(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6049192
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】シールドほぐし具
(51)【国際特許分類】
H02G 1/14 20060101AFI20161212BHJP
【FI】
H02G1/14
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-43996(P2013-43996)
(22)【出願日】2013年3月6日
(65)【公開番号】特開2014-176121(P2014-176121A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2016年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100087099
【弁理士】
【氏名又は名称】川村 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100063174
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 功
(74)【代理人】
【識別番号】100124338
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 健
(72)【発明者】
【氏名】川越 大輔
【審査官】
久保 正典
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−011599(JP,A)
【文献】
特開2007−183515(JP,A)
【文献】
特開2003−023713(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0031144(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/12−1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側が被覆されたコア線と、網状に編組され該コア線の外側を覆うシールドと、該シールドの外側を絶縁性の部材で被覆する絶縁被覆とを備えるシールド線に対して、該絶縁被覆を剥離して表出した該シールドをほぐす際に使用するシールドほぐし具であって、
該シールドを挟んで対面する第1の面及び第2の面と、該第1の面及び該第2の面に配設された複数のフック状部材とを有し、表出しているシールドの外側に該第1の面と該第2の面とを接触させたまま該シールドが表出している該シールド線の端部に向かって摺動させることにより該シールドをほぐすシールドほぐし具。
【請求項2】
前記第1の面もしくは前記第2の面が指に装着可能な装着具に連結されている請求項1記載のシールドほぐし具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド線のシールドをほぐすシールドほぐし具に関する。
【背景技術】
【0002】
通信をする通信機器およびOA機器などで使用される通信ケーブルには、外部からの有害電波による悪影響を防止できるシールド線が用いられる。シールド線は、信号を伝達するコア線と、コア線の外側を覆うシールドと、シールドの外側を被覆する絶縁被覆とを有する。シールド線は、複数の細線を、撚りを加えて巻装したり、網目状に編組したりして編成されている。
【0003】
シールド線を通信機器のコネクタなどに接続する場合、シールド線の端部の絶縁被覆を剥がし、シールドをほぐしてコア線を露出させ、コア線を接続するとともに、シールドをアース接続する。このとき、シールドが巻装もしくは編組されているため、シールドをほぐすのが難しく、作業に時間がかかる。このような問題を解決するための装置として、特許文献1には、対向配置された2つの円板状ブラシを有し、ケーブル挿入口から挿入される網組線に各ブラシの周面が摺動するように回転駆動する網組線ほぐし装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録3060978号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された装置は、大型なため、通信機器が設置された通信室などの作業現場に持ち込んで使用することが困難な場合がある。
【0006】
この発明は、このような問題にかんがみなされたもので、持ち運びが容易な小型の器具で、シールドを容易にほぐすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかるシールドほぐし具は、外側が被覆されたコア線と、網状に編組され該コア線の外側を覆うシールドと、該シールドの外側を絶縁性の部材で被覆する絶縁被覆とを備えるシールド線に対して、該絶縁被覆を剥離して表出した該シールドをほぐす際に使用するシールドほぐし具であって、該シールドを挟んで対面する第1の面及び第2の面と、該第1の面及び該第2の面に配設された複数のフック状部材とを有し、該シールドの外側に該第1の面と該第2の面とを接触させたまま該シールドが表出している該シールド線の端部に向かって摺動させることにより該シールドをほぐす。
【0008】
