特許第6048711号(P6048711)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6048711多結晶リチウムマンガン酸化物粒子、その製造方法及びこれを含む正極活物質、正極、およびリチウム二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048711
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】多結晶リチウムマンガン酸化物粒子、その製造方法及びこれを含む正極活物質、正極、およびリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   C01G 45/00 20060101AFI20161212BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20161212BHJP
【FI】
   C01G45/00
   H01M4/505
【請求項の数】29
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-528424(P2015-528424)
(86)(22)【出願日】2014年7月25日
(65)【公表番号】特表2015-530966(P2015-530966A)
(43)【公表日】2015年10月29日
(86)【国際出願番号】KR2014006841
(87)【国際公開番号】WO2015012649
(87)【国際公開日】20150129
【審査請求日】2015年2月2日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0089071
(32)【優先日】2013年7月26日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】クワク、イック スーン
(72)【発明者】
【氏名】チョ、セウン ベオム
(72)【発明者】
【氏名】チャエ、ホワ セオク
【審査官】 佐藤 哲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−215891(JP,A)
【文献】 特表2011−519122(JP,A)
【文献】 特開平11−176441(JP,A)
【文献】 特表2014−512638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 25/00 − 47/00
C01G 49/10 − 99/00
H01M 4/505
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表され、152nmから300nm範囲の平均の結晶の大きさを有する二つ以上の一次粒子が凝集された二次粒子の形態である多結晶リチウムマンガン酸化物粒子:
【化1】
前記式で、MはNa、またはNaを含む2種以上の混合元素であり、0≦x≦0.2、0<y≦0.2、0<f≦0.2及び0≦z≦0.2である。
【請求項2】
前記式(1)において、前記fの範囲は0.001≦f≦0.03である請求項1に記載の多結晶リチウムマンガン酸化物粒子。
【請求項3】
前記式(1)において、前記混合元素はB、Co、V、La、Ti、Ni、Zr、Y及びGaからなる群より選択されたいずれか一つ、またはこれらのうち2種以上の混合元素を含む請求項1または請求項2に記載の多結晶リチウムマンガン酸化物粒子。
【請求項4】
前記式(1)において、前記MはNa、またはNa及びBの混合元素である請求項3に記載の多結晶リチウムマンガン酸化物粒子。
【請求項5】
前記二次粒子の平均粒径D50は、5μmから20μmの範囲である請求項1から請求項4の何れか一項に記載の多結晶リチウムマンガン酸化物粒子。
【請求項6】
前記多結晶リチウムマンガン酸化物粒子のうちNaの元素の量は、700ppmから3000ppmである請求項1から請求項5の何れか一項に記載の多結晶リチウムマンガン酸化物粒子。
【請求項7】
前記リチウムマンガン酸化物粒子は、X線回折分析(X−ray diffraction)測定時にI(111)/I(111)ピーク強度比を100%に定義する場合、I(311)/I(111)が40%以上である請求項1から請求項6の何れか一項に記載の多結晶リチウムマンガン酸化物粒子。
【請求項8】
前記リチウムマンガン酸化物粒子は、X線回折分析(X−ray diffraction)測定時にI(111)/I(111)ピーク強度比を100%に定義する場合、I(400)/I(111)が40%以上で、I(440)/I(111)が20%以上である請求項1から請求項7の何れか一項に記載の多結晶リチウムマンガン酸化物粒子。
【請求項9】
前記リチウムマンガン酸化物粒子は、X線回折分析(X−ray diffraction)測定時に(311)ピークの半値幅(Full Width at Half−Maximum;FWHM)が0.3度以下である請求項1から請求項8の何れか一項に記載の多結晶リチウムマンガン酸化物粒子。
【請求項10】
前記リチウムマンガン酸化物粒子の比表面積(BET)は、0.5m/g以下である請求項1から請求項9の何れか一項に記載の多結晶リチウムマンガン酸化物粒子。
【請求項11】
多結晶リチウムマンガン酸化物粒子の製造方法であって、
(i)多結晶マンガン前駆体、リチウム前駆体及び焼結補助剤を含む前駆体混合物を得る段階;及び
(ii)前記段階(i)で得た前駆体混合物を焼成する段階
を含み、
前記多結晶リチウムマンガン酸化物粒子は、152nmから300nm範囲の平均の結晶の大きさを有する二つ以上の一次粒子が凝集された二次粒子の形態である、下記式(1)で表される多結晶リチウムマンガン酸化物粒子の製造方法:
【化2】
前記式で、MはNa、またはNaを含む2種以上の混合元素であり、0≦x≦0.2、0<y≦0.2、0<f≦0.2及び0≦z≦0.2である。
【請求項12】
前記多結晶マンガン前駆体は100nmから300nm範囲の平均の結晶の大きさを有する二つ以上の一次粒子が凝集されて形成された二次粒子の形態である請求項11に記載の多結晶リチウムマンガン酸化物粒子の製造方法。
【請求項13】
前記二次粒子の平均粒径D50は、9μmから25μmである請求項12に記載の多結晶リチウムマンガン酸化物粒子の製造方法。
【請求項14】
前記二次粒子の平均粒径D50は、9μmから15μmである請求項13に記載の多結晶リチウムマンガン酸化物粒子の製造方法。
