(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スタイラスは、被測定物に応じて変更がなされる。その際に、その変更したスタイラスに対応する軸運動機構及び旋回運動機構を選択することで、そのスタイラスに応じた相応の検出感度及び復元力(スタイラスの変位を元に戻す力)を実現することが可能となる。しかしながら、スタイラスの数は、わずかな相違を含めれば膨大にあり、それらすべてに最適な軸運動機構及び旋回運動機構を用意すると、多額の費用がかかり、現実的な対応とはならない。このため、ある程度特性(質量や長さなど)が近い複数のスタイラスに対して、1つの軸運動機構及び旋回運動機構が適用されることとなる。
【0005】
しかしながら、特許文献1のように軸運動機構と旋回運動機構とが一体となっている場合には、必ず、軸運動機構と旋回運動機構とを一緒に変更しなければならない。例えば、変更したスタイラスに対して、軸運動機構と旋回運動機構とのうちのいずれか一方の運動機構は許容できるが、残りの運動機構は変更したほうがよい場合などでも、両方の運動機構を同時に変更せざるを得ない。つまり、相応の運動機構の性能を確保し相応の検出感度及び復元力を実現するうえでは、特許文献1のような構成では、コストを抑制しながら、軸運動機構及び旋回運動機構を適切に選択することが困難であった。
【0006】
本発明は、前記の問題点を解決するべくなされたもので、低コスト化を可能としながらスタイラスに応じた相応の検出感度及び復元力を実現可能とする測定プローブを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の請求項1に係る発明は、被測定物に接触する接触部を有するスタイラスと、該接触部を軸方向に移動可能とする移動部材を備える軸運動機構と、
旋回中心に対する旋回運動によって該軸方向と直角をなす面に沿って前記接触部を移動可能とする旋回部材を備える旋回運動機構と、を備える測定プローブであって、前記
旋回運動機構を内蔵するプローブ本体と、該プローブ本体に支持され、
前記軸運動機構を内蔵し、前記スタイラスを支持するプローブモジュールと、を備え、前記プローブ本体と前記プローブモジュールとが、互いに位置決め可能な第1係合部で脱着可能に連結されることにより、前記課題を解決したものである。
【0008】
本願の請求項2に係る発明は、
被測定物に接触する接触部を有するスタイラスと、該接触部を軸方向に移動可能とする移動部材を備える軸運動機構と、旋回運動によって該軸方向と直角をなす面に沿って前記接触部を移動可能とする旋回部材を備える旋回運動機構と、を備える測定プローブであって、前記軸運動機構
を内蔵するプローブ本体
と、該プローブ本体に支持され、前記旋回運動機構
を内蔵し、前記スタイラスを支持するプローブモジュール
と、を備え、前記プローブ本体と前記プローブモジュールとが、互いに位置決め可能な第1係合部で脱着可能に連結されるものである。
【0009】
本願の請求項3に係る発明は、前記プローブ本体の1つに対して前記プローブモジュールを複数用意し、前記旋回部材の変位した際の単位変位量当たりの復元力をプローブモジュール毎に異なるようにしたものである。
【0010】
本願の請求項4に係る発明は、前記旋回部材が前記旋回運動機構の旋回中心に対して反スタイラス側にバランス部材を備え、該旋回中心と該バランス部材との距離を調整可能としたものである。
【0011】
本願の請求項5に係る発明は、前記プローブ本体の1つに対して前記プローブモジュールを複数用意し、前記旋回中心と前記バランス部材との距離をプローブモジュール毎に異なるようにしたものである。
【0012】
本願の請求項6に係る発明は、前記プローブ本体の1つに対して前記プローブモジュールを複数用意し、前記旋回部材は前記旋回運動機構の旋回中心に対して反スタイラス側にバランス部材を備え、該バランス部材の質量をプローブモジュール毎に異なるようにしたものである。
【0013】
本願の請求項7に係る発明は、前記プローブモジュールが、前記スタイラスの質量に応じたバランスウェイトと、前記軸運動機構を支持する軸ハウジング部材に支持され、前記スタイラスと該バランスウェイトとの間のバランスをとるカウンタバランス機構と、を備えるようにしたものである。
【0014】
本願の請求項8に係る発明は、前記プローブ本体の1つに対して前記プローブモジュールを複数用意し、前記バランスウェイトの質量をプローブモジュール毎に異なるようにしたものである。
【0016】
本願の請求項
9に係る発明は、前記プローブ本体の1つに対して前記プローブモジュールを複数用意し、前記移動部材の変位した際の単位変位量当たりの復元力をプローブモジュール毎に異なるようにしたものである。
【0017】
本願の請求項
10に係る発明は、前記軸運動機構を支持する軸ハウジング部材を備え、該軸ハウジング部材には前記移動部材の変位を検出する変位検出器を設けたものである。
【0018】
本願の請求項
11に係る発明は、前記変位検出器で、前記移動部材の相対的な位置の検出を可能とする相対位置検出信号を出力するようにしたものである。
【0019】
本願の請求項
12に係る発明は、前記変位検出器で、前記移動部材の絶対的な位置の検出を可能とする絶対位置検出信号を出力するようにしたものである。
【0020】
本願の請求項
13に係る発明は、前記軸ハウジング部材には、干渉光源部と、該干渉光源部からの光を反射する参照ミラーと、前記移動部材に配置されるとともに該干渉光源部からの光を反射するターゲットミラーと、を備え、該参照ミラー及び該ターゲットミラーからの反射光それぞれを干渉させて複数の干渉縞を生成可能な干渉光学系を設け、前記変位検出器で、該干渉光学系で生成される前記複数の干渉縞の位相変化を検出可能としたものである。
【0021】
本願の請求項
14に係る発明は、前記プローブ本体を位置決め可能な第2係合部で脱着可能に連結し支持する前段モジュールを備え、前記旋回部材の反スタイラス側端部に基準部材を設け、前記スタイラスの旋回動作に対応する該基準部材の変位を検出する姿勢検出器を前記前段モジュールに内蔵したものである。
【0022】
本願の請求項
15に係る発明は、前記旋回部材の反スタイラス側端部に基準部材を設け、前記スタイラスの旋回動作に対応する該基準部材の変位を検出する姿勢検出器を前記プローブ本体に内蔵したものである。
【0023】
本願の請求項
16に係る発明は、前記軸運動機構が、前記移動部材を変位可能とする複数の第1ダイヤフラム構造体を備え、該軸運動機構を前記プローブ本体に内蔵し、且つ前記旋回運動機構を前記プローブモジュールに内蔵する際に、前記姿勢検出器を、該旋回運動機構と該複数の第1ダイヤフラム構造体との間に配置したものである。
【0024】
本願の請求項
17に係る発明は、前記基準部材を、光を反射する反射鏡とし、該反射鏡へ光軸に沿って光を入射させる光源部を設け、前記姿勢検出器で、該反射鏡から反射される反射光の該光軸からの変位を検出するようにしたものである。
【0025】
本願の請求項
18に係る発明は、前記光軸を、前記旋回運動機構の旋回中心を通るように設けたものである。
【0026】
本願の請求項
19に係る発明は、前記軸運動機構が前記移動部材を変位可能とする複数の第1ダイヤフラム構造体を備え、該複数の第1ダイヤフラム構造体の変形量を弾性変形の範囲内に制限する第1制限部材を備えるようにしたものである。
【0027】
本願の請求項
20に係る発明は、前記旋回運動機構が前記旋回部材を変位可能とする第2ダイヤフラム構造体を備え、該第2ダイヤフラム構造体の変形量を弾性変形の範囲内に制限する第2制限部材を備えるようにしたものである。
【0028】
本願の請求項
21に係る発明は、前記軸運動機構を支持する軸ハウジング部材と一体とされ前記移動部材に対峙して配置される第1壁部材と、該移動部材と、の間の少なくとも一部の隙間に第1粘性材料を充填したものである。
【0029】
本願の請求項
22に係る発明は、前記旋回運動機構が前記旋回部材を変位可能とする第2ダイヤフラム構造体を備え、該旋回運動機構を支持する旋回ハウジング部材と一体とされる第2壁部材と、該第2ダイヤフラム構造体もしくは前記旋回部材と、の間の少なくとも一部の隙間に第2粘性材料を充填したものである。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、低コスト化を可能としながらスタイラスに応じた相応の検出感度及び復元力が実現可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。
【0033】
本発明に係る第1実施形態について
図1〜
図7を参照して説明する。
【0034】
最初に、測定システム100の全体構成を説明する。
【0035】
測定システム100は、
