露光装置を主体に説明する。
【0027】
搬送装置70は、基板処理部PR内において例えばシート基板FBを基板回収部CL側へ搬送するローラー装置Rを有している。ローラー装置Rは、シート基板FBの搬送経路に沿って例えば複数設けられている。複数のローラー装置Rのうち少なくとも一部のローラー装置Rには、駆動機構(不図示)が取り付けられている。
このようなローラー装置Rが回転することにより、シート基板FBがX軸方向に搬送される。複数のローラー装置Rのうち例えば一部のローラー装置Rが搬送方向と直交する方向に移動可能に設けられた構成であっても構わない。
【0028】
アライメント装置80は、シート基板FBに対してアライメント動作を行う。アライメント装置80は、シート基板FBの位置状態を検出するアライメントカメラ81と、アライメントカメラ81の検出結果に基づいてシート基板FBをX方向、Y方向、Z方向、θX方向、θY方向、θZ方向に微調整する調整装置82とを有している。
【0029】
アライメントカメラ81は、例えばシート基板FBに形成されたアライメントマークなどを検出し、検出結果を制御部CONTに送信する。制御部CONTは、この検出結果に基づいてシート基板の位置情報を求め、この位置情報に基づいて調整装置82による調整量を制御する。
【0030】
図2は、処理装置60として用いられる露光装置EXの概略構成を示す図である。
図2に示すように、露光装置EXは、マスクMに形成されたパターンPmの像をシート基板FBに投影する装置である。露光装置EXは、マスクMに露光光を照明する照明光学系IUと、マスクMを回転軸(軸部)MJ周りに回転自在に支持する支持装置MSTと、マスクMに形成されたパターンPmの像を投影する投影光学系PUとを有している。
【0031】
図3は、マスクMを−X側から視た正面図である。
図2及び図3に示されるように、本実施形態におけるマスクMは、Y軸と平行な中心軸線(所定の軸線)Jを中心とする実質的円盤状に形成されている。マスクMの外周面は、上記中心軸線J上に中心点が設けられた球面の一部を成す部分球面Maが含まれている。球面の中心点は、上記中心軸線Jに沿った方向に関して、部分球面Maの実質的中央部に位置している。
パターンPmは、部分球面Maのうち、周方向で非パターン領域PNを除いたパターン領域PAに形成されている。パターンPmとしては、球面Maに直接形成される構成や、パターンPmが形成されたシートを球面Maに貼設する構成等を採用することができる。
パターン領域PAに形成されるパターンPmは、露光用の照明光を反射する材料と、その照明光を吸収する材料とによってパターニングされている。パターンPmは、例えば、液晶や有機ELによる表示パネル部の画素電極、TFT、配線等を形成する為の回路パターン、モバイル端末機器用の表示パネル部と周辺回路部とを形成する為の回路パターン等として描画されている。
【0032】
また、この部分球面Maは、上記中心軸線J周りに帯状に形成されており、上記球面の中心点を通り中心軸線Jと直交する軸交線と交差するとともに、上記軸交線と部分球面Maとの交点を含み部分球面Maに接する接平面が上記中心軸線Jと実質的に平行になるように形成されている。
【0033】
回転軸MJは、マスクMのY方向両側に、上記中心軸線Jと軸線を合致させて(軸中心として)突設されている。また、回転軸MJは、支持装置MSTによって、マスクMの外周面とともに回転自在に保持されるととともに、回転駆動装置(回転装置)RDに接続されて回転駆動が付与される。回転駆動装置RDの駆動(すなわち、マスクMの回転駆動)は制御部CONTにより制御される。
【0034】
照明光学系IUは、マスクMに露光光ELを照明する。照明光学系IUは、光源部20、平面反射鏡M1、投影光学系PUの一部を構成する光学素子(第1部分光学系)L11及び光学素子L12、凹面鏡L13、平面反射鏡M2を有している。
光源部20としては、水銀ランプやレーザ発生装置等の光源装置を設置する構成や、フライアイ光学素子等の2次光源を形成する素子を設置する構成を採ることができる。
【0035】
投影光学系PUは、マスクMに形成されたパターンPmの像をシート基板FBに投影する。投影光学系PUは、露光光ELの進行方向に沿って順次配置された、上記光学素子L11、L12、凹面鏡L13、平面反射鏡M2、及び光学素子L14、開口絞り(光路制限部材)AS、光学素子L15〜L19、及び光学素子(第2部分光学系)L20を有している。
