特許第6048932号(P6048932)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6048932酸化ケイ素と窒化ケイ素とを識別するポリペプチドおよびその利用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048932
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】酸化ケイ素と窒化ケイ素とを識別するポリペプチドおよびその利用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20161212BHJP
   C07K 1/22 20060101ALI20161212BHJP
   C07K 14/245 20060101ALN20161212BHJP
   C07K 14/32 20060101ALN20161212BHJP
   G01N 33/53 20060101ALN20161212BHJP
   G01N 33/552 20060101ALN20161212BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   C07K1/22
   !C07K14/245
   !C07K14/32
   !G01N33/53 S
   !G01N33/552
【請求項の数】5
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2012-550864(P2012-550864)
(86)(22)【出願日】2011年12月20日
(86)【国際出願番号】JP2011079501
(87)【国際公開番号】WO2012090789
(87)【国際公開日】20120705
【審査請求日】2014年10月9日
(31)【優先権主張番号】特願2010-292975(P2010-292975)
(32)【優先日】2010年12月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】池田 丈
(72)【発明者】
【氏名】本村 圭
(72)【発明者】
【氏名】黒田 章夫
【審査官】 濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−516805(JP,A)
【文献】 特表2004−503212(JP,A)
【文献】 特表2003−518386(JP,A)
【文献】 特開2010−37222(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/012366(WO,A2)
【文献】 国際公開第2008/070179(WO,A2)
【文献】 国際公開第2007/055288(WO,A1)
【文献】 PNAS, Vol. 102, No. 22, p. 7817-7822
【文献】 "stationary phase nucleoid protein Dps [Escherichia coli APEC O1].",NCBI Protein Database[online];Accession:ABJ00192,<http://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/115512117>, 02-JAN-2009 uploaded, [retrieved on 2012-01-16]
【文献】 "stage V sporulation protein T [Bacillus thuringiensis BMB171].",NCBI Protein Database[online];Accession:ADH04867,<http://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/296321939>, 15-JUL-2010 uploaded, [retrieved on 2012-01-16]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
C07K 1/00
C07K 14/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
SwissProt/GeneSeq
WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドのいずれか一方を含有しており、
第1ポリペプチドが、
(A)配列番号1、3、5または7に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(B)(A)に記載のポリペプチドにおいて1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加しており、かつ、酸化ケイ素に特異的に結合しかつ窒化ケイ素に結合しない、ポリペプチド;あるいは
(C)(A)に記載のポリペプチドと95%以上の同一性を有し、かつ、酸化ケイ素に特異的に結合しかつ窒化ケイ素に結合しない、ポリペプチド
であり、
第2ポリペプチドが、
(D)配列番号9、11、13、15,17または19に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(E)(D)に記載のポリペプチドにおいて1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加しており、かつ、窒化ケイ素に特異的に結合しかつ酸化ケイ素に結合しない、ポリペプチド;あるいは
(F)(D)に記載のポリペプチドと95%以上の同一性を有し、かつ、窒化ケイ素に特異的に結合しかつ酸化ケイ素に結合しない、ポリペプチド
である、酸化ケイ素と窒化ケイ素とを識別するための組成物。
【請求項2】
第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドの少なくとも一方を備えており、
第1ポリペプチドが、
(A)配列番号1、3、5または7に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(B)(A)に記載のポリペプチドにおいて1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加しており、かつ、酸化ケイ素に特異的に結合しかつ窒化ケイ素に結合しない、ポリペプチド;あるいは
(C)(A)に記載のポリペプチドと95%以上の同一性を有し、かつ、酸化ケイ素に特異的に結合しかつ窒化ケイ素に結合しない、ポリペプチド
であり、
第2ポリペプチドが、
(D)配列番号9、11、13、15,17または19に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(E)(D)に記載のポリペプチドにおいて1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加しており、かつ、窒化ケイ素に特異的に結合しかつ酸化ケイ素に結合しない、ポリペプチド;あるいは
(F)(D)に記載のポリペプチドと95%以上の同一性を有し、かつ、窒化ケイ素に特異的に結合しかつ酸化ケイ素に結合しない、ポリペプチド
である、酸化ケイ素と窒化ケイ素とを識別するためのキット。
【請求項3】
酸化ケイ素と窒化ケイ素とを識別するための組成物を製造するためのキットであって、
第1ポリペプチドをコードする第1ポリヌクレオチド;および
第2ポリペプチドをコードする第2ポリヌクレオチド
の少なくとも一方、あるいは
第1ポリヌクレオチドを含む第1ベクター;および
第2ポリヌクレオチドを含む第2ベクター
の少なくとも一方を備えており、
第1ポリペプチドが、
(A)配列番号1、3、5または7に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(B)(A)に記載のポリペプチドにおいて1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加しており、かつ、酸化ケイ素に特異的に結合しかつ窒化ケイ素に結合しない、ポリペプチド;あるいは
(C)(A)に記載のポリペプチドと95%以上の同一性を有し、かつ、酸化ケイ素に特異的に結合しかつ窒化ケイ素に結合しない、ポリペプチド
であり、
第2ポリペプチドが、
(D)配列番号9、11、13、15,17または19に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(E)(D)に記載のポリペプチドにおいて1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加しており、かつ、窒化ケイ素に特異的に結合しかつ酸化ケイ素に結合しない、ポリペプチド;あるいは
(F)(D)に記載のポリペプチドと95%以上の同一性を有し、かつ、窒化ケイ素に特異的に結合しかつ酸化ケイ素に結合しない、ポリペプチド
である、キット。
【請求項4】
酸化ケイ素および窒化ケイ素の少なくとも一方が所望の形状にて形成されている表面を有し、
該酸化ケイ素には、第1ポリペプチドが結合しており、
該窒化ケイ素には、第2ポリペプチドが結合しており、
第1ポリペプチドが、
(A)配列番号1、3、5または7に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(B)(A)に記載のポリペプチドにおいて1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加しており、かつ、酸化ケイ素に特異的に結合しかつ窒化ケイ素に結合しない、ポリペプチド;あるいは
(C)(A)に記載のポリペプチドと95%以上の同一性を有し、かつ、酸化ケイ素に特異的に結合しかつ窒化ケイ素に結合しない、ポリペプチド
であり、
第2ポリペプチドが、
