(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のノズルプレートの製造方法、ノズルプレート、インクジェットヘッド及びインクジェット印刷装置について図面を用いて説明する。
従来の画像記録では、イエロー、マゼンタ、シアン等各色の粘度や表面張力などのインク物性を同程度に揃えることができる。一方、プリンテッドエレクトロニクスでは、配線、半導体膜、絶縁膜などの目的に応じて、様々な膜厚に制御する必要があるため、多様なインク物性に対応しなければならない。また、インクの溶剤も水系、有機溶剤系、酸性インク等、多岐に渡るため、インクジェットヘッドの材質には、化学的耐久性が要求される。よって、本発明のノズルプレートでは、化学的、物理的な耐久性が良好で、かつ表面の平面性及び平滑性の高い基板を必要とする。その基板の材料としては、SiO
2ガラス、硼珪酸ガラス等の酸化物ガラス基板、クォーツ、サファイア、Si等の単結晶基板などが利用できる。
【0009】
図1は本発明に係る実施形態1のノズルプレートの製造工程を示す工程斜視図である。
図1(a)に示すように、第一の工程では、第1基板11の表面に、フォトリソグラフィープロセスによって所望のパターンの溝12を形成する。フォトマスクの溝パターンのピッチはノズルプレートのノズルピッチになる。ノズル用溝の外側にアライメント用溝等を形成してもよい。フォトマスクのパターンを転写する材料としては感光性レジストの他、Ni等の金属膜を利用してもよい。例えば、SU−8などの感光性レジストの塗布、露光、現像により、マスクパターンを形成した後、基板をエッチングする。
【0010】
エッチング方法としては、反応性イオンエッチング(RIE)などのドライエッチングやウェットエッチングが利用できる。マスクパターンとエッチング条件により、溝の形状を制御することが可能である。必須の工程ではないが、ノズル孔に電極膜を形成する場合、第1基板11の表面に溝12を形成した後にフォトリソグラフィープロセスによって溝内部に電極膜を形成することができる。電極膜としてはPt、Au、Ag、Cu、Ni、Cr、Mo、W、Nb、Ta等の金属や合金、ITO、ATO、AZO等の透明導電性酸化物の単相或いは多層膜をスパッタリングや真空蒸着により20〜150[nm]程度成膜した後、パターニングする。
【0011】
次に、
図1(b)に示すように、第二の工程では、第1基板11の溝加工したおもて面と第2基板21の平坦なおもて面とを接合する。第2基板21のおもて面は一様に平坦な基板なので、第1基板11との精密な位置合わせは不要である。接合方法としては、熱融着、陽極接合、直接接合、プラズマ活性化低温接合、等の既存の技術を利用できる。そして、
図1(c)に示すように、第三の工程では、2枚の基板11、21を接合した接合板(ノズルプレート)31を、第1基板11の溝12の配列方向に対する仮想線である切断線22に沿って垂直に切断する。切断にはダイサー、精密切断機等の既存の装置が利用できる。切断幅が流路長Lとなるので、切断幅を変えることで基本的にノズル孔Lを自由に設定できる。
図2(a)に示すように、
図1の製造工程により製造されたノズルプレートのノズル面には複数の吐出口32が設けられている。そして、
図2(a)のA−A’線断面図である
図2(b)に示すように吐出口32に連通するノズル孔33の厚み方向の形状はストレート形状となる。この場合は、
図1(a)の第一の工程で形成された溝の幅が一様に同じであった場合である。
【0012】
以上の第一の工程から第三の工程までの工程が本実施形態の必須の工程である。以上の工程中及びその前後に、必要があれば適宜研磨や洗浄の工程を入れてもよい。また、第三の工程の後、ノズルプレート表面を撥液処理してもよい。更に、第三の工程の後、吐出口周りをザグリ加工してもよい。また、本実施形態では溝を第1基板のみに形成したが、第2基板にも溝を形成して互いの溝同士を合わせて1つの溝を形成することも可能である。この場合には高精度の位置決めを行う必要がある。更に、溝はストレート形状であるが、これに限定する必要はなく溝幅が徐々に変わるテーパー形状、あるいはノズルプレート毎に異なる径の吐出口を製造するために多段的に溝幅が変化する多段形状であってもよい。
