(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
回転軸を中心に回転する回転磁石が前記回転軸方向において位置する範囲内に設けられた、第1ホール素子と第2ホール素子とを有する第1ホール素子対および第3ホール素子と、
前記第1ホール素子対および前記第3ホール素子の上方に配置された磁気収束板と、
前記第1ホール素子対の出力信号に基づいて、前記回転磁石の回転角を算出する回転角算出部と、
前記第3ホール素子の出力信号に基づいて、前記回転磁石の前記回転軸方向のずれを検出する検出部と、
を備える非接触回転角センサ。
前記検出部は、前記第3ホール素子と前記第4ホール素子の出力信号とを比較し、比較結果に基づき前記回転軸方向のずれを検出する請求項3から5のいずれか一項に記載の非接触回転角センサ。
前記検出部は、前記第3ホール素子および前記第4ホール素子のうち一方の出力信号にオフセットを加えた信号と他方の出力信号とを比較して、前記回転軸方向のずれを検出する請求項6に記載の非接触回転角センサ。
前記検出部は、検出した前記回転軸方向のずれが予め定められた値を超えた場合に、前記回転磁石が故障したことを判断する請求項3から8のいずれか一項に記載の非接触回転角センサ。
前記回転磁石の前記回転軸方向は、前記第2ホール素子対が配置される前記第2方向を前記第1方向および前記第2方向と垂直な第3方向にずらした方向と一致する請求項3から10のいずれか一項に記載の非接触回転角センサ。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0008】
図1は、本実施形態に係る回転角センサ100の構成例をICチップ10と共に示す。ICチップ10は、シリコン等の半導体によって形成される回路および素子等を含む。
図1において、ICチップ10の一方の表面を、X軸およびY軸を有するXY面とし、XY面に垂直な軸をZ軸とした。即ち、X、Y、Z軸は互いに直交する座標系である。ICチップ10は、端子12を備え、外部の基板、回路、および配線等と電気的に接続される。
【0009】
回転角センサ100は、回転軸を中心に回転する回転磁石の回転角を非接触で検出する。また、回転角センサ100は、回転磁石が回転軸方向にずれた場合のずれ量を検出する。回転角センサ100は、第1ホール素子対110と、第2ホール素子対120と、磁気収束板130と、ホール起電力算出部140と、回転角算出部150と、検出部160とを備える。
【0010】
第1ホール素子対110は、ICチップ10上に形成され、当該ICチップに形成された回路等と接続される。第1ホール素子対110は、一例として、第1方向に配置される。ここで、本実施形態における第1方向は、
図1におけるX軸方向である。第1ホール素子対110は、第1ホール素子112と第2ホール素子114とを有し、X軸に平行に(例えばX軸上に)当該2つのホール素子が配置される。
【0011】
第1ホール素子112および第2ホール素子114は、一例として、X軸方向に電流を流すとZ軸方向に入力する磁場に応じたY軸方向の起電力(ホール効果)を発生させる素子である。第1ホール素子112および第2ホール素子114は、半導体等で形成されてよい。
【0012】
第1ホール素子112および第2ホール素子114は、一例として、ICチップ10上において、Y軸に対して線対称に配置される。これに代えて、第1ホール素子112および第2ホール素子114は、原点に対して点対称に配置されてもよい。本実施例において、第1ホール素子112および第2ホール素子114がY軸に対して線対称に配置される例を説明する。
【0013】
第2ホール素子対120は、第1ホール素子対110と同様に、ICチップ10上に形成され、当該ICチップに形成された回路等と接続される。第2ホール素子対120は、一例として、第2方向に配置される。ここで、本実施形態における第2方向は、
図1におけるY軸方向である。また、第3方向は、
図1におけるZ軸方向である。第2ホール素子対120は、第3ホール素子122と第4ホール素子124とを有し、Y軸に平行に(例えばY軸上に)当該2つのホール素子が配置される。
【0014】
第3ホール素子122および第4ホール素子124は、一例として、Y軸方向に電流を流すとZ軸方向に入力する磁場に応じたX軸方向の起電力(ホール効果)を生じさせる素子である。第3ホール素子122および第4ホール素子124は、一例として、ICチップ10上において、X軸に対して線対称に配置される。これに代えて、第3ホール素子122および第4ホール素子124は、原点に対して点対称に配置されてもよい。本実施例において、第3ホール素子122および第4ホール素子124がX軸に対して線対称に配置される例を説明する。
