【文献】
Imm, S. et al,Angew. Chem. Int. Ed.,2011年,vol.50,p.7599-7603
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
該アルコールが、イソソルビド、イソマンニド、イソイジド及びこれらの化合物の混合物からなる群から選択されている、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコールを、アンモニアを用いて、ルテニウム並びに少なくとも1種の少なくとも二座のドナー配位子を有する少なくとも1種の錯体触媒の存在下で、水脱離下でアルコールアミノ化することによる、第一級アミンの製造方法に関する。
【0002】
第一級アミンは、少なくとも1個の第一級アミノ基(−NH
2)を有する化合物である。第一級アミンは、多数の多様な用途を有する、例えば、溶剤又は安定剤として、キレート化剤の合成のため、合成樹脂、防止剤、界面活性物質の製造のための出発物質として、燃料添加物、界面活性剤、医薬及び作物保護剤の製造の際の中間生成物として、エポキシ樹脂用の硬化剤、ポリウレタン用の触媒として、第四級アンモニウム化合物、可塑剤、腐食抑制剤、合成樹脂、イオン交換体、繊維助剤、着色剤、加硫促進剤及び/又は乳化剤の製造のための中間生成物として、有益な生成物である。
【0003】
第一級アミンは現在、アンモニアを用いるアルコールの不均一系触媒作用によるアルコールアミノ化により製造される。WO 2008/006752 A1には、第一級又は第二級のアルコールをアンモニアと、二酸化ジルコニウムとニッケルとを含有する不均一系触媒の存在下で反応させることによる、アミンの製造方法が記載されている。該反応は、150〜210℃の範囲内の温度及び30〜200バールの範囲内のアンモニア圧で実施される。
【0004】
第一級及び第二級のアミンを用いるモノアルコールの均一系触媒作用によるアミノ化は、1970年代以来知られており、かつ例えばUS 3,708,539に記載されている。この場合に、トリフェニルホスフィンと、アニオン性配位子、例えばヒドリドイオン、ハロゲニドイオン又は硝酸イオンとを有する、ルテニウム触媒又はオスミウム触媒が使用される。US 3,708,539に記載された触媒系では、第一級アミン及び第二級アミンを用いるモノアルコールのアミノ化のみが可能である。経済的に最も魅力的なアミノ化反応である、アルコールとアンモニアとの反応は、この仕事に記載されていない。
【0005】
WO 2010/018570及びC. Gunanathan, D. Milstein, Angew. Chem. Int. Ed. 2008, 47, 8661-8664には、アンモニアを用いて第一級モノアルコールを、ルテニウム錯体触媒の存在下でアミノ化して、第一級モノアミンを得ることが記載されている。該錯体触媒中に含まれるルテニウムは、その際に、付加的にイソプロピル置換されたホスフィン基を有する、アクリジニルをベースとする配位子へ錯化されている。該錯体触媒中のルテニウムは、その際に、2個のアニオン性配位子並びに一酸化炭素を持っており、かつ次の式:
【化1】
に相当する。
【0006】
該錯体触媒は、トルエン中の[RuHCl(PPh
3)
3(CO)]から、対応する配位子(4,5−ビス−(ジ−イソプロピルホスフィノメチル)アクリジン)の添加及びその後の該溶剤の除去下に製造される。
【0007】
該錯体触媒のルテニウムには、1個のクロリドアニオン及び1個のヒドリドアニオンが結合されている。これは、ルテニウム一水素化物とも呼ばれる。第二級のアルコール並びにジオール、トリオール又はポリオールを反応させて、第一級のモノアミン、ジアミン、トリアミン又はポリアミンを得ることは、WO 2010/018570に記載されていない。
【0008】
前記の錯体触媒にとって不利であるのは、これがまず最初に、該アルコールアミノ化の上流の二段階法において用意しなければならないことである。
【0009】
S. Imm, S. Baehn, L. Neubert, H. Neumann, M. Beller, Angew. Chem. 2010, 122, 8303-8306及びD. Pingen, C. Mueller, D. Vogt, Angew. Chem. 2010, 122, 8307-8310には、アンモニアを用いる第二級アルコール、例えばシクロヘキサノールの、ルテニウム触媒を用いる均一系触媒作用によるアミノ化が記載されている。リンドナー配位子として、ここでは、単座ホスフィン配位子が使用される。
これらの方法にとって不利であるのは、必要な触媒負荷が、該基質を基準として6モル%で、高いことである。
【0010】
DE 10 2011 004 465及びS. Imm, S. Baehn, M. Zang, L. Neubert, H. Neumann, F. Klasovsky, J. Pfeffer, T. Haas及びM. Beller, Angew. Chem. 2011, 123, 7741-7745には、アンモニアを用いる第二級アルコールの均一系触媒作用によるアミノ化法が記載されている。良好な結果は、その際に、キサントホス(4,5−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン)及び[Ru(CO)ClH(PPh
3)
3]から入手可能である、錯体触媒を用いて達成される。良好な結果は、同様に、錯体触媒カルボニルクロロヒドリド−[4,5−(ジ−イソプロピルホスフィノメチル−アクリジノ)ルテニウム(II)]を用いて達成される。この錯体触媒は、前記でWO 2010/018570に関連して示された式に相当する。
【0011】
DE 10 2011 004 465に記載された錯体触媒も、該ルテニウムへ錯化されているアニオン性配位子を有する。DE 10 2011 004 465に記載された錯体触媒は同様に、ルテニウム−ヒドリド部分構造を有する。
【0012】
技術水準には、第一級及び第二級のアルコールを均一系触媒作用により反応させて、第一級アミンを得ることが記載されてはいるが、それにもかかわらず、活性及び選択率に関して、既に公知の触媒系から際立ち、かつ有利に該アルコールアミノ化の反応条件下でその場で製造可能である、代替的な方法への大きな需要がある。
【0013】
本発明の課題は、アルコール、特に第二級アルコールを、アンモニアを用いて、水脱離下に均一系触媒作用によりアルコールアミノ化することによる第一級アミンの製造方法を提供することである。本方法は、該第一級アミンを良好な収率及び選択率で提供するべきであり、かつ望ましくない副生物、例えば第二級又は第三級のアミンの形成は、できる限り回避されるべきである。更にまた、本方法は、理想的には、該アルコールアミノ化の反応条件下でその場で直接入手可能である、より容易に入手可能な錯体触媒の使用も可能にすべきである。
【0014】
該課題は、アルコールを、アンモニアを用いて水脱離下でアルコールアミノ化することによる第一級アミンの製造方法により解決され、その際に、該アルコールアミノ化は、ルテニウム並びに少なくとも1種のドナー配位子を有するが、しかしながらアニオン性配位子を有しない、少なくとも1種の錯体触媒の存在下で均一系触媒作用により実施される。
【0015】
