【課題を解決するための手段】
【0007】
例示的な液晶素子(Liquid Crystal Device)は、配向性ポリマーネットワークと液晶化合物を有する液晶層を含む。一例として、前記液晶化合物は、前記配向性ポリマーネットワークと相分離した状態で前記液晶層内に分散され得る。本明細書において配向性ポリマーネットワークなる用語は、液晶化合物を配向することができるように形成されたポリマーネットワークを意味する。液晶化合物を配向することができるポリマーネットワークは、後述する方式で形成し得る。配向性ポリマーネットワーク内に分散して存在し得る液晶化合物は、前記配向性ポリマーネットワークなどの作用により一方向に整列された状態で存在し得る。また、このように一方向に整列された状態で存在する液晶化合物は、外部作用によりその整列方向が変換され得る。本明細書において外部作用なる用語は、液晶化合物の整列が変更できるように行うすべての種類の作用を意味し、代表例として電圧の印加がある。本明細書において初期配向または通常配向なる用語は、前記外部作用がない状態で前記液晶化合物の配向または整列方向や前記液晶化合物により形成される液晶層の光軸を意味する。また、本明細書において初期状態または通常状態なる用語は、前記外部作用がない前記液晶素子の状態を意味する。前記液晶素子において、液晶化合物は、前記初期配向状態の液晶化合物の整列方向が外部作用によって変換され得、外部作用がなくなると、再び初期配向状態に液晶化合物が復帰し得る。
【0008】
液晶素子は、配向膜をさらに含むことができる。配向膜は、例えば液晶層と隣接して配置され得る。配向膜が液晶層と隣接して配置されているということは、配向膜が液晶層の配向に影響を及ぼすことができる位置に配置されていることを意味し、一例として、配向膜と液晶層とが接して形成されることを意味してもよいが、配向膜が液晶層の配向に影響を及ぼすことができる位置に存在する限り、必ずしも両者が接して位置していなくてもよい。
図1は、例示的な素子の構造であって、配向膜101及び前記配向膜101の一面に形成された液晶層102を含み、前記液晶層102は、ポリマーネットワーク1021及び液晶領域1022を含む液晶素子の例である。
図1では、配向膜101が液晶層102の一面にだけ存在するが、配向膜は液晶層の両面に存在してもよい。本明細書において液晶領域は、ポリマーネットワーク内において液晶化合物が存在する領域を意味し、例えば、液晶化合物を含む領域として、前記ポリマーネットワークとは相分離した状態で前記ネットワーク内に分散している領域を意味し得る。
図1において液晶領域1022内の液晶化合物は矢印で表示されている。
【0009】
液晶素子は、前記液晶層の一側または両側に配置された偏光層を含むことができる。偏光層としては特に制限されず、従来のLCDなどに用いる通常の素材、例えば、PVA(poly(vinyl alcohol))偏光フィルムなどや、リオトロピック液晶(LLC:Lyotropic Liquid Cystal)や、反応性液晶(RM:Reactive Mesogen)と二色性色素(dichroic dye)を含む偏光コーティング層のようにコーティング方式で実現した偏光層が用いられる。本明細書において、上記のようにコーティング方式で実現した偏光層を偏光コーティング層と称する。偏光コーティング層がリオトロピック液晶を含む場合に前記コーティング層は、前記リオトロピック液晶の層を保護する保護層をさらに含むことができる。リオトロピック液晶としては特に制限されず、公知の液晶を用いることができ、例えば、二色比(dichroic ratio)が30〜40程度であるリオトロピック液晶層を形成し得るリオトロピック液晶が用いられる。一方、偏光コーティング層が反応性液晶(RM:Reactive Mesogen)と二色性色素(dichroic dye)を含む場合に前記二色性色素としては、線形色素を用いるか、あるいはディスコティック色素(discotic dye)が用いられてもよい。偏光層が存在する場合に光吸収軸の配置などは特に制限されず、例えば、液晶層の通常配向などと素子のモードなどを考慮して選択され得る。例えば、通常透過モード(normally transparent mode)の素子の実現のためには、液晶層の両側に2つの偏光層を配置し、前記各偏光層の光吸収軸が互いに80〜100度の範囲内のいずれか1つの角度、例えば互いに垂直をなすように配置され得る。また、例えば、通常遮断モード(normally black mode)の実現のためには、液晶層の両側に2つの偏光層を配置し、前記各偏光層の光吸収軸が互いに−10〜10度の範囲内のいずれか1つの角度、例えば互いに平行をなすように配置され得る。このような状態で液晶層の通常配向は、前記2つの偏光層の光吸収軸と40〜50度の範囲内のいずれか1つの角度、例えば約45度をなすように配置され得る。
【0010】
液晶素子は、1つまたは2つ以上の基材層を含むことができる。通常液晶層は対向配置された2つの基材層の間に配置され得る。このような構造において基材層の内側、例えば液晶層と基材層との間に前記配向膜が配置され得る。例えば、液晶素子は互いに対向した基材層をさらに含み、前記液晶層が前記対向されている基材層の間に存在し得る。場合によっては、配向層が前記液晶層と基材層との間に存在してもよい。
図2は、互いに所定間隔で離隔して対向配置された基材層201A、201Bの間に、配向膜101と液晶層102が存在する例示的な液晶素子を示す。基材層が存在する場合、上述の偏光層は通常基材層の外側に存在し得るが、必要に応じて偏光層は基材層の内側、すなわち液晶層と基材層との間に存在してもよい。このような場合に偏光層として、上述した偏光コーティング層の使用が有利となる。
【0011】
基材層としては特に制限されず、公知の素材が用いられる。例えば、ガラスフィルム、結晶性または非結晶性シリコンフィルム、石英またはITO(Indium Tin Oxide)フィルムなどの無機系フィルムやプラスチックフィルムなどが用いられる。基材層には、光学的に等方性の基材層や、位相差層のように光学的に異方性の基材層または偏光板やカラーフィルタ基板などが用いられる。例えば、偏光層が基材層の内側、すなわち液晶層と基材層との間に存在する場合には、基材層として異方性基材層が用いられた場合でも適切な性能の素子が実現され得る。
【0012】