【0015】
磁気収束板130は、第1ホール素子対110および第2ホール素子対120の上方に配置され、回転角センサ100に入力する磁場を曲げる。磁気収束板130は、磁性材料等で形成され、例えば、X軸方向および/またはY軸方向の磁場を、Z軸方向の成分が発生するように曲げ、Z軸方向に感度を有する第1ホール素子対110および第2ホール素子対120に入力させる。磁気収束板130は、ICチップ10の上面に形成されてよく、これに代えて、ICチップ10の上方に、絶縁層等を介して形成されてもよい。
【0016】
ホール起電力算出部140は、第1ホール素子対110および第2ホール素子対120に接続され、ホール素子からの出力信号に基づき、ホール起電力を算出する。ホール起電力算出部140は、第1ホール素子対110および第2ホール素子対120から受け取った出力信号をホール起電力信号に変換して、回転角算出部150および検出部160にそれぞれ供給する。
【0017】
回転角算出部150は、ホール起電力算出部140に接続され、第1ホール素子対110の出力信号に基づいて、回転磁石の回転角を算出する。また、検出部160は、ホール起電力算出部140に接続され、第2ホール素子対120の出力信号に基づいて、回転磁石の回転軸方向のずれを検出する。回転角センサ100が、回転磁石の回転角を算出する動作および回転軸方向のずれを検出する動作については、後述する。
【0018】
以上の本実施形態の回転角センサ100は、
図1において、ホール起電力算出部140、回転角算出部150、および検出部160がICチップ10に接続される例を示した。これに代えて、回転角センサ100は、ホール起電力算出部140、回転角算出部150、および検出部160がICチップ10の内部に設けられてもよい。この場合、回転角センサ100は、回転磁石の磁場を検出するセンサを備え、検出した磁場に基づき回転磁石の回転角および回転磁石の回転軸からのずれを出力するICチップ10となる。
【0019】
図2は、本実施形態に係る第1ホール素子対110が第1方向の磁界を検出する場合の一例を示す。
図2において、水平方向(紙面の横方向)をX軸、垂直方向(紙面の縦方向)をZ軸方向とする。
【0020】
ここで、回転角センサ100に入力する磁場ベクトルH(H
X,H
Y,H
Z)が、磁気収束板130で曲げられ、第1ホール素子112に入力する磁束密度ベクトルB(Hall,X1)は、第1ホール素子112の位置における透磁率Mu(Hall,X1)を用いて、次式で示される。ここで、透磁率Mu(Hall,X1)は、2階のテンソル(3行3列の行列)となる。
【数1】
【0021】
同様に、第2ホール素子114に入力する磁束密度ベクトルB(Hall,X2)は、第2ホール素子114の位置における透磁率Mu(Hall,X2)を用いて、次式で示される。
【数2】
【0022】
第1ホール素子112および第2ホール素子114は、Z軸方向の磁場を検出する。したがって、第1ホール素子112および第2ホール素子114は、次式で示すように、磁気収束板130で曲げられたZ軸方向の磁束密度B
Zを検出することになる。
【数3】
【0023】
ここで、
図2に示すように、回転角センサ100の上方に−X軸方向の磁場ベクトルH
in(H
X,0,0)が入力する例を説明する。磁気収束板130は、一例として、図中の磁束密度ベクトルBのように、入力した磁場を曲げ、第1ホール素子112に+Z軸方向の磁束を入力させる。
【0024】
また、磁性材料等で形成された磁気収束板130の透磁率は、空気の透磁率と比較して値が高くなるので、空気中の磁束密度と比較して、当該磁気収束板130内の磁束密度は高くなる。例えば、第1ホール素子112の位置におけるZ軸方向の磁束密度は、次式で示すように、入力磁場H
Zに空気の透磁率μを乗じて得られる磁束密度に比較して、略1.4倍程度高くなる。
【数4】
【0025】
同様に、磁気収束板130は、一例として、第2ホール素子114に−Z軸方向の磁束を発生させ、第2ホール素子114の位置におけるZ軸方向の磁束密度は、次式で示される。
【数5】
【0026】
第1ホール素子112および第2ホール素子114は、このようにZ軸方向に入力する磁束密度に応じて、ホール起電力を発生させる。ここで、第1ホール素子112および第2ホール素子114が略同一形状、略同一材料で形成される場合、それぞれの磁気感度は略等しくなる。また、第1ホール素子112および第2ホール素子114に入力する磁束密度は互いに逆向きとなるので、発生するそれぞれのホール起電力は正負の符号が異なる。
【0027】
