(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態について
図1乃至
図9を用いて説明する。
図1はプリンタとして構成された画像形成装置の一例を表す概略構成図である。
図1に示される画像形成装置は、その本体の筐体内に第1乃至第4の4つの感光体1a、1b、1c、1dが設けられている。各感光体上には互いに異なる色のトナー像がそれぞれ形成され、これらの感光体1a、1b、1c、1d上に、ブラックトナー像、マゼンタトナー像、シアントナー像及びイエロートナー像がそれぞれ形成される。
【0010】
第1乃至第4の感光体1a、1b、1c、1dに接するように中間転写体としての中間転写ベルト3が設けられている。この中間転写ベルト3は、駆動ローラ51、テンションローラ52、支持ローラ53、支持ローラ54に架け渡されている。なお、駆動ローラ51、テンションローラ52、支持ローラ53、支持ローラ54のうち任意のものをローラという。
【0011】
駆動ローラ51が駆動源(図示せず)によって回転すると中間転写ベルト3が矢印Aで示される方向へ移動する。中間転写ベルト3は、多層構造、単層構造でも構わないが、多層構造であればベース層を例えば伸びの少ないフッ素樹脂やPVDFシート、ポリイミド系樹脂でつくり、表面をフッ素系樹脂等の平滑性のよいコート層で被ってなるものが好ましい。また、単層であればPVDF、PC、ポリイミド等の材質を用いるのが好ましい。
【0012】
感光体1a、1b、1c、1dにおいて、トナー像を形成するための構成およびトナー像を中間転写ベルト3上に転写するための構成は実質的に全て同一であり、形成される各トナー像の色が異なるのみである。よって、第1の感光体1aにブラックトナー像を形成し、そのトナー像を中間転写ベルト3上に転写する構成のみを説明し、第2乃至第4の感光体1b、1c、1d上についての構成の説明を省略する。
【0013】
感光体1aは
図1における矢印Bに示される方向に回転駆動される。このとき図示していない除電装置からの光が感光体1aの表面に照射され、感光体1aの表面電位が初期化される。感光体1aの近傍には帯電部8aが設置されており、表面電位が初期化された感光体1aの表面を帯電部8aがマイナス極性に一様に帯電する。このようにして帯電された感光体表面に、露光部9からレーザビームLが照射され、感光体1aの表面に静電潜像が形成される。
【0014】
また、感光体1aの近傍には現像部10aが設置されている。現像部10aは感光体1aに形成された静電潜像を現像し、ブラックトナー像として可視像化する。一方、感光体1aに対向して中間転写ベルト3を挟むように転写ローラ11aが設けられている。転写ローラ11aは、感光体1a上に形成されたトナー像のトナー帯電極性と逆極性であるプラス極性の転写電圧を印加する。これにより、感光体1aと中間転写ベルト3との間に転写電界が形成され、感光体1a上のトナー像が感光体1aと同期して回転駆動される中間転写ベルト3上に静電的に転写される。クリーニング部12aは、トナー像が中間転写ベルト3に転写されたあとの感光体1aの表面に付着している転写残トナーを除去し、感光体1aの表面を清掃する。
【0015】
同様にして、第2乃至第4の各感光体1b、1c、1dにはマゼンタトナー像、シアントナー像及びイエロートナー像がそれぞれ形成される。そして、各色のトナー像は、ブラックトナー像の転写された中間転写ベルト3上に順次重ねて静電転写され、合成トナー像が形成される。
【0016】
また、
図1に示されるように、画像形成装置内の下部には給紙部14が設けられ、給紙ローラ15の回転によって、記録媒体Pが矢印C方向に送り出される。送り出された記録媒体Pは、レジストローラ対16によって駆動ローラ51と、駆動ローラ51に対向して設置された二次転写ローラ17との間に給送される。このとき、二次転写ローラ17には所定の転写電圧が印加され、これによって中間転写ベルト3上の合成トナー像が記録媒体Pに二次転写される。
【0017】