図1に示す如く、測定プローブ300を移動させる三次元測定機200と、手動操作するジョイスティック111を有する操作部110と、三次元測定機200の動作を制御するモーションコントローラ500と、を備える。また、測定システム100は、モーションコントローラ500を介して三次元測定機200を動作させるとともに三次元測定機200によって取得した測定データを処理して被測定物Wの寸法や形状などを求めるホストコンピュータ600と、測定条件等を入力する入力手段120と、測定結果を出力する出力手段130と、を備える。
【0037】
前記三次元測定機200は、
図1に示す如く、測定プローブ300と、定盤210と、定盤210に立設されて測定プローブ300を三次元的に移動させる駆動機構220と、駆動機構220の駆動量を検出する駆動センサ230と、を備えている。
【0038】
測定プローブ300は、
図2(A)、(B)に示す如く、スタイラス306と、軸運動機構310と、旋回運動機構334と、を備える。スタイラス306の接触部348は、軸運動機構310と旋回運動機構334とにより、被測定物Wの表面Sに接触した際にその形状に倣って3方向に自在に変位する構成とされている。
【0039】
更に、
図2(A)、(B)を用いて、測定プローブ300の構成概略について説明する。なお、以下の説明のために、
図2(A)の紙面上下方向にZ方向をとり、紙面左右方向にX方向をとり、紙面垂直方向にY方向をとる。このため、測定プローブ300の中心軸Oの方向(軸方向O)は、Z方向と同一となる。
【0040】
測定プローブ300は、
図2(A)、(B)に示す如く、被測定物Wに接触する接触部348を有するスタイラス306と、接触部348を軸方向Oに移動可能とする移動部材312を備える軸運動機構310と、旋回運動によって軸方向Oと直角をなす面に沿って接触部348を移動可能とする旋回部材RPを備える旋回運動機構334と、を備える。ここで、測定プローブ300は、軸運動機構310を内蔵するプローブ本体302と、プローブ本体302に支持され、旋回運動機構334を内蔵し、スタイラス306を支持するプローブモジュール304と、を備える。そして、プローブ本体302とプローブモジュール304とは、互いに位置決め可能なローラ312Fと球332B(第1係合部)で脱着可能に連結されている。
【0041】
なお、スタイラス306は、複数(接触部348の材質や位置や質量等が異なる)が用意される。そして、スタイラス306に対応して、1つのプローブ本体302に対して、複数のプローブモジュール304(必ずしもスタイラス306の数と同一ではない)が用意される。なお、「内蔵」は、それぞれのハウジング部材(「内蔵」の対象部材がプローブ本体302に「内蔵」されるのであれば本体ハウジング308、「内蔵」の対象部材がプローブモジュール304に「内蔵」されるのであればモジュールハウジング330)の径方向内側で支持され、且つその「内蔵」の対象部材がそれぞれのハウジング部材の外側に配置される他のモジュールもしくは他のハウジング部材の内側にだけ入り込む部分を有さないことを意味するものとする。
【0042】
以下、測定プローブ300の構成要素について詳細に説明する。
【0043】
前記プローブ本体302は、
図2(A)、(B)に示す如く、本体ハウジング(軸ハウジング部材)308と、軸運動機構310と、姿勢検出器322と、変位検出器328と、信号処理回路329(
図3)と、を備える。
【0044】
本体ハウジング308は、
図2(A)、(B)に示す如く、下端に開口部308Aを備えた蓋付円筒形状とされている。そして、本体ハウジング308は、移動部材312のフランジ部312Eを除いて、軸運動機構310を径方向内側に支持し収納している。フランジ部312Eは、プローブモジュール304の内側に入り込むことなく、プローブモジュール304に連結されている。
【0045】
軸運動機構310は、
図2(A)、(B)に示す如く、移動部材312と、移動部材312を本体ハウジング308に対して変位可能とする一対の第1ダイヤフラム構造体314、315と、を備える。
【0046】
移動部材312は、
図2(A)、(B)に示す如く、軸心を中空部312Bとした略円筒形状とされている。より具体的には、移動部材312は、Z方向の上方から下方に向かって、肉厚部312C、肉薄部312D、及びフランジ部312Eが一体とされ構成されている。肉厚部312Cには、一対の第1ダイヤフラム構造体314、315が連結されている。肉薄部312Dは、肉厚部312Cの下方に形成されている。なお、本体ハウジング308の開口部308Aの開口径は、肉厚部312Cの外径よりも小さくされている。そして、フランジ部312Eの外径は、開口部308Aの開口径よりも大きくされている。ここで、肉厚部312Cの下端部312CAと開口部308Aの上端部308AAとの距離及びフランジ部312Eの上端部312EAと開口部308Aの下端部308ABとの距離は、移動部材312のZ方向への変位を規制して、一対の第1ダイヤフラム構造体314、315が弾性変形の範囲内となるように定められている。即ち、プローブ本体302は、一対の第1ダイヤフラム構造体314、315の変形量を弾性変形の範囲内に制限する第1制限部材となる本体ハウジング308及び移動部材312を備えているといえる。
【0047】
フランジ部312Eの下端外周には、
図2(A)、(B)に示す如く、周方向で120度毎に一対のローラ312Fが3つ設けられている。そして、ローラ312Fとは周方向で位相が60度ずれた状態で永久磁石312Gが3つ設けられている。なお、一対のローラ312Fの軸方向は、フランジ部312Eの中心に向かう略径方向と同一とされている。
【0048】
第1ダイヤフラム構造体314、315は、
図4(A)に示す如く、弾性変形可能な略円盤形状の部材である。材質としてはリン青銅など(他の材料でもよい)である。第1ダイヤフラム構造体315は第1ダイヤフラム構造体314と同一とされている(これに限らず、互いに異なる形状とされていてもよい)。このため、第1ダイヤフラム構造体314についてのみ、
図4(A)を用いて説明する。
【0049】
第1ダイヤフラム構造体314には、
図4(A)に示す如く、周方向で位相が120度ずれた3つの切り抜き部314Dが設けられている。切り抜き部314Dにより、第1ダイヤフラム構造体314の径方向外側から内側に向かって、外周部314Aとリム部314Bと中心部314Cとが設けられている。外周部314Aは、第1ダイヤフラム構造体314の最外周にあり、本体ハウジング308に固定される部分である。リム部314Bは隣接する2つの切り抜き部314Dにより周方向に帯状とされ、外周部314Aの内側に配置されている。そして、リム部314Bの両端部は、それぞれ外周部314Aと中心部314Cとに連結されている。中心部314Cは、移動部材312を支持する部分であり、リム部314Bのさらに内側に配置されている。本体ハウジング308に対する移動部材312の変位により、第1ダイヤフラム構造体314は、中心部314Cが上下動し、リム部314Bが弾性変形する構造となっている。なお、第1ダイヤフラム構造体の構造は、本実施形態で示す形状に限定されるものではない(後述する第2ダイヤフラム構造体も同様である)。
【0050】
一方、移動部材312の上端部312Aには、
図2(A)、(B)に示す如く、スケールブラケット324が配置されている。スケールブラケット324上には、基準部材326が配置されている。そして、基準部材326に対向して、基準部材326からの反射光を検出する変位検出器328が配置されている。なお、変位検出器328は、基準部材326に光を照射する光源を内蔵している。基準部材326の変位検出器328側の表面には、光源からの光の反射率が異なるインクリメンタルパターンが一定間隔でZ方向に設けられている。即ち、基準部材326は、反射型の固体スケールとされている。この基準部材326、変位検出器328、光源により、2相正弦波信号を出力する光電式リニアエンコーダが構成されている。つまり、本体ハウジング308には、移動部材312の変位を検出する変位検出器328が設けられている。変位検出器328は、移動部材312の変位に対応してインクリメンタルパターンの所定の周期で繰り返される周期信号を出力する(つまり、変位検出器328は、移動部材312の相対的な位置の検出を可能とする相対位置検出信号を出力する構成である)。この周期信号は、信号処理回路329で波形整形される。そして、信号処理回路329からは、基準部材326のZ方向の変位を求めるためのZ2相sin波が出力される。
【0051】
また、本体ハウジング308の内側側面には、