そこで、当該磁気感度をSとすると、第1ホール素子対110のホール起電力信号V
Xを、第1ホール素子112のホール起電力V
sig(Hall,X1)および第2ホール素子114のホール起電力V
sig(Hall,X2)の差分である次式のように定めることができる。
【数6】
【0028】
これによって、回転角センサ100は、ホール起電力信号V
Xを算出することで、X軸方向に入力される磁場ベクトルH
in(H
X,0,0)に応じたホール起電力を算出することができる。また、ホール起電力信号V
Xを、各ホール素子のホール起電力の差分としたので、第1ホール素子112および第2ホール素子114に同一方向(+Z軸方向または−Z軸方向)で、かつ、絶対値が略同一の磁場によって生じるホール起電力は、相殺されて略零となる。
【0029】
即ち、回転角センサ100は、ホール起電力信号V
Xを算出することで、XZ面に平行な方向の磁場ベクトルH
XZ(H
X,0,H
Z)が入力しても、X軸方向の磁場ベクトルの成分H
X(H
X,0,0)に応じたホール起電力を算出することができる。また、第1ホール素子112および第2ホール素子114は、Y軸方向の磁場には感度がなく、また、磁気収束板130は、理想的にはY軸方向の磁場をZ軸方向には変換しない。したがって、回転角センサ100は、ホール起電力信号V
Xを算出することで、直交する3つの各成分が零ではない(任意の方向の)磁場ベクトルH
XYZ(H
X,H
Y,H
Z)が入力しても、X軸方向の磁場ベクトルの成分H
X(H
X,0,0)に応じたホール起電力を検出することができる。
【0030】
以上のように、X軸方向に配列した第1ホール素子対110によるX軸方向の磁場の算出と同様に、Y軸方向に配列した第2ホール素子対120は、Y軸方向の磁場を算出することができる。即ち、回転角センサ100は、第2ホール素子対120を用いて、次式のホール起電力信号V
Yを算出することで、磁場ベクトルH
XYZ(H
X,H
Y,H
Z)が入力しても、Y軸方向の磁場ベクトルの成分H
Y(0,H
Y,0)に応じたホール起電力を算出することができる。
【数7】
【0031】
図3は、本実施形態に係る第1ホール素子対110が第3方向の磁界を検出する場合の一例を示す。
図3は、
図2と同様に、水平方向をX軸、垂直方向をZ軸方向とする。
【0032】
図3は、回転角センサ100に+Z軸方向の磁場ベクトルH
in(0,0,H
Z)が入力する例を説明する。磁気収束板130は、一例として、図中の磁束密度ベクトルBのように、入力した磁場を曲げ、第1ホール素子112に+Z軸方向の磁束を入力させる。
【0033】
磁気収束板130がZ軸方向の入力磁場を収束させて、第1ホール素子112および第2ホール素子114のそれぞれの位置におけるZ軸方向に入力させる磁束密度は、一例として、次式に示すように、入力磁場H
Zに空気の透磁率μを乗じて得られる磁束密度に比較して、略1.1倍程度高くなる。即ち、本実施例の磁気収束板130は、X軸方向およびY軸方向の磁気収束効果がそれぞれ異なる値となる例を説明する。
【数8】
【0034】
第1ホール素子112および第2ホール素子114は、Z軸方向に入力する磁束密度に応じて、ホール起電力が発生する。また、第1ホール素子112および第2ホール素子114に入力する磁束密度は同一方向となるので、発生するそれぞれのホール起電力の符号も同一となる。そこで、第1ホール素子対110のホール起電力信号V
Zを、第1ホール素子112のホール起電力V
sig(Hall,X1)および第2ホール素子114のホール起電力V
sig(Hall,X2)の和である次式のように定めることができる。
【数9】
【0035】
これによって、回転角センサ100は、ホール起電力信号V
Zを算出することで、Z軸方向に入力される磁場ベクトルH
in(0,0,H
Z)に応じたホール起電力を算出することができる。また、ホール起電力信号V
Zを、各ホール素子のホール起電力の和としたので、第1ホール素子112および第2ホール素子114に互いに逆向きに入力され、かつ、絶対値が略同一の磁場によって生じるホール起電力は、相殺されて略零となる。
【0036】
即ち、
図2で説明したように、回転角センサ100にX軸方向の磁界が入力された場合、磁気収束板130が第1ホール素子112および第2ホール素子114に互いに逆向きの磁束を入力させるので、発生するホール起電力は相殺されて略零となる。したがって、回転角センサ100は、ホール起電力信号V
Zを算出することで、XZ面に平行な方向の磁場ベクトルH
XZ(H
X,0,H
Z)が入力しても、Z軸方向の磁場ベクトルの成分H
Z(0,0,H
