特許第6049900号(P6049900)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアの特許一覧

特許6049900アルカリ金属ホルメートおよびアルカリ金属アルコラートを含有する触媒系の存在下で、メタノールと一酸化炭素とを反応させることにより、ギ酸メチルを製造する方法
<>
  • 特許6049900-アルカリ金属ホルメートおよびアルカリ金属アルコラートを含有する触媒系の存在下で、メタノールと一酸化炭素とを反応させることにより、ギ酸メチルを製造する方法 図000002
  • 特許6049900-アルカリ金属ホルメートおよびアルカリ金属アルコラートを含有する触媒系の存在下で、メタノールと一酸化炭素とを反応させることにより、ギ酸メチルを製造する方法 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6049900
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】アルカリ金属ホルメートおよびアルカリ金属アルコラートを含有する触媒系の存在下で、メタノールと一酸化炭素とを反応させることにより、ギ酸メチルを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/36 20060101AFI20161212BHJP
   C07C 69/06 20060101ALI20161212BHJP
   B01J 31/02 20060101ALI20161212BHJP
   B01J 31/04 20060101ALI20161212BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20161212BHJP
【FI】
   C07C67/36
   C07C69/06
   B01J31/02 101Z
   B01J31/04 Z
   !C07B61/00 300
【請求項の数】13
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-543460(P2015-543460)
(86)(22)【出願日】2013年11月26日
(65)【公表番号】特表2015-537037(P2015-537037A)
(43)【公表日】2015年12月24日
(86)【国際出願番号】EP2013074663
(87)【国際公開番号】WO2014080026
(87)【国際公開日】20140530
【審査請求日】2015年6月23日
(31)【優先権主張番号】12194185.0
(32)【優先日】2012年11月26日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル シュナイダー
(72)【発明者】
【氏名】クラウス−ディーター モール
(72)【発明者】
【氏名】マーティン シェーファー
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン パショルト
(72)【発明者】
【氏名】ホアキン エンリケ テレス
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン リッティンガー
【審査官】 斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/088253(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/094471(WO,A1)
【文献】 特表2004−510686(JP,A)
【文献】 国際公開第01/062701(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 67/36
C07C 69/06
CAplus(STN)
CASREACT(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギ酸メチルを製造する方法であって、カルボニル化反応器中でアルカリ金属ホルメートおよびアルカリ金属アルコラートを含有する触媒系の存在下にメタノールを一酸化炭素でカルボニル化することにより、ギ酸メチル、アルカリ金属ホルメート、アルカリ金属アルコラートならびに任意に未反応のメタノールおよび未反応の一酸化炭素を含有する反応混合物(RG)を取得し、かつ前記カルボニル化反応器から取り出し、その際に、この反応混合物(RG)は、反応混合物(RG)の全質量に対して、アルカリ金属アルコラートを少なくとも0.5質量%含有し、かつ反応混合物(RG)中のアルカリ金属アルコラートに対するアルカリ金属ホルメートのモル比率は、1を上回る、前記方法。
【請求項2】
アルカリ金属ホルメートおよびアルカリ金属アルコラートのアルカリ金属成分は、互いに独立して、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムからなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