上記シールドほぐし具は、該第1の面もしくは該第2の面が指に装着可能な装着具に連結されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかるシールドほぐし具は、簡単な構造で小型かつ軽量なので、持ち運びが容易であり、フック状部材の先端がシールドの網目に引っかかるので、シールドを容易にほぐすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示すシールドほぐし具10は、2つの摺動部11,12と、2つの摺動部11,12を連結して対向する位置に保持する持ち手部13とを有する。持ち手部13は、トングのように変形可能であり、2つの摺動部11,12の間隔を容易に変えることができる。例えば、持ち手部13は、樹脂や金属などにより形成された長尺状の板を中央で折り曲げた形状を有し、一方の端に摺動部11が固定され、他方の端に摺動部12が固定されている。
【0012】
摺動部11の、摺動部12に対向する面111(第1の面)には、多数のフック状部材112が密集して配設されている。摺動部12の、摺動部11に対向する面121(第2の面)にも、同様に、多数のフック状部材122が配設されている。フック状部材112,122は、例えば樹脂や金属などにより形成された細線の先端を折り曲げた形状を有する。フック状部材112,122の先端の折り曲げ形状は、例えば、釣り針のような半円形状であってよいし、鉤のような直角形状であってもよい。フック状部材112,122は、例えば、面ファスナーを構成するフック状の係合素子を有する面を摺動部11,12に貼り付けることにより配設される。
【0013】
図2に示すシールド線90は、電気信号を伝達するコア線91と、コア線91の外側を覆うシールド92と、シールド92の更に外側を覆う絶縁被覆93とを有する。コア線91は、導体911と、導体の周囲を被覆した絶縁体912とを有する。シールド92は、細い導線を網状に編んで形成される。絶縁被覆93は、絶縁性の部材である。
【0014】
図3に示すシールド線端部処理80は、シールド線90をコネクタなどに接続するために端部を処理するステップを示している。まず、絶縁被覆切断処理81において、絶縁被覆93の適切な位置に切れ目931を入れる。次に、絶縁被覆除去処理82において、絶縁被覆93の切れ目931から先の部分を除去し、シールド92を露出させる。次に、シールドほぐし処理83において、シールド92をほぐして、コア線91を露出させる。
【0015】
シールドほぐし処理83では、シールドほぐし具10の2つの摺動部11,12で、露出したシールド92を挟み、フック状部材112,122をシールド92に押し当てて、シールド線90の先端方向へ向けて摺動させる。これにより、フック状部材112,122の先端がシールド92の網目に引っかかり、シールド92をほぐすことができる。
このとき、シールド92の撚りに合わせてシールド線90の周りを回転させながら摺動部11,12を摺動させると、容易にシールド92をほぐすことができる。また、先端に近いほうから少しずつほぐしていくと、更に容易にシールド92をほぐすことができる。これを何回か繰り返すことにより、簡単、迅速かつきれいにシールド92をほぐすことができる。
【0016】
シールドほぐし具10は、持ち手部13の先端に摺動部11,12を固着した簡単な構造で、小型かつ軽量なので、持ち運びが容易であり、配線作業の現場に持ち込んで使用することが容易である。
【0017】
図4に示すシールドほぐし具20は、摺動部21と、シールドほぐし具20を指に装着するための装着具23とが接続されて構成されている。摺動部21の一方の面211には、多数のフック状部材212が配設されている。装着具23は、摺動部21の、フック状部材212が配設されている面211の反対側の面に接続されている。装着具23は、例えばゴムなどの伸び縮み可能な材料で形成されているほうが、使用者の指の太さにかかわらず装着できるので、好ましい。
【0018】
図5に示すように、シールドほぐし具20は、2つペアで使用される。例えば、1つを親指71に装着し、もう1つを人差し指72に装着して、2つの摺動部21の間に、シールド線90の露出したシールド92を挟み、フック状部材212をシールド92に押し当てて、先端方向へ向けて摺動させる。これにより、フック状部材212の先端がシールド92の網目に引っかかり、シールド92をほぐすことができる。これを何回か繰り返すことにより、簡単、迅速かつきれいにシールド92をほぐすことができる。
【0019】
シールドほぐし具20は、シールドほぐし具10と同様、簡単な構造で、小型かつ軽量なので、持ち運びが容易であり、配線作業の現場に持ち込んで使用することが容易である。
【0020】
なお、フック状部材112,122,212は、先端がシールド92の網目に引っかかる形状であればよく、図示の形状には限定されない。また、フック状部材112,122,212は、先端がシールド92の網目に引っかかった状態で引っ張ったとき、先端がシールド92の網目から外れない程度の硬さを有することが望ましい。
【符号の説明】
【0021】
10,20 シールドほぐし具、11,12,21 摺動部、
111,121,211 面、112,122,212 フック状部材、
13 持ち手部、23 装着具、
71 親指、72 人差し指、
80 シールド線端部処理、81 絶縁被覆切断処理、82 絶縁被覆除去処理、
83 シールドほぐし処理、
90 シールド線、91 コア線、911 導体、912 絶縁体、92 シールド、
93 絶縁被覆、931 切れ目