プラスチック基材層としては、TAC(triacetyl cellulose)、ノルボルネン誘導体などのCOP(cyclo olefin copolymer)、PMMA(poly(methyl methacrylate)、PC(polycarbonate)、PE(polyethylene)、PP(polypropylene)、PVA(polyvinyl alcohol)、DAC(diacetyl cellulose)、Pac(Polyacrylate)、PES(poly ether sulfone)、PEEK(polyetheretherketon)、PPS(polyphenylsulfone)、PEI(polyetherimide)、PEN(polyethylenemaphthatlate)、PET(polyethyleneterephtalate)、PI(polyimide)、PSF(polysulfone)、PAR(polyarylate)または非晶質フッ素樹脂などを含む基材層が用いられるが、これに限定されない。基材層には、必要に応じて金、銀、二酸化ケイ素または一酸化ケイ素などのケイ素化合物のコーティング層や、反射防止層などのコーティング層が存在してもよい。
【0013】
基材層の表面、例えば、基材層の液晶層側の表面(例えば、
図2で配向膜101または液晶層102)と接する基材層(201Aまたは201B)の表面には、電極層が含まれ得る。電極層は、例えば、伝導性高分子、伝導性金属、伝導性ナノワイヤまたはITO(Indium Tin Oxide)などの金属酸化物などを蒸着して形成し得る。電極層は、透明性を有するように形成され得る。この分野では、透明電極層を形成し得る多様な素材及び形成方法が公知されていて、このような方法がすべて適用され得る。必要に応じて、基材層の表面に形成される電極層は、適切にパターン化されていてもよい。
【0014】
液晶層内で液晶化合物は通常状態、例えば電圧の印加のような外部作用がない状態で一方向に整列された状態で存在することができ、このような整列方向は外部作用、例えば外部電圧の印加により変化し得る。これにより、本発明では透過モード(white mode)と遮断モード(black mode)との間の相互転換の可能な素子が実現され得る。例えば、本発明の素子は、外部作用がない状態(すなわち、初期状態または通常状態)では透過モードが実現され、外部作用下で遮断モードに転換され、外部作用が除去されると、再び透過モードに転換される素子であるか(このような素子を便宜上通常透過モードの素子と称する。)、あるいは逆に外部作用がない状態(すなわち、初期状態または通常状態)では遮断モードが実現され、外部作用下で透過モードに転換され、外部作用が除去されると、再び遮断モードに転換される素子(このような素子を便宜上通常遮断モードの素子と称する。)とすることができる。例えば、上述のように、光吸収軸が互いに80〜100度内のいずれか1つの角度、例えば垂直をなすように配置された2枚の偏光層の間に通常配向が前記偏光層の光吸収軸と40〜50度内のいずれか1つの角度、例えば、45度をなすように液晶層が位置する場合に通常透過モード(normally transparent mode)の素子が実現され得る。他の例として、上述のように、光吸収軸が互いに−10〜10度内のいずれか1つの角度、例えば平行をなすように配置された2枚の偏光層の間に通常配向が前記偏光層の光吸収軸と40〜50度内のいずれか1つの角度、例えば、45度をなすように液晶層が位置する場合に通常遮断モード(normally black mode)の素子が実現され得る。上記の状態で電圧の印加により液晶化合物の配向状態を、例えば垂直配向状態に変更して遮断モードを実現し得る。本明細書において遮断モード(black mode)なる用語は、通常的なPDLCにおける、いわゆる散乱モードとは区別される概念として、例えば、遮断モードにおけるヘイズは10%以下、8%以下、6%以下または5%以下である。また、本発明の素子の透過モードにおけるヘイズも10%以下、8%以下、6%以下または5%以下である。前記ヘイズは測定対象を透過する全体透過光の透過率に対する拡散光の透過率の百分率とすることができる。前記ヘイズは、ヘイズメーター(hazemeter、NDH−5000SP)を用いて評価し得る。ヘイズは前記ヘイズメーターを用いて次の方式で評価し得る。すなわち、光を、測定対象を透過させて積分球内に入射させる。この過程において光は測定対象によって拡散光(DT)と平行光(PT)に分離されるが、これらの光は積分球内で反射されて受光素子に集光し、集光された光を介して前記ヘイズの測定が可能である。すなわち、前記過程による全透過光(TT)は前記拡散光(DT)と平行光(PT)の合計(DT+PT)であり、ヘイズは前記全体透過光に対する拡散光の百分率(Haze(%)=100×DT/TT)で規定され得る。また、本発明の液晶素子は、透過モードで優れた透明性を示す。例えば、液晶素子は、通常透過モードの場合には通常配向状態、すなわち電圧無印加状態のように外部作用がない状態で、80%以上、85%以上、90%以上または95%以上の光透過率を示すことができる。また、通常遮断モードの場合には、電圧印加のような外部作用が存在する状態で上述の光透過率を示すことができる。前記光透過率は、可視光領域、例えば、約400〜700nm範囲内のいずれか1つの波長に対する光透過率とすることができる。
【0015】
液晶素子は高いコントラスト比を示すことができる。本明細書においてコントラスト比なる用語は、前記透過モードにおける輝度(T)と遮断モードにおける輝度(B)との割合(T/B)を意味する。一例として、液晶素子は、前記液晶層と液晶層の両側に配置された2つの偏光層、すなわち第1及び第2偏光層を含み、前記コントラスト比の最大値が200以上、250以上、300以上または350以上とすることができる。コントラスト比が高いほど素子の性能が優れていることを意味するため、前記コントラスト比の上限は特に制限されない。例えば、コントラスト比を、600以下、550以下、500以下、450以下または400以下とすることができる。このようなコントラスト比は、上述の配向性ポリマーネットワークと偏光層などを用いて素子を実現することで、達成することができる。
【0016】