(D)配列番号9、11、13、15,17または19に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(E)(D)に記載のポリペプチドにおいて1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加しており、かつ、窒化ケイ素に特異的に結合しかつ酸化ケイ素に結合しない、ポリペプチド;あるいは
(F)(D)に記載のポリペプチドと95%以上の同一性を有し、かつ、窒化ケイ素に特異的に結合しかつ酸化ケイ素に結合しない、ポリペプチド
である、基板。
【請求項5】
請求項4に記載の基板を具備している、半導体デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケイ素化合物を識別するポリペプチドおよびその利用に関するものであり、より詳細には、酸化ケイ素と窒化ケイ素とを識別するポリペプチドおよびその利用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ナノテクノロジーとバイオテクノロジーが融合した領域にナノバイオテクノロジーという新しい領域が誕生し、急速に発展しつつある。ナノバイオテクノロジーは、例えば、バイオエレクトロニクス素子やバイオセンサの作製、DNAやタンパク質をターゲットにしたバイオチップの開発などに利用されるものであり、ナノバイオテクノロジーに対する期待はきわめて大きい。
【0003】
上述のように、ナノバイオテクノロジーでは、バイオエレクトロニクス素子やバイオセンサの技術はきわめて重要であり、DNAチップやプロテインチップが注目されている。これらのチップでは、例えばDNAやタンパク質などの1分子を対象にセンシングを行うことになるため分子のサイズを考えたセンサの作製と制御が不可欠である。そこで、半導体加工技術を利用したバイオセンサの開発が手がけられている。
【0004】
具体的には、例えば、シリコンナノワイヤ上に検出対象ウイルスに対する抗体を固定化し、ウイルスが1個でも抗体と結合すれば、電気的に検出することが可能となるような、バイオセンサの開発も進んでいる。
【0005】
このように、半導体加工技術を利用したバイオセンサの開発をさらに加速させるためには、シリコンやガラスなどの基板(支持体)上に所望のタンパク質を簡便かつ正確に配置し、固定化させる技術の開発が不可欠であると考えられている。
【0006】
9個のアルギニン残基(ポリアルギニンタグ)を付加したタンパク質が、酵素活性を保ったままガラス表面上やシリカ樹脂に直接吸着できることが報告されている(非特許文献1参照)。非特許文献1に記載のポリアルギニンタグを付加してタンパク質をシリカに吸着させる技術は、長時間のインキュベーションによってタンパク質がシリカ表面から離れてしまい、吸着力に問題がある。
【0007】
バイオセンサは、高感度で迅速かつ安価に多項目にわたる検出が可能であることから、脚光を浴びている。その一つとして、抗体や酵素などの生体分子と半導体デバイスとを融合させたナノデバイスが提案されている。半導体デバイスと生体分子を融合したナノデバイス開発においては、デバイス上の目的の位置にタンパク質を精密に配置する技術が必要となる。
【0008】
半導体の主流であるシリコンデバイスの主要な表面材料(絶縁膜)として、酸化膜(酸化ケイ素/SiO)および窒化膜(窒化ケイ素/Si)が汎用されている。酸化ケイ素と窒化ケイ素とを識別し得る技術が存在すれば、酸化ケイ素および窒化ケイ素の両方を絶縁膜としてデバイス上にて所望の形状にパターニングしておくことによって、デバイス上の目的の位置にタンパク質をパターニングすることができると考えられる。
【0009】
本発明者らは、酸化ケイ素含有物質に対して高い吸着力で特異的な結合能を有するタンパク質を利用して、ガラス表面を何ら修飾することなく、ガラス基板上に直接タンパク質を固定化する技術を開発している(特許文献1参照)。本技術は、プロテインチップの作製などに非常に利用価値が高い。また、酸化ケイ素に結合し得るタンパク質が報告されている(非特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】PCT国際公開WO2007/055288パンフレット(2007年5月18日国際公開)
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Fuchs, S.M. and Raines, R.T. Protein. Sci. 14, 1538-1544 (2005)
【非特許文献2】Willett et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102, 7817-7822 (2005)
【非特許文献3】Taniguchi et al. Biotechnol. Bioeng. 96, 1023-1029 (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、タンパク質の構成要素であるアミノ酸は、酸化ケイ素および窒化ケイ素に対して同様の結合性を示すことが知られている(例えば、非特許文献2参照)。また、特許文献1および非特許文献3に開示されているタンパク質もまた、酸化ケイ素および窒化ケイ素の両方に対して結合性を示し、酸化ケイ素と窒化ケイ素とを識別することができない。
【0013】
このように、酸化ケイ素と窒化ケイ素とを識別し得るタンパク質は見出されていないばかりか、そのようなタンパク質の存在は示唆もされていない。もちろん、これまでの技術常識に基づけば、そのようなタンパク質を探索すること自体が全く動機付けられていない。
【0014】
本発明の目的は、酸化ケイ素と窒化ケイ素とを識別する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、独自の観点に基づいて、酸化ケイ素と窒化ケイ素とを識別し得るタンパク質の探索を行い、独自の創意工夫および試行錯誤の結果、所望のタンパク質を見出し、本発明を完成するに至った。上述したように、従来の知られていた知見からは、酸化ケイ素と窒化ケイ素とを識別し得るタンパク質の存在すら示唆されていない。もちろん、本発明を完成するに至る手順は、当該分野における技術常識でも技術水準でもない。
【0016】
本発明の組成物は、酸化ケイ素と窒化ケイ素とを識別するために、第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドのいずれか一方を含有していることを特徴としている。本発明において、第1ポリペプチドは、酸化ケイ素に特異的に結合しかつ窒化ケイ素に結合しないポリペプチドであり、以下の(A)〜(C)のいずれかであることが好ましく、第2ポリペプチドは、窒化ケイ素に特異的に結合しかつ酸化ケイ素に結合しないポリペプチドであり、以下の(D)〜(F)のいずれかであることが好ましい:
(A)配列番号1、3、5または7に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(B)(A)に記載のポリペプチドにおいて1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加しており、かつ、酸化ケイ素に特異的に結合しかつ窒化ケイ素に結合しない、ポリペプチド;
(C)(A)に記載のポリペプチドと80%以上の同一性を有するポリペプチド;
(D)配列番号9、11、13、15,17または19に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(E)(D)に記載のポリペプチドにおいて1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加しており、かつ、窒化ケイ素に特異的に結合しかつ酸化ケイ素に結合しない、ポリペプチド;
(F)(D)に記載のポリペプチドと80%以上の同一性を有するポリペプチド。
【0017】
本発明の第1のキットは、酸化ケイ素と窒化ケイ素とを識別するために、第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドの少なくとも一方を備えていることを特徴としており、酸化ケイ素と窒化ケイ素とを識別するための、上記ポリペプチドの使用手順が記載された指示書をさらに備えていることが好ましい。
【0018】
本発明の第2のキットは、上記組成物または第1のキットを製造するために、第1ポリペプチドをコードする第1ポリヌクレオチド、および第2ポリペプチドをコードする第2ポリヌクレオチドの少なくとも一方を備えていることを特徴としており、上記組成物または第1のキットを製造するための、上記ポリペプチドの使用手順が記載された指示書をさらに備えていることが好ましい。あるいは、本発明の第2のキットは、上記組成物または第1のキットを製造するために、第1ポリヌクレオチドを含む第1ベクターおよび第2ポリヌクレオチドを含む第2ベクターの少なくとも一方を備えていることを特徴としてとしており、上記組成物または第1のキットを製造するための、上記ポリペプチドの使用手順が記載された指示書をさらに備えていることが好ましい。
【0019】
本発明の方法は、酸化ケイ素と窒化ケイ素とを識別するために、上述した、酸化ケイ素と窒化ケイ素とを識別する能力を有しているポリペプチド、組成物またはキットを用いることを特徴としている。
【0020】
本発明の基板は、酸化ケイ素および窒化ケイ素の少なくとも一方が所望の形状にて形成されている表面を有し、該酸化ケイ素には、酸化ケイ素に特異的に結合しかつ窒化ケイ素に結合しない第1ポリペプチドが結合しており、該窒化ケイ素には、窒化ケイ素に特異的に結合しかつ酸化ケイ素に結合しない第2ポリペプチドが結合していることを特徴としている。
【0021】
本発明の半導体デバイスは、上記基板を具備していることを特徴としている。
【0022】
