特許第6048608号(P6048608)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048608
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】形状測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/20 20060101AFI20161212BHJP
   G01B 5/28 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   G01B5/20 R
   G01B5/28 102
【請求項の数】3
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-100699(P2016-100699)
(22)【出願日】2016年5月19日
(62)【分割の表示】特願2015-72601(P2015-72601)の分割
【原出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2016-194519(P2016-194519A)
(43)【公開日】2016年11月17日
【審査請求日】2016年5月20日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】関本 倫裕
(72)【発明者】
【氏名】高梨 陵
(72)【発明者】
【氏名】木村 浩章
(72)【発明者】
【氏名】増田 光
【審査官】 ▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−137339(JP,A)
【文献】 特開2009−115527(JP,A)
【文献】 特開平11−063971(JP,A)
【文献】 特開2001−033233(JP,A)
【文献】 特許第4884091(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00− 5/30
G01B 7/00− 7/34
G01B 11/00−11/30
G01B 21/00−21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状又は円筒状の測定対象物を測定する形状測定装置において、
前記測定対象物を周方向に相対的に回転する回転移動部と、
前記回転する前記測定対象物の真円度測定を行う第1測定部と、
外乱により生じた外乱信号の発生を判断するために、前記第1測定部に対して前記周方向の反対側の位置において、前記回転する前記測定対象物の表面粗さ測定を行う第2測定部と、
前記真円度測定の測定データと前記表面粗さ測定の測定データとの比較に基づいて、外乱により生じた外乱信号の発生を判断する判断部と、を備え、
前記第1測定部による前記真円度測定と、前記第2測定部による前記表面粗さ測定とを同時に行う形状測定装置。
【請求項2】
前記第1測定部は、前記測定対象物に第1測定子を介して接触した状態で前記測定対象物の周方向に相対的に回転移動しながら、前記第1測定子の変位量を検出した検出信号に基づいて前記真円度測定を行い、
前記第2測定部は、前記第1測定子と前記測定対象物との接触位置に対して前記周方向の反対側の位置において、第2測定子を介して前記測定対象物に接触した状態で前記周方向に相対的に回転移動しながら、前記第2測定子の変位量を検出した検出信号に基づいて前記表面粗さ測定を行う請求項1に記載の形状測定装置。
【請求項3】
前記真円度測定の測定データから導いたうねり成分を、前記表面粗さ測定の測定データから取り除くことにより、前記測定対象物の表面粗さを示す粗さ曲線を求める演算部を備える請求項1又は2に記載の形状測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は形状測定装置に係り、特に真円度測定と表面粗さ測定とを行うことができる形状測定装置及び形状測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、円柱状又は円筒状のワークの精密測定では、真円度測定と表面粗さ測定とが行われる場合があり、それらの真円度測定と表面粗さ測定とは通常では別の測定機により実施される。
【0003】
一方、特許文献1には、スペース、コスト等の低減のため、真円度測定と表面粗さ測定のときとで測定データをサンプリングする間隔を変更することで、一台の測定機で両方の測定を行えるようすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4884091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、真円度測定と表面粗さ測定とは測定としては完全に独立したものとなっており、各々の測定により得られたデータを相互に有効利用することについては開示されていない。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、真円度測定のデータと表面粗さ測定のデータとに各々により得られたデータを相互に有効利用し、測定精度の向上等を図ることができる形状測定装置及び形状測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一の態様に係る形状測定装置は、円柱状又は円筒状の測定対象物を測定する形状測定装置において、測定対象物を周方向に相対的に回転する回転移動部と、回転する測定対象物の真円度測定を行う第1測定部と、回転する測定対象物の表面粗さ測定を行う第2測定部と、を備え、第1測定部による真円度測定と、第2測定部による表面粗さ測定とを同時に行う。