図2(A)、(B)に示す如く、別の光源(光源部)318が設けられている。光源318から出射された光をZ方向に向けるビームスプリッタ320が、光源318に対峙して支持部材319に支持されている(なお、支持部材319は、本体ハウジング308の内側に固定されている)。Z方向に向けられた光(光軸OAを通過する光)は、移動部材312の中空部312Bを通過し、旋回部材RPの反スタイラス側端部に設けられた(光を反射する反射鏡とされた)基準部材316で反射される(即ち、プローブ本体302には、基準部材316へ光軸OAに沿って光を入射させる光源318が設けられている)。反射光は、ビームスプリッタ320を通過し、本体ハウジング308の内側上面に配置された姿勢検出器322(つまり、姿勢検出器322はプローブ本体302に内蔵されている)で基準部材316から反射された光を検出する。よって、基準部材316の変位(傾斜)により姿勢検出器322で検出される反射光の位置が変化することから、姿勢検出器322は基準部材316から反射される反射光の光軸OAからの変位を検出することができる。つまり、姿勢検出器322は、スタイラス306の旋回動作に対応する基準部材316の変位(傾斜)を検出することができる。光軸OAは、旋回運動機構334の旋回中心RCを通るように設けられている(つまり、中心軸Oと光軸OAとは同一となる)。
【0052】
なお、基準部材316は、
図2(A)、(B)に示す如く、表面が凹面形状となっており、姿勢検出器322で検出される反射光の光軸OAからの変位量を少なくして姿勢検出器322のサイズの小型化を図っている。姿勢検出器322の出力も信号処理回路329に入力される。そして、姿勢検出器322の出力は信号処理回路329で波形整形される。そして、信号処理回路329からは、基準部材316の姿勢変化で生じる光軸OAからの反射光のXY方向への変位に基づく変位電圧(XY変位電圧)が出力される。
【0053】
前記プローブモジュール304は、
図2(A)、(B)に示す如く、モジュールカバー332と、モジュールハウジング330と、旋回運動機構334と、を備えている。なお、本実施形態では、モジュールカバー332とモジュールハウジング330とで旋回ハウジング部材が構成されている。
【0054】
モジュールカバー332は、
図2(A)、(B)に示す如く、中心に開口部332Aを備えるフランジ形状とされている。モジュールカバー332は、フランジ部312Eに対応する部材である。即ち、一対のローラ312Fの両方に接するように、球332Bがモジュールカバー332の周方向で120度毎に3つ配置されている。そして、永久磁石312Gに対応して、永久磁石312Gと引き合う磁性部材(永久磁石でよい)332Cが、球332Bとは60度位相がずれた状態で配置されている。
【0055】
ここで、3つの球332Bは、
図2(A)、(B)に示す如く、対応する一対のローラ312Fの表面それぞれに接触する。このため、永久磁石312Gと磁性部材332Cとが所定の力で引き合った状態では、フランジ部312Eにモジュールカバー332が6点着座(接触)された状態となる。つまり、高い位置決め精度を実現しながら、モジュールカバー332とフランジ部312Eとを連結することができる。即ち、モジュールカバー332とフランジ部312Eとは、脱着可能な連結機構であるキネマティックジョイント(キネマティックカップリングとも称する)を構成している状態である。このキネマティックジョイントにより、プローブモジュール304とフランジ部312Eとが脱着を繰り返しても、高い位置決め再現性を実現することが可能である。なお、プローブモジュール304に横方向(Z方向と直交する方向)から大きな力が加わったときには、フランジ部312Eからプローブモジュール304が脱落(すべてのローラ312Fに球332Bが接触しない状態となった場合だけでなく、一部でのみローラ312Fに球332Bが接触しない状態となった場合も含む)して、プローブ本体302の破損を防止することが可能である(このため、永久磁石312Gと磁性部材332Cとの引き合う所定の力は、上述した大きな力に対応した力とされる)。なお、キネマティックジョイントは、ローラと球との組み合わせでなく、V溝と球との組み合わせでもよい。また、ローラと球との組み合わせでその順序が逆であってもよい。つまり、6点着座できる構造であれば、ローラと球との組み合わせに限定されない。
【0056】
モジュールハウジング330は、
図2(A)、(B)に示す如く、下端に開口部330Aを備える略円筒形状の部材である。そして、モジュールハウジング330は、旋回運動機構334を径方向内側で支持する。
【0057】
旋回運動機構334は、
図2(A)、(B)に示す如く、フランジ部材342を除いてモジュールハウジング330の内側に収納されている。フランジ部材342は、スタイラス306の内側に入り込むことなく、スタイラス306に連結されている。そして、旋回運動機構334は、
図2(A)、(B)に示す如く、旋回部材RPと、旋回部材RPをモジュールハウジング330に対して変位可能とする第2ダイヤフラム構造体340と、を備える。
【0058】
旋回部材RPは、
図2(A)、(B)に示す如く、第2ダイヤフラム構造体340に支持される部材であって、バランス部材338と、上部部材336と、フランジ部材342と、を備える。
【0059】
バランス部材338は、
図2(A)、(B)に示す如く、第2ダイヤフラム構造体340の上部に配置され、スタイラス306に対応する重量とされている(つまり、旋回部材RPは、旋回運動機構334の旋回中心RCに対して反スタイラス側にバランス部材338を備えている構成である)。このバランス部材338を適切に設定する(あるいは、後述するように、旋回中心RCとバランス部材338との距離を調整する)ことで、スタイラス306を含めて旋回部材RPで支持される部材の重心位置を旋回中心RCに一致させることができる。このため、例えば、測定プローブ300を横向きにしても、スタイラス306の中心軸が軸方向Oから傾くことを防止することができる。即ち、測定プローブ300自体の姿勢を変更されても、スタイラス306が姿勢検出器322の測定範囲の中央に留まることができ、姿勢検出器322としてより簡易化、小型化、高分解能化したものを採用することが可能となる。バランス部材338の上端部(旋回部材RPの反スタイラス側端部)には、基準部材316が設けられている。なお、バランス部材338の側面338Bとモジュールハウジング330の内側側面330Bとの距離は、バランス部材338の傾斜(変位)を規制して、第2ダイヤフラム構造体340が弾性変形の範囲内となるように定められている。即ち、プローブモジュール304は、第2ダイヤフラム構造体340の変形量を弾性変形の範囲内に制限する第2制限部材となるモジュールハウジング330及びバランス部材338を備えているといえる。
【0060】
上部部材336は、
図2(A)、(B)に示す如く、第2ダイヤフラム構造体340に係合しバランス部材338を支持する構成となっている。なお、上部部材336の凸部336Aには、雄ねじが設けられている。そして、凸部336Aに対応するバランス部材338の凹部338Aには、雌ねじが設けられている。このため、バランス部材338の上部部材336への螺合状態を変化させることで、旋回中心RCとバランス部材338との距離が調整可能とされている。例えば、
図5(A)で示す如く、スタイラス306に対してはバランス部材338を用いることで、スタイラス306を連結した状態の旋回部材RPの重心位置を旋回中心RCに一致させているとする。ここで、スタイラス306よりもスタイラス307の長さ及び質量が大きい場合には、
図5(B)に示す如く、バランス部材338の旋回中心RCからの距離をL1からL2に変化させることで、スタイラス307を連結した状態の旋回部材RP(第2ダイヤフラム構造体340に支持される部材)の重心位置を旋回中心RCに一致させることが可能となる。つまり、同一のバランス部材338を用いたプローブモジュール304で、複数のスタイラス306に適合させることができる。あるいは同一の質量のバランス部材338の位置を変化させたプローブモジュール304を複数用意して、複数のスタイラス306に適合させることもできる(即ち、プローブ本体302の1つに対してプローブモジュール304を複数用意し、旋回中心RCとバランス部材338との距離をプローブモジュール304毎に異なるようにすることができる)。なお、
図5(C)、(D)はそれぞれ、
図5(A)、(B)に対応する機能を示す模式図である。ここで、符号m
cは、旋回中心RCの上側にくる部材の部分の質量、また、符号L1、L2は、旋回中心RCの上側にくる部材の部分の旋回中心RCからの各重心位置までの距離を示している。そして、符号m
s1、m
s2は、旋回中心RCの下側にくる部材の部分の質量、また、符号L11、L21は、旋回中心RCの下側にくる部材の部分の旋回中心RCからの各重心位置までの距離を示している。
【0061】
あるいは、
図6(A)、(B)に示す如く、プローブ本体302の1つに対してプローブモジュール304、305が用意され、バランス部材338、339の質量がプローブモジュール304、305毎に異なるようにされていてもよい(なお、プローブモジュールは2つとは限らない)。例えば、