意外なことに、ルテニウム並びに少なくとも1種のドナー配位子を有するが、しかしながらアニオン性配位子を有しない、本発明による方法において使用される錯体触媒を用いて、第一級アミンが、技術水準に記載された方法に比べて、一部には、明らかに改善された収率で得られることが確かめられた。
【0016】
該均一系触媒作用によるアルコールアミノ化の際に、使用されるアルコールのヒドロキシル基(−OH)はアンモニアと反応して、第一級アミノ基(−NH
2)が得られ、その際に、反応されるヒドロキシル基1個につき1分子の水が生じる。
【0017】
出発物質
本発明による方法において、少なくとも1個のヒドロキシル基(以下にOH基とも呼ぶ)を有するアルコールが出発物質として使用される。該OH基はその際に、官能基(−CH
2−OH)(第一級アルコール基)の形態で又は官能基(>CH−OH)(第二級アルコール基)の形態で、存在してよい。
【0018】
本発明による方法において、好ましくは、式(>CH−OH)の少なくとも1個の官能基、すなわち少なくとも1種の第二級アルコール基を有する、出発物質が使用される。特に好ましくは、出発物質として、少なくとも2個の第二級アルコール基を有する、アルコールが使用される。
【0019】
出発物質として、前記の必要条件を満たす、事実上全てのアルコールが適している。該アルコールは、直鎖状、分枝鎖状又は環状であってよい。該アルコールは更にまた、該アルコールアミノ化の反応条件下で不活性に振る舞う置換基、例えばアルコキシ、アルケニルオキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ及びハロゲン(F、Cl、Br、I)を持っていてよい。出発物質として、本発明によれば、それゆえ、好ましくは式(>CH−OH)の少なくとも1個の官能基を有する、モノアルコール、ジオール、トリオール、ポリオール及びアルカノールアミンを使用することができる。
【0020】
本発明により使用されうるモノアルコールは、1個のみのヒドロキシル基を有するアルコールである。本発明により使用されうるジオール、トリオール及びポリオールは、2個、3個又はそれより多くのヒドロキシル基を有するアルコールである。本発明により使用されうるアルカノールアミンは、少なくとも1個のヒドロキシル基と、少なくとも1個の別の第一級、第二級又は第三級のアミノ基とを有する化合物である。
【0021】
適したアルコールは、例えば、一般式(XX)で示されるものである:
【化2】
ここで、
R
20及びR
21は、互いに独立して、水素、置換されていないか又は少なくとも一置換されたC
1〜C
30−アルキル、C
5〜C
10−シクロアルキル、C
5〜C
10−ヘテロシクリル、C
5〜C
14−アリール及びC
5〜C
14−ヘテロアリールからなる群から選択されているか、又はR
20及びR
21は、これらが結合している炭素原子と一緒になって、置換されていないか又は少なくとも一置換された5〜12員の環系を形成し、
その際に、該置換基は、F、Cl、Br、OH、OR
22、CN、NH
2、NHR
22、N(R
22)
2、COOH、COOR
22、C(O)NH
2、C(O)NHR
22、C(O)N(R
22)
2、C
1〜C
10−アルキル、C
5〜C
10−シクロアルキル、C
5〜C
10−ヘテロシクリル、C
5〜C
14−アリール及びC
5〜C
14−ヘテロアリールからなる群から選択されており、
その際に、R
22は、C
1〜C
10−アルキル及びC
5〜C
10−アリールから選択されている。
【0022】
R
20及びR
21が、これらが結合している炭素原子と一緒になって、環系を形成する場合には、該環系は好ましくは、置換されていないか又は少なくとも一置換されたC
5〜C
14−シクロアルキル、C
5〜C
14−ヘテロシクリル、C
5〜C
14−アリール及びC
5〜C
14−ヘテロアリールからなる群から選択されており、その際に、該置換基は前記の意味を有する。
【0023】
特に好ましい環系は、置換されていないか又は少なくとも一置換されたシクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、フェニル、ナフチル、アントリル及びフェナントリルからなる群から選択されている。
【0024】
適しているのは、例えば、次のアルコールである:メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、n−オクタノール、n−ノナノール、2−エチルヘキサノール、トリデカノール、ステアリルアルコール、パルミチルアルコール、ベンジルアルコール、2−フェニル−エタノール、2−(p−メトキシフェニル)エタノール、フルフリルアルコール、2−(3,4−ジメトキシフェニル)エタノール、ヒドロキシメチルフルフラール、アリルアルコール、プロパルギルアルコール、乳酸及びセリン。
【0025】
出発物質として好ましいのは、少なくとも2個のヒドロキシル基を有するアルコールである。
【0026】
出発物質として特に好ましいのは、式(>CH−OH)の少なくとも2個の官能基(第二級アルコール基)を有するアルコールである。
【0027】
出発物質として本発明による方法において使用することができるジオールの例は、1,2−エタンジオール(エチレングリコール)、1,2−プロパンジオール(1,2−プロピレングリコール)、1,3−プロパンジオール(1,3−プロピレングリコール)、1,4−ブタンジオール(1,4−ブチレングリコール)、1,2−ブタンジオール(1,2−ブチレングリコール)、2,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、1,5−ペンタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,2−ノナンジオール、2,4−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、ヒドロキシピバル酸ネオペンチルグリコールエステル、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−ブチン−1,4−ジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、例えば1,2−ポリプロピレングリコール及び1,3−ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ジエタノールアミン、1,4−ビス−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、ジイソプロパノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、2,5−(ジメタノール)−フラン、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、C
36−ジオール(実験式(C
36H
74O
2)のアルコールの異性体の混合物)及びN−メチルジエタノールアミン、イソソルビド(1,4:3,6−ジアンヒドログルシトール)、イソマンニド(1,4:3,6−ジアンヒドロマンニトール、ジイソプロパノール−p−トルイジン、N,N−ジ−(2−ヒドロキシエチル)アニリン、グルカル酸−1,4:6,3−ジラクトン(CAS 826-91-5)、ジイソプロパノールアミンである。2,5−(ジメタノール)−フランは、2,5−ビス(ヒドロキシメチル)フランとも呼ばれる。