液晶素子は低いエネルギー消費により、例えば、低い駆動電圧で駆動することが可能である。例えば、液晶素子は10%の光透過率または90%の光透過率を実現するための要求電圧が30V以下、25V以下または20V以下とすることができる。すなわち、通常透過モード(normally transparent mode)の素子の場合、電圧の印加により液晶化合物の整列方向を変化させて遮断モードを実現することができるが、このような過程で光透過率が10%になるようにするために要求される電圧を前記範囲内とすることができる。逆に、通常遮断モード(normally black mode)の素子の場合、電圧の印加により液晶化合物の整列方向を変化させて透過モードを実現することができるが、このような過程で光透過率が90%になるようにするために要求される電圧を前記範囲内とすることができる。前記要求電圧は、低いほど素子の性能が優れていることを意味するため、前記要求電圧の下限は特に制限されない。例えば、前記要求電圧は5V以上とすることができる。このような低い駆動電圧は、上述の配向性ポリマーネットワークと偏光層などを用いて素子を実現することで、達成することができる。
【0017】
液晶素子の液晶層は、ポリマーネットワークと該ポリマーネットワーク内部に分散した液晶化合物を含み、優れた熱安定性を示すことができる。例えば、液晶層は、70℃で200時間保持する熱処理前後に、下記数式Aを満足し得る。
【0018】
[数式A]
|100×(X
2−X
1)/X
1|≦10%
【0019】
数式Aにおいて、X
1は前記熱処理前の液晶層の位相差であり、X
2は前記熱処理後の液晶層の位相差である。
【0020】
すなわち、液晶素子の液晶層は、前記熱処理前後の位相差の変化率の絶対値が10%以下とすることができる。このような変化率の絶対値は、その数値が低いほど液晶層が優れた熱安定性を有することを示すものであって、その下限は特に制限されない。
【0021】
ポリマーネットワークは、例えば、重合性化合物を含む前駆物質のネットワークとすることができる。よって、ポリマーネットワークは重合状態の前記重合性化合物を含むことができる。重合性化合物としては、液晶性を示さない非液晶性化合物が用いられる。必要に応じて重合性化合物として液晶性化合物が用いられるが、その場合に後述するポリマーネットワークの複屈折が考慮され得る。
【0022】
ポリマーネットワークが配向性を示すためにポリマーネットワークを形成する前記重合性化合物の組成が調節され得る。例えば、ポリマーネットワークまたは前記前駆物質は、二官能性アクリレート化合物、三官能以上の多官能性アクリレート化合物及び単官能性アクリレート化合物のうちの少なくとも1つを含むことができる。ポリマーネットワークは、前記化合物を架橋または重合された状態で含むことができる。本明細書においてアクリレート化合物なる用語は、アクリロイルまたはメタクリロイルを含む化合物を意味し、前記官能基を1つ含む化合物は単官能性アクリレート化合物であり、2つ以上含む化合物は多官能性アクリレート化合物である。説明の便宜上、以下で前記官能基を2つ含む化合物は、二官能性アクリレート化合物と称し、三官能以上、すなわち前記官能基を3つ以上含むアクリレート化合物は、単純に多官能性アクリレート化合物と称する。多官能性アクリレート化合物は、前記官能基を、例えば、3〜8個、3〜7個、3〜6個、3〜5個または3〜4個含むことができる。
【0023】
適切な配向性ポリマーネットワークの実現のために前記ポリマーネットワークまたはその前駆物質は、前記二官能性、多官能性及び単官能性アクリレート化合物のうちの少なくとも1つの化合物を下記数式1〜3を満たすように含むことができる。
【0024】
[数式1]
A≧1.3×B
【0025】
[数式2]
A≧C
【0026】
[数式3]
A≧0.6×(B+C)
【0027】
数式1〜3において、A、B及びCは、それぞれ前駆物質またはポリマーネットワーク内に存在する前記二官能性アクリレート、多官能性アクリレート化合物及び単官能性アクリレート化合物の重量合計を100と換算した場合に得られる各化合物間の重量比である。例えば、前駆物質またはポリマーネットワーク内に二官能性アクリレート化合物だけが存在すれば、数式1〜3において、Aは100であり、B及びCはそれぞれ0である。他の例として、前駆物質またはポリマーネットワーク内に二官能性及び単官能性アクリレート化合物だけが存在すれば、数式1〜3において、A及びCはそれぞれ50であり、Bは0である。
【0028】
適切な配向性の確保のために、例えば、数式1において、Aから1.3×Bを差引いた値(A−1.3B)は約0.5〜100または約1〜100とすることができる。また、適切な配向性の確保のために、例えば、数式2において、AからCを差引いた値(A−C)は0〜100とすることができる。また、適切な配向性の確保のために数式3で、Aから0.6×(B+C)を差引いた値(A−0.6(B+C))は2〜100、3〜100または4〜100とすることができる。
【0029】
適切な配向性の確保のために前記ポリマーネットワークまたはその前駆物質は、前記二官能性、多官能性及び単官能性アクリレート化合物のうちの少なくとも1つの化合物を下記数式4〜6を満たすように含むことができる。
【0030】
[数式4]
A≧40
【0031】
[数式5]
B≦30
【0032】
[数式6]
C≦50
【0033】
数式4〜6において、A、B及びCは、それぞれ数式1〜3で定義したものと同じである。
【0034】
上記のような範囲内でポリマーネットワークに適切な配向性が確保され得る。
【0035】
ポリマーネットワークまたはその前駆物質に含まれるアクリレート化合物の種類は特に制限されず、例えば、上記記載した数式を満たす範囲で配向性が示されるものであれば、いかなる種類でも使用され得る。
【0036】
例えば、前記二官能性アクリレート化合物としては、下記化学式1で表される化合物が用いられる。
【0037】
[化学式1]
【0038】
化学式1において、Rはそれぞれ独立的に水素または炭素数1〜4のアルキル基であり、Xは炭素数1〜20のアルキレン基またはアルキリデン基である。
【0039】
また、例えば、前記多官能性アクリレート化合物としては、下記化学式2で表される化合物が用いられる。
【0040】
[化学式2]
【0041】
