特許第6048871号(P6048871)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 学校法人東京理科大学の特許一覧

特許6048871酸増殖剤及び当該酸増殖剤を含有する酸反応性樹脂組成物
<>
  • 特許6048871-酸増殖剤及び当該酸増殖剤を含有する酸反応性樹脂組成物 図000036
  • 特許6048871-酸増殖剤及び当該酸増殖剤を含有する酸反応性樹脂組成物 図000037
  • 特許6048871-酸増殖剤及び当該酸増殖剤を含有する酸反応性樹脂組成物 図000038
  • 特許6048871-酸増殖剤及び当該酸増殖剤を含有する酸反応性樹脂組成物 図000039
  • 特許6048871-酸増殖剤及び当該酸増殖剤を含有する酸反応性樹脂組成物 図000040
  • 特許6048871-酸増殖剤及び当該酸増殖剤を含有する酸反応性樹脂組成物 図000041
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048871
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】酸増殖剤及び当該酸増殖剤を含有する酸反応性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20161212BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20161212BHJP
   C08G 59/68 20060101ALI20161212BHJP
   C07D 317/18 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   C09K3/00 K
   G03F7/004 503Z
   C08G59/68
   C07D317/18
【請求項の数】6
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2012-193418(P2012-193418)
(22)【出願日】2012年9月3日
(65)【公開番号】特開2014-47329(P2014-47329A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100115842
【弁理士】
【氏名又は名称】秦 正則
(72)【発明者】
【氏名】有光 晃二
【審査官】 井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−024172(JP,A)
【文献】 特開平11−102066(JP,A)
【文献】 特開2002−062641(JP,A)
【文献】 特開2000−035665(JP,A)
【文献】 特開平08−248561(JP,A)
【文献】 特開平08−325259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
C07D317/00 −325/00
G03C 3/00
G03F 7/004− 7/18
C08G 59/00− 59/72
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)または式(I−1)で表されることを特徴とする酸増殖剤。
【化1】
【化2】
(式(I)及び式(I−1)中、、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基、または炭素数6〜12の芳香族基を示し、これらは、直鎖構造、枝分かれ構造、あるいは環構造であってもよい。また、R、R及びRは水素原子を示す。さらに、式(I)中、mは1か2の整数であり、mが1の場合、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、あるいは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基、または炭素数6〜12の芳香族基を示し、が2の場合、R及びRは水素原子を示す。式(I)及び式(I−1)中、は対アニオンであり、Hammettの酸度関数Hが−12以下の超強酸の対アニオンを示す。)
【請求項2】
下記式(I’)または式(I’−1)で表されることを特徴とする請求項1に記載の酸増殖剤。
【化3】
【化4】
(式(I’)及び式(I’−1)中、R、R、R、R、R、R、R、mは、前記式(I)及び式(I−1)と共通する。)
【請求項3】
前記Xが、HSO、CFCFCFCFSO、CFCFCFSO、CFCFSO、CFSO、BF、PF、AsF、SbF、B(C及びB(Cよりなる群より選ばれる1種であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の酸増殖剤。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の酸増殖剤及び酸反応性化合物を含有することを特徴とする酸反応性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の酸増殖剤と、酸発生剤及び酸反応性化合物を含有することを特徴とする酸反応性樹脂組成物。
【請求項6】
前記酸反応性化合物がエポキシ系化合物、ケイ素系化合物、オキセタン系化合物及びビニルエーテル化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の酸反応性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸増殖剤及び当該酸増殖剤を含有する酸反応性樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、酸の作用によって分解し、新たな酸を増殖的に発生可能な酸増殖剤及び当該酸増殖剤を含有する酸反応性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、液晶デバイス等の各種電子デバイスにおける微細構造の製造には、リソグラフィー法が多用されているが、デバイス構造の微細化に伴って、リソグラフィー工程におけるレジストパターンの微細化が要求されている。
【0003】
また、レジストパターンの形成の手法として知られる化学増幅型レジストは、例えば、酸発生剤に光を照射して触媒等となる強酸を発生させ、樹脂成分を化学変性させる。そして、化学変性された樹脂成分の溶解性の変化により、パターンを形成するようにする。かかる化学増幅型のポジ型レジストは、光、X線、電子線等の活性エネルギー線の照射部で発生した酸が、その後の熱処理(によって拡散し、樹脂等の保護基を脱離させるとともに、酸を再生成することにより、その照射部位をアルカリ可溶とする。加えて、化学増幅型のネガ型レジストは、照射部位で発生した酸がその後の熱処理によって拡散し、架橋剤に作用して、その照射部位のマトリックス樹脂を硬化させることになる。
【0004】
活性エネルギー線の照射によってレジスト中に酸を発生させる活性エネルギー線−酸反応に、酸の作用によってレジスト中で自己触媒的に分解して、新たに酸を増殖的に発生する酸増殖反応を組み合わせることにより、酸増殖剤の利用が硬化性向上に有効であることが示されており、酸触媒反応を大幅に加速する方法や、かかる方法に用いられる種々の酸増殖剤が提案され、カチオンUV硬化材料の硬化等に適用されている(例えば、特許文献1及び特許文献2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−248561号公報
