特許第6048697号(P6048697)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6048697フロート槽及びそれを含むガラス製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048697
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】フロート槽及びそれを含むガラス製造装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 18/22 20060101AFI20161212BHJP
   C03B 18/16 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   C03B18/22
   C03B18/16
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-560866(P2014-560866)
(86)(22)【出願日】2013年4月9日
(65)【公表番号】特表2015-511928(P2015-511928A)
(43)【公表日】2015年4月23日
(86)【国際出願番号】KR2013002962
(87)【国際公開番号】WO2013154331
(87)【国際公開日】20131017
【審査請求日】2014年9月3日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0036720
(32)【優先日】2012年4月9日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ミン、キョン−フーン
(72)【発明者】
【氏名】イム、イェ−ホーン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ス−チャン
(72)【発明者】
【氏名】ナ、サン−オエブ
(72)【発明者】
【氏名】ムーン、ウォン−ジェ
【審査官】 田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭54−13250(JP,B2)
【文献】 特開2006−193402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B18/00−18/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロートガラスを製造するフロート槽において、
前記フロート槽の上部に備えられて前記フロート槽の内部に熱を供給する複数のヒーター、及び
前記複数のヒーターのうち所定ヒーターの間に備えられて、隣接する他のヒーターから伝達される熱放射を遮断する遮断膜を含み、前記フロート槽の全領域をコントロールゾーンという複数の区域に区分し、
各コントロールゾーンに1つ以上のヒーターを設け、各コントロールゾーン毎に電力供給線が別途連結されて各コントロールゾーン毎に相異なる量の電力が供給されることで、各コントロールゾーン毎に供給されるヒーターの熱量が相異なるようにし、
各コントロールゾーンの間に前記遮断膜が設けられ、
前記コントロールゾーンは、前記フロート槽の上流側から下流側に複数のコントロールゾーンに分割され、かつ前記フロート槽の左側から右側に複数のコントロールゾーンに分割される2軸方向に区分されている、フロート槽。
【請求項2】
前記遮断膜が、プレート状に構成された、請求項1に記載のフロート槽。
【請求項3】
前記遮断膜が、上下方向の長さ調節が可能である、請求項1または2に記載のフロート槽。
【請求項4】
前記遮断膜が、少なくとも一部分の角度調節が可能である、請求項1〜請求項のうちいずれか一項に記載のフロート槽。
【請求項5】
前記遮断膜が、下端部が曲げられた、請求項1〜請求項のうちいずれか一項に記載のフロート槽。
【請求項6】
前記フロート槽が、前記フロート槽の内部温度を測定する温度測定部を更に含む、請求項1〜請求項のうちいずれか一項に記載のフロート槽。
【請求項7】
前記温度測定部が、前記遮断膜によって区分される区域毎に温度を測定する、請求項に記載のフロート槽。
【請求項8】
前記ヒーターが、前記温度測定部による温度測定値に応じて特定区域の熱供給量を制御する、請求項に記載のフロート槽。
【請求項9】
前記遮断膜が、耐火物材質からなる、請求項1〜請求項のうちいずれか一項に記載のフロート槽。
【請求項10】
請求項1〜請求項のうちいずれか一項に記載のフロート槽を含むガラスの製造装置。
【請求項11】