【0028】
式(>CH−OH)の少なくとも2個の官能基(第二級アルコール基)を有する、特に好ましいジオールは、グルカル酸−1,4:6,3−ジラクトン、イソソルビド、イソマンニド、イソイジド、マンニトール、ソルビトール及びガラクチトールから選択されている。
【0029】
出発物質として、式(−CH
2−OH)又は(>CH−OH)の少なくとも1個の官能基を有する、公知のあらゆるトリオール又はポリオール、特に好ましくは、式(−CH
2−OH)及び/又は(>CH−OH)の少なくとも2個の官能基を有するトリオールを使用することができる。出発物質として本発明による方法において使用することができる、トリオール又はポリオールの例は、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール(ペンタエリトリトール)、ソルビトール、イノシトール、炭水化物、糖類、糖アルコール及びポリマー、例えばグルコース、マンノース、フルクトース、リボース、デオキシリボース、ガラクトース、N−アセチル−グルコサミン、フコース、ラムノース、サッカロース、ラクトース、セロビオース、マルトース及びアミロース、セルロース、デンプン及びキサンタンである。
【0030】
好ましいのは、少なくとも2個の第二級アルコール基(>CH−OH)を有する、トリオール又はポリオールである。
【0031】
本発明による方法は、熱的に不安定であり、かつ蒸発の際に、減圧下でも、分解する傾向のある、アルコールのアミノ化に特に適している。
【0032】
特に好ましいアルコールは、糖類、糖アルコール及びそれらから化学反応により(例えば脱水により)誘導可能な誘導体、例えばデオキシ糖類及びC−又はO−グリコシドからなる群から選択されている。
【0033】
極めて特に好ましいアルコールは、イソソルビド、イソマンニド、イソイジド、マンニトール、グルカル酸−1,4:6,3−ジラクトン、ソルビトール及びガラクチトールからなる群から選択されている。
【0034】
最も好ましいアルコールは、イソソルビド及びイソマンニドからなる群から選択されている。アルコールとしてのイソソルビド及びイソマンニドの中では、イソソルビドが好ましい。
【0035】
出発物質として、更にまた、少なくとも1個のOH基、好ましくは第一級又は第二級のヒドロキシル基と少なくとも1個の第一級アミノ基(−NH
2)とを有する、公知のあらゆるアルカノールアミンも使用することができる。該アルカノールアミンは、本発明の範囲内で、出発物質として使用されうるアルコールに含まれる。出発物質として本発明による方法において使用することができる、アルカノールアミンの例は、モノアミノエタノール、3−アミノプロパン−1−オール、2−アミノプロパン−1−オール、4−アミノブタン−1−オール、2−アミノブタン−1−オール、3−アミノブタン−1−オール、5−アミノペンタン−1−オール、2−アミノペンタン−1−オール、6−アミノヘキサン−1−オール、2−アミノヘキサン−1−オール、7−アミノヘプタン−1−オール、2−アミノヘプタン−1−オール、8−アミノオクタン−1−オール、2−アミノオクタン−1−オール、N−(2−ヒドロキシエチル)アニリン、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、N−(2−ヒドロキシエチル)−1,3−プロパンジアミン及びアミノジエチレングリコール(2−(2−アミノエトキシ)エタノール)である。
【0036】
好ましいのは、少なくとも1個の第一級ヒドロキシル基(−CH
2−OH)と式(−CH
2−NH
2)の少なくとも1個の第一級アミノ基とを有するアルカノールアミンである。
【0037】
特に好ましいアルカノールアミンは、モノアミノエタノール、3−アミノプロパン−1−オール、2−アミノプロパン−1−オール、4−アミノブタン−1−オール及び2−(2−アミノエトキシ)エタノールである。
【0038】
本発明による方法において、ちょうど1種のアルコールを使用することができる。2種以上のアルコールの混合物を使用することも可能である。
【0039】
錯体触媒
本発明による方法において、ルテニウム並びに少なくとも1種のドナー配位子を有するが、しかしながらアニオン性配位子を有しない、少なくとも1種の錯体触媒が使用される。
【0040】
該ドナー配位子は、好ましくは少なくとも二座である。
【0041】
多座性(Dentalitaet)(Zaehnigkeitとも呼ばれる)は、該ドナー配位子が、中心原子(ルテニウム)上で占有することができる、配位位置の数であると理解される。
【0042】
単座(einzaehnige)配位子は、該中心原子の1個のみの配位位置を占有することができる。
【0043】
二座(zweizaehnige)配位子は、該中心原子の2個の配位位置を占有することができ、かつ三座(dreizaehnige)配位子は、該中心原子の3個の配位位置を占有することができる。
【0044】
好ましい実施態様において、本発明による方法は、一般式(I)の少なくとも1種の錯体触媒の存在下で均一系触媒作用により実施される:
【化3】
ここで、
L
1及びL
2は、互いに独立して、PR
aR
b、NR
aR
b、SH、S(=O)R、C
5〜C
10−ヘテロアリール、AsR
aR
b、SbR
aR
b又は式(II)又は(III):
【化4】
のN−ヘテロ環式カルベンであり;
L
3、L
4及びL
5は、互いに独立して、CO、PR
aR
bR
c、NO
+、AsR
aR
bR
c、SbR
aR
bR
c、SR
aR
b、RCN、RNC、N
2、PF
3、CS、ピリジン、チオフェン、テトラヒドロチオフェン及び式(II)又は(III)のN−ヘテロ環式カルベンの群から選択される単座の二電子供与体であり;
nは、0又は1の整数であり;
R
1及びR
2は、双方とも水素であるか、又はこれらが結合している炭素原子と一緒になって、フェニル環を形成し、該フェニル環が、式(I)のキノリニル単位と一緒になってアクリジニル単位を形成し;
R、R
a、R
b、R
c、R
3、R
4、及びR
5は、互いに独立して、置換されていないか又は少なくとも一置換されたC
1〜C
10−アルキル、C
5〜C
10−シクロアルキル、C
5〜C
10−ヘテロシクリル、C
5〜C
10−アリール又はC
5〜C
10−ヘテロアリールであり、
その際に該置換基は、F、Cl、Br、OH、CN、NH
2及びC
1〜C
10−アルキルからなる群から選択されており;
R
5aは、R
5であるか、又は結合を表し;
X
1は、該アクリジニル単位の1個以上の原子上の1、2、3、4、5、6、又は7個の置換基又は該キノリニル単位の1個以上の原子上の1、2、3、4又は5個の置換基を表し、
その際に、X
1は、互いに独立して、水素、F、Cl、Br、I、OH、NH
2、NO
2、NC(O)R、C(O)NR
2、OC(O)R、C(O)OR、CN及び置換されていないか又は少なくとも一置換されたC
1〜C
10−アルコキシ、C
1〜C
10−アルキル、C
5〜C
10−シクロアルキル、C
5〜C
10−ヘテロシクリル、C
5〜C
10−アリール及びC
5〜C
10−ヘテロアリールからなる群から選択されており、
その際に、該置換基は、F、Cl、Br、OH、CN、NH
2及びC
1〜C
10−アルキルからなる群から選択されている。
【0045】