【請求項15】
前記多結晶マンガン前駆体は、Alを0.01重量%から10重量%で含む請求項11から請求項14の何れか一項に記載の多結晶リチウムマンガン酸化物粒子の製造方法。
【請求項16】
前記多結晶マンガン前駆体は、(Mn(1−y)Al (0<y≦0.2)を含む請求項15に記載の多結晶リチウムマンガン酸化物粒子の製造方法。
【請求項17】
前記多結晶マンガン前駆体は、MnCO、Mn、MnSO及びMnからなる群より選択されたいずれか一つ、またはこれらのうち2種以上の混合物をアルミニウム化合物とともに共沈させて形成されたものである請求項16に記載の多結晶リチウムマンガン酸化物粒子の製造方法。
【請求項18】
前記アルミニウム化合物は、AlSO、AlCl及びAlNOからなる群より選択されたいずれか一つ、またはこれらのうち2種以上の混合物である請求項17に記載の多結晶リチウムマンガン酸化物粒子の製造方法。
【請求項19】
前記焼結補助剤は、ナトリウム化合物を含む請求項11から請求項18の何れか1項に記載の多結晶リチウムマンガン酸化物粒子の製造方法。
【請求項20】
前記焼結補助剤は、ホウ素化合物、コバルト化合物、バナジウム化合物、ランタン化合物、ジルコニウム化合物、イットリウム化合物及びガリウム化合物からなる群より選択されたいずれか一つ、またはこれらのうち2種以上の混合物をさらに含む請求項19に記載の多結晶リチウムマンガン酸化物粒子の製造方法。
【請求項21】
前記焼結補助剤は、ナトリウム化合物、またはナトリウム化合物とホウ素化合物の混合物である請求項19に記載の多結晶リチウムマンガン酸化物粒子の製造方法。
【請求項22】
前記ナトリウム化合物は、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、水酸化ナトリウムまたはこれらの2種以上の混合物である請求項19から請求項21の何れか一項に記載の多結晶リチウムマンガン酸化物粒子の製造方法。
【請求項23】
前記ホウ素化合物はホウ酸、四ホウ酸リチウム、酸化ホウ素及びホウ酸アンモニウムからなる群より選択されたいずれか一つ、またはこれらのうち2種以上の混合物である請求項21に記載の多結晶リチウムマンガン酸化物粒子の製造方法。
【請求項24】
前記焼結補助剤は、多結晶マンガン前駆体の総重量に対して0.2重量から2重量の量で用いられる請求項11から請求項23の何れか一項に記載の多結晶リチウムマンガン酸化物粒子の製造方法。
【請求項25】
前記焼成は、700℃から1000℃の温度で行われる請求項11から請求項24の何れか一項に記載の多結晶リチウムマンガン酸化物粒子の製造方法。
【請求項26】
前記リチウム前駆体は塩化リチウム(LiCl)、炭酸リチウム(LiCO)、水酸化リチウム(LiOH)、リン酸リチウム(LiPO)及び硝酸リチウム(LiNO)からなる群より選択されたいずれか一つ、またはこれらのうち2種以上の混合物である請求項11から請求項25の何れか一項に記載の多結晶リチウムマンガン酸化物粒子の製造方法。
【請求項27】
請求項1から請求項10の何れか一項に記載の多結晶リチウムマンガン酸化物粒子を含む正極活物質。
【請求項28】
請求項27に記載の正極活物質を含む正極。
【請求項29】
請求項28に記載の正極を含むリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多結晶リチウムマンガン酸化物粒子、その製造方法及びこれを含むリチウム二次電池用正極活物質に関する。
【背景技術】
【0002】
環境問題に対する関心が高まるに伴い、大気汚染の主要原因の一つであるガソリン車両、ディーゼル車両などの、化石燃料を用いる車両を代替し得る電気自動車、ハイブリッド電気自動車に対する研究が進められている。
【0003】
このような電気自動車、ハイブリッド電気自動車などの動力源として、高いエネルギー密度を有するリチウム二次電池を用いる研究が活発に進められており、一部は商用化段階にある。
【0004】
このようなリチウム二次電池の正極活物質としては、主にリチウムコバルト酸化物(LiCoO)が用いられており、それ以外に層状結晶構造のLiMnO、スピネル結晶構造のLiMnなどのリチウムマンガン酸化物と、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)の使用も考慮されている。
【0005】
このうち、LiMnなどのリチウムマンガン酸化物は、熱的安全性に優れて価格が安いとの長所があるが、容量が小さくてサイクル特性が悪く、高温特性が劣悪であるとの問題点がある。
【0006】
LiMnの構造をみれば、Liイオン等が四面体(8a)位置にあり、Mnイオン(Mn3+/Mn4+)等が八面体(16d)位置に、またO2−イオン等が八面体(16c)位置に位置する。これらイオンは立方稠密充填(cubic closed−packing)配列を形成する。8aの四面体位置は、周りに空席を有する16cの八面体位置と面を共有して3次元的なチャンネルを形成し、Liイオン等が容易に移動することのできる通路を提供する。
【0007】
特に、LiMnの最も大きい問題点は、サイクルが進められるのに伴い容量が減少することである。これはヤーン・テラー変形(Jahn−Teller distortion)と呼ばれる構造変化、すなわち、放電末期(3V近傍)にMnイオンの酸化数変化によって、立方型(cubic)から正四角形(tetragonal)へ相転移するためである。また、容量減少の原因はマンガンの電解液への溶出現象などを挙げることができる。
【0008】
このような問題点等を解決するため、量論比であるLiMnにLiとMn金属イオンとの位置交替を防止するためにLiを1.01〜1.1倍過量に添加する方法と、Mnイオンの酸化数を調節するか、立方型から正四角形への相遷移を防ぐためにMn位置に遷移金属や2価と3価の陽イオンを置換する方法など、多くの研究が進められてきた。
【0009】
しかし、このような方法等は量論比であるLiMnに比べて容量減少を低減させることができたが、ヤーン・テラー変形(Jahn−Teller distortion)とMn2+の溶出問題を解決することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】大韓民国公開特許 第10−2011−1076905号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする第1の技術的課題は、ヤーン・テラー変形(Jahn−Teller distortion)とMn2+の溶出の問題を解決することにより、二次電池の寿命特性及び充放電容量特性を向上させることができる多結晶リチウムマンガン酸化物粒子を提供することにある。