定着部18は記録媒体P上のトナー像を熱と圧力の作用により定着させる。排紙ローラ対19は定着部18を通過した記録媒体Pを画像形成装置外に排出する。また、ベルトクリーニング部20は、トナー像が転写された後の中間転写ベルト3上に付着した転写残トナーを除去する。本実施形態におけるベルトクリーニング部20は、ウレタン等で構成されたブレード形状のクリーニングブレード21を有しており、このクリーニングブレード21は中間転写ベルト3に付着した転写残トナーを掻き取るように設けられている。ベルトクリーニング部20には適宜様々な種類のものを用いることが可能であり、例えば、ベルトクリーニング部20を導電性ファーブラシによる静電クリーニング方式のものとしても良い。
【0018】
次に、本実施形態におけるベルト制御装置について説明する。本実施形態のベルト制御装置は、
図1における画像形成装置が有するローラのうち少なくとも一 のローラに設けられている。なお、以降の説明において中間転写ベルト3をベルト3という。また、以降においてテンションローラ52に設けられているベルト制御装置について説明するが、特に述べられている場合を除いては駆動ローラ51、支持ローラ53、支持ローラ54のいずれかに読み替えてもよい。
【0019】
図2は本実施形態に係るベルト制御装置の断面概略図である。本実施形態のベルト制御装置は、
図1における画像形成装置のテンションローラ52の少なくとも片側に設けられているため、
図2はテンションローラ52の片側を拡大図で示している。
図2(1)は、本実施形態のベルト制御装置の断面概略図である。
図2(2)は
図2(1)においてテンションローラ52、ローラ軸6、軸傾斜部41が傾斜している状態を表す図である。
図3は
図2(1)に示されるベルト制御装置の斜視図である。
【0020】
図2(1)に示されるように、ベルト制御装置はテンションローラ52の端部にテンションローラ52の軸と同軸であるローラ軸6を有している。ローラ軸6はテンションローラ52より直径が短い円柱の形状をしており、テンションローラ52と一体となっている。また、ローラ軸6は後述するベルト突当部30、ベルト位置補正部40をテンションローラ52の軸の方向(
図2(1)に示されるz方向。以降、ローラ軸方向という)に貫通している。そのため、ローラ軸6はローラ軸方向に自由に動くことができ、ローラ軸方向と垂直な方向にはベルト突当部30、ベルト位置補正部40とともに動く。
【0021】
テンションローラ52の端部に、ベルト突当部30がローラ軸方向に可動であるように設けられている。ベルト突当部30は、ローラ軸方向に対して略垂直な平面である平面部30aを有している。平面部30aの周縁は円を形成しており、その円の中心はテンションローラ52の軸上にある。また、平面部30aはベルト3がローラ軸方向外方に移動したときに、ベルト3の端部(ベルト端部3aという)が接するベルト端部当接部として機能する。
【0022】
ベルト端部3aが移動して平面部30aに突き当たったときにベルト3がベルト突当部30に乗り上げてテンションローラ52から外れないように、
図2(1)に示されるように平面部30aの周縁が形成する円の半径D1は、テンションローラ52の半径D2にベルト3の厚さを加えた長さより長く構成される。半径8.78(mm)のテンションローラ52、厚さ80(μm)のベルト3が用いられる場合、平面部30aの周縁の半径D1を8.86(mm)より長く、たとえば9.00(mm)とすればよい。
【0023】
なお、平面部30aはベルト端部当接部として機能するものであれば、その周縁が円でなく、たとえば長方形、多角形、その他任意の閉曲線を形成するものであってよい。その場合、テンションローラ52の軸からその長方形等の周縁までの距離D1は、テンションローラ52の半径D2にベルト3の厚さを加えた長さより長いものとする。また、平面部30aは凹凸や湾曲を有する面でもよく、ベルト端部当接部として機能するものであればその形状を問わない。
【0024】
また、ベルト突当部30はテンションローラ52、ローラ軸6に対して固定されず、
図2(1)に示されるxy平面内でテンションローラ52の軸と同じ軸を中心として自由に回転するように設けられている。このため、ベルト3が平面部30aに接している状態で走行するときに、ベルト突当部30はベルト端部3aとの摩擦力によりベルト3の走行に応じて回転する。
【0025】