本発明の第1ポリペプチドの取得方法は、添加された窒化ケイ素とともにタンパク質溶液をインキュベートする工程、インキュベート後の該溶液から窒化ケイ素を除去する工程、窒化ケイ素を除去したタンパク質溶液を酸化ケイ素とともにインキュベートする工程、回収した酸化ケイ素を洗浄する工程、洗浄後の酸化ケイ素から結合タンパク質を単離する工程を包含することを特徴としており、必要に応じて、窒化ケイ素の添加、および窒化ケイ素とのタンパク質溶液のインキュベートが複数回行われてもよい。
【0023】
本発明の第2ポリペプチドの取得方法は、添加された酸化ケイ素とともにタンパク質溶液をインキュベートする工程、インキュベート後の該溶液から酸化ケイ素を除去する工程、酸化ケイ素を除去したタンパク質溶液を窒化ケイ素とともにインキュベートする工程、回収した窒化ケイ素を洗浄する工程、洗浄後の窒化ケイ素から結合タンパク質を単離する工程を包含することを特徴としており、必要に応じて、酸化ケイ素の添加、および酸化ケイ素とのタンパク質溶液のインキュベートが複数回行われてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、酸化ケイ素と窒化ケイ素との識別を可能にするので、半導体の絶縁膜に、窒化ケイ素および酸化ケイ素を形成(パターニング)しておくことによって、絶縁膜上に所望のタンパク質をパターニングすることができ、その結果、基板上に目的のタンパク質を配列させることができ、さらに目的のタンパク質を配列した基板を具備する、高感度なセンシングを実現し得る半導体デバイス(バイオチップ、バイオセンサなど)を作製することができる。また、パターニングされたタンパク質に細胞を特異的に吸着させることによって細胞のパターニングが実現し、目的に応じた細胞培養が容易に可能となり、例えば、神経細胞を人為的にパターニングして生体伝達回路を形成することができる。さらに、本発明に用いられるポリペプチドを接着分子として用いることによって半導体表面材料に応じた位置特異的タンパク質固定化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】酸化ケイ素または窒化ケイ素特異的に結合するタンパク質を示す図である。
図2】酸化ケイ素または窒化ケイ素特異的に結合するタンパク質を示す図である。
図3】酸化ケイ素または窒化ケイ素特異的に結合するタンパク質を示す図である。
図4】酸化ケイ素または窒化ケイ素特異的に結合するタンパク質の、種々の条件下における結合状態を示す図である。
図5】酸化ケイ素または窒化ケイ素特異的に結合するタンパク質を示す図である。
図6】リコンビナントタンパク質の、酸化ケイ素に対する結合特異性および結合親和性を示す図である。
図7】リコンビナントタンパク質の、窒化ケイ素に対する結合特異性および結合親和性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
〔1:ポリペプチドおよびポリヌクレオチド〕
本発明は、酸化ケイ素と窒化ケイ素とを識別する能力を有しているポリペプチドを提供する。本明細書中において使用される場合、第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドは、酸化ケイ素と窒化ケイ素とを識別する能力を有しているポリペプチドである。第1ポリペプチドは、酸化ケイ素に特異的に結合しかつ窒化ケイ素に結合しないポリペプチドが意図され、第2ポリペプチドは、窒化ケイ素に特異的に結合しかつ酸化ケイ素に結合しないポリペプチドが意図される。
【0027】
第1ポリペプチドは、好ましくは、配列番号1、3、5または7に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドであり得るが、酸化ケイ素に特異的に結合しかつ窒化ケイ素に結合しないポリペプチドである限り、配列番号1、3、5または7に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドにおいて1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加したポリペプチドであっても、配列番号1、3、5または7に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドと80%以上の同一性を有するポリペプチドであってもよい。
【0028】
第2ポリペプチドは、好ましくは、配列番号9、11、13、15,17または19に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドであり得るが、窒化ケイ素に特異的に結合しかつ酸化ケイ素に結合しないポリペプチドである限り、配列番号9、11、13、15,17または19に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドにおいて1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加したポリペプチドであっても、配列番号9、11、13、15,17または19に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドと80%以上の同一性を有するポリペプチドであってもよい。
【0029】
ポリペプチド(アミノ酸)の観点で用いられる場合、「1または数個」は、当業者が、過度の実験を行うことなく、部位特異的突然変異誘発法等の公知の変異ペプチド作製法によって欠失、置換もしくは付加し得る程度の数が意図され、1〜30個の範囲内であることが好ましく、20個以下であることがより好ましく、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個であることがさらに好ましく、1、2、3、4または5個であることがなおさらに好ましい。なお、当業者は、目的のポリペプチドの長さに応じて、用語「1または数個」によって示されるアミノ酸数の範囲がどの程度であるのかを容易に理解し得るとともに、過度の実験を行うことなく、「1または数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたポリペプチド」を作製し得る。また、このようなポリペプチドは、人為的に導入された変異を有するポリペプチドに限定されず、天然に存在するポリペプチドを単離精製したものであってもよい。
【0030】
本明細書中で使用される場合、目的のポリペプチドについての同一性は、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、95%以上であることがなおさらに好ましく、99%以上であることが最も好ましい。
【0031】
本発明のポリペプチドは、付加的なペプチドを含んでいてもよい。付加的なペプチドとしては、例えば、ポリヒスチジンタグ(His−tag)、Myc、Flag等のエピトープが挙げられる。
【0032】
本明細書中において使用される場合、第1ポリヌクレオチドは第1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが意図され、第2ポリヌクレオチドは第2ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが意図される。
【0033】
第1ポリヌクレオチドは、好ましくは、配列番号2、4、6または8に示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドであり得るが、酸化ケイ素に特異的に結合しかつ窒化ケイ素に結合しないポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである限り、配列番号2、4、6または8に示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドにおいて1または数個のヌクレオチドが欠失、置換または付加したポリヌクレオチドであっても、
配列番号2、4、6または8に示されるヌクレオチド配列の相補配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドであっても、配列番号2、4、6または8に示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドと80%以上の同一性を有するポリヌクレオチドであってもよい。
【0034】
第2ポリヌクレオチドは、好ましくは、配列番号10、12、14、16、18または20に示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドであり得るが、窒化ケイ素に特異的に結合しかつ酸化ケイ素に結合しないポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである限り、配列番号10、12、14、16、18または20に示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドにおいて1または数個のヌクレオチドが欠失、置換または付加したポリヌクレオチドであっても、配列番号10、12、14、16、18または20に示されるヌクレオチド配列の相補配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドであっても、配列番号10、12、14、16、18または20に示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドと80%以上の同一性を有するポリヌクレオチドであってもよい。
【0035】
ポリヌクレオチド(塩基)の観点で用いられる場合、「1または数個」は、1〜100個の範囲内であることが好ましく、1〜50個の範囲内であることがより好ましく、1〜30個の範囲内であることがさらに好ましく、1〜15個の範囲内であることがなおさらに好ましい。なお、当業者は、目的のポリヌクレオチドの長さに応じて、用語「1または数個」によって示される塩基数の範囲がどの程度であるのかを容易に理解し得る。