アルカリ金属ホルメートは、ギ酸ナトリウムおよびギ酸カリウムからなる群から選択され、かつアルカリ金属アルコラートは、ナトリウムアルコラートおよびカリウムアルコラートからなる群から選択される、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
アルカリ金属ホルメートのアルカリ金属成分とアルカリ金属アルコラートのアルカリ金属成分とは、同一である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
アルカリ金属ホルメートはギ酸カリウムであり、かつアルカリ金属アルコラートはカリウムメタノラートである、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
使用されるメタノールは、使用されるメタノールの全質量に対して、水を最大250質量ppm含有する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記反応混合物(RG)は、そのつど反応混合物(RG)の全質量に対して、アルカリ金属アルコラートを0.5〜1.5質量%およびアルカリ金属ホルメートを2.5〜12質量%含有する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記反応混合物(RG)は、次の工程
(a)分離装置中で一酸化炭素を反応混合物(RG)から分離して一酸化炭素を含むガス流(G1)とギ酸メチル、アルカリ金属ホルメート、アルカリ金属アルコラートおよびメタノールを含む液体流(L1)とを得る工程、
(b)第1の蒸留装置中でギ酸メチルを液体流(L1)から分離してギ酸メチルを含む留出物(D1)とアルカリ金属ホルメート、アルカリ金属アルコラートおよびメタノールを含む塔底混合物(S1)とを得る工程、
(c)塔底混合物(S1)を、カルボニル化反応器に返送される部分流(S1a)と部分流(S1b)とに分ける工程、および
(d)第2の蒸留装置中でメタノールを部分流(S1b)から分離してメタノールを含みかつ第1の蒸留装置に返送される留出物(D2)とアルカリ金属ホルメートおよびアルカリ金属アルコラートを含む塔底混合物(S2)とを得る工程を含めて、さらに後処理される、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
部分流(S1b)に対する部分流(S1a)の質量比は、50を上回る、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
反応混合物(RG)中のアルカリ金属アルコラートに対するアルカリ金属ホルメートのモル比率は、2を上回る、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
反応混合物(RG)は、
ギ酸メチルを12〜45質量%、
メタノールを40〜85質量%、
アルカリ金属ホルメートを2.5〜15質量%、
アルカリ金属アルコラートを0.5〜1.5質量%および
一酸化炭素を0〜2質量%含有する、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
一酸化炭素でメタノールをカルボニル化することによりギ酸メチルを製造するための触媒系としての、アルカリ金属アルコラートに対するアルカリ金属ホルメートのモル比率が1を上回る、アルカリ金属ホルメートおよびアルカリ金属アルコラートを含有する混合物の使用。
【請求項13】
アルカリ金属アルコラートに対するアルカリ金属ホルメートのモル比率が2を上回る、請求項12記載の混合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ金属ホルメートおよびアルカリ金属アルコラートを含有する触媒系の存在下で、メタノールと一酸化炭素とを反応させることにより、ギ酸メチルを製造する方法に関する。
【0002】
ギ酸メチル(ギ酸メチルエステル)は、ギ酸を製造するための重要な中間生成物であり、その際にギ酸メチルは、水と加水分解されてギ酸とメタノールとになる。さらに、ギ酸メチルは、ロジウム触媒またはイリジウム触媒上でのヒドロ異性体化によるアセトアルデヒドの製造に使用される。さらに、ギ酸メチルを異性体化して酢酸とすること、ならびにギ酸メチルとメタノールとをセレン触媒上で酸化反応させてジメチルカーボネートとすることが記載されている(Hans−Juergen Arpe,Industrielle Organische Chemie,第6版,2007,第48頁)。
【0003】
ギ酸メチルは、80年来、大工業的にメタノールのカルボニル化によって製造されている。カルボニル化は、たいてい、塩基触媒反応により行なわれ、その際に、殊にナトリウムメタノラート(ナトリウムメチラート)が触媒として使用される。この反応は、たいてい、約70℃で200バールまでの圧力で行なわれる(Ullmanns Encyclopedia of Technical Chemistry,第6版(2003),第15巻,第5〜8頁;Wiley−VCH−Verlag,DOI:10.1002/14356007.a12_013)。
【0004】