テンションローラ52の端部とベルト突当部30の間には円柱の形状に構成されたベルト端部支持部7が設けられている。ベルト端部支持部7は、その軸をテンションローラ52の軸と同軸とし、その半径D3はテンションローラ52の半径D2より短いものとする。これによって、ベルト3とベルト端部支持部7の側面の間に隙間(以降、隙間部31aという)が設けられる。このベルト端部支持部7はベルト端部3aがベルト突当部30と離れて重力によって垂れ下がるのを防ぐためにベルト端部3aを支えるものである。なお、ベルト端部支持部7はベルト端部3aを支えるものであれば、その形状は円柱ではなく角柱、立方体、その他いずれの形状であってもよい。また、テンションローラ52とベルト端部支持部7との間には隙間(以降、隙間部31bという)が設けられている。
【0026】
また、ベルト突当部30のローラ軸方向外方には、ベルト突当部30と接するように軸傾斜部41が設けられている。また、軸傾斜部41はベルト3の面と平行な面に対してローラ軸方向外方を下にして傾斜している平面である傾斜面41aをローラ軸方向外方に有している。
図3に示されるように傾斜面41aは円柱の側面の一部を形成するための形状であることが好適である。後述する軸ガイド部42と接する部分の面積を減らすことによって傾斜面41aと軸ガイド部42との間に発生する摩擦力による磨耗を減らすためである。
【0027】
また、軸傾斜部41は傾斜面41aのローラ軸方向外方に軸傾斜止め部41bを有している。
図3および
図5(1)に示されるように軸傾斜止め部41bはローラ軸6を中心軸とした円柱の側面の一部により実現されている。また、軸傾斜止め部41bを実現する面は
図5(2)に示されるようにローラ軸6と異なる軸を中心軸とした円柱の側面の一部でもよいし、
図5(3)に示されるように平面であってもよい。ただし、
図5(1)に示される面により軸傾斜止め部41bが実現される場合、
図5(2)および(3)に示される場合に比べて、後述する軸ガイド部42と接する部分の面積が減り、軸傾斜止め部41bと軸ガイド部42との間に発生する摩擦力による磨耗を減らすことができる。
【0028】
傾斜面41aおよび軸傾斜止め部41bの材質は、摩擦係数が低く、耐摩耗性が高いポリアセタールが好適である。また、ローラ軸6と傾斜面41aのなす角度は30度程度が好適である。ベルト端部3aが突き当たったときに傾斜面41aが軸傾斜部当接部42aに加える負荷を少なくするためにローラ軸6と傾斜面41aのなす角度が小さい方がよく、一方、ローラ軸6と傾斜面41aのなす角度が小さすぎるとローラ軸6を傾けるために必要な軸傾斜部41の移動が大きくなり、軸傾斜部41が軸方向に移動するスペースを設けるために装置全体が大きくなってしまうからである。
【0029】
さらに、
図2(1)に示されるように軸傾斜部41の軸方向外方に軸ガイド部42が設けられている。軸ガイド部42は、その一部である軸傾斜部当接部42aで傾斜面41aに接している。また、軸ガイド部42は軸傾斜部41に伴って移動しないように設けられている。このような構成によって、軸傾斜部41がローラ軸方向外方へ移動すると、
図2(2)に示されるように軸傾斜部当接部42aが接する傾斜面41aの位置が上方にずれ、軸傾斜部41および軸傾斜部41を貫通しているローラ軸6が傾斜する。ローラ軸6が傾斜すると、一体となっているテンションローラ52が同様に傾斜する。また、軸傾斜部当接部42aはxz平面を断面としてみたときに円弧となる円柱の側面の一部であること(以降、R形状という)が好適である。この場合、xz平面を断面としてみたときに角状となっている場合に比べて軸傾斜部当接部42aが接する部分の傾斜面41aの磨耗が軽減される。
【0030】
また、ベルト制御装置が設置されたとき等、ベルト端部3aによるローラ軸方向の力が加えられていないとき、軸ガイド部42は軸傾斜部41の軸傾斜止め部41bに突き当たるため、軸傾斜部41は−x軸方向にずれることができない。さらに、テンションローラ52の他端に設けられている軸傾斜部41も同様に−x軸方向にずれることができない。このため、テンションローラ52は
図2に示されるz軸にほぼ平行な状態となる位置(所定の位置)で設置される安定する。なお、x軸、z軸はローラ軸6がz軸に平行でずれていない場合における、それぞれベルト3の表面に垂直な方向、ローラ軸6の方向である。
【0031】