【0036】
本明細書中で使用される場合、目的のポリヌクレオチドについての同一性は、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、95%以上であることがなおさらに好ましく、99%以上であることが最も好ましい。
【0037】
本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドを用いることによって、目的のタンパク質を本発明のポリペプチドを介して支持体上に固定化することができるので、基板上に目的のタンパク質を配列させることができ、さらに目的のタンパク質を配列した基板を具備する半導体デバイスを作製することができる。本明細書中において使用される場合、「目的のタンパク質」は、バイオセンサ等の半導体デバイスに用いられる基板上に配列されるべきタンパク質が意図され、精製されたタンパク質(例えば、抗体など)であっても、未精製のタンパク質を細胞外へ提示/露出している細胞であってもよい。すなわち、本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドを用いることによって、細胞を本発明のポリペプチドを介して支持体上に固定化することができるので、基板上に目的の細胞を配列させることができ、さらに目的の細胞を配列した基板を具備する半導体デバイスを作製することができる。このように、本明細書中において使用される場合、用語「目的のタンパク質」には、「タンパク質(ポリペプチド)」だけでなく「細胞」もまた含まれる。
【0038】
第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドは、公知の遺伝子工学的手法によって組換え発現ベクターを構築し、好適な宿主細胞にこのベクターを導入して組換えタンパク質として発現させることによって生産し得る。特に、上述した付加的なペプチドは、組換え的なポリペプチド生成によって容易に付加され得る。
【0039】
組換え発現ベクターの作製方法としては、プラスミド、ファージ、またはコスミドなどを用いる方法が挙げられるが特に限定されない。
【0040】
ベクターの具体的な種類は特に限定されず、宿主細胞中で発現可能なベクターが適宜選択され得る。すなわち、宿主細胞の種類に応じて、確実に本発明に係るポリヌクレオチドを発現させるために適宜プロモーター配列を選択し、これと本発明に係るポリヌクレオチドを各種プラスミド等に組み込んだベクターを発現ベクターとして用いればよい。
【0041】
本発明に係る発現ベクターは、導入されるべき宿主の種類に依存して適宜選択される慣用的なプロモーターを含んでいる。また、発現ベクターは、少なくとも1つの選択マーカーを含むことが好ましく、用いられる系に応じて、当業者によって適宜選択される。発現ベクターの作製および宿主の形質転換もまた、慣用的な手法に従って行うことができる。さらに、形質転換された宿主から、慣用的な手法に従って、目的タンパク質を回収/精製することができる。
【0042】
上記発現ベクターを宿主細胞に導入する方法、すなわち形質転換法も特に限定されるものではなく、電気穿孔法、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法等の従来公知の方法を好適に用いることができる。
【0043】
本発明のポリペプチドは、酸化ケイ素と窒化ケイ素との識別を可能にする。酸化ケイ素および窒化ケイ素はいずれも半導体表面材料として汎用されている素材であり、半導体加工技術による微細加工が容易である。本発明を用いることによって、半導体デバイス、ナノテクノロジー、MEMS技術などにタンパク質を容易に組み合わせることができる。また、表面上に酸化ケイ素および/または窒化ケイ素のパターニングを施しておくことによって、標的位置にのみタンパク質を固定化することができる。これにより、例えば、バイオセンサの高感度化、センサ上での細胞固定、複数種のタンパク質をナノスケールにて整列させることが可能となる。
【0044】
〔2:組成物、キットおよび方法〕
本発明は、酸化ケイ素と窒化ケイ素とを識別するための組成物およびキットを提供する。本発明の組成物は、酸化ケイ素と窒化ケイ素とを識別する能力を有しているポリペプチドを含有していることを特徴としている。また、本発明のキットは、酸化ケイ素と窒化ケイ素とを識別する能力を有しているポリペプチドを備えていることを特徴としている。
【0045】
本発明の組成物およびキットを用いることによって、酸化ケイ素と窒化ケイ素とを識別することができるので、基板の表面上にてタンパク質を所望の形状に配列することができる。すなわち、本発明の組成物およびキットは、位置特異的にタンパク質を固定化する用途に利用可能である。また、本発明の組成物およびキットを用いることによって、所望の形状に配列したタンパク質を表面上に有する基板を作製することができる。
【0046】
本明細書中において使用される場合、用語「キット」は、特定の材料を、容器(例えば、ボトル、プレート、チューブ、ディッシュなど)に内包された態様にて備えた包装が意図されるが、組成物としての一物質中に材料を含有している形態もまた、用語「キット」に包含される。キットは、各材料を使用するための指示書を備えていることが好ましく、指示書には、本発明の目的を達成するための手順(例えば、酸化ケイ素と窒化ケイ素とを識別するための、上記材料の使用手順)が記載されていることが好ましい。本明細書中においてキットの局面において使用される場合、「備えた(備えている)」は、キットを構成する個々の容器のいずれかの中に内包されている状態が意図される。本発明のキットはまた、希釈剤、溶媒、洗浄液またはその他の試薬を内包した容器を備え得る。
【0047】
本発明の組成物は、酸化ケイ素と窒化ケイ素とを識別するために、第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドのいずれか一方を含有していることを特徴としている。また、本発明の組成物は、第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドの両方を含有してもよいが、この場合、本発明の組成物は、天然に存在する細胞およびその抽出液ではなく、第1ポリペプチドを含有しかつ第2ポリペプチドを含有しない組成物と、第2ポリペプチドを含有しかつ第1ポリペプチドを含有しない組成物との混合物であることが好ましく、第1ポリペプチドおよび第2ポリペプチドの少なくとも一方を備えているキット(第1のキット)として提供されてもよい。
【0048】
本発明のキット(第2のキット)は、上記組成物または第1のキットを製造するために提供され得、第1ポリペプチドをコードする第1ポリヌクレオチド、および第2ポリペプチドをコードする第2ポリヌクレオチドの少なくとも一方を備えていることを特徴としている。あるいは、本発明の第2のキットは、上記組成物または第1のキットを製造するために、第1ポリヌクレオチドを含む第1ベクターおよび第2ポリヌクレオチドを含む第2ベクターの少なくとも一方を備えていることを特徴としている。本発明の第2のキットは、各材料を使用するための指示書を備えていることが好ましく、指示書には、本発明の目的を達成するための手順(例えば、上記組成物または第1のキットを製造するための、上記材料の使用手順)が記載されていることが好ましい。酸化ケイ素と窒化ケイ素とを識別するための、第1ポリペプチドの使用手順は、(i)第1ポリペプチドを識別されるべき基材とインキュベートすること、(ii)インキュベート後の基材を回収し、その表面を洗浄すること、(iii)第1ポリペプチドに特異的に結合する因子(例えば抗体)を洗浄後の基材とインキュベートすること、(iv)インキュベート後の基材を回収し、基材の表面を洗浄すること、(v)基材の表面上に上記因子が存在するか否かを確認すること、を含めばよいが、これらに限定されない。例えば、識別可能な標識化合物(例えば、蛍光物質、放射性物質など)を第1ポリペプチドに予め結合させておけば、上記(iii)を省略することができ、上記(v)において、上記因子の代わりに上記標識化合物が存在するか否かを確認すればよい。また、酸化ケイ素と窒化ケイ素とを識別するための、第2ポリペプチドの使用手順は、(vi)第2ポリペプチドを識別されるべき基材とインキュベートすること、(vii)インキュベート後の基材を回収し、その表面を洗浄すること、(viii)第2ポリペプチドに特異的に結合する因子(例えば抗体)を洗浄後の基材とインキュベートすること、(ix)インキュベート後の基材を回収し、基材の表面を洗浄すること、(x)基材の表面上に上記因子が存在するか否かを確認すること、を含めばよいが、これらに限定されない。例えば、識別可能な標識化合物(例えば、蛍光物質、放射性物質など)を第2ポリペプチドに予め結合させておけば、上記(viii)を省略することができ、上記(x)において、上記因子の代わりに上記標識化合物が存在するか否かを確認すればよい。このような手順を実行する方法、すなわち、酸化ケイ素と窒化ケイ素とを識別する方法もまた、本発明の範疇であることを、当業者は容易に認識する。
【0049】
本発明の組成物が溶液形態で提供される場合、本明細書中において、必要に応じて、第1のポリペプチドを含有する溶液を第1溶液、第2のポリペプチドを含有する溶液を第2溶液ともいう。また、後述するように、本発明の組成物およびキット(第1および第2のキット)は、基板を製造するために用いられてもよく、この場合、製造された基板を用いて、酸化ケイ素と窒化ケイ素とを識別することができるとともに、基板の表面上にて目的のタンパク質を所望の形状に配列することができる。
【0050】