該錯体触媒は、中性であってよく、又は1又は2の正電荷を有してよく、好ましくは、該錯体触媒は中性である。
【0046】
特に好ましい実施態様において、本発明による方法は、式(I)の少なくとも1種の錯体触媒の存在下で実施され、その際に、該置換基は、次の意味を有する:
L
1及びL
2は、互いに独立して、PR
aR
b又はNR
aR
bであり;
L
3、L
4及びL
5は、互いに独立して、CO及びPR
aR
bR
cの群から選択される単座の二電子供与体であり;
nは、0又は1の整数であり;
R
1及びR
2は、双方とも水素であるか、又はこれらが結合している炭素原子と一緒になって、フェニル環を形成し、該フェニル環は、式Iのキノリニル単位と一緒になって、アクリジニル単位を形成し;
R、R
a、R
b及びR
cは、互いに独立して、置換されていないか又は少なくとも一置換されたC
1〜C
10−アルキル、C
5〜C
10−シクロアルキル、C
5〜C
10−ヘテロシクリル、C
5〜C
10−アリール又はC
5〜C
10−ヘテロアリールであり、
その際に、該置換基は、F、Cl、Br、OH、CN、NH
2及びC
1〜C
10−アルキルからなる群から選択されており;
X
1は、該アクリジニル単位の1個以上の原子上の1、2、3、4、5、6、又は7個の置換基又は該キノリニル単位の1個以上の原子上の1、2、3、4又は5個の置換基を表し、
その際に、X
1は、互いに独立して、水素、F、Cl、Br、I、OH、NH
2、NO
2、NC(O)R、C(O)NR
2、OC(O)R、C(O)OR、CN及び置換されていないか又は少なくとも一置換されたC
1〜C
10−アルコキシ、C
1〜C
10−アルキル、C
5〜C
10−シクロアルキル、C
5〜C
10−ヘテロシクリル、C
5〜C
10−アリール及びC
5〜C
10−ヘテロアリールからなる群から選択されており、
その際に、該置換基は、F、Cl、Br、OH、CN、NH
2及びC
1〜C
10−アルキルからなる群から選択されている。
【0047】
更に特に好ましい実施態様において、本発明による方法は、少なくとも1種の錯体触媒の存在下で実施され、その際に、R
1及びR
2が、双方とも水素であり、かつ該錯体触媒が、式(IV)の触媒である:
【化5】
ここで、X
1、L
1、L
2、L
3、L
4、L
5及びnは、前記の意味を有し、その際に、前記の好ましさは、相応して当てはまる。
【0048】
更に特に好ましい実施態様において、本発明による方法は、少なくとも1種の錯体触媒の存在下で実施され、その際に、R
1及びR
2が、これらが結合している炭素原子と一緒になって、フェニル環を形成し、該フェニル環は、式(I)のキノリニル単位と一緒になって、アクリジニル単位を形成し、かつ該錯体触媒が、式(V)の触媒である:
【化6】
ここで、X
1、L
1、L
2、L
3、L
4、L
5及びnは、前記の意味を有し、その際に、前記の好ましさは、相応して当てはまる。
【0049】
更に好ましい実施態様において、本発明による方法は、式(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)及び(XIII)の触媒からなる群からの少なくとも1種の錯体触媒の存在下で実施される:
【化7】
ここで、X
1、R
a、R
b及びnは、前記の意味を有し、その際に、前記の好ましさは、相応して当てはまる。
【0050】
更に特に好ましいのは、R
a及びR
bが置換されていないシクロヘキシルである、式(I)、(IV)、(V)及び(VI)〜(XIII)の錯体触媒である。
【0051】
極めて特に好ましい実施態様において、本発明による方法は、式(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)及び(XIII)の触媒の群からの少なくとも1種の錯体触媒の存在下で実施され、その際に
R
a及びR
bは、互いに独立して、置換されていないか又は少なくとも一置換されたC
1〜C
10−アルキル、C
5〜C
10−シクロアルキル、C
5〜C
10−ヘテロシクリル、C
5〜C
10−アリール又はC
5〜C
10−ヘテロアリールであり;
その際に、該置換基は、F、Cl、Br、OH、CN、NH
2及びC
1〜C
10−アルキルからなる群から選択されており;
nは、0又は1の整数であり;
X
1は、該アクリジニル単位の1個以上の原子上の1、2又は3個の置換基又は該キノリニル単位の1個以上の原子上の1又は2個の置換基を表し;
その際に、X
1は、互いに独立して、水素、F、Cl、Br、I、OH、NH
2、NO
2、NC(O)R、C(O)NR
2、OC(O)R、C(O)OR、CN及び置換されていないC
1〜C
10−アルコキシ、C
1〜C
10−アルキル、C
5〜C
10−シクロアルキル、C
5〜C
10−ヘテロシクリル、C
5〜C
10−アリール及びC
5〜C
10−ヘテロアリールからなる群から選択されており、
その際に、Rは、H及びC
1〜C
10−アルキルからなる群から選択されている。
【0052】
更に極めて特に好ましい実施態様において、本発明による方法は、式(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)及び(XIII)の触媒の群からの少なくとも1種の錯体触媒の存在下で実施され、その際に
R
a及びR
bは、互いに独立して、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、シクロヘキシル、シクロペンチル、フェニル又はメシチルであり;
nは、0又は1の整数であり;
X
1は、水素である。
【0053】
殊に好ましい実施態様において、本発明による方法は、式(XIVa)の錯体触媒の存在下で実施される:
【化8】
ここで、nは、0又は1の整数である。
【0054】
更に殊に好ましい実施態様において、本発明による方法は、式(XIVb)の錯体触媒の存在下で実施される。
【化9】
ここで、nは、0又は1の整数である。
【0055】
特に好ましい実施態様において、本発明による方法は、式(I)、(IV)、(V)及び(VI)〜(XIII)並びにXIVa))又は(XIVb))の少なくとも1種の錯体触媒の存在下で実施され、ここで、nは0に等しい。
【0056】
本発明の範囲内で、C
1〜C
30もしくはC
1〜C
10−アルキルは、分枝鎖状、非分枝鎖状、飽和及び不飽和の基であると理解される。好ましいのは、炭素原子1〜6個を有するアルキル基(C
1〜C
6−アルキル)である。より好ましいのは、炭素原子1〜4個を有するアルキル基(C
1〜C
4−アルキル)である。
【0057】
飽和アルキル基の例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、アミル及びヘキシルである。
【0058】
不飽和アルキル基(アルケニル、アルキニル)の例は、ビニル、アリル、ブテニル、エチニル及びプロピニルである。
【0059】
該C
1〜C
10−アルキル基は、置換されていなくてよく、又は、F、Cl、Br、ヒドロキシ(OH)、C
1〜C
10−アルコキシ、C
5〜C
10−アリールオキシ、C
5〜C
10−アルキルアリールオキシ、N、O、Sから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を有するC
5〜C
10−ヘテロアリールオキシ、オキソ、C