メタノールのカルボニル化は、一酸化炭素分圧が増加しかつ温度が低下すると、平衡がギ酸メチルの方向へ移動される、均一系触媒反応による平衡反応である。メタノールの連続的カルボニル化の場合、受け入れることができる空時収量(RZA)を有する経済的方法のためには、平衡状態の他に、十分に高い反応速度も必要とされる。メタノールのカルボニル化の反応速度は、温度の上昇によって、または、一酸化炭素分圧の上昇によって高められうる。しかし、前記方法による反応速度の上昇は、欠点と結びついている。すなわち、温度の上昇は、前記の記載と同様に、平衡状態の劣化をまねき、このことは、またしても空時収量の劣化を必然的に伴なう。時の経つうちに、受け入れることができる空時収量の達成のために、高い圧力下(200バールまで)で実施される、さまざまな実施態様を有する数多くの方法が存在している。しかし、この高圧法のためには、反応器のために高い投資費用と結びついている、特別に設計された反応器が必要とされる。
【0005】
WO 2001/07392には、メタノールと一酸化炭素との反応が9〜18MPa(90〜180バール)の一酸化炭素圧力で、液状反応器供給原料の質量に対して、アルカリ金属メタノラート0.05〜0.5質量%の存在下で行なわれる、ギ酸メチルの製造法が記載されている。WO 2001/07392の明細書中には、触媒として使用されるアルカリ金属メタノラートが、殊に2つの望ましくはないが避けることのできない副反応により反応されて触媒的に効果のないアルカリ金属ホルメートとなることが指摘されている。アルカリ金属ホルメートは、消費された触媒とも呼称されるかまたは触媒分解生成物とも呼称される。その際に、アルカリ金属ホルメートは、反応式(i)によれば、アルカリ金属メタノラートとギ酸メチルとの反応によりアルカリ金属ホルメートおよびジメチルエーテルを形成しうる。さらに、アルカリ金属ホルメートは、反応式(ii)によれば、微少量の水の存在下にアルカリ金属メタノラートおよびギ酸メチルからの加水分解により生じ、その際にメタノールおよびアルカリ金属ホルメートが生じる。前記副反応(i)および(ii)は、以下、ナトリウムメタノラートからのギ酸ナトリウムの形成の例につき明示される。
(i)NaOCH3 + HCOOCH3 → HCOONa + CH3OCH3
(ii)NaOCH3 + H2O + HCOOCH3 → HCOONa + 2CH3OH
WO 2001/07392による方法の場合、反応器排出口から、形成されたギ酸メチルが蒸留装置中に排出される。触媒として使用される、消費されなかったアルカリ金属メタノラートは、カルボニル化反応器へ返送されうる。しかし、この場合、塩の分離を避けるために、触媒分解生成物を返送前に脱塩装置中で除去することが必要とされる。触媒分解生成物として発生するアルカリ金属ホルメートは、その不十分な溶解性のために、管および弁が閉塞するまで、装置中および管路中で堆積をまねきうる。WO 2001/07392の教示によれば、反応器出口でのアルカリ金属ホルメートの含量は、とりわけ、0.1〜0.3質量%の範囲内にある。
【0006】
WO 2003/089398には、ギ酸メチルをメタノールおよび一酸化炭素からアルカリ金属アルコラートの存在下で液状反応混合物1kg当たり0.01〜2モルの濃度で製造する方法が記載されている。また、前記刊行物中には、アルカリ金属ホルメートが望ましくない触媒分解生成物として記載されており、この望ましくない触媒分解生成物は、塩様堆積物を阻止するために排出される。そのうえ、この方法の場合には、1〜20m/秒の範囲内の平均ガス空塔速度を有するガス流の装置的に費用の掛かる返送が必要とされる。
【0007】
また、Ullmanns Encyclopedia of Technical Chemistry(2005,Kapitel“Formic Acid”,第6〜7頁;Wiley−VCH−Verlag,DOI:10.1002/14356007.a12_013)には、ギ酸メチルとの望ましくない副反応において、ナトリウムメタノラートからジメチルエーテルおよび触媒不活性のギ酸ナトリウムが形成されることが記載されている。
【0008】
PEPリポート(Process Economics Program“Formic Acid”,1983,第50〜52頁)には、ギ酸ナトリウムの存在下にメタノールおよび一酸化炭素からギ酸メチルを製造する方法が記載されている。形成されたアルカリ金属ホルメートは、消費された触媒または不活性化触媒と呼称される。前記触媒、ナトリウムメタノラート、は、反応器に返送されうる。しかし、このために、形成されたナトリウムメタノラートを前記方法から、触媒(ナトリウムメタノラート)に対する消費された触媒(ギ酸ナトリウム)のモル比が最大で当モル量である当該量で排出することが必要とされる。
【0009】