【特許文献2】特開2000−35665号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、カチオンUV硬化材料を硬化させるためには、硬化材料におけるエポキシ基等の構成基同士を結合させて鎖(結合鎖)を延ばしていく必要があるが、これまで提供されてきた酸増殖剤から発生する酸は、化学増幅レジストにおいて保護基の結合を切断するのは得意であるが、硬化材料における構成基同士を結合させ、鎖(結合鎖)を延ばすように作用することは難しく、さらなる感度の向上にはより強い酸を発生させて、構成基同士の鎖(結合鎖)を延ばすように作用させることが求められている。さらに、エポキシ系樹脂等からなるカチオンUV硬化材料では、対アニオンの求核性が低い超強酸が必要とされており、改善が求められていた。
【0007】
本発明は、前記の課題に鑑みてなされたものであり、酸の存在によって新たな酸を発生可能であり、かつ酸増殖反応が進行する酸増殖剤において、超強酸を増殖的に発生させ、カチオンUV硬化材料を効率的に硬化させることが可能な酸増殖剤及び当該酸増殖剤を含有する酸反応性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、本発明に係る酸増殖剤は、下記式(I)または式(I−1)で表されることを特徴とする。
【0009】
【化1】
【化2】
(式(I)及び式(I−1)中、、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基、または炭素数6〜12の芳香族基を示し、これらは、直鎖構造、枝分かれ構造、あるいは環構造であってもよい。また、R、R及びRは水素原子を示す。さらに、式(I)中、mは1か2の整数であり、mが1の場合、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、あるいは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基、または炭素数6〜12の芳香族基を示し、が2の場合、R及びRは水素原子を示す。式(I)及び式(I−1)中、は対アニオンであり、Hammettの酸度関数Hが−12以下の超強酸の対アニオンを示す。)
【0010】
本発明に係る酸増殖剤は、前記した本発明において、下記式(I’) または式(I’−1)で表されることを特徴とする。
【0011】
【化3】
【化4】
(式(I’)及び式(I’−1)中、R、R、R、R、R、R、R、mは、前記式(I)及び式(I−1)と共通する。)
【0012】
本発明に係る酸増殖剤は、前記した本発明において、前記Xが、HSO、CFCFCFCFSO、CFCFCFSO、CFCFSO、CFSO、BF、PF、AsF、SbF、B(C及びB(Cよりなる群より選ばれる1種であることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る酸反応性樹脂組成物は、前記した本発明の酸増殖剤及び酸反応性化合物を含有することを特徴とする。
【0014】
本発明に係る酸反応性樹脂組成物は、前記した本発明の酸増殖剤と、酸発生剤及び酸反応性化合物を含有することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る酸反応性樹脂組成物は、前記した本発明において、前記酸反応性化合物がエポキシ系化合物、ケイ素系化合物、オキセタン系化合物及びビニルエーテル化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る酸増殖剤は、構成するアニオンXとして超強酸の対アニオンを使用するので、超強酸を増殖的に発生させることができる酸増殖剤となる。よって、本発明の酸増殖剤を、酸と反応する酸反応性化合物に共存させると、増殖的に発生される超強酸により、酸反応性化合物を効率よく硬化させることが可能となる。なお、本発明の酸増殖剤はカチオン重合に基づくフロンタル重合系にも応用することができる。
【0017】
また、本発明に係る酸反応性樹脂組成物は、本発明の酸増殖剤、あるいは本発明の酸増殖剤と酸発生剤と酸反応性化合物を含有することにより、酸増殖剤から発生する超強酸とカチオンUV硬化材料となる酸反応性化合物の反応が連鎖的に進行し、硬化速度及び反応効率に優れたものとなり、硬化が十分になされる酸反応性樹脂組成物となる。かかる効果を奏する本発明の酸反応性樹脂組成物は、例えば、高感度の光硬化材料やレジスト材料(パターン形成材料)等に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】試験例2において、加熱時間とスルフィドの生成率との関係を示した図である。
図2】試験例4において、加熱時間と1,3−ジオキソラン由来のピークとの関係を示した図である。
図3】試験例5において、実施例1で得られた酸増殖剤のUVスペクトル変化を示した図である。
図4】試験例6において、実施例1で得られた酸増殖剤及びクマリンを含む試験膜のUVスペクトル変化を示した図である。
図5】試験例7において、比較例1の鉛筆硬度測定の結果を示した図である。
図6】試験例7において、実施例4の鉛筆硬度測定の結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一態様を説明する。本発明に係る酸増殖剤は、下記式(I)で表される化合物である。
【0020】
【化3】
【0021】
式(I)で表される酸増殖剤において、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基、または炭素数6〜12の芳香族基といった有機基を示している。これらの有機基は、直鎖構造、枝分かれ構造、あるいは環構造でもよくヘテロ原子を含んでいてもよい。また、R〜Rにはシリル基、アクリル基、メタクリル基などの重合性基を含んでいてもよく、モノマーであってもそれらが重合した重合体でもよい。なお、アルキル基は、炭素数が1〜12であることが好ましい。
【0022】
また、式(I)において、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、あるいは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基、または炭素数6〜12の芳香族基といった有機基を示している。なお、アルキル基は、炭素数が1〜12であることが好ましい。
【0023】
式(I)において、m、mは、それぞれ独立して1〜10の整数を示している。m、mは、それぞれ、1〜3の整数とすることが好ましい。
【0024】
なお、R、R、R、R、R及びRが芳香族基の場合、これらの芳香族基は、1〜5個の置換基を有することができる。置換基としては、例えば、水素原子、ハロゲン、水酸基、スルフィド基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、カルボキシル基、カルボニル基、エステル基、ホルミル基、アシル基、シアノ基、アルコキシ基、アミノ基、アミド基、アリール基、アリル基、アンモニオ基等が挙げられる。かかる置換基は、同一であっても異なっていてもよい。さらに、芳香族基の置換基としてシリル基、アクリル基、メタクリル基等の重合性の基を含んでいてもよく、モノマーであってもそれらが重合した重合体でもよい。式(I)の好ましい例を、式(I’)として示す。なお、式(I’)において、R、R、R、R、R、R、R、m、m、Xは、前記した式(I)と共通するものである。
