(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記芳香環あるいはシクロアルカン環を有する脂肪族アミン(a2)がベンジルエチレンジアミン、ベンジルアミン又はメタキシレンジアミンである請求項1〜3の何れか1項記載のエポキシ樹脂用硬化剤。
前記芳香族アミン(a1)と前記脂肪族アミン(a2)との使用割合が、(a1)/(a2)で表される質量比として、10/90〜90/10の範囲である請求項1〜4の何れか1項記載のエポキシ樹脂用硬化剤。
前記液状エポキシ樹脂(B)が、ビスフェノール型エポキシ樹脂(b1)と、多価アルコールのグリシジルエーテル(b2)及び/又は脂肪族カルボン酸のグリシジルエステル(b3)とを含有するものである請求項6記載のエポキシ樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤は、芳香族アミン(a1)と芳香環あるいはシクロアルカン環を有する脂肪族アミン(a2)とを併用することを特徴とするものである。
【0011】
一般的に芳香族アミン(a1)は、液状エポキシ樹脂、硬化促進剤と組み合わせて使用しても、室温での硬化性に乏しいことが知られており、指触乾燥レベルの塗膜を得ることが困難であることが知られている。一方で、芳香族化合物であることから、得られる塗膜の耐水性は優れることも知られており、湿潤面への適用にはふさわしいものであるが、屋外で加熱硬化反応することは不可能であることから、室温硬化システムに適用するには、添加剤レベルのごく少量での使用に限られていた。
【0012】
一方、脂肪族アミンは室温でエポキシ樹脂と反応することができる点より、一般用塗料の材料として広く用いられている。しかしながら、短鎖の脂肪族アミンは水溶性であり、長鎖のアミンであっても、その硬化塗膜の耐水性は不十分であることが多く、湿潤環境化での塗膜の白化の原因になることも多かった。
【0013】
本発明においては、芳香族アミンと脂肪族アミンとの長所を有効利用し、湿潤面への適用を可能とするために鋭意検討した結果、脂肪族アミンとして、芳香環あるいはシクロアルカン環を有する脂肪族アミン(a2)を用いることが、エポキシ樹脂と組み合わせて用いる際、得られる硬化物の耐水性、密着性等に優れることを見出したものである。
【0014】
本発明で用いることができる芳香族アミン(a1)としては、特に限定されるものではないが、例えば、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルホン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、ジエチルトルエンジアミン、オルトトルエンジアミン、メタ−トルエンジアミン、メチレン架橋ポリ(フェニレン)アミン混合物(例えば、アニリンおよびホルムアルデヒドから誘導された縮合生成物)、2、2’−/2、4’−/4、4’ジアミノジフェニルメタンの異性体の混合物、およびその同類のもの、またはそれらの組み合わせが挙げられ、単独でも2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0015】
前記芳香族アミン(a1)は、室温(10〜30℃)で固体、あるいは結晶性が強く、液状化しにくいものも含まれているが、その場合には、一般にエポキシアダクトと呼ばれる、後述する液状エポキシ樹脂(B)を用いて一部変性させることにより、液状化させて用いることが好ましい。エポキシアダクト物は、エポキシ基の開環により水酸基が生じ、この水酸基は、グリシジル基とアミノ基との反応を促進する効果を有し、また基材との密着性にも寄与することから、室温硬化性、密着性等に優れることになる。
【0016】
これらの中でも、特に得られる硬化物のコンクリート基材との密着性に優れ、また室温での流動性を有し、液状の硬化剤を容易に与えうる観点より、ジアミノジフェニルメタンのエポキシアダクト物又はジエチルトルエンジアミンのエポキシアダクト物を用いることが好ましい。
【0017】
本発明で用いる脂肪族アミン(a2)はその構造中に芳香環あるいはシクロアルカン環を有することを必須とする。このような環構造を有することにより、湿潤環境下においても白化を発生することなく、硬化物の耐水性も良好となる。
【0018】
