(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記光出射部が、前記第1の導光部材から出射した測定光の反射または屈折により前記出射端面における光軸を傾けている光学部材を有する請求項3または4に記載の光音響計測用プローブ。
前記光出射部が、前記第1の導光部材から出射した測定光の反射または屈折により前記出射端面における光軸を傾けている光学部材を有する請求項12または13に記載の光音響計測装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、本願発明者らは、上記のような導光部材と振動子アレイが並設されたプローブを使用した場合、測定光が入射する被検体の表面部分で生じた光音響波が、被検体表面を伝って他の信号と一緒に振動子アレイにより検出され、アーチファクト(虚像)の発生原因となることを見出した。このようなアーチファクトの存在は、計測対象からの光音響信号を観察する際の妨げになる場合もある。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、光音響計測において、信号観察の妨げになるようなアーチファクトの発生を抑制することを可能とする光音響計測用プローブおよびそれを備えた光音響計測装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の光音響計測用プローブは、
測定光を被検体に向けて出射させる光出射部と、
測定光の出射によって被検体内に生じた光音響波を検出する音響波検出部とを備え、
光出射部の出射端面が、プローブの当接平面よりも音響波検出部側に位置し、
上記出射端面における光軸が、音響波検出部の検出面の法線方向に対して音響波検出部が位置する側の反対側に傾いていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明において、「当接平面」とは、プローブの先端(つまり、被検体と接触するプローブ表面と音響波検出部の中心軸との交点)を通り音響波検出部の検出面に平行な平面を意味する。
【0009】
そして、本発明の光音響計測用プローブにおいて、上記出射端面における光軸は、測定光の反射および/または屈折により傾いていることが好ましい。
【0010】
また、本発明の光音響計測用プローブにおいて、音響波検出部は、複数の音響波検出素子からなる振動子アレイであり、光出射部は、振動子アレイのアレイ方向に沿って測定光の伝搬範囲を広げる第1の導光部材を含むことが好ましい。
【0011】
光出射部が第1の導光部材を含む場合において、第1の導光部材中の光軸は上記法線方向と平行であることが好ましい。
【0012】
また、上記出射端面における光軸は、第1の導光部材を出射する際の測定光の屈折により傾いている構成を採用することができる。
【0013】
或いは、本発明の光音響計測用プローブにおいて、光出射部は、第1の導光部材から出射した測定光の反射または屈折により上記出射端面における光軸を傾けている光学部材を有してもよい。
【0014】
また、第1の導光部材または上記光学部材によって上記光軸が傾いている場合において、光出射部は、光出射部の上記出射端面を有する第2の導光部材を含み、当該第2の導光部材は、測定光を拡散させる拡散部を有することが好ましい。
【0015】
或いは、本発明の光音響計測用プローブにおいて、光出射部が、光出射部の上記出射端面を有する第2の導光部材を含み、第2の導光部材の上記端面が、当該第2の導光部材を出射する際の測定光の屈折により上記出射端面における光軸を傾けている構成を採用することもできる。この場合、第2の導光部材は、測定光を拡散させる拡散部を有することが好ましい。
【0016】
本発明の光音響計測装置は、
測定光を被検体に向けて出射させる光出射部と、測定光の出射によって被検体内に生じた光音響波を検出する音響波検出部とを有するプローブ、および
音響波検出部により検出された光音響波に基づいて光音響信号を処理する信号処理部を備え、
光出射部の出射端面が、プローブの当接平面よりも音響波検出部側に位置し、
上記出射端面における光軸が、音響波検出部の検出面の法線方向に対して音響波検出部が位置する側の反対側に傾いていることを特徴とするものである。
【0017】
そして、本発明の光音響計測装置において、上記出射端面における光軸は、測定光の反射および/または屈折により傾いていることが好ましい。
【0018】
また、本発明の光音響計測装置において、音響波検出部は、複数の音響波検出素子からなる振動子アレイであり、光出射部は、振動子アレイのアレイ方向に沿って測定光の伝搬範囲を広げる第1の導光部材を含むことが好ましい。