【0012】
本発明が解決しようとする第2の技術的課題は、製造コストが低廉な乾式法を利用し、湿式法で製造されたリチウムマンガン酸化物より優れた二次電池の特性を表すことができるだけでなく、低温で結晶が容易に成長され、乾式混合時の不均一反応を最少化することができる前記多結晶リチウムマンガン酸化物粒子の製造方法を提供することにある。
【0013】
本発明が解決しようとする第3の技術的課題は、前記多結晶リチウムマンガン酸化物粒子を含む正極活物質及び正極を提供することにある。
【0014】
本発明が解決しようとする第4の技術的課題は、前記正極を含むリチウム二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するため、本発明は下記式(1)で表される多結晶リチウムマンガン酸化物粒子を提供する:
【化1】
前記式で、MはNa、またはNaを含む2種以上の混合元素であり、0≦x≦0.2、0<y≦0.2、0<f≦0.2及び0≦z≦0.2である。
【0016】
さらに、本発明は一実施例に基づき、(i)多結晶マンガン前駆体、リチウム前駆体及び焼結補助剤を含む前駆体混合物を得る段階;及び(ii)前記段階(i)で得た前駆体混合物を焼成する段階を含む前記式(1)で表される多結晶リチウムマンガン酸化物粒子の製造方法を提供する。
【0017】
さらに、本発明は前記多結晶リチウムマンガン酸化物粒子を含む正極活物質を提供する。
【0018】
併せて、本発明は前記正極活物質を含む正極を提供する。
【0019】
さらに、本発明は前記正極を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一実施例によれば、前記多結晶リチウムマンガン酸化物粒子を構造的に安定化させてヤーン・テラー変形(Jahn−Teller distortion)とMn2+の溶出の問題を解決することにより、二次電池の寿命特性及び充放電容量特性を向上させることができる。
【0021】
さらに、本発明の実施例に係る製造方法によれば、焼結補助剤を少量添加し、製造コストが低廉な乾式法を利用して、低温でも多結晶リチウムマンガン酸化物粒子の結晶を容易に成長させることができ、乾式混合時の不均一反応を最少化させることにより、優れた電池特性を有する二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本明細書の図等は、本発明の好ましい実施例を例示するものであり、前述した発明の内容とともに本発明の技術思想をさらに理解させる役割を担うものなので、本発明はそのような図に記載された事項のみに限定して解釈されてはならない。
図1】本発明の実施例1で製造された多結晶リチウムマンガン酸化物粒子の断面SEM写真を示した図である。
図2】比較例4で製造されたリチウムマンガン酸化物粒子の断面SEM写真を示した図である。
図3】本発明の実施例1で製造された多結晶リチウムマンガン酸化物粒子のX線回折分析測定の結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に対する理解を助けるため、本発明をさらに詳しく説明する。
【0024】
本明細書及び特許請求の範囲に用いられた用語や単語は、通常的且つ辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自分の発明を最良の方法で説明するため用語の概念を適宜定義することができるとの原則に即して、本発明の技術的思想に符合する意味と概念に解釈されなければならない。
【0025】
本発明の一実施例に係る多結晶リチウムマンガン酸化物粒子は、下記式(1)の化合物で表すことができる:
【化2】
【0026】
前記式で、MはNa、またはNaを含む2種以上の混合元素であり、0≦x≦0.2、0<y≦0.2、0<f≦0.2及び0≦z≦0.2である。
【0027】
このとき、前記式(1)でzが0でない場合、酸素欠乏(vacancy)で存在することができる。本発明では、好ましくは酸素欠乏がないことが安定的な層状構造の形成に有利なので、z=0である場合がよい。
【0028】
一般に、スピネル構造のLiMnは、リチウム移動経路を有する構造的特性のため、リチウムイオンの速やかな拡散が可能であるとの点と高容量を有するが、高い電圧区間での電解質の不安定性、過放電時のMn3+のヤーン・テラー変形(Jahn−Teller distortion)及び放電時のマンガンイオン(Mn2+)の溶出などのような問題点を有している。
【0029】
具体的に検討してみれば、LiMnは格子内にリチウムイオンが不足するか激しい放電条件では、Mn4+に比べてMn3+が相対的に多くなる。これにより、構造の捻れが発生し、不安定なMn3+の増加により、引き続く充放電過程でMnイオンの酸化数変化による立方型(cubic)から正四角形(tetragonal)への相転移によって、結局は構造の可逆性の減少につながる。
【0030】
また、マンガンイオンの溶出は、電極の表面で不安定なMn3+が同種間取り交わす反応を介してMn2+とMn4+に変化し、生成されたMn2+が酸性電解質に溶けて活物質の量が減少することとなり、負極で金属として析出され、リチウムイオンの移動を妨げながら、結果的に容量減少(capacity fading)をもたらすので、二次電池の寿命特性を縮めさせる。
【0031】
前記スピネル系のLiMnが正極活物質としての特性を決める重要な要素として、LiMn粒子の大きさ、形状、構造及び化学組成などを挙げることができる。
【0032】
本発明の一実施例によれば、前記式(1)で表される多結晶リチウムマンガン酸化物粒子は、図1に示す通り、リチウムマンガン酸化物のエッジ(角部分)が一般的なリチウムマンガン酸化物のエッジより鈍くて丸い曲線形態のエッジを有する粒子を有し、構造的に安定なのでヤーン・テラー変形(Jahn−Teller distortion)とMn2+の溶出を最少化することができることから、二次電池の寿命特性及び充放電容量特性を向上させることができる。
【0033】
本発明の一実施例に係る前記多結晶リチウムマンガン酸化物粒子において、「多結晶(polycrystal)」とは、152nmから300nm、好ましくは155nmから250nm、最も好ましくは150nmから210nm範囲の平均の結晶の大きさを有する二つ以上の結晶粒子が集まってなる結晶体を意味する。