前記脂肪族アミン(a2)としては特に限定されるものではないが、例えば、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、水素化オルト−トルエンジアミン、水素化メタ−トルエンジアミン、メタキシリレンジアミン、水素化メタキシリレンジアミン、イソホロンジアミン、種々の異性体またはノルボルナンジアミン、ベンジルアミン、ベンジルエチレンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、2,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、およびメチレン架橋ポリ(シクロヘキシル)アミンなどが挙げられ、単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらは、分子量を調製し揮発性を抑制したり、硬化剤とした際の流動性を取り扱いやすい範囲に調整したりする目的のために、マンニッヒ変性、エポキシアダクト、ポリアミドアミン等の各種変性を行ってから用いても良い。
【0019】
これらの中でも、湿潤環境下において、エポキシ樹脂と組み合わせて使用した際の硬化性に優れ、得られる硬化物の基材との密着性も良好である観点より、ベンジルエチレンジアミン、ベンジルアミン、メタキシレンジアミンを用いることが好ましい。
【0020】
本発明における硬化剤には、上記芳香族アミン(a1)、特定の脂肪族アミン(a2)に加え、硬化促進剤(a3)を含有させる。硬化促進剤(a3)はその名前の通り、エポキシ樹脂中のグリシジル基とアミノ基との反応を促進させるものであり、各種芳香族カルボン酸類や前記(a1)、(a2)以外のアミン類、フェノール類およびその変性物が挙げられる。
【0021】
前記芳香族カルボン酸類としては、安息香酸、サリチル酸、トリヒドロキシ安息香酸、フタル酸、ケイ皮酸、ベンゼンヘキサカルボン酸等が挙げられる。
【0022】
前記アミン類としては、ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルジメチルアミン(BDMA),2(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP−10)、2,4,6−(トリスジメチルアミノメチル)フェノール(DMP−30)、1,8−ジアザビスシクロ(5,4,0)ウンデセン−1(DBU)等の第三級アミン、ヒドロキシルアミン、フェノキシアミン等のヒドロキシルアミン類、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、4(5)−メチルイミダゾール、2−エチル−4メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類等が挙げられる。
【0023】
前記フェノール類としては、例えば、フェノール、クレゾール、ブチルフェノール、4−ターシャリーブチルフェノール、4−セカンダリーブチルフェノール、2−ターシャリ−ブチルフェノール、2−セカンダリーブチルフェノール、4−オクチルフェノール、4−ターシャリー・ブチルカテコール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、カルダノール等が挙げられる。
【0024】
また、前記フェノール類の変性物として、マンニッヒ反応物、フェノール樹脂等を硬化促進剤(a3)として使用しても良い。
【0025】
これらの中でも、エポキシ樹脂と組み合わせて使用した際の室温硬化速度の調製が容易である観点から、フェノール類またはイミダゾール類を用いることが好ましく、特に、4−ターシャリーブチルフェノール、2−メチルイミダゾールを用いることが好ましい。更に両者を混合して用いることも好ましい方法である。
【0026】
本発明の硬化剤において、前述の芳香族アミン(a1)と特定の脂肪族アミン(a2)との使用割合は、特に限定されるものではないが、エポキシ樹脂と組み合わせて使用した際の室温での硬化性と、得られる硬化物の耐水性、密着性の観点より、芳香族アミン(a1)と、脂肪族アミン(a2)との質量比(a1)/(a2)が10/90〜90/10の範囲であることが好ましく、特に50/50〜80/20の範囲であることが好ましい。
【0027】
また、本発明の硬化剤における前記硬化促進剤(a3)の使用割合は、硬化剤の全質量に対して、10〜40質量%の範囲であることが好ましく、前述のように、フェノール類、イミダゾール類を用いることが好ましく、これらを組み合わせる場合、その使用割合としては、フェノール類/イミダゾール類(質量比)で80/20〜100/0の範囲であることが好ましい。
【0028】
本発明の硬化剤では、芳香族アミン(a1)と脂肪族アミン(a2)とを併用することにより、その均一性が不足することがある。このような場合は、両者に対して相溶性のあるキシレン樹脂等を併用することが好ましい。この時、キシレン樹脂の使用割合は、硬化剤全量に対して、5〜30質量%の範囲であることが、室温硬化性を阻害せず、また硬化物の密着性、強度等の観点から好ましいものである。