図6(A)で示す如く、スタイラス306に対してはバランス部材338を用いることで、スタイラス306を連結した状態の旋回部材RPの重心位置を旋回中心RCに一致させているとする。ここで、スタイラス306よりもスタイラス307の長さ及び質量が大きい場合には、
図6(B)に示す如く、バランス部材338よりも質量が大きなバランス部材339を用いることで、スタイラス307を連結した状態の旋回部材RPの重心を旋回中心RCに一致させることが可能となる(さらに、
図5(A)、(B)に示したように、バランス部材339も旋回中心RCからの距離を調整可能とされていてもよい)。なお、
図6(C)、(D)はそれぞれ、
図6(A)、(B)に対応する機能を示す模式図であり、
図5(C)、(D)と同様の表示方法で示したものである。
【0062】
また、
図7(A)、(B)はそれぞれ、
図6(A)、(B)のプローブモジュール304、305がプローブ本体302に連結された状態における機能を示す模式図である。スタイラス306からスタイラス307に変更された際には、スタイラス307に対応するプローブモジュール305を用いると、プローブ本体302で支持する重量が変化し、変位検出器328で検出する初期位置(ゼロ点)が距離Lだけ異なることとなる。しかし、その初期位置の違いはZ方向のみとなる。このため、変位検出器328にZ方向にロングレンジ(長い検出範囲)を有し高分解能に位置検出可能なリニアエンコーダを用いることで、スタイラス307への交換にもZ方向の検出精度を落とすことなく対応が可能となっている。
【0063】
第2ダイヤフラム構造体340も、
図4(B)に示す如く、弾性変形可能な略円盤形状の部材である。材質としてはリン青銅など(他の材質でもよい)である。第2ダイヤフラム構造体340には、周方向で位相が180度異なる2つの円弧形状の切り抜き部340Eが設けられ、2つのヒンジ部340Cが形成されている。切り抜き部340Eの径方向内側には、更に周方向で位相が180度異なる2つの円弧形状の切り抜き部340Fが設けられ、2つのヒンジ部340Dが形成されている。切り抜き部340E、340Fにより、第2ダイヤフラム構造体340の径方向外側から内側に向かって、外周部340Aとリム部340Gと中心部340Bとが設けられている。
【0064】
外周部340Aは、
図4(B)に示す如く、第2ダイヤフラム構造体340の最外周にあり、モジュールハウジング330に固定される部分である。リム部340Gは、径方向の両側に設けられた切り抜き部340E、340Fにより周方向に帯状とされている。そして、リム部340Gは、外周部340Aの内側に配置され、ヒンジ部340Cで外周部340Aと、ヒンジ部340Dで中心部340Bと連結されている。中心部340Bは、上部部材336を支持する部分であり、リム部340Gのさらに内側に配置されている。切り抜き部340Eと切り抜き部340Fとは位相が90度異なる。このため、第2ダイヤフラム構造体340の中心(旋回中心RC)を軸として、中心部340Bは互いに直交する2方向に傾斜可能(旋回可能)な構造となっている。
【0065】
なお、
図4(C)は、第2ダイヤフラム構造体340の機能を示す模式図であり、符号kは、中心部340Bが変位(旋回)した際の単位変位量(角度)当たりの復元力を示している。即ち、プローブ本体302の1つに対してプローブモジュール304を複数用意した際には、旋回部材RPの変位した際の単位変位量当たりの復元力をプローブモジュール304毎に異なるようにすることができる。このため、個々のスタイラス306に対して、適切な復元力を有するプローブモジュール304を用いることが可能となる。
【0066】
フランジ部材342は、
図2(A)、(B)に示す如く、第2ダイヤフラム構造体340を上部部材336と挟み込む形態で、上部部材336に支持されている。ここで、フランジ部材342の上端部342Cと開口部330Aの下端部330AAとの距離は、フランジ部材342のZ方向の上側への変位を規制して、一対の第1ダイヤフラム構造体314、315が弾性変形の範囲内となるようにされている。即ち、プローブモジュール304は、一対の第1ダイヤフラム構造体314、315の変形量を弾性変形の範囲内に制限する第1制限部材となるモジュールハウジング330及びフランジ部材342を備えているといえる。もちろん、スタイラス306やプローブモジュール304に過大な負荷が加わった場合には、第1制限部材(後述する第2制限部材を含む)が作用する前に、スタイラス306が脱落する構成となっている。フランジ部材342の下端外周には、周方向で120度毎に一対のローラ342Aが3つ設けられている。そして、中心軸O上に永久磁石342Bが3つ設けられている。なお、一対のローラ342Aの軸方向は、フランジ部材342の中心に向かう略径方向と同一とされている。
【0067】
前記スタイラス306は、
図2(A)、(B)に示す如く、フランジ部344と、ロッド部346と、接触部348と、を備える。
【0068】
フランジ部344は、
図2(A)、(B)に示す如く、フランジ部材342に対応する部材である。即ち、一対のローラ342Aの両方に接するように、球344Aがフランジ部344の周方向で120度毎に3つ配置されている。そして、フランジ部344には、永久磁石342Bに対応して、永久磁石342Bと引き合う磁性部材(永久磁石でよい)344Bが配置されている。
【0069】
ここで、3つの球344Aは、
図2(A)、(B)に示す如く、対応する一対のローラ342Aの表面それぞれに接触する。このため、永久磁石342Bと磁性部材344Bとが所定の力で引き合った状態では、フランジ部材342にフランジ部344が6点着座された状態となる。つまり、高い位置決め精度を実現しながら、フランジ部材342とフランジ部344とを連結することができる。即ち、フランジ部344とフランジ部材342とは、脱着可能な連結機構であるキネマティックジョイントを構成している状態である。このキネマティックジョイントにより、スタイラス306とフランジ部材342とが脱着を繰り返しても、高い位置決め再現性を実現することが可能である。なお、スタイラス306に横方向(軸方向Oと直交する方向)から大きな力が加わったときには、フランジ部材342からスタイラス306が脱落をして、プローブモジュール304の破損を防止することが可能である。
【0070】
ロッド部346は、
図2(A)、(B)に示す如く、その基端がフランジ部344に取り付けられている。ロッド部346の先端には、球形の接触部348が設けられている。なお、スタイラス306に変位がない基準状態においてスタイラス306の中心軸の方向がZ方向(軸方向O)となる。
【0071】
次に、プローブ信号処理部530について、
図3を用いて説明する。
【0072】
プローブ信号処理部530は、
図3に示す如く、A/D回路532と、FPGA534と、カウンタ回路536と、を備える。A/D回路532は、入力するアナログ信号であるZ2相sin波及びXY変位電圧をAD変換して、それぞれをデジタル信号とする。即ち、このときのAD変換のビット数が多いほど、スタイラス306の変位に対する高ダイナミックレンジ化と高感度化とを実現することができる。FPGA534では、デジタル信号のXY変位電圧を変位信号に変換し位置演算部550へ出力し、且つデジタル信号のZ2相sin波をZ2相方形波に変換しカウンタ回路536へ出力する。そして、カウンタ回路536では、Z2相方形波を計測してZ方向の変位を求め位置演算部550へ出力する。
【0073】
本実施形態では、軸運動機構310はプローブ本体302に内蔵され、且つ旋回運動機構334はプローブモジュール304のみに内蔵されている。このため、例えば、スタイラス306からスタイラス307に変更した際に、旋回運動機構334だけは性能的に変更したほうがよいといった場合があるとする。このとき、プローブ本体302を変えることなくプローブモジュール304を交換するだけで、例えば、接触部348から被測定物Wにかかる力を所望の測定力とすることができ、結果的に測定プローブ300で相応の検出感度及び復元力(スタイラス306の変位を元に戻す力)を実現することが可能である。逆に、同一のプローブモジュール304に対してプローブ本体302を交換するといったことも容易に実現することができる。また、旋回運動機構334のみが破損・性能低下した際には、プローブモジュール304の交換だけで測定プローブ300の機能を維持することができる。同時に、スタイラス306により近い旋回運動機構334による検出感度を向上させることが可能である。
【0074】