米国特許第2004/0171704号明細書には、一酸化炭素とアルコールとを反応させることによって、メタノールまたはギ酸エステルを製造する方法が記載されている。触媒として、好ましくは、アルカリ金属塩が使用される。米国特許第2004/0171704号明細書の目的は、水および/または二酸化炭素の存在下でも一酸化炭素とアルコールとの反応を可能にすることである。触媒として、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属硝酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属酢酸塩およびアルカリ金属ギ酸塩が記載されている。アルカリ金属アルコラートの使用は、明らかに排除されている。それというのも、前記アルカリ金属アルコラートは、水および/または一酸化炭素の存在下で不活性化されるからである。
【0010】
欧州特許第0596483号明細書には、メタノールを触媒としてのナトリウムメタノラートまたはカリウムメタノラートの存在下でカルボニル化することにより、ギ酸メチルを製造する方法が記載されている。また、欧州特許第0596483号明細書には、触媒として使用されるアルカリ金属メタノラート(アルカリ金属メチラート)が不活性の分解生成物、例えばギ酸ナトリウムまたはギ酸カリウム、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムおよび炭酸水素ナトリウムまたは炭酸水素カリウムに変換されることが記載されている。その際に、分解生成物は、周期的にフィルターを介して除去され、その際に反応器出口で分解生成物約0.9質量%が生じる。その際に、分解生成物は、ギ酸ナトリウム約38質量%、炭酸水素ナトリウム42質量%、炭酸ナトリウム15質量%およびナトリウムメタノラート6質量%から構成されている。触媒消費量を減少させかつ空時収量を上昇させるために、特別なナトリウムオキサペルフルオロアルカンスルホネートまたはカリウムオキサペルフルオロアルカンスルホネートおよび有機強塩基の存在下で反応が実施される。
【0011】
技術水準に記載された方法の欠点は、受け入れることができる空時収量を達成させるために、極めて高い圧力が必要とされること、および/または高いガス空塔速度を有する循環ガス流の装置的に費用の掛かる返送が必要とされることである。前記方法には、高い投資費用と結びついている、特別に設計された反応器が必要とされる。欧州特許第0596483号明細書中に記載された方法の場合には、実際に3.0MPa(30バール)のより低い一酸化炭素分圧が可能であるが、しかし、極めて高価なナトリウムオキサペルフルオロアルカンスルホネートまたはカリウムオキサペルフルオロアルカンスルホネートおよび有機強塩基の使用が必要とされる。
【0012】
本発明の課題は、ギ酸メチルを良好な空時収量で供給する方法を提供することであった。さらに、本方法は、技術水準に記載された方法よりも簡単な方法の実施を、殊に技術水準に記載された費用の掛かる高圧反応器なしに、かつ高価な触媒添加剤、例えばカリウムオキサペルフルオロアルカンスルホネートおよび有機強塩基なしに、可能にすべきである。
【0013】
この課題は、ギ酸メチルを製造する方法であって、カルボニル化反応器中でアルカリ金属ホルメートおよびアルカリ金属アルコラートを含有する触媒系の存在下にメタノールを一酸化炭素でカルボニル化することにより、ギ酸メチル、アルカリ金属ホルメート、アルカリ金属アルコラートならびに任意に未反応のメタノールおよび未反応の一酸化炭素を含有する反応混合物(RG)を取得し、かつ前記カルボニル化反応器から取り出し、その際に、この反応混合物(RG)は、反応混合物(RG)の全質量に対して、アルカリ金属アルコラートを少なくとも0.5質量%含有し、かつ反応混合物(RG)中のアルカリ金属アルコラートに対するアルカリ金属ホルメートのモル比率は、1を上回る、前記方法によって解決される。
【0014】
ギ酸メチルをメタノールおよび一酸化炭素から製造するための本発明による方法の場合には、部分的にむしろ技術水準に記載された空時収量を上回る、極めて良好な空時収量が達成される。本発明による方法は、より低い圧力でギ酸メチルを良好な収量で得ることができるという利点を有する。それによって、反応器の設計の際に費用を節約することができる。さらに、本発明による方法は、高価な添加剤、例えばカリウムオキサペルフルオロアルカンスルホネートおよび有機強塩基の使用を必要とすることなく、極めて良好な空時収量を提供する。また、管および弁の閉塞をまねきうる、塩堆積の技術水準に記載された問題は、本発明による方法により減らすことができるかまたはむしろ完全に防ぐことができる。
【0015】
技術水準においては、アルカリ金属アルコラートだけがメタノールのカルボニル化に関連して触媒活性であるという利点があった。これに反して、アルカリ金属ホルメートは、技術水準において、触媒不活性であると記載されている。アルカリ金属ホルメートは、技術水準において、消費された触媒とも記載されており、この触媒は、反応混合物から除去されなければならずかつ新しい触媒活性アルカリ金属アルコラートに代えなければならない。
【0016】
意外なことに、アルカリ金属ホルメートは、アルカリ金属アルコラートと組み合わせて、技術水準における利点にもかかわらず、メタノールのカルボニル化に関連して触媒活性であることが確認された。このことは、アルカリ金属アルコラートに対するアルカリ金属ホルメートのモル比率が1を上回り、有利に2を上回り、特に有利に3を上回り、殊に5を上回る、アルカリ金属ホルメートおよびアルカリ金属アルコラートを含有する混合物に当てはまる。