【0029】
従って、本発明の硬化剤として好ましい使用割合は、硬化剤全量を100質量部としたときに、芳香族アミン(a1)が50〜60質量部、特定の脂肪族アミン(a2)が20〜30質量部、フェノール系硬化促進剤が5〜15質量部、イミダゾール系硬化促進剤が0〜5質量部、キシレン樹脂が5〜15質量部である。
【0030】
本発明の硬化剤には、前述の成分に加え、本発明の効果を阻害しない範囲で各種添加剤や充填剤等を配合してもよい。前記添加剤や充填材としては、例えば、界面活性剤、キレート剤、ポリカルボン酸のアミン塩等の添加剤や各種消泡剤、クロメート系、フォスフェート系、モリブデン酸系、ホウ酸系、鉛酸系、フェライト系、金属粉系等の防錆顔料、フレーク状顔料、強化用繊維、通常塗料に使用される着色顔料、超微粉末シリカ、炭酸カルシウム、表面処理炭酸カルシウム、タルク、マイカ、珪酸アルミニウム等の体質顔料、セメント、活性アルミナ、炭酸カルシウム、酸化チタン等が挙げられる。
【0031】
本発明の硬化剤は、各種エポキシ樹脂の硬化剤として機能するものであり、エポキシ樹脂は、用途、硬化物の物性等によって適宜選択できるものであるが、前記硬化剤の湿潤環境下での優れた硬化性を鑑みると、液状エポキシ樹脂(B)と組み合わせ、2液型組成物として用いることが好ましい。
【0032】
前記液状エポキシ樹脂(B)としては、本発明の前記硬化剤中のアミノ基と反応するものであれば特に限定されるものではないが、組成物を調製した際の流動性や、硬化反応速度、及び硬化物の基材への密着性、硬化物の耐水性等の観点より、ビスフェノール型エポキシ樹脂(b1)を用いることが好ましく、特にビスフェノールA型エポキシ樹脂、又はビスフェノールF型エポキシ樹脂を用いることが最も好ましい。
【0033】
前記液状エポキシ樹脂(B)としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂(b1)に加え、組成物の流動性、硬化物の機械的物性の観点より、多価アルコールのグリシジルエーテル(b2)、脂肪族カルボン酸のグリシジルエステル(b3)を併用することが好ましい。多価アルコールのグリシジルエーテルとしては、例えば、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレンプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、レゾルシノールジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテルなどが挙げられ、単独でも2種以上を混合して用いてもよい。脂肪族カルボン酸のグリシジルエステル(b3)としては、例えば、ネオデカン酸グリシジルエステル等が挙げられる。
【0034】
これらの中でも、前述の硬化剤との相溶性が良好であり、組成物としたときの流動性、硬化速度、得られる硬化物の機械的強度等の観点より、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオデカン酸グリシジルエステルを用いることが好ましい。
【0035】
前記ビスフェノール型エポキシ樹脂(b1)と前記多価アルコールのグリシジルエーテル(b2)及び/又は多塩基酸のグリシジルエステル(b3)との使用割合は、特に限定されるものではないが、前記(b1)と〔(b2)+(b3)〕との質量比(b1)/〔(b2)+(b3)〕として、70/30〜90/10の範囲であることが、反応速度、硬化物の強度、及び基材との密着性のバランスに優れる観点より、好ましい。
【0036】
また、本発明の硬化剤(A)との配合調整が簡便であることから、エポキシ樹脂(B)のエポキシ当量が150〜250の範囲に調整しておくことが好ましく、硬化剤(A)中の理論活性水素当量(計算値)と、エポキシ樹脂(B)のエポキシ当量との比としては、1.0/0.7〜1.0/1.2の範囲で用いることが好ましい。
【0037】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、各種反応性官能基含有シランカップリング剤(c)を併用することが、より基材との密着性を向上させ、湿潤環境下での施工が容易となる観点より好ましい。
【0038】