【0025】
【化4】
【0026】
また、式(I)に示される酸増殖剤を構成するXとしては、一般的に超強酸と呼ばれる酸の対アニオンを使用することができ、Hammettの酸度関数Hが−12以下の超強酸の対アニオンであり、例えば、超強酸及びその対アニオンとして、HSO(対アニオンはHSO)、CFCFCFCFSOH(同CFCFCFCFSO)、CFCFCFSOH(同CFCFCFSO)、CFCFSOH(同CFCFSO)、CFSOH(同CFSO)、HBF(同BF)、HPF(同PF)、HAsF(同AsF)、HSbF(同SbF)、HB(C(同B(C)、HB(C(同B(C)等とすることが好ましく、HBF(同BF)、HPF(同PF)、HAsF(同AsF)、HSbF(同SbF)、HB(C(同B(C)、HB(C(同B(C)等とすることが特に好ましい。表1にこれらの代表例のHammettの酸度関数Hを載せた。
【0027】
(Hammettの酸度関数H
【表1】
【0028】
本発明の酸増殖剤は、酸の作用により分解して増殖的に酸を発生する特性を有する。従って、本発明の酸増殖剤は、その一定量に対してそれより少ない当量の酸を作用させることにより、自己増殖的に分解し、最終的にその全量が分解し、その酸増殖剤の量に対応する多量の酸を発生させる。加えて、本発明の酸増殖剤は、それ自身が光酸発生剤となり得るため、光照射により発生した酸(超強酸)をトリガーとして続く加熱により自己増殖的に酸を増殖することも可能である。反応挙動について、スキーム1に熱化学反応のみの場合、スキーム2に光により自ら超強酸を発生し続く加熱で酸を増殖する場合をスキーム2に示す。なお、酸増殖剤に作用させる酸は、酸増殖剤を構成する酸(発生ないし増殖される酸)と共通する酸を使用することが好ましいが、異なる酸を使用しても問題はない。
【0029】
(スキーム1)
【化5】
【0030】
(スキーム2)
【化6】
【0031】
本発明にあっては、酸増殖剤を構成するアニオンXとして前記した超強酸の対アニオンを使用するので、酸反応性化合物と併用した場合にはかかる酸反応性化合物の重合時の反応効率が高い、優れた酸として作用し、前記したスキームによる増殖反応により強強酸を発生させることができる。よって、強酸を発生可能な本発明の酸増殖剤を、酸と反応するエポキシ系化合物等の酸反応性化合物に共存させることにより、酸反応性化合物の構成基同士を結合させ、鎖(結合鎖)を延ばすことができ、カチオンUV硬化材料となる酸反応性化合物を効率よく硬化させることが可能となる。また、本発明の酸増殖剤はカチオン重合に基づくフロンタル重合系にも応用することができる。
【0032】
なお、Xは超強酸の対アニオンであり、酸増殖剤のカチオン部はスルホニウムであるが、カチオン部はヨードニウムであってもよい。スルホニウムやヨードニウムは光分解性であり、対アニオンに対応する酸を発生するので光酸発生剤としての機能も有する。
【0033】
また、式(I)に示される酸増殖剤の具体例を、以下に示す。
【0034】
【化7】
【0035】
式(I)で表される酸増殖剤を製造するには、例えば、下記の合成スキームにより、簡便に製造することができる。すなわち、β−ハロケトンにチオール化合物を反応させることにより、スルフィドを得る。次に、酸触媒存在下、ジオールを反応させケタールを合成し、さらに、トリアルキルオキソニウム塩を反応させて目的物であるスルホニウム塩を得ることができる。
【0036】
(合成スキーム)
【化8】
【0037】
また、本発明に係る酸増殖剤は、酸発生剤と組み合わせて酸増殖剤組成物として使用することができる。ここで、酸発生剤とは、一般に、光等の活性エネルギー線を照射したり、加熱することによって酸を発生する物質である。酸発生剤としては、特に限定されないが、光等の活性エネルギー線の照射によって酸を発生する光酸発生剤や、加熱により酸を発生する熱酸発生剤(熱潜在性酸発生剤)を使用することが好ましい。このうち、酸を発生させるために高温下で加熱処理を行う必要がないため、光酸発生剤を使用することが特に好ましい。
【0038】
光酸発生剤としては、特に限定されないが、例えば、特開平8−248561号公報、特開2000−35665号公報、特開2001−81138号公報、特開2012−104697号公報等に開示された光酸発生剤を使用することができる。具体的には、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨ−ドニウム、スルホニウム、ホスホニウムなどの芳香族オニウム化合物(芳香族オニウム塩)のBF、PF、AsF、SbF、CFSO等の塩を挙げることができる。
【0039】
光酸発生剤として、その他のスルホニウム塩としては、例えば、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4,4’−ビス〔ジフェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、4,4’−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、4−フェニルカルボニル−4’−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィドヘキサフルオロホスフェートなどのヘキサフルオロホスフェート系スルホニウム塩;トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4,4’−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、7−〔ジ(p−トルイル)スルホニオ〕−2−イソプロピルチオキサントンヘキサフルオロアンチモネート、4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4’−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィドヘキサフルオロアンチモネートなどのヘキサフルオロアンチモネート系スルホニウム塩;トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、7−〔ジ(p−トルイル)スルホニオ〕−2−イソプロピルチオキサントンテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4’−ジ(p−トルイル)スルホニオ−ジフェニルスルフィドテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどのテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート系スルホニウム塩等が挙げられ、市販品としては、例えば、UVI−6970、UVI−6974(以上ユニオンカーバイド社製)、SP−170、SP−171、SP−172、SP−150、SP−151(以上(株)ADEKA製)、CPI−210S(サンアプロ(株)製)等が挙げられる。
【0040】
また、光酸発生剤として、その他のヨードニウム塩として、例えば、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジ(4−ノニルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート等が挙げられ、市販品としては、例えば、PI2074(ローディア社製)等が挙げられる。