化学式2において、nは3以上の数であり、mは0〜5の数であり、Rはそれぞれ独立的に水素または炭素数1〜4のアルキル基であり、Xは、(m+n)価のラジカルであり、Yは水素またはアルキル基である。
【0042】
また、例えば、前記単官能性アクリレート化合物としては、下記化学式3で表される化合物が用いられる。
【0043】
[化学式3]
【0044】
化学式3において、Rは水素または炭素数1〜4のアルキル基であり、Xは炭素数1〜20のアルキル基である。
【0045】
化学式1〜3において、RまたはYに存在し得るアルキル基の例としては、メチル基またはエチル基が挙げられる。
【0046】
化学式1において、Xのアルキレン基またはアルキリデン基は、例えば炭素数1〜16、炭素数1〜12、炭素数1〜10、炭素数1〜8、炭素数2〜8または炭素数4〜8のアルキレン基またはアルキリデン基とすることができる。前記アルキレン基またはアルキリデン基は、例えば、直鎖、分枝鎖または環状とすることができる。
【0047】
化学式2において、nは、3以上、3〜8、3〜7、3〜6、3〜5または3〜4の範囲内のいずれか1つの数とすることができる。また、化学式2において、mは0〜5、0〜4、0〜3、0〜2または0〜1の範囲内のいずれか1つの数とすることができる。
【0048】
化学式2において、Xは、(m+n)価のラジカルであり、例えば炭素数2〜20、炭素数2〜16、炭素数2〜12、炭素数2〜8または炭素数2〜6のハイドロカーボン、例えば、直鎖または分枝鎖のアルカンから誘導された(m+n)価のラジカルとすることができる。
【0049】
一方、化学式3において、Xのアルキル基は、例えば炭素数1〜20、炭素数1〜16、炭素数1〜12、炭素数4〜12、炭素数6〜12の直鎖または分枝鎖アルキル基とすることができる。
【0050】
化学式1〜3に定義された置換基、例えば、アルキル基、アルキレン基、アルキリデン基または(m+n)価のラジカルなどは、必要に応じて1つ以上の置換基により置換され得、このときの置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、エポキシ基、ヨード基、オキセタニル基、チオール基、シアノ基、カルボキシ基またはアリール基などが例示されるが、これに限定されない。
【0051】
ポリマーネットワークまたはその前駆物質は、上述の化合物にさらに必要に応じて溶媒、前記重合性液晶化合物の重合を誘導し得るラジカルまたは陽イオン開始剤、塩基性物質、ネットワークを形成し得る、その他の反応性化合物または界面活性剤などの添加剤をさらに含むことができる。
【0052】
ポリマーネットワークまたはその前駆物質は、液晶性化合物、例えば反応性液晶化合物を含むことができる。このような場合でも前記液晶性化合物の割合は少量に調節することが好ましい。一例として、前記ポリマーネットワークは、複屈折が30nm以下または20nm以下とすることができる。すなわち、前記ポリマーネットワークは等方性ポリマーネットワークであるか、複屈折が前記範囲内にあるネットワークとすることができる。よって、液晶性化合物が含まれる場合でもポリマーネットワークが上述した複屈折を示す範囲に含まれるのが好ましい。前記複屈折は、例えば、下記数式7で計算される面上位相差または下記数式8で計算される厚さ方向の位相差を意味し、その下限を0nmとすることができる。
【0053】
[数式7]
Rin=d×(nx−ny)
【0054】
[数式8]
Rth=d×(nz−ny)
【0055】
数式7及び8において、Rinは面上位相差であり、Rthは厚さ方向位相差であり、dはポリマーネットワークの厚さであり、nxはポリマーネットワークの面上から遅相軸方向の屈折率であり、nyはポリマーネットワークの面上から遅相軸方向の屈折率であり、nzはポリマーネットワークの厚さ方向の屈折率である。
【0056】
ポリマーネットワークは、液晶領域の液晶化合物と共に下記数式Bを満足し得る。
【0057】
[数式B]
(1−a)×{(2n
o2+n
e2)/3}
0.5≦n
p≦(1+a)×n
e
【0058】
数式Bにおいて、aは0〜0.5の範囲内のいずれか1つの数であり、n
oは液晶化合物の正常屈折率(ordinary refractive index)であり、n
eは液晶化合物の異常屈折率(extraordinary refractive index)であり、n
pはポリマーネットワークの屈折率である。
【0059】
本明細書において、屈折率、位相差または複屈折なる用語は特に規定しない限り、550nmの波長の光に対して測定した屈折率、位相差または複屈折とすることができる。また、ポリマーネットワークの正常屈折率と異常屈折率とが異なる場合には、ポリマーネットワークの屈折率なる用語は前記ネットワークの正常屈折率を意味する。ポリマーネットワークと液晶化合物を、前記数式Bを満たすように選択することで、透過モードで優れた透明性を示すと共に高いコントラスト比が確保される素子を提供し得る。
【0060】
数式Bにおいて、aは、例えば、0.4未満、0.3未満、0.2未満または0.1未満であるか、0とすることができる。
【0061】
ポリマーネットワークは、3以上、3.5以上または4以上の誘電率(dielectric anisotropy)を有し得る。このような誘電率の範囲で液晶素子の駆動電圧特性を良好に維持し得る。前記誘電率の上限は特に制限されず、例えば、20以下、15以下または10以下程度とすることができる。
【0062】
ポリマーネットワークに分散している液晶領域は液晶化合物を含む。液晶化合物としては、ポリマーネットワーク内に相分離され、ポリマーネットワークにより配向された状態で存在し得るものであれば、すべての種類の化合物を使用することができる。例えば液晶化合物としては、スメクチック(smectic)液晶化合物、ネマチック(nematic)液晶化合物またはコレステリック(cholesteric)液晶化合物などが用いられる。液晶化合物は相分離されてポリマーネットワークとは結合せず、外部から電圧のような外部作用下で配向が変更される形態とすることができる。このために、例えば、液晶化合物は、重合性基または架橋性基を有しない化合物とすることができる。
【0063】
一例として、液晶化合物としてはネマチック液晶化合物が用いられる。前記化合物としては、例えば下記数式Cを満たす液晶化合物として、例えばネマチック液晶化合物が用いられる。
【0064】
[数式C]
(n