【0013】
本実施形態によれば、第一の工程で吐出口の数及びピッチが決定される。そして、第一の工程はフォトリソグラフィープロセスであるので、非常に高精度であり、レーザ穿孔プロセス等と異なりノズル数を増大させても生産性に影響しない。このため、高密度化に有利である。更に、第一の工程及び第二の工程で吐出口の断面積Sとノズル孔形状が決定される。加工精度は概ねエッチング精度で決まるが、本実施形態では溝としてのアスペクト比(幅/深さ)は最大でも1程度なので非常に高精度に加工が可能である。これにより、ノズル孔形状も完全なストレート形状を実現できる。ノズル孔長Lは第三の工程で決定されるが、切断幅がノズル孔長Lとなるので、基本的にノズル孔長Lを自由に設定できる。更に、例えば長さ100[mm]の溝を加工した第1基板から、ノズル孔長L=100[μm]であれば1000個、ノズル孔長L=1[mm]であれば100個のノズルプレートを製造することが可能であり、非常に生産性が高い。但し、ノズルプレートの上記製造個数は切断代を無視した概算である。
【0014】
吐出口に連通するノズル孔の内壁及び切断後の吐出口の周りの材質は、化学的耐久性に優れた誘電体材料から構成されている。例えば、ノズルプレート自体を酸化物材料で作製することは好ましい。特に、SiO
2ガラスは好適である。珪酸塩ガラス、硼珪酸塩ガラス等も好ましい。単結晶シリコンで構造体を作製した後に熱処理等によりノズル流路を含む表面にSiO
2膜を形成してもよい。吐出のエネルギーとして静電気力を利用する場合には、高い絶縁性が要求されるので、SiO
2ガラス、サファイア、クォーツなどで作製することは特に好ましい。
【0015】
次に、吐出口の開口形状の一例を
図3に示す。同図に示すように、吐出口の開口形状は四辺形に近似される。4つの角部であるコーナーの曲率R1〜R4はR1=R2≧R3=R4≒0であり、ノズル孔はストレート形状である。そして、吐出口の開口面積Sは100[μm
2]以下であり、ノズル孔のストレート部分の長さLと吐出口の開口面積Sの比L/Sが2[μm
−1]以上である。更にはL/Sが4[μm
−1]以上である。更にまた、L/Sが10[μm
−1]以上である。吐出口の開口形状は
図3に示すような四辺形に限らず、角部の数が3つや5つ等であってもよい。また、R1=R2=a=b/2の時は半円状になる。
【0016】
画像記録用のインクジェットヘッドでは、安定した記録を行うためインクに対し非常に厳しい要求仕様を掲げている。一例としてリコー社製のピエゾ式インクジェットヘッドでは、インク粘度ηが10〜12[mPa・s]、表面張力γが28〜35[mN/m]である。一方、プリンテッドエレクトロニクス用インクでは、インクの粘度ηは様々であり、数[mPa・s]から数百[mPa・s]にも達する。
【0017】
粘性流体が円管を流れる場合、いくつかの流体の条件を仮定すると、流量Qはハーゲンポアズイユの次の式(1)のように導出される。
【数1】
【0018】
ここで、aは円管の半径、ΔPは圧力差、ηは流体の粘度、Lは円管の長さ、である。
【0019】
開口面積がSである管では外力の差をΔFとすれば、近似的に次の式(2)で表される。
【数2】
【0020】
従って、インクの粘度範囲が非常に広い場合には吐出口の開口面積Sとノズル孔長Lの比L/Sを適切に設計して要求される吐出量Qに調整しなければならない。
【0021】
従来の画像記録用のインクジェットヘッドにおける開口直径は20[μm]程度、ノズル孔のストレート部分の長さは50[μm]程度であり、L/S比を充分制御できない。
【0022】
本発明者らは、種々の実験研究を重ねた結果、例えば吐出口を本実施形態の形状に設計することによって、ミストやサテライトが少ない高品質印刷が可能である。そして、従来技術に比較して概ね1/4以下の微小なオリフィス断面積を実現すると同時に、ノズル孔長を数十[μm]から数[mm]まで自由に設計製作でき、様々な物性のインクに対応可能なノズルプレートの製造が可能となった。