【0041】
また、熱酸発生剤としては、特に限定されないが、例えば、特開2011−80044号公報や特開2011−207948号公報に開示される熱酸発生剤や、前記した光酸発生剤として例示したヘキサフルオロアンチモネート系スルホニウム塩等が挙げられ、市販品としては、例えば、サンエイドSI−60、SI−60L、SI−80、SI−80L、SI−100、SI−100L(以上三新化学工業(株)製)、CI−2624(日本曹達(株)製)等が挙げられる。
【0042】
酸増殖剤と酸発生剤を組み合わせて酸増殖剤組成物として使用する場合には、酸増殖剤を構成する酸と、酸発生剤を構成する酸が共通することが好ましい。酸が共通することにより、酸増殖剤の分解が効率よく行われることになる。
【0043】
酸増殖剤と酸発生剤を組み合わせて酸増殖剤組成物として使用する場合の酸増殖剤と酸発生剤の配合比は、質量比で、酸増殖剤/酸発生剤=40/1〜5/20の範囲内とすることが好ましい。酸増殖剤の配合量が少なすぎると酸が効率的に発生せず、酸反応性化合物を迅速に反応させることができなくなる場合がある。一方、酸増殖剤の配合量が多すぎると、酸発生剤の使用量が増加し、酸発生剤自体が酸反応性化合物の溶解性等に悪影響を与える場合があり、また、コスト的にも好ましくない。酸増殖剤と酸発生剤の配合比は、質量比で、酸増殖剤/酸発生剤=20/1〜1/1の範囲内とすることが特に好ましい。
【0044】
次に、本発明の酸反応性樹脂組成物を説明する。本発明の酸反応性樹脂組成物は、前記した酸増殖剤、あるいは酸増殖剤及び酸発生剤(酸増殖剤組成物)と、酸の存在によって硬化反応をする酸反応性化合物を必須成分として含有する。
【0045】
本発明の酸反応性樹脂組成物を構成する酸反応性化合物は、酸増殖剤、あるいは酸増殖剤及び酸発生剤(酸増殖剤組成物)により発生した酸の作用により反応して、架橋等により硬化する化合物であり、例えば、下記No.4−1〜No.6−4の化合物等を使用することができる。特に、例えば、少なくとも1つのエポキシ基を有するエポキシ系化合物、少なくとも1つのアルコキシシリル基やシラノール基等を有しているケイ素系化合物、オキセタン環を含むオキセタン系化合物、ビニルエーテル化合物等のカチオン重合性化合物を使用することが好ましい。かかる酸反応性化合物は、1種類を単独で用いるようにしてもよく、また、2種類以上を組み合わせて使用するようにしてもよい。
【0046】
また、酸反応性化合物に対して、酸増殖剤は、1種を単独で用いるようにしてもよく、また、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、酸増殖剤と酸発生剤を併用して酸増殖剤組成物として使用する場合には、酸発生剤は、1種類を単独で用いるようにしてもよく、また、2種類以上を組み合わせて使用するようにしてもよい。
【0047】
酸反応性化合物としては、特に限定されないが、例えば、特開平8−248561号公報、特開2000−35665号公報、特開2001−81138号公報等に開示された酸反応性物質等や、特開2011−207948等に開示されたカチオン重合性化合物等や、特開2012−104697号公報等に開示されたカチオン硬化性モノマー等を使用することができる。
【0048】
具体的に使用可能なエポキシ系化合物(エポキシ系樹脂)としては、例えば、ジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フエニルグリシジルエーテル、アルキルフェノールグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ジグリセリンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、脂肪族ジグリシジルエーテル、多官能グリシジルエーテル、3級脂肪酸モノグリシジルエーテル、スピログリコールジグリシジルエーテル、グリシジルプロポキシトリメトキシシラン等が挙げられる。これらのエポキシ系化合物はハロゲン化されていてもよく、水素添加されていてもよく、また、これらのエポキシ系化合物は誘導体も含む。そして、これらのエポキシ系化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0049】
また、ケイ素系化合物(ケイ素系樹脂)としては、例えば、アルコキシシラン化合物やシランカップリング剤等を使用することができる。アルコキシシラン化合物としては、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。これらのアルコキシシラン化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0050】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルシラン、アクリルシラン、エポキシシラン、アミノシラン等が挙げられる。ビニルシランとして、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等が挙げられる。アクリルシランとしては、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。エポキシシランとしては、β−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。アミノシランとしては、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。その他のシランカップリング剤としては、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシシラン等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0051】
オキセタン系化合物(オキセタン系樹脂)としては、単量体のオキセタン系化合物、2量体のオキセタン系化合物等を使用することができる。使用可能なオキセタン系化合物としては、例えば、4,4’−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル、1,4−ベンゼンジカルボン酸ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メチル]エステル、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン等のキシリレンジオキセタン、3−エチル−3−(((3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ)メチル)オキセタン(あるいは3−(((3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ)メチル)−3−エチルオキセタンとも呼ばれる。)、3−エチルヘキシルオキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシオキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、またはオキセタン化フェノールノボラック等が挙げられる。これらのオキセタン系化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0052】