前記シランカップリング剤(c)としては特に限定されるものではなく、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル・ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、特殊アミノシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、アリルトリクロロシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、トリクロロビニルシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ジエトキシ(グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−ブリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキンシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファイド、等が挙げられる。これらシランカップリング剤はそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0039】
これらの中でも、前記硬化剤(A)あるいはエポキシ樹脂(B)との反応性を有する官能基含有シランカップリング剤を用いることが好ましい。特に、アミノ基含有シランカップリング剤を用いる場合は本発明の硬化剤(A)に予め添加しておき、グリシジル基含有シランカップリング剤を用いる場合には、液状エポキシ樹脂(B)に予め添加しておく等、保存安定性を阻害しない範囲で適宜選択して用いることが好ましい。
【0040】
前記シランカップリング剤(c)を組成物の一成分とする場合の好ましい配合量は、例えば、組成物中1〜10質量%の範囲であり、特に1〜5質量%の範囲で用いることが好ましい。特にグリシジル基含有シランカップリング剤を用いる場合は、液状エポキシ樹脂(B)中に1〜10質量%の範囲で用いることが好ましい。
【0041】
本発明の樹脂組成物は、更に、紫外線吸収剤、酸化防止剤、シリコン系添加剤、有機ビーズ、フッ素系添加剤、レオロジーコントロール剤、脱泡剤、防曇剤、着色剤、無機フィラー等の添加剤を含有していても良い。
【0042】
前記紫外線吸収剤は、例えば、2−[4−{(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ}−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−{(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ}−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン等のトリアジン誘導体、2−(2′−キサンテンカルボキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−o−ニトロベンジロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−キサンテンカルボキシ−4−ドデシロキシベンゾフェノン、2−o−ニトロベンジロキシ−4−ドデシロキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0043】
前記酸化防止剤は、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、有機硫黄系酸化防止剤、リン酸エステル系酸化防止剤等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用しても良いし、二種類以上を併用しても良い。
【0044】
前記シリコン系添加剤は、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、環状ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロゲンポリシロキサン、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン共重合体、ポリエステル変性ジメチルポリシロキサン共重合体、フッ素変性ジメチルポリシロキサン共重合体、アミノ変性ジメチルポリシロキサン共重合体など如きアルキル基やフェニル基を有するポリオルガノシロキサン、ポリエーテル変性アクリル基を有するポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性アクリル基を有するポリジメチルシロキサン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用しても良いし、二種類以上を併用しても良い。
【0045】