【0023】
更に、本実施形態のノズルプレートの製造方法で製造されたノズルプレートでは、ノズルプレートに複数の吐出口が存在する場合、吐出口の構造パラメータ(各部分の長さ、開口面積等)の標準偏差を±3%以下に抑えることが可能である。このことは被印刷物の生産性を高めるために吐出口密度を高めた場合に、ばらつきの少ない均一な印刷を実現する上で不可欠である。特に、プリンテッドエレクトロニクスでは面内方向だけでなく、被印刷物の厚さによって電気特性が直接変動するため、吐出口の構造パラメータの均一性は非常に重要な要素となる。
【0024】
また、吐出のエネルギーとして静電気力を利用する場合には、ノズル孔の内壁の表面の一部もしくは全部を金属又は透明導電性酸化物で被覆してもよい。具体的には、Pt、Au、Ag、Cu、Ni、Cr、Mo、W、Nb、Ta等の金属や合金、ITO、ATO、AZO等の透明導電性酸化物が利用できる。膜の密着性を向上すること等を目的に複数の膜を積層してもよい。
【0025】
インクを吐出するにあたっては、吐出口周辺部においてインクに対する充分な撥液性を確保することが好ましい。このためには公知の技術が利用できる。即ち、ノズルプレートの吐出面全体、或いは吐出口周辺にフッ素樹脂やシリコーン樹脂等の撥液膜を形成することが好ましい。
【0026】
長時間印刷する上では、ノズルプレートのノズル面のクリーニングが必要になるが、このためにはノズルプレートのノズル面の余分なインクをゴムのブレードで拭き取ったり、真空吸引したりする等の公知の技術を利用することができる。ブレードで拭き取る場合には、吐出口周辺をザグリ加工して、一段下げた形状にしておくと、クリーニングの効果が上がり好ましい。
【0027】
以下、本発明のノズルプレート及びその製造方法の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0028】
(実施例1)
基材としてSiO
2ガラス基板(40[mm]角、板厚3[mm])を2枚準備した。各SiO
2ガラス基板を、中性洗剤、純水、及びイソプロピルアルコールを用いて超音波洗浄した。各SiO
2ガラス基板を乾燥後、更にUV−オゾン処理を90[℃]で10分間行った。SiO
2ガラス基板1枚にフォトレジストをスピンコートし、所定のフォトマスクを介して露光、現像し、基板上にレジストパターンを形成した。パターンとして1[μm]の溝を長さ30[mm]、ピッチ510[μm]で64本形成した。次に、40[%]HF溶液でガラス基板をエッチングして深さ2[μm]の溝を形成した。流水洗浄後、レジストを剥離した。溝加工したSiO
2ガラス基板の加工面と、UV−オゾン処理したもう1枚のSiO
2ガラス基板の表面とを合わせ、1150[℃]で30分加熱して接合した。精密切断機により切断後、両面を研磨し、縦6[mm]、横40[mm]、厚さ0.1、0.3、0.5、0.725、1.0、1.5、2.0[mm]のノズルプレートが得られた。
【0029】
(実施例2)
基材としてSiO
2ガラス基板(40[mm]角、板厚3[mm])を2枚準備した。各SiO
2ガラス基板を、中性洗剤、純水、及びイソプロピルアルコールを用いて超音波洗浄した。各SiO
2ガラス基板を乾燥後、更にUV−オゾン処理を90[℃]で10分間行った。SiO
2ガラス基板1枚にフォトレジストをスピンコートし、所定のフォトマスクを介して露光、現像し、基板上にレジストパターンを形成した。パターンとして2[μm]の溝を長さ30[mm]、ピッチ510[μm]で64本形成した。次に、40[%]HF溶液でガラス基板をエッチングして深さ2[μm]の溝を形成した。流水洗浄後、レジストを剥離した。溝加工したSiO
2ガラス基板の加工面と、UV−オゾン処理したもう1枚のSiO
2ガラス基板の表面とを合わせ、1150[℃]で30分加熱して接合した。精密切断機により切断後、両面を研磨し、縦6[mm]、横40[mm]、厚さ0.1、0.3、0.5、0.725、1.0、1.5、2.0[mm]のノズルプレートが得られた。