また、本実施形態では、プローブ本体302とプローブモジュール304とが互いに位置決め可能なローラ312Fと球332Bで脱着可能に連結されている。このため、プローブモジュール304の脱着を繰り返しても、連結位置を高い精度で再現することが可能である。また、複数のプローブモジュール304の球332Bの位置を共通にしておくことで、複数のプローブモジュール304を容易にプローブ本体302へ脱着でき、且つ高い位置再現性を実現することができる。もちろん、位置決め可能な第1係合部は、ローラと球で構成されることに限定されない。
【0075】
また、本実施形態では、スタイラス306のXYZ方向への変位を実現するために、基本的にZ方向への移動を軸運動機構310で行い、XY方向への移動を旋回運動機構334で行うようにしている。このため、Z方向、XY方向それぞれにスタイラス306の変位を分離できるので、Z方向、XY方向の変位の検出を独立して行うことが容易であり、位置演算の簡素化を実現することが可能である。同時に、Z方向、XY方向それぞれにおける検出精度も独立して設定することができる。
【0076】
また、本実施形態では、軸運動機構310が、一対の同一の第1ダイヤフラム構造体314、315に支持されている。このため、軸運動機構310のZ方向以外への変位を低減でき、Z方向への高い移動精度を確保できる。同時に、エアベアリングなどを移動部材のガイドに併用する場合に比べて、速い応答性を実現することができる。なお、これに限らず、一対の同一の第1ダイヤフラム構造体が用いられず、第1ダイヤフラム構造体が1つ、あるいは3つ以上でも良い。あるいは、第1ダイヤフラム構造体が互いに異なる形状とされていてもよい。
【0077】
また、本実施形態では、プローブ本体302の1つに対してプローブモジュール304を複数用意し、旋回部材RPの変位した際の単位変位量当たりの復元力をプローブモジュール304毎に異なるようにすることができる。このため、スタイラス306や被測定物Wに個別に対応する復元力を設定することができ、XY方向への変位の高感度検出が可能であるとともに検出範囲の拡大などが容易に実現可能である。同時に、被測定物Wへの接触部348によるダメージなども低減することが可能である。なお、これに限らず、旋回部材RPの変位した際の単位変位量当たりの復元力をプローブモジュール毎に変えなくてもよい。
【0078】
また、本実施形態では、旋回中心RCとバランス部材338との距離は調整可能とされている。このため、同じバランス部材338を採用しても、バランス部材338の位置を調整することで複数のスタイラス306に対して、それぞれのスタイラス306を連結した旋回部材RPの重心位置を旋回中心RCに一致させることが可能である。即ち、バランス部材338の種類を少なくできるので、バランス部材338の製造・管理に係るコストを低減することができる。そして、プローブ本体302の1つに対してプローブモジュール304を複数用意すると、同一部材の旋回部材RPで異なるバランスを有するプローブモジュール304を複数構成できるので、プローブモジュール304の低コスト化も可能である。なお、これに限らず、バランス部材の位置が調整不可能な形態であってもよい。
【0079】
また、本実施形態では、プローブ本体302の1つに対してプローブモジュール304を複数用意し、バランス部材338の質量がプローブモジュール304毎に異なるようにすることができる。このため、各スタイラス306に対して、対応するバランス部材338を備えるプローブモジュール304を用いることで、それぞれのスタイラス306を連結した状態の旋回部材RPの重心位置を旋回中心RCに一致させることが可能である。なお、バランス部材338の位置の調整が更に可能である場合には、1つのプローブ本体302において、更に多くのスタイラス306に正確に対応可能なプローブモジュール304を提供することが可能である。
【0080】
また、本実施形態では、本体ハウジング308には移動部材312の変位を検出する変位検出器328が設けられている。即ち、本体ハウジング308に支持された変位検出器328は、同じく本体ハウジング308に支持された(XY方向への移動を原則的に行わずにZ方向に移動する)移動部材312の変位を検出する。このため、変位検出器328は、高価な検出器でなくても、移動部材312の本体ハウジング308に対する1方向の変位を純粋に検出することができる。即ち、変位検出器328は、移動部材312の変位を高い分解能で検出することが可能であり、移動部材312の変位の補正を行うことが容易である。同時に、リニアエンコーダなどの使用も容易で、移動部材312(即ち、スタイラス306)のロングストローク化も可能である。なお、これに限らず、本体ハウジングに変位検出器が設けられていなくてもよい。
【0081】
また、本実施形態では、変位検出器328が移動部材312の相対的な位置の検出を可能とする相対位置検出信号(所定の周期で繰り返される周期信号)を出力する。このため、変位検出器328で光電式インクリメンタル型リニアエンコーダを構成することで、極めて長い検出範囲(ダイナミックレンジ)を確保しつつ、移動部材312の移動位置で検出感度が異なるといった現象を回避することが可能である。同時に、この相対位置検出信号を高いビット数のAD変換を行うことで、より高分解能にZ方向の位置を検出することが可能である。なお、これに限らず、変位検出器はインクリメンタルパターンを検出するのではなく、アブソリュートパターンを検出するようにされていてもよい。つまり、変位検出器は移動部材の絶対的な位置の検出を可能とする絶対位置検出信号を出力する構成であってもよい。あるいは、変位検出器が励磁コイルと差動コイルを備え、差動トランスを構成してもよい。
【0082】
また、本実施形態では、旋回部材RPの反スタイラス側端部に基準部材316が設けられ、姿勢検出器322が本体ハウジング308を備えるプローブ本体302に内蔵されている。即ち、プローブモジュール304に姿勢検出器322を設けていないので、プローブモジュール304自体を小型化し、且つ低コスト化することができる。そして、基準部材316はプローブモジュール304に内蔵されている。即ち、基準部材がプローブ本体の内側まで入り込むような構成に比べて、基準部材316から接触部348の位置までの距離を短くできる。即ち、基準部材316の変位から演算される接触部348の変位の演算誤差を少なくでき、接触部348の位置を高精度に求めることができる。
【0083】
また、本実施形態では、基準部材316である反射鏡へ光軸OAに沿って光を入射させる光源318が設けられ、姿勢検出器322は、反射鏡から反射される反射光の光軸OAからの変位を検出する。即ち、姿勢検出器322による検出は、非接触式なので、基準部材316が設けられた旋回部材RPの旋回運動を阻害することなく、旋回部材RPの変位を高い感度で検出することができる。同時に、旋回部材RPの変位を検出する構成が光てこであり単純なので、測定プローブ300の低コスト化が可能である。なお、これに限らず、姿勢検出器は、接触式であってもよいし、非接触式でも磁気等を利用する方式でもよい。
【0084】
また、本実施形態では、光軸OAが旋回中心RCを通るよう設けられている。このため、旋回部材RPの旋回動作によって生じる反射光の変化には、Z方向への変位成分が含まれないので、旋回部材RPの変位をより高感度に検出することが可能である。なお、これに限らず、光軸OAが旋回中心RCを通らない構成であってもよい。
【0085】
また、本実施形態では、プローブ本体302が一対の第1ダイヤフラム構造体314、315の変形量を弾性変形の範囲内に制限する本体ハウジング308及び移動部材312を備える。同時に、プローブモジュール304も、一対の第1ダイヤフラム構造体314、315の変形量を弾性変形の範囲内に制限するモジュールハウジング330及びフランジ部材342を備える。このため、例えばプローブモジュール304やスタイラス306に過大な衝撃がキネマティックジョイントの機能しない方向に加わった場合であっても、第1ダイヤフラム構造体314、315及の塑性変形や破損・破壊を防止することができる。なお、これに限らず、測定プローブは、第1ダイヤフラム構造体の変形量を弾性変形の範囲内に制限する部材を備えなくてもよい。
【0086】
即ち、本実施形態では、低コスト化を可能としながらスタイラス306に応じた相応の検出感度及び復元力が実現可能となる。
【0087】
本発明について上記実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち本発明の要旨を逸脱しない範囲においての改良並びに設計の変更が可能なことは言うまでもない。
【0088】
例えば、上記実施形態では、姿勢検出器322が一対の第1ダイヤフラム構造体314、315の上側に位置していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図8(A)、(B)に示す第2実施形態の如くであってもよい。第2実施形態では、第1実施形態とは主に姿勢検出器の位置が異なるだけなので、姿勢検出器に係る構成以外は、基本的に符号上位2桁を変更しただけとして説明は省略する。