3〜C
10−シクロアルキル、フェニル、N、O、Sから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を有するC
5〜C
10−ヘテロアリール、N、O、Sから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を有するC
5〜C
10−ヘテロシクリル、ナフチル、アミノ、C
1〜C
10−アルキルアミノ、C
5〜C
10−アリールアミノ、N、O、Sから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を有するC
5〜C
10−ヘテロアリールアミノ、C
1〜C
10−ジアルキルアミノ、C
10〜C
12−ジアリールアミノ、C
10〜C
20−アルキルアリールアミノ、C
1〜C
10−アシル、C
1〜C
10−アシルオキシ、NO
2、C
1〜C
10−カルボキシ、カルバモイル、カルボキサミド、シアノ、スルホニル、スルホニルアミノ、スルフィニル、スルフィニルアミノ、チオール、C
1〜C
10−アルキルチオール、C
5〜C
10−アリールチオール又はC
1〜C
10−アルキルスルホニルの群から選択される1個以上の置換基で置換されていてよい。
【0060】
C
5〜C
10−シクロアルキルは、当該の場合には、飽和、不飽和の単環式及び多環式の基であると理解される。C
5〜C
10−シクロアルキルの例は、シクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロヘプチルである。該シクロアルキル基は、置換されていなくてよく、又は前記でC
1〜C
10−アルキルの群について定義されたような1個以上の置換基で置換されていてよい。
【0061】
本発明の範囲内で、C
5〜C
10−アリールは、炭素5〜10個を有する芳香環系であると理解される。該芳香環系は、単環式又は二環式であってよい。アリール基の例は、フェニル、ナフチル、例えば1−ナフチル及び2−ナフチルである。該アリール基は、置換されていなくてよく、又は前記でC
1〜C
10−アルキルのもとで定義されたような1個以上の置換基で置換されていてよい。
【0062】
本発明の範囲内で、C
5〜C
10−ヘテロアリールは、N、O及びSの群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を有する、ヘテロ芳香族系であると理解される。該ヘテロアリール基は、単環式又は二環式であってよい。窒素が環原子である場合には、本発明は、窒素を有するヘテロアリールのN−オキシドも含む。ヘテロアリールの例は、チエニル、ベンゾチエニル、1−ナフトチエニル、チアントレニル、フリル、ベンゾフリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、プリニル、イソキノリニル、キノリニル、アクリジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、ピペリジニル、カルボリニル、チアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリルである。該ヘテロアリール基は、置換されていなくてよく、又は前記でC
1〜C
10−アルキルのもとで定義されたような1個以上の置換基で置換されていてよい。
【0063】
本発明の範囲内で、C
5〜C
10−ヘテロシクリルは、N、O及びSの群からの少なくとも1個のヘテロ原子を有する、5〜10員の環系であると理解される。該環系は、単環式又は二環式であってよい。適したヘテロ環式の環系の例は、ピペリジニル、ピロリジニル、ピロリニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピラニル、チオピラニル、ピペラジニル、インドリニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオフェニル、ジヒドロピラニル及びテトラヒドロピラニルである。
【0064】
アルコールアミノ化
本発明による方法の際にアルコールアミノ化に使用される錯体触媒は、好ましくはアニオン性配位子を有しない。本発明の範囲内で、アニオン性配位子は、少なくとも1の陰電荷を持っている化合物であると理解される。1の陰電荷を持っているアニオン性配位子(モノアニオン性配位子)の例は、H(ヒドリドアニオン)、ハロゲニドアニオン、カルボン酸アニオン、スルホン酸アニオン、CN(シアニドアニオン)及びOH(水酸化物アニオン)である。そのようなアニオン性配位子は、錯体触媒中に含まれていない。
【0065】
更なる実施態様において、該錯体触媒は、イオン性配位子、すなわちアニオン性配位子もカチオン性配位子も、有しない。アニオン性もしくはカチオン性の配位子は、本発明によれば、該錯体触媒のRu−中心原子に直接配位されている配位子のみであると理解される。該Ru中心原子に直接配位されていない対イオン、特にアニオンは、本発明によれば、アニオン性又はカチオン性の配位子ではない。
【0066】
アニオン性配位子を有しない錯体触媒に加えて、該アルコールアミノ化の際に、1個以上のアニオン性配位子を有する錯体触媒も存在していてよい。イオン性配位子、好ましくはアニオン性配位子を有しない、本発明による錯体触媒は、本発明の範囲内で、錯体触媒(KKe)とも呼ばれる。1個以上のアニオン性配位子を有する錯体触媒は、本発明の範囲内で、錯体触媒(KKs)とも呼ばれる。
【0067】
本発明による方法において、ちょうど1種の錯体触媒(KKe)を使用することができる。2種以上の錯体触媒(KKe)の混合物を使用することも可能である。
【0068】
本発明によるアルコールアミノ化が、錯体触媒(KKe)と錯体触媒(KKs)との混合物を含有する触媒の存在下で実施される場合には、該錯体触媒(KKe)は、その存在下で本発明による方法が実施される、混合物中に含まれる錯体触媒(KKe)及び(KKs)の全量を基準として、量に関して該混合物の主要部分である。
【0069】
主要部分は、その際に、本発明による1種以上の錯体触媒(KKe)に加え、錯体触媒(KKs)も存在している場合に、これらの錯体触媒(KKe)及び(KKs)の互いの量比が、量比率M
v=[その存在下で該アルコールアミノ化が実施される、錯体触媒(KKe)の全量]/[その存在下で該アルコールアミノ化が実施される、錯体触媒(KKs)の全量]に相当すると理解され、かつM
vは一般的に、>1、好ましくは>5、より好ましくは>9、特に好ましくは>20である。該錯体触媒(KKe)及び(KKs)の全量は、それぞれモル%で測定される。
【0070】
本発明による錯体触媒は、その活性な形態で直接使用されてよく、並びにルテニウム含有触媒前駆物質から出発して、対応する配位子の添加下で、該反応条件下で初めて生成されてよい。該錯体触媒が、その活性な形態で直接使用される場合には、この錯体触媒は、実際のアルコールアミノ化の上流の処理工程において製造される。
【0071】
上流の処理工程において該錯体触媒を製造するために、一般式(Ia)
【化10】
で示される少なくとも1種のドナー配位子が使用され、ここで、X
1、L
1、L
2、R
1及びR
2は、前記で式(I)、(IV)、(V)及び(VI)〜(XIII)並びに(XIVa)及び(XIVb)の錯体触媒のために記載された意味を有し、その際に、そこに記載された好ましさは、相応して当てはまる。