開口絞りASは、投影光学系PUの開口数を規定する。開口絞りASは、投影光学系PUの射出瞳(または入射瞳)と共役な面である瞳面の位置に配置されている。また、凹面鏡L13の反射面も投影光学系PUにおける瞳面の位置に配置されている。
【0036】
光源部20からの露光光ELは、平面反射鏡M1及び凹面鏡L13で順次反射した後に、光学素子L12、L11を順次透過してマスクMの部分球面Maに形成されたパターンPmを照明する。
マスクM(部分球面Ma)で反射した露光光ELは、光学素子L11で受光(透過)された後に、光学素子L12を透過して凹面鏡L13及び平面反射鏡M2で反射する。平面反射鏡M2で反射した露光光ELは、光学素子L14〜L19を順次透過した後に、光学素子L20によりシート基板FBに投影される。
【0037】
図4に、投影光学系PUの諸元の値を示す。
図4において、左端には露光光ELが、上記光学素子L11、L12、凹面鏡L13、平面反射鏡M2、及び光学素子L14、開口絞りAS、光学素子L15〜L20において順次入射または出射する各光学面の面番号が示されている。
また、rは、各光学面の曲率半径を示しており、dは各光学面間の面間隔を示している。そして、rの列には各光学面の近軸曲率半径が示されており、dの列には各面間隔が示されている。
【0038】
図5には、非球面に形成される面番号毎の非球面データが示されている。
図5中、Kはコニック係数、A〜Fは4次、6次、8次、…の非球面係数である。
なお、図4及び図5において、近軸曲率半径rの符号は物体面側(パターンPm面側)に向けて凸となる場合を正とし、面間隔dは光学面の前後で符号が反転するものとする。
【0039】
投影光学系PUは、例えば波長(露光波長)が365nm、縮小倍率が1倍(等倍)、物体側の開口数NAが0.055であり、上記の光学素子L11、L12、凹面鏡L13、平面反射鏡M2、及び光学素子L14、開口絞りAS、光学素子L15〜L20により設定される負のペッツバール和を有している。
ここで、複数の光学素子から構成される光学系において、i番目の光学面の焦点距離をfi、光学面の前後の屈折率をni、ni’とすると、ペッツバール和Psumは以下の式で表される。
【0040】
【数1】
【0041】
このとき、像面の曲率半径をR0とすると、ペッツバール和Psumは以下になる。
Psum=−1/R0
例えば、凹面鏡L13の場合、正のパワーを有しペッツバール和は負の値となる。図4に示すように、曲率半径riが負の値である凹面鏡L13の焦点距離fiは以下の式で表される。
【0042】
【数2】
【0043】
また、凹面鏡L13のペッツバール和Psumは以下の式で表される。
【0044】
【数3】
【0045】
そして、本実施形態では、投影光学系PUにおけるペッツバール和の大きさは、パターンPmが形成された部分球面Maの曲率半径の逆数(すなわち曲率)に実質的に等しく設定される。具体的には、図4に示したように、部分球面Maの曲率半径が500mmの場合には、投影光学系PUにおけるペッツバール和の大きさは、−0.00199(≒−1/500)となっている。
これにより、部分球面Maに形成されたパターンPmの像は、実質的平面状でシート基板FBの被処理面Fpに投影される。
【0046】
上記のように構成された基板処理装置FPAは、制御部CONTの制御により、いわゆるロール・トゥ・ロール方式(以下、ロール方式と表記する)によって、例えば表示基板1を製造する。以下、上記構成の基板処理装置FPAを用いて表示基板1を製造する工程を説明する。
【0047】
まず、基板供給部SUに設けられるローラーに帯状のシート基板FBを巻き付けた状態にする。制御部CONTは、この状態から基板供給部SUからこのシート基板FBが送り出されるようにし、送り出されたシート基板FBを基板回収部CLのローラーで巻き取らせてシート基板FBを搬送させる。
【0048】
制御部CONTは、シート基板FBが送り出されてから巻き取られるまでの間に、基板処理部PRの搬送装置70によってシート基板FBを基板処理部PR内で適宜搬送させつつ、処理装置60によって表示基板1の構成要素をシート基板FB上に順次形成させる。
処理装置60による処理を行わせる際、制御部CONTは、アライメント装置80にシート基板FBの位置合わせを行わせる。
【0049】