【0089】
第2実施形態では、
図8(A)、(B)に示す如く、姿勢検出器372が旋回運動機構384と一対の第1ダイヤフラム構造体364、365との間に配置されている。具体的には、移動部材362は、Z方向において、第1ダイヤフラム構造体364に支持される位置の下方に凹部362Cを備えている。その凹部362Cに接触しない状態で本体ハウジング358の内側側面から支持部材369が延在している。そして、姿勢検出器372及びビームスプリッタ370が支持部材369に支持されている。このため、旋回部材RPの変位が大きくても、基準部材366と姿勢検出器372との距離を短くできるので、姿勢検出器372を小さくできる。即ち、プローブ本体352をより小型化することが可能となる。なお、凹部362Cの上端部362C1と支持部材369の上端部369Aとの距離及びフランジ部362Dの上端部362DAと開口部358Aの下端部358ABとの距離は、移動部材362のZ方向への変位を規制して、一対の第1ダイヤフラム構造体364、365が弾性変形の範囲内となるように定められている。つまり、本実施形態では、プローブ本体352は、一対の第1ダイヤフラム構造体364、365の変形量を弾性変形の範囲内に制限する第1制限部材となる本体ハウジング358、移動部材362、及び支持部材369を備えているといえる。
【0090】
なお、上記実施形態では、軸運動機構がプローブ本体に内蔵され、且つ旋回運動機構がプローブモジュールに内蔵されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図9に示す第3実施形態の如くであってもよい。第3実施形態では、上記実施形態とは主に軸運動機構と旋回運動機構の配置が逆となっているだけなので、主に軸運動機構と旋回運動機構の配置に係る構成以外は、基本的に符号上位2桁を変更しただけとして説明は省略する。
【0091】
第3実施形態では、
図9に示す如く、軸運動機構410がプローブモジュール404に内蔵され、且つ旋回運動機構434がプローブ本体402に内蔵されている。なお、本実施形態においても、スタイラス406は、複数(接触部448の材質や位置や質量等が異なる)が用意される。そして、スタイラス406に対応して、1つのプローブ本体402に対して、複数のプローブモジュール404(必ずしもスタイラス406の数と同一ではない)が用意される。
【0092】
旋回運動機構434は、
図9に示す如く、本体ハウジング(旋回ハウジング部材)408の径方向内側に支持されている。旋回運動機構434は、旋回部材442のフランジ部442Eを除いて本体ハウジング408の内側に収納されている。フランジ部442Eは、プローブモジュール404の内側に入り込むことなく、プローブモジュール404に連結されている。そして、旋回運動機構434は、
図9に示す如く、旋回部材442と、旋回部材442を本体ハウジング408に対して変位可能とする第2ダイヤフラム構造体440と、を備える。
【0093】
旋回部材442は、
図9に示す如く、軸心を中空部442Bとした略円環形状とされている。より具体的には、旋回部材442は、Z方向の上方から下方に向かって、肉厚部442C、肉薄部442D、及びフランジ部442Eが一体とされ構成されている。肉厚部442Cには、第2ダイヤフラム構造体440が連結されている。肉薄部442Dは、肉厚部442Cの下方に形成されている。なお、本体ハウジング408の開口部408Aの開口径は、肉厚部442Cの外径よりも小さくされている。そして、フランジ部442Eの外径は、開口部408Aの開口径よりも大きくされている。ここで、肉厚部442Cの下端部442CAと開口部408Aの上端部408AAとの距離及びフランジ部442Eの上端部442EAと開口部408Aの下端部408ABとの距離で、旋回部材442の変位を規制して、第2ダイヤフラム構造体440が弾性変形の範囲内となるように定めてもよい。また、肉薄部442Dの外側面と開口部408Aの内端面との距離で、旋回部材442の変位を規制して、第2ダイヤフラム構造体440が弾性変形の範囲内となるように定めてもよい(この場合には、プローブ本体402は、第2ダイヤフラム構造体440の変形量を弾性変形の範囲内に制限する第2制限部材となる本体ハウジング408及び旋回部材442を備えているといえる)。
【0094】
軸運動機構410は、
図9に示す如く、モジュールハウジング(軸ハウジング部材)430の径方向内側に支持されており、移動部材412のフランジ部412Eを除いてモジュールハウジング430の内側に収納されている。フランジ部412Eは、スタイラス406の内側に入り込むことなく、スタイラス406に連結されている。そして、軸運動機構410は、
図9に示す如く、移動部材412と、移動部材412をモジュールハウジング430に対して変位可能とする一対の第1ダイヤフラム構造体414、415と、を備える。
【0095】
なお、
図9に示す如く、移動部材412の上端部412Aには、反射鏡とされた基準部材416が配置されており、旋回部材442の中空部442Bを通過した光が基準部材416で反射する構成となっている。また、移動部材412の側面に設けられた基準部材426に対向して、移動部材412の変位を検出する変位検出器428がモジュールハウジング430の内側に配置されている(即ち、変位検出器428は、プローブモジュール404に内蔵されている)。なお、変位検出器428は、基準部材426に光を照射する光源を内蔵している。基準部材426の変位検出器428側の表面には、例えば光源からの光の反射率が異なるインクリメンタルパターンが一定間隔で軸方向Oに設けられている。即ち、基準部材426は、反射型のリニアエンコーダのスケールとされている。この基準部材426、変位検出器428、光源により、第1実施形態の如く光電式リニアエンコーダ(インクリメンタル型でもアブソリュート型のいずれでもよい)が構成されている。なお、変位検出器はプローブモジュールに内蔵されていなくてもよい。
【0096】
このように、本実施形態では、軸運動機構410はプローブモジュール404に内蔵され、且つ旋回運動機構434はプローブ本体402のみに内蔵されている。このため、例えば、スタイラス406を変更した際に、軸運動機構410だけは性能的に変更したほうがよいといった場合があるとする。このとき、プローブ本体402を変えることなくプローブモジュール404を交換するだけで、例えば、検出範囲を適宜変更することで、、軸運動機構410の移動部材412の変位精度(直進性)を向上させることが可能である(つまり、移動部材412のモジュールハウジング430に対する相対的な変位のみを高精度に検出することができる)。逆に、同一のプローブモジュール404に対してプローブ本体402を交換するといったことも容易に実現することができる。また、軸運動機構410のみが破損・性能低下した際には、プローブモジュール404の交換だけで測定プローブ400の機能を維持することができる。
【0097】
また、本実施形態では、プローブ本体402の1つに対してプローブモジュール404を複数用意し、軸運動機構410の変位した際の単位変位量当たりの復元力をプローブモジュール404毎に異なるようにすることができる。このため、スタイラス406や被測定物Wに個別に対応する復元力を設定することができ、モジュールハウジング430に対する1方向への変位の高感度検出が可能であるとともに検出範囲の拡大などが容易に実現可能である。同時に、被測定物Wへのダメージなども低減することが可能である。
【0098】
なお、上記実施形態では、変位検出器を用いて光電式インクリメンタル型リニアエンコーダを構成していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図10に示す第4実施形態の如くであってもよい。第4実施形態では、第2実施形態とは主に変位検出器周辺の構成が異なるだけなので、主に変位検出器周辺の構成以外は、基本的に符号上位2桁を変更しただけとして説明は省略する。
【0099】
第4実施形態では、
図10、
図11(A)に示す如く、プローブ本体452には、光源(干渉光源部)478と、光源478からの光を反射する参照ミラー475と、移動部材462に配置されるとともに光源478からの光を反射する基準部材(ターゲットミラー)474と、を備え、参照ミラー475及び基準部材474からの反射光それぞれを干渉させて複数の干渉縞ILを生成可能な干渉光学系IFが設けられている。光源478と参照ミラー475とは、本体ハウジング458の内側に固定されている。光源478と移動部材462の上端部462Aに配置された基準部材474とはZ方向に並んでおり、その間にビームスプリッタ477が配置されている。ビームスプリッタ477も本体ハウジング458の内側に固定され、全体でマイケルソン型の干渉光学系IFが構成されている。