【0019】
光出射部が第1の導光部材を含む場合において、第1の導光部材中の光軸は上記法線方向と平行であることが好ましい。
【0020】
また、上記出射端面における光軸は、第1の導光部材を出射する際の測定光の屈折により傾いている構成を採用することができる。
【0021】
或いは、本発明の光音響計測装置において、光出射部は、第1の導光部材から出射した測定光の反射または屈折により上記出射端面における光軸を傾けている光学部材を有してもよい。
【0022】
また、第1の導光部材または上記光学部材によって上記光軸が傾いている場合において、光出射部は、光出射部の上記出射端面を有する第2の導光部材を含み、当該第2の導光部材は、測定光を拡散させる拡散部を有することが好ましい。
【0023】
或いは、本発明の光音響計測装置において、光出射部が、光出射部の上記出射端面を有する第2の導光部材を含み、第2の導光部材の上記端面が、当該第2の導光部材を出射する際の測定光の屈折により上記出射端面における光軸を傾けている構成を採用することもできる。この場合、第2の導光部材は、測定光を拡散させる拡散部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の光音響計測用プローブおよびそれを備えた光音響計測装置は、光出射部の出射端面が、プローブの当接平面よりも音響波検出部側に位置し、上記出射端面における光軸が、音響波検出部の検出面の法線方向に対して音響波検出部が位置する側の反対側に傾いているから、音響波検出部の直近の被検体の領域に出射される測定光の光量を抑制することができる。これにより、音響波検出部の直近の被検体の表面部分での光音響波の発生を抑制することができる。この結果、光音響計測において、信号観察の妨げになるようなアーチファクトの発生を抑制することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明するが、本発明はこれに限られるものではない。なお、視認しやすくするため、図面中の各構成要素の縮尺等は実際のものとは適宜異ならせてある。
【0027】
「第1の実施形態」
まず、第1の実施形態の光音響計測用プローブおよびそれを備えた光音響計測装置について説明する。
図1は本実施形態の光音響計測装置の構成を示す概略図であり、
図2はプローブの構成を示す概略図であり、
図2のaは正面から見たときの断面図およびbは側面から見たときの断面図である。
【0028】
本実施形態の光音響計測装置10は、例えば光音響信号に基づいて光音響画像を生成する光音響画像生成機能を有する。具体的には
図1に示されるように、本実施形態の光音響計測装置10は、プローブ(探触子)11、超音波ユニット12、レーザユニット13、表示部14および入力部15を備えている。
【0029】
<プローブ>
プローブ11は、被検体に向けて超音波を照射したり、被検体M内を伝搬する音響波Uを検出したりするものである。すなわち、プローブ11は、被検体Mに対する超音波の照射(送信)、および被検体Mから反射して戻って来た反射超音波(反射音響波)の検出(受信)を行うことができる。さらにプローブ11は、被検体M内の吸収体がレーザ光を吸収することにより被検体M内に発生した光音響波の検出も行うことができる。なお本明細書において、「音響波」とは超音波および光音響波を含む意味である。ここで、「超音波」とはプローブにより送信された弾性波およびその反射波を意味し、「光音響波」とは測定光の照射による光音響効果により被検体M内に発生した弾性波を意味する。また吸収体としては、例えば血管、金属部材等が挙げられる。
【0030】
本実施形態のプローブ11は、例えば
図1および
図2に示されるように、振動子アレイ20、複数の光ファイバ素線41aが束ねられたバンドルファイバ41、振動子アレイ20を挟むように配置された2つの光出射部42およびこれらを包含する筺体11aを備える。
【0031】
振動子アレイ20は、例えば一次元または二次元に配列された複数の超音波振動子(或いは音響波検出素子)から構成される。本実施形態において、振動子アレイ20または超音波振動子のそれぞれが、本発明の音響波検出部に相当する。超音波振動子は、例えば、圧電セラミクス、またはポリフッ化ビニリデン(PVDF)のような高分子フィルムから構成される圧電素子である。超音波振動子は、音響波Uを受信した場合にその受信信号を電気信号に変換する機能を有し、超音波振動子で発生した電気信号は後述する受信回路21に出力される。プローブ11は、セクタ走査対応、リニア走査対応、コンベックス走査対応等の中から撮像部位に応じて選択される。
【0032】