請求項1〜請求項のうちいずれか一項に記載のフロート槽を利用してガラスを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロートガラスを製造する技術に関し、より詳しくは、内部の位置毎の温度制御が容易なフロート槽(float bath)、それを含むガラスの製造装置、及びガラスの製造方法に関する。
【0002】
本出願は、2012年4月9日出願の韓国特許出願第10−2012−0036720号に基づく優先権を主張し、該当出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
近年、窓ガラス、車両のウィンドスクリーン、鏡など多様な分野であらゆる種類の平板ガラス(flat glass)が用いられている。このような平板ガラスは、多様な方式で製造できるが、そのうち代表的な方式は、フロート(float)法を利用した生産方式である。例えば、TFTディスプレイ用などの薄板ガラス(thin glass plane)またはガラスフィルム(glass film)などがフロート法で多く製造されているが、このようにフロート法で製造されたガラスをフロートガラスともいう。
【0004】
図1は、フロートガラスを製造するフロート槽の構成を概略的に示した図である。
【0005】
図1に示されたように、フロートガラスは、一般に溶融錫または溶融錫合金のような溶融金属(M)が貯蔵されて流動するフロート槽10を用いて成形される。このとき、フロート槽は、下部に位置するボトム部12及び上部に位置するルーフ部11を含むことができ、このようなボトム部12とルーフ部11との間には、サイドシール(図示せず)が介在され得る。
【0006】
このようなフロート槽10では、溶融金属(M)より低い粘度を有し、溶融金属(M)より略2/3程度軽い溶融ガラス(G)が、入口を通じて連続的にフロート槽10の内部に供給される。そして、このような溶融ガラスは、溶融金属(M)上で浮動(floating)及び拡散(spreading)しながらフロート槽10の下流側に進む。この過程で溶融ガラスは、自らの表面張力と重力によって平衡厚さ付近に到達して、ある程度凝固したガラスストリップまたはリボンが形成される。このようなフロート槽10では、入口を通じて投入されるガラスの量、ローラーの回転速度によって決定されるけん引速度、並びにフロートチャンバー(float chamber)内部に設けられたトップローラーのような成形手段の調節及び変化を通じて、生産されるガラスリボンの厚さを変化させることができる。
【0007】
なお、このようにフロート槽10で成形された溶融ガラスリボンは、フロート槽10の出口に隣接したローラー30によって、徐冷炉(annealing furnace)に移送されて徐冷工程を経るようになる。
【0008】
このようなフロートガラスの製造方法は、循環する連続的な工程を含み、絶えず永久的に稼動でき、ほとんど中断せず数年以上平板ガラスを製造できるため、平板ガラスの代表的な製造方法として脚光を浴びている。
【0009】
このようにフロート槽10を用いたフロートガラスを製造する際、フロート槽10の内部の温度制御が非常に重要である。特に、フロート槽10の内部には溶融金属(M)が収容されており、このような溶融金属(M)の上部では溶融ガラス(G)が浮動するため、フロート槽の内部は、例えば1300℃〜600℃程度の高温に維持される。また、溶融金属上部の溶融ガラスは、フロート槽の下流側に進みながら平板に拡散し、ある程度凝固せねばならないため、フロート槽10は上流側から下流側にいくほど温度が徐々に低下するように構成される。
【0010】
このように、フロート槽10の内部は、高温でありながらも部分的に温度差があり得る。そして、フロートガラスは連続的に成形されるため、このようなフロート槽10内部の温度制御は、一定に維持される必要がある。
【0011】
通常、フロート槽10内部の温度制御は、ヒーター20及びクーラーなどにより行われる。ここで、ヒーター20は、フロート槽10のルーフ部11に複数備えられ、フロート槽10の内部に熱を供給することができる。特に、このようなヒーター20は、それぞれのヒーター20または所定グループのヒーター20毎に相異なる熱量を供給することで、フロート槽10の位置によって温度差が形成されるように構成され得る。例えば、フロート槽10の内部をコントロールゾーン(control zone)という複数の区域に区分し、各コントロールゾーンに1つ以上のヒーター20を設けて該区域に熱を供給することができる。
【0012】