上述したように、本発明はまた、酸化ケイ素と窒化ケイ素とを識別する方法を提供する。本発明の方法は、酸化ケイ素と窒化ケイ素とを識別する能力を有しているポリペプチド、組成物またはキットを用いることを特徴としている。本発明の方法を実行するために第1ポリペプチドを用いる場合、本発明の方法は、(I)第1ポリペプチドを識別されるべき基材とインキュベートする工程、(II)インキュベート後の基材を回収し、その表面を洗浄する工程、(III)第1ポリペプチドに特異的に結合する因子(例えば抗体)を洗浄後の基材とインキュベートする工程、(IV)インキュベート後の基材を回収し、基材の表面を洗浄する工程、(V)基材の表面上に上記因子が存在するか否かを確認する工程、を包含すればよいが、本発明を構成する工程はこれらに限定されない。例えば、識別可能な標識化合物(例えば、蛍光物質、放射性物質など)を第1ポリペプチドに予め結合させておけば、上記(III)を省略することができ、上記(V)において、上記因子の代わりに上記標識化合物が存在するか否かを確認すればよい。もちろん、本発明の方法は、第1ポリペプチドと上記標識化合物とを結合させる工程(すなわち、第1ポリペプチドを標識する工程)をさらに包含してもよい。また、本発明の方法を実行するために第2ポリペプチドを用いる場合、本発明の方法は、(VI)第2ポリペプチドを識別されるべき基材とインキュベートする工程、(VII)インキュベート後の基材を回収し、その表面を洗浄する工程、(VIII)第2ポリペプチドに特異的に結合する因子(例えば抗体)を洗浄後の基材とインキュベートする工程、(IX)インキュベート後の基材を回収し、基材の表面を洗浄する工程、(X)基材の表面上に上記因子が存在するか否かを確認する工程、を含めばよいが、本発明を構成する工程はこれらに限定されない。例えば、識別可能な標識化合物(例えば、蛍光物質、放射性物質など)を第2ポリペプチドに予め結合させておけば、上記(VIII)を省略することができ、上記(X)において、上記因子の代わりに上記標識化合物が存在するか否かを確認すればよい。もちろん、本発明の方法は、第2ポリペプチドと上記標識化合物とを結合させる工程(すなわち、第2ポリペプチドを標識する工程)をさらに包含してもよい。
【0051】
〔3:基板および半導体デバイス〕
本発明は、目的のタンパク質を所望の形状に配列するための基板を提供する。本発明の基板を用いれば、バイオセンサ等の半導体デバイスを製造することができる。
【0052】
一実施形態において、本発明の第1の基板は、酸化ケイ素が所望の形状にて形成されている表面を有しており、該表面に形成された酸化ケイ素に、酸化ケイ素に特異的に結合しかつ窒化ケイ素に結合しない第1ポリペプチドが結合していることを特徴としている。本実施形態を用いれば、第1ポリペプチドを介して、基板の表面上にて目的のタンパク質を所望の形状に配列することができる。本実施形態の第1の基板は、上記表面に、窒化ケイ素が所望の形状にてさらに形成されていてもよく、この場合、該表面に形成された窒化ケイ素に、窒化ケイ素に特異的に結合しかつ酸化ケイ素に結合しない第2ポリペプチドが結合していることが好ましい。この場合、本実施形態を用いれば、第2ポリペプチドを介して、基板の表面上にてさらなる目的のタンパク質を所望の形状に配列することができる。
【0053】
他の実施形態において、本発明の第2の基板は、窒化ケイ素が所望の形状にて形成されている表面を有しており、該表面に形成された窒化ケイ素に、窒化ケイ素に特異的に結合しかつ酸化ケイ素に結合しない第2ポリペプチドが結合していることを特徴としている。本実施形態を用いれば、第2ポリペプチドを介して、基板の表面上にて目的のタンパク質を所望の形状に配列することができる。本実施形態の第2の基板は、上記表面に、酸化ケイ素が所望の形状にて形成されていてもよく、この場合、該表面に形成された酸化ケイ素に、酸化ケイ素に特異的に結合しかつ窒化ケイ素に結合しない第1ポリペプチドが結合していることが好ましい。この場合、本実施形態を用いれば、第1ポリペプチドを介して、基板の表面上にてさらなる目的のタンパク質を所望の形状に配列することができる。
【0054】
さらなる実施形態において、本発明の第3の基板は、酸化ケイ素および窒化ケイ素が所望の形状にて形成されている表面を有しており、該表面に形成された酸化ケイ素に、酸化ケイ素に特異的に結合しかつ窒化ケイ素に結合しない第1ポリペプチドが結合しており、該表面に形成された窒化ケイ素に、窒化ケイ素に特異的に結合しかつ酸化ケイ素に結合しない第2ポリペプチドが結合していることを特徴としている。
【0055】
上述したように、酸化ケイ素および窒化ケイ素はいずれも半導体表面材料として汎用されている素材であり、半導体加工技術による微細加工が容易である。よって、当業者は、周知技術を用いて、基板の表面上に、酸化ケイ素および窒化ケイ素を任意の形状に適宜形成することができる。
【0056】
本発明の基板は、上記組成物または第1および第2のキットを用いて製造されてもよい。例えば、本発明の第1の基板は、酸化ケイ素に特異的に結合しかつ窒化ケイ素に結合しない第1ポリペプチドを含有しかつ窒化ケイ素に特異的に結合しかつ酸化ケイ素に結合しない第2ポリペプチドを含有していない第1溶液を、酸化ケイ素が所望の形状にて形成されている基板表面と接触させる工程を包含する第1の製造方法によって製造され得、第1ポリペプチドは、上記組成物または第1および第2のキットによって提供される。第1の製造方法は、基板表面に、酸化ケイ素を所望の形状にて形成する工程をさらに包含してもよい。
【0057】
また、本発明の第2の基板は、窒化ケイ素に特異的に結合しかつ酸化ケイ素に結合しない第2ポリペプチドを含有しかつ酸化ケイ素に特異的に結合しかつ窒化ケイ素に結合しない第1ポリペプチドを含有していない第2溶液を、窒化ケイ素が所望の形状にて形成されている基板表面と接触させる工程を包含する第2の製造方法によって製造され得、第2ポリペプチドは、上記組成物または第1および第2のキットによって提供される。第2の製造方法は、基板表面に、窒化ケイ素を所望の形状にて形成する工程をさらに包含してもよい。
【0058】
本発明の第3の基板は、酸化ケイ素に特異的に結合しかつ窒化ケイ素に結合しない第1ポリペプチドを含有しかつ窒化ケイ素に特異的に結合しかつ酸化ケイ素に結合しない第2ポリペプチドを含有していない第1溶液と、窒化ケイ素に特異的に結合しかつ酸化ケイ素に結合しない第2ポリペプチドを含有しかつ酸化ケイ素に特異的に結合しかつ窒化ケイ素に結合しない第1ポリペプチドを含有していない第2溶液とを混合して混合溶液を生成する工程、および、該混合溶液を、酸化ケイ素および窒化ケイ素がそれぞれ所望の形状にて形成されている基板表面と接触させる工程を包含する第3の製造方法によって製造され得、第1および第2ポリペプチドは、上記組成物または第1および第2のキットによって提供される。第3の製造方法は、基板表面に、酸化ケイ素および窒化ケイ素を所望の形状にて形成する工程をさらに包含してもよい。
【0059】
また、本発明の第3の基板は、第1および第2の製造方法によって製造されてもよい。この場合、第1の製造方法は、窒化ケイ素に特異的に結合しかつ酸化ケイ素に結合しない第2ポリペプチドを含有しかつ酸化ケイ素に特異的に結合しかつ窒化ケイ素に結合しない第1ポリペプチドを含有していない第2溶液を、基板表面と接触させる工程をさらに包含し、第1の製造方法が適用される基板表面には、窒化ケイ素が所望の形状にてさらに形成されているので、基板表面に、窒化ケイ素を所望の形状にて形成する工程をさらに包含してもよい。また、第2の製造方法は、酸化ケイ素に特異的に結合しかつ窒化ケイ素に結合しない第1ポリペプチドを含有しかつ窒化ケイ素に特異的に結合しかつ酸化ケイ素に結合しない第2ポリペプチドを含有していない第1溶液を、基板表面と接触させる工程をさらに包含し、第2の製造方法が適用される基板表面には、酸化ケイ素が所望の形状にてさらに形成されているので、基板表面に、酸化ケイ素を所望の形状にて形成する工程をさらに包含してもよい。
【0060】
本発明の半導体デバイスは、本発明の組成物、本発明の第1および第2のキットのいずれかを用いて製造されてもよく、製造手順の具体例は、上述した基板の製造方法に準じればよい。また、本発明の半導体デバイスは、以下の第3のキットを用いて製造されてもよい。
【0061】
本発明はさらに、半導体デバイスを製造するためのキット(第3のキット)を提供する。本発明の第3のキットは、半導体デバイスを製造するために、基板を製造するための組成物または基板を製造するためのキット(第1および第2のキット)と、所定の基板とを備えていることを特徴としている。
【0062】
一実施形態において、本発明の第3のキットは、酸化ケイ素が所望の形状にて形成されている表面を有する基板、および、酸化ケイ素に特異的に結合しかつ窒化ケイ素に結合しない第1ポリペプチドを備えている。また、窒化ケイ素に特異的に結合しかつ酸化ケイ素に結合しない第2ポリペプチドをさらに備えていてもよく、この場合、上記表面には、窒化ケイ素が所望の形状にてさらに形成されている。
【0063】
他の実施形態において、本発明の第3のキットは、窒化ケイ素が所望の形状にて形成されている表面を有する基板、および、窒化ケイ素に特異的に結合しかつ酸化ケイ素に結合しない第2ポリペプチドを備えている。また、酸化ケイ素に特異的に結合しかつ窒化ケイ素に結合しない第1ポリペプチドをさらに備えていてもよく、この場合、上記表面には、酸化ケイ素が所望の形状にてさらに形成されている。
【0064】
さらなる実施形態において、本発明の第3のキットは、酸化ケイ素および窒化ケイ素が所望の形状にて形成されている表面を有する基板、酸化ケイ素に特異的に結合しかつ窒化ケイ素に結合しない第1ポリペプチド、および、窒化ケイ素に特異的に結合しかつ酸化ケイ素に結合しない第2ポリペプチドを備えている。
【0065】
〔4:位置特異的にタンパク質を固定化する方法〕
本発明の、酸化ケイ素と窒化ケイ素とを識別するポリペプチドを用いれば、目的のタンパク質を位置特異的に固定化することができる。すなわち、本発明は、タンパク質の固定化方法を提供するといえる。本発明の固定化方法は、本発明のポリペプチド、本発明の組成物、あるいは本発明のキット(第1のキットまたは第2のキット)を用いることを特徴としている。
