【実施例】
【0019】
(実施例1)
図1は、本発明の実施例1が適用される欠陥検査装置1000の全体概略構成図である。
図1において、検査装置は、パターン付ウエハである被検査対象200は、搬送系(搬送部)としてのステージ(支持台)400上に搭載される。照明系(照明部)300は、被検査対象200上に照明光301を照明し、線状の照明領域104を形成する。
【0020】
照明領域104からの光は、斜方検出系(斜方検出部)100、101、上方検出系(上方検出部)800によって検出される。上方検出系800は、対物レンズ805、結像レンズ809を有している。斜方検出系(斜方検出部)100、101も同様に、対物レンズ、結像レンズを有している。
【0021】
また、斜方検出系100、101、上方検出系800は、フーリエ面に配置された空間フィルタ、ズームレンズも含むものである。さらに、斜方検出系100、101、上方検出系800は、1次元CCDラインセンサ、2次元TDIセンサ等のセンサ102、103、802を有しており、これらにより結像された暗視野像が検出される。センサ102、103、802によって検出された暗視野像は、検出信号として演算処理系(演算処理部)701に送信され、得られた暗視野像から欠陥が検出される。
【0022】
演算処理系
701により得られた画像は、表示装置702によって表示される。205は、基準チップであり、803は顕微鏡である。制御装置703は、顕微鏡803、ステージ400、表示装置702、演算処理系701の動作を制御する。
【0023】
図2は、パターン付ウエハ200上に配列されたダイ201〜2N1の説明図である(Nは自然数)。
図2において、ダイ201〜2N1は、互いに同一の仕様で製作されているため、ダイ201を例として、ダイ内のパターン配列を説明する。
【0024】
ダイ201には、互いに同一のパターンが繰り返して製作された複数のセル部202〜20nが形成されている。そして、セル部の両辺には、ペリ部が形成されている。これらの構造は、ダイ内に形成された周期的な構造(繰り返し構造)と表現することができる。
【0025】
ペリ部には上述したようにセル部の周辺回路パターンが形成されているが、すべて同一の回路パターンが形成されているわけではなく、
図2に示したように、パターンA、B、Cのように、複数種類となっている。
【0026】
このため、例えば、セル部202の両辺にはペリ部AとBとが形成され、セル部203の両辺には、ペリ部BとCとが形成されている。
【0027】
図3は、セル部202とその両辺のペリ部の断面イメージ(
図3の(a))と、セル部203とその両辺のペリ部の断面イメージ(
図3の(b))とを表した図である。セル部202と203とは、同一形状であるが、両辺のペリ部の相違により影響を受けて、断面イメージが異なるものとなっている。
【0028】
セル部202とセル部203とを比較検査し、差分を算出して欠陥の有無を判断した場合、ペリ部近傍のセル部領域で虚報が発生しているため、セル部202と203とは同一であるにもかかわらず、大きな差分が発生することになる。よって、正確な欠陥の検出が行えない場合が生じてしまう。
【0029】
本発明の実施例1においては、ペリ部近傍のセル部領域で虚報が発生することを防止するため、両辺のペリ部が同一のセル部どうしを位置合わせして、差分を検出し、欠陥の有無を判断することにより、虚報の発生を防止するものである。
【0030】
例えば、セル部202と206は、周辺ペリ部が共にABであるから、セル部202と206とを位置合わせして、差分を検出し、欠陥の有無を判断する。また、セル部203と207は、両辺(周辺)ペリ部が共にBCであるから、セル部203と207とが互いに重なるように位置合わせして、差分を検出し、欠陥の有無を判断する。セル部204と208、セル部205と209も同様である。
【0031】
次に、セル部どうしの位置合わせについて説明する。
図4、
図5は、ダイ201におけるセル部どうしの位置合わせについての説明図である。
図4、
図5に示した例は、暗視野画像中の暗い部分と明るい部分との境界の座標を使用する例である。
【0032】
図4において、セル部202については、点線212で示すように、ペリ部501、502の一部を含む領域の暗視野像を得る。また、セル部203については、点線213で示すように、ペリ部502、503の一部を含む領域の暗視野像を得る。また、セル部204については、点線214で示すように、ペリ部503、504の一部を含む領域の暗視野像を得て、セル部205については、点線215で示すように、ペリ部504、505の一部を含む領域の暗視野像を得る。また、セル部206については、点線216で示すように、ペリ部505、506の一部を含む領域の暗視野像を得る。以降、同様にして各セル部について暗視野像を得ていく。
【0033】
図5は、セル部202と206との位置合わせを例として、セル部どうしの位置合わせについての説明するための図である。