【0008】
本態様によれば、真円度測定と表面粗さ測定とを同時に行うことができるため、測定効率も向上する。
【0009】
本発明の他の態様に係る形状測定装置において、第2測定部は、第1測定部に対して周方向の反対側の位置において、測定対象物の表面粗さ測定を行う。
【0010】
本発明の他の態様に係る形状測定装置において、第1測定部は、測定対象物に第1測定子を介して接触した状態で測定対象物の周方向に相対的に回転移動しながら、第1測定子の変位量を検出した検出信号に基づいて真円度測定を行い、第2測定部は、第1測定子と測定対象物との接触位置に対して周方向の反対側の位置において、第2測定子を介して測定対象物に接触した状態で周方向に相対的に回転移動しながら、第2測定子の変位量を検出した検出信号に基づいて表面粗さ測定を行う。
【0011】
本発明の他の態様に係る形状測定装置において、第1測定部により得られた真円度測定のデータと、第2測定部により得られた表面粗さ測定のデータとを1つのデータファイルにより保存する。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の形状測定方法は、円柱状又は円筒状の測定対象物を測定する形状測定方法において、測定対象物を周方向に相対的に回転する回転移動ステップと、回転する測定対象物の真円度測定を第1測定部により行う第1測定ステップと、回転する測定対象物の表面粗さ測定を第2測定部により行う第2測定ステップと、を有し、第1測定ステップでの真円度測定と、第2測定ステップでの表面粗さ測定とを同時に行う。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、真円度測定と表面粗さ測定とを同時に行うことができるため、真円度測定のデータと表面粗さ測定のデータとに各々により得られたデータを相互に有効利用し、測定精度の向上等を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る真円度測定装置の全体構成を示した斜視図
図2】形状測定装置においてデータ処理等を行うデータ処理部の概略構成を示したブロック図
図3】真円度測定及び表面粗さ測定の一連の測定手順を示したフローチャート
図4】測定範囲の指定の説明に用いた説明図
図5】ワークの断面輪郭曲線のパワースペクトラムを例示した図
図6】RSm値と基準長さとの関係を示した図
図7】Ra値、Rz値と基準長さとの関係を示した図
図8】カットオフ値λcとサンプリング間隔との関係を示した図
図9】測定結果画像の一例を示した図
図10】効果の説明に使用した説明図
図11】効果の説明に使用した説明図
図12】第2の実施の形態の形状測定装置の構成を示した正面図
図13】効果の説明に使用した説明図
図14】効果の説明に使用した説明図
図15】効果の説明に使用した説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0016】
図1は、本発明に係る形状測定装置の全体構成を示した斜視図である。
【0017】
同図に示す形状測定装置1は、真円度を測定する周知の真円度測定装置の構成を有する。形状測定装置1において、下端部には装置全体を支持する台状のベース10が配置され、ベース10の上面には、上下方向(Z軸方向)に沿った回転軸(θ軸)周り方向に回転可能な載物台12が設けられる。この載物台12の上面には、測定対象物となる円柱状又は円筒状のワークWが載置される。また、ワークWは、その中心軸が載物台12の回転軸と同軸上となるように載置される。
【0018】
ベース10の内部には、載物台12に連結されるモータ等を備え、載物台12を回転駆動する回転駆動部11が設けられる。
【0019】
この回転駆動部11により、載物台12に載置されたワークWが、載物台12と共にθ軸周り方向に回転する。
【0020】
なお、載物台12は手動により回転するものであってもよい。また、載物台12は、θ軸に垂直な方向であって、互いに直交する左右方向及び前後方向に対してもつまみの回転操作等によって移動可能なものであってもよい。
【0021】
ベース10の上面側には、コラム14、キャリッジ16、径方向移動アーム18、旋回アーム20、検出器ホルダ22を有する検出器支持機構13を介して検出器24(測定プローブ)が支持される。
【0022】
検出器24は、例えば円筒状の検出器本体24Aの下端から棒状に延びる測定子24B(スタイラス)と、検出器本体24Aの内部に設けられ、測定子24Bの変位量を作動トランス等により検出して電気信号(検出信号)として出力する不図示の変位検出部と、を有する。測定子24Bは、一平面内において測定子24Bの軸線がその軸線に直交する方向(変位方向)に変位可能に検出器本体24Aに支持されると共に、その変位方向のうちの一方の向き(付勢方向)にバネなどにより付勢される。測定時においてはその付勢方向に測定子24Bの先端部(先端球)がワークWの周面に押圧されて当接が維持される。
【0023】
検出器支持機構13について説明すると、ベース10の上面において載物台12の右側には、上下方向に沿って延在するコラム14が立設される。そして、コラム14には、コラム14に沿って上下方向に移動可能なキャリッジ16が支持される。キャリッジ16は、例えばモータの駆動により上下方向に移動するが、つまみの回転操作等によって手動で移動するものであってもよい。