バンドルファイバ41は、レーザユニット13からのレーザ光を光出射部42にまで導く。バンドルファイバ41は、特に限定されず、石英ファイバ等の公知のものを使用することができる。バンドルファイバ41は、出射側において光ファイバ素線41aごとに分岐し、光出射部42に接続される。例えばプローブ11内に光源があり、測定光を光出射部に直接入射できる等の場合には、バンドルファイバ41は不要である。
【0033】
光出射部42は、バンドルファイバ41によって導光されたレーザ光を被検体Mに照射する部分である。
図1および
図2のbに示されるように、本実施形態では2つの光出射部42が、振動子アレイ20を挟んで対向するように、振動子アレイ20のエレベーション方向(振動子アレイのアレイ方向に垂直で検出面に平行な方向)の両側に配置されている。また、光出射部42は、
図2のbにおいて、振動子アレイ20の検出面を含む当接平面から上側(当接平面から見て振動子アレイ側)に離れて配置されている。これにより、光出射部から出射した測定光の伝搬距離を確保することができる。なお、出射端面の一部(例えば出射端面の角)が当接平面に接していても構わない。
【0034】
さらに、光出射部42の出射端には、光出射部42の内部の光軸と斜めに交わる出射端面42eが形成されており、測定光は当該出射端面42eを出射する際に屈折する。これにより、上記出射端面における光軸が、振動子アレイ20(音響波検出部)の検出面の法線方向に対して振動子アレイ20がある側の反対側に傾いた状態で、光出射部42から測定光Lが出射される。言い換えれば、
図3に示されるように、上記出射端面42eにおける光軸Laは、振動子アレイ20の検出面の法線方向Aを基準に、当該出射端面42eと光出射部42の内部の光軸との交点P0を中心にして振動子アレイ20がある側(以下、プローブの内側ともいう)の反対側(以下、プローブの外側ともいう)に所定の角度θだけ回転した位置にある。すなわち、出射端面における光軸が「傾いている」とは、プローブ11の側面視において、光軸が法線方向Aから点P0を中心に所定の角度θ(0°<θ<90°)だけ回転した位置にあることを指す。
図3では、振動子アレイ20の右側に配置された光出射部42の図示を省略しているが、右側の光出射部42についてはθを取る方向が逆になる、つまり右側の光出射部42については
図3の右方向に光軸が傾いている点に注意する。
【0035】
なお、本発明において「光軸」は、測定光のエネルギー伝送の観点から光路の代表となり得る線を考慮して規定する。例えば
図3に示されるように、光出射部42内の光軸としては、光出射部42の中心を通る線を採用することができる。また、例えば
図3に示されるように、上記出射端面42eにおける光軸Laとしては、当接平面S1上の測定光のエネルギープロファイルEPをガウス分布等で近似したときの分布の中心点P2と点P0とを結ぶ直線を採用することができる。
図3のaのように検出面になにも装着されていない場合には、振動子アレイ20の中心点P1をプローブの先端とし、当該点P1を通り検出面に平行な平面S1を当接平面とした。一方、例えば
図3のbのように音響レンズ等の音響部材19が検出面に装着されている場合には、音響部材19の先端部分P3をプローブの先端とし、当該部分P3に接し検出面に平行な平面S2を当接平面とする。また、本実施形態のように音響波検出部が複数の音響波検出素子から構成される場合には、少なくとも1つの音響波検出素子に関して側面視で断面を取ったときに、出射端面42eにおける光軸Laが、当該素子の検出面の法線方向に対して外側に傾いていればよい。なお、コンベックス型プローブのように振動子アレイが円弧状である場合には、各素子の検出面に垂直な断面をとる。
【0036】
光出射部42としては例えば導光板を使用することができる。導光板は、例えば樹脂やや石英からなる板の表面に特殊な加工を施して、一方の端面から入れた光を他方の端面から均一に面発光させる板である。樹脂としては、例えばアクリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリオレフィン、紫外線硬化性樹脂または熱硬化性樹脂を使用することができる。振動子アレイ20の両側の被検体表面を均一に照明するため、導光板は例えば先太りのテーパ形状を有し、振動子アレイ20のアレイ方向の幅と導光板の最大幅は同程度の長さであることが好ましい。これにより測定光の伝搬範囲を振動子アレイ20のアレイ方向にわたって広げることができる。また導光板の光軸方向の最大長さは10〜40mmであることが好ましい。
【0037】
<レーザユニット>