ビニルエーテル化合物(ビニルエーテル樹脂)としては、例えば、2−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、2−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル等が挙げられる。これらのビニルエーテル化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0053】
以下、本発明で使用可能な酸反応性化合物の具体例を挙げる。
【0054】
本発明の酸反応性樹脂組成物を構成する酸反応性化合物は、少なくとも1つのエポキシ基を有するエポキシ系化合物を使用することができる。また、少なくとも2つのエポキシ基を有するエポキシ系化合物に酸を作用させることによって、エポキシ系化合物をエポキシ基の開環重合によりポリマーとすることができる。また、エポキシ系化合物に酸を付加することにより、かかるエポキシ系化合物を化学変性することができる。重合反応性を示すエポキシ系化合物の一例を以下に示す。
【0055】
【化9】
【0056】
また、重合反応性を示すエポキシ系化合物(ポリマー)のその他の例を以下に示す。
【0057】
【化10】
【0058】
また、酸反応性化合物としては、少なくとも1つのシラノール基またはアルコキシシリル基を有するケイ素系化合物を使用することができる。また、少なくとも2つのシラノール基またはアルコキシシリル基を有するケイ素系化合物に酸を作用させることによって、かかるケイ素系化合物をシラノール基またはアルコキシシリル基の縮重合によりポリマーとすることができる。重合反応性を示すケイ素系化合物(No.5−2〜No.5−4はポリマー)の具体例を以下に示す。
【0059】
【化11】
【0060】
また、その他の酸反応性化合物(ラクトン及び環状シロキサン)の構造の具体例を以下に示す。
【0061】
【化12】
【0062】
前記した光酸発生剤や、本発明の酸増殖剤と光酸発生剤を併用して(酸増殖剤組成物として)、酸増殖剤及び光酸発生剤を含有した酸反応性樹脂組成物(感光性樹脂組成物)における照射光の波長及び露光量の範囲としては、光酸発生剤の種類や量、及び酸反応性樹脂組成物(感光性樹脂組成物)を構成する酸反応性化合物の種類等に応じて適宜決定すればよいが、例えば、波長として6.0〜400nm、露光量として5〜10000mJ/cmの範囲内から選択して適用すればよく、後記する増感剤を用いることによりさらに高波長域を使用することも可能である。照射光の照射時間は、数秒でも可能な場合もあるが、概ね10秒以上とすればよく、0.5〜20分とすることが好ましい。
【0063】
熱酸発生剤を使用する場合の加熱条件は、使用する熱酸発生剤の種類や量、及び酸反応性樹脂組成物(感光性樹脂組成物)を構成する酸反応性化合物の種類等に応じて適宜決定すればよいが、加熱温度を概ね50〜150℃として、加熱時間を1〜1800分とすればよい。一方、また、酸発生剤を併用せず、主成分を酸増殖剤と酸反応性化合物として酸反応性樹脂組成物とする場合には、酸増殖剤が分解可能な所望の酸を添加するようにすればよい。前記したように、酸増殖剤に作用させる酸は、酸増殖剤を構成する酸(発生ないし増殖される酸)と共通する酸を使用することが好ましいが、異なる酸を使用しても問題はない。
【0064】
本発明の酸反応性樹脂組成物における酸増殖剤の含有量は、酸反応性化合物100質量部に対して0.1〜60質量部とすることが好ましい。酸増殖剤の含有量が0.1質量部より少ないと、酸反応性化合物を迅速に反応させることができなくなる場合がある一方、酸増殖剤の含有量が60質量部を超えると、酸増殖剤の存在が酸反応性化合物の溶媒に対する溶解性に悪影響を与える場合があり、また、過剰量の酸増殖剤の存在はコスト高に繋がることになる。酸増殖剤の含有量は、酸反応性化合物100質量部に対して1〜60質量部とすることがなお好ましく、2〜30質量部とすることがさらに好ましく、2〜20質量部とすることがより好ましく、2〜15質量部とすることが特に好ましい。
【0065】
また、酸増殖剤と酸発生剤を併用して酸反応性化合物に酸増殖剤組成物として含有させる場合にあっては、酸発生剤の含有量は、前記した酸増殖剤と酸発生剤の配合比に対応させるように酸発生剤を含有させるようにすることが好ましい。また、酸反応性化合物100質量部に対して0.5〜30質量部とすることが好ましい。酸発生剤の含有量が0.5質量部より少ないと、酸増殖剤に作用せず、酸反応性化合物を迅速に反応させることができなくなる場合がある一方、酸発生剤の含有量が30質量部を超えると、酸増殖剤と同様、酸発生剤の存在が酸反応性化合物の溶媒に対する溶解性に悪影響を与える場合があり、また、過剰量の酸発生剤の存在はコスト高に繋がることになる。酸発生剤の含有量は、酸反応性化合物100質量部に対して2〜30質量部とすることがさらに好ましく、5〜20質量部とすることが特に好ましい。
【0066】
本発明の酸反応性樹脂組成物は、酸反応性化合物として、前記したNo.4−1〜No.4−13等の重合反応性を示すエポキシ系化合物(重合性エポキシ系化合物)、あるいは前記したNo.5−1〜No.5−6等の重合反応性を示すケイ素系化合物(重合性ケイ素系化合物)とすることが好ましい。このような酸反応性樹脂組成物は、光または熱の作用により、重合し、重合体を与えることとなる。中でも、光により重合反応を開始する酸反応性化合物を含む酸反応性樹脂組成物(感光性樹脂組成物)とすることが好ましい。
【0067】
本発明に係る酸反応性樹脂組成物を用いてパターンを形成するには、例えば、当該樹脂組成物を有機溶媒に溶解して塗布液を調製し、調製された塗布液を基板等の適当な固体表面に塗布し、乾燥して塗膜を形成するようにする。そして、形成された塗膜に対して、パターン露光を行って酸を発生させた後、所定の条件で加熱処理を行って、酸反応性樹脂組成物に含有される酸反応性化合物の重合反応を促すようにする。
【0068】
本発明の酸反応性樹脂組成物は、本発明の酸増殖剤を含有するため、室温でも重合反応は進行するが、重合反応を効率よく進行させるべく、加熱処理を施すことが好ましい。加熱処理の条件は、露光エネルギー、使用する酸増殖剤から発生する酸の種類、エポキシ系化合物またはケイ素系化合物等の酸反応性化合物の種類によって適宜決定すればよいが、加熱温度は50℃〜150℃範囲内とすることが好ましく、60℃〜130℃の範囲内とすることが特に好ましい。また、加熱時間は10秒〜60分とすることが好ましく、60秒〜30分とすることが特に好ましい。これを露光部と未露光部とで溶解度に差を生じる溶媒中に浸漬して現像を行ってパターンを得ることができる。
【0069】