しかし、このようにそれぞれのヒーター20〜所定グループのヒーター20毎に相異なる熱量を供給し、フロート槽10の位置による温度差を形成しようとする場合、このようなフロート槽10の位置毎の温度制御が容易ではない。特に、フロート槽10の位置毎の温度制御を難しくする最も主な原因の一つは、隣接する他のヒーター20から伝達される熱放射のような熱伝達である。例えば、フロート槽10の内部が複数のコントロールゾーンに分割され、各コントロールゾーン毎に設けられたヒーター20によって相異なる熱量が供給されるとしても、特定のコントロールゾーンには該コントロールゾーンに設けられたヒーター20からだけでなく、隣接する他のコントロールゾーンに設けられたヒーター20からも熱が供給され得る。
【0013】
従って、従来のフロート槽10の構成による場合、フロート槽10の位置毎の温度制御が非常に難しい。そして、このようなフロート槽10の温度制御がうまく行われない場合、ガラスの品質に良くない影響を及ぼす恐れがあるため、結局ガラスの生産歩留まりが減少し、製造時間及びコストが増加する問題点が発生する恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、位置毎の温度制御が容易なフロート槽、それを含むガラスの製造装置、及び該フロート槽を利用したフロートガラスの製造方法を提供することを目的とする。
【0015】
本発明の他の目的及び長所は、下記の説明によって理解され得、本発明の実施例によってより明確に理解され得る。また、本発明の目的及び長所は、特許請求の範囲に示された手段及びその組合せによって実現できる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を達成するため、本発明によるフロート槽は、上記のフロート槽の上部に複数備えられて前記フロート槽の内部に熱を供給するヒーター;及び前記複数のヒーターのうち所定ヒーターの間に備えられて熱伝逹を遮断する遮断膜を含む。
【0017】
望ましくは、前記複数のヒーターは、一つまたはそれ以上のヒーター毎に相異なる熱量を供給する。
【0018】
また、望ましくは、前記遮断膜は相異なる熱量を供給するヒーター同士の間に備えられる。
【0019】
また、望ましくは、前記遮断膜は上下方向に長さ調節が可能である。
【0020】
また、望ましくは、前記遮断膜は少なくとも一部分の角度調節が可能である。
【0021】
また、望ましくは、前記遮断膜は下端部が曲げられる。
【0022】
また、望ましくは、前記フロート槽の内部温度を測定する温度測定部を更に含む。
【0023】
また、上記のような目的を果たすための本発明によるガラスの製造装置は、上述したフロート槽を含む。
【0024】
また、上記のような目的を果たすための本発明によるガラスの製造方法によれば、上述したフロート槽を利用してガラスを製造する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、フロート槽の内部温度を効果的に制御することができる。
【0026】
特に、本発明によれば、近傍に設けられた他のヒーターから不要な熱伝達が行われることを防止することができる。従って、フロート槽内部の位置毎に相異なる温度で制御することがより容易である。
【0027】
例えば、フロート槽の内部領域を複数の区域、すなわち複数のコントロールゾーンに分割し、各コントロールゾーン毎に相異なる熱量を供給してフロート槽の位置毎の温度勾配を形成するとき、他のコントロールゾーンに設けられたヒーターによる放射熱の伝達を遮断するかまたは減少させることができる。
【0028】
従って、本発明によれば、溶融金属〜溶融ガラスに提供される熱量を位置毎に差等化することがより容易になる。従って、本発明によれば、フロートガラスの品質及び歩留まりを向上でき、フロートガラスの製造コストや時間を節減することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の望ましい実施例を例示するものであり、発明の詳細な説明とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。
図1】フロートガラスを製造するフロート槽の構成を概略的に示した図である。
図2】本発明の一実施例によるフロート槽の構成を概略的に示した側断面図である。
図3】本発明の一実施例によるヒーター及び遮断膜の構成を概略的に示した図である。
図4】本発明の一実施例によるコントロールゾーン及び遮断膜の配置構成を概略的に示した上面図である。
図5】本発明の一実施例による遮断膜の形態を概略的に示した図である。
図6】本発明の他の実施例による遮断膜の構成を概略的に示した図である。
図7】本発明の更に他の実施例による遮断膜の構成を概略的に示した図である。
図8】本発明の更に他の実施例による遮断膜の構成を概略的に示した図である。