Z)に応じたホール起電力を算出することができる。
【0037】
また、第1ホール素子112および第2ホール素子114は、Y軸方向の磁場には感度がなく、また、磁気収束板130は、理想的にはY軸方向の磁場をZ軸方向には変換しない。したがって、回転角センサ100は、ホール起電力信号V
Zを算出することで、直交する3つの各成分が零ではない(任意の方向の)磁場ベクトルH
XYZ(H
X,H
Y,H
Z)が入力しても、Z軸方向の磁場ベクトルの成分H
Z(0,0,H
Z)に応じたホール起電力を算出することができる。
【0038】
以上のように、回転角センサ100は、第1ホール素子対110の出力信号に基づき、入力する磁場ベクトルH
XYZ(H
X,H
Y,H
Z)のX軸成分H
X(H
X,0,0)およびZ軸成分H
Z(0,0,H
Z)に対応するホール起電力信号V
XおよびV
Zを算出する。即ち、回転角センサ100は、XZ面と水平な方向の磁場に対応する起電力を、X軸成分およびZ軸成分に分解して算出することができる。したがって、回転角センサ100は、例えば、回転軸をY軸と平行にした回転磁石の、XZ面と平行な面における回転による磁場を検出して回転角を算出することができる。回転磁石の磁場の検出については、後述する。
【0039】
以上のように、X軸方向に配列した第1ホール素子対110によるZ軸方向の磁場の検出と同様に、Y軸方向に配列した第2ホール素子対120は、Z軸方向の磁場を検出することもできる。また、第2ホール素子対120は、Y軸方向の磁場ベクトルの成分H
Y(0,H
Y,0)を検出することができるので、回転角センサ100は、第1ホール素子対110および第2ホール素子対120を用いることで、XYZ軸の三次元の磁場を検出する磁気センサとなる。ここで、回転角センサ100は、第1ホール素子対110を用いてX軸成分H
Xを算出し、第2ホール素子対120を用いてY軸成分H
YおよびZ軸成分H
Zを算出してもよい。
【0040】
以上の本実施形態の回転角センサ100は、Y軸方向に配列した第2ホール素子対120を備え、磁場ベクトルのY成分を算出することを説明した。これに代えて、回転角センサ100は、第1ホール素子対110および第3ホール素子122を備え、3つのホール素子の出力から、三次元の磁場を検出してもよい。
【0041】
即ち、回転角センサ100は、第1ホール素子対110を用いて、磁場ベクトルH
XYZのX軸成分H
XおよびZ軸成分H
Zを取得し、第3ホール素子122からYZ軸成分H
YZ(0,H
Y,H
Z)を取得することができる。ここで、第3ホール素子122の出力は、Y軸成分H
YとZ軸成分H
Zの合成であるから、第1ホール素子対110によって得られるZ軸成分H
Zを用いて、Y軸成分H
Yを算出することができる。このように、回転角センサ100は、第2ホール素子対120に代えて、1つのホール素子を備える構成にしても、三次元の磁場を検出することができる。
【0042】
図4は、本実施形態に係る回転角センサ100が回転磁石30の回転角を検出する構成例を示す。
図4において、回転角センサ100が基板20に実装された例を示す。基板20は、一例として、電子部品等が固定されて配線されるプリント基板であり、ホール起電力算出部140、回転角算出部150、および検出部160がICチップ10内部に形成されない場合、当該プリント基板上に各部が実装されてもよい。基板20は、ICチップ10の端子12とボンディング等によって、ICチップ10内部の回路と電気的に接続されてよい。
【0043】
回転磁石30は、Y軸方向と平行な回転軸32を中心に回転する。また、回転磁石30は、一例として、円柱状に形成され、N極およびS極が当該円柱のXZ断面において半円形状の例を説明する。
【0044】
ここで、回転磁石30の回転軸32の方向が、第1方向と垂直な第2方向と平行になるように第1ホール素子対110が配置される。一例として、回転磁石30の回転軸32の方向は、第2ホール素子対120が配置される第2方向(Y軸方向)を第1方向および第2方向と垂直な第3方向(Z軸方向)にずらした方向と一致する。即ち、回転磁石30回転軸32のXY面に対して垂直下向き(−Z軸方向)に、第2ホール素子対120が配置される。
【0045】
第1ホール素子対110および第2ホール素子対120は、回転磁石30の回転軸32の方向において、回転磁石30が位置する範囲内に設けられる。即ち、第1ホール素子対110および第2ホール素子対120のY軸上の位置は、
図4における回転磁石30が位置する範囲L内に配置される。また、回転磁石30の軸方向における中間点を通る面(
図4の点線を含む面)は、回転角センサ100のXZ面と一致することが望ましい。