本発明の酸反応性樹脂組成物は、感光性樹脂組成物として使用する場合、感光波長領域を拡大し、感度を高めるべく、増感剤を添加することができる。使用できる増感剤としては、特に限定はないが、例えば、ベンゾフェノン、p,p’−テトラメチルジアミノベンゾフェノン、p,p’−テトラエチルアミノベンゾフェノン、2−クロロチオキサントン、アントロン、9−エトキシアントラセン、アントラセン、ピレン、ペリレン、フェノチアジン、ベンジル、アクリジンオレンジ、ベンゾフラビン、セトフラビン−T、9,10−ジフェニルアントラセン、9−フルオレノン、アセトフェノン、フェナントレン、2−ニトロフルオレン、5−ニトロアセナフテン、ベンゾキノン、2−クロロ−4−ニトロアニリン、N−アセチル−p−ニトロアニリン、p−ニトロアニリン、N−アセチル−4−ニトロ−1−ナフチルアミン、ピクラミド、アントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、3−メチル−1,3−ジアザ−1,9−ベンズアンスロン、ジベンザルアセトン、1,2−ナフトキノン、3,3’−カルボニル−ビス(5,7−ジメトキシカルボニルクマリン)またはコロネン等が挙げられる。これらの増感剤は、1種類を単独で用いるようにしてもよく、また、2種類以上を組み合わせて使用するようにしてもよい。
【0070】
本発明の酸反応性樹脂組成物を感光性樹脂組成物として使用する場合、増感剤の添加量は、使用する酸増殖剤、光酸発生剤や酸反応性化合物、及び必要とされる感度等により適宜決定すればよいが、酸反応性樹脂組成物全体に対して1〜30質量%の範囲であることが好ましい。増感剤が1質量%より少ないと、感度が十分に高められないことがある一方、増感剤が30質量%を超えると、感度を高めるのに過剰となることがある。増感剤の添加量は、酸反応性樹脂組成物全体に対して5〜20質量%の範囲であることが特に好ましい。
【0071】
本発明の酸反応性樹脂組成物を所定の基材に塗布等する場合にあっては、必要により、溶媒を適宜含有するようにしてもよい。酸反応性樹脂組成物に溶媒を含有させることにより、塗布能力を高めることができ、作業性が良好となる。溶媒としては、特に限定はないが、例えば、ベンゼン、キシレン、トルエン、エチルベンゼン、スチレン、トリメチルベンゼン、ジエチルベンゼン等の芳香族炭化水素化合物;シクロヘキサン、シクロヘキセン、ジペンテン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、イソヘキサン、n−ヘプタン、イソヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、n−ノナン、イソノナン、n−デカン、イソデカン、テトラヒドロナフタレン、スクワラン等の飽和または不飽和炭化水素化合物;ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジ−イソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジフェニルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、p−メンタン、o−メンタン、m−メンタン;ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、メチルアミルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルセロソルブ、酢酸エチルセロソルブ、酢酸ブチルセロソルブ、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソアミル、ステアリン酸ブチル等のエステル類等が挙げられる。これらの溶媒は、1種類を単独で用いるようにしてもよく、また、2種類以上を組み合わせて使用するようにしてもよい。
【0072】
本発明の酸反応性樹脂組成物において、溶媒の含有量は、例えば、所定の基材上に酸反応性樹脂組成物を塗布し、酸反応性樹脂組成物による層を形成する際に、均一に塗工されるように適宜選択すればよい。
【0073】
なお、本発明の酸反応性樹脂組成物には、本発明の目的及び効果を妨げない範囲において、添加剤を適宜添加するようにしてもよい。使用することができる添加剤としては、例えば、充填剤、顔料、染料、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、pH調整剤、分散剤、分散助剤、表面改質剤、可塑剤、可塑促進剤、タレ防止剤、硬化促進剤、充填剤等が挙げられ、これらの1種類を単独で用いるようにしてもよく、2種類以上を組み合わせて使用するようにしてもよい。
【0074】
以上説明した本発明に係る酸反応性樹脂組成物は、本発明の酸増殖剤、あるいは本発明に係る酸増殖剤、酸発生剤及び酸反応性化合物を含有することにより、酸増殖剤から発生する超強酸とカチオンUV硬化材料となる酸反応性化合物の反応が連鎖的に進行し、硬化速度及び反応効率に優れたものとなり、硬化が十分になされる酸反応性樹脂組成物となる。
【0075】
かかる効果を奏する本発明の酸反応性樹脂組成物は、例えば、高感度の光硬化材料やレジスト材料(パターン形成材料)等に好適に用いることができる。一般に、光酸発生剤と酸分解性(高)分子(酸反応性化合物)から化学増幅レジストが製造される。かかる化学増幅レジストは、光の作用により光酸発生剤から発生した酸が触媒となり、酸分解性(高)分子を繰り返し反応させることができるので、高感度なレジスト材料として注目されている。一方、化学増幅レジストが形成するパターンの微細化が進むにつれて、露光波長の短波長化が実施され、用いられる光源の出力が低下し、レジストに到達する光が弱いことが問題となっている。半導体製造プロセスにおいて単位時間当たりの生産量を維持するためには、光源の出力を上げるか、あるいはレジストの感度を向上させることが求められているが、従来の化学増幅レジストの概念のみでは、感度は限界に達している。
【0076】
(従来の化学増幅レジスト)
【化13】
【0077】
そこで、本発明に係る酸増殖剤を系中に組み込んだ酸反応性樹脂組成物は、光酸発生剤から発生する微量の酸を熱化学的に2次的に増大させることができるので、飛躍的な高感度化が可能となる。
【0078】
(本発明の酸増殖剤を用いた化学増幅レジスト)
【化14】
【0079】
以下に、化学増幅レジストで用いられる酸分解性(高)分子と光酸発生剤の一例を示す。
【0080】
(酸分解性(高)分子(酸反応性化合物)の一例)
【化15】
【0081】
(光酸発生剤の一例)
【化16】
【0082】
本発明に係る酸反応性樹脂組成物は、各種の光硬化材料として使用することができ、光硬化材料として適用された場合、かかる材料による成形体は、耐熱性、寸法安定性、絶縁性等の特性が有効とされる分野の部材等として、例えば、塗料または印刷インキ、カラーフィルター、フレキシブルディスプレー用フィルム、半導体装置、電子部品、層間絶縁膜、配線被覆膜、光回路、光回路部品、反射防止膜、ホログラム、光学部材または建築材料の構成部材として広く用いられ、印刷物、カラーフィルター、フレキシブルディスプレー用フィルム、半導体装置、電子部品、層間絶縁膜、配線被覆膜、光回路、光回路部品、反射防止膜、ホログラム、光学部材または建築部材等が提供される。また、形成されたパターン等は、耐熱性や絶縁性を備え、例えば、カラーフィルター、フレキシブルディスプレー用フィルム、電子部品、半導体装置、層間絶縁膜、配線被覆膜、光回路、光回路部品、反射防止膜、その他の光学部材または電子部材として有利に使用することができる。
【実施例】
【0083】
以下、実施例等に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例に何ら限定されるものではない。
【0084】
[実施例1]
酸増殖剤の製造(1):
下記(1)〜(3)の操作を用いて、式(I−a)に示す酸増殖剤を製造した。
【0085】
(1)中間体(1)の製造:
四つ口フラスコに3−クロロプロピオフェノンを14.9g(88.4×10−3mol)、塩基であるトリエチルアミンを9.1g(90.0×10−3mol)入れ、テトラヒドロフラン(THF)10mlに溶解させた。これに、10mlのテトラヒドロフラン(THF)に溶解させた4−メトキシベンゼンチオール12.4g(88.4×10−3mol)を滴下ロートから滴下して加えた。四つ口フラスコの混合物を室温で30分攪拌した後、ジクロロメタン(CHCl)を適当量入れ、炭酸水素ナトリウム水溶液、塩化ナトリウム水溶液の順で抽出し、ヘキサン/ジクロロメタンの混合溶液で再結晶して、下記式(H−1)に示した中間体(1)(3−(4−メトキシフェニルチオ)−1−フェニルプロパン−1−オン)の白色固体を収量12.7g(46.8×10−3mol)、収率58%で得た。
【0086】
【化17】
【0087】
(2)中間体(2)の製造:
Dean−Stark装置を付した四つ口フラスコに(1)で得られた中間体(1)(3−(4−メトキシフェニルチオ)−1−フェニルプロパン−1−オン)を5.0g(18.4×10−3mol)、エチレングリコールを2.0g(31.2×10−3mol)、p−トルエンスルホン酸を0.5g(2.9×10−3mol)、ベンゼンを120ml入れ、12時間還流した。還流、溶媒留去し、濃縮後、酢酸エチル:ヘキサン=1:20の展開溶媒を用いてカラムクロマトグラフィーにより分離し、式(H−2)に示した中間体(2)(2−(2−(4−メトキシフェニルチオ)エチル)−2−フェニル−1,3−ジオキソラン)の白色固体を収量5.39g(17.1×10−3mol)、収率93%で得た。
【0088】
【化18】
【0089】
(3)酸増殖剤の製造:
四つ口フラスコに(2)で得られた中間体(2)(2−(2−(4−メトキシフェニルチオ)エチル)−2−フェニル−1,3−ジオキソラン)を2.4g(5.73×10−3mol)、トリメチルオキソニウムテトラフルオロボレートを0.19g(1.91×10−3mol)、脱水アセトニトリル(dry−CHCN)を10ml入れて室温で15分間攪拌混合した。攪拌混合後の混合物にメタノールを5ml入れ、さらに攪拌混合した後、エバポレータで減圧濃縮し、酢酸エチル:ヘキサン=1:1の展開溶媒を用いてカラムクロマトグラフィーにより分離し、下記式(I−a)に示した本発明の酸増殖剤の白色固体を収量0.23g(0.55×10−3mol)、収率44%で得た。
【0090】
【化19】
【0091】
[実施例2]
酸増殖剤の製造(2)
下記の操作を用いて、式(I−b)に示す酸増殖剤を製造した。
【0092】
四つ口フラスコに実施例1(2)で得られた中間体(2)(2−(2−(4−メトキシフェニルチオ)エチル)−2−フェニル−1,3−ジオキソラン)を0.38g(1.2×10−3mol)、脱水ジクロロメタン(dry−CHCl)を10ml入れた。これに、氷浴中でトリフルオロメタンスルホン酸メチルを0.1g(0.61×10−3mol)滴下ロートから滴下して加え、室温で30分間攪拌混合した。攪拌混合後の混合物を酢酸エチル:ヘキサン=1:1の展開溶媒を用いてカラムクロマトグラフィーにより分離し、式(I−b)に示した本発明の酸増殖剤を収量0.1g(0.33×10−3mol)、収率55%で得た。
【0093】
【化20】
【0094】
[実施例3]
酸増殖剤の製造(3):
下記(1)〜(3)の操作を用いて、式(I−c)に示す酸増殖剤を製造した。
【0095】
(1)中間体(3)の製造:
四つ口フラスコに3−クロロプロピオフェノンを1.0g(5.9×10−3mol)、塩基であるトリエチルアミンを0.86g(8.6×10−3mol)入れ、テトラヒドロフラン(THF)10mlに溶解させた。これに、10mlのテトラヒドロフラン(THF)に溶解させた4−ニトロベンゼンチオールを1.0g(7.12×10−3mol)滴下ロートから滴下して加えた。四つ口フラスコの混合物を室温で30分攪拌した後、ジクロロメタン(CHCl)を入れ、炭酸水素ナトリウム水溶液、塩化ナトリウム水溶液の順で抽出し、ヘキサンとテトラヒドロフラン(THF)の混合溶液で再結晶して、下記式(H−3)に示した中間体(3)(3−(4−ニトロフェニルチオ)−1−フェニルプロパン−1−オン)の黄色固体を収量0.79g(2.75×10−3mol)、収率46%で得た。
【0096】
【化21】
【0097】
(2)中間体(4)の製造:
四つ口フラスコに(1)で得られた中間体(3)(3−(4−ニトロフェニルチオ)−1−フェニルプロパン−1−オン)を3.57g(12.4×10−3mol)、エチレングリコールを1.49g(23.2×10−3mol)、p−トルエンスルホン酸を0.86g(5.0×10−3mol)、ベンゼンを100ml入れ、12時間還流した。還流、濃縮後、酢酸エチル:ヘキサン=1:20の展開溶媒を用いてカラムクロマトグラフィーにより分離し、式(H−4)に示した中間体(4)(2−(2−(4−ニトロフェニルチオ)エチル)−2−フェニル−1,3−ジオキソラン)を収量1.5g(4.53×10−3mol)、収率37%で得た。
【0098】
【化22】
【0099】
(3)酸増殖剤の製造:
四つ口フラスコに(2)で得られた中間体(4)(2−(2−(4−ニトロフェニルチオ)エチル)−2−フェニル−1,3−ジオキソラン)を2.4g(5.73×10−3mol)、トリメチルオキソニウムテトラフルオロボレートを0.19g(1.91×10−3mol)、脱水アセトニトリル(dry−CHCN)を10ml入れて室温で15分間攪拌混合した。攪拌混合後の混合物にメタノールを5ml入れ、さらに攪拌混合した後、エバポレータで減圧濃縮し、式(I−c)に示した本発明の酸増殖剤を得た。
【0100】
【化23】
【0101】
[製造例1]
光酸発生剤の製造:
四つ口フラスコに(4−メトキシフェニル)(メチル)スルファンを1.0g(6.48×10−3mol)、トリメチルオキソニウムテトラフルオロボレートを0.32g(2.16×10−3mol)、脱水アセトニトリル(dry−CHCN)を10ml入れて室温で15分間攪拌混合した。この混合物にメタノールを5ml入れ、さらに室温で5分間攪拌混合した。攪拌混合後の混合物をエバポレータで減圧濃縮し、酢酸エチル:ヘキサン=1:1の展開溶媒を用いてカラムクロマトグラフィーにより分離し、下記式(A)に示した光酸発生剤の白色固体を収量0.23g(0.9×10−3mol)、収率42%で得た。
【0102】
【化24】
【0103】
[試験例1]
保存安定性の確認:
実施例1で得られた酸増殖剤を室温で10日間放置して、分解の有無を確認したところ、分解は起こらず、優れた保存安定性を示した。
【0104】
[試験例2]
酸増殖剤の溶液中での酸増殖剤の分解挙動の確認:
酸増殖剤は、前記したスキーム1及びスキーム2に示すように、酸の添加により分解反応が起こり、酸(実施例1の酸増殖剤ではテトラフルオロホウ酸)とスルフィドが発生することになる(実施例1の酸増殖剤の場合のスキームを示す。かかるスキームから前記スキーム1に繋がる。)。下記の方法を用いて、酸増殖剤の分解挙動を確認した。
【0105】
(実施例1の酸増殖の場合のスキーム)
【化25】
【0106】
NMR試料管に、実施例1で得られた酸増殖剤を72×10−3mol/l、p−トルエンスルホン酸を4.7×10−3mol、水2.7μl、重水5.3μl、メキシレン20μl、アセトニトリル−d1mlを入れ、封管した後100℃で所定の時間加熱した。そして、H−NMRにより、スルフィドピークを追跡することにより、酸増殖剤の分解挙動(スルフィドの生成)を確認し、酸(アセトニトリル)を添加しない場合と比較した。加熱時間とスルフィドの生成率との関係を図1に示す。なお、スルフィドの生成率は、H−NMRスペクトルより算出した。