図9】本発明の更に他の実施例による遮断膜の構成を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施例を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び請求範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。
【0031】
従って、本明細書に記載された実施例及び図面に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0032】
図2は、本発明の一実施例によるフロート槽100の構成を概略的に示した側断面図である。図2の左側はフロート槽100の上流側を示し、右側はフロート槽100の下流側を示す。
【0033】
図2を参照すれば、本発明によるフロート槽100は、ヒーター110及び遮断膜120を含む。
【0034】
前記ヒーター110は、フロート槽100の内部に熱を供給してフロート槽100の内部温度を制御する。特に、ヒーター110は、フロート槽100の内部に収容されている溶融金属、及びその上部で浮動している溶融ガラスに適正な熱を供給する。
【0035】
このようなヒーター110は、フロート槽100内部への円滑な熱伝達及び設置上の便宜性など様々な面を考慮して、フロート槽100の上部側に備えることができる。すなわち、ヒーター110は、フロート槽100内部において、溶融金属や溶融ガラスの上面から上方に所定距離離隔した位置に設けることができる。
【0036】
前記ヒーター110は、フロート槽100内部全体に熱を供給しながらも、部分的に温度差を有するように温度勾配を形成するために、複数のヒーター110から成り得る。例えば、1つのフロート槽100の上部には、数百〜数千個のヒーター110が1つの水平面上で互いに多少離隔した状態で配置され得る。
【0037】
前記遮断膜120は、フロート槽100内部に備えられた複数のヒーター110のうち所定ヒーター110の間に備えられることで、熱伝逹を遮断することができる。すなわち、前記遮断膜120は、その両側に位置したヒーター110の間で、放射熱の伝達による干渉現象が発生することを遮断するか又は減らすことができる。
【0038】
例えば、図2に示されたように、フロート槽100の上部に12個のヒーター110が備えられた場合、3つのヒーター110毎にその間に遮断膜120を備えることができる。従って、12個のヒーター110は、3つの遮断膜120によってa1〜a4の4つの区域に分けることができ、それぞれの区域に位置したヒーター110は、その下部に位置する溶融ガラス及び/または溶融金属に熱を供給することができる。例えば、a1区域に位置するヒーター110はb1区域に位置する溶融ガラスに熱を供給し、a2区域に位置するヒーター110はb2区域に位置する溶融ガラスに熱を供給することができる。
【0039】
この場合、遮断膜120は他の区域に位置するヒーター110から熱が供給されることを遮断または最小化することができる。すなわち、b1区域に位置する溶融ガラスには、a1区域に位置するヒーター110からの熱が供給されるようにし、a2区域〜a4区域に位置するヒーター110からの熱供給は遮断するか又は減らすように、本発明の一実施例によるフロート槽100はa1区域とa2区域との間に遮断膜120を備えることができる。このように、本発明では、所定ヒーター110の間に遮断膜120が備えられることで、遮断膜120の間で熱が伝達されることを遮断するか又は減少させることができる。
【0040】
望ましくは、フロート槽100に備えられた複数のヒーター110は、1つまたはそれ以上のヒーター110毎に相異なる温度で熱を供給することができる。このとき、フロート槽100の全領域をコントロールゾーンという複数の区域に区分し、各コントロールゾーンに1つ以上のヒーター110を設けて各コントロールゾーン毎のヒーター110の熱供給量を相異ならせることができる。
【0041】
そして、この場合、前記遮断膜120は、相異なる温度で熱を供給するヒーター110の間に備えることができる。すなわち、前記遮断膜120は、相異なる温度の熱が供給されるコントロールゾーンの間に備えられることで、コントロールゾーンの間におけるヒーター110による熱干渉を減少させることができる。
【0042】
図3は、本発明の一実施例によるヒーター110及び遮断膜120の構成を概略的に示した図である。
【0043】