e+n
o)/2−b≦{(2n
o2+n
e2)/3}
0.5≦(n
e+n
o)/2+b
【0065】
数式Cにおいて、n
eは液晶化合物の異常屈折率であり、n
oは液晶化合物の正常屈折率であり、bは0.1〜1の範囲内のいずれか1つの数である。
【0066】
数式Cを満たす液晶化合物を選択して、透過モードで優れた透明性を示すと共に高いコントラスト比が確保される素子を提供し得る。
【0067】
数式Cにおいて、bは他の例として、0.1〜0.9、0.1〜0.7、0.1〜0.5または0.1〜0.3とすることができる。
【0068】
液晶化合物は、異常誘電率(ε
e、extraordinary dielectric anisotropy、長軸方向の誘電率)と正常誘電率(ε
o、ordinary dielectric anisotropy、短軸方向の誘電率)との差が4以上、6以上、8以上または10以上とすることができる。このような誘電率を有すると駆動電圧特性が優れた素子を提供し得る。前記誘電率の差は、その数値が高いほど素子が適切な特性を示すことができるもので、その上限は特に制限されない。例えば液晶化合物としては、異常誘電率(ε
e、extraordinary dielectric anisotropy、長軸方向の誘電率)が6〜50程度であり、正常誘電率(ε
o、ordinary dielectric anisotropy、短軸方向の誘電率)が2.5〜7程度である化合物が用いられる。
【0069】
液晶層または後述する重合性組成物は、ポリマーネットワーク(または後述するポリマーネットワーク前駆物質)5〜50重量部及び液晶化合物50〜95重量部を含むことができる。他の例として、液晶層または後述する重合性組成物は、ポリマーネットワーク(または後述するポリマーネットワーク前駆物質)5〜45重量部及び液晶化合物55〜95重量部、ポリマーネットワーク(または後述するポリマーネットワーク前駆物質)5〜40重量部及び液晶化合物60〜95重量部、ポリマーネットワーク(または後述するポリマーネットワーク前駆物質)5〜35重量部及び液晶化合物65〜95重量部、ポリマーネットワーク(または後述するポリマーネットワーク前駆物質)5〜30重量部及び液晶化合物70〜95重量部、ポリマーネットワーク(または後述するポリマーネットワーク前駆物質)5〜25重量部及び液晶化合物75〜95重量部、ポリマーネットワーク(または後述するポリマーネットワーク前駆物質)20〜50重量部及び液晶化合物80〜95重量部またはポリマーネットワーク(または後述するポリマーネットワーク前駆物質)5〜15重量部及び液晶化合物85〜95重量部を含むことができる。本明細書において重量部なる用語は、各成分間の重量比を意味する。このような重量比の範囲内でポリマーネットワークの配向性を適切に維持し得る。
【0070】
液晶層の位相差(R
c)は、実現しようとする素子のモードまたは構造により決定されるものであって特に制限されない。例えば、液晶層は550nm波長に対して約240〜310nm、245〜305nm、250〜300nmの位相差を示すことができる。このような範囲の位相差は、例えば、2つの偏光層間で通常透過モードの素子を実現するのに適切である。
【0071】
液晶層は、例えば、下記数式Dを満足し得る。
【0072】
[数式D]
247nm≦{d×(n
e−n
o)}×A≦302nm
【0073】
数式Dにおいて、dは液晶層の厚さ(単位:nm)であり、n
eは液晶化合物の異常屈折率であり、n
oは液晶化合物の正常屈折率であり、Aはポリマーネットワークと液晶化合物の合計重量(T)を基準とした液晶化合物の重量(L)の割合(L/T)または液晶層の全体積(TV)に液晶化合物が占める体積(VL)の割合(VL/TV)である。
【0074】
数式Dにおいて、{d×(n
e−n
o)}×Aで計算される値は液晶層の理論位相差である。液晶層の理論位相差は、上述の液晶層の位相差(実測位相差)と近接するほど適切である。例えば、数式Dにおいて、{d×(n
e−n
o)}×Aで計算される値と液晶層の実測位相差との差の絶対値は、約15nm以下、10nm以下、8nm以下または5nm以下とすることができる。数式Dを満たす液晶層は、例えば、2つの偏光層間で通常透過モードの素子を実現するのに適切である。
【0075】
数式Dにおいて、(n
e−n
o)は、例えば、0.05〜0.20とすることができる。前記(n
e−n
o)は他の例として、0.07以下とすることができる。さらに他の例として、前記(n
e−n
o)は、0.18以下または0.15以下とすることができる。
【0076】
数式Dにおいて、Aはポリマーネットワークと液晶化合物の合計重量(T)に基づいて液晶化合物の重量(L)の割合(L/T)または液晶層の全体積(TV)に液晶化合物が占める体積(VL)の割合(VL/TV)であり、例えば、0.5〜0.98の範囲内とすることができる。前記の割合(L/TまたはVL/TV)は他の例として、0.6以上または0.7以下とすることができる。
【0077】
液晶層の厚さは、上記の内容を満たすように設定される限り、特に制限されず、例えば、1〜10μm程度の範囲内とすることができる。
【0078】
液晶素子が配向膜を含む場合に配向膜としては、例えば光配向性化合物を含む配向膜が用いられる。本明細書において光配向性化合物なる用語は、光の照射などを介して所定方向に整列(orientation allyordered)され、前記整列された状態で異方性相互作用(anisotropic interaction)などの相互作用を介して隣接する液晶化合物を所定方向に配向させることができる化合物を意味する。配向膜において光配向性化合物は、方向性を有するように整列された状態で存在し得る。光配向性化合物は、単分子化合物、単量体化合物、オリゴマー性化合物または高分子性化合物とすることができる。
【0079】