【0100】
図10、
図11(A)に示す如く、ビームスプリッタ477は、光源478からの光を参照ミラー475の方向に分岐させる。また、ビームスプリッタ477は、基準部材474で反射される反射光を、参照ミラー475と対向しビームスプリッタ477に対向する変位検出器476に導く。同時に、変位検出器476には、参照ミラー475で反射されビームスプリッタ477を通過した光が入射する構成とされている。このため、変位検出器476は、
図11(B)に示す如く、干渉光学系IFで生成される複数の干渉縞ILの位相変化PSを検出可能としている。
【0101】
なお、
図11(C)には、変位検出器476で検出される複数の干渉縞ILの光量Iを示している。ここで、位相変化PSは、基準部材474のZ方向への移動量を反映している。このため、この位相変化Pを求めることで、移動部材462のZ方向への変位量を求めることができる。このときに、複数の干渉縞ILは干渉光で構成され且つ周期的なので、位相変化Pを高精度に求めることができる(本実施形態でも、変位検出器476は、移動部材462の相対的な位置の検出を可能とする相対位置検出信号を出力する構成ということができる)。
【0102】
つまり、本実施形態では、上記実施形態よりもさらに移動部材462のZ方向への変位を精度良く求めることが可能である。同時に、この複数の干渉縞ILの光量Iの周期1/Fは、基準部材474の傾きを反映している。このため、この周期1/Fの変化を求めることで、移動部材462のわずかなXY方向への傾きを求めることができる。つまり、本実施形態では、変位検出器476の出力から移動部材462のZ方向への変位に伴う移動部材462のわずかなXY方向への傾きを求めることもできるので、接触部498のXY方向への変位をより高精度に求めることが可能である。なお、本実施形態の干渉光学系IFだけが移動部材462のXY方向への傾きを求められるわけではなく、原理的には他の実施形態で示される変位検出器であってもXY方向への傾きを求めることができる。また、本実施形態では、1波長のみを使用することを想定しているが、2波長以上を使用する場合には、変位検出器が移動部材の絶対的な位置の検出を可能とする絶対位置検出信号を出力することが可能となる。
【0103】
なお、上記実施形態では、スタイラスが変更された際に、スタイラスの質量に従って移動部材の軸方向Oへの変位を許容する構成であったが、本発明はこれに限定されない。例えば
図12(A)に示す第5実施形態の如くであってもよい。第5実施形態では、第2実施形態とは主にプローブ本体とプローブモジュールとの連結状態が異なるだけなので、主にプローブ本体とプローブモジュールの周辺の構成以外は、基本的に符号上位2桁を変更しただけとして説明は省略する。
【0104】
第5実施形態では、
図12(A)に示す如く、プローブモジュール704が、スタイラス706の質量に応じたバランスウェイト731Cと、カウンタバランス機構731と、備える。カウンタバランス機構731は、本体ハウジング(軸ハウジング部材)708に支持され、モジュールハウジング(旋回ハウジング部材)730を介してスタイラス706とバランスウェイト731Cとの間のZ方向におけるバランスをとる構成とされている。カウンタバランス機構731は、プローブモジュール704の一部として脱着可能とされている。
【0105】
具体的に説明すると、
図12(A)に示す如く、本体ハウジング708はプローブモジュール704の外周下端までを覆うように、Z方向下方に延在された円筒形状の延在部708Aを備えている。そして、延在部708Aの内側において周方向に均等間隔で3か所以上に、永久磁石708Bが設けられている。
【0106】
一方、カウンタバランス機構731は、
図12(A)に示す如く、永久磁石708Bの位置と数に対応して、モジュールハウジング730の3か所以上に設けられている。カウンタバランス機構731は、支持部材731Aと支持軸731Bと連結軸731Dを備える。支持部材731Aの上面には永久磁石708Bに吸着可能な磁性部材(磁石でもよい)731AAが設けられている。支持軸731Bは、支持部材731Aに固定され、支持軸731Bから重心位置がずれた状態でバランスウェイト731Cが連結されている。バランスウェイト731Cには、Z方向と直交する方向に連結軸731Dが設けられており、その先端がモジュールハウジング730に連結されている。
【0107】
これにより、本実施形態では、プローブ本体702の1つに対してプローブモジュール704を複数用意し、バランスウェイト731Cの質量をプローブモジュール704毎に異なるようにすることができる。つまり、スタイラス706を交換した際に、そのスタイラス706の質量に対応したバランスウェイト731Cが設けられたプローブモジュール704を用いることで、スタイラス706の質量の増減分を本体ハウジング708で直接受け止めることができる。即ち、スタイラス706違いによって、移動部材712の初期位置のZ方向の変動を防止することが可能である。つまり、本実施形態では、上記実施形態に比べて移動部材712の可動範囲を狭くでき、プローブ本体702の一層の小型化が可能となる。同時に、検出範囲(ダイナミックレンジ)を狭くできることから、移動部材712の変位量をより高い分解能で検出することが可能である。
【0108】
なお、
図12(B)は、第5実施形態のバリエーションである第6実施形態を示している。ここでは、本体ハウジングが円筒形状の延在部を一体的に備えるのではなく、カウンタバランス機構731の支持部材781Aが、円環形状とされてプローブモジュール754の一部としてプローブ本体752から分離可能な構成となっている。
【0109】
図12(B)に示す如く、本体ハウジング758の開口部758Aの外周には、周方向で120度毎に一対のローラ758B(第1係合部)が3つ設けられている。そして、ローラ758Bの径方向内側に位置する移動部材762のフランジ部762Dに円環形状の永久磁石762Eが設けられている。そして、
図12(B)、
図13(A)に示す如く、ローラ758Bに対応する球781Fを、支持部材781Aのフランジ部781Eに設けている(なお、フランジ部781Eは、支持軸781Bを支持している)。また、
図12(B)、
図13(A)、(B)に示す如く、永久磁石762Eに対応する磁性部材780Aをモジュールハウジング780に設けている。
【0110】
つまり、本実施形態では、第5実施形態とは異なり、フランジ部762Dから一対のローラを排除し且つハウジングカバーを無くして、ローラ758Bに対応する球781Fをモジュールハウジング780の外側の支持部材781Aに設けている。このため、本実施形態では、軸運動機構760及び旋回運動機構784を軽量化することが可能である。なお、
図13(C)に示す如く、フランジ部材792の永久磁石792Bに対応する磁性部材(永久磁石でもよい)794Bはリング形状とされ、フランジ部794の球794Aの配置された径方向位置より内側に配置されている。
【0111】
なお、第3実施形態では、姿勢検出器422が、プローブ本体702に内蔵されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図14に示す第7実施形態の如くであってもよい。第7実施形態は、丁度、第3実施形態のプローブ本体402が軸方向Oでビームスプリッタ420と旋回部材442との間で分離可能とされた形態となっている。つまり、第3実施形態とは主に姿勢検出器の位置が異なるだけなので、主に姿勢検出器の位置に係る構成以外は、基本的に符号上位2桁を変更しただけとして説明は省略する。
【0112】
第7実施形態では、
図14に示す如く、旋回運動機構834を支持する本体ハウジング808を、位置決め可能なローラ801BBと球807B(第2係合部)で脱着可能に連結し支持する前段モジュール801を備えている。そして、姿勢検出器822は、前段モジュール801に内蔵されている。
【0113】
具体的に、前段モジュール801は、
図14に示す如く、前段ハウジング801Aと、光源818と、ビームスプリッタ820と、姿勢検出器822と、を備えている。前段ハウジング801Aは、光源818とビームスプリッタ820と姿勢検出器822とを径方向内側で支持しており、下端に下カバー801Bを備えている。下カバー801Bは、中心に開口部801BAを備えるフランジ形状とされている。下カバー801Bの下端外周には、
図14に示す如く、周方向で120度毎に一対のローラ801BBが3つ設けられている。そして、ローラ801BBとは周方向で位相が60度ずれた状態で永久磁石801BCが3つ設けられている。つまり、前段ハウジング801Aは、本体ハウジング808を位置決め可能なローラ801BBと球807Bで脱着可能に連結し支持している。そして、前段ハウジング801Aは、姿勢検出器822を収納している構成である。