【0046】
以上のように、回転磁石30に対して配置された回転角センサ100には、回転磁石30のN極およびS極によって発生するXZ面に平行な磁場が入力され、Y軸方向と平行な磁場の入力は略零となる。したがって、回転角センサ100は、例えば、第1ホール素子対110を用いて、入力する磁場のX軸成分およびZ軸成分をホール起電力から検出し、電気信号ベクトル(V
X,0,V
Z)に磁電変換することができる。
【0047】
ここで、回転角センサ100に入力する磁場(H
X,0,H
Z)は、回転磁石30のN極およびS極の回転軸に対する位置(即ち回転磁石30の回転角)に応じて変化するので、回転角算出部150は、変換した電気信号ベクトル(V
X,0,V
Z)に対応する回転磁石30の回転角を算出することができる。例えば、
図4に示したように、回転磁石30のN極およびS極の境界面が、YZ面と略一致する場合、N極からS極への磁力線は回転角センサ100においては+X軸方向の磁場(H
X,0,0)として入力される。
【0048】
そして、回転角センサ100は、対応する電気信号ベクトル(V
X,0,0)に変換し、回転角算出部150は、回転磁石30の回転角φを算出する。回転角算出部150は、一例として、電気信号ベクトル(0,0,V
Z)の回転角φを0°として、電気信号ベクトル(V
X,0,0)の回転角φを+90°と算出する。このように、回転角算出部150は、電気信号ベクトルのX成分およびZ成分に応じて、回転角φを算出することができる。
【0049】
また、回転角センサ100および回転磁石30の配置が正常の場合、回転角センサ100に入力するY軸方向の磁場は略零となるので、検出部160は、磁場のY軸成分の検出結果に応じて回転磁石30の位置ずれを検出することができる。また、検出部160は、検出した回転磁石30の回転軸方向のずれが予め定められた値を超えた場合に、回転磁石30が故障したことを判断してもよい。
【0050】
図5は、
図4に示した回転磁石30が故障した場合の一例を示す。
図5は、回転磁石30が−Y軸方向にずれた状態を示す。一例として、
図5は、回転軸方向において回転磁石30が位置する範囲Lの外側に回転角センサ100の一部が配置される程度に、回転磁石30がずれた状態を示す。
【0051】
このように、回転磁石30がずれた場合、当該回転磁石30のXZ面と平行な側面からの磁力線が回転角センサ100に入力することになる。即ち、回転角センサ100は、回転磁石30から発生する磁力線のY軸方向の成分が入力されることになる。また、回転磁石30のY軸方向のずれ量が大きくなることに応じて、回転角センサ100に入力する磁力線のY軸方向の成分が増加する。そこで、検出部160は、第2ホール素子対120または第3ホール素子122の出力信号に基づいて、回転磁石30の回転軸方向のずれを検出することができる。
【0052】
図6は、本実施形態に係る回転角センサ100が回転磁石30の回転角を検出する変形例を示す。また、
図7は、
図6に示した回転磁石30の断面の構成例を示す。本変形例の回転角センサ100および回転磁石30において、
図4に示された本実施形態に係る回転角センサ100および回転磁石30の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。
【0053】
本変形例の回転磁石30は、回転軸を中心とした円筒形状の磁気ヨーク34の内壁に形成される。磁気ヨーク34は、一例として、保磁力が比較的小さく透磁率が比較的大きい軟磁性材料を含み、磁力線の経路を制御する。
【0054】
また、第1ホール素子対110、第2ホール素子対120、および磁気収束板130は、当該円筒形状の磁気ヨーク34の内部に配置される。回転角センサ100は、一例として、基板20に実装され、当該基板20ごと磁気ヨーク34の内部に配置される。また、基板20は、固定子22を有し、当該固定子22が磁気ヨーク34の外部に固定されてよい。
【0055】
回転磁石30は、Y軸方向と平行な回転軸を中心に磁気ヨーク34と共に回転する。回転磁石30は、Y軸を中心に回転することが望ましい。
図6および
図7は、回転磁石30がY軸を中心に回転する例を示す。第1ホール素子対110および第2ホール素子対120のY軸上の位置は、
図6における回転磁石30が位置する範囲L内に配置される。また、回転磁石30の軸方向における中間点を通る面(
図6の点線を含む面)は、回転角センサ100のXZ面と一致することが望ましい。
【0056】