【0034】
図5の(a)は、
図4の点線212で示した部分の領域の暗視野像3001を示し、
図5の(b)は、
図4の点線216で示した部分の領域の暗視野像3002を示す。
【0035】
演算処理部701は、暗視野像3001について、セル部202の暗視野像とペリ部501の暗視野像305及びペリ部502の暗視野像306との境界点301、302、303、304の座標を算出する。同様に、演算処理部701は、暗視野像3002について、セル部206の暗視野像とペリ部505の暗視野像312及びペリ部506の暗視野像313との境界点308、309、310、311の座標を算出する。
【0036】
そして、演算処理部701は、境界点301の座標及び境界点308の座標と、境界点302の座標及び境界点309の座標と、境界点303の座標及び境界点310の座標と、境界点304の座標及び境界点311の座標とのうちの少なくとも一組(望ましくは全て)の、座標の距離が、許容範囲内となるように(望ましくは一致させる)、暗視野像3001及び3002のうち少なくとも一つを移動させる。
【0037】
暗視野像3001と3002との位置合わせのための移動距離は、ダイ201と211とで位置合わせする場合の移動距離より短いので、位置ずれの影響は少なく、より正確な位置合わせが可能となる。
【0038】
同様にして、他のセル部の位置合わせを実行していく。
【0039】
なお、上述した例は、セル部どうしの位置合わせについて、暗視野画像中の暗い部分と明るい部分との境界の座標を使用する例であるが、他の方法を用いてセル部どうしの位置合わせを行うことも可能である。例えば、異なる暗視野像中で共通して出現する特徴的な信号の振る舞いを使用して位置合わせを行うこともできる。
【0040】
上述したセル部どうしの位置合わせが行われた後に、画像の差分を算出する処理が行われるが、画像の差分を算出する方法は、2種類存在する。
【0041】
第1の方法は、上述したセル部どうしの位置合わせを行った後に、ダイ単位で差分を算出する方法である。
【0042】
第2の方法は、ダイ内のセル部の、位置合わせを行った後暗視野像どうしの差分を算出する方法である。
【0043】
いずれの方法を選択するかは、オペレータ等が任意に選択可能なように、表示装置702に選択ボタンを表示することも可能である。
【0044】
そして、第1の方法または第2の方法で算出された差分画像について、閾値を用いて欠陥が存在するか否かが判断される。
【0045】
図6は、演算処理部701の欠陥判断処理に関する内部機能ブロック図である。
図6において、演算処理部701は、検査対象物の画像を形成する画像処理部701aと、セル抽出部701bと、セル移動部701cと、差分算出部701dと、欠陥判断部701eとを備えている。なお、
図1では図示を省略したが、本発明の実施例1の検査装置には、キーボード、マウス等の操作部704が備えられており、この操作部704からの指令により、画像処理の方法等が画像処理部701aに指示される。
【0046】
図7は、上述した第2の方法による欠陥検査の動作フローチャートである。
図7のステップS1において、検出光学系100、101、800からの信号に基づいて画像理部701aが処理した画像について、セル抽出部701bは、一つのダイにて、複数のセル部のうち、両側のペリ部のパターンの配列順序が同一のセルを抽出する(例えば、
図2に示したセル部202と206、セル部203と207)。
【0047】
次に、ステップS2において、セル移動部701cは、ペリのパターンの配列順序が同一のセル部どうしが互いに重なるように、セル部を移動し、位置合わせを行う。
【0048】
続いて、ステップS3において、差分算出部701dは、一つのダイ内で位置合わせをしたセル部どうしの差分を算出する。そして、ステップS4において、欠陥判断部701eは、算出した差分が閾値以下か否かを判断し、閾値を超えていれば、欠陥ありと判断し(ステップS5)、閾値以下であれば、欠陥なしと判断する(ステップS6)。
【0049】
欠陥有無の判断結果は、欠陥判断部701eから表示装置702に伝達され、表示装置702にて、表示される。
【0050】
図8は、上述した第1の方法による欠陥検査の動作フローチャートである。
【0051】
図8において、ステップS1、S2は、
図7に示したフローチャートと同様である。そして、ステップS7において、セル移動部701cは、検査を行うダイの最終ダイについてセル部の位置合わせを行ったか否かを判断し、最終ダイでなければ、次のダイ内のセル部について、位置合わせを行うために、ステップS1に戻る。
【0052】
ステップS7において、最終ダイについてセル部の位置合わせを行ったことを判断した場合は、ステップS8に進み、差分算出部701dは、ダイどうしが互いに重なるように位置合わせを行い、ダイ単位で差分を算出する。以降は、
図7に示したステップS4〜S5と同様な処理がなされる。
【0053】