【0066】
本明細書中で使用される場合、タンパク質の「固定化」は、支持体の表面にタンパク質が結合されることが意図される。支持体は表面上に酸化ケイ素および/または窒化ケイ素が呈示されていればよく、酸化ケイ素および/または窒化ケイ素そのものであっても、酸化ケイ素および/または窒化ケイ素が表面に結合した基板であってもよい。
【0067】
すなわち、本発明の固定化方法は、本発明のポリペプチドを、支持体の表面上に呈示された酸化ケイ素および/または窒化ケイ素と接触させる工程を包含すればよく、本発明のポリペプチドが支持体に固定化されたか否かを、例えば本発明のポリペプチドに対する抗体を用いて確認する工程をさらに包含してもよい。本発明の固定化方法に用いられるポリペプチドは、精製されていても精製されていなくてもよく、上述した組成物またはキットとして提供されたものであってもよい。
【0068】
本発明の固定化方法を利用すれば、本発明のポリペプチドを介して、ケイ素化合物と目的のタンパク質との無機有機ハイブリッド素材を容易に作製することが可能となる。例えば、プロテアーゼを結合させたガラスを作製すれば、タンパク質の汚れに強いガラスを提供できる。また、細胞の増殖に必要なタンパク質を結合させたガラスを作製すれば、ガラス表面に細胞を増殖させることができる。これは人工臓器などへの応用が期待される。
【0069】
また、タンパク質を結合させたシリカナノパーティクルを用いて細菌を検出する技術が報告されており(A rapid bioassay for single bacterial cell quantitation using bioconjugated nanoparticles. Zhao X, Hilliard LR, Mechery SJ, Wang Y, Bagwe RP, Jin S, Tan W., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101,15027-15032, 2004)、本発明を用いれば、このような技術に利用可能な量子ドット効果を持つシリカナノパーティクルとタンパク質との複合体を簡便に作製することができる。
【0070】
さらに、半導体基板上にタンパク質分子を配置させることで、生物と電子機器との間の情報交換を可能とするヒューマンインターフェイステクノロジーの基盤技術への応用が期待される。
【0071】
〔5:酸化ケイ素と窒化ケイ素とを識別するポリペプチドを取得する方法〕
本発明は、酸化ケイ素と窒化ケイ素とを識別するポリペプチドを取得する方法を提供する。上記ポリペプチドが第1ポリペプチドである場合、本発明の方法は、第1ポリペプチドを取得する方法であり得、添加された窒化ケイ素とともにタンパク質溶液をインキュベートする工程、インキュベート後の該溶液から窒化ケイ素を除去する工程、窒化ケイ素を除去したタンパク質溶液を酸化ケイ素とともにインキュベートする工程、酸化ケイ素を回収する工程、回収した酸化ケイ素を洗浄する工程、洗浄後の酸化ケイ素から結合タンパク質を単離する工程を包含することを特徴としている。必要に応じて、窒化ケイ素の添加、および窒化ケイ素とのタンパク質溶液のインキュベートを複数回行ってもよい。また、単離されたタンパク質が窒化ケイ素に結合しないことを確認する工程をさらに包含してもよい。
【0072】
タンパク質溶液中のタンパク質は、天然のタンパク質の全長であってもフラグメントであってもよい。また、タンパク質溶液には複数種のタンパク質が含まれていることが好ましく、例えば、細胞や組織からの抽出液または破砕液が挙げられ、ファージライブラリー由来のランダムペプチドライブラリー、合成ペプチドライブラリー等であってもよい。また、タンパク質溶液にはタンパク質以外の物質が含まれていてもよい。
【0073】
タンパク質溶液の調製は、用いる材料に応じて適宜公知の方法を選択すればよい。例えば細胞破砕液を調製する場合には、ホモジナイザー、超音波などによって物理的に細胞を破砕する方法、酵素や界面活性剤を用いて細胞を破砕する方法、酵素や界面活性剤と物理的方法を組み合わせて細胞を破砕する方法などを用いることができる。
【0074】
添加する窒化ケイ素の量は、用いられる反応系に応じて適宜設計され得る。タンパク質溶液に窒化ケイ素を添加した後は、当該タンパク質と窒化ケイ素との混合液を十分混和することによってインキュベートされることが好ましい。混和する条件は特に限定されないが、例えば4℃で15〜30分間転倒混和することが挙げられる。
【0075】
窒化ケイ素の除去は、例えば上記混合液を窒化ケイ素のみが沈降する程度の回転数で遠心分離し上清を回収することによって行うことができる。また、上記混合液を適当なポアサイズのフィルターを用いてろ過することによって行うことができる。ただし、これらの方法に限定されるものではない。回収操作を行うことによって窒化ケイ素と結合していないタンパク質を回収することができる。
【0076】
引き続き添加される酸化ケイ素の量もまた、用いられる反応系に応じて適宜設計され得る。タンパク質溶液に酸化ケイ素を添加した後は、当該タンパク質と酸化ケイ素との混合液を十分混和することによってインキュベートされることが好ましい。混和する条件は特に限定されないが、例えば4℃で15〜30分間転倒混和することが挙げられる。
【0077】
酸化ケイ素の回収は、例えば上記混合液を酸化ケイ素のみが沈降する程度の回転数で遠心分離し上清を除くことによって行うことができる。また、上記混合液を適当なポアサイズのフィルターを用いてろ過することによって行うことができる。ただし、これらの方法に限定されるものではない。回収操作を行うことによって酸化ケイ素と結合していないタンパク質を除くことができる。
【0078】
洗浄は、酸化ケイ素と非特異的に弱く結合しているタンパク質を除外するために行う。洗浄方法としては、例えば上記によって回収した酸化ケイ素に少なくとも0.1M以上の塩化ナトリウムを含む溶液を加え、ピペッティング等によって十分混和した後に、上記と同様に遠心分離やフィルターろ過を行う方法が挙げられる。この操作を数回繰り返すことによって洗浄効果が向上する。また、少なくとも0.1M以上の塩化ナトリウムを含む溶液を用いて上記タンパク質溶液を調製することで、洗浄効果(非特異的な結合を除外する効果)を向上させることができる。洗浄用の溶液は、特に限定されないが、pH7.5以上、好ましくはpH8以上の緩衝液が好ましい。
【0079】
酸化ケイ素と結合しているタンパク質を酸化ケイ素から単離する手順としては、例えばドデシル硫酸ナトリウムなどの界面活性剤を用いる方法、pHを低下させる方法、溶液の塩濃度を上げる(塩化ナトリウム濃度を2M程度にする)方法などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
取得したタンパク質の同定は、公知の方法を用いて行うことができる。例えば、遊離させたタンパク質を、ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離し、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜にトランスファーし、膜をクマシーブリリアントブルーで染色した後、目的タンパク質のバンドを切り出す。切り出したバンドのトリプシン消化物をマトリックス支援レーザーイオン化飛行時間型質量分析計(MALDI−TOFMS)によって分析し、ペプチドマスフィンガープリント解析によって同定することができ、公知のタンパク質データベースからアミノ酸配列を取得することができる。また、例えば、自動ペプチドシーケンサを用いてアミノ酸配列を決定することができる。
【0081】
アミノ酸配列が決定すれば、当該タンパク質をコードする遺伝子の塩基配列は、例えば、公知の遺伝子データベースから取得することができる。また、当該タンパク質のアミノ酸配列に基づいて、プライマーまたはプローブを設計し、当該タンパク質コードするDNA断片をクローニングして、DNAシーケンサを用いて塩基配列を決定することができる。
【0082】
上記ポリペプチドが第2ポリペプチドである場合、本発明の方法は、第2ポリペプチドを取得する方法であり得、添加された酸化ケイ素とともにタンパク質溶液をインキュベートする工程、インキュベート後の該溶液から酸化ケイ素を除去する工程、酸化ケイ素を除去したタンパク質溶液を窒化ケイ素とともにインキュベートする工程、窒化ケイ素を回収する工程、回収した窒化ケイ素を洗浄する工程、洗浄後の窒化ケイ素から結合タンパク質を単離する工程を包含することを特徴としている。必要に応じて、酸化ケイ素の添加、および酸化ケイ素とのタンパク質溶液のインキュベートを複数回行ってもよい。また、単離されたタンパク質が酸化ケイ素に結合しないことを確認する工程をさらに包含してもよい。各工程は、上述した第1ポリペプチドを取得する方法を参照すればよい。
【0083】
なお、本明細書中に記載された特許文献および非特許文献の全てが、本明細書中にて参考として援用される。
【0084】
本発明は、以下の実施例によってさらに詳細に説明されるが、これに限定されるべきではない。
【実施例】
【0085】
〔1:Bacillus cereus胞子タンパク質の抽出〕
R2A液体培地(0.5g/L 酵母エキス、0.5g/L プロテオースペプトン、0.5g/L カザミノ酸、0.5g/L ブドウ糖、0.5g/L 溶性デンプン、0.3g/L KHPO、0.05g/L MgSO・7HO、0.3g/L ピルビン酸ナトリウム、pH 7.2)で培養したBacillus cereus ATCC 14579株をmR2A液体培地(R2A液体培地+0.2mM CaCl、0.01mM MnCl、0.05mM ZnCl、0.05mM FeSO)に1%植菌し、28℃にて28時間培養した。顕微鏡観察にて内生胞子が形成されていることを確認した後、菌体を遠心分離(3,300×g、10分間、4℃)によって回収し、滅菌水で2回洗浄した。