【0034】
さらに、本明細書では、前記多結晶体をなす結晶粒子等は一次粒子を意味することができる。前記多結晶体は、このような一次粒子が凝集された二次粒子の形態を意味することができ、球状または類似球状のポリクリスタルであり得る。
【0035】
本発明の一実施例に係る前記多結晶リチウムマンガン酸化物粒子において、一次粒子が凝集された二次粒子の平均粒径D50は、5μmから20μmであるのが好ましい。前記二次粒子の平均粒径が5μm未満の場合は、多結晶リチウムマンガン酸化物粒子の安定性が低下され得、平均粒径が20μmを超過する場合は二次電池の出力特性が低下され得る。
【0036】
本発明において、粒子の平均粒径D50は、粒径分布の50%基準における粒径として定義することができる。本発明の一実施例に係る前記粒子の平均粒径D50は、例えば、レーザ回折法(laser diffraction method)を用いて測定することができる。前記レーザ回折法は、一般にサブミクロン(submicron)領域から数mm程度の粒径の測定が可能であり、高再現性及び高分解性の結果を得ることができる。
【0037】
本発明の一実施例に係る、多結晶リチウムマンガン酸化物粒子の平均粒径D50の測定方法は、例えば、多結晶リチウムマンガン酸化物粒子を溶液に分散させた後、市販されるレーザ回折粒度測定装置(例えばMicrotrac MT 3000)に導入して約28kHzの超音波を出力60Wで照射した後、測定装置における粒径分布の50%基準での平均粒径D50を算出することができる。
【0038】
さらに、本発明の一実施例によれば、前記多結晶リチウムマンガン酸化物粒子を、X線回折分析を利用して一次粒子の平均の結晶の大きさを定量的に分析することができる。例えば、前記多結晶リチウムマンガン酸化物粒子をホルダーに入れ、X線を前記粒子に照射して出る回折格子を分析することにより、一次粒子の平均の結晶の大きさを定量的に分析することができる。
【0039】
本発明の一実施例に係る多結晶リチウムマンガン酸化物粒子は、スピネル系リチウムマンガン酸化物におけるマンガン位置の一部がAlとM(このとき、MはNa、またはNaを含む2種以上の混合元素である)で置換された形態である。
【0040】
前記式(1)において、マンガン位置の一部に置換可能なMの含有量であるfの範囲は0<f≦0.2であり、0.001≦f≦0.03であるのが好ましい。さらに、前記式(1)において、前記混合元素にはB、Co、V、La、Ti、Ni、Zr、Y及びGaからなる群より選択されたいずれか一つ、またはこれらのうち2種以上の混合元素をさらに含むことができ、さらに好ましくはNa、またはNa及びBの混合元素であり得る。前記Mの元素がNa元素の場合、Na1+イオンの形態で拡散速度が速く、イオン半径が小さい利点を有しているので、低い温度でも結晶の成長がよく起こって結晶構造の安定化に寄与することができる。
【0041】
このとき、fが0の場合、本発明が目的とする効果である、ヤーン・テラー変形による構造崩壊及びMn2+の溶出の問題の解決に困難があり得、0.2を超過する場合、多結晶リチウムマンガン酸化物粒子の凝集及び融着の程度が強まり、粉砕時に微粉が発生し得るので好ましくない。
【0042】
本発明の一実施例によれば、前記多結晶リチウムマンガン酸化物粒子のうちNaの元素の量は700ppmから3000ppm、好ましくは700ppmから1400ppmの量であり得る。前記Na元素の量が700ppm未満の場合、本発明が目的とする効果である、ヤーン・テラー変形による構造崩壊及びMn2+の溶出の問題の解決に困難があり得、3000ppmを超過する場合、多結晶リチウムマンガン酸化物粒子の凝集及び融着の程度が強まり、粉砕時に微粉が発生し得るので好ましくない。
【0043】
本発明に係る多結晶リチウムマンガン酸化物粒子のX線回折分析(X−ray diffraction)において、特に、(111)面に対して、(311)、(400)及び(440)面が成長した構造であり得る。
【0044】
具体的に検討してみれば、X線回折分析測定時にI(111)/I(111)ピーク強度比を100%にしたとき、好ましくはI(311)/I(111)が40%以上で、I(400)/I(111)が40%以上であり、I(440)/I(111)が20%以上であり得る。
【0045】
また、本発明の一実施例によれば、前記多結晶リチウムマンガン酸化物粒子は、X線回折で(311)ピークの半値幅(Full Width at Half−Maximum;FWHM)が0.3度以下であるのが好ましい。
【0046】
本発明において、前記半値幅(FWHM)は前記多結晶リチウムマンガン酸化物粒子のX線回折で得た(311)ピーク強度の1/2位置でのピーク幅を数値化したものである。
【0047】
前記半値幅(FWHM)の単位は2θの単位である度(゜)で表すことができ、結晶性が高い多結晶リチウムマンガン酸化物粒子であるほど、半値幅の数値が小さい。
【0048】
また、本発明の一実施例に係る多結晶リチウムマンガン酸化物粒子のBET比表面積は0.5m/g以下であるのが好ましい。BET比表面積が0.5m/gを超過する場合、二次電池の出力特性が低下され得る。
【0049】
本発明の一実施例によれば、前記多結晶リチウムマンガン酸化物粒子の比表面積はBET(Brunauer−Emmett−Teller;BET)法で測定することができる。例えば、気孔分布測定器(Porosimetry analyzer;Bell Japan Inc、Belsorp−II mini)を用いて窒素ガス吸着流通法によってBET6点法で測定することができる。
【0050】
さらに、本発明は前記多結晶リチウムマンガン酸化物粒子の製造方法を提供する。
【0051】
本発明の一実施例によれば、(i)多結晶マンガン前駆体、リチウム前駆体及び焼結補助剤を含む前駆体混合物を得る段階;及び(ii)前記段階(i)で得た前駆体混合物を焼成する段階を含む前記式(1)で表される多結晶リチウムマンガン酸化物粒子の製造方法を提供する。
【0052】
本発明の一実施例によれば、製造コストが低廉な乾式法を利用し、湿式法によって製造されたものより優れた性能を有する多結晶リチウムマンガン酸化物粒子を容易に製造することができ、特に、焼結補助剤を添加することにより低温で結晶を容易に成長させることができ、乾式混合時の不均一反応を最少化することができる。
【0053】
本発明の一実施例に基づいて使用可能な前記焼結補助剤は、結晶成長用添加剤として、多結晶リチウムマンガン酸化物粒子の結晶成長を促進させることができる物質であれば特に制限されるものではない。