以上のように、本発明の実施例1によれば、同一ダイ内において、両辺のペリ部の配列順序が同一のセル部どうしの位置合わせを行い、差分を算出して欠陥の有無を判断しているので、セル部の両辺に形成されたペリ部の相違に関係なく、正確に欠陥を検出可能な検査装置を実現することができる。
【0054】
また、本発明の実施例1においては、周辺のペリ部の配列順序が同一のセル部どうしの位置合わせを行い、複数のダイどうしで差分を抽出して欠陥の有無を判断することもできる。この場合も、セル部の両辺に形成されたペリ部の相違に関係なく、正確に欠陥を検出可能な検査装置を実現することができる。
【0055】
(実施例2)
次に、本発明の実施例2について説明する。
【0056】
図9、
図10は本発明の実施例2の説明図である。実施例1においては、パターン付ウエハに形成された複数のダイは、互いに同一の仕様で製作され、一種類のダイである。しかし、パターン付ウエハに形成された複数のダイは、一種類とは限らず、複数種類のダイが形成されている場合がある。
【0057】
例えば、
図9に示すように、パターン付ウエハの一部401には、互いに異なる種類のダイA(231、232)、B(233)、C(234、235)、D(236〜239)が分布している場合がある。
【0058】
図10は、ダイA、Bについての詳細説明図である。ダイA内のセル部5001の幅WAと、ダイBのセル部5002の幅WBとは異なっている。さらに、セル部5001の左右のペリ部の種類(A3、A1)と、セル部5002の左右のペリ部の種類(B3、B2)も異なっている。
【0059】
このため、本発明の実施例2においては、ダイの種類に応じて、暗視野像を得る領域の範囲(大きさ)、位置合わせの際に使用する境界点の位置、位置合わせの際に許容できるずれ幅を変更して、位置合わせを行い、差分を算出する。このダイにおける位置合わせの方法及び差分の算出については、実施例1と同様に実行する。
【0060】
暗視野像を得る領域の範囲、位置合わせの際に使用する境界点の位置、位置合わせの際に許容できるずれ幅の変更は、
図6に示した操作部701aからの指令により行われる。操作部701aからの指令は、ダイの種類毎に、オペレータが設定することができる。
【0061】
検査装置の全体構成、演算処理部701の内部機能構成については、実施例1と同様であるので、図示及び説明は省略する。
【0062】
本発明の実施例2によれば、パターン付ウエハの一部に、互いに異なる種類のダイが分布している場合であっても、セル部の周辺に形成されたペリ部の相違に関係なく、正確に欠陥を検出可能な検査装置を実現することができる。
【0063】
(実施例3)
次に、本発明の実施例3について説明する。
【0064】
検査装置では、ウエハの欠陥有無判断における閾値処理の際には、暗視野像の画素の標準偏差を利用した閾値(統計的閾値)が使用されことがある。統計的閾値を使用する際には、使用する画素の数は、多ければ多いほどよい。本発明の実施例3は、実施例1または2において、統計的閾値を使用して、欠陥の有無を判断するものである。
【0065】
図11は、本発明の実施例3における統計的閾値を得る方法の説明図である。本発明の実施例3においては、上述したダイ201内の繰り返し構造についての、暗視野像3001、3002、・・・300Nを使用する。
【0066】
図11において、異なる暗視野像の対応する座標の画素の値を使用して標準偏差を算出する。つまり、互いに対応する座標の画素5101、5201、・・・5N01の値を使用して標準偏差を算出する。他の画素についても、同様にして標準偏差を算出する。この処理は、演算処理部701内の画像処理部701aが実行する。
【0067】
そして、画像処理部701aは、対応する座標の画素毎の標準偏差を記憶し、欠陥検出の際に、欠陥判断部701eが画像処理部701a内に記憶された標準偏差を閾値として使用する。
【0068】
このようにすれば、統計的閾値を得る際のサンプル数を多くすることができるので、より、正確な統計的閾値を得ることが可能となる。
【0069】
検査装置の全体構成、演算処理部701の内部機能構成については、実施例1と同様であるので、図示及び説明は省略する。
【0070】
本発明の実施例3においても、パターン付ウエハの一部に、互いに異なる種類のダイが分布している場合であっても、セル部の周辺に形成されたペリ部の相違に関係なく、正確に欠陥を検出可能な検査装置を実現することができる。
【0071】
なお、本発明は、上記実施例に限定されず、本発明の範囲内で種々の変形が可能である。例えば、検出光学系は複数であっても単数であってもよい。検出光学系が複数の場合は、検出光学系毎に、暗視野像を得る範囲や、位置合わせの際に使用する境界点、位置合わせの際に許容できる位置ずれを変更するように構成することができる。
【0072】
さらに、上述した例は、暗視野像を使用する検査装置であるが、明視野像を使用する検査装置にも、本発明は適用可能である。