光配向性化合物は、光感応性残基(photosensitive moiety)を含む化合物とすることができる。液晶化合物の配向に使用し得る光配向性化合物は多様に公知されている。光配向性化合物としては、例えば、トランス−シス光異性化(trans−cis photoisomerization)により整列される化合物や、鎖切断(chain scission)または光酸化(photo−oxidation)などのような光分解(photo−destruction)により整列される化合物や、[2+2]付加環化([2+2]cycloaddition)、[4+4]付加環化または光二量化(photodimerization)などのような光架橋または光重合により整列される化合物や、光フリース転移(photo−Fries rearrangement)により整列される化合物または開環/閉環(ring opening/closure)反応により整列される化合物などが用いられる。トランス−シス光異性化により整列される化合物としては、例えば、スルホン化ジアゾ染料(sulfonated diazo dye)またはアゾ高分子(azo polymer)などのアゾ化合物やスチルベン化合物(stilbenes)などが例示され、光分解により整列される化合物としては、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(cyclobutane−1、2、3、4−tetracarboxylic dianhydride)、芳香族ポリシランまたはポリエステル、ポリスチレンまたはポリイミドなどが例示される。また、光架橋または光重合により整列される化合物としては、シンナメート(cinnamate)化合物、クマリン(coumarin)化合物、シンナムアミド(cinnamamide)化合物、テトラヒドロフタルイミド(tetrahydrophthalimide)化合物、マレイミド(maleimide)化合物、ベンゾフェノン化合物またはジフェニルアセチレン(diphenylacetylene)化合物や光感応性残基としてカルコニル(chalconyl)残基を有する化合物(以下、カルコン化合物)またはアントラセン(anthracenyl)残基を有する化合物(以下、アントラセン化合物)などが例示され、光フリース転移により整列される化合物としては、ベンゾエート(benzoate)化合物、ベンゾアミド(benzoamide)化合物、メタアクリルアミドアリール(メタ)アクリレート(methacrylamidoaryl methacrylate)化合物などの芳香族化合物が例示され、開環/閉環反応により整列する化合物としては、スピロピラン化合物などのように[4+2]π−電子システム([4+2]π−electronic system)の開環/閉環反応により整列する化合物などが例示されるが、これに限定されない。
【0080】
光配向性化合物は、単分子化合物、単量体化合物、オリゴマー性化合物または高分子性化合物や、前記光配向性化合物と高分子のブレンド(blend)形態とすることができる。上記において、オリゴマー性または高分子性化合物は、上述の光配向性化合物から誘導された残基または上述の光感応性残基を主鎖内または側鎖に有し得る。
【0081】
光配向性化合物から誘導された残基または光感応性残基を有するか、または前記光配向性化合物と混合し得る高分子としては、ポリノルボルネン、ポリオレフイン、ポリアリレート、ポリアクリレート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリイミド、ポリアミド酸(poly(amic acid))、ポリマレイミド、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリスチレン、ポリシロキサン、ポリアクリロニトリルまたはポリメタクリロニトリルなどが例示されるが、これに限定されない。
【0082】
配向性化合物に含まれる高分子としては、代表として、ポリノルボルネンシンナメート、ポリノルボルネンアルコキシシンナメート、ポリノルボルネンアリロイルオキシシンナメート、ポリノルボルネンフッ素化シンナメート、ポリノルボルネン塩素化シンナメートまたはポリノルボルネンジシンナメイトなどが例示されるが、これに限定されない。
【0083】
配向性化合物が高分子性化合物の場合に前記化合物は、例えば、約10,000〜500,000g/mol程度の数平均分子量を有し得るが、これに限定されない。
【0084】
配向膜は、例えば、前記光配向性化合物に光開始剤など、必要な添加剤を配合してコーティングした後に所望する方向の偏光紫外線などを照射して形成し得る。
【0085】
本発明はさらに重合性組成物に関する。重合性組成物は、例えば、上述の液晶素子の液晶層の形成に使用し得る。すなわち、前記重合性組成物は前記液晶層の前駆組成物とすることができる。
【0086】
例えば重合性組成物は、二官能性アクリレート化合物、三官能以上の多官能性アクリレート化合物及び単官能性アクリレート化合物のうちの少なくとも1つを前記数式1〜3、必要に応じて前記数式1〜6を満たすように含む配向性ポリマーネットワークの前駆物質及び液晶化合物を含むことができる。
【0087】
また、例えば重合性組成物は、二官能性アクリレート化合物、三官能以上の多官能性アクリレート化合物及び単官能性アクリレート化合物のうちの少なくとも1つを含む配向性ポリマーネットワークの前駆物質50〜95重量部及び液晶化合物5〜50重量部を含むことができる。
【0088】
例示的な重合性組成物は、配向性ポリマーネットワークの前駆物質と液晶化合物とを含むことができる。前記前駆物質は、配向性ポリマーネットワーク、例えば、上述の配向性ポリマーネットワークを形成するように組成され得る。前駆物質は重合性化合物、例えば、前記二官能性、多官能性及び/または単官能性アクリレート化合物を含むことができる。前駆物質は前記アクリレート化合物を上述の数式1〜6などを満たす割合で含むことができ、その他アクリレート化合物の種類や誘電率、数式Bと係る事項も同様に適用し得る。前駆物質に含まれる液晶化合物の種類も特に制限されず、例えば、前記数式Cなどに対する事項を含み、上記の内容が適用され得る。また、前駆物質と液晶化合物の割合に対する事項も前記内容が適用され得る。
【0089】
重合性組成物は必要に応じて、形成された液晶層の間隔の適切な維持などのために、ボール(ball)形態のスペーサを適正な割合で含むことができる。スペーサの形態、大きさなどは特に制限されず、目的とする液晶層の間隔を確保し得るように選択し得る。スペーサの割合は特に制限されず、例えば、全体重合性組成物内に約0.1〜5重量%に含まれる。
【0090】