【0072】
ドナー配位子(Ia)、ルテニウム含有触媒前駆物質及び溶剤は、好ましくは室温(20℃)で、オートクレーブ中へ導入される。ドナー配位子(Ia)は、該ルテニウム含有触媒前駆物質中に含まれるルテニウムを基準として、好ましくは等モル量で使用される。ドナー配位子(Ia)を過剰量又は不足量で使用することも可能である。
【0073】
好ましくは、前記の成分の導入は、保護ガス雰囲気下で、例えば窒素又はアルゴン下で行われる。溶剤として、極性溶剤又は無極性溶剤を使用することができる。好ましいのは、無極性溶剤、例えばベンゼン、トルエン又はキシレン類(1,2−ジメチルベンゼン、1,3−ジメチルベンゼン、1,4−ジメチルベンゼン)並びにこれらの無極性溶剤の混合物である。無極性溶剤として、トルエンが好ましい。該溶剤は、好ましくは、無水化された形態で使用される。該錯体触媒の形成のためには、該オートクレーブは、50〜150℃の範囲内、好ましくは80〜120℃の範囲内及び特に好ましくは90〜110℃の範囲内の温度に、加熱される。これらの温度での反応時間は、一般的に1〜100時間、好ましくは5〜50時間、特に好ましくは10〜30時間及び殊に18〜22時間である。
【0074】
該錯体触媒の形成は、該オートクレーブを、該加熱前に、好ましくは室温で、一酸化炭素又は合成ガスを用いて、20〜60バール、好ましくは30〜50バールの範囲内及び特に好ましくは35〜45バールの範囲内の圧力まで加圧することにより、補助することができる。しかしながら、これは必ずしも必要ではない。
【0075】
次に、該オートクレーブが冷却され、放圧され、かつ該溶剤は、真空蒸留により除去され、それにより、該錯体触媒は固体として得られる。該錯体触媒は、次に、例えば、別の溶剤、好ましくは極性溶剤、例えばテトラヒドロフラン(THF)での洗浄により、更に後処理することができる。
【0076】
該溶剤、好ましくは該無極性溶剤を、完全には除去せず、かつ該錯体触媒を、別の溶剤、好ましくは極性溶剤の添加により、沈殿させ、引き続きろ過により分離することも可能である。
【0077】
合成ガスは、当該の場合に、本質的に一酸化炭素(CO)及び水素(H
2)を含有するガス混合物であると理解される。CO対H
2の体積割合は、好ましくは、0.8対1.2〜1.2対0.8の範囲内である。好ましくは、CO対H
2の体積割合は、1対1である。
【0078】
ルテニウム含有触媒前駆物質として、例えば、[Ru
3(CO)
12]、[Ru(CO)
4(エチレン)]、[Ru(COD)(OAc)
2]、[Ru(COD)(2−メチルアリル)
2]、[Ru(CO)
2Cl
2]
n、[Ru(CO)
3Cl
2]
2、[RuCl
3・H
2O]、[Ru(アセチルアセトナート)
3]、[Ru(PPh
3)
3(CO)(H)Cl]、[Ru(PPh
3)
3(CO)Cl
2]、[Ru(PPh
3)
3(CO)(H)
2]、[Ru(PPh
3)
3Cl
2]及び[Ru(COD)Cl
2]
2が適している。もちろん、前記のルテニウム含有触媒前駆物質の2種以上からなる混合物も使用することができる。
【0079】
CODは1,5−シクロオクタジエンを意味する。PPh
3はトリフェニルホスフィンを意味する。
【0080】
本発明の対象は、それゆえ、[Ru
3(CO)
12]、[Ru(CO)
4(エチレン)]、[Ru(COD)(OAc)
2]、[Ru(COD)(2−メチルアリル)
2]、[Ru(CO)
2Cl
2]
n、[Ru(CO)
3Cl
2]
2、[RuCl
3・H
2O]、[Ru(アセチルアセトナート)
3]、[Ru(PPh
3)
3(CO)(H)Cl]、[Ru(PPh
3)
3(CO)Cl
2]、[Ru(PPh
3)
3(CO)(H)
2]、[Ru(PPh
3)
3Cl
2]及び[Ru(COD)Cl
2]
2からなる群から選択される少なくとも1種のルテニウム含有触媒前駆物質を、一般式(Ia)の少なくとも1種のドナー配位子と、溶剤の存在下並びに場合により一酸化炭素又は合成ガスの存在下で、20〜60バールの範囲内の圧力で反応させることによる、錯体触媒(I)の製造方法でもある。
【0081】
ルテニウム含有触媒前駆物質[Ru(COD)(OAc)
2]、[Ru(COD)(2−メチルアリル)
2]、[Ru(CO)
2Cl
2]
n、[Ru(CO)
3Cl
2]
2、[RuCl
3・H
2O]、[Ru(アセチルアセトナート)
3]、[Ru(PPh
3)
3(CO)(H)Cl]、[Ru(PPh
3)
3(CO)Cl
2]、[Ru(PPh
3)
3(CO)(H)
2]、[Ru(PPh
3)
3Cl
2]及び[Ru(COD)Cl
2]
2からなる群から選択されるルテニウム含有触媒前駆物質が使用される場合には、該錯体触媒の製造のために、好ましくは一酸化炭素又は合成ガスが圧入される。
【0082】
ルテニウム含有触媒前駆物質として[Ru
3(CO)
12]及び/又は[Ru(CO)
4(エチレン)]が使用される場合には、同様に一酸化炭素又は合成ガスを圧入することができる。しかしながら、これは必ずしも必要ではない。
【0083】
上流の処理工程において該錯体触媒を製造する際に、好ましくは一酸化炭素又は合成ガスが圧入され、溶剤として、無極性溶剤、特にトルエンが使用され、かつ洗浄又は沈殿のための別の溶剤として、極性溶剤、特にテトラヒドロフランが使用される。
【0084】
該錯体触媒を、該アルコールアミノ化の反応器中で直接製造することも可能である。このためには、ドナー配位子(Ia)、ルテニウム含有触媒前駆物質及び溶剤は、好ましくは室温(20℃)で及び不活性条件下で、該アルコールアミノ化の反応器中へ導入される。溶剤としてその際に、好ましくは、その後にアルコールアミノ化のための溶剤としても使用することができる、溶剤が使用される。好ましくは、極性溶剤、特にt−アミルアルコール(2−メチル−2−ブタノール)である。
【0085】
ルテニウム含有触媒前駆物質として、前記のルテニウム化合物を使用することができる。
【0086】
該錯体触媒の形成はこの場合に、同様に、一酸化炭素又は合成ガスの圧入により補助することができ、その際に、上流の工程における該錯体触媒の製造に関する実施及び好ましさは、相応して当てはまる。
【0087】
ドナー配位子(Ia)、該極性溶剤及び該ルテニウム含有触媒前駆物質は、該錯体触媒の形成のために、次に、上流の工程における該錯体触媒の製造に類似して加熱される。次にアルコールアミノ化のための溶剤としても利用することができる、溶剤の存在下での該アルコールアミノ化の反応器中での該錯体触媒の製造は、該錯体触媒の分離及び後処理を省略できるという利点を有する。
【0088】
ドナー配位子(Ia)、ルテニウム含有触媒前駆物質及び溶剤、好ましくはt−アミルアルコールを、アルコールアミノ化のための出発物質として使用されるアルコールと同時に、装入し、かつ該錯体触媒を、該アルコールアミノ化のための該出発物質の存在下で製造することも可能である。これは、アンモニア分圧の存在下又は不在下で実施することができる。この実施態様において、該触媒は、該アルコールアミノ化の反応条件下で、その場で製造される。
【0089】
本発明の対象は、それゆえ、アルコールを水脱離下で1つの反応器中でアルコールアミノ化することによる第一級アミンの製造方法でもあり、その際に、該錯体触媒(I)は、該反応器中で、少なくとも1種のルテニウム含有触媒前駆物質及び一般式(Ia)の少なくとも1種のドナー配位子から、溶剤の存在下で製造される。