【0030】
(実施例3)
基材としてSiO
2ガラス基板(40[mm]角、板厚3[mm])を2枚準備した。各SiO
2ガラス基板を、中性洗剤、純水、及びイソプロピルアルコールを用いて超音波洗浄した。各SiO
2ガラス基板を乾燥後、更にUV−オゾン処理を90[℃]で10分間行った。SiO
2ガラス基板1枚に第一のレジスト層をスピンコートし、更に第2のフォトレジスト層をスピンコートし、所定のフォトマスクを介して露光・現像し、基板上に2層レジストパターンを形成した。次に、電子ビーム蒸着により、Niを200[nm]成膜してリフトオフし、開口パターンとして2[μm]の溝を長さ30[mm]、ピッチ510[μm]で64本形成した。次に、CF
4ガスによる反応性イオンエッチングによりNi開口部のガラス基板をエッチングし、深さ1[μm]の溝を形成した。次に、硝酸でNiマスクを溶解し、流水洗浄した。溝加工したSiO
2ガラス基板の加工面と、UV−オゾン処理したもう1枚のSiO
2ガラス基板の表面とを合わせ、1150[℃]で30分加熱して接合した。次に、精密切断機により切断後、両面を研磨し、縦6[mm]、横40[mm]、厚さ0.1、0.3、0.5、0.725、1.0、1.5、2.0[mm]のノズルプレートが得られた。
【0031】
(実施例4)
基材としてSiO
2ガラス基板(40[mm]角、板厚3[mm])を2枚準備した。各SiO
2ガラス基板を、中性洗剤、純水、及びイソプロピルアルコールを用いて超音波洗浄した。各SiO
2ガラス基板を乾燥後、更にUV−オゾン処理を90[℃]で10分間行った。SiO
2ガラス基板1枚にフォトレジストをスピンコートし、所定のフォトマスクを介して露光、現像し、基板上にレジストパターンを形成した。パターンとして1[μm]の溝を長さ30[mm]、ピッチ510[μm]で64本形成した。次に、CHF
3ガスによる反応性イオンエッチングによりレジスト開口部のガラス基板をエッチングし、深さ3[μm]の溝を形成した。更に、反応ガスをO
2に変えて残存するレジストをエッチング剥離した。溝加工したSiO
2ガラス基板の加工面と、UV−オゾン処理したもう1枚のSiO
2ガラス基板の表面とを合わせ、1150[℃]で30分加熱して接合した。次に、精密切断機により切断後、両面を研磨し、縦6[mm]、横40[mm]、厚さ0.1、0.3、0.5、0.725、1.0、1.5、2.0[mm]のノズルプレートが得られた。
【0032】
(比較例1)
基材としてSiO
2ガラス基板(20×40[mm]、板厚0.3[mm])を準備した。各SiO
2ガラス基板を、中性洗剤、純水、及びイソプロピルアルコールを用いて超音波洗浄した。各SiO
2ガラス基板を乾燥後、更にUV−オゾン処理を90[℃]で10分間行った。アルミニウムを100[nm]蒸着し、通常のフォトリソグラフィープロセスによってアライメントマークを作製した。その後、Nd:YAGレーザの第三高調波(波長355[nm]、パルス幅10[ps]、周波数1[kHz]、パルスエネルギー50[μJ]、集光光学系を用いてトレパニング加工する。そして、ノズル孔直径5[μm]、1020[μm]ピッチ、32個のノズル孔を有するノズルプレートを作製した。
【0033】
(比較例2)
基材としてSiO
2ガラス基板(20×40[mm]、板厚0.7[mm])を準備した。各SiO
2ガラス基板を、中性洗剤、純水、及びイソプロピルアルコールを用いて超音波洗浄した。各SiO
2ガラス基板を乾燥後、更にUV−オゾン処理を90[℃]で10分間行った。アルミニウムを100[nm]蒸着し、通常のフォトリソグラフィープロセスによってアライメントマークを作製した。その後、Nd:YAGレーザの第三高調波(波長355[nm]、パルス幅10[ps]、周波数1[kHz]、パルスエネルギー50[μJ]、集光光学系を用いてトレパニング加工する。そして、直径8[μm]、1020[μm]ピッチ、32個の吐出口を有するノズルプレートを作製した。