重合性組成物は前記前駆物質と液晶化合物に、さらにその他の必要な添加剤(例えば、開始剤など)を適切な溶媒に溶解させて製造し得る。溶媒としては、トルエン、キシレン、シクロペンタノンまたはシクロヘキサノンなどの公知の溶媒の使用が可能である。
【0091】
一例として、前記重合性組成物は無溶剤タイプで組成され得る。無溶剤タイプで組成された重合性組成物は後述するスクィーズコーティング(squeeze coating)方式での適用に有利となる。無溶剤タイプで重合性組成物を製造する方式は特に制限されず、上述の組成物の成分中の溶媒を使用せず、他の成分の粘度や割合などを調節して製造し得る。
【0092】
本発明は、さらに液晶素子の製造方法に関する。前記製造方法は重合性組成物を含む層、例えば重合性組成物をコーティングして形成した層を重合させてポリマーネットワーク内に分散した液晶化合物を含む液晶層を形成することを含むことができる。上記において、重合性組成物としては、例えば、上述の液晶層の前駆組成物が用いられる。上記において、重合は、重合を誘導し得る適切なエネルギー、例えば光を照射して行うことができる。
【0093】
重合性組成物を含む層を形成する方法は特に制限されず、例えば、ロールコーティング、印刷法、インクジェットコーティング、スリットノズル法、バーコーティング、コンマコーティング、スピンコーティングまたはグラビアコーティングなどのような公知のコーティング方式によるコーティングにより形成し得る。一例として、重合性組成物を含む層はスクィーズコーティング(squeeze coating)方式で形成し得る。スクィーズコーティング方式の適用のために、重合性組成物として上述の無溶剤型の組成物が用いられる。スクィーズコーティング方式の適用を介してより均一な液晶層の形成が可能であり、液晶層と基材層との合着に別途の接着層などを適用せず、上記を直接合着することができ、このような点が駆動電圧側面において有利となる。
【0094】
スクィーズコーティング方式で重合性組成物を含む層は、例えば2つの基材層、例えば上述の基材層の間に重合性組成物を位置させ、前記基材層のうちの少なくとも1つに圧力を印加して形成し得る。このとき圧力を印加する方式は特に制限されず、例えば加圧ローラなどが用いられ得る。加圧は基材層の全面に同時または順次に行うことができる。
図3は、前記スクィーズコーティング方式を例示的に示す図である。
図3のように、まず、基材層201Aの所定部位に重合性組成物301、例えば上述の無溶剤型組成物を位置させ、その上部にさらに基材層201Bを位置させる。続いて、基材層のうちの少なくとも1つに加圧ローラ302を位置させて順次に基材層を加圧し得る。図示しないが、
図3において、基材層201A、201Bの内側、例えば最終的に液晶層と接するようになる側には、上述の電極層及び/または配向膜が位置し得る。スクィーズコーティング方式において重合は前記加圧過程で同時に行うか、加圧終了後に行うことができる。
【0095】
適切な配向性ポリマーネットワークの形成のために、前記重合は配向膜上で行うことができる。例えば、配向膜上に前記重合性組成物を含む層を形成するか、あるいは2つの対向配置された配向膜との間に前記層を形成した後にエネルギーを印加して重合することで、液晶層を形成し得る。
【0096】
配向膜は、例えば光配向性化合物、例えば上述の光配向性化合物を含むことができる。このような配向膜は、配向膜前駆体を適切な基板、例えば前記基材層にコーティングし、露光して光配向性化合物を整列させて形成し得る。
図4は、基材層201Aに形成された配向膜の前駆体に光を照射して配向膜101を形成する過程を模式的に示す。
【0097】
配向膜の前駆体は、例えば、前記光配向性化合物にさらに開始剤を適正量含むことができ、必要に応じて界面活性剤などの他の添加剤も含むことができる。配向膜の前駆体の層は、例えば、前記前駆体をバーコーティング、コンマコーティング、インクジェットコーティングまたはスピンコーティングなどの通常のコーティング方式でコーティングして形成し得る。前駆体の層が形成される基材層の表面には、例えば上述の透明電極層が形成され得る。
【0098】
前駆体の層を形成した後、前記層に光の照射などの方式でエネルギーを印加し得る。光の照射は、例えば前駆体が溶媒などを含む場合には、形成された層を適切な条件で乾燥して溶媒を揮発させた後に行うことができる。このような乾燥は、例えば、約60〜130℃の温度で約1〜5分間行うことができるが、これに限定されない。
【0099】
光の照射は、前駆体の層に含まれる配向性化合物が整列されるように行うことができる。通常、配向性化合物の整列は直線偏光された光を用いて行うことができる。照射される光の波長や強さは配向性化合物の適切な整列が提供されるように選択し得る。典型的に光配向性化合物は、可視光や近紫外線(near ultraviolet)範囲の光により整列するが、必要に応じて遠紫外線(far ultraviolet)や近赤外線(near Infrared)範囲の光が用いられる。
【0100】
配向膜の形成後に前記配向膜に隣接して、例えば、上述のスクィーズコーティングの方式で重合性組成物を含む層を形成し得る。
図5は、
図4で形成された配向膜101の表面に存在する重合性組成物を含む層に光を照射して液晶層102を形成する過程を模式的に示す。
図5では1つの配向膜上に液晶層が形成される場合を示すが、必要に応じて前記液晶層は上述のように、2つの配向膜の間に形成することができる。
【0101】
前記過程を介してポリマーネットワーク前駆物質の重合と液晶化合物の相分離が発生してポリマーネットワーク及び液晶領域が形成され得る。
【0102】
適切な配向性ネットワークの形成のために重合は液晶層前駆体の層、すなわち上述の重合性組成物を含む層を液晶相、例えば、ネマチック相(nematic phase)に維持した状態で行うことができる。前記層がネマチック相でない状態、例えば、等方相(isotropic phase)に層が形成されると、適切な配向性が確保されない場合も有り得る。ネマチック相の維持のために前記重合は液晶層前駆体の層、すなわち前記重合性組成物を含む層のネマチック温度(Tni)未満の温度で行うことができる。本明細書においてネマチック温度なる用語は、前記層がネマチック状態から等方性状態に転移される温度を意味し、この温度の範囲は前記層の組成により決定される。前記重合が前記層のネマチック温度未満、すなわち前記層がネマチック相の状態で行われる限りその温度は特に制限されない。