【0054】
前記焼結補助剤は、多結晶リチウムマンガン酸化物粒子のエッジ(角部分)を鈍くして丸い曲線形態の粒子に作る効果がある。前記多結晶リチウムマンガン酸化物粒子では粒子のエッジからマンガンの溶出が発生することがあり得、このようなマンガンの溶出によって二次電池の特性、特に高温時の寿命特性が減少され得る。
【0055】
ここに、本発明の一実施例に係る製造方法によれば、多結晶リチウムマンガン酸化物粒子のエッジを丸くした粒子に作ることにより、マンガンの溶出部位を減少させることができ、その結果、二次電池の安定性及び寿命特性を向上させることができる。
【0056】
本発明の一実施例に基づいて使用可能な焼結補助剤は、ナトリウム化合物を含む一つまたは2種以上の混合物を含むことができる。前記混合物は、ナトリウム化合物とともにホウ素化合物、コバルト化合物、バナジウム化合物、ランタン化合物、ジルコニウム化合物、イットリウム化合物及びガリウム化合物からなる群より選択されたいずれか一つ、またはこれらのうち2種以上の混合物を用いることができる。
【0057】
前記焼結補助剤は、好ましくはナトリウム化合物、またはナトリウム化合物とホウ素化合物の混合物を用いることがよい。
【0058】
前記ナトリウム化合物は炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、水酸化ナトリウムまたはこれらの2種以上の混合物を用いることができる。
【0059】
前記ホウ素化合物はホウ酸、四ホウ酸リチウム、酸化ホウ素及びホウ酸アンモニウムからなる群より選択されたいずれか一つ、またはこれらのうち2種以上の混合物を用いることができる。
【0060】
前記コバルト化合物は酸化コバルト(II)、酸化コバルト(III)、酸化コバルト(IV)及び四酸化三コバルトからなる群より選択されたいずれか一つ、またはこれらのうち2種以上の混合物を用いることができる。
【0061】
前記バナジウム化合物、ランタン化合物、イットリウム化合物またはガリウム化合物は、それぞれ酸化バナジウム、酸化ランタン、酸化イットリウムまたは酸化ガリウム化合物を用いることができる。
【0062】
前記ジルコニウム化合物は、ホウ化ジルコニウム、ケイ酸カルシウムジルコニウム及び酸化ジルコニウムからなる群より選択されたいずれか一つ、またはこれらのうち2種以上の混合物を用いることができる。
【0063】
前記焼結補助剤は、多結晶マンガン前駆体の総重量に対して0.2重量から2重量、好ましくは0.4重量から1.4重量の量で用いることができる。前記焼結補助剤の量が0.2重量未満の場合、本発明が目的とする効果である、ヤーン・テラー変形による構造崩壊及びMn2+の溶出の問題の解決に困難があり得、2重量を超過する場合、多結晶リチウムマンガン酸化物粒子の凝集及び融着の程度が強まり、粉砕時に微粉が発生し得るので好ましくない。
【0064】
さらに、本発明の一実施例によると、前記多結晶マンガン前駆体の平均粒径D50が多結晶リチウムマンガン酸化物粒子の構造的安定性及び二次電池の性能特性に重要な影響を及ぼす。
【0065】
本発明の一実施例に基づいて使用可能な多結晶マンガン前駆体は、100nmから300nm、さらに好ましくは100nmから200nmの平均の結晶の大きさを有する二つ以上の一次粒子が凝集されて形成された二次粒子の形態である多結晶(polycrystal)形態であり得る。前記多結晶マンガン前駆体において、「多結晶」とは、前記多結晶リチウムマンガン酸化物での定義と同一であり得る。
【0066】
前記多結晶のマンガン前駆体である二次粒子の平均粒径D50は、9μmから25μm、好ましくは9μmから15μmであるのが好ましい。前記範囲の平均粒径を有する多結晶マンガン前駆体は粒径が大きいためタップ密度が大きく、BET比表面積が小さくなり得るので、電解液との反応性が低下するため二次電池の寿命特性が向上され得る。
【0067】
また、本発明の一実施例に係る前記マンガン前駆体は、微細で結晶性の低いアルミニウム化合物がマンガン前駆体と均一に混合された状態で存在することができ、マンガン前駆体内にAlをマンガン前駆体の総重量に対して0.01重量%から10重量%、好ましくは0.05重量%から5重量%の量で含むことができる。前記Alが含まれた多結晶マンガン前駆体は(Mn(1−y)Al(0<y≦0.2)を含むことができる。
【0068】
具体的に検討してみれば、Alを含む多結晶マンガン前駆体はMnCO、Mn、MnSO及びMnからなる群より選択されたいずれか一つ、またはこれらのうち2種以上の混合物を共沈法によってアルミニウム化合物とともに共沈させて形成されることにより、二つ以上の一次粒子が凝集された二次粒子の形態で得ることができる。
【0069】
例えば、共沈反応器に蒸留水とアンモニア水溶液を入れた後、空気を前記反応器内に供給して撹拌することができる。その後、MnCO、Mn、MnSO及びMnからなる群より選択されたいずれか一つ、またはこれらのうち2種以上の混合物及びアルミニウム化合物(例:AlSO)を適正なモル比で含むマンガンアルミニウム化合物水溶液、錯化剤であるアンモニア水溶液、及びpH調節剤としてアルカリ水溶液を前記反応器内に連続的に投入して混合した後、前記反応器内にNを投入してAlを含有する多結晶マンガン化合物(Mn(1−y)Al(0<y≦0.2)を製造することができる。
【0070】
前記アルミニウム化合物は、好ましくはAlSO、AlCl及びAlNOからなる群より選択されたいずれか一つ、またはこれらのうち2種以上の混合物を挙げることができるが、これに制限されるものではない。
【0071】
前記多結晶リチウムマンガン酸化物粒子の製造方法において、前記焼成は700℃から1000℃の温度で、例えば約2時間から12時間の間行われ得る。
【0072】
前記リチウム前駆体は、塩化リチウム(LiCl)、炭酸リチウム(LiCO)、水酸化リチウム(LiOH)、リン酸リチウム(LiPO4)及び硝酸リチウム(LiNO)からなる群より選択されたいずれか一つ、またはこれらのうち2種以上の混合物であり得る。
【0073】
さらに、本発明は前記多結晶リチウムマンガン酸化物粒子を含む正極活物質を提供する。
【0074】
さらに、本発明は前記正極活物質を含む正極を提供する。
【0075】
前記正極は、当分野に知られている通常の方法で製造することができる。例えば、正極活物質に溶媒、必要に応じてバインダ、導電剤、分散剤を混合及び撹拌してスラリーを製造した後、これを金属材料の集電体に塗布(コーティング)し圧縮した後、乾燥して正極を製造することができる。