【0034】
下記の表1に実施例1〜4及び比較例1、2で作製したノズルプレートの形状を評価した結果を示す。
【表1】
【0035】
吐出口の開口断面の形状パラメータは実施例に対しては
図2の通りである。実施例1〜4では各プレートにおいて、サイズ及び形状にほとんどバラツキのない64個の吐出口が得られた。また、ノズル孔長に関係なくテーパーのないストレート形状の流路が得られた。一例として、実施例1の吐出口の開口部の顕微鏡写真を
図4に示し、ノズル孔の顕微鏡写真を
図5(a)に、かつ
図5(a)の一点鎖線で込んだ部分の拡大図を
図5(b)に示す。
図4及び
図5からわかるように、吐出口の開口形状は狙いの形状であり、ノズル孔も狙いのストレート形状になっている。一方、比較例1では吐出口直径Dの誤差が約8[%]と大きく、比較例2のようにノズル孔長を0.7[mm]に長くすると、直径5[μm]程度の穿孔が困難で開口直径が大きくなり、誤差も約30[%]に増大する。また、流路形状もテーパー状で安定しない。一例として、比較例1の吐出口の顕微鏡写真の
図6からわかるように、ノズル面及び吐出口の周囲は粗く、かつ一部欠けている。また、比較例1の流路の厚み方向の断面の顕微鏡写真の
図6からもわかるように、流路の厚み方向でストレート形状にならずにテーパー形状になっている。
【0036】
次に、実施形態2のインクジェットヘッドの作製について説明する。
本実施形態では、実施例1〜4で作製したノズルプレートを用いてインクジェットヘッドを作製した。そのインクジェットヘッドを構成する各プレートの構造を
図7に示す。同図に示すインクジェットヘッドは駆動手段として静電気力を利用する場合のものである。同図(a)に示す複数の吐出口32を有するノズルプレート31のノズル面にフッ素系撥液材料をスピンコートする。その後、60[℃]30[分]オーブンで乾燥し、表面を撥液処理する。そして、同図(b)に示す液室形成プレートに相当する流路プレート41には、メタルマスクを介し電極42としてMoをDCスパッタリングにより200[nm]成膜した。このとき電極42と電気的に接続されている電極膜43が吐出室44の内壁に成膜される。同図(c)に示すインク注入プレート51には、外部からインクを吐出室44に注入するためのインク注入口52が設けられている。そして、ノズルプレート31を流路プレート41上に設けられているアライメントマークに沿ってUV硬化樹脂で接着し、更にその上にインク注入プレート51をUV硬化樹脂で接着し、
図8(a)、(b)に示す接着プレート60を作製した。
【0037】
そして、
図9に示すように、Zαβ方向位置調節機構81に搭載されているプレートホルダー82に接着プレート60を装着する。接着プレート60の電極と高電圧パルスアンプ(不図示)とを接続し、インクジェットヘッド80とした。インクは
図7のインク注入口52から吐出室44に予め注入しておいてもよく、インク注入口52にチューブを介してインクタンクと連通しインクをインクタンクから吐出室44に送液してもよい。そして、上位装置からの駆動信号に基づいて高電圧パルスアンプから電圧が接着プレート60内の電極に印加される。そして、電荷を有するインク滴がノズル孔から静電気力により吐出され、インク滴はXYZステージ83上に設置されている被印刷基板90の面上に着弾する。
【0038】
本実施形態のインクジェットヘッドは、ノズルプレート31と流路プレート41とを備えている。ノズルプレート31は、前述した本実施形態のノズルプレートの製造方法によって製造されたノズルプレートである。流路プレート41は、ノズルプレート31に接合され、かつノズルプレート31との間でノズル孔に連通する吐出室やリザーバ等のインク流路が形成された液室形成プレートに相当するプレートである。そして、駆動手段によりノズル先端に形成されるメニスカスに力を加えることによりインク滴を選択された吐出口より吐出するように構成されている。駆動手段として、圧電素子を利用する場合には、吐出室内に圧電素子を備え、該圧電素子に接続された電極を吐出室外に引き出して、パルス電源回路と接続する。