制御部CONTは、シート基板FBが送り出されてから巻き取られるまでの間に、基板処理部PRの搬送装置70によってシート基板FBを基板処理部PR内で適宜搬送させつつ、処理装置60における露光装置EXに、マスクMのパターンPmをシート基板FBの被処理面Fpに投影させる。
【0050】
このとき、制御部CONTは、回転駆動装置RDの駆動及びローラー装置Rの駆動を制御して、マスクMの回転軸MJ周りの回転とシート基板FBとを同期駆動する。
より詳細には、制御部CONTは、マスクMが有する部分球面Maの回転軸MJ回りの移動速度に対する、シート基板FBの移動速度(搬送速度)の比が、投影光学系PUの投影倍率(本実施形態では等倍)と等しくなるように駆動制御を行う。
【0051】
これにより、照明光学系IUで照明された回転するマスクMのパターンPmの像は、投影光学系PUを介して、投影倍率に応じた大きさで逐次シート基板FB上に投影される。
【0052】
このように、本実施形態では、球面の一部を成す部分球面にパターンPmが形成されたマスクMを用いるため、像面を補正するための光学設計が不要になり、構造の複雑化を防止できる。
特に、本実施形態では、凹面鏡L13を用いることにより、容易に負のペッツバール和を有する投影光学系PUを実現することができ、簡単な構造で容易にシート基板FBにパターンPmの像を投影することが可能である。
【0053】
(第2実施形態)
続いて、露光装置EXの第2実施形態について、図6から図8を参照して説明する。
第2実施形態では、照明光学系IU及び投影光学系PUの構成が上記第1実施形態と相違している。このため、以下、照明光学系IU及び投影光学系PUについて説明する。
なお、これらの図において、図1から図5に示す第1実施形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
【0054】
本実施形態における照明光学系IUは、図6に示すように、光源部20、露光光ELの光路に沿って順次配置されたビームスプリッタBS、光学素子L25、L24、開口絞りAS、光学素子L23、L22、L21を備えている。これらビームスプリッタBS、光学素子L25、L24、開口絞りAS、光学素子L23、L22、L21は、後述するように、投影光学系PUの一部を構成している。
【0055】
投影光学系PUは、露光光ELの光路に沿って順次配置された上記の光学素子(第1部分光学系)L21、光学素子L22〜L23、開口絞りAS、光学素子L24、L25、ビームスプリッタBS、凹面鏡L26、平面反射鏡M21、光学素子L27〜L29、及び光学素子(第2部分光学系)L30を備えている。凹面鏡L26は、投影光学系PUにおける瞳面の位置に配置されている。
【0056】
光源部20からの露光光ELは、照明光学系IUとしてのビームスプリッタBSで入射して反射した後に、光学素子L25、L24、開口絞りAS、光学素子L23、L22、L21を介して、マスクMの部分球面Maに形成されたパターンPmを照明する。
マスクM(部分球面Ma)で反射した露光光ELは、投影光学系PUとしての光学素子L21〜L23、開口絞りAS、光学素子L24、L25を介してビームスプリッタBSに入射する。
ビームスプリッタBSに入射した露光光ELは、ビームスプリッタBSを透過した後に凹面鏡L26で反射して再度ビームスプリッタBS、光学素子L25、L24を順次透過した後に平面反射鏡M21で反射する。
平面反射鏡M21で反射した露光光ELは、光学素子L27〜L30を順次透過して、マスクMのパターンPmの像をシート基板FBに投影する。
【0057】
図7に、本実施形態における投影光学系PUの諸元の値を示す。
図7において、左端には露光光ELが、上記光学素子L21〜L23、開口絞りAS、光学素子L24、L25、ビームスプリッタBS、凹面鏡L26、光学素子L27〜L30において順次入射または出射する各光学面の面番号が示されている。
また、rは、各光学面の曲率半径を示しており、dは各光学面間の面間隔を示している。そして、rの列には各光学面の近軸曲率半径が示されており、dの列には各面間隔が示されている。
【0058】
図8には、非球面に形成される面番号毎の非球面データが示されている。
図8中、Kはコニック係数、A〜Fは4次、6次、8次、…の非球面係数である。
なお、図7及び図8において、近軸曲率半径rの符号は物体面側(パターンPm面側)に向けて凸となる場合を正とし、面間隔dは光学面の前後で符号が反転するものとしている。
【0059】