【0076】
金属材料の集電体は伝導性の高い金属であって、前記正極活物質のスラリーが容易に接着することができる金属として電池の電圧範囲で反応性がないものであればいずれも用いることができる。正極集電体の非制限的な例としては、アルミニウム、ニッケルまたはこれらの組合せによって製造されるホイルなどがある。
【0077】
前記正極を形成するための溶媒としては、NMP(N−メチルピロリドン)、DMF(ジメチルホルムアミド)、アセトン、ジメチルアセトアミドなどの有機溶媒または水などがあり、これら溶媒は単独にまたは2種以上を混合して用いることができる。溶媒の使用量は、スラリーの塗布の厚さ、製造収率を考慮して前記正極活物質、バインダ、導電剤を溶解及び分散させることができる程度であれば充分である。
【0078】
前記バインダとしては、ポリビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF−co−HFP)、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidenefluoride)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリル酸、エチレン−プロピレン−ジエンモノマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、ポリアクリル酸(poly acrylic acid)及びこれらの水素がLi、NaまたはCaなどで置換された高分子、または多様な共重合体の多様な種類のバインダ高分子が用いられ得る。
【0079】
前記導電剤は、当該電池に化学的変化を誘発しないながらも導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;炭素ナノチューブなどの導電性チューブ;フルオロカーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが用いられ得る。
【0080】
前記分散剤は、水系分散剤またはN−メチル−2−ピロリドンなどの有機分散剤を用いることができる。
【0081】
また、本発明は、前記正極、負極、前記正極と負極との間に介在されたセパレータを含む二次電池を提供する。
【0082】
本発明の一実施例に係る前記負極に用いられる負極活物質としては、通常、リチウムイオンが吸蔵及び放出され得る炭素材、リチウム金属、ケイ素または錫などを用いることができる。好ましくは炭素材を用いることができるが、炭素材としては低結晶性炭素及び高結晶性炭素などが全て用いられ得る。低結晶性炭素としては軟化炭素(soft carbon)及び硬化炭素(hard carbon)が代表的であり、高結晶性炭素としては天然黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish graphite)、熱分解炭素(pyrolytic carbon)、液晶ピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、炭素微小球体(meso−carbon microbeads)、液晶ピッチ(Mesophase pitches)及び石油と石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)などの高温焼成炭素が代表的である。
【0083】
また、負極集電体は、一般に3μmから500μmの厚さに作製される。このような負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発しないながらも導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム−カドミウム合金などが用いられ得る。また、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態に用いられ得る。
【0084】
負極に用いられるバインダ及び導電剤は、正極と同様に当分野に通常用いられ得るものを用いることができる。負極は、負極活物質及び前記添加剤等を混合及び撹拌して負極活物質スラリーを製造した後、これを集電体に塗布し圧縮して負極を製造することができる。
【0085】
また、セパレータとしては、従来にセパレータとして用いられた通常の多孔性高分子フィルム、例えばエチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムを単独にまたはこれらを積層して用いることができ、または通常の多孔性不織布、例えば高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0086】
本発明で用いられる電解質として含まれ得るリチウム塩は、リチウム二次電池用電解質に通常用いられるものなどが制限なく用いられてよく、例えば前記リチウム塩の陰イオンとしては、F、Cl、Br、I、NO、N(CN)、BF、ClO、PF、(CFPF、(CFPF、(CFPF、(CFPF、(CF、CFSO、CFCFSO、(CFSO、(FSO、CFCF(CFCO、(CFSOCH、(SF、(CFSO、CF(CFSO、CFCO、CHCO、SCN及び(CFCFSOからなる群より選択されたいずれか一つであってよい。
【0087】
本発明で用いられる電解質としては、リチウム二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル型高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などを挙げることができ、これらに限定されるものではない。
【0088】
本発明のリチウム二次電池の外形には特別な制限がないが、缶を用いた円筒型、角型、パウチ(pouch)型またはコイン(coin)型などになり得る。
【0089】
本発明に係るリチウム二次電池は、小型デバイスの電源として用いられる電池セルに使用可能なだけでなく、多数の電池セルを含む中大型電池モジュールに単位電池としても好ましく用いられ得る。
【0090】
前記中大型デバイスの好ましい例としては、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車及び電力貯蔵用システムなどを挙げることができるが、これらのみに限定されるものではない。
【0091】