一方、画像形成装置が動作し始めると、支持ローラ53,テンションローラ52が互いにほぼ平行な状態でない場合、ベルト3はローラ軸方向へ移動する。ベルト3がローラ軸方向へ移動しベルト突当部30に突き当たると、上述したように軸傾斜部41が傾斜するとともにローラ5が傾斜し、ベルト3が元の位置に戻る。この際、テンションローラ52がz軸にほぼ平行な状態となる所定の位置に設置されていると、このベルト3が元の位置に戻るまでの時間が短くなる。それは、支持ローラ52は製造時にはz軸方向に平行になるよう製造されるからである。つまり、軸傾斜部41を所定位置に決められないと、ローラ52は傾けて設置されてしまうこともありえ、その場合、他方のローラ53とほぼ平行な状態を維持できなくなる。そのため、ベルト3がz軸方向に大きく移動してしまい、ベルトが元の位置に戻り安定するまで多大な時間を要することになってしまう。この間に画像がベルト上に作られると各感光体からの転写像がずれて転写され色ヅレのような不具合が発生してしまう。
【0032】
ここで、軸傾斜部41の他の例について説明する。
図4は軸傾斜部41の他の例を表す図である。ここで表されている軸傾斜部41においては軸傾斜止め部41bのみが
図2(1)に示されるものと異なっている。上述において、軸傾斜止め部41bは
図3に示されるようにローラ軸6を中心軸とした円柱の側面の一部により実現されるとしたが、
図4に示されるようにローラ軸6と軸傾斜止め部41bを実現する円柱の側面は角度βをなしていてもよい。この場合、角度βが、ローラ軸6と傾斜面41aを実現する円柱側面のなす角度αより小さい所定の角度であればよい。このように軸傾斜止め部41が設けられる場合、軸傾斜止め部41bが設けられない場合に比べて、テンションローラ52および支持ローラ53が互いに平行な状態で安定しやすくなる。
【0033】
また、軸ガイド部42のローラ軸方向外方に固定部46が設けられ、固定部46のローラ軸方向外方にローラ軸支持部43が設けられている。ここで、ローラ軸支持部43、固定部46の詳細について
図6を用いて説明する。
図6は、ローラ軸支持部43を表す図である。
【0034】
図6に示されるようにローラ軸支持部43は、支持中心部43a、テンションローラ調整部43b、ベルト張架バネ43c、支持部本体43dを有している。
支持部本体43dはローラ軸方向外方を下にしてローラ軸6が傾斜するのに伴って、支持中心部43aを中心とした円弧に沿って
図6に示される矢印アの方向へ傾斜する。また、支持部本体43dはローラ軸6の移動に伴って動くことのない固定部46とローラ軸支持バネ45によって連結されている。上述のように、支持部本体43dが矢印アで示される方向に傾斜するとローラ軸支持バネ45が伸びる。ローラ軸支持バネ45が伸びると、その伸びを戻す方向へ弾性力が発生しローラ軸支持部43は矢印イで示される方向へ戻ろうとする。なお、ローラ軸支持バネ45は弾性体の一例であり、バネに代えて板バネ、ゴム等によって実現されてもよい。
【0035】
テンションローラ調整部43bはローラ軸6を覆って接合されており、支持部本体43dとベルト張架バネ43cによって連結されている。ベルト張架バネ43cはテンションローラ調整部43b、ローラ軸6を通してテンションローラ52に対して他のローラから離れる方向に弾性力を加える。これによって、テンションローラ52に架け渡されたベルト3は弛むことなく張り詰めた状態を維持できる。なお、ベルト張架バネ43cはベルト張架用弾性体の一例であり、バネに代えて板バネ、ゴム等によって実現されてもよい。
【0036】
また、ベルト制御装置には軸傾斜部41の回転を止める軸傾斜部回転止め部47が設けられている。軸傾斜部回転止め部47について
図5および
図7を用いて詳細に説明する。
図5は、本実施形態に係る軸傾斜部および軸傾斜部回転止め部を表す断面図である。軸傾斜部回転止め部47は
図5(1)に示されるように軸傾斜部41の側面と底面に沿って軸傾斜部41を覆う形状をしている。また、軸傾斜部回転止め部47はxy平面内で動くことができないように、固定して設けられている軸ガイド部42と接合されている。このため、軸傾斜部41がxy平面内で
図5(1)の矢印ウの方向に回転するような力が加わっても軸傾斜部41は回転しない。一方、軸傾斜部回転止め部47軸傾斜部41がz方向に動くことを妨げるものではない。
【0037】
なお、軸傾斜部回転止め部47は軸傾斜部41の回転を止めるものであれば
図5(1)に記載の形状でなくてもよい。