投影光学系PUは、例えば波長(露光波長)が365nm、投影倍率が2倍(拡大)、物体側の開口数NAが0.054である。上記の光学素子L21〜L23、開口絞りAS、光学素子L24、L25、ビームスプリッタBS、凹面鏡L26、光学素子L27〜L30により設定されるペッツバール和の大きさは、−0.00200(−1/500)となっている。
【0060】
従って、本実施形態でも、球面の一部を成す部分球面にパターンPmが形成されたマスクMを用い、また負のペッツバール和を有する投影光学系PUを用いることにより、構造の複雑化を防止しつつ、部分球面Maから平面(シート基板FBの被処理面Fp)に良好な光学性能で投影することができる。
さらに、本実施形態によれば、照明光学系IUと投影光学系PUとの間で光学素子を共用しているため、装置の小型化を実現することができる。
【0061】
(第3実施形態)
続いて、露光装置EXの第3実施形態について、図9から図11を参照して説明する。
第3実施形態では、照明光学系IU及び投影光学系PUの構成が上記第1実施形態と相違している。このため、以下、照明光学系IU及び投影光学系PUについて説明する。
なお、これらの図において、図1から図5に示す第1実施形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
【0062】
本実施形態における照明光学系IUは、図9に示すように、露光光ELの光路に沿って順次配置された凸面鏡L34、光学素子L33、L32、凹面鏡L31、平面反射鏡M31を備えている。これら凸面鏡L34、光学素子L33、L32、凹面鏡L31、平面反射鏡M31は、後述するように、投影光学系PUの一部を構成している。
【0063】
凸面鏡L34は半透過性を有しており、光学素子L33と対向する面と逆側の面から入射した露光光ELを光学素子L33に向けて出射させる。
光学素子L33に入射した露光光ELは、光学素子L33、L32を透過した後に凹面鏡31及び平面反射鏡M31で反射し、マスクMの中心軸線Jに向けて進行してマスクMの部分球面Maに形成されたパターンPmを照明する。
【0064】
投影光学系PUは、露光光ELの光路に沿って順次配置された上述の平面反射鏡(第1部分光学系)M31、凹面鏡L31、光学素子L32、L33、凸面鏡L34に加えて、凹面鏡L35、平面反射鏡M32、開口絞りAS、光学素子(第2部分光学系)L36を備えている。
凹面鏡L31、L35は、投影光学系PUにおける瞳面の位置に配置されている。凹面鏡L35は、開口絞りASの近傍に配置されている。
【0065】
マスクM(部分球面Ma)で反射した露光光ELは、投影光学系PUとしての平面反射鏡M31、凹面鏡L31で反射した後に、光学素子L32、L33を順次透過して凸面鏡L34で反射する。
凸面鏡L34で反射した露光光ELは、再度、光学素子L33、L32を順次透過した後に凹面鏡L35及び平面反射鏡M32で反射する。
平面反射鏡M32で反射した露光光ELは、光学素子L36を透過して、マスクMのパターンPmの像をシート基板FBに投影する。
【0066】
図10に、本実施形態における投影光学系PUの諸元の値を示す。
図10において、左端には露光光ELが、上記凹面鏡L31、光学素子L32、L33、凸面鏡L34、凹面鏡L35、開口絞りAS、光学素子L36において順次入射または出射する各光学面の面番号が示されている。
また、rは、各光学面の曲率半径を示しており、dは各光学面間の面間隔を示している。そして、rの列には各光学面の近軸曲率半径が示されており、dの列には各面間隔が示されている。
【0067】
図11には、非球面に形成される面番号毎の非球面データが示されている。
図11中、Kはコニック係数、A〜Fは4次、6次、8次、…の非球面係数である。
なお、図10及び図11において、近軸曲率半径rの符号は物体面側(パターンPm面側)に向けて凸となる場合を正とし、面間隔dは光学面の前後で符号が反転するものとしている。
【0068】
投影光学系PUは、例えば波長(露光波長)が365nm、投影倍率が1.25倍(拡大)、物体側の開口数NAが0.055であり、上記の凹面鏡L31、光学素子L32、L33、凸面鏡L34、凹面鏡L35、開口絞りAS、光学素子L36により設定されるペッツバール和の大きさは、−0.00175(≒−1/560)となっている。
【0069】
従って、本実施形態でも、球面の一部を成す部分球面にパターンPmが形成されたマスクMを用い、また負のペッツバール和を有する投影光学系PUを用いることにより、構造の複雑化を防止しつつ、部分球面Maから平面(シート基板FBの被処理面Fp)に良好な光学性能で投影することができる。