以下、本発明を具体的に説明するため、実施例を挙げて詳しく説明する。しかし、本発明に係る実施例はいくつかの異なる形態に変形され得、本発明の範囲が下記で詳述する実施例に限定されるものと解釈されてはならない。本発明の実施例は、当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【実施例】
【0092】
以下、実施例及び実験例を挙げてさらに説明するが、本発明がこれら実施例及び実験例によって制限されるものではない。
【0093】
<多結晶リチウムマンガン酸化物粒子の製造>
実施例1
LiCO37.50g、10μmの平均粒径を有する(Mn0.95Al0.05141.88g、焼結補助剤としてNaCO 0.62g(0.01mol)をミキサー(Waring blender)に入れ、前記ミキサーの中心部rpmが18000rpmで、1分間混合した。前記混合された粉末を500ccのアルミナるつぼに入れて約800℃で4時間の間、大気(Air)雰囲気で焼成を行った。焼成後得たケーキ(cake)を乳ばちで粉砕した後、400メッシュ篩(sieve)を利用して分級を実施しLi(1.09)Mn1.80Al0.1Na0.01を得た。前記Li(1.09)Mn1.80Al0.1Na0.01は200nmの結晶の大きさを有する二つ以上の結晶粒子(一次粒子)が集まってなる二次粒子であって、前記二次粒子の平均粒径は1.05μmであった。
【0094】
さらに、前記10μmの平均粒径を有する(Mn0.95Al0.05は、MnSOのマンガン前駆体をAlSOとともに共沈させた後、共沈法によって製造されることにより二つ以上の一次粒子が凝集された二次粒子の形態であってよく、Alが約2.1重量%程度に含有されている。
【0095】
具体的に、MnSO及びAlSOを(98:2)で混合した後、Nパージングを経た蒸留水を用いて濃度が2MであるAlSOを含むMnSO・7HOを製造した。製造されたMnSO・7HOを連続撹拌タンク反応器(CSTR、製造社:EMSTech、製品名:CSTR−L0)に250mL/hの速度で投入した。
【0096】
アルカリ化剤として40%水酸化ナトリウム水溶液を反応器の水酸化ナトリウム水溶液供給部を介して230〜250mL/hの速度で投入し、25%アンモニア溶液を前記反応器のアンモニア溶液供給部を介して30mL/hの速度で投入しながら、pHメートルと制御部を介してpH10.5で維持されるようにした。反応器の温度は40℃とし、滞留時間(RT)は10時間に調節しており、1200rpmの速度で撹拌してAlを含むMnとして沈殿(共沈)させた。
【0097】
前記得られた反応溶液を、フィルタを介して濾過して蒸留水で精製した後、乾燥する追加工程を経て、Alを含む(Mn0.95Al0.05を製造した。
【0098】
実施例2
NaCOの量を0.62g(0.01mol)に代えて1.24g(0.02mol)を用いたことを除き、前記実施例1と同様の方法で行ってLi(1.09)Mn1.80Al0.1Na0.01を得た。
【0099】
比較例1
焼結補助剤としてNaCOを添加しないことを除き、前記実施例1と同様の方法で行ってLi(1.09)Mn1.81Al0.1を得た。
【0100】
比較例2
10μmの平均粒径を有する(Mn0.995Al0.005に代えて5μmの平均粒径を有する(Mn0.995Al0.005を用い、焼結補助剤としてNaCOを添加しないことを除き、前記実施例1と同様の方法で行ってLi(1.09)Mn1.81Al0.1を得た。
【0101】
比較例3
10μmの平均粒径を有する(Mn0.995Al0.005に代えて5μmの平均粒径を有する(Mn0.995Al0.005を用いたことを除き、前記実施例1と同様の方法で行ってLi(1.09)Mn1.80Al0.1Na0.01を得た。
【0102】
比較例4
マンガン前駆体として多結晶(Mn0.995Al0.005を用いる代わりに単結晶Mnを用いたことを除き、前記実施例1と同様の方法で行ってLi(1.09)Mn1.9Na0.01を得た。
前記Li(1.09)Mn1.9Na0.01は一次粒子の形態で粒径が10μmであった。
【0103】
<リチウム二次電池の製造>
実施例3
正極の製造
前記実施例1で製造された多結晶リチウムマンガン酸化物粒子を正極活物質として用いた。
【0104】
前記正極活物質94重量%、導電剤としてカーボンブラック(carbon black)3重量%、バインダとしてポリビニリデンフルオライド(PVdF)3重量%を、溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に添加して正極混合物スラリーを製造した。前記正極混合物スラリーを厚さが20μm程度の正極集電体であるアルミニウム(Al)薄膜に塗布し、乾燥して正極を製造した後、ロールプレス(roll press)を行って正極を製造した。
【0105】
負極の製造
負極活物質として炭素粉末96.3重量%、導電剤としてsuper−p 1.0重量%及びバインダとしてスチレンブタジエンゴム(SBR)及びカルボキシメチルセルロース(CMC)を1.5重量%と1.2重量%で混合し、溶媒であるNMPに添加して負極活物質スラリーを製造した。前記負極活物質スラリーを厚さが10μmの負極集電体である銅(Cu)薄膜に塗布し、乾燥して負極を製造した後、ロールプレス(roll press)を行って負極を製造した。
【0106】
非水性電解液の製造
一方、電解質としてエチレンカーボネート及びジエチルカーボネートを30:70の体積比で混合して製造された非水電解液溶媒にLiPFを添加して、1MのLiPF非水性電解液を製造した。
【0107】
リチウム二次電池の製造
このように製造された正極と負極を、ポリエチレンとポリプロピレンの混合セパレータを介在させ、通常の方法でポリマー型電池を製作した後、製造された前記非水性電解液を注液してリチウム二次電池の製造を完成した。
【0108】
実施例4
前記実施例2で製造された多結晶リチウムマンガン酸化物粒子をそれぞれ正極活物質として用いたことを除き、実施例3と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0109】
比較例5から8
前記比較例1から4で製造されたリチウムマンガン酸化物粒子をそれぞれ正極活物質として用いたことを除き、実施例3と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0110】
実験例1:SEM顕微鏡写真