【0017】
したがって、本発明の対象は、メタノールを一酸化炭素でカルボニル化することによりギ酸メチルを製造するための触媒としての、アルカリ金属アルコラートに対するアルカリ金属ホルメートのモル比率が1を上回り、有利に2を上回り、特に有利に3を上回り、殊に5を上回る、アルカリ金属ホルメートおよびアルカリ金属アルコラートを含有する混合物の使用でもある。
【0018】
ギ酸メチルへのメタノールと一酸化炭素との反応
本発明による方法において使用される一酸化炭素は、固体で使用されてもよいし、液状で使用されてもよいし、ガス状で使用されてもよい。一酸化炭素は、純物質として、すなわち少なくとも95質量%、有利に少なくとも97質量%、特に有利に少なくとも99質量%の含量で使用されうる。好ましくは、一酸化炭素は、ガス状で使用される。使用される一酸化炭素は、有利には可能な限り二酸化炭素を含まず、すなわちたいてい、そのつど一酸化炭素含有ガス混合物の全質量に対して、二酸化炭素1質量%未満、有利に二酸化炭素0.5質量%未満である。一酸化炭素の他に、さらなる不活性物質、例えば窒素、水素、メタンまたは希ガスを含有する一酸化炭素含有ガス混合物を使用することも可能である。しかし、一般に、不活性物質の含量は、一酸化炭素含有ガス混合物の全質量に対して、10質量%未満である。より大きな量は、実際に任意に同様に許容されうるが、しかし、たいてい、より高い圧力の使用が必要とされ、それによって、さらなる圧縮エネルギーが必要となる。一酸化炭素は、たいてい、当業者によく知られた一酸化炭素源、例えば合成ガスに由来する。
【0019】
本発明による方法において使用されるメタノールは、好ましい実施態様において、本質的に無水であり、すなわち、使用されるメタノールは、そのつど、使用されるメタノールおよびその中に含まれている水からの全質量に対して、水を最大250質量ppm、有利に最大100質量ppm、特に有利に最大50質量ppm含有する。
【0020】
好ましい実施態様において、一酸化炭素でのメタノールのカルボニル化は、無水で実施される。その際に、無水とは、反応混合物(RG)がそのつど反応混合物(RG)の全質量に対して、水を最大250質量ppm、有利に最大100質量ppm、特に有利に最大50質量ppm含有することであると解釈される。
【0021】
本発明による方法において使用されるアルカリ金属アルコラートは、固体として使用されてもよいし、適当な溶剤中の溶液として使用されてもよい。2つ以上のアルカリ金属アルコラートからなる混合物が使用されてよい。アルカリ金属アルコラートとは、本発明の範囲内で、アルカリ金属アルコラートならびに2つ以上のアルカリ金属アルコラートからなる混合物であると解釈される。しかし、好ましくは、アルカリ金属アルコラートだけが使用される。好ましい実施態様において、アルカリ金属メタノラートは、メタノール中に溶解されて使用される。
【0022】
本発明による方法において使用されるアルカリ金属ホルメートは、同様に、固体として使用されてもよいし、適当な溶剤中の溶液として使用されてもよい。2つ以上のアルカリ金属ホルメートからなる混合物が使用されてよい。アルカリ金属ホルメートとは、本発明の範囲内で、アルカリ金属ホルメートならびに2つ以上のアルカリ金属ホルメートからなる混合物であると解釈される。しかし、好ましくは、アルカリ金属ホルメートだけが使用される。好ましい実施態様において、アルカリ金属ホルメートは、メタノール中に溶解されて使用される。アルカリ金属ホルメートは、下流の後処理段階からの返送により、カルボニル化反応器にも供給されうる。
【0023】
アルカリ金属ホルメートのアルカリ金属成分およびアルカリ金属アルコラートのアルカリ金属成分は、互いに独立して、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムからなる群から選択されうる。したがって、アルカリ金属ホルメートは、ギ酸リチウム、ギ酸ナトリウム、ギ酸カリウム、ギ酸ルビジウムおよびギ酸セシウムからなる群から選択されうる。好ましくは、アルカリ金属ホルメートは、ギ酸ナトリウムおよびギ酸カリウムからなる群から選択されている。ギ酸カリウムが特に好ましい。アルカリ金属アルコラートは、リチウムアルコラート、ナトリウムアルコラート、カリウムアルコラート、ルビジウムアルコラートおよびセシウムアルコラートからなる群から選択されていてよい。好ましくは、アルカリ金属アルコラートは、ナトリウムアルコラートおよびカリウムアルコラートからなる群から選択されている。カリウムアルコラートが特に好ましい。
【0024】
アルカリ金属アルコラートのアルコラート成分として、1〜12個の炭素原子を有するアルコラートアニオン、例えばメタノラート、エタノラート、1−プロパノラート、2−プロパノラート、1−ブタノラート、2−ブタノラート、2−メチル−1−プロパノラート、2−メチル−2−プロパノラート、1−ペンタノラート、イソアミラート、1−ヘキサノラート、1−ヘプタノラート、1−オクタノラート、2−エチル−1−ヘキサノラート、1−ノナノラート、3.5.5−トリメチル−1−ヘキサノラート、2,6−ジメチル−4−ヘプタノラートおよび1−デカノラートが適している。アルコラートとして、メタノラートが特に好ましい。