図7は、軸傾斜部回転止め部47の他の例を説明するための図である。たとえば、軸傾斜部回転止め部47は
図7(1)および(2)に示される形状であってもよい。また、軸傾斜部回転止め部47は
図7(3)に示されるように軸傾斜部41と接合している部材であってもよい。または軸傾斜部41の一部が軸傾斜部回転止め部47として機能するとしてもよい。
【0038】
また、軸傾斜部回転止め部47は軸ガイド部42と接合されているものに限らず、ローラ軸の移動によって移動しない部材、たとえば固定部46や画像形成装置のフレームと接合してもよい。さらに、上述の実施形態ではベルト突当部30はベルト3の走行に応じて回転するものとされているが、ベルト突当部30が回転しないように設置されているものであれば、軸傾斜部回転止め部47はベルト突当部30と接合されてもよい。
【0039】
なお、上述した部材のうちテンションローラ52、ローラ軸6、ベルト突当部30、ベルト位置補正部40を有するものをローラユニットという。また、軸傾斜部41、軸ガイド部42、ローラ軸支持部43、固定部46、および
図6に示されるローラ軸支持バネ45を有するものをベルト位置補正部40という。
【0040】
次に、本実施形態の画像形成装置におけるベルト制御装置の動作について説明する。画像形成装置の駆動ローラ51が駆動源によって回転すると、駆動ローラ51の回転に伴って
図2(1)に示されるy方向(以降、走行方向という。)へベルト3が走行する。そして、ベルト3の走行に伴ってベルト3を架け渡しているテンションローラ52が回転する。このとき、ベルト3は、例えば複数のローラが互いに平行でないことが原因となってローラ軸方向へ移動することがある。ベルト3がローラ軸方向へ移動してベルト端部3aが平面部30aに突き当たると、ベルト端部3aがローラ軸方向外方への力をベルト突当部30に加えながら、ベルト3は走行方向へ走行する。
【0041】
ここで、ベルト3におけるローラ軸方向の移動について
図2および
図8を用いて詳細に説明する。ここでは説明を容易にするためテンションローラ52および支持ローラ53に架け渡されている部分のベルト3の動作について説明する。
【0042】
図8は、ベルトのローラ軸方向への移動について説明するための図である。
図8には、テンションローラ52および支持ローラ53にベルト3が架け渡され、テンションローラ52と支持ローラ53とが互いに平行でない状態が表されている。特に、
図8(1)には、テンションローラ52が紙面に対して平行で、支持ローラ53の左側の端部が右側の端部よりx軸方向の紙面手前となるように傾いている状態が表されている。このようにテンションローラ52の軸と支持ローラ53の軸とが互いに平行でないことによって、ベルト3が走行方向に対して角度γで傾いている場合、ベルト3が距離Lだけ走行すると、ベルト3は+z方向(
図8において右側に向かう方向)に距離Ltanγだけ移動する。
【0043】
ベルト3がローラ軸方向に移動してベルト突当部30に突き当たると、軸傾斜部41はローラ軸方向外方へ移動してローラ軸6およびテンションローラ52が傾斜する。この動作について具体的に説明する。
【0044】
図2(1)に示されるように、ベルト端部3aがベルト突当部30の平面部30aに突き当たるとベルト突当部30はローラ軸方向外方(+z方向)へ移動する。軸ベルト突当部30の移動によって軸傾斜部41にはローラ軸方向外方への力が加わる。この力によって軸傾斜部41がローラ軸方向外方へ移動すると、
図2(2)に示されるように軸ガイド部42の軸傾斜部当接部42aが接する傾斜面41aの位置が上方にずれて傾斜する。そして、軸傾斜部41の傾斜に伴って軸傾斜部41を貫通しているローラ軸6の端部が+x方向(
図2(2)において下側へ向かう方向)へ移動する。
【0045】
ローラ軸6の端部が+x方向に移動すると、ローラ軸6が貫通しているテンションローラ52は傾斜する。
図2(2)に示されるテンションローラ52が傾いた状態をx軸方向から見た図が
図8(2)である。
図8(2)に示されるようにテンションローラ52の左側の端部は右側の端部よりx軸方向の紙面手前となるよう傾斜している。ここで、テンションローラ52が支持ローラ53の傾斜より大きく傾斜していると、テンションローラ52および支持ローラ53は
図8(1)に示される状態とは相対的に逆の傾きを形成することになる。テンションローラ52および支持ローラ53が相対的に逆の傾きを形成するとベルト3は−z方向(