前記有機ビーズは、例えば、ポリメタクリル酸メチルビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリスチレンビーズ、ポリアクリルスチレンビーズ、シリコーンビ−ズ、ガラスビーズ、アクリルビーズ、ベンゾグアナミン系樹脂ビーズ、メラミン系樹脂ビーズ、ポリオレフィン系樹脂ビーズ、ポリエステル系樹脂ビーズ、ポリアミド樹脂ビーズ、ポリイミド系樹脂ビーズ、ポリフッ化エチレン樹脂ビーズ、ポリエチレン樹脂ビーズ等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用しても良いし、二種類以上を併用しても良い。
【0046】
前記フッ素系添加剤は、例えば、DIC株式会社「メガファック」シリーズ等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用しても良いし、二種類以上を併用しても良い。
【0047】
前記各種の添加剤の使用量は、その効果を十分発揮し、また本発明の効果を阻害しない範囲が好ましく、具体的にはエポキシ樹脂組成物100質量部中に、それぞれ0.01〜40質量部の範囲で用いることが好ましい。
【0048】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、本発明の硬化剤(A)と液状エポキシ樹脂(B)との2液で構成される場合、それぞれの液の粘度を所望の範囲に調整して使用される。液状エポキシ樹脂(B)では併用する多価アルコールのグリシジルエーテル(b2)、脂肪族カルボン酸のグリシジルエステル(b3)により、好ましくは20〜3000mPa・s、さらに好ましくは50〜1500mPa・sの範囲の粘度となるように調整する。粘度が上記の範囲であれば、乾燥及び湿潤状態の下地への塗布性及び浸透性により優れ、また、低温での硬化性がより優れている。組成物の調製方法は特に限定されず、両者を混合し、均一になるよう混合すればよい。
【0049】
本発明のエポキシ樹脂組成物を例えば、コンクリート面に塗布すると、その中に存在する微細な孔に浸透し、また、水分を排出する効果にも優れているので、水分を排出しながら下地表面及び下地内部に浸透し、強固に接着することができる。したがって、本発明のエポキシ樹脂組成物を適用するコンクリート面等の下地については、さび、付着物等を予め除去する必要はなく、また、平滑な面とする必要もない。
【0050】
本発明のエポキシ樹脂組成物を屋外環境下で硬化させる場合、環境中の水分の調製は必要なく、温度としては10〜30℃の範囲であることが好ましく、指触乾燥までの時間としてはおおむね、16〜40時間である。
【0051】
本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化性は、水の影響が受けず、阻害されることがないので、湿潤状態の下地と強固に接着・硬化したプライマー層を形成することができる。プライマー層の上に施工される樹脂塗膜層は、塗膜形成能を有する種々の樹脂を用いて形成可能である。
【0052】
例えば、ウレタンゴム系、アクリルゴム系、クロロプレンゴム系、アクリル樹脂系、アクリル樹脂系、ゴムアスファルト系、繊維強化樹脂系などの塗膜防水材の他、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、アクリル樹脂等が挙げられ、さらにこれらの樹脂を使用したレジン(ポリマー)モルタル、レジン(ポリマー)コンクリート等もこのプライマー上に形成させる塗膜材料として用いることができる。
【0053】
また本発明のエポキシ樹脂組成物は、コンクリート面のひび割れ部の補修、注入材としても好適に用いることができ、更には打継材としても使用可能である。
【実施例】
【0054】
以下に本発明を具体的な製造例、実施例を挙げてより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。例中の部及び%は、特に記載のない限り、すべて質量基準である。
【0055】
<エポキシ樹脂を含有する主剤の調製>
合成例1
温度制御装置、温度センサー、攪拌機、冷却管、窒素ラインを備えたガラス製4つ口フラスコにビスフェノールA型エポキシ樹脂800g(DIC株式会社製、EPICLON 850、エポキシ当量188)、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル170g(阪本薬品工業株式会社製、SR−16HS、エポキシ当量155)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン30g(信越化学工業株式会社製、KBM−403、エポキシ当量236)を加え、攪拌混合し、80℃で1時間保持した。均一溶解を確認し、エポキシ当量183のエポキシ樹脂を含有する主剤を得た。
【0056】
合成例2