レーザユニット13は、例えばレーザ光を発するQスイッチ固体レーザ型の光源を有し、被検体Mに照射する測定光Lとしてレーザ光を出力する。レーザユニット13は、例えば、超音波ユニット12の制御部34からのトリガ信号を受けてレーザ光を出力するように構成されている。レーザユニット13は、レーザ光として1〜100nsecのパルス幅を有するパルス光を出力するものであることが好ましい。例えば本実施形態では、レーザユニット13の光源はQスイッチアレキサンドライトレーザである。
【0038】
レーザ光の波長は、計測の対象となる被検体内の吸収体の光吸収特性によって適宜決定される。例えば計測対象が生体内のヘモグロビンである場合(つまり、血管を撮像する場合)には、一般的にはその波長は近赤外波長域に属する波長であることが好ましい。近赤外波長域とはおよそ700〜850nmの波長域を意味する。しかしながら、レーザ光の波長は当然これに限られるものではない。また、レーザ光は、単波長でもよいし、複数の波長(例えば750nmおよび800nm)を含んでもよい。さらに、レーザ光が複数の波長を含む場合には、これらの波長の光は、同時に被検体Mに照射されてもよいし、交互に切り替えられながら照射されてもよい。レーザユニット13は、アレキサンドライトレーザの他、同様に近赤外波長域のレーザ光を出力可能なYAG−SHG−OPOレーザやTi−Sapphireレーザとすることもできる。
【0039】
<超音波ユニット>
超音波ユニット12は、受信回路21、AD変換部22、受信メモリ23、光音響画像生成部24、表示制御部30および制御部34を有する。超音波ユニット12が本発明における信号処理部に相当する。
【0040】
制御部34は、光音響計測装置10の各部を制御するものであり、本実施形態ではトリガ制御回路(図示省略)を備える。トリガ制御回路は、例えば光音響計測装置の起動の際に、レーザユニット13に光トリガ信号を送る。これによりレーザユニット13で、フラッシュランプが点灯し、レーザロッドの励起が開始される。そして、レーザロッドの励起状態は維持され、レーザユニット13はパルスレーザ光を出力可能な状態となる。
【0041】
そして、制御部34は、その後トリガ制御回路からレーザユニット13へQswトリガ信号を送信する。つまり、制御部34は、このQswトリガ信号によってレーザユニット13からのパルスレーザ光の出力タイミングを制御している。また本実施形態では、制御部34は、Qswトリガ信号の送信と同時にサンプリングトリガ信号をAD変換部22に送信する。サンプリングトリガ信号は、AD変換部22における光音響信号のサンプリングの開始タイミングの合図となる。このように、サンプリングトリガ信号を使用することにより、レーザ光の出力と同期して光音響信号をサンプリングすることが可能となる。
【0042】
受信回路21は、プローブ11で検出された光音響信号を受信する。受信回路21で受信された光音響信号はAD変換部22に送信される。
【0043】
AD変換部22は、受信回路21が受信した光音響信号をサンプリングしてデジタル信号に変換する。AD変換部22は、例えば外部から入力する所定周波数のADクロック信号に基づいて、所定のサンプリング周期で受信した光音響信号をサンプリングする。
【0044】
受信メモリ23は、AD変換部22でサンプリングされた光音響信号を記憶する。そして、受信メモリ23は、プローブ11によって検出された光音響信号のデータを光音響画像生成部24に出力する。
【0045】
光音響画像生成部24は、例えば受信メモリ23に格納された上記光音響データを、超音波振動子の位置に応じた遅延時間で互いに加算して1ライン分のデータを再構成し、各ラインの光音響データに基づいて断層画像(光音響画像)のデータを生成する。なお、この光音響画像生成部24は、遅延加算法に代えて、CBP法(Circular Back Projection)により再構成を行うものでもよい。光音響画像生成部24は、上記のようにして生成された光音響画像のデータを表示制御部30に出力する。
【0046】
表示制御部30は、表示処理部25によって所定の表示処理が施された光音響画像データに基づいて、光音響画像をディスプレイ装置等の表示部14に表示させる。表示制御部30は、プローブ11が二次元配列した振動子アレイを有することまたはプローブ走査により、複数の光音響画像が取得された場合には、例えば、それらの光音響画像に基づいてボリュームデータを作成し、三次元画像として合成画像を表示部14に表示させることもできる。
【0047】
入力部15は、ユーザーが光音響計測の条件等を入力するためのものである。
【0048】
以下、本実施形態のプローブ11および光音響計測装置10の効果を説明する。本願発明者らは、光出射部と音響波検出部が並設されたプローブを使用した場合、測定光が入射する被検体の表面部分で生じた光音響波が、被検体表面を伝って他の信号と一緒に音響波検出部により検出され、アーチファクト(虚像)の発生原因となることを見出した。例えば