【0025】
特に好ましくは、アルカリ金属ホルメートのアルカリ金属成分とアルカリ金属アルコラートのアルカリ金属成分とは、同一である。
【0026】
殊に好ましくは、アルカリ金属ホルメートは、ギ酸カリウムであり、かつアルカリ金属アルコラートは、カリウムメタノラートである。
【0027】
本発明による方法において、触媒系として、有利にアルカリ金属ホルメートとアルカリ金属アルコラートとの混合物が使用され、その際に、前記混合物中でのアルカリ金属アルコラートに対するアルカリ金属ホルメートのモル比率は、1を上回る。好ましくは、アルカリ金属アルコラートに対するアルカリ金属ホルメートのモル比率は、2〜20の範囲内、特に有利に2〜15の範囲内、殊に有利に3〜10の範囲内、殊に3〜8の範囲内にあり、その際にアルカリ金属ホルメートとしてギ酸カリウムが特に好ましく、かつアルカリ金属アルコラートとしてカリウムメタノラートが特に好ましい。
【0028】
好ましくは、反応混合物(RG)中でのアルカリ金属アルコラートに対するアルカリ金属ホルメートのモル比率は、2を上回り、特に有利に3を上回り、殊に有利に5を上回る。
【0029】
好ましくは、反応混合物(RG)中でのアルカリ金属アルコラートに対するアルカリ金属ホルメートのモル比率は、2〜20の範囲内、特に有利に2〜15の範囲内、殊に有利に3〜10の範囲内、殊に3〜8の範囲内にあり、その際にアルカリ金属ホルメートとしてギ酸カリウムが特に好ましく、かつアルカリ金属アルコラートとしてカリウムメタノラートが特に好ましい。
【0030】
好ましい実施態様において、本発明による方法では、本質的にアルカリ金属ホルメートとアルカリ金属アルコラートとの前記混合物からなる触媒系が使用され、その際に、本質的にギ酸カリウムとカリウムメタノラートとからなる混合物が特に好ましい。
【0031】
すなわち、本発明による方法において、触媒系として使用される、アルカリ金属ホルメートとアルカリ金属アルコラートとの混合物の他に、一般に、そのつど、触媒系として使用される混合物および任意に存在するさらなる触媒作用を有する物質の全質量に対して、一酸化炭素でのメタノールのカルボニル化を触媒する、さらなる触媒作用を有する物質が最大1質量%、有利に最大0.5質量%、特に有利に最大0.1質量%使用され、とりわけさらなる触媒作用を有する物質は、使用されない。好ましい実施態様において、触媒系として使用される混合物は、アルカリ金属ホルメートとアルカリ金属アルコラートとからなり、その際にギ酸カリウムとカリウムメタノラートとからなる混合物が特に好ましい。
【0032】
本発明による方法における好ましい実施態様において、アルカリ金属オキサペルフルオロスルホネートならびに8.7を上回るpKa値を有する有機強塩基は、存在していない。本発明による方法において存在していないアルカリ金属オキシペルフルオロスルホネートの例は、一般式
CF3CF2(OCFXCF2pOCF2SO3
〔式中、p=0〜2、X=F、CF3およびM=Na、K〕の当該アルカリ金属オキシペルフルオロスルホネートである。
【0033】
したがって、本発明の対象は、ギ酸メチルへのメタノールと一酸化炭素との反応のための触媒系としての、アルカリ金属ホルメートとアルカリ金属アルコラートとの混合物の使用でもあり、その際に前記混合物中のアルカリ金属アルコラートに対するアルカリ金属ホルメートのモル比率は、1を上回る。前記混合物の本発明による使用には、アルカリ金属ホルメートおよびアルカリ金属アルコラートならびに相応するモル比率に関連する前記利点が当てはまる。
【0034】
カルボニル化反応器として、本発明による方法の場合、原理的に、気/液反応に適している全ての反応器が使用されてよい。気−液反応系に適した標準反応器は、例えばUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,2005,Wiley−VCH−Verlag GmbH & CO.KGaA,DOI:10.1002/14356007.b04_087,第3.3章“Reactors for gas−liquid reactions”中のK.D.Henkel,“Reactor Types and Their Industrial Applications”に記載されている。例として、攪拌槽型反応器、管状反応器、噴射式ループ型反応器または気泡塔が挙げられる。
【0035】
一酸化炭素でのメタノールのカルボニル化は、本発明による方法の場合に、連続的または非連続的に実施されうる。非連続的運転形式の場合、カルボニル化反応器には、所望の液状の原料および助剤ならびに任意の固体の原料および助剤が装入され、かつ引き続き一酸化炭素は、所望の温度で所望の圧力に圧縮される。反応の終結後に、カルボニル化反応器は、通常、放圧される。連続的運転形式の場合、カルボニル化反応器には、メタノール、一酸化炭素、触媒系(アルカリ金属ホルメートおよびアルカリ金属アルコラート、有利にアルカリ金属メタノラートおよびアルカリ金属ホルメート)が連続的に供給される。相応して、反応混合物(RG)は、連続的にカルボニル化反応器から導出され、その結果、カルボニル化反応器中での液体レベルは、平均的に不変のままである。一酸化炭素でのメタノールの連続的なカルボニル化が好ましい。