合成例1において、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の代わりにビスフェノールF型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、EPICLON 830、エポキシ当量172)を用いた以外は合成例1と同様にして調製を行い、エポキシ当量170のエポキシ樹脂を含有する主剤を得た。
【0057】
実施例1
温度制御装置、温度センサー、攪拌機、冷却管、窒素ラインを備えたガラス製4つ口フラスコに、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、550g(SHUANG−BANG INDUSTRIAL CORP.製、ISOCLOSSMDA、活性水素当量49.6、融点90℃)を加え、100℃にて加温、十分に溶解させた。4,4’−ジアミノジフェニルメタン溶解確認後、同温度で30分間保持した。その後、ベンジルエチレンジアミン250g(ピィ・ティ・アイジャパン株式会社製、ハードナーOH−802、活性水素当量50)、を加え30分間保持した。80℃に冷却し、4−ターシャリブチルフェノール100g(DIC株式会社製、DIC−PTBP)を加え、80℃にて十分溶解させた。4−ターシャリブチルフェノール溶解確認後、同温度で30分間保持した。60℃に冷却し、キシレン樹脂100gg(フドー株式会社製、ニカノールY−50)を加え60℃にて溶解させた。キシレン樹脂溶解確認後、同温度で30分間保持し、活性水素当量62の硬化剤を得た。
【0058】
実施例2
温度制御装置、温度センサー、攪拌機、冷却管、窒素ラインを備えたガラス製4つ口フラスコに、ジエチルトルエンジアミン550g(ロンザジャパン株式会社製、DETDA−80、活性水素当量58)、ベンジルエチレンジアミン250g(ピィ・ティ・アイジャパン株式会社製、ハードナーOH−802、活性水素当量50)を加え攪拌し80℃に昇温、30分間保持した。80℃に冷却し、4−ターシャリブチルフェノール100g(DIC株式会社製、DIC−PTBP)を加え、80℃にて十分溶解させた。4−ターシャリブチルフェノール溶解確認後、同温度で30分間保持した。60℃に冷却し、キシレン樹脂100g(フドー株式会社製、ニカノールY−50)を加え60℃にて溶解させた。キシレン樹脂溶解確認後、同温度で30分間保持した。活性水素当量58の硬化剤を得た。
【0059】
実施例3
実施例1において、ベンジルエチレンジアミンの代わりにベンジルアミン(広栄化学工業株式会社、ベンジルアミン、活性水素当量53.5)を用いた以外は実施例1と同様にして調製を行い、活性水素当量63の硬化剤を得た。
【0060】
実施例4
実施例2おいて、ベンジルエチレンジアミンの代わりにベンジルアミン(広栄化学工業株式会社、ベンジルアミン、活性水素当量53.5)を用いた以外は実施例2と同様にして調製を行い、活性水素当量59の硬化剤を得た。
【0061】
実施例5
温度制御装置、温度センサー、攪拌機、冷却管、窒素ラインを備えたガラス製4つ口フラスコに4,4−ジアミノジフェニルメタン、400g(SHUANG−BANG INDUSTRIAL CORP.製、ISOCLOSSMDA、活性水素当量49.6、融点90℃)を加え、100℃にて加温、十分に溶解させた。4,4’−ジアミノジフェニルメタンの溶解確認後、ビスフェノールA型エポキシ樹脂150g(DIC株式会社製、EPICLON 850、エポキシ当量188)を発熱に注意しながら徐々に投入し溶解させた。110℃に昇温し、同温度で1時間保持した。その後1時間かけて180℃迄昇温させた。同温度にて2時間保持し反応させた。温度を120℃迄冷却し、ベンジルエチレンジアミン250g(ピィ・ティ・アイジャパン株式会社製、ハードナーOH−802、活性水素当量50)を加え30分間保持した。80℃に冷却し、4−ターシャリブチルフェノール100g(DIC株式会社製、DIC−PTBP)を加え、80℃にて十分溶解させた。4−ターシャリブチルフェノール溶解確認後、同温度で30分間保持した。その後、キシレン樹脂100g(フドー株式会社製、ニカノールY−50)を加え80℃にて溶解させた。キシレン樹脂溶解確認後、同温度で30分間保持し、活性水素当量82の硬化剤を得た。
【0062】
実施例6
温度制御装置、温度センサー、攪拌機、冷却管、窒素ラインを備えたガラス製4つ口フラスコにフェノール系マンニッヒ反応物350g(DIC株式会社製、ラッカマイド F4、活性水素当量80)を加え、80℃に加温、十分に溶解させた。その後、キシレン樹脂125g(フドー株式会社製、ニカノールLLL)を加え同温度にて30分間保持した。その後、メタキシレンジアミン変性物250g(三菱ガス化学株式会社製、ガスカミン240、活性水素当量103)、ベンジルアミン125g(広栄化学工業株式会社、ベンジルアミン、活性水素当量53.5)、ジエチルトルエンジアミン150g(ロンザジャパン株式会社製、DETDA−80、活性水素当量58)を加え同温度にて30分間保持した。活性水素当量80の硬化剤を得た。