駆動手段として静電気力を利用する場合には、前述したようにノズル孔の内壁に電極膜を形成してもよい。あるいは、ノズルプレートの裏面に電極膜を形成してもよい。更に、電極膜を吐出室から引き出して、パルス電源回路と電気的に接続する。駆動手段として熱電変換素子を利用する場合には、吐出室内に熱電素子を備え、該熱電素子に接続された電極を吐出室外に引き出して、パルス電源回路と接続する。また、ノズルプレートのノズル面と被印刷基板面との間の間隔や平行度を調節するためのZαβ方向位置調節機構81が設けられる。更に、ノズルプレートのノズル面のクリーニング機構を設けても良い。
【0039】
次に、実施形態2のインクジェットヘッドを搭載した実施形態3のインクジェット印刷装置について説明する。
図10はインクジェット印刷装置の斜視図である。
図11(a)は右側面図、
図11(b)は正面図である。
図10に示すように、インクジェット印刷装置100は、主に、XYステージ101、ブリッジ、T軸調整機構102及びZ軸調整機構103を備えている。XYステージ101には被印刷対象物の基板が設置され、ブリッジはXYステージ101を門型にまたいでいる。ブリッジに設置されたT軸調整機構102にはZ軸調整機構103が装着されている。
図11に示すように、インクジェットヘッド80はZ軸調整機構103の垂直駆動ステージ(Z軸)に保持される。ブリッジ及びXYステージ101は定盤上に設置される。被印刷基板はXYステージ101上に設置される。この際、基板吸着機構、温度調節機構等を備えていることが好ましい。XYステージ101は電気的に駆動回路に接続され、更に上位に接続されたモーションコントローラによって駆動される。インクジェットヘッドもまた、電気的に駆動用パルス電源回路(不図示)に接続され、XYステージと連動して駆動される。印刷データはコンピュータプログラムに入力され、その出力データによりモーションコントローラと駆動用パルス電源回路を制御する。更に、吐出観察用カメラやアライメント用カメラ等を備えていることが好ましい。以上、ブリッジ型のインクジェット印刷装置である場合について説明したが、これに限定されるものではなく、コンピュータプログラムによりインクジェットヘッドの吐出と被印刷基板の位置を連動的に制御し、所望のデータを適切に基板上に印刷可能な装置として機能すればよい。
【0040】
作製したインクジェット印刷装置を用いて各種インクに対する吐出実験を行った。上記実施例1〜4のノズルプレートを用いて吐出した場合、インクの粘度によらず、適切なノズル孔長のノズルプレートを選択することによって1[pL]未満の微小液滴を吐出することに成功した。また、ミストやサテライトも発生せず、高品質な印刷をすることができた。一方、上記比較例1〜2のノズルプレートの場合、L/Sを充分大きくできないため、推奨粘度のインクでもpL以上の吐出量となってしまい、微小液滴を吐出することができなかった。また、サテライトの発生も観察された。
図12(a)は実施例1のノズルプレート(L=0.725mm)を用いた吐出実験の顕微鏡写真である。基板は熱酸化膜付きシリコン基板、インクはハリマ化成製の金ナノペーストNPG−Jを使用した。印加電圧700V、50Hzの矩形波でインクジェットヘッドを駆動し、ステージ速度は1mm/sで走査した。その結果、ノズルピッチ510μmの間隔で連続吐出されたドットが分離して観察されている。
図12(b)は拡大図である。ミストやサテライトは観測されず、均一な楕円形状のドットであることがわかる。ドット半径2.8μm、ドット高さ110nm、吐出量14fLであった。
図13は上記比較例1のノズルプレートを使用した吐出実験の顕微鏡写真である。吐出条件は
図12の吐出実験と同様である。
図13のように、吐出量が多くドット径が大きくなってしまい、更にはサテライトが周辺に観察された。
【0041】
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する
。