【0070】
(第4実施形態)
続いて、露光装置EXの第4実施形態について、図12を参照して説明する。
第4実施形態における露光装置EXにおいては、上述したマスクMが軸線を互いに平行にして複数配置されたマスクユニットが設けられ、各マスクに対応して投影光学系が設けられる構成となっている。
なお、これらの図において、図1から図5に示す第1実施形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
【0071】
図12に示すように、本実施形態における露光装置EXは、それぞれ上述した部分球面Maを有する複数(ここでは3つ)のマスクM1〜M3が設けられたマスクユニットMUを備えている。マスクM1〜M3は、Y方向に間隔をあけて配置されている。
各マスクM1〜M3における中心軸線JはY軸方向に延在し、互いに平行に配置される。本実施形態では、マスクM1〜M3は、Y軸方向に延在し部分球面Maとともに共通軸線を軸中心とし、且つこの共通軸線周りに回転可能な共通回転軸MJ’を備えている。各マスクM1〜M3における中心軸線Jは共通回転軸MJ’の共通軸線と同軸にして配置される。
【0072】
各マスクM1〜M3のそれぞれに対応して、各マスクM1〜M3のパターンPm1〜Pm3の像をシート基板FBに投影する上記実施形態における投影光学系PUと同様の構成を有し、各マスクM1〜M3の部分球面Maの曲率半径に対応する大きさの負のペッツバール和を有する投影光学系PU1〜PU3が設けられている。
各投影光学系PU1〜PU3が投影倍率に応じてシート基板FB上にそれぞれ投影する投影領域PA1〜PA3は、Y方向に沿って隣接配置される。なお、隣接配置とは、隣り合う投影領域の端縁同士が接する構成のみならず、隣り合う投影領域の端縁同士の一部が互いに重なることも含む概念である。
【0073】
上記構成の露光装置EXでは、共通回転軸MJ’の回転に応じてマスクM1〜M3の部分球面Maが一体的に回転し、露光光ELで照明されたマスクM1〜M3のパターンPm1〜Pm3の像は、投影光学系PU1〜PU3を介して投影領域PA1〜PA3にそれぞれ投影される。
【0074】
このとき、例えばマスクM1〜M3に形成されたパターンPm1〜Pm3が同一である場合には、シート基板FBには同一のパターンが複数形成されることになり、所謂複数個取りの製造が可能になる。
一方、例えばマスクM1〜M3に形成されたパターンPm1〜Pm3が合成されて一つのパターンを形成する場合には、シート基板FBには大型で大面積のパターンを形成することが可能になる。
【0075】
なお、上記実施形態におけるマスクユニットMUでは、共通軸部MJ’により3つのマスクM1〜M3を同軸で設け、また投影光学系PU1〜PU3についてもY方向に沿って配置する構成とした。
一方、例えばスペースの制約により3つの投影光学系PU1〜PU3を共通軸線に沿って配置することが困難な場合には、マスクM2及び投影光学系PU2をマスクM1、M3及び投影光学系PU1、PU3に対してX方向に離間させた、いわゆる千鳥状に配置する構成としてもよい。
【0076】
また、上記実施形態で示したマスクユニットMUが備えるマスクM1〜M3の数、及び投影光学系PUの数は一例であり、2つのマスクを備える構成や4つ以上のマスクを備える構成であってもよい。
この場合においても、例えばスペースの制約により複数の投影光学系を共通軸線に沿って配置することが困難な場合には、搬送方向と直交する方向(Y方向)で隣り合うマスク及び投影光学系については搬送方向(X方向)に離間させる、千鳥状に配置する構成とすればよい。
【0077】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0078】
上述の実施形態の露光装置は、本願請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。
これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。
【0079】
各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程がある。
各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことができる。