【0024】
このキャリッジ16の上下方向への移動機構により、検出器支持機構13は、検出器24を上下方向の位置を変更可能に支持する。
【0025】
キャリッジ16には、径方向に延びる径方向移動アーム18が径方向に移動可能に支持される。径方向移動アーム18は、例えばモータの駆動により径方向に移動するが、つまみの回転操作等によって手動で移動するものであってもよい。
【0026】
この径方向移動アーム18の径方向への移動機構により、検出器支持機構13は、検出器24の径方向の位置を変更可能に支持する。
【0027】
なお、径方向は、載物台12の回転軸(θ軸)を中心とする径方向(R軸方向)を示し、径方向移動アーム18が移動する方向を左右方向(X軸方向)とする。
【0028】
径方向移動アーム18の左側(載物台12側)の端部には、旋回アーム20の一端(基端)が径方向に沿った旋回軸の周りに旋回可能に連結される。旋回アーム20は、ネジにより径方向移動アーム18に固定されており、つまみ30の回転操作によりネジを緩めることで、旋回アーム20が旋回軸周りに旋回可能となり、旋回アーム20の向きの変更が可能となる。
【0029】
この旋回アーム20の旋回機構により、検出器支持機構13は、検出器24を径方向に沿った旋回軸周りの旋回角度を変更可能に支持する。
【0030】
旋回アーム20の先端部には径方向に延びる検出器ホルダ22の基端部が固定される。
【0031】
検出器ホルダ22の先端部にはつまみ32の回転操作により着脱可能に検出器24が装着される。
【0032】
検出器ホルダ22は、検出器24の先端側(測定子24Bが設けられる側)が旋回アーム20の旋回軸の軸線上に向う方向となるように、かつ、検出器本体24Aの軸線が旋回アーム20の軸線と平行となるように検出器24の基端側を固持する。
【0033】
また、検出器ホルダ22は、検出器24の取付角度、即ち、検出器本体24Aの軸線周りの回転角度を変えて固持することができる。この検出器ホルダ22における検出器24の取付角度の調整機構により、測定子24Bの変位方向及び付勢方向を調整することができる。
【0034】
なお、図1の形状測定装置1は、ワークWが回転することで、検出器24がワークWの周りを相対的に周方向に回転移動するワーク回転型の測定装置であるが、検出器24がワークWの周りを回転移動する検出器回転型の測定装置であってもよい。
【0035】
図2は、上記形状測定装置1においてデータ処理等を行う図1では不図示のデータ処理部50の概略構成を示したブロック図である。
【0036】
形状測定装置1のデータ処理部50は、例えば、パーソナルコンピュータ等の演算処理装置において所定のプログラムの実行により構成され、同図に示すようにデータ取得手段52、データ記憶手段54、真円度算出手段56、表面粗さ算出手段58、測定条件設定手段60、結果情報生成手段62等を有する。また、操作者により各種情報が入力されるキーボード等の入力手段70や操作者に各種情報を出力(表示等)するモニタ等の出力手段72も有する。
【0037】
データ取得手段52は、図1における検出器24と回転駆動部11の回転角度検出手段48(図1では不図示)とに接続され、検出器24からは測定子24Bの変位量を示す変位信号(検出信号)を取り込み、回転角度検出手段48からは載物台12の回転角度を示す位置信号(角度信号)を取り込む。
【0038】
そして、データ取得手段52は、載物台12、即ち、ワークWが回転している際に、回転角度検出器48からの角度信号に基づいて、ワークWが予め決められた角度変化量分の回転が生じたことを検知し、その検知ごとに検出器24からの変位信号(検出信号)の値をA/D変換によりデジタル信号に変換して変位量データとしてサンプリングする。なお、検出器24は測定子24Bを介してワークWの周面に接触しているものとする。
【0039】
これにより、載物台12に載置されたワークWが一定角度を回転する間隔(時間間隔又はその回転角度間隔)をサンプリング間隔として変位量データがサンプリングされ、サンプリングされた変位量データとワークW(載物台12)の回転角度とが対応付けされたデータが測定データとしてデータ記憶手段54に順次記憶させる。
【0040】
なお、ワークW(載物台12)の回転角度とは、ワークWの周方向(中心軸周り方向)の位置を示す。また、載物台12の回転は、測定データの取得の際に、回転駆動部11(モータ)のデータ処理部50等による制御によって行われるものであってもよいし、手動により行われるものであってもよい。
【0041】
また、本実施の形態の形状測定装置1は、真円度測定と表面粗さ測定を行うことが可能であり、データ取得手段52は、1つのワークWに対して真円度測定用の測定データと表面粗さ測定用の測定データとを取得し、データ記憶手段54に記憶させる。
【0042】
真円度測定のときと表面粗さ測定のときとを比較した場合に、真円度測定のときには、検出器24として測定子24Bの先端球の曲率半径が大きいものが使用され、かつ、サンプリング間隔も大きな値に設定される。また、測定データを取得する測定範囲としてワークWの一回転(360度)分の回転角度範囲に設定される。
【0043】
一方、表面粗さ測定のときには、検出器24として測定子24Bの先端球の曲率半径が小さいものが使用され、かつ、サンプリング間隔も小さな値に設定される。また、測定データを取得する測定範囲としてワークWの所定の回転角度範囲(後述)に設定される。