(態様
1)
厚み方向に貫通するノズル孔を備えたノズルプレートにおいて、少なくとも一方の基板の一面に溝が形成され、溝が形成されている少なくとも一方の基板の一面に、他方の基板の一面との接合面を有し、ノズル孔は、接合面にある溝の形成方向に対して略垂直な切断面からなる開口形状における4つの角部の曲率をR1〜R4とした場合に、R1=R2≧R3=R4≒0に近似された吐出口を有する。これによれば、上記実施形態1について説明したように、ミストやサテライトの少ない高品質で安定した液滴吐出が可能となるノズルプレートを提供できる。
(態様
2)
(態様1)
において、吐出口に連通する近傍空間部分のノズル流路はストレート形状である。これによれば、上記実施形態1について説明したように、溝の形成方向の全長において溝の断面形状が略同じであった場合では、ノズル孔はストレート形状となる。これにより、高品質で安定した液滴吐出が可能となるノズルプレートを提供できる。
(態様3)
厚み方向に関するノズル孔を備えたノズルプレートにおいて、ノズル孔は、開口形状における4つの角部の曲率をR1〜R4とした場合に、R1=R2≧R3=R4≒0に近似された吐出口を有し、吐出口に連通する近傍空間部分のノズル流路はストレート形状である。これによれば、上記実施形態1について説明したように、ミストやサテライトの少ない高品質で安定した液滴吐出が可能となるノズルプレートを提供できる。
(態様
4)
(態様1)〜(態様
3)のいずれかにおいて、ノズルプレートの吐出口の開口面積Sが≦100[μm
2]であり、吐出口に連通する近傍空間部分の流路部分の長さLと吐出口の開口面積Sの比L/Sが2[μm
−1]以上である。これによれば、上記実施形態1について説明したように、高品質で安定した液滴吐出が可能となるノズルプレートを提供できる。
(態様5)
厚み方向に関するノズル孔を備えたノズルプレートにおいて、ノズル孔は、開口形状における4つの角部の曲率をR1〜R4とした場合に、R1=R2≧R3=R4≒0に近似された吐出口を有し、ノズルプレートの吐出口の開口面積Sが≦100[μm2]であり、吐出口に連通する近傍空間部分の流路部分の長さLと吐出口の開口面積Sの比L/Sが2[μm−1]以上である。これによれば、上記実施形態1について説明したように、高品質で安定した液滴吐出が可能となるノズルプレートを提供できる。
(態様
6)
(態様1)〜(態様
5)のいずれかにおいて、ノズルプレートの吐出口の開口面積Sが≦100[μm
2]であり、吐出口に連通する近傍空間部分の流路部分の長さLと吐出口の開口面積Sの比L/Sが4[μm
−1]以上である。これによれば、上記実施形態1について説明したように、高品質で安定した液滴吐出が可能となるノズルプレートを提供できる。
(態様7)
厚み方向に関するノズル孔を備えたノズルプレートにおいて、ノズル孔は、開口形状における4つの角部の曲率をR1〜R4とした場合に、R1=R2≧R3=R4≒0に近似された吐出口を有し、ノズルプレートの吐出口の開口面積Sが≦100[μm2]であり、吐出口に連通する近傍空間部分の流路部分の長さLと吐出口の開口面積Sの比L/Sが4[μm−1]以上である。これによれば、上記実施形態1について説明したように、高品質で安定した液滴吐出が可能となるノズルプレートを提供できる。
(態様
8)
(態様1)〜(態様
7)のいずれかにおいて、ノズルプレートの吐出口の開口面積Sが≦100[μm
2]であり、吐出口に連通する近傍空間部分の流路部分の長さLと吐出口の開口面積Sの比L/Sが10[μm
−1]以上である。これによれば、上記実施形態1について説明したように、高品質で安定した液滴吐出が可能となるノズルプレートを提供できる。
(態様9)
厚み方向に関するノズル孔を備えたノズルプレートにおいて、ノズル孔は、開口形状における4つの角部の曲率をR1〜R4とした場合に、R1=R2≧R3=R4≒0に近似された吐出口を有し、ノズルプレートの吐出口の開口面積Sが≦100[μm2]であり、吐出口に連通する近傍空間部分の流路部分の長さLと吐出口の開口面積Sの比L/Sが10[μm−1]以上である。これによれば、上記実施形態1について説明したように、高品質で安定した液滴吐出が可能となるノズルプレートを提供できる。