図4は、血管Vから生じた光音響波と、測定光が入射する被検体表面で生じた光音響波とが検出される様子を示す概略図である。測定光Lを被検体Mに照射した際、理想的には血管Vからの光音響波U1のみを検出したいのであるが、実際には測定光Lが入射する被検体表面部分35で発生した光音響波U2が入り込む。この光音響波U2がアーチファクトの原因となる。光音響波U2が発生してから検出されるまでの時間は、測定光Lの当接平面上の照明領域と音響波検出部との間隔に依存する。つまり、この間隔が大きい程、光音響波U2が被検体中を伝わる距離が長いため、光音響波U2が発生してから検出されるまでの時間は長くなる。
【0049】
そして、光音響波U2が発生してから検出されるまでの時間は、光音響画像中のアーチファクトの現れる範囲に影響する。
図5は、光出射部42(導光板)と振動子アレイ20との間隔W1に依存して、観察領域R1(血管等の計測対象からの信号が識別可能で、主に観察の対象となる領域)およびアーチファクト領域R2の大きさの変化を示す図である。具体的には、
図5のa〜dは、被検体表面で生じた光音響波U2に起因してアーチファクト領域R2が発生した光音響画像Pを示す図である。また、
図5のeおよびfはそれぞれ、
図5のaおよびdの光音響画像Pを生成した時の光出射部42と振動子アレイ20の位置関係を示す概略図である。
図5から、光出射部42と振動子アレイ20との間隔W1(すなわち、測定光Lの当接平面上の照明領域と音響波検出部との間隔)が大きい程、観察領域R1およびアーチファクト領域R2の境界Bが下がることが分かる。これは、光音響画像Pの上下方向は、時間軸に相当し、光出射部42と振動子アレイ20との間隔W1が大きい程、光音響波U2の信号が入り込む時間が遅くなるためである。
【0050】
そこで、本発明では、出射端面42eにおける光軸Laを、プローブの外側に傾けることにより、音響波検出部直近の被検体の領域W2(
図3)に出射される測定光の光量を抑制している。これにより、領域W2で発生する光音響波が減少し、光音響画像中に観察領域R1を確保することができる。測定光Lの当接平面上の照明領域と音響波検出部との間隔は、確保したい観察領域R1の深さに応じて適宜設定される。ただし、当該間隔を広くし過ぎると、深い領域までアーチファクトの発生を抑制することはできるが、音響波検出部直下の領域に充分な光量が届かず、本来検出したい光音響波の信号強度も低下してしまう。したがって、上記間隔は、およそ3〜20mmであることが好ましく、10〜15mmであることが特に好ましい。そして、光出射部42の出射端面42eにおける光軸の傾きは、上記間隔が上記範囲を満たす範囲で設定されることが好ましい。
【0051】
以上のように、本実施形態の光音響計測用プローブおよびそれを備えた光音響計測装置は、光出射部の出射端面が、プローブの当接平面よりも音響波検出部側にあり、上記出射端面における光軸が、音響波検出部の検出面の法線方向に対して音響波検出部がある側の反対側に傾いているから、音響波検出部の直近の被検体の領域に出射される測定光の光量を抑制することができる。この結果、光音響計測において、信号観察の妨げになるようなアーチファクトの発生を抑制することが可能となる。
【0052】
<設計変更>
上記第1の実施形態では、光出射部42が1つの導光部材から構成される場合について説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、
図6から
図9は、光出射部42の他の構成例を示す概略図である。
【0053】
図6の光出射部42は、第1の導光部材43および第2の導光部材44から構成されており、光ファイバによって導光された測定光は第1の導光部材43および第2の導光部材44の順に透過するように導光される。第1の導光部材43は、第1の導光部材43の内部の光軸Laが検出面の法線方向Aと平行となる状態で設けられ、第2の導光部材44は、その出射端面43eが当接平面S1から離れる状態で設けられている。ここで、「平行」とは、完全な平行のみならず±10°の範囲で傾いた配置も含む意味である。第1の導光部材43の出射端には、第1の導光部材43の内部の光軸Laと斜めに交わる出射端面43eが形成されており、測定光は当該出射端面43eを出射する際に屈折する。これにより、出射端面43eにおける光軸Laがプローブ11の外側に傾くように構成されている。第2の導光部材44は、第1の導光部材43から出射した測定光を受け、その測定光の入射時の光軸の向きを維持しながら測定光を被検体へ向けて出射端面44eから出射させる。