【0036】
カルボニル化反応器中には、一般に液相および気相が存在している。カルボニル化反応は、一般に液相中で行なわれる。
【0037】
反応混合物(RG)とは、本発明によれば、カルボニル化反応器から取り出される、カルボニル化の反応条件下での液体画分であると解釈される。
【0038】
したがって、反応混合物(RG)は、カルボニル化の反応圧力下で、すなわち放圧前に、カルボニル化反応器から取り出される液相の組成を説明する。
【0039】
一酸化炭素でのメタノールのカルボニル化反応は、カルボニル化反応器中で、一般に液相中で30〜100バールの範囲内、有利に30〜70バールの範囲内、特に有利に50〜65バールの範囲内の全圧で、ならびに60〜140℃の範囲内、有利に65〜110℃の範囲内、特に有利に70〜100℃の範囲内の温度で行なわれる。殊に好ましい実施態様において、カルボニル化反応器中でのカルボニル化は、70〜100℃の範囲内の温度および50〜65バールの範囲内の全圧で行なわれる。
【0040】
カルボニル化反応器に供給される一酸化炭素の量に対するカルボニル化反応器に供給されるメタノールの量の供給原料モル比率は、本発明による方法の場合に、一般に、1〜5、有利に2〜5、特に有利に2.5〜4、殊に3〜4である。カルボニル化反応器に供給されるメタノールの量は、新しく供給されるメタノールならびに任意に下流の後処理段階から返送されるメタノールから構成されている。カルボニル化反応器に供給される一酸化炭素の量は、新しく供給される一酸化炭素、ならびに任意に下流の後処理段階から返送される一酸化炭素から構成されている。
【0041】
カルボニル化反応器に供給されるアルカリ金属アルコラート、有利にカリウムメタノラートの量に対するカルボニル化反応器に供給されるメタノールの量の供給原料モル比率は、本発明による方法の場合、一般に、100〜400、有利に150〜350、特に有利に200〜350、殊に230〜330である。カルボニル化反応器に供給されるアルカリ金属アルコラートの量は、新しく供給されるアルカリ金属アルコラートならびに任意に下流の後処理段階から返送されるアルカリ金属アルコラートから構成されている。
【0042】
カルボニル化反応器に供給されるアルカリ金属ホルメート、有利にギ酸カリウムの量に対するカルボニル化反応器に供給されるメタノールの量の供給原料モル比率は、本発明による方法の場合、一般に、25〜400、有利に30〜200、特に有利に30〜100、殊に30〜50である。カルボニル化反応器に供給されるアルカリ金属ホルメートの量は、新しく供給されるアルカリ金属ホルメートならびに任意に下流の後処理段階から返送されるアルカリ金属ホルメートから構成されている。
【0043】
“新しく供給される”とは、メタノール、一酸化炭素、アルカリ金属アルコラートおよびアルカリ金属ホルメートに関連して、本発明の範囲内で、下流の後処理段階から返送されない成分であると解釈される。この成分は、本発明による方法に由来するのではなく、外側から本発明による方法に供給される成分であると解釈される。
【0044】
しかし、新しく供給されるアルカリ金属ホルメートの添加は、必ずしも必要ではない。アルカリ金属ホルメートは、前記副反応(i)および/または(ii)によるメタノールのカルボニル化の際に生じる。本発明による方法の好ましい実施態様において、カルボニル化反応器には、新しいアルカリ金属ホルメートは供給されず、かつアルカリ金属ホルメートは、下流の後処理段階から返送されるアルカリ金属ホルメートだけに由来する。前記実施態様の場合、アルカリ金属ホルメートは、本発明による方法において、反応混合物(RG)中でアルカリ金属ホルメートの本発明による濃度が達成されるまでレベリングされる。
【0045】
好ましくは、アルカリ金属アルコラートおよびアルカリ金属ホルメートは、メタノール中に溶解されて反応器に供給される。
【0046】
本発明による方法の場合、カルボニル化反応器から、蟻酸メチル、アルカリ金属ホルメート、アルカリ金属アルコラートならびに任意に未反応のメタノールおよび未反応の一酸化炭素を含有する反応混合物(RG)が取り出される。反応混合物(RG)の組成は、当該反応混合物(RG)中に含まれるアルカリ金属ホルメートおよびアルカリ金属アルコラートに関連して、使用される触媒系に向けられている。したがって、反応混合物(RG)中に含まれるアルカリ金属ホルメートおよびアルカリ金属アルコラートに関連して、当該反応混合物(RG)の組成には、相応する前記の記載および触媒系についての利点が当てはまる。
【0047】