(態様10)
(態様1)〜(態様9)のいずれかにおいて、ノズルプレートの材料は、化学的耐久性を有する誘電体材料である。これによれば、上記実施形態1について説明したように、化学的耐久性に優れ、高品質で安定した液滴吐出が可能となるノズルプレートを提供できる。
(態様
11)
少なくとも一方の基板の一面に溝を形成する溝形成工程と、溝が形成されている少なくとも一方の基板の一面に、他方の基板の一面を接合する接合工程と、接合した接合基板を溝の形成方向に対して略垂直に切断する切断工程とを有し、厚み方向に貫通するノズル孔を備えたノズルプレートの製造方法において、切断工程によって切断されて製造されたノズルプレートのノズル孔は、切断面の開口形状における4つの角部の曲率をR1〜R4とした場合に、R1=R2≧R3=R4≒0に近似された吐出口を有する。これによれば、上記実施形態1について説明したように、ミストやサテライトの少ない高品質で安定した液滴吐出が可能となるノズルプレートを製造することができる。
(態様
12)
(態様
11)において、ノズルプレートの材料は、化学的耐久性を有する誘電体材料である。これによれば、上記実施形態1について説明したように、化学的耐久性に優れ、高品質で安定した液滴吐出が可能となるノズルプレートを製造することができる。
(態様
13)
(態様
11)又は(態様
12)において、吐出口に連通する近傍空間部分のノズル流路はストレート形状である。これによれば、上記実施形態1について説明したように、溝の形成方向の全長において溝の断面形状が略同じであった場合では、ノズル孔はストレート形状となる。これにより、高品質で安定した液滴吐出が可能となるノズルプレートを製造することができる。
(態様
14)
(態様
11)〜(態様
13)のいずれかにおいて、ノズルプレートの吐出口の開口面積Sが≦100[μm
2]であり、吐出口に連通する近傍空間部分の流路部分の長さLと吐出口の開口面積Sの比L/Sが2[μm
−1]以上である。これによれば、上記実施形態1について説明したように、高品質で安定した液滴吐出が可能となるノズルプレートを製造することができる。
(態様
15)
(態様
11)〜(態様
14)のいずれかにおいて、ノズルプレートの吐出口の開口面積Sが≦100[μm
2]であり、吐出口に連通する近傍空間部分の流路部分の長さLと吐出口の開口面積Sの比L/Sが4[μm
−1]以上である。これによれば、上記実施形態1について説明したように、高品質で安定した液滴吐出が可能となるノズルプレートを製造することができる。
(態様
16)
(態様
11)〜(態様
15)のいずれかにおいて、ノズルプレートの吐出口の開口面積Sが≦100[μm
2]であり、吐出口に連通する近傍空間部分の流路部分の長さLと吐出口の開口面積Sの比L/Sが10[μm
−1]以上である。これによれば、上記実施形態1について説明したように、高品質で安定した液滴吐出が可能となるノズルプレートを製造することができる。
(態様
17)
少なくとも、(態様1)〜(態様
10)のいずれかに記載のノズルプレー
トと、該ノズルプレートに形成された流路に接続され、流路にインクを供給する1つ又は複数のインク流路とを備えている。これによれば、実施形態2について説明したように、安定した液滴吐出が可能となるインクジェットヘッドを提供できる。
(態様
18)
(態様
17)のインクジェットヘッドと、該インクジェットヘッドを駆動するための駆動手段と、印刷されるべき被印刷対象基板を保持し、インクジェットヘッドに対してXYZ方向に相対的にそれぞれ走査する走査手段と、印刷パターンデータをデータ処理し駆動手段と走査手段を制御する制御手段とを備えたインクジェット印刷装置である。これによれば、実施形態3について説明したように、インクジェットヘッドの吐出と被印刷基板の位置を制御し、所望のデータを適切に被印刷基板上に印刷可能となる。