【0044】
真円度算出手段56は、データ記憶手段54に記憶された真円度測定用の測定データに基づいてワークWの真円度に関連する値を算出する。
【0045】
例えば、真円度を示す値として、データ記憶手段54に記憶された真円度測定用の測定データが示すワークWの断面輪郭曲線を2つの同心の幾何学的円で挟んだときの同心2円の間隔が最小になる場合の2円の半径差であるP−P値を算出する。
【0046】
また、ワークWの断面輪郭曲線の平均円からの偏差の最大値であるP値(山高さ)や偏差の最小値であるV値(谷深さ)、平均円から正方向の変位として表われる山の数であるPc値(山数)なども真円度に関連する値として算出する。
【0047】
そして、これらの算出結果を真円度測定の測定結果データとしてデータ記憶手段54に記憶させる。
【0048】
表面粗さ算出手段58は、データ記憶手段54に記憶された表面粗さ測定用の測定データに基づいてワークWの表面粗さに関連する値を算出する。
【0049】
例えば、表面粗さを示す値(粗さパラメータ)として、データ記憶手段54に記憶された表面粗さ測定用の測定データが示すワークWの断面輪郭曲線からノイズ成分やうねり成分などの粗さ成分以外の成分を取り除いた粗さ曲線を求める。そして、その粗さ曲線に基づいて表面粗さを表す粗さパラメータであって算術平均粗さを示すRa値や十点平均粗さを示すRz値等を算出する。
【0050】
また、これらの算出結果を表面粗さ測定の測定結果データとしてデータ記憶手段54に記憶させる。
【0051】
測定条件設定手段60は、入力手段70により入力されたデータ、データ記憶手段54に記憶された測定データ及び測定結果データに基づいて、真円度測定及び表面粗さ測定の各々における測定条件を決定する。そして、データ取得手段52や表面粗さ算出手段58に対して各々に関連する測定条件を設定して測定条件に従った測定を実施させる。
【0052】
例えば、データ取得手段52における測定データの取得に関連する測定条件として、ワークWに対して測定を行う測定範囲、即ち、測定データ(変位量データ)を取得する測定範囲(ワークWの回転角度範囲)や、サンプリング間隔等を決定し、データ取得手段52に対してその測定条件を設定する。
【0053】
また、表面粗さ算出手段58における表面粗さの算出に関連する測定条件として、測定データが示すワークWの断面輪郭曲線から粗さ成分を抽出するフィルタ(フィルタ処理)の各種カットオフ値などを決定し、表面粗さ算出手段58に対してその測定条件を設定する。
【0054】
特に、表面粗さ測定は、真円度測定の実施後において行われ、表面粗さ測定における測定条件の設定には、真円度測定の測定結果データ、即ち、真円度算出手段56の算出結果が参照される。
【0055】
結果情報生成手段62は、データ記憶手段54に記憶された1つのワークWに対する真円度測定及び表面粗さ測定の測定データ及び測定結果データ(算出結果)に基づいて、真円度測定及び表面粗さ測定の測定結果を示す測定結果画像を生成し、その測定結果画像を出力手段72に出力する。
【0056】
また、1つのワークWに対する真円度測定及び表面粗さ測定の測定データ及び測定結果データを1つの関連情報として1つのデータファイルに収めてデータ記憶手段54に保存する。なお、同図におけるデータ記憶手段54は、データを一時的に記録する記憶媒体と半永久的に記録するデータ保存用の記憶媒体の両方を含み、測定データ及び測定結果データを収めたデータファイルはデータ保存用の記憶媒体に記憶される。
【0057】
次に上記形状測定装置1における真円度測定及び表面粗さ測定の一連の測定手順について説明するとともに、図2のデータ処理部50における処理の詳細について説明する。
【0058】
図3は、真円度測定及び表面粗さ測定の一連の測定手順を示したフローチャートである。
【0059】
まず、測定の前提として、図1のように測定対象物となる円柱状又は円筒状のワークWが載物台12に載置され、そのワークWの中心軸が載物台12の回転軸(θ軸)と略一致する位置に設定されているものとする。そして、ここでは、そのワークWの外周面の真円度測定と表面粗さ測定とが行われるものとする。
【0060】
また、真円度測定と表面粗さ測定のうち、真円度測定が先に行われる。
【0061】
さらに、測定開始時には、図1における検出器24として、測定子24Bの先端球(先端部)の曲率半径が、真円度測定に適した大きさのものであって、少なくとも表面粗さ測定のときよりも大きいものが検出器ホルダ22に取り付けられているものとし、測定子24Bの先端球はワークWの外周面に当接しているものとする。なお、測定子24Bの先端球の曲率半径を変更する場合において、検出器24全体を交換する態様、検出器本体24Aに対して測定子24Bの全体を交換する態様、及び、測定子24Bの先端球のみを交換する態様のうちのいずれの態様でもよい。
【0062】
まず、図3のステップS10では、真円度測定における測定条件として、ワークWに対して測定を行う測定範囲、即ち、データ取得手段52が検出器24から測定データを取得する測定範囲(ワークWの回転角度範囲)と、測定データをサンプリングする際のサンプリング間隔とが測定条件設定手段60により設定される。
【0063】
ここでは、測定範囲として、ワークWの回転角度範囲が一回転(360度)分の回転角度範囲に設定され、サンプリング間隔として、ワークWが一定角度を回転する間隔であって少なくとも表面粗さ測定時よりも大きな値に設定される。