前記実施例1で製造された多結晶リチウムマンガン酸化物粒子、及び比較例4で製造されたリチウムマンガン酸化物粒子に対しそれぞれSEM顕微鏡写真を確認し、その結果をそれぞれ図1及び図2に示した。
【0111】
図1で分かるように、多結晶リチウムマンガン酸化物粒子の製造時、焼結補助剤を用い、特定の大きさの多結晶性マンガン前駆体を用いることにより、多結晶リチウムマンガン酸化物粒子の形態が丸い曲線形態のエッジを有する粒子を得ることができた。
【0112】
一方、単結晶Mnを用いた比較例4のリチウムマンガン酸化物粒子は、図2に示したように、焼結補助剤の使用によって丸いエッジ(角)を有するが、粒子の形態及び大きさが不均一であることが分かる。さらに、前記比較例4は前記実施例1と異なり、一次粒子が凝集されて二次粒子をなす形態ではない一次粒子の形態であることを確認することができる。
【0113】
実験例2:X線回折分析
実施例1と2、及び比較例1から3で製造された多結晶リチウムマンガン酸化物粒子に対しX線回折分析(D4 Endeavor、Bruker)を行った。その結果を下記表1及び図3に示した。
【0114】
【表1】
【0115】
前記表1及び図3から分かるように、実施例1と2で製造された多結晶リチウムマンガン酸化物粒子の場合、X線回折(X−ray diffraction)において、比較例1に比べて特に、(111)面に対し(311)、(400)及び(440)面が成長した構造であることを確認することができる。
【0116】
具体的に検討してみれば、X線回折において、実施例1と2ではI(111)/I(111)ピーク強度比を100%にしたとき、I(311)/I(111)が47%以上で、I(400)/I(111)が46%以上であり、I(440)/I(111)が29%以上であった。
【0117】
これに反し、比較例1及び2の場合、I(111)/I(111)ピーク強度比を100%にしたとき、I(311)/I(111)が約32%から35%、I(400)/I(111)が約14%から14.7%、I(440)/I(111)が約14%から15%程度であって、実施例1と2に比べて結晶性が20%〜60%まで低くなることを確認することができる。特に、実施例1と2は、比較例1に比べてI(400)/I(111)のピーク強度が3倍以上著しく増加することを確認することができる。
【0118】
さらに、比較例3の場合、I(111)/I(111)ピーク強度比を100%にしたとき、I(311)/I(111)が約48.1%、I(400)/I(111)が約46.2%、I(440)/I(111)が約29.1%程度であって、比較例1と2に比べて結晶性が向上したが、実施例1と2に比べて結晶性が低くなることを確認することができる。
【0119】
実験例3:電気化学実験
実施例3と4、及び比較例5から8で製造されたリチウム二次電池を定電流/定電圧(CC/CV)条件で、(電池容量3.4mAh)を2Cの定電流(CC)で充電し、その後、定電圧(CV)で充電して充電電流が0.17mAhになるまで1回目の充電を行った。その後20分間放置した後、0.1Cの定電流で10mVになるまで放電して1サイクル目の放電容量を測定した。引続き、各電池に対して前記充電及び放電を繰り返して行って容量を測定し、これを下記表2に示した。
【0120】
【表2】
【0121】
前記表2から確認できるところのように、焼結補助剤を添加した実施例3と4の場合、焼結補助剤を添加していない比較例5と6に比べて充放電容量特性及び効率特性に非常に優れることを確認することができる。
【0122】
このように焼結補助剤の添加有無に従って多結晶リチウムマンガン酸化物粒子の構造的安定性及び性能特性に影響を及ぼすことができ、特に、多結晶リチウムマンガン酸化物粒子の結晶の大きさが向上されることにより、初期容量値が向上され得ることを確認することができる。
【0123】
つまり、焼結補助剤の添加に伴って多結晶リチウムマンガン酸化物粒子の結晶成長を促進させ、さらに粒子のエッジを角い部分なく丸くすることによりマンガンの溶出部位が減少され、寿命特性及び容量特性を向上させることができることが予測できる。
【0124】
しかし、焼結補助剤を添加するとしても、平均粒径が5μmであるマンガン前駆体を用いた比較例7に比べ、平均粒径が10μmであるマンガン前駆体を用いた実施例3と4の二次電池の場合、充放電効率に著しく優れることを確認することができる。
【0125】
この場合、マンガン前駆体の粒径が大きいため比表面積が小さくなり、電解液との反応性が低下するので、電池のC−rateに伴う寿命特性及び初期容量特性が向上可能であることが予測できる。
【0126】
実験例3:結晶の大きさの測定
実施例1と2、及び比較例1から3の多結晶リチウムマンガン酸化物粒子に対し、XRD結晶分析により粒子の結晶の大きさを測定した。
【0127】
具体的に検討してみれば、実施例1と2、及び比較例1から3の多結晶リチウムマンガン酸化物粒子をそれぞれホルダーに5g程度に入れ、X線を粒子に照射して出る回折格子を分析して求めることができる。
【0128】
求める方法は、主ピーク(main peak)または3つ以上のピークの半値幅から求めることができ、これは多結晶リチウムマンガン酸化物粒子の一次粒子の平均結晶の大きさに該当するとみることができる。この結果による多結晶リチウムマンガン酸化物の一次粒子の平均の結晶の大きさを下記表3に示した。
【0129】
【表3】
【0130】
前記表3から確認できるところのように、焼結補助剤としてNaCOを添加した多結晶リチウムマンガン酸化物粒子の一次粒子の平均の結晶の大きさは約198nm以上の大きさであった。
【0131】
これに反し、焼結補助剤としてNaCOを添加していない比較例1と2の場合、平均の結晶の大きさが115nmから120nmであって、実施例1と2に比べ約30%から60%程度に結晶の大きさが小さくなることを確認することができる。
【0132】
一方、焼結補助剤を添加するとしても平均粒径が小さなマンガン前駆体を用いた比較例3の場合、平均の結晶の大きさが130nmであって、50%以上程度に結晶の大きさが小さくなることを確認することができる。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明の一実施例に係る前記多結晶リチウムマンガン酸化物粒子をリチウム二次電池に適用する場合、ヤーン・テラー変形(Jahn−Teller distortion)とMn2+の溶出の問題を解決することにより、二次電池の寿命特性及び充放電容量特性を向上させることができる。
図1
図2
図3