【0090】
該アルコールアミノ化の反応器中で該錯体触媒を製造するために、溶剤として、極性溶剤、特にt−アミルアルコールが好ましく、かつルテニウム含有触媒前駆物質として、好ましくは[Ru
3(CO)
12]及び/又は[Ru(CO)
4(エチレン)]が使用される。該錯体触媒の形成は、この場合に、一酸化炭素又は合成ガスの圧入により補助することができるが、しかしながら、これは必ずしも必要ではない。好ましい実施態様において、該錯体触媒は、一酸化炭素及び合成ガスなしで製造される。
【0091】
ドナー配位子(Ia)は、該ルテニウム含有触媒前駆物質中に含まれるルテニウムを基準として、好ましくは等モル量で使用される。ドナー配位子(Ia)を過剰量又は不足量で使用することも可能である。
【0092】
均一系触媒作用によるとは、本発明の範囲内で、該錯体触媒の触媒活性な部分が、少なくとも部分的に、液状反応媒体中に溶解して存在することであると理解される。好ましい実施態様において、それぞれ液状反応媒体中の全量を基準として、本方法において使用される錯体触媒の少なくとも90%が液状反応媒体中に溶解して存在し、より好ましくは少なくとも95%、殊に好ましくは99%超、最も好ましくは、該錯体触媒は、液状反応媒体中に完全に(100%)溶解して存在する。
【0093】
該錯体触媒は、該アルコールアミノ化の出発物質中に含まれているOH基1モルにつき、0.01〜20モル%の範囲内、好ましくは0.1〜10モル%の範囲内及び特に好ましくは0.2〜6モル%の範囲内の量で使用される。
【0094】
該反応は、該液相中で、一般的に20〜250℃の温度で行われる。好ましくは、本発明による方法は、100℃〜220℃の範囲内、特に好ましくは140〜200℃の範囲内の温度で実施される。該液相は、溶剤から及び/又は該プロセス条件下で液化された形態又は超臨界の形態で存在しているガス、特にアンモニアから、形成することができる。
【0095】
該反応は一般的に、0.1〜20MPa絶対の全圧で実施することができ、該全圧は、該反応温度での該溶剤の自生圧並びにガス、例えば窒素、アルゴン又は水素の圧力であってよい。好ましくは、本発明による方法は、0.5〜15MPa絶対の範囲内の全圧で、特に好ましくは1〜10MPa絶対の範囲内の全圧で実施される。
【0096】
好ましい実施態様において、本発明による方法は水素の不在下で実施される。水素の不在は、本発明によれば、該反応に、追加の水素が供給されないことであると理解される。場合によりその他のガスを通じて供給される痕跡量の水素並びに該反応の際に形成される痕跡量の水素は、本発明による水素の不在下とみなされる。場合により該反応の最初に該錯体触媒の形成のために該反応器中へ導入される合成ガスは、同様に、本発明による水素の不在下とみなされる。
【0097】
平均反応時間は、一般的に15分〜100時間である。
【0098】
該アミノ化剤(アンモニア)は、アミノ化されうるヒドロキシル基に関して、化学量論量、化学量論不足量又は化学量論過剰量で使用することができる。アミノ化剤として、アンモニア自体を純品で又は溶液又は混合物として、又は該反応条件下でアンモニアを遊離する化合物を、使用することができる。
【0099】
好ましい実施態様において、アンモニアは、該出発物質中の反応されうるヒドロキシル基1モルにつき、1〜250倍、好ましくは2〜100倍、特に1.5〜30倍のモル過剰量で使用される。より高過剰量のアンモニアも可能である。
【0100】
本発明による方法は、溶剤中で並びに溶剤なしで、実施することができる。溶剤として、純品で又は混合物で使用することができる、極性及び無極性の溶剤が適している。例えば、本発明による方法において、1種のみの無極性溶剤又は1種のみの極性溶剤を使用することができる。2種以上の極性溶剤の混合物又は2種以上の無極性溶剤の混合物又は1種以上の極性溶剤と1種以上の無極性溶剤との混合物を使用することも可能である。該生成物も、溶剤として純品で、又は極性溶剤又は無極性溶剤との混合物で使用することができる。
【0101】
無極性溶剤として、例えば、飽和及び不飽和の炭化水素、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン及びメシチレン、及び線状及び環状のエーテル、例えばTHF、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、MTBE(t−ブチルメチルエーテル)、ジグリム及び1,2−ジメトキシエタンが適している。好ましくは、トルエン、キシレン類又はメシチレンが使用される。
【0102】
極性溶剤として、例えば、水、ジメチルホルムアミド、ホルムアミド、t−アミルアルコール及びアセトニトリルが適している。好ましくは、t−アミルアルコールが使用される。水は、該反応前に添加されてよく、該反応の際に反応水として生じてよく、又は該反応後に付加的に該反応水に添加してもよい。
【0103】
該液相中での反応のためには、アンモニア、1種以上の該アルコールは、場合により1種以上の溶剤と一緒に、該錯体触媒と一緒に反応器中へ導かれる。
【0104】
アンモニア、出発物質(アルコール)、場合により溶剤及び錯体触媒の供給はその際に、同時に又は互いに別個に行うことができる。該反応はその際に、連続的に、セミバッチ操作方式で、バッチ操作方式で、溶剤としての生成物中に逆混合されて、又はワンパスで逆混合されずに、実施することができる。
【0105】
本発明による方法のためには、気/液反応のために与えられた温度及び与えられた圧力下で原理的に適している、原則的に全ての反応器を使用することができる。気/液反応系及び液/液反応系用の適した標準反応器は、例えば、K.D. Henkel, “Reactor Types and Their Industrial Applications”, Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry中, 2005, Wiley-VCH Verlag GmbH & Co. KGaA, DOI: 10.1002/14356007.b04_087, 3.3章“Reactors for gas-liquid reactions”に示されている。例として、撹拌槽型反応器、管形反応器又は気泡塔反応器が挙げられる。
【0106】
該アミノ化反応の際に、該出発物質の少なくとも1個の第一級又は第二級のヒドロキシル基はアンモニアと反応して、第一級アミノ基が得られ、その際に、反応されるヒドロキシル基1モルにつきそれぞれ1モルの反応水が形成される。
【0107】
例えば、1個のみの第一級又は第二級のヒドロキシル基を有するアルカノールアミンの反応の場合に、対応するジアミンが形成される。モノアミノエタノールの反応はそれゆえ、対応する1,2−ジアミノエタンをもたらす。
【0108】
2個の第一級又は第二級のヒドロキシル基を有する出発物質(ジオール)の反応の場合に、好ましくは、双方のヒドロキシル基はアンモニアと反応して、対応する第一級ジアミンが得られる。1,2−エチレングリコールの反応はそれゆえ、対応する1,2−ジアミノエタンをもたらす。
【0109】