【0064】
次に、図3のステップS12では、載物台12が回転駆動部11により回転している間に、データ取得手段52により、ステップS10において設定された測定条件に従って測定データが取得され、真円度測定の測定データとしてデータ記憶手段54に記憶される。
【0065】
ここで、測定データは上述のように検出器24からの変位信号をサンプリングして得られる変位量データと、回転角度検出器48により検出されるワークW(載物台12)の回転角度とを対応付けたデータを示す。
【0066】
そして、データ取得手段52は、その変位量データのサンプリングをステップS10において設定されたサンプリング間隔により、かつ、ワークWの回転角度が一回転(360度)分の回転角度となるまで実行する。
【0067】
なお、載物台12の回転は、上述のように回転駆動部11(モータ)のデータ処理部50等による制御によって行われるものであってもよいし、手動により行われるものであってもよい。
【0068】
次に、図3のステップS14では、ステップS12においてデータ記憶手段54に記憶された真円度測定の測定データに基づいて、ワークWの真円度に関連する値として、上述のように真円度を示すP−P値、山高さを示すP値、谷深さを示すV値、山数を示すPc値等が真円度算出手段56により算出される。
【0069】
そして、その算出結果が真円度測定の測定結果データとしてデータ記憶手段54に記憶される。
【0070】
以上により、真円度測定が終了し、以下、表面粗さ測定に移行する。
【0071】
表面粗さ測定に移行すると、図3のステップS16〜ステップS32では、ワークWが載物台12に載置されたまま、表面粗さ測定における測定条件の設定が行われる。
【0072】
まず、ステップS16では、検出器24として、測定子24Bの先端球の曲率半径が、表面粗さ測定に適した大きさのものであって、少なくとも真円度測定のときよりも小さいものに操作者により交換される。
【0073】
次に、図3のステップS18では、真円度測定の測定データに基づいて、表面粗さ測定を行う測定範囲、即ち、データ取得手段52が検出器24から測定データを取得する測定範囲(ワークWの回転角度範囲)が測定条件設定手段60により設定される。
【0074】
例えば、測定条件設定手段60は、図4(A)のように真円度測定の測定データが示すワークWの断面輪郭曲線の図と、真円度測定の測定結果データであるP−P値とを出力手段72に出力する。
【0075】
この画面を参照して操作者は入力手段70により表面粗さ測定における測定範囲を図4(B)の符号Sで示す範囲のようにワークWの回転角度範囲等により指定する。
【0076】
また、同図の断面輪郭曲線のようにワークWが意図的に形成された段差を有する場合、表面粗さが正しく評価されるように、操作者は段差を含まない範囲を測定範囲として指定することが望ましい。特に、図4(B)のように段差の位置を測定範囲Sの基点(一方の端点)として指定することで、同一形状の複数のワークWに対して表面粗さ測定を行う場合に、ワークWと載物台12との位相が相違している場合であっても、ワークWの同一部分に対する表面粗さ測定を行うことができる。
【0077】
なお、測定範囲の指定は、ワークWの直径値(又は、半径値)を測定し、又は、操作者が入力手段70から入力することで、測定範囲の距離(測定長さ)を算出して表示することも可能である。また、測定範囲を指定する場合に、測定範囲の基点と、基点からの回転角度とを指定するのではなく、測定範囲の基点と、基点からの測定長さとを指定することも可能である。
【0078】
次に、図3のステップS20では、真円度測定の測定データに基づいて、ワークWの断面輪郭曲線のパワースペクトラムが測定条件設定手段60により算出される。なお、パワースペクトラムは真円度測定の測定結果データとして真円度算出手段56が算出してデータ記憶手段54に記憶させるようにしてもよい。
【0079】
次に、図3のステップS22では、ステップS20において算出されたパワースペクトラムに基づいて断面輪郭曲線が周期波形であるか、又は、非周期波形であるかが測定条件設定手段60により判断される。
【0080】
周期波形の場合には、パワースペクトラムにおいてその周期に対応する成分の振幅値が大きくなる。そのため、図5(A)のパワースペクトラムのグラフのように振幅値が大きい成分(所定の閾値よりも大きい振幅値)が存在する場合には周期波形であると判断され、ステップS24の処理に移行する。
【0081】
一方、図5(B)のパワースペクトラムのグラフのように振幅値が大きい成分(所定の閾値よりも大きい振幅値)が存在しない場合には非周期波形であると判断され、ステップS28に移行する。
【0082】
なお、断面輪郭曲線が周期波形であるか、非周期波形であるかは、表面粗さ測定における測定条件の設定において必要となる情報である。そして、操作者が目視によって判断することによる曖昧さを無くすことができる。
【0083】
ステップS22において断面輪郭曲線が周期波形であると判断された場合、次に、図3のステップS24では、データ記憶手段54に真円度測定の測定結果データとして記憶されたPc値(山数)に基づいて、周知の粗さパラメータであって、粗さ曲線要素の平均長さを示すRSm値が測定条件設定手段60により推測される。
【0084】
即ち、ワークWの半径によりワークWの外周の長さを算出し、Pc値で割ることで、1つの山の長さを算出することができる。そして、RSm値はその1つの山の長さに近い値となることから1つの山の長さをRSm値の推測値とすることができる。