つまり、本構成例の場合には、第2の導光部材44の出射端面44eが、本発明における光出射部42の出射端面に相当し、この出射端面44eにおける光軸Laの所定の傾きは、第1の導光部材43の出射端面43eにおける屈折により実現されている。第1の導光部材の最大長さは10〜40mmであることが好ましく、第2の導光部材の最大長さは2〜5mmであることが好ましい。第1の導光部材43を長くすることにより、例えば測定光を拡散させる前に、測定光のアレイ方向の広がりをより促進できる。また、第2の導光部材44の入射端には、測定光を拡散させる拡散部44aが設けられており、これにより測定光による照明の均一性がさらに向上する。拡散部44aは、例えば表面に多数の微小レンズが設けられた拡散板を設置したり、多数の散乱性微粒子を内包する層を形成したりすることで形成可能である。なお、拡散部44aを設ける位置は、特に限定されず、第2の導光部材の中間部分や出射端に形成してもよいが、拡散した測定光の伝搬距離を確保して照明の均一性を向上させる観点から、入射端であることが好ましい。
【0054】
また、
図7のaの光出射部42は、第1の導光部材43およびプリズム部材45から構成されており、光ファイバによって導光された測定光は第1の導光部材43およびプリズム部材45の順に透過するように導光される。プリズム部材45は、その出射端面45eが当接平面S1から離れる状態で配置されており、第1の導光部材43の配置や長さについては
図6の場合と同様である。第1の導光部材43から出射した測定光はプリズム部材45を通過する際に屈折して、プリズム部材45の出射端面45eにおける光軸Laがプローブ11の外側に傾くように構成されている。つまり、本構成例の場合には、プリズム部材45の出射端面45eが、本発明における光出射部42の出射端面に相当し、この出射端面45eにおける光軸Laの所定の傾きは、当該プリズム部材45における屈折により実現されている。
図7のbの光出射部42は、
図7のaの構成に加えて、プリズム部材の後に第2の導光部材44が追加されたものである。第2の導光部材44については
図6の場合と同様である。また、
図7のcの光出射部42は、
図7のaの構成中のプリズム部材45に代えて反射部材46(例えば反射膜やミラー)が設けられたものであり、光ファイバによって導光された測定光は第1の導光部材43を透過した後、反射部材46によって反射される。第1の導光部材43から出射した測定光は反射部材46で反射して、反射部材46の反射面46sにおける光軸Laがプローブ11の外側に傾くように構成されている。つまり、本構成例の場合には、反射部材46の出射端面46sが、本発明における光出射部42の出射端面に相当し、この出射端面46sにおける光軸Laの所定の傾きは、当該反射部材46における反射により実現されている。なお、
図7のcの構成に第2の導光部材44を設けることも可能である。
【0055】
また、
図8のaの光出射部42も、第1の導光部材43および第2の導光部材44から構成されており、光ファイバによって導光された測定光は、同一直線上に配置された第1の導光部材43および第2の導光部材44の順に透過するように導光される。
図8の光出射部42の構成は、第1の導光部材43ではなく、第2の導光部材44の出射端面44eが斜め加工されている点で、
図6の場合の構成と異なる。したがって、測定光は第2の導光部材から出射する際に出射端面44eで屈折して、出射端面44eにおける光軸Laがプローブ11の外側に傾くように構成されている。つまり、本構成例の場合には、第2の導光部材44の出射端面44eが、本発明における光出射部42の出射端面に相当し、この出射端面44eにおける光軸Laの所定の傾きは、当該出射端面44eにおける屈折により実現されている。
図8のbの光出射部42は、
図8のaの構成において、第2の導光部材44中の拡散部44aが追加されたものである。拡散部44aについては
図6の場合と同様である。
【0056】
図6から
図8の構成例では、第1の導光部材43の内部の光軸Laが検出面の法線方向Aと平行となる状態で第1の導光部材43が設けられているためプローブの小型化に向いている点、および、第1の導光部材43を用いているため照明の均一性がよい点等の利点がある。特に、
図6または
図8で示したように、第1の導光部材43および第2の導光部材44の少なくとも一方に光軸に対する傾斜面(例えば出射端面43eまたは44e)が形成された場合には、光軸を傾けるための光学部材(例えば
図7のbのプリズム部材)が不要なため、部材の配置調整が容易となる利点もある。また、光軸に対する傾斜面は、第1の導光部材43および第2の導光部材44の両方の出射端に形成してもよい。この場合には、各出射端面での測定光の段階的な屈折により、光出射部の出射端面における光軸の目標とする傾きが実現される。