【0086】
得られた菌体(培養液50mL分)を3mLの破砕液(25mM Tris−HCl(pH 8.0)、1mM EDTA、0.5mg/mL リゾチーム)で懸濁して氷上で30分間静置した後、超音波処理によって菌体を破砕した。この破砕液を図1における「Whole−cell lysate」とする。その後、遠心分離(3,300×g、10分間、4℃)によって胞子を回収した。この遠心分離の上清を「Mother cell extract」とする。回収した胞子は洗浄液(25mM Tris−HCl(pH 8.0)、1mM EDTA)で3回洗浄した。この胞子を3mLの溶解液(25mM Tris−HCl(pH 8.0)、50mM EDTA、8M 尿素)に懸濁して25℃で16時間撹拌し、胞子タンパク質を抽出した。遠心分離(20,000×g、30分間、4℃)によって未溶解の胞子を除去した抽出液に、最終濃度が0.5%になるようにTween 20(登録商標)を添加し、透析用セルロースチューブに入れて500mLの透析液(25mM Tris−HCl(pH 8.0)、1M NaCl、0.5% Tween 20(登録商標)、4M 尿素)に対して4℃で4時間透析した。尿素濃度を段階的に低下させた各透析液(2M、1M、0.5M)に対して同様の透析操作を行った後、遠心分離(20,000×g、30分間、4℃)によって不溶性の夾雑物を除去し、タンパク質抽出液を得た。この抽出液を「Solubilized spore」とする。
【0087】
〔2:酸化ケイ素あるいは窒化ケイ素特異的に結合するタンパク質の探索〕
得られたタンパク質抽出液を、10mgの酸化ケイ素粒子(Silicon dioxide fine powder ca. 0.8μm、添川理化学)または窒化ケイ素粒子(Silicon nitride、80 nm、和光純薬工業)を含む1mLの緩衝液(25mM Tris−HCl(pH 8.0)、1M NaCl、0.5% Tween 20(登録商標))に、終濃度0.5mg/mLになるように添加し、25℃で30分間混合した。その後、遠心分離(5,000×g、2分間)によって各粒子を回収し、洗浄液(緩衝液と同じ組成)で3回洗浄した。各粒子を100μLのSDS−PAGE用のサンプルバッファーに懸濁して95℃で5分間加熱し、粒子に結合したタンパク質を解離させた。その後、遠心分離(5,000×g、2分間)によって粒子を沈殿させ、上清を回収した。このときの上清をそれぞれ、「SiO−bound」および「Si−bound」とする。得られた各サンプルをSDS−PAGE(15%)に供した。酸化ケイ素結合画分と窒化ケイ素結合画分とを比較して、明確な差が認められたバンド(図1、A)のN末端アミノ酸配列決定を行い、タンパク質を同定した(表1参照)。
【0088】
【表1】
【0089】
バンドAのタンパク質のアミノ酸配列を配列番号1に、このタンパク質をコードするヌクレオチド配列を配列番号2に示す。
【0090】
〔3:タンパク質溶液の調製〕
タンパク質溶液として、B. cereusの胞子タンパク質抽出液およびEscherichia coliの菌体内タンパク質抽出液を用いた。B. cereusの胞子タンパク質抽出液を、上述した方法と同様に調製し、E. coliの菌体内タンパク質抽出液を以下の方法で調製した。
【0091】
2×YT液体培地(16g/L トリプトン、10g/L 酵母エキス、5g/L NaCl)で培養したE. coli MG1655株を、新鮮な2×YT液体培地に1%植菌し、37℃にて12時間培養した。菌体(培養液500mL分)を遠心分離(8,000×g、10分間、4℃)によって回収した後、9.2mLの破砕用バッファー(25mM Tris−HCl、pH 8.0)に懸濁し、超音波処理によって菌体を破砕した。この破砕液を遠心分離(40,000×g、30分間、4℃)し、その上清を大腸菌のタンパク質抽出液として回収した。
【0092】
〔4:酸化ケイ素あるいは窒化ケイ素特異的に結合するタンパク質の探索〕
30mgの窒化ケイ素粒子または120mgの酸化ケイ素粒子を含む1mLの緩衝液(25mM Tris−HCl(pH 8.0)、1M NaCl、0.5% Tween 20(登録商標))に、各タンパク質抽出液を最終タンパク質濃度1mg/mLになるように添加し、25℃で30分間混合した。その後、遠心分離(5,000×g、2分間)によって粒子を沈殿させ、各上清を窒化ケイ素未結合画分および酸化ケイ素未結合画分として回収した。
【0093】
得られた窒化ケイ素未結合画分に40mgの酸化ケイ素粒子を、酸化ケイ素未結合画分には10mgの窒化ケイ素粒子を添加し、25℃で30分間混合した。各粒子を遠心分離(5,000×g、2分間)によって回収し、洗浄液(緩衝液と同じ組成)で3回洗浄した。その後、各粒子を100μLのSDS−PAGE用のサンプルバッファーで懸濁して95℃で5分間加熱し、粒子に結合したタンパク質を解離させた。遠心分離(5,000×g、2分間)によって粒子を沈殿させ、上清を回収した。酸化ケイ素粒子より得られた上清は図中の「SiO」に該当する。窒化ケイ素粒子より得られた上清は図中の「Si」に該当する。得られた各サンプルをSDS−PAGE(15%)に供した。酸化ケイ素結合画分と窒化ケイ素結合画分との比較によって明確な差が認められたバンド(図2、B〜J)部分のアクリルアミドゲルを切り出してゲル内トリプシン消化処理を施した後、飛行時間型質量分析によってタンパク質の同定を行った(表2参照)。
【0094】
【表2】
【0095】
バンドB〜Jのタンパク質のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号3、5、7、9、11、13、15、17および19に、これらのタンパク質をコードするヌクレオチド配列をそれぞれ配列番号4、6、8、10、12、14、16、18および20に示す。
【0096】
〔5:Bacillus cereusのタンパク質抽出画分の検討〕
酸化ケイ素または窒化ケイ素に特異的に結合するタンパク質を単離するために、胞子中にケイ素を蓄積することが知られているB. cereusをタンパク質のスクリーニング源として用いた。タンパク質抽出画分としてMother cell extract画分およびSolubilized spore画分を用いた。調製方法は上述したとおりである。
【0097】
10mgの酸化ケイ素粒子または窒化ケイ素粒子を含む1mLの緩衝液(25mM Tris−HCl(pH 8.0)、1M NaCl、0.5% Tween 20(登録商標))に、各抽出画分を最終タンパク質濃度0.5mg/mLになるように添加し、25℃で30分間混合した。その後、遠心分離(5,000×g、2分間)によって各粒子を回収し、洗浄液(緩衝液と同じ組成)で3回洗浄した。各粒子を100μLのSDS−PAGE用のサンプルバッファーに懸濁して、95℃で5分間加熱し、粒子に結合したタンパク質を解離させた。その後、遠心分離(5,000×g、2分)によって粒子を沈殿させ、上清を回収した。得られた各サンプルをSDS−PAGE(15%)に供した。
【0098】
図3にSDS−PAGEの結果を示す。図3中、レーン1はMother cell extract画分、レーン2および3はそれぞれMother cell extract画分から得られる酸化ケイ素結合タンパク質および窒化ケイ素結合タンパク質、レーン4はSolubilized spore画分、レーン5および6はそれぞれSolubilized spore画分から得られる酸化ケイ素結合タンパク質および窒化ケイ素結合タンパク質を示している。
【0099】
図3に示すように、Mother cell extract画分から得られた酸化ケイ素結合タンパク質および窒化ケイ素結合タンパク質のバンドパターンには明確な差は見られず、酸化ケイ素あるいは窒化ケイ素に特異的に結合するタンパク質の単離は困難であった(レーン2および3参照)。一方、Solubilized spore画分から得られた酸化ケイ素結合タンパク質および窒化ケイ素結合タンパク質の比較から、酸化ケイ素にのみ特異的に結合するタンパク質(分子量28kDa)が認められた(レーン5および6参照)。
【0100】
〔6:酸化ケイ素粒子および窒化ケイ素粒子結合時における塩濃度、界面活性剤、pHの検討〕
10mgの酸化ケイ素粒子あるいは窒化ケイ素粒子を含む1mLの各種緩衝液に、B. cereusのSolubilized spore画分を最終タンパク質濃度0.5mg/mLになるように添加し、25℃で30分間混合した。その後、遠心分離(5,000×g、2分)によって各粒子を回収し、各種洗浄液(緩衝液と同じ組成)で3回洗浄した。各粒子を100μLのSDS−PAGE用のサンプルバッファーに懸濁して95℃で5分間加熱し、粒子に結合したタンパク質を解離させた。その後、遠心分離(5,000×g、2分)によって粒子を沈殿させ、上清を回収した。得られた各サンプルをSDS−PAGE(12.5%あるいは15%)に供した。
【0101】
図4にSDS−PAGEの結果を示す。図4中、レーン1はSolubilized spore画分、レーン2および3は緩衝液A(25mM Tris−HCl(pH 8.0)、1M NaCl、0.5% Tween 20(登録商標))中で酸化ケイ素および窒化ケイ素に結合するタンパク質、レーン4および5は緩衝液B(25mM Tris−HCl(pH 8.0)、2M NaCl、0.5% Tween 20(登録商標))中で酸化ケイ素および窒化ケイ素に結合するタンパク質、レーン6および7は緩衝液C(25mM Tris−HCl(pH 8.0)、1M NaCl、0.5% Tween 20(登録商標), 0.5% CHAPS)中で酸化ケイ素および窒化ケイ素に結合するタンパク質、レーン8および9は緩衝液D(25mM Tris−リンゴ酸(pH 6.0)、1M NaCl、0.5% Tween 20(登録商標))中で酸化ケイ素および窒化ケイ素に結合するタンパク質を示している。