【0085】
次に、図3のステップS26では、ステップS24で推測されたRSm値と、JIS規格に示された図6の対応表(JIS B 0633:2001参照)とに基づいて粗さパラメータの基準長さが測定条件設定手段60により推測される。
【0086】
ここで、図6の対応表には、断面輪郭曲線が周期波形である場合において、RSm値を測定するための基準長さが、RSm値の大きさに応じた値として示されている。
【0087】
この基準長さの推測によってカットオフ値λcが基準長さの同一値として推測される。カットオフ値λcは、データ記憶手段54に記憶される表面粗さ測定用の測定データから粗さ曲線を生成する際のハイパスフィルタのカットオフ値であり、ワークWの断面輪郭曲線からハイパスフィルタを通してうねり成分を除去して粗さ成分を抽出することができるカットオフ値を示す。
【0088】
そして、推測されたカットオフ値λcは、表面粗さ算出手段58において表面粗さ等を算出する際に使用される値として設定される。
【0089】
一方、図3のステップS22において断面輪郭曲線が非周期波形であると判断された場合、次に、ステップS28では、データ記憶手段54に真円度測定の測定結果データとして記憶されたP−P値(真円度)に基づいて、周知の粗さパラメータであって、算術平均粗さを示すRa値と十点平均粗さを示すRz値とが測定条件設定手段60により推測される。
【0090】
即ち、P−P値は、各中心法により求めた中心と同心の内接円と、外接円の半径差を表しており、このP−P値は、Rz値に近い値となる。そのため、P−P値をRz値の推測値とすることができる。なお、データ記憶手段54に真円度測定の測定データに基づいて、ステップS18において設定された測定範囲でのP−P値を算出し、そのP−P値をRz値の推測値とするとしてもよい。
【0091】
また、Ra値は、Rz値のおおよそ1/4(三角波形の場合)であるため、P−P値の4分の1の値をRa値の推測値とすることができる。
【0092】
次に、図3のステップS30では、ステップS28で推測されたRa値及びRz値と、JIS規格に示された図7の対応表(JIS B 0633:2001参照)とに基づいて粗さパラメータの基準長さが測定条件設定手段60により推測される。
【0093】
ここで、図7の対応表には、断面輪郭曲線が非周期波形である場合において、Ra値及びRz値を測定するための基準長さが、Ra値及びRz値の大きさに応じた値として示されている。
【0094】
この基準長さの推測によってカットオフ値λcが基準長さの同一値として推測される。
【0095】
そして、推測されたカットオフ値λcは、表面粗さ算出手段58において表面粗さ等を算出する際に使用される値として設定される。
【0096】
次に、図3のステップS32では、ステップS26又はステップS30において推測されたカットオフ値λcと、JIS規格に示された図8の対応表(JIS B 0651:2001参照)とに基づいて、データ取得手段52が検出器24から測定データを取得する際のサンプリング間隔が測定条件設定手段60により設定される。
【0097】
ここで、図8の対応表には、カットオフ値λcに対応した最大サンプリング間隔の値が示されており、例えば、そのカットオフ値λcに対応した最大サンプリング間隔の値がそのままサンプリング間隔として設定される。また、図8の対応表の最大サンプリング間隔は、長さを単位としており、ワークWの直径値を考慮することでワークWの回転角度間隔としてサンプリング間隔を設定することができる。
【0098】
次に、図3のステップS34では、載物台12が回転駆動部11により回転している間に、データ取得手段52により、ステップS18及びステップS32において設定された測定条件に従って測定データが取得され、表面粗さ測定の測定データとしてデータ記憶手段54に記憶される。
【0099】
即ち、データ取得手段52は、検出器24からの変位量データのサンプリングを、ステップS32において設定されたサンプリング間隔により、かつ、ワークWの回転角度がステップS18において設定された測定範囲(回転角度範囲)内であるときに実行する。
【0100】
なお、載物台12の回転は、上述のように回転駆動部11(モータ)のデータ処理部50等による制御によって行われるものであってもよいし、手動により行われるものであってもよい。
【0101】
次に、図3のステップS36では、ステップS34においてデータ記憶手段54に記憶された表面粗さ測定の測定データに基づいて、ワークWの表面粗さに関連する値が表面粗さ算出手段58により算出される。
【0102】
即ち、表面粗さ算出手段58は、データ記憶手段54に記憶された表面粗さ測定用の測定データが示すワークWの断面輪郭曲線から、ステップS26において設定されたカットオフ値λcのハイパスフィルタを通して粗さ成分のみを抽出した粗さ曲線を生成する。そして、その粗さ曲線と、ステップS26又はステップS30において推測された基準長さとに基づいて、算術平均粗さを示すRa値、十点平均粗さを示すRz値、粗さ曲線要素の平均長さを示すRSm値等を算出する。
【0103】
そして、その算出結果が表面粗さ測定の測定結果データとしてデータ記憶手段54に記憶される。
【0104】
なお、ここで算出されたRa値、Rz値、又はRSm値と、推測された基準長さに対応する図6図7におけるRa値、Rz値、又はRSm値の範囲とを比較し、それらが合致していない場合には基準長さを変更して再度Ra値、Rz値、又はRSm値を算出して合致するまで繰り返すが、詳細な説明は省略する。