【0057】
さらに、
図6から
図8の構成例では、第1の導光部材43の内部の光軸Laが法線方向Aと平行となる場合について説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、
図9のaの光出射部42は、内部の光軸Laがプローブの内側に傾いている状態の第1の導光部材43、反射部材46および第2の導光部材44から構成される。測定光が反射部材46で反射することで、反射面における光軸Laがプローブ11の外側に傾くように構成されている。本構成例では、低コストの部材を使用することができる点、および、第1の導光部材43を斜めに配置することから比較的長い第1の導光部材を使用できるため照明の均一性がよい点等の利点がある。また、
図9のbの光出射部42は、第1の導光部材43および第2の導光部材44から構成され、第1の導光部材43を斜めに加工して面を形成し、この面で内部を伝搬する測定光を反射させるように構成したものである。本構成例では、
図9のaの光出射部42に比べて部品点数が少なくなり部材の配置調整が容易になる点、および、第1の導光部材43を斜めに配置することから
図6から
図8の光出射部42に比べて比較的長い第1の導光部材を使用できるため照明の均一性がよい点等の利点がある。
【0058】
また、本発明は、光出射部42によって所定の傾きの光軸を実現する場合に限られない。例えば
図10に示すように、光ファイバ41aの配置を調整して光出射部42に入射する前に、測定光の光軸を所定の傾きに調整していてもよい。
【0059】
「第2の実施形態」
次に、第2の実施形態の光音響計測用プローブおよびそれを備えた光音響計測装置について説明する。
図11は本実施形態の光音響計測装置の構成を示す概略図である。本実施形態は、光音響画像に加えて超音波画像も生成する点で、第1の実施形態と異なる。したがって、第1の実施形態と同様の構成要素についての詳細な説明は、特に必要がない限り省略する。
【0060】
本実施形態の光音響計測装置10は、
図11に示されるように、プローブ11、超音波ユニット12、レーザユニット13、表示部14および入力部15を備えている。
【0061】
<超音波ユニット>
本実施形態の超音波ユニット12は、
図1に示す光音響計測装置の構成に加えて、超音波画像生成部29および送信制御回路33を備える。
【0062】
本実施形態では、プローブ11は、光音響信号の検出に加えて、被検体に対する超音波の出力(送信)、及び送信した超音波に対する被検体からの反射超音波(反射音響波)の検出(受信)を行う。超音波の送受信を行う超音波振動子としては、本発明における振動子アレイ20を使用してもよいし、超音波の送受信用に別途プローブ11中に設けられた新たな超音波振動子を使用してもよい。また、超音波の送受信は分離してもよい。例えばプローブ11とは異なる位置から超音波の送信を行い、その送信された超音波に対する反射超音波をプローブ11で受信してもよい。
【0063】
制御部34は、超音波画像の生成時は、送信制御回路33に超音波送信を指示する旨の超音波送信トリガ信号を送る。送信制御回路33は、このトリガ信号を受けると、プローブ11から超音波を送信させる。プローブ11は、超音波の送信後、被検体からの反射超音波を検出する。
【0064】
プローブ11が検出した反射超音波は、受信回路21を介してAD変換部22に入力される。制御部34は、超音波送信のタイミングに合わせてAD変換部22にサンプリグトリガ信号を送り、反射超音波のサンプリングを開始させる。AD変換部22は、反射超音波のサンプリング信号を受信メモリ23に格納する。光音響信号のサンプリングと、反射超音波のサンプリングとは、どちらを先に行ってもよい。
【0065】
超音波画像生成部29は、プローブ11の振動子アレイ20で検出された反射超音波(そのサンプリング信号)に基づいて、再構成処理、検波処理および対数変換処理等の信号処理を施して、超音波画像のデータを生成する。画像データの生成には、光音響画像生成部24における画像データの生成と同様に、遅延加算法などを用いることができる。
【0066】
表示制御部30は、例えば、光音響画像と超音波画像とを別々に、またはこれらの合成画像を表示部14に表示させる。表示制御部30は、例えば光音響画像と超音波画像とを重畳することで画像合成を行う。
【0067】
本実施形態では、光音響計測装置は、光音響画像に加えて超音波画像を生成する。したがって、第2の実施形態の効果に加えて、超音波画像を参照することで、光音響画像では画像化することができない部分を観察することができる。