図8(2)において左側に向かう方向)に移動し元の位置に戻っていく。
【0046】
具体的には、
図8(2)に示されるように、テンションローラ52が傾斜することによってベルト3の走行方向が角度γ’だけ傾斜した場合、ベルト3が距離Lだけ走行すると上述の動作と逆方向である−z方向へLtanγ’の距離だけ移動する。すなわち、テンションローラ52に架け渡されているベルト3は軸方向内方へ戻っていき、ベルト3の位置が元の位置に戻るように補正される。
【0047】
また、上述の構成において、テンションローラ52とベルト端部支持部7との間には隙間部31bが設けられている(
図2参照)ため、ガタが発生してテンションローラ52がローラ軸方向に動いてもテンションローラ52とベルト端部支持部7は離れている状態を維持する。そのためテンションローラ52がベルト端部支持部7を介してベルト突当部30および軸傾斜部41に対して軸方向外方へ力を加えることはない。したがって、ベルト端部3aがベルト突当部30に突き当たることによって加わる力のみによってローラ軸6は傾斜することができる。
【0048】
すなわち、ベルト3がローラ軸方向外方に大きく移動した場合にはベルト端部3aがベルト突当部30に加わる力は大きく、そのためローラ軸6が傾斜する角度γ’が大きくなりベルト3がローラ軸方向内方へ戻っていく距離Ltanγ’が長くなる。一方、ベルト3のローラ軸方向外方への移動が小さい場合にはベルト端部3aがベルト突当部30に加える力は小さく、そのためローラ軸6が傾斜する角度γ’は小さくなりベルト3がローラ軸方向内方へ戻っていく距離Ltanγ’が短くなる。このようにベルト3のローラ軸方向外方への移動の大きさによって、ベルト3がローラ軸内方へ戻っていく距離が決まり、適切な補正が可能となる。
【0049】
また、本実施形態においては、
図6に示されるようにローラ軸支持バネ45が設けられているので、軸傾斜部41に対してローラ軸方向外方(z方向)への力が加わってローラ軸6の端部がx軸方向に移動すると、ローラ軸支持部43は
図6の矢印アで示される方向に支持中心部43aを中心とした円弧に沿って傾斜する。ローラ軸支持部43が傾斜することによって伸びたローラ軸支持バネ45の伸びを戻す方向に弾性力が発生する。この弾性力によってローラ軸支持部43は元の位置の方(矢印イで示す方向)に戻ろうとするため、ローラ軸支持部43に覆われているローラ軸6は上方に変位しようとする。このため、軸傾斜部41は自重によって軸ガイド部42から離れることなく、傾斜面41aにおいて軸ガイド部42の軸傾斜部当接部42aと接した状態を保持することが可能となる。
【0050】
ところで、上述のようにテンションローラ52が回転すると、これと接合して設けられているローラ軸6が回転する。このため、軸傾斜部41がローラ軸6との接触によって発生する摩擦力によって回転することがある。また、軸傾斜部41は上述のとおり回転するベルト突当部30との接触によって発生する摩擦力によって回転することがある。
【0051】
このように軸傾斜部41がローラ軸6の回転方向に回転すると軸傾斜部41の傾斜面41aが軸傾斜部当接部42aに接触しながら動くため、軸傾斜部41が回転しない場合に比べて磨耗が激しくなってしまう。そのため軸傾斜部回転止め部47を設けて、軸傾斜部41がxy平面内で
図5の矢印ウの方向に回転するような摩擦力が加わっても軸傾斜部回転止め部47にあたって軸傾斜部41の回転が止まる。
【0052】
以上のように本実施形態において軸傾斜部回転止め部47を設けることによって、ローラ軸6の回転に伴って軸傾斜部41が回転するのを防ぐことができ、軸傾斜部41と軸ガイド部42における接点での磨耗を減少することが可能となる。したがって、軸傾斜部41や軸ガイド部42の損傷を防ぐことができるので、ベルト3の搬送における不具合を減少したり、部品の寿命を延ばしたりすることが可能となる。
【0053】
ここで、上述のように動作する画像形成装置においてベルト制御装置が設置される状態について
図9を用いて説明する。
図9は、ローラおよびベルト制御装置を設置した状態を表す図である。既に説明したとおり、軸傾斜部41は軸傾斜部当接部42aと接しながらx軸方向に移動するため、軸傾斜止め部41bを有しない構成の場合、