【0105】
以上により、表面粗さ測定が終了する。
【0106】
次に、図3のステップS38では、データ記憶手段54に記憶された真円度測定及び表面粗さ測定の測定データ及び測定結果データ(算出結果)に基づいて、真円度測定及び表面粗さ測定の測定結果の情報をモニタなどに出力(表示)するための測定結果画像が結果情報生成手段62により生成される。そして、その測定結果画像が出力手段72に出力される。また、真円度測定及び表面粗さ測定の測定データ及び測定結果データが1つの関連情報として1つのデータファイルに収められてデータ記憶手段54に保存される。
【0107】
図9は、測定結果画像の一例を示す。同図に示すように測定結果画像は、真円度測定の測定結果が表示される第1領域80と、表面粗さ測定の測定結果が表示される第2領域82とを有し、第1領域80には、真円度測定の測定データに基づくワークWの断面輪郭曲線が表示される。また、第1領域80には、測定結果データとしてP−P値、P値、V値、Pc値が表示される。更に、ワークWの断面輪郭曲線上には、表面粗さ測定の測定範囲が示される。同図の例では3つの測定範囲A、B、Cが設定されたことが示されている。
【0108】
一方、第2領域82には、測定範囲A、B、Cごとに、表面粗さ測定の測定データが横軸を回転角度、縦軸を変位量としてグラフ表示される。また、測定範囲A、B、Cごとに測定結果データとしてRa値とRz値などが表示される。
【0109】
以上の形状測定装置1によれば、真円度測定の測定結果を利用して適切な測定条件で表面粗さ測定を行うことができ、測定作業の負担軽減が図られると共に、操作者の経験によらず適切の測定条件での測定が行われるようになる。
【0110】
また、1つのワークWに対する真円度測定と表面粗さ測定とのデータが1つのデータファイルに関連付けて記憶されるためデータ管理が行い易くなる。
【0111】
また、真円度測定の測定データを参照することで表面粗さを把握したい部分のみを表面粗さ測定の測定範囲として指定することが容易となり、効率的に測定を行うことができる。
【0112】
例えば、図10のように円筒体86の内部で回転する円柱状のワークWの外周上の摩耗状況を評価したい場合がある。この場合に、真円度測定を行わずに表面粗さ測定のみを行うときには、どの部分が円筒体86に接する凸部分かを事前に判断することができない。そのため、図11のように全周(360度)に渡って表面粗さ測定を行う必要があり、長い時間を要する。
【0113】
一方、真円度測定は表面粗さ測定と比べると測定時間が短く、本実施の形態のように、表面粗さ測定を行う前に真円度測定を行うことで、長時間を要せずに円筒体86に接するワークWの凸部分88A、88B、88Cを把握することができ、全周を測定範囲とすることなくその凸部分88A、88B、88Cのみを測定範囲として表面粗さ測定を行うことができる。これによって、効率的な測定を行うことができる。
【0114】
次に、真円度測定と表面粗さ測定とを行うことできる形状測定装置の第2の実施の形態について説明する。
【0115】
図12は、第2の実施の形態の形状測定装置100を示した正面図であり、図1の形状測定装置1と同一又は類似作用の構成要素には同一符号を付して図1の形状測定装置1と相違する部分のみについて説明する。
【0116】
同図における形状測定装置100において、キャリッジ16には、径方向移動アーム18、旋回アーム20、及び検出器ホルダ22からなる検出器支持機構13と同様に構成された検出器支持機構113であって、径方向移動アーム118、旋回アーム120、検出器ホルダ122からなる検出器支持機構113が設けられる。そして、その検出器支持機構113の検出器ホルダ122に検出器本体124Aと測定子124Bからなる検出器124が支持される。
【0117】
これによって、径方向(X軸方向)に2つの検出器24と検出器124とが配置される。
【0118】
そして、一方の検出器24として真円度測定用の検出器が取り付けられ、他方の検出器124として表面粗さ測定用の検出器が取り付けられる。これらの検出器24と検出器124とは、上記実施の形態と同様に、検出器24における測定子24Bの先端球(先端部)の曲率半径の方が、検出器124の測定子124Bにおける先端球の曲率半径よりも大きい点で相違する。
【0119】
この形状測定装置100によれば、図13のように検出器24の測定子24Bと検出器124の測定子124Bとが載物台12の回転軸(θ軸)と略同軸上に配置されたワークWの中心軸を挟んで対向して配置され、それらはワークWの外周面において180度反対となる回転角度の位置(周方向に反対となる位置)に接触する。
【0120】
そして、載物台12をθ軸周りに1回転させてワークWを1回転させると、検出器24からは、図14(A)のように真円度測定の測定データ(変位量データ)が取得され、検出器124からは図14(B)のように表面粗さ測定の測定データ(変位量データ)が取得される。これらの検出器24、124の各々から測定データは上記実施の形態のデータ処理部50と同様のデータ処理部においてデータ取得手段により同時に取り込まれてデータ記憶手段に記憶され、真円度算出得手段及び表面粗さ算出手段によって真円度、表面粗さ等の算出が行われる。
【0121】