以上のように、回転磁石30に対して配置された回転角センサ100には、回転磁石30のN極およびS極によって発生するXZ面に平行な磁場が入力され、Y軸方向と平行な磁場の入力は略零となる。したがって、回転角センサ100は、例えば、第1ホール素子対110を用いて、入力する磁場のX軸成分およびZ軸成分に対応するホール起電力を算出することで、電気信号ベクトル(V
X,0,V
Z)に磁電変換することができる。
【0057】
例えば、
図7に示したように、回転磁石30のN極からS極への磁力線は、回転角センサ100においては−X軸方向の成分および+Z軸方向の成分を有する磁場(−H
X,0,+H
Z)として入力される(本例では、|H
X|=|H
Z|とする)。そして、回転角センサ100は、対応する電気信号ベクトル(−V
X,0,+V
Z)に変換し、回転角算出部150は、回転磁石30の回転角φを算出する(本例では、|V
X|=|V
Z|と変換する)。
【0058】
回転角算出部150は、一例として、電気信号ベクトル(0,0,V
Z)の回転角φを0°として、電気信号ベクトル(−V
X,0,+V
Z)の回転角φを−45°と算出する。このように、回転角算出部150は、電気信号ベクトルのX成分およびZ成分に応じて、回転角φを算出することができる。
【0059】
また、回転角センサ100および回転磁石30の配置が正常の場合、回転角センサ100に入力するY軸方向の磁場は略零となるので、検出部160は、磁場のY軸成分の算出結果に応じて回転磁石30の位置ずれを検出することができる。また、検出部160は、検出した回転磁石30の回転軸方向のずれが予め定められた値を超えた場合に、回転磁石30が故障したことを判断してもよい。
【0060】
図8は、
図6に示した回転磁石30が故障した場合の一例を示す。
図8は、回転磁石30および磁気ヨーク34が−Y軸方向にずれた状態を示す。一例として、
図8は、回転軸方向において回転磁石30が位置する範囲Lの外側に回転角センサ100の一部が配置される程度に、回転磁石30がずれた状態を示す。
【0061】
このように、回転磁石30がずれた場合、当該回転磁石30のXZ面と平行な側面からの磁力線が回転角センサ100に入力することになる。即ち、回転角センサ100は、回転磁石30から発生する磁力線のY軸方向の成分が入力されることになる。また、回転磁石30のY軸方向のずれ量が大きくなることに応じて、磁力線のY軸方向の成分の回転角センサ100への入力が増加する。そこで、検出部160は、第2ホール素子対120または第3ホール素子122の出力信号に基づいて、回転磁石30の回転軸方向のずれを検出することができる。
【0062】
図9は、本実施形態に係る回転角センサ100の構成例を示す。
図9において、磁気収束板130の記載を省略した。第1ホール素子112、第2ホール素子114、第3ホール素子122、および第4ホール素子124は、それぞれ電流源202、電流源204、電流源206、および電流源208に接続され、予め定められた電流が流れる。各ホール素子は、当該電流と入力する磁場に応じたホール起電力をそれぞれ出力する。例えば、第1ホール素子112のホール起電力V
sig(Hall,X1)は、電流および入力磁場の両方に直交する第1ホール素子112の電極間の電圧(例えば、V
sig(Hall,X1)+とV
sig(Hall,X1)−の電圧の差分)となる。
【0063】
第1ホール素子112、第2ホール素子114、第3ホール素子122、および第4ホール素子124は、ホール起電力算出部140に接続され、それぞれの出力電圧をホール起電力算出部140に供給する。ホール起電力算出部140は、スイッチ部210と、増幅部220と、AD変換部230と、第1レジスタ242と、第2レジスタ244と、第3レジスタ246とを有する。
【0064】
スイッチ部210は、各ホール素子から増幅部220への接続を切り替える。スイッチ部210は、例えば、第1ホール素子112および第2ホール素子114を増幅部220に接続して、第1ホール素子対110の各出力電圧を増幅部220に供給する。また、上記の例とは別の場合において、スイッチ部210は、第3ホール素子122および第4ホール素子124を増幅部220に接続して、第2ホール素子対120の各出力電圧を増幅部220に供給する。
【0065】
増幅部220は、受け取った信号の差または和に応じた増幅信号を出力する。また、増幅部220は、受け取った信号を増幅して出力してもよい。増幅部220は、増幅率Gの差動増幅器を含んでよい。例えば、ホール起電力算出部140がホール起電力信号V
Xを算出する場合、スイッチ部210は、第1ホール素子112および第2ホール素子114を増幅部220に接続し、増幅部220は、受け取った信号の差を増幅した増幅信号を出力する。
【0066】