【0063】
実施例7
温度制御装置、温度センサー、攪拌機、冷却管、窒素ラインを備えたガラス製4つ口フラスコにフェノール系マンニッヒ反応物300g(DIC株式会社製、ラッカマイド F4、活性水素当量80)を加え、80℃に加温、十分に溶解させた。その後、キシレン樹脂50g(フドー株式会社製、ニカノールLLL)を加え同温度にて30分間保持した。その後、メタキシレンジアミン変性物250g(三菱ガス化学株式会社製、ガスカミン240、活性水素当量103)、ベンジルアミン150g(広栄化学工業株式会社、ベンジルアミン、活性水素当量53.5)、ジエチルトルエンジアミン150g(ロンザジャパン株式会社製、DETDA−80、活性水素当量58)を加え同温度にて30分間保持した。その後、サリチル酸100g(ローディアジャパン株式会社製)を加え同温度にて60分間保持した。活性水素当量80の硬化剤を得た。
【0064】
比較例1
実施例2において、ジエチルトルエンジアミンの代わりにトリエチレンテトラミン(東ソー株式会社、TETA、活性水素当量24.3)を用いた以外は実施例2と同様にして製造を行い、活性水素当量36の硬化剤を得た。
【0065】
比較例2
実施例1において、ジエチルトルエンジアミンの代わりにテトラエチレンペンタミン(東ソー株式会社、TEPA、活性水素当量27.1)を用いた以外は実施例1と同様にして製造を行い、活性水素当量40の硬化剤を得た。
【0066】
比較例3
実施例2において、ジエチルトルエンジアミンの代わりにトリエチレンテトラミン(東ソー株式会社、TETA、活性水素当量24.3)、ベンジルエチレンジアミンの代わりにベンジルアミン(広栄化学工業株式会社、ベンジルアミン、活性水素当量53.5)を用いた以外は実施例2と同様にして製造を行い、活性水素当量37の硬化剤を得た。
【0067】
比較例4
実施例2において、ジエチルトルエンジアミンの代わりにテトラエチレンペンタミン(東ソー株式会社、TEPA、活性水素当量27,1)、ベンジルエチレンジアミンの代わりにベンジルアミン(広栄化学工業株式会社、ベンジルアミン、活性水素当量53.5)を用いた以外は実施例2と同様にして製造を行い、活性水素当量40の硬化剤を得た。
【0068】
比較例5
実施例1において、4−ターシャリブチルフェノールを投入せず、キシレン樹脂100gを200gに変更した以外は実施例1と同様にして製造を行い、活性水素当量62の硬化剤を得た。
【0069】
比較例6
実施例1において4−ターシャリブチルフェノールを投入せず、キシレン樹脂100gを200gに変更した以外は実施例1と同様にして製造を行い、活性水素当量58の硬化剤を得た。
【0070】
合成例(主剤)、実施例、比較例で得られた硬化剤を表−1および表−2の配合比にて混合した。
【0071】
主剤/硬化剤の配合比は当量比で1.0/0.9となるよう調整した。表−1および表−2は主剤100gの配合組成、および対応する硬化剤の配合組成を示した。
【0072】
得られたエポキシ樹脂組成物を用いて、以下の評価を行った。
<簡易接着評価>
JISモルタル(70mm×70mm×20mm)を#240研磨紙にて養生層表面を平滑に研磨し、その後水道水中に1時間浸漬させた。JISモルタルを引き上げウエスで軽く拭いた。研磨面上に枠として幅8mm、高さ5mmの糊付きバッカーを接着した。枠内に水を2gスポットし、その上に樹脂組成物(主剤・硬化剤混合液)を3g塗布し温度25℃、湿度50%の条件で24時間養生した。指触乾燥性、剥離状況を下記の方法で評価した。
【0073】
指触乾燥性:
温度25℃、湿度50%、24時間養生後、指で直接塗膜上を軽く押し、このときの状況を下記の基準で評価した。
○:指に指紋が付かず乾燥している。
△:乾燥が進んでいるが指紋が付く。
×:乾燥していない
【0074】
剥離状況:
金ヘラ(皮すき)にて樹脂/モルタル界面を剥離した。このときの評価状況を下記の基準で評価した。
○: 完全に材料破壊し強固な接着が確認された。
△:一部材料破壊が確認された。
×:界面剥離または硬化性不良であった。
【0075】
<接着強度>
JIS A6024「建築補修用注入エポキシ樹脂」に記載のある環境条件(標準・湿潤時・乾湿繰り返し時)にて養生した。各養生後、標準状態で接着強さの試験を行った。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】