図3を参照すれば、フロート槽100の内部がc1〜c5の5つのコントロールゾーンに区分され、各コントロールゾーンに3つのヒーター110が設けられている。そして、各コントロールゾーン毎に電力供給線(p)が別途連結されてコントロールゾーン毎に相異なる量の電力を供給することができる。例えば、コントロールゾーンc1に設けられた3つのヒーター110は、同一の電力供給線(p)に連結されているため、それぞれ同量の電力が供給され、コントロールゾーンc2に設けられた3つのヒーター110は、同一の電力供給線(p)に連結されているため、これらにもそれぞれ同量の電力が供給されることになる。しかし、コントロールゾーンc1に設けられたヒーター110と、コントロールゾーンc2に設けられたヒーター110とは、相異なる電力供給線(p)に連結されているため、これらにはそれぞれ異なる量の電力を供給することができる。従って、コントロールゾーンc1に設けられたヒーター110とコントロールゾーンc2に設けられたヒーター110とは、相異なる熱量を有し得る。同様に、c3〜c5に設けられたヒーター110も相異なる熱量を発生させることができる。
【0044】
但し、場合によっては、相異なるコントロールゾーンにも同一の電力を供給することも可能である。例えば、コントロールゾーンc4に設けられたヒーター110とコントロールゾーンc5に設けられたヒーター110とには、同一電力を供給して同一熱量を発生するように具現することができる。
【0045】
このように、フロート槽100に備えられたヒーター110は、複数のコントロールゾーンに区分されて相異なる熱量を供給できるが、その場合、遮断膜120は相異なる熱量を供給するヒーター110の間に備えられ得る。すなわち、前記遮断膜120は、各コントロールゾーンの間に設けられ得る。例えば、図3の実施例において、遮断膜120は、コントロールゾーンc1とコントロールゾーンc2との間、コントロールゾーンc2とコントロールゾーンc3との間、コントロールゾーンc3とコントロールゾーンc4との間、及びコントロールゾーンc4とコントロールゾーンc5との間にそれぞれ備えられ得る。そして、各遮断膜120は、その両側に位置するコントロールゾーンの間で放射熱が伝達されることを減少させることで、相互の熱干渉の発生を減らすことができる。
【0046】
なお、図3には、フロート槽100の1軸方向にコントロールゾーンが区分される場合が示されているが、このようなコントロールゾーンは2軸方向に区分することもできる。そして、各コントロールゾーン同士の間には、遮断膜120が備えられ得る。
【0047】
図4は、本発明の一実施例によるコントロールゾーン及び遮断膜120の配置構成を概略的に示した上面図である。図4の左側はフロート槽100の上流側を示し、右側はフロート槽100の下流側を示す。また、図面の上部側はフロート槽100の左側を示し、下部側はフロート槽100の右側を示す。そして、図4の点線は、溶融金属の上部で浮動している溶融ガラスを示す。
【0048】
図4を参照すれば、フロート槽100は、図面の左側から右側、すなわち上流側から下流側に、複数のコントロールゾーンに分割することができる。また、フロート槽100は、図面の上部側から下部側、すなわちフロート槽100の左側から右側にも、複数のコントロールゾーンに分割することができる。従って、フロート槽100の全領域は、2軸方向に複数のコントロールゾーンに区分することができる。図面において、各コントロールゾーンは長方形であり、cで示されている。但し、図面が複雑にならないように、図4では一部のコントロールゾーンのみをcで示した。
【0049】
このような各コントロールゾーンには、1つ以上のヒーター110を設けることができる。従って、各コントロールゾーンには、それに備えられたヒーター110を通じて相異なる熱量を供給することができる。そして、各コントロールゾーンの間には遮断膜120を設けることができる。但し、図4では図面が複雑にならないように、遮断膜120の一部のみを120で示した。
【0050】
このように、コントロールゾーンの間に遮断膜120が備えられていれば、コントロールゾーンの間における放射熱の伝達による熱干渉を減らすことができる。
【0051】
従って、このような実施例によれば、各コントロールゾーン毎に温度を容易に調節できるため、フロート槽100の精密な温度制御が可能になって、フロート槽100の内部でフロートガラスの製造に好適な温度勾配を形成することができる。
【0052】
なお、図4に示されたコントロールゾーンと遮断膜120の構成及び個数などは一例に過ぎず、本発明がこのような構成の具体的な実施例によって限定されることはなく、多様な構成が可能である。
【0053】
望ましくは、前記遮断膜120は、プレート状に構成することができる。
【0054】
図5は、本発明の一実施例による遮断膜120の形態を概略的に示した図である。特に、図5は、フロート槽100内部で下部から上部を眺めたときの構成を示した図である。
【0055】
図5に示されたように、遮断膜120は、広い面を有するプレート状に構成することができる。そして、このような遮断膜120は、上部から下方に垂下した形態でフロート槽100の上部に設けることができ、その両面は相互間の熱伝達を遮断しようとするヒーター110にそれぞれ面することができる。