図9(2)に示されるようにローラ軸6がz軸に平行とならない状態で設置されてしまうことがある。
【0054】
このような構成において、
図9(1)に示されるようにテンションローラ52の一の端部に設けられている軸傾斜部41が軸傾斜止め部41bを有し、ローラの他の端部に設けられている軸傾斜部41’が軸傾斜止め部41b’を有することによって、ローラ軸6はz軸に平行な状態で安定する。具体的には、ベルト制御装置が設置されるとき画像形成装置は動作していないため軸傾斜部41、軸傾斜部41’ともにz軸方向への力を受けることはない。そのような状態でベルト制御装置が設置されると、軸傾斜止め部41bが軸ガイド部42のR形状を形成する下面と突き当たって軸傾斜部41の−x軸方向への移動が妨げられる。このため軸傾斜止め部41b’も+x軸方向へ移動しない。同様に、軸傾斜部41’の軸傾斜止め部41b’が軸ガイド部42’のR形状の下面と突き当たって軸傾斜部41’の−x軸方向への移動が妨げられる。このため軸傾斜止め部41bも+x軸方向へ移動しない。
【0055】
これらの結果、軸ガイド部42、軸ガイド部42’のR形状の下面が、それぞれ軸傾斜止め部41b、軸傾斜止め部41b’と接する位置で安定し、ローラ軸6、ローラ軸6’、およびそれらと一体となっているテンションローラ52はz軸に平行な状態で安定する。同様にして、支持ローラ53もz軸に平行な状態で安定するため、テンションローラ52と支持ローラ53は互いに平行な状態で安定する。なお、画像形成装置が動作し、軸傾斜部41または軸傾斜部41’にz軸方向の力が加わると上述したようにローラ軸6、ローラ軸6’、テンションローラ52は
図9(3)に示されるように傾斜する。
【0056】
このように、互いに隣接するローラのそれぞれの軸傾斜部41に軸傾斜止め部41bを設けることによって画像形成装置が動作し始めるとき、複数のローラ軸が平行でないことに起因するベルト3のローラ軸方向への移動を防ぐことができる。また、軸傾斜止め部41bを設けて複数のローラ軸が平行な状態(
図9(2)参照)となるようにした場合、複数のローラが互いに平行でない状態(
図9(1)参照)場合に比べて、ベルト3のローラ軸方向の移動を補正するときに軸傾斜部41およびローラ軸6が傾斜する状態(
図9(3)参照)までのローラの移動量は小さいもので済む。移動量が大きくなる場合に比べ、短時間でベルト3の走行方向を補正することができ、補正されるまでに発生する画像の不良を減少させることが可能となる。
【0057】
なお、本実施形態においては、テンションローラ52に隣接するローラである支持ローラ53においても同様の構成のベルト制御装置を設けることによって、支持ローラ53もz軸に平行な状態で安定する。このようにして、テンションローラ52と支持ローラ53を互いに平行な状態とし安定させてもよい。
【0058】
また、テンションローラ52でないローラ、すなわち駆動ローラ51、支持ローラ53、支持ローラ54に係るベルトユニットにおいてはベルトのテンションを維持する機能を有しないためテンションローラ調整部43b、ベルト張架バネ43cは必要がない。したがって、駆動ローラ51、支持ローラ53、支持ローラ54においては、軸傾斜部回転止め部47が軸ガイド部42と接合して設けられればよい。
【0059】
また、テンションローラ52に限らず、駆動ローラ51,テンションローラ52、支持ローラ53、支持ローラ54のいずれか二以上のローラの端部にベルト制御装置が設けられてもよい。
【0060】
また、本実施形態において、軸傾斜部41はローラ軸方向外方にベルトの面と平行な面に対してローラ軸方向外方を下にして傾斜している平面である傾斜面41aをテンションローラ52の軸より上側に有しているとしたが、ローラ軸方向外方にベルトの面と平行な面に対してローラ軸方向外方を上にして傾斜している平面である傾斜面41aをテンションローラ52の軸より下側に有しているとしてもよい。
【0061】
また、本実施形態において、軸傾斜部41はベルト端部3aが平面部30aに接した状態でベルトが走行方向へ走行すると、ベルト端部3aと平面部30aの間で発生する摩擦力によってベルト突当部30はベルト3の走行に応じて回転する。これによって、ベルト端部3aが摩擦力によって受ける負荷を低減でき、ベルト3の破損、平面部30aの磨耗を防止することが可能となる。