この場合、増幅部220への入力信号は、第1ホール素子112のホール起電力V
sig(Hall,X1)および第2ホール素子114のホール起電力V
sig(Hall,X2)となるので、増幅部220は、次式のように、数6式で示すホール起電力信号V
Xの定数倍の値の信号V
Xoutを出力する。
【数10】
【0067】
また、ホール起電力算出部140がホール起電力信号V
Zを算出する場合、スイッチ部210は、第1ホール素子112および第2ホール素子114を増幅部220に接続し、増幅部220は、受け取った信号の和を増幅した増幅信号を出力する。即ち、増幅部220は、次式のように、数9式で示すホール起電力信号V
Zの定数倍の値の信号V
Zoutを出力する。
【数11】
【0068】
同様に、ホール起電力算出部140がホール起電力信号V
Yを算出する場合、スイッチ部210は、第3ホール素子122および第4ホール素子124を増幅部220に接続し、増幅部220は、受け取った信号の差を増幅した増幅信号を出力する。即ち、増幅部220は、次式のように、数7式で示すホール起電力信号V
Yの定数倍の値の信号V
Youtを出力することができる。
【数12】
【0069】
ここで、ホール起電力算出部140がホール起電力信号V
Zを算出する場合、スイッチ部210は、第3ホール素子122および第4ホール素子124を増幅部220に接続し、増幅部220は、受け取った信号の和を増幅した増幅信号を出力してもよい。増幅部220は、以上のように算出したホール起電力信号を、それぞれAD変換部230に供給する。
【0070】
AD変換部230は、増幅部220に接続され、受け取ったホール起電力信号をデジタル信号に変換する。AD変換部230は、変換したデジタル信号をレジスタに供給する。AD変換部230は、例えば、ホール起電力信号V
Xoutを第1レジスタ242に、ホール起電力信号V
Zoutを第2レジスタ244に、ホール起電力信号V
Youtを第3レジスタ246に、それぞれ供給する。
【0071】
第1レジスタ242、第2レジスタ244、および第3レジスタ246は、それぞれAD変換部230に接続され、AD変換部230から供給されるホール起電力信号を記憶する。各レジスタは、一例として、回転角算出部150および検出部160の読み出し要求等に応じて、記憶したホール起電力信号を要求元に供給する。
【0072】
回転角算出部150は、第1レジスタ242および第2レジスタ244に接続され、ホール起電力信号V
Xoutおよびホール起電力信号V
Zoutを取得する。回転角算出部150は、ホール起電力信号V
Xoutおよびホール起電力信号V
Zoutに基づき、回転磁石30の回転角φを算出する。
【0073】
ここで、回転角算出部150は、磁気収束板130のX軸方向およびY軸方向の磁気収束効果の差、増幅部220の増幅率、および伝送損失等に応じて、取得したホール起電力信号をそれぞれ規格化(予め定められた定数を用いて定数倍)してよい。これにより、回転角算出部150は、入力する磁場ベクトルH
XおよびH
Zに対応するホール起電力信号V
XおよびV
Zを取得し、例えば、arctan(V
X/V
Z)等を算出して、回転磁石30のXZ面と平行な面における回転角φを算出することができる。
【0074】
ここで、ホール起電力算出部140が第1ホール素子対110のホール起電力に基づいてホール起電力信号V
XoutおよびV
Zoutを算出した場合、回転角算出部150は、第1ホール素子対110の出力信号に基づいて、回転磁石30の回転角φを算出することになる。また、ホール起電力算出部140が第1ホール素子対110および第2ホール素子対120のホール起電力に基づいてホール起電力信号V
XoutおよびV
Zoutを算出した場合、回転角算出部150は、第1ホール素子対110および第2ホール素子対120の出力信号に基づいて、回転磁石30の回転角φを算出することになる。
【0075】
検出部160は、第3レジスタ246に接続され、ホール起電力信号V
Youtを取得する。検出部160は、ホール起電力信号V
Youtの値に応じて、回転磁石30のY軸方向のずれを検出する。また、検出部160は、ホール起電力信号V
Youtが予め定められた値を超えた場合に、回転磁石30が故障を判断してよい。また、検出部160は、回転磁石30の故障を判断した場合に、当該故障を通知するエラー信号を出力してよい。
【0076】
図10は、本実施形態に係る回転角センサ100の変形例を示す。本変形例の回転角センサ100において、
図9に示された本実施形態に係る回転角センサ100の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。本変形例の回転角センサ100のホール起電力算出部140は、第4レジスタ248を更に有する。