3個の第一級又は第二級のヒドロキシル基を有する出発物質(トリオール)の反応の場合に、2個又は3個のヒドロキシル基はアンモニアと反応して、対応する第一級のジアミン又はトリアミンが得られる。ジアミン又はトリアミンの形成は、その際に、使用されるアンモニアの量により及び該反応条件により制御することができる。グリセリンの反応はそれゆえ、対応する1,2−ジアミノプロパノールをもたらすか又は1,2,3−トリアミノプロパンをもたらす。
【0110】
3個よりも多いヒドロキシル基を有する出発物質(ポリオール)の反応の場合に、2個、3個又はそれより多いヒドロキシル基はアンモニアと反応して、対応する第一級のジアミン、トリアミン又はポリアミンが得られる。対応する第一級のジアミン、トリアミン又はポリアミンの形成はその際に、使用されるアンモニアの量により及び該反応条件により制御することができる。
【0111】
本発明によるアミノ化反応は、以下に、例示的に、ジアンヒドロヘキシトールであるイソマンニド及びイソソルビドの特に好ましい反応に基づき記載される。
【0112】
【化11】
【0113】
XXXaはイソマンニドである。XXXbはイソソルビドである。該アルコールアミノ化の際に、第一工程において、まず最初に、対応するモノアミノ化生成物の混合物(アミノアルコール(XXXIa−XXXId)が生じ、これらを次に、対応するジアミノ化生成物に変換することができる(ジアミノイソイジド(XXXIIa)、ジアミノイソソルビド(XXXIIb)及びジアミノイソマンニド(XXXIIc)。
【0114】
該反応の際に生じた反応流出物は一般的に、対応するアミノ化生成物、場合により1種以上の該溶剤、該錯体触媒、場合により未反応出発物質及びアンモニア並びに生じた反応水を含有する。
【0115】
該反応流出物からは、場合により存在している過剰のアンモニア、場合により存在している該溶剤、該錯体触媒及び反応水が除去される。得られたアミノ化生成物は、更に後処理することができる。過剰のアンモニア、該錯体触媒、場合により1種以上の該溶剤及び場合により未反応出発物質は、該アミノ化反応へ返送することができる。
【0116】
該アミノ化反応が溶剤なしで実施される場合には、該錯体触媒は、該反応後に、生成物中、すなわち該アミノ化生成物中に、溶解している。この錯体触媒は、該生成物中に残留してよいか、又は適した方法により、この生成物から分離することができる。該触媒を分離する可能性は、例えば、該触媒が、該配位子の適した選択により該生成物中よりも良く溶解する、該生成物と混和性ではない溶剤での洗い流しである。場合により、該触媒は、該生成物からの多段階の抽出により減損される。抽出剤として、好ましくは、該目的反応にも適した溶剤、例えばトルエン、ベンゼン、キシレン類、アルカン、例えばヘキサン類、ヘプタン類及びオクタン類、及び非環状又は環状のエーテル、例えばジエチルエーテル及びテトラヒドロフランが使用され、該溶剤はその濃縮後に、抽出された触媒と一緒に、再び該反応に使用することができる。適した吸収材料を用いる該触媒の除去も可能である。分離は、該反応が、水と不混和性の溶剤中で実施される場合に、該生成物相への水の添加により行われることもできる。該触媒が、その際に好ましくは、該溶剤中に溶解する場合には、該触媒は、該溶剤を用いて、該水性生成物相から分離され、かつ場合により新たに使用することができる。これは、適した配位子の選択により生じさせることができる。生じる水性のジアミン、トリアミン、又はポリアミンは、工業用アミン溶液として直接使用することができる。該アミノ化生成物を蒸留により該触媒から分離することも可能である。
【0117】
該反応が溶剤中で実施される場合には、この溶剤は、該アミノ化生成物と混和性であってよく、かつ該反応後に蒸留により分離することができる。該アミノ化生成物又は該出発物質との溶解度ギャップを有する、溶剤も使用することができる。このために適した溶剤として、例えば、トルエン、ベンゼン、キシレン類、アルカン、例えばヘキサン類、ヘプタン類及びオクタン類、及び非環状又は環状のエーテル、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン及びジオキサンが挙げられる。該ホスフィン配位子の適した選択により、該触媒は、好ましくは、該溶剤相中に、すなわち生成物を含有しない相中に、溶解する。該ホスフィン配位子は、該触媒が該アミノ化生成物中に溶解するように選択することもできる。この場合に、該アミノ化生成物は蒸留により該触媒から分離されうる。
【0118】
溶剤として、該生成物も使用することができる。該溶剤は、該反応条件下でも該出発物質及び該生成物と混和性であってよく、かつその冷却後に初めて、該触媒の大部分を含有する第二の液相を形成してよい。これらの性質を示す溶剤として、例えば、トルエン、ベンゼン、キシレン類、アルカン、例えばヘキサン類、ヘプタン類及びオクタン類が挙げられる。該触媒を次いで、該溶剤と一緒に分離し、再び使用することができる。該生成物相は、この変法において、水と混合されてもよい。該生成物中に含まれる該触媒の部分は、引き続き、適した吸収材料、例えばポリアクリル酸及びそれらの塩、スルホン化ポリスチレン及びそれらの塩、活性炭、モンモリロナイト、ベントナイト並びにゼオライトにより分離することができるが、しかし該生成物中にそのままにしておくこともできる。
【0119】
該アミノ化反応は、二相でも実施することができる。該二相の反応操作の実施態様の場合に、無極性溶剤として、特にトルエン、ベンゼン、キシレン類、アルカン、例えばヘキサン類、ヘプタン類及びオクタン類が、該遷移金属触媒上の親油性のホスフィン配位子との組合せで適しており、それにより、該遷移金属触媒は、該無極性相中に豊富化する。該生成物並びに該反応水及び場合により未反応出発物質が、これらの化合物で豊富化された第二相を形成する、この実施態様の場合に、該触媒の大部分を、単純な相分離により、該生成物相から分離し、かつ再利用することができる。
【0120】
揮発性副生物又は未反応出発物質又は該反応の際に生じたか又は該反応後により良好な抽出のために添加される水も、望ましくない場合には、これらは問題のなく、該生成物から蒸留により分離することができる。
【0121】
該反応の際に形成される水を、該反応混合物から連続的に除去することも有利でありうる。該反応水は、蒸留により該反応混合物から直接、又は適した溶剤(共沸剤)の添加下でアゼオトロープとして、及び水分離器の使用下で分離されてよく、又は脱水助剤の添加により除去されてよい。
【0122】
塩基の添加は、該生成物形成への有利な効果を及ぼしうる。適した塩基として、ここでは、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属アルコラート、アルカリ土類金属アルコラート、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ土類金属炭酸塩を挙げることができ、それらは、使用される金属触媒に対して0.01〜100モル当量で使用することができる。
【0123】
本発明の更なる対象は、アルコールを、アンモニアを用いて水脱離下でアルコールアミノ化することにより第一級アミドを製造するための均一系錯体触媒としての、一般式(I)の錯体触媒の使用である:
【化12】
ここで、X
1、R
1、R
2、L
1、L
2、L
3、L
4、L
5及びnは、前記の意味を有し、その際に、前記の好ましさは、相応して当てはまる。
【0124】
本発明は、以下の実施例により説明されるが、本発明はこれらに限定されるものではない。