ここで、検出器24から変位量データ(検出信号)をサンプリングする際のサンプリング間隔やサンプリングにより取得した測定データは、上記実施の形態において真円度測定のときのものと等しく、検出器124から変位量データをサンプリングする際のサンプリング間隔やサンプリングにより取得した測定データは、上記実施の形態において表面粗さ測定のときのものであって測定範囲を全周分(360度分の回転角度範囲)としたものと等しい。
【0122】
これによれば、図14(A)、図14(B)に示されているように、測定データの取得中に外乱(ワークWの揺れなど)が発生した場合に、ワークWの中心軸周りに180度異なる2方向に対応する真円度測定の測定データと表面粗さ測定の測定データとに変位方向が反対(径方向の外向きと内向き)となる外乱信号V1、V2が現れる。
【0123】
したがって、図14(C)のように真円度測定の測定データと表面粗さ測定の測定データとを比較した場合に、真円度測定の測定データと表面粗さ測定の測定データとの180度の位相差を有する位置に変位方向が反対の同形態の信号が発生したときには、それらは外乱による外乱信号V1、V2と判断することができる。
【0124】
そして、その外乱信号V1、V2が発生したときには、その外乱信号V1、V2の部分の測定データを他方の測定データにより補正することで、又は、単純に除去して妥当な値の測定データで補間することで、図14(D)、図14(E)のように外乱信号V1、V2を取り除いた真円度測定の測定データと表面粗さ測定の測定データを得ることができる。
【0125】
このような処理は、上記実施の形態で示したデータ処理部50における処理手段(例えば、データ取得52)において行うことができる。
【0126】
これによって、真円度と表面粗さの正確な測定を1度の測定により行うことができる。
【0127】
なお、図15(A)のような断面輪郭曲線を有するワークWに対して図15(B)、図15(C)のような表面粗さ測定の測定データと真円度測定の測定データが得られる場合において、表面粗さ測定の測定データからうねり成分等を取り除いた粗さ曲線を求める際に、上記実施の形態ではハイパスフィルタを用いるものとした。
【0128】
これに対して、図15(C)の真円度測定の測定データは表面粗さ測定の測定データのうねり成分に近似するため、真円度測定の測定データから導いたうねり成分を表面粗さ測定の測定データから取り除くことによって図15(D)のように粗さ曲線を求めるようにしてもよい。図15(B)には、全周分の表面粗さ測定の測定データを取得する場合を示したが、一部の回転角度範囲の測定データのみを取得する場合であっても同様にして粗さ曲線を求めることができる。
【0129】
また、第2の実施の形態の形状測定装置100においても、図1等に示した形状測定装置1について説明した技術的事項を適宜採用できる。例えば、1つのワークWに対する真円度測定及び表面粗さ測定の測定データ及び測定結果データを1つの関連情報として1つのデータファイルに収めてデータ記憶手段に保存することは第2の実施の形態の形状測定装置100においても有効である。
【0130】
(付記)上記に詳述した実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書では以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
【0131】
(付記1)円柱状又は円筒状の測定対象物に対して第1測定子を介して接触しながら測定対象物の周方向に相対的に回転移動する第1検出器であって、第1測定子の変位量を検出する第1検出器と、第1測定子と測定対象物との接触位置に対して周方向の反対側の位置において第2測定子を介して測定対象物に接触しながら周方向に相対的に回転移動する第2検出器であって、第2測定子の変位量を検出する第2検出器と、第1検出器の検出信号に基づいて測定対象物の真円度測定を行う真円度測定手段と、第2検出器の検出信号に基づいて測定対象物の表面粗さ測定を行う表面粗さ測定手段と、第1検出器の検出信号と第2検出器の検出信号との比較に基づいて、外乱により生じた外乱信号を第1検出器の検出信号及び第2検出器の検出信号から除去する処理手段と、を備える。
【0132】
付記1の発明によれば、第1検出器からの検出信号及び第2検出器からの検出信号の各々に含まれる外乱による外乱信号を相互に除去することができるため、測定精度の向上が図られる。また、真円度測定と表面粗さ測定とを同時に行うことができるため、測定効率も向上する。
【0133】
(付記2)第1検出器における第1測定子の先端部の曲率半径は、第2検出器における第2測定子の先端部の曲率半径よりも大きい態様とすることができる。
【0134】
(付記3)真円度測定手段により得られたデータと、表面粗さ測定手段により得られたデータとを1つのデータファイルにより保存する態様とすることができる。
【0135】
(付記4)真円度測定手段により得られたデータと、表面粗さ測定手段により得られたデータとを1つのデータファイルにより保存する態様とすることができる。
【符号の説明】
【0136】
W…ワーク、λc…カットオフ値、1,100…形状測定装置、12…載物台、13,113…検出器支持機構、24,124…検出器、24B,124B…測定子、48…回転角度検出手段,回転角度検出器、50…データ処理部、52…データ取得手段、54…データ記憶手段、56…真円度算出手段、58…算出手段、60…測定条件設定手段、62…情報生成手段、70…入力手段、72…出力手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15