【0077】
本変形例のスイッチ部210が第3ホール素子122および第4ホール素子124を増幅部220に接続した場合、増幅部220は、受け取った2つの信号を増幅した増幅信号を出力する。即ち、増幅部220は、次式のように、第3ホール素子122および第4ホール素子124のホール起電力信号V
out(Hall,Y1)およびV
out(Hall,Y2)を出力する。即ち、各ホール起電力信号は、各ホール素子に入力するY軸方向およびZ軸方向の合成磁場に応じた起電力信号となる。
【数13】
【0078】
AD変換部230は、数13式で示されるホール起電力信号V
out(Hall,Y1)およびV
out(Hall,Y2)をデジタル信号に変換して、第3レジスタ246および第4レジスタ248に供給する。一例として、本変形例の第3レジスタ246は、ホール起電力信号V
out(Hall,Y1)を記憶し、第4レジスタ248は、ホール起電力信号V
out(Hall,Y2)を記憶する。
【0079】
そして、本変形例の検出部160は、第3ホール素子122と第4ホール素子124の出力信号とを比較し、比較結果に基づき回転磁石30の回転軸方向のずれを検出する。検出部160の検出動作については
図11および
図12を用いて説明する。
【0080】
図11は、回転磁石30が正常な状態における第2ホール素子対120のホール起電力の一例を示す。
図11の横軸は、回転磁石30の回転角φであり、縦軸はホール起電力(例えば、電圧値)である。また、
図11において、破線は、Z軸方向の磁場に対応するホール起電力であり、一例として、数13式の第1項(即ち、1.1・G・S・Mu,zz・Hz)である。
【0081】
また、
図11において、実線で示した第1信号は第3ホール素子122のホール起電力信号V
out(Hall,Y1)を、一点鎖線示した第2信号は第4ホール素子124のホール起電力信号V
out(Hall,Y2)を示す。回転磁石30が正常な場合、回転角センサ100に入力するY軸方向の成分は略零なので、第1信号および第2信号は、Z軸方向のホール起電力と略等しくなる。
【0082】
図12は、回転磁石30が故障した状態における第2ホール素子対120のホール起電力の一例を示す。
図5または
図8に示すように、回転磁石30が故障した場合、回転角センサ100に入力するY軸方向の成分が有限となるので、第1信号および第2信号は、Z軸方向のホール起電力とは入力するY軸方向の成分の分だけ異なる結果となる。そこで、検出部160は、第1信号および第2信号を比較することにより、回転磁石30の故障を検出することができる。
【0083】
例えば、検出部160は、第2ホール素子対120の出力信号の差分に基づいて、回転磁石30の回転軸方向のずれを検出する。また、検出部160は、第1信号および第2信号の差分が、予め定められた値を超えたことに応じて、回転磁石30の故障を検出する。
【0084】
これに代えて、検出部160は、第3ホール素子122および第4ホール素子124のうち一方の出力信号にオフセットを加えた信号と他方の出力信号とを比較して、回転軸方向のずれを検出してもよい。例えば、検出部160は、第1信号および第2信号の差分(第1信号−第2信号)が故障か否かを判断する予め定められた閾値を、当該オフセットの値とし、第2信号に加える。
【0085】
検出部160は、オフセットを加えた第2信号が第1信号よりも小さい場合、回転磁石が故障したことを判断する。すなわち、第1信号がY軸方向の入力磁場によって増加し、第2信号がY軸方向の入力磁場によって減少し、第1信号が第2信号よりも大きくなった場合、検出部160は、当該オフセットを超えるY軸方向の磁場が入力されたと判断して、回転磁石30の故障を検出する。
【0086】
以上のように、本実施形態の回転角センサ100は、入力する磁場に対応する、互いに直交するXYZ軸方向のホール起電力信号を算出することができる。そして、回転角センサ100は、各ホール起電力信号に基づき、Y軸方向と平行な回転軸を中心とした回転磁石30の回転角φを算出しつつ、当該回転磁石30のY軸方向のずれを検出することができる。また、回転角センサ100は、Y軸方向のずれ量に基づき、回転磁石30の故障を検出することができ、エラー信号を発生させて当該故障を速やかに通知することができる。
【0087】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0088】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。