【0102】
図4に示すように、各粒子への結合時における緩衝液の塩濃度および界面活性剤の種類による影響はほとんど見られなかった(レーン2〜7参照)。一方、緩衝液のpHを低下させると各粒子に結合するタンパク質が全体的に減少し、窒化ケイ素に特異的に結合するタンパク質が複数認められた。また、前述の分子量28kDaの酸化ケイ素結合タンパク質がほぼ単一のバンドとして確認できた(レーン8および9参照)。
【0103】
〔7:酸化ケイ素粒子および窒化ケイ素粒子へのプレ吸着の回数および粒子量の検討〕
特異性がより高いタンパク質を得るために、予めタンパク質溶液と酸化ケイ素粒子とを混合(プレ吸着)して酸化ケイ素粒子に結合しないタンパク質溶液を調製し、そこへ窒化ケイ素粒子を添加および混合することによって、窒化ケイ素粒子に結合するが酸化ケイ素粒子には結合しないタンパク質を探索した。また、逆の操作を行うことで酸化ケイ素粒子に結合するが窒化ケイ素粒子には結合しないタンパク質を探索した。
【0104】
任意の量の窒化ケイ素粒子または酸化ケイ素粒子を含む1mLの緩衝液(25mM Tris−HCl(pH 8.0)、1M NaCl、0.5% Tween 20(登録商標))に、E. coliの菌体内タンパク質抽出液(調製方法は「4:酸化ケイ素あるいは窒化ケイ素特異的に結合するタンパク質の探索」の項を参照)を最終タンパク質濃度1mg/mLになるように添加し、25℃で30分間混合した。その後、遠心分離(5,000×g、2分)によって粒子を沈殿させ、上清をそれぞれ窒化ケイ素未結合画分および酸化ケイ素未結合画分として回収した。必要に応じて、得られた各画分に任意の量の窒化ケイ素粒子または酸化ケイ素粒子を再度添加して、同様の操作を繰り返した。
【0105】
得られた各画分に、それぞれ40mgの酸化ケイ素粒子および10mgの窒化ケイ素粒子を添加し、25℃で30分間混合した。各粒子を遠心分離(5,000×g、2分)によって回収し、洗浄液(緩衝液と同じ組成)で3回洗浄した。その後、各粒子を100μLのSDS−PAGE用のサンプルバッファーに懸濁して95℃で5分間加熱し、粒子に結合したタンパク質を解離させた。遠心分離(5,000×g、2分)によって粒子を沈殿させ、上清を回収した。得られた各サンプルをSDS−PAGE(15%)に供した。
【0106】
図5にSDS−PAGEの結果を示す。図5中、レーン1はE. coliの菌体内タンパク質抽出液、レーン2はプレ吸着操作をしていないタンパク質溶液中の酸化ケイ素結合タンパク質、レーン3はプレ吸着操作をしていないタンパク質溶液中の窒化ケイ素結合タンパク質、レーン4は30mgの窒化ケイ素粒子でプレ吸着操作を行ったタンパク質溶液中の酸化ケイ素結合タンパク質、レーン5は30mgの酸化ケイ素粒子でプレ吸着操作を行ったタンパク質溶液中の窒化ケイ素結合タンパク質、レーン6は120mgの酸化ケイ素粒子でプレ吸着操作を行ったタンパク質溶液中の窒化ケイ素結合タンパク質、レーン7は30mgの窒化ケイ素粒子で2回のプレ吸着操作を行ったタンパク質溶液中の酸化ケイ素結合タンパク質、レーン8は120mgの酸化ケイ素粒子で2回のプレ吸着操作を行ったタンパク質溶液中の窒化ケイ素結合タンパク質を示している。
【0107】
図5に示すように、プレ吸着操作を行うことで大部分のタンパク質を除去でき、その後に混合する粒子への結合タンパク質量を減らすことができた(レーン2〜5参照)。その減少の程度は混合する粒子量および操作回数に依存し、今回のように初期タンパク質量が1mg程度の場合、30mgの窒化ケイ素粒子あるいは120mgの酸化ケイ素粒子で1回のプレ吸着操作を行うことで、SDS−PAGEにおける検出に好適な数のタンパク質のバンドを得ることができた(レーン6〜8参照)。
【0108】
〔8:リコンビナントタンパク質を用いた結合特異性試験1〕
図2および表2におけるバンドBのタンパク質(CbpA;配列番号3)をコードする大腸菌cbpA遺伝子(配列番号4)を、pET−21bベクターに挿入し、CbpA発現用ベクターを構築した(pET−CbpA)。また、得られたpET−CbpAにgfp遺伝子を挿入してCbpA−GFP発現用ベクターを構築した(pET−CbpA−GFP)。その後、構築した各プラスミドを発現用宿主E. coli Rosetta2(DE3)pLysS株(Novagen)に導入して形質転換体を取得し、2×YT培地でOD600が0.5になるまで37℃で培養した後に0.5mM IPTGを添加し、さらに20℃で12時間培養することで各タンパク質を大量発現した菌体を得た。各菌体を緩衝液(25mM Tris−HCl(pH 8.0)、0.5% Tween 20)に懸濁し、超音波処理により菌体を破砕した。この破砕液を遠心分離し、その上清を大腸菌のタンパク質抽出液として回収した。この抽出液を図6(a)における「Cell extract」とする。
【0109】
10mgの酸化ケイ素粒子あるいは窒化ケイ素粒子を含む1mLの緩衝液に、緩衝液で適宜希釈したタンパク質抽出液を添加し、25℃で30分間混合した。その後、遠心分離により各粒子を回収し、緩衝液で3回洗浄した。各粒子をSDS−PAGE用のサンプルバッファーに懸濁して95℃で5分間加熱し、粒子に結合したタンパク質を解離させた。その後、遠心分離により粒子を沈殿させ、上清を回収した。得られた上清をそれぞれ、図6(a)における「SiO−bound」および「Si−bound」とする。得られた各サンプルをSDS−PAGEに供した。
【0110】
図6(a)から明らかなように、CbpAおよびCbpA−GFP融合タンパク質は酸化ケイ素粒子に特異的に結合した。
【0111】
〔9:リコンビナントタンパク質を用いた結合親和性の測定1〕
上述したように調製した細胞破砕液からHisTrapカラム(GE Healthcare)および陰イオン交換カラムを用いて、CbpA−GFP融合タンパク質を精製した。0.1mgの酸化ケイ素粒子を含む0.3mLの反応液(25mM Tris−HCl(pH 8.0)、0.5% Tween 20)に,適宜希釈したタンパク質溶液を添加し、25℃で30分間混合した。その後、遠心分離により粒子を沈殿させて上清を得た。反応前の蛍光値から反応後上清の蛍光値を引くことで、結合している融合タンパク質量を求めた。得た値からスキャッチャード解析により親和性(Kd)を求めた。
【0112】
結果を図6(b)に示した。CbpA−GFPの酸化ケイ素粒子に対するKd値は30nMであった。
【0113】
〔10:リコンビナントタンパク質を用いた結合特異性試験2〕
図2および表2におけるバンドHのタンパク質(TufB;配列番号15)をコードする大腸菌tufB遺伝子(配列番号16)を、pET−21bベクターに挿入し、TufB発現用ベクターを構築した(pET−TufB)。また、得られたpET−TufBにgfp遺伝子を挿入してTufB−GFP発現用ベクターを構築した(pET−TufB−GFP)。その後、構築した各プラスミドを発現用宿主E. coli Rosetta2(DE3)pLysS株(Novagen)に導入して形質転換体を取得し、2×YT培地でOD600が0.5になるまで37℃で培養した後に0.5mM IPTGを添加し、さらに20℃で12時間培養することで各タンパク質を大量発現した菌体を得た。各菌体を破砕用バッファー(25mM Tris−malate(pH 6.0)、0.5% Tween 20)に懸濁し、超音波処理により菌体を破砕した。この破砕液を遠心分離し、その上清を大腸菌のタンパク質抽出液として回収した。この抽出液を図7(a)における「Cell extract」とする。
【0114】
10mgの酸化ケイ素粒子あるいは窒化ケイ素粒子を含む1mLの反応液(25mM Tris−malate(pH 6.0)、0.5% Tween 20、1M NaCl)に、破砕用バッファーで適宜希釈したタンパク質抽出液を添加し、25℃で30分間混合した。その後、遠心分離により各粒子を回収し、洗浄用バッファー(反応液と同じ組成)で3回洗浄した。各粒子をSDS−PAGE用のサンプルバッファーに懸濁して95℃で5分間加熱し、粒子に結合したタンパク質を解離させた。その後、遠心分離により粒子を沈殿させ、上清を回収した。得られた上清をそれぞれ、図7(a)における「SiO−bound」および「Si−bound」とする。得られた各サンプルをSDS−PAGEに供した。
【0115】
図7(a)から明らかなように、TufBおよびTufB−GFP融合タンパク質は窒化ケイ素粒子により強く結合した。
【0116】
〔11:リコンビナントタンパク質を用いた結合親和性の測定2〕
上述したように調製した細胞破砕液を用いた。0.5mgの窒化ケイ素粒子を含む0.3mLの反応液(25mM Tris−malate(pH 6.0)、0.5% Tween 20、1 M NaCl)に、適宜希釈した細胞破砕液を添加し、25℃で30分間混合した。その後、遠心分離により各粒子を回収し、洗浄用バッファー(反応液と同じ組成)で3回洗浄した。各粒子をSDS−PAGE用のサンプルバッファーで懸濁して95℃で5分間加熱し、粒子に結合したタンパク質を解離させた。その後、遠心分離により粒子を沈殿させて上清を回収し、得られたサンプルをSDS−PAGEに供した。染色後のゲルを画像解析して各タンパク質濃度における粒子への結合量を算出し、結合平衡グラフを得た。
【0117】
結果を図7(b)に示した。TufB−GFPの窒化ケイ素粒子に対するKd値は159nMであった。
【0118】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明は、酸化ケイ素と窒化ケイ素との識別を可能にするので、基板上でのタンパク質の新たなパターニング技術を提供する。このような技術は、半導体の製造に利用することができるとともに、プロテインチップ、ナノバイオデバイス、医薬品などを製造する広範な技術分野に用いることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]