【0107】
図1に示すように、酸(アセトニトリル)を添加しない系では、加熱時間を長くしても酸増殖剤の分解は起こらず、スルフィドは生成せずに安定していた。一方、酸を添加した系では、酸増殖剤が速やかに分解してスルフィドが定量的に生成し、かつ、増殖反応特有の非線形反応の曲線が得られ、増殖的にスルフィドが発生していることが確認できた。
【0108】
[試験例3]
中和滴定:
ビュレットに6.58×10−3NのNaOH標準溶液(HOはイオン交換水20mlを窒素バブリング)を入れた。試験例2で酸増殖剤を分解させたNMRチューブに10mlのジオキサンを入れ、希釈して2等分した後、4.9×10molのメチルオレンジを入れ、中和滴定(n=2)を行った。結果を表2に示す。なお、酸の発生量(%)は、酸の量(実測値)(ml)を酸の量(理論値)で除して算出し、%換算(100倍)した。
【0109】
(結果)
【表2】
【0110】
表2に示すように、実施例1の酸増殖剤は、酸の作用で自己触媒的に分解して、定量的に新たな酸が発生していることが確認できた。
【0111】
[試験例4]
酸増殖剤の高分子固体中での分解挙動の確認:
ポリイソブチレン樹脂(PIB)(Tg:−64℃)に、PIBに対して30molの実施例1で得られた酸増殖剤、PIBに対して30molのp−トルエンスルホン酸を1.0gのアセトニトリルに溶解させて試料溶液とした。この試料溶液を1000rpmで30秒間シリコンウェハ上にスピンコートし、ホットプレート上にて80℃で30秒間プリベイクすることにより、試験膜を作製した。この試験膜を100℃で加熱し、FT−IRスペクトルの経時変化(1,3−ジオキソラン由来の変化)を確認した。なお、p−トルエンスルホン酸を添加しない場合も確認し、酸の存在の有無を比較した。加熱時間と1,3−ジオキソラン由来のピークとの関係を図2に示す。
【0112】
図2に示すように、酸(p−トルエンスルホン酸)を添加した系では、100℃での加熱とともに酸増殖剤の分解が進行して1,3−ジオキソラン由来のピークの変化が減少し、30分経過後ではほぼゼロとなった。このように、加熱により、酸の添加がトリガーとなって分解が進んで前記したスキームによる酸増殖反応が起こっていることが確認できた。
【0113】
[試験例5]
酸増殖剤の分解挙動の確認(1):
実施例1で得られた酸増殖剤2.0×−3mol/lのメタノール溶液に波長が254nmの光を照射し、紫外可視分光光度計(MultiSpec−1500/(株)島津製作所製)を用いてUVスペクトルの経時変化を確認した。結果を図3に示す。
【0114】
図3は、実施例1で得られた酸増殖剤のUVスペクトル変化を示した図である。図3に示すように、実施例1で得られた酸増殖剤は、254nmの光照射により光分解し、露光量に伴って吸収が変化して、光分解挙動が確認できた。また、分解物は長波長側(300nm)に吸収を有することが確認できた。
【0115】
[試験例6]
酸増殖剤の分解挙動の確認(2):
ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)(M:12000、Tg:99℃)0.1gに実施例1で得られた酸増殖剤0.0063g(PMMAに対して1.5mol%)、下記式(C)に示したクマリン0.0052g(PMMAに対して1.5mol%)を2.0gのクロロホルムに溶解させて試料溶液とした。この試料溶液を1000rpmで30秒間石英ガラス上にスピンコートし、ホットプレート上にて80℃で30秒間プリベイクすることにより、厚さ0.3μmの試験膜を作製した。この試験膜に254nmの単色光を照射し、紫外可視分光光度計(MultiSpec−1500/(株)島津製作所製)を用いてUVスペクトルの経時変化を確認した。
【0116】
【化27】
【0117】
図4は、実施例1で得られた酸増殖剤及びクマリンを含む試験膜のUVスペクトル変化を示した図である。図4に示すように、クマリン由来の457nmの吸収が減少し、酸性を示す533nmの吸収が露光量に応じて増加することが確認できた。この結果からも、光分解により酸が発生していることが確認できた。
【0118】
[実施例4]
酸反応性樹脂組成物の製造(1):
式(4−13)に示したエポキシ系化合物であるペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル(デナコールEX−411:ナガセケムテック(株)製)0.1gに対して、実施例1で得られた酸増殖剤を0.035g(EX−411の100質量部に対して35質量部)(EX−411のモノマーに対して30mol%)含有させることにより本発明の酸反応性樹脂組成物を得た。
【0119】
[比較例1]
樹脂組成物の製造(1):
式(4−13)に示したエポキシ系化合物であるペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル(デナコールEX−411:ナガセケムテック(株)製)0.1gに対して、製造例1で得られた光酸発生剤を0.021g(EX−411の100質量部に対して21質量部)(EX−411のモノマーに対して30mol%)含有させることにより樹脂組成物を得た。
【0120】
[試験例7]
カチオンUV硬化の確認(1):
実施例4で得られた酸反応性樹脂組成物(感光性樹脂組成物)を0.05gのアセトニトリル(CHCN)に溶解させて試料溶液とした。この試料溶液をガラス基板上にバーコートして製膜し、100℃で30秒間加熱してプリベイクし、厚さ5μmの塗膜を調製した。この塗膜に254nmの単色光を、露光量を0(ブランク)、100、250、500及び1000mJ/cmとして、100℃で0(ブランク)、5、10、20分間加熱後の塗膜の硬度をJIS K5600−5−4に準拠して鉛筆硬度測定を行い、比較・評価した。また、同様な操作を、比較例1で得られた樹脂組成物にも実施した。結果を図5及び図6に示す。
【0121】
図5は、比較例1の鉛筆硬度測定の結果を示した図である。図6は、実施例4の鉛筆硬度測定の結果を示した図である。図5に示すように、製造例1の光酸発生剤を添加した比較例1では、露光後、温度を100℃まで加熱しても硬度の上昇は見られず、500mJ/cmの露光と5分間の加熱では塗膜は硬化せず液状のままであった。また、露光量を1000mJ/cmとしても硬度は3B程度しか上昇しなかった。
【0122】
一方、図6に示すように、実施例1の酸増殖剤を添加した実施例4では、500mJ/cm照射後、5分間の加熱で硬度が3Hまで上昇した。このときの未露光部は液状のままであった。このことから、実施例4の系で高い硬度を示したのは、光照射により実施例1の酸増殖剤から発生した少量の超強酸(HBF)がトリガーとなり、その後の加熱により酸増殖剤の増殖反応が進行して多量の超強酸が発生し、これがエポキシ系化合物と反応したためと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明は、高感度の光硬化材料やレジスト材料(パターン形成材料)等を提供する材料として有利に使用することができ、産業上の利用可能性は高いものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6