【0080】
半導体デバイス等のマイクロデバイスは、図13に示すように、マイクロデバイスの機能及び性能設計を行うステップ201、この設計ステップに基づいたマスク(レチクル)を製作するステップ202、デバイスの基材である基板(長尺のシート状のフレキシブル基板)を製造するステップ203、上述の実施形態に従って、マスクのパターンを用いて露光光で基板を露光すること、及び露光された基板(感光剤)を現像することを含む基板処理(露光処理)を含む基板処理ステップ204、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程などの加工プロセスを含む)205、検査ステップ206等を経て製造される。
なお、ステップ204では、感光剤を現像することで、マスクのパターンに対応する露光パターン層(現像された感光剤の層)を形成し、この露光パターン層を介して基板を加工することが含まれる。
【0081】
また、近年、エコなプロセスとして、感光剤の現像を不要とするアディティブなプロセスが望まれてきている。
その場合、基板処理ステップ204は、紫外線の露光光の照射によって高い撥液性を示す状態から親液性を示す状態に変化させる感光性SAM剤を基板の表面に塗布する工程、上述の実施形態に従って、マスクMのパターンPmを用いて露光光で感光性SAM剤が塗布された基板を露光する工程、その露光によって基板上で親液性が高くなった部分に、印刷方式やインクジェット方式等により、配線用の導電性インクやペースト、或いはTFT用の半導体材料の溶液等を選択的に塗布する工程、等で構成される。
【0082】
さらに、露光光の照射を受けた部分にメッキ還元能が発現するような材料も知られている。そのような材料を用いた場合は、露光された基板をそのまま無電解メッキ液(パラジウム等のイオンを含む)に漬けることで、配線用の金属層を形成することができる。
【0083】
ところで、図13中のマスクを製作するステップ202では、先の各実施形態で説明した投影光学系PUを使って、マスターとなる平面レチクルのパターンを、マスクMとなる球面状の外周面を有する円筒体上に容易に転写することができる。そこで、先の図6に示した露光装置の投影光学系PUを使って、球面状の円筒マスクMを作製する一例を、図14を用いて説明する。
【0084】
図14に示した投影光学系PUは、図6に示した投影光学系PUの物面と像面の関係を逆にしたもので、図6において被露光対象である基板FBが位置する像面側に、原版となる平面レチクルRTが配置され、図6においてマスクMが位置する物面側に、マスクMとなる球状表面を有する円筒体M’が配置される。
この円筒体M’の球状の外周面には、フォトレジストが一様に塗布され、平面レチクルRTから投影光学系PUを介して投影されるパターンPm’によって露光される。本実施形態では、パターンPm’のベストフォーカス面(パターン像面)は、円筒体M’の球状の外周面に沿って、図14中のY軸とZ軸の2方向の各々に湾曲したものとなる。
【0085】
図14において、少なくともX方向に一次元移動するステージRSTは、レチクルRTのパターン面MpがXY面と平行になるようにレチクルRTを支持する。レチクルRTの上方には、Y軸方向に延びたスリット状(又は長方形状)の照明光IBをパターン面Mpに向けて照射する照明光学系ILUが設けられる。
【0086】
このように、本実施形態では、図6で説明した投影光学系PUを、そのまま、或いは若干変更して使うことで、平面のレチクルRTから球面状の円筒マスクMを作製することができる。
図14では、図6の投影光学系PUを使う例を説明したが、他の図2図9に示した投影光学系PUを使っても、同様に平面のレチクルRTから球面状の円筒マスクMを作製することができる。
【符号の説明】
【0087】
70…搬送装置、 AS…開口絞り(光路制限部材)、 CONT…制御部、 FPA…基板処理装置、 FB…シート基板(基板)、 J…中心軸線(所定の軸線)、 L11、L21…光学素子(第1部分光学系)、 M31…平面反射鏡(第1部分光学系)、 L13、L26、L31、L35…凹面鏡、 L20、L30、L36…光学素子(第2部分光学系)、 M…マスク、 Ma…部分球面、 MJ…回転軸(軸部)、 MST…支持装置、 Pm…パターン、 RD…回転駆動装置(回転装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14