【0114】
プローブ本体802は、
図14に示す如く、上カバー807と、本体ハウジング808と、旋回運動機構834と、を備えている。上カバー807は、
図14に示す如く、中心に開口部807Aを備えるフランジ形状とされている。上カバー807は、下カバー801Bに対応する部材である(このため、開口部807Aにより、基準部材816への入射光及び基準部材816からの反射光の光路が確保されている)。また、一対のローラ801BBの両方に接するように、球807Bが上カバー807の周方向で120度毎に3つ配置されている。そして、永久磁石801BCに対応して、磁性部材(永久磁石でよい)807Cが配置されている。つまり、即ち、下カバー801Bと上カバー807とは、脱着可能な連結機構であるキネマティックジョイントを構成している状態である。このキネマティックジョイントにより、下カバー801Bとプローブ本体802とが脱着を繰り返しても、高い位置決め再現性を実現することが可能である。
【0115】
このように、本実施形態では、プローブ本体802には旋回運動機構834のみが内蔵され且つ前段モジュール801には光源818とビームスプリッタ820と姿勢検出器822とが内蔵された形態である。このため、旋回運動機構834のみの変更が容易であるとともに、前段モジュール801の変更も容易である。つまり、旋回運動機構834と姿勢検出器822とを別個に性能変更することや交換することが可能となり、そのコストを低減することができる。また、例えば、プローブ本体802を装着せずに、前段モジュール801に直接的にプローブモジュール804を装着して、姿勢検出器822の出力を利用してプローブモジュール804の直進性を検査すること等も可能となる。なお、本実施形態では、軸運動機構810がスタイラス806を直接的に支持していたが、第1実施形態等の如く旋回部材RPがスタイラスを直接的に支持している際に前段モジュールが設けられている形態でもよい。そして、前段モジュールに変位検出器も内蔵される構成であってもよい。
【0116】
また、上記実施形態では、スタイラスの変位をダンピングする構成を示さなかったが、本発明はこれに限定されない。例えば、軸ハウジング部材と一体とされ移動部材に対峙して配置される第1壁部材と、移動部材と、の間の少なくとも一部の隙間にグリースオイルなどの第1粘性材料FVが充填される構成を採用してもよい。例えば、
図2(A)では、破線で示された第1壁部材を符号309Aで示すことができる。ここでの「充填」は、Z方向の少なくとも一か所で第1壁部材309Aと移動部材312との間に第1粘性材料FVが隙間なく配置されることで満たされるとする(必ずしも軸対称で、充填される必要はない)。これにより、少なくとも第1粘性材料FVが第1壁部材309Aに対する移動部材312の変位をダンピングし、測定プローブ300の移動に伴って生じるZ方向への振動などを低減でき、測定プローブ300の高感度化に伴うノイズの増大を防止することが可能となる。
【0117】
このような構成は、Z方向だけでなく、XY方向に対しても採用することができる。例えば、旋回ハウジング部材と一体とされて配置される第2壁部材と、第2ダイヤフラム構造体と、の間の少なくとも一部の隙間にグリースオイルなどの第2粘性材料SVが充填される場合である。例えば、
図2(A)では、破線で示された第2壁部材を符号309Bで示すことができる。ここでの「充填」は、XY方向の少なくとも一か所で第2壁部材309Bと第2ダイヤフラム構造体340(もしくは第2壁部材を適切に配置することで旋回部材RPでもよい)との間に第2粘性材料SVが隙間なく配置されることで満たされるとする(必ずしも軸対称で、充填される必要はない)。これにより、少なくとも第2粘性材料SVが第2壁部材309Bに対する旋回部材RPの変位をダンピングし、測定プローブ300の移動に伴って生じるXY方向への振動などを低減でき、測定プローブ300の高感度化に伴うノイズの増大を防止することが可能となる。つまり、第1粘性材料FVと第2粘性材料SVとにより、測定プローブ300の高速移動を行っても、ノイズの増大を抑えることが可能となる。加えて、このときには、Z方向とXY方向のダンピング構造を別々に有するので、第1粘性材料FV、第2粘性材料SVとを個別に変更できる。このため、Z方向とXY方向とでダンピング特性を個別に最適化できる。
【0118】
また、上記実施形態では、測定プローブは倣いプローブとして使用されていたが、本発明はこれに限定されず、例えばタッチプローブとして使用されてもよい。
【符号の説明】
【0120】
100…測定システム
110…操作部
111…ジョイスティック
120…入力手段
130…出力手段
200…三次元測定機
210…定盤
220…駆動機構
221…ビーム支持体
222…ビーム
223…コラム
224…スピンドル
230…駆動センサ
300、350、400、450、700、750、800…測定プローブ
302、352、402、452、702、752、802…プローブ本体
304、305、354、404、454、704、754、804…プローブモジュール
306、307、356、406、456、706、756、806…スタイラス
308、358、408、458、708、758、808…本体ハウジング
308A、330A、332A、358A、408A、758A、807A、810BA…開口部
308AA、312A、312EA、342C、362A、362C1、362DA、369A、408AA、412A、442EA、462A、712A…上端部
308AB、312CA、330AA、358AB、408AB、442CA…下端部
309A…第1壁部材
309B…第2壁部材
310、360、410、460、710、760、810…軸運動機構
312、362、412、462、712、762、812…移動部材
312B、362B、442B、842B…中空部
312C、442C…肉厚部
312D、442D…肉薄部
312E、344、345、362D、394、412E、442E、444、462D、494、712D、744、762D、781E、794…フランジ部
312F、342A、758B、792A、801BB…ローラ
312G、342B、708B、762E、792B、801BC…永久磁石
314、315、364、365、414、415、714、715、764、765、814、815…第1ダイヤフラム構造体
314A、340A…外周部
314B、340G…リム部
314C、340B…中心部
314D、340E、340F…切り抜き部
316、317、326、366、376、416、426、466、474、716、726、816、826…基準部材
318、368、418、468、478、718、818…光源
319、369、419、731A、781A、819…支持部材
320、370、420、470、477、720、820…ビームスプリッタ(BS)
322、372、422、472、722、822…姿勢検出器
324、374、724…スケールブラケット
328、378、428、476、728、828…変位検出器
329…信号処理回路
330、331、380、430、480、730、780、830…モジュールハウジング
330B…内側側面
332、333、382、432、482、732、832…モジュールカバー
332B、344A、781F、794A、807B…球
332C、344B、731AA、780A、781AA、794B、807C…磁性部材
334、335、384、434、484、734、784、834…旋回運動機構
336、337、386、486、736、786…上部部材
336A…凸部
340、341、390、440、490、740、790、840…第2ダイヤフラム構造体
338、339、388、488、738、788…バランス部材
338A、362C、462C、712C…凹部
338B…側面
340C、340D…ヒンジ部
342、343、392、492、742、792…フランジ部材
346、347、396、446、496、746、796…ロッド部
348、349、398、448、498、748、798…接触部
475…参照ミラー
500…モーションコントローラ
530…プローブ信号処理部
532…A/D回路
534…FPGA
536…カウンタ回路
550…位置演算部
600…ホストコンピュータ
708A…延在部
731、781…カウンタバランス機構
731B、781B…支持軸
731C、781C…バランスウェイト
731D、781D…連結軸
801…前段モジュール
801A…前段ハウジング
801B…下カバー
807…上カバー
F…周波数
FV…第1粘性材料
IF…干渉光学系
I…光量
IL…干渉縞
k…角度当たりの復元力
O…軸方向
OA…光軸
PS…位相変化
RC…旋回中心
RP、442、842…旋回部材
S…表面
SV…第2粘性材料
W…被測定物