【0103】
重合のためのエネルギーの印加、例えば光照射の条件は、重合性化合物が重合されてポリマーネットワークが形成され、液晶化合物が相分離されて液晶領域が形成されるように行われる限り、特に制限されない。必要に応じてポリマーネットワークの形成などをより促進させるために前記光の照射工程の前または後、または同時に適切な熱の印加または露光工程を行うことができる。
【0104】
前記過程を介して液晶層を形成した後に、必要に応じて形成された液晶層に一側または両側に偏光層を配置する工程などがさらに実施され得る。例えば、液晶層の形成後に前記液晶層の両側に光吸収軸が互いに80〜100度の範囲内のいずれか1つの角度をなすように、例えば垂直をなすように偏光層を配置するか、あるいは光吸収軸が互いに−10〜10度の範囲内のいずれか1つの角度をなすように、例えば、平行をなすように偏光層を配置する工程などがさらに実施され得る。
【0105】
本発明はさらに液晶素子、例えば、上述の液晶素子を製造するための製造装置に関する。
【0106】
前記製造装置は、例えば液晶層の前駆体、例えば上述の重合性組成物の重合を誘導し得るエネルギーが提供されるように設けられた重合誘導手段を含むことができる。上記において、液晶層の前駆体に含まれるポリマーネットワーク前駆物質と液晶化合物に対する詳細な事項については既に記述した内容が同じく適用され得る。
【0107】
重合誘導手段の種類も特に制限されず、前駆体にエネルギー、例えば熱または光を印加または照射できるようにする加熱または光の照射手段が用いられる。
【0108】
前記製造装置は、さらに前記液晶層前駆体層が維持できるように設けられた載置手段を含むことができる。このような載置手段により前駆体の層を維持した状態で重合させて前記液晶層を形成することが可能である。
【0109】
載置手段の種類は液晶層前駆体の載置が可能なものであれば特に制限されない。例えば、載置手段は少なくとも液晶層前駆体の重合過程において前記前駆体の層の表面を曲面に維持するように設けられ得る。このような載置手段の例としてはロール(roll)が挙げられる。
【0110】
すなわち、一例として、前記製造装置は、いわゆるロールツーロール製造装置であって、前記液晶層の前駆体の層を移動させられるように形成された1つ以上のガイドロールを含む製造装置であり、前記ガイドロールにより前記層が移動されながら連続的に液晶素子を製造し得る。また、ガイドロール上に前記層の表面が曲面に維持された状態で前記重合が進行され得、このような場合に前記ガイドロールが前記載置手段として作用され得る。このようにガイドロールなどにより液晶層の表面を曲面に維持した状態で重合を行うと、より均一な液晶層を形成することが可能である。ロールツーロール装置の場合、例えば、前記層または該層が形成される基材層を送り出しながら重合誘導手段側に導入することができる巻出ロールや、重合などの製造工程が終了した液晶素子を巻いて回収し得る巻取ロールをさらに含むことができる。
【0111】
前記製造装置は、前記重合過程、すなわち少なくとも前記重合性化合物が重合される間、前記重合性化合物が既述のネマチック相のような液晶相を維持する温度を維持することができるように設けられた温度調節手段を含むことができる。
【0112】
温度調節手段は、適切な温度を維持することができるように形成される限り、特に制限されず、例えば、温度調節ドラム及び/または不活性ガスファジングチャンバなどを用いて構成し得る。
【0113】
例えば、前記製造装置が上述のロールツーロール装置であれば、前記載置手段としても作用し得るガイドロールに温度調節ドラム、例えば冷却ドラムを含んで前記重合過程で温度を適正範囲に維持できるようにすることができる。必要に応じて、このようなガイドロールに載置した状態で重合が行われる領域などを不活性ファジングチャンバ内に含まれるように構成し、前記ファジングチャンバ内に重合誘導手段などを含んで装置を構成し得る。
【0114】
図6は、上記のように実現した製造装置の所定部位を示す例示図であって、冷却ドラムのような温度調節手段を含むガイドロール(A)と、該ガイドロール(A)を介して移動する液晶層の前駆体の層(C)が導入できるように設けられた不活性ガスファジングチャンバ(B)と、を含む場合を例示的に示す。
図6には、ガイドロール(A)が温度調節手段を含み、チャンバ(B)も形成されている場合を示しているが、適切な温度が維持されれば、前記2つのうちいずれか1つは省略することができる。このような構成でガイドロール(A)により移動する前記前駆体の層にエネルギーが印加されるように設けられた重合誘導手段、例えば、
図6に示すような紫外線ランプ(UV lamp)をさらに含むことができ、上記は、例えば前記チャンバ(B)の内部に存在してもよい。
【0115】
製造装置において上述の構成以外の他の手段の具体的な種類は特に制限されない。例えば、当該分野においてはロールツーロール装置を実現する多様な方式が知られていて、このような方式は必要に応じて適切に変形されて前記装置に適用し得る。
【0116】
例えば、前記ロールツーロール装置は、巻出ロールなどのような通常的な入力手段により入力された基材層(例えば、
図2及び
図3の基材層201A)を1つ以上のガイドロールにより移動させながら、電極層の形成、配向膜の形成、重合性組成物を含む層の形成(例えば、前記スクィーズコーティング方式で重合性組成物の層を形成し得る。)及び前記層の重合過程を順次行い、必要に応じて偏光層の合着あるいは形成工程を経て最終的に製造された製品が巻取ロールのような回収手段により回収されるように構成され得る。
【0117】
本発明は、さらに前記液晶素子の用途に関する。例示的な液晶素子は、例えば、ロールツーロール工程などを介して簡単に、且つ連続的に製造し得る。液晶素子は、さらにフレキシブル素子として実現することができ、優れたコントラスト比を確保し得る。
【0118】
例えば、本発明は前記液晶素子を含む光変調装置に関する。光変調装置としては、スマートウィンドウ、ウィンドウ保護膜、フレキシブルディスプレイ素子、3D映像表示用アクティブリターダ(active retarder)または視野角調節フィルムなどが例示されるが、これに限定されない。上記のような光変調装置を構成する方式は特に制限されず、前記液晶素子が用いられる限り通常的な方式が適用され得る。