【0056】
図6は、本発明の他の実施例による遮断膜120の構成を概略的に示した図である。
【0057】
図6を参照すれば、コントロールゾーンc6とコントロールゾーンc7との間に遮断膜120が設けられている。そして、このような遮断膜120は、上下方向の長さ調節が可能に構成することができる。すなわち、使用者の選択によって、遮断膜120の下端部はフロート槽100の上部側に移動するか、または、フロート槽100の下部側に移動するように構成することができる。
【0058】
遮断膜120の下端部がフロート槽100の上部側に移動する場合、ヒーター110側から見たとき遮断膜120の上下方向の長さが短くなると言える。この場合、遮断膜120によるコントロールゾーンc6とコントロールゾーンc7との間の熱伝達の遮断効果が相対的に低下する。一方、遮断膜120の下端部がフロート槽100の下部側に移動する場合、ヒーター110側から見れば、遮断膜120の上下方向の長さが長くなると言える。この場合、遮断膜120によるコントロールゾーンc6とコントロールゾーンc7との間の熱伝達の遮断効果が相対的に高くなる。
【0059】
このような実施例によれば、遮断膜120の上下方向の長さ調節を通じて、フロート槽100の内部温度をより調節し易い。
【0060】
例えば、コントロールゾーンc6とコントロールゾーンc7との間の温度差をより明確にする場合、遮断膜120の下端部をフロート槽100の下部側に移動させることで、すなわち遮断膜120の上下方向の長さを長くすることで、コントロールゾーンc7とコントロールゾーンc6との間の熱伝達をより一層遮断することができる。このときに、コントロールゾーンc6に属したヒーター110による放射熱がコントロールゾーンc7に伝達されることを防止し、コントロールゾーンc7に属したヒーター110による放射熱がコントロールゾーンc6に伝達されることを防止する効果を高めることができる。
【0061】
逆に、コントロールゾーンc6とコントロールゾーンc7との間の温度差が過度であるか又は不要である場合などは、遮断膜120の上下方向の長さを短くすることで、コントロールゾーンc7とコントロールゾーンc6との間で熱がよく伝達されるようにすることができる。すなわち、コントロールゾーンc7に比べてコントロールゾーンc6の温度が高く、コントロールゾーンc7の温度を高める必要がある場合、遮断膜120の下端部を上方に移動させることで、c6に属したヒーター110の供給熱をコントロールゾーンc7に到達させることができる。
【0062】
図7は、本発明の更に他の実施例による遮断膜120の構成を概略的に示した図である。
【0063】
図7を参照すれば、コントロールゾーンc8とコントロールゾーンc9との間に遮断膜120が設けられている。そして、このような遮断膜120は、角度を調節できるように構成することができる。すなわち、使用者の選択によって、遮断膜120の上下方向と溶融ガラスの表面とが成す角度を変化させることができる。
【0064】
例えば、遮断膜120は、上下方向の長さと溶融ガラスの表面とが成す角度が垂直であり得る。しかし、場合によって遮断膜120は、コントロールゾーンc8側に傾くか、または、コントロールゾーンc9側に傾くこともできる。
【0065】
このような実施例によれば、遮断膜120の角度調節を通じて、ヒーター110によって各コントロールゾーンに供給される熱量を制御することができる。すなわち、遮断膜120をコントロールゾーンc8側に傾けて構成するほど、コントロールゾーンc8に属したヒーター110の供給熱がコントロールゾーンc9に移動することをよりうまく遮断することができる。また、コントロールゾーンc8に属したヒーター110の供給熱がコントロールゾーンc8に移動することもよりうまく遮断することができる。それは、遮断膜120がコントロールゾーンc8側に傾くほど、コントロールゾーンc8に属したヒーター110が供給する放射熱の移動経路をより一層遮断できるためである。一方、このように遮断膜120をコントロールゾーンc8側に傾けて構成する場合、コントロールゾーンc9に属したヒーター110による放射熱は、コントロールゾーンc8により多く供給され得る。
【0066】
なお、図7の実施例では、遮断膜120の全部分が傾くことにより角度調節が可能な構成が示されているが、これは一例に過ぎず、本発明が必ずしもこのような実施例によって限定されることはない。例えば、遮断膜120の上部は固定され、下部のみが角度調節できるように構成することもできる。
【0067】
図8は、本発明の更に他の実施例による遮断膜120の構成を概略的に示した図である。
【0068】
図8に示されたように、遮断膜120は、下端部を曲げた形態に構成することができる。すなわち、遮断膜120は、フロート槽100の上部側から下方に垂下してから、下端部が両側に位置したヒーター110側に曲がるように構成することができる。そのため、遮断膜120は、図面に示されたように、下端部が下にいくほど徐々に厚くなるように構成することができる。または、遮断膜120は、下端部が両方向に分岐し、分岐した部分がそれぞれ遮断膜120の両側に位置したヒーター110側に曲がるように構成することもできる。
【0069】
このような実施例によれば、下端部が曲げられた構成により、コントロールゾーン間の遮断膜120による熱伝達の遮断効果を更に向上させることができる。
【0070】
図9は、本発明の更に他の実施例による遮断膜120の構成を概略的に示した図である。
【0071】
図9を参照すれば、遮断膜120は、フロート槽100の上部でヒーター110より低い位置に設けることができる。すなわち、遮断膜120の上端部が、ヒーター110の上端部と同じ位置ではなく、ヒーター110より低い位置に備えられるように構成することができる。
【0072】
望ましくは、本発明によるフロート槽100は、温度測定部を更に含むことができる。
【0073】
前記温度測定部は、フロート槽100内部の温度を測定することができる。特に、温度測定部は、遮断膜120によって区分される区域毎に温度を測定することができる。例えば、図4の実施例のように、フロート槽100内部の領域が複数のコントロールゾーンに分割され、各コントロールゾーン同士の間に遮断膜120が備えられる場合、温度測定部は各コントロールゾーン毎に温度を測定することができる。そのため、温度測定部は、各コントロールゾーン毎に温度を測定するための別途のセンサーを設けるか、または、フロート槽100の全領域の映像センサーなどを通じて、各コントロールゾーンの温度を測定するなどの多様な方式で各コントロールゾーンの温度を測定することができる。
【0074】
この場合、前記ヒーター110は、このような温度測定部の温度測定値によって特定区域の熱供給量を制御することができる。例えば、温度測定部によって特定コントロールゾーンの温度が基準以下であると測定された場合、該当コントロールゾーンに属したヒーター110は、熱供給量を増やして該当コントロールゾーンの温度を上昇させることができる。逆に、温度測定部によって特定コントロールゾーンの温度が基準以上であると測定された場合、該当コントロールゾーンに属したヒーター110は、熱供給量を減らして該コントロールゾーンの温度を下降させることができる。
【0075】
この場合、本発明によるフロート槽100は、温度測定部による温度測定値に応じてヒーター110の熱供給量を制御するための制御部を別途含むことができる。
【0076】
本発明によるフロート槽100において、前記遮断膜120は、多様な材質から構成することができる。望ましくは、前記遮断膜120は、例えば1300℃〜600℃程度の非常に高い温度に維持されているフロート槽100内部の環境でよく耐えて、変形し難い材質からなり得る。例えば、前記遮断膜120は、耐火物材質からなり得る。
【0077】
上述したフロート槽100は、フロートガラスの製造装置に含まれてフロートガラスの製造に利用される。すなわち、本発明によるフロートガラスの製造装置は、上述したフロート槽100を含むことができる。そして、このようなフロートガラスの製造装置には、上述したフロート槽100の外に、フロート槽100に溶融ガラスを供給する溶融炉、フロート槽100で成形されたガラスリボンを徐冷する徐冷炉などを更に含むことができる。
【0078】
本発明によるガラスの製造方法によれば、上述したフロート槽100を利用してガラスを製造する。
【0079】
すなわち、本発明によるガラスの製造方法は、フロート槽100の内部に熱を供給する複数のヒーター110をフロート槽100の上部に設ける段階、及び複数のヒーター110のうち所定ヒーター110の間の熱伝逹を遮断する遮断膜120を設ける段階を含むことができる。
【0080】
そして、本発明によるガラスの製造方法は、このようなフロート槽100に溶融ガラスを供給する段階、及びフロート槽100で成形されたガラスを徐冷する段階を更に含むことができる。
【0081】
以上、本発明を限定された実施例と図面に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明が属する技術分野で通常の知識を持つ者によって、本発明の技術思想と特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能であることは勿論である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9