好ましい実施態様において、触媒系として、本質的にギ酸カリウムおよびカリウムメタノラートからなる混合物が使用され、その際に、本質的に蟻酸メチル、ギ酸カリウムおよびカリウムメタノラートからなり、かつ任意に未反応のメタノールおよび任意に未反応の一酸化炭素からなる反応混合物(RG)が得られる。“本質的に...なる”とは、本発明の範囲内で反応混合物(RG)に関連して、反応混合物(RG)が蟻酸メチル、アルカリ金属ホルメート、アルカリ金属メタノラートならびに任意の未反応のメタノールおよび未反応の一酸化炭素の他に、そのつど、反応混合物(RG)の全質量に対して、さらなる成分を最大1質量%、有利に最大0.5質量%含有することであると解釈される。
【0048】
一般に、カルボニル化反応器から取り出される反応混合物(RG)中でのアルカリ金属アルコラートに対するアルカリ金属ホルメートのモル比率は、1を上回る。好ましくは、反応混合物(RG)中でのアルカリ金属アルコラートに対するアルカリ金属ホルメートのモル比率は、2〜20の範囲内、特に有利に2〜15の範囲内、殊に有利に4〜12の範囲内、殊に5〜10の範囲内にあり、その際に、アルカリ金属ホルメートとしてギ酸カリウムが特に好ましく、かつアルカリ金属アルコラートとしてカリウムメタノラートが特に好ましい。
【0049】
反応混合物(RG)中でのアルカリ金属アルコラート、有利にカリウムメタノラートの濃度は、一般に、反応混合物(RG)の全質量に対して、少なくとも0.5質量%である。好ましくは、反応混合物(RG)中でのアルカリ金属アルコラートの濃度は、そのつど反応混合物(RG)の全質量に対して、0.5〜1.5質量%、有利に0.5〜1.0の範囲内、特に有利に0.55〜0.9の範囲内にある。
【0050】
反応混合物(RG)中でのアルカリ金属アルコラート、有利にカリウムメタノラートの濃度は、一般に、反応混合物(RG)の全質量に対して、少なくとも0.5質量%である。好ましくは、反応混合物(RG)中でのアルカリ金属アルコラートの濃度は、反応混合物(RG)の全質量に対して、0.5質量%を上回り、特に有利に少なくとも0.51質量%である。好ましくは、反応混合物(RG)中でのアルカリ金属アルコラートの濃度は、そのつど反応混合物(RG)の全質量に対して、0.5質量%を上回り1.5質量%までの範囲内、より有利に0.5質量%を上回り1.0質量%までの範囲内、特に有利に0.51〜0.9質量%の範囲内、殊に0.55〜0.9質量%の範囲内にある。
【0051】
反応混合物(RG)中でのアルカリ金属ホルメート、有利にギ酸カリウムの濃度は、一般に、反応混合物(RG)の全質量に対して、少なくとも2.25質量%である。好ましくは、アルカリ金属ホルメートの濃度は、そのつど、反応混合物(RG)の全質量に対して、2.5〜15質量%の範囲内、有利に3〜10質量%の範囲内、特に有利に5〜7.5質量%の範囲内にある。
【0052】
反応混合物(RG)中のアルカリ金属ホルメートおよびアルカリ金属メタノラートの濃度に関する前記の質量%の記載は、反応混合物(RG)中のアルカリ金属アルコラートに対するアルカリ金属ホルメートのモル比率が1を上回るという前提条件下で当てはまる。
【0053】
特に好ましい実施態様において、本発明による方法によって反応混合物(RG)が得られ、その際にこの反応混合物(RG)は、そのつど反応混合物(RG)の全質量に対して、アルカリ金属アルコラートを0.5〜1.5質量%およびアルカリ金属ホルメートを2.5〜15質量%含有する。
【0054】
特に好ましい実施態様において、本発明による方法によって反応混合物(RG)が得られ、その際にこの反応混合物(RG)は、そのつど反応混合物(RG)の全質量に対して、アルカリ金属アルコラートを0.51〜1.5質量%およびアルカリ金属ホルメートを2.5〜15質量%含有する。
【0055】
反応混合物(RG)は、一般に、反応混合物(RG)の全質量に対して、ギ酸メチルを最大48質量%含有する。好ましくは、反応混合物(RG)は、そのつど反応混合物(RG)の全質量に対して、ギ酸メチルを12〜45質量%、より有利に25〜45質量%、殊に35〜45質量%含有する。
【0056】
反応混合物(RG)は、一般に未反応のメタノールを含有する。好ましくは、反応混合物(RG)は、そのつど反応混合物(RG)の全質量に対して、メタノールを40〜85質量%、より有利に45〜60質量%、殊に45〜55質量%含有する。
【0057】
本発明による方法の好ましい実施態様において、反応混合物(RG)は、
ギ酸メチルを12〜45質量%、
メタノールを40〜85質量%、
アルカリ金属ホルメートを2.5〜15質量%、
アルカリ金属アルコラートを0.5〜1.5質量%および
一酸化炭素を0〜2質量%含有し、
その際に、反応混合物(RG)中に含まれる全ての成分の総和は、100質量%であり、かつ反応混合物(RG)は、そのつど反応混合物(RG)の全質量に対して、ギ酸メチル、メタノール、アルカリ金属ホルメート、アルカリ金属アルコラート、一酸化炭素および水とは異なる、さらなる成分を最大1質量%、有利に最大0.5質量%含有する。
【0058】
本発明による方法の特に好ましい実施態様において、反応混合物(RG)は、
ギ酸メチルを35〜45質量%、
メタノールを45〜62質量%、
ギ酸カリウムを2.5〜7.5質量%、
カリウムメタノラートを0.5〜0.8質量%および
一酸化炭素を0〜1.5質量%含有し、
その際に、反応混合物(RG)中に含まれる全ての成分の総和は、100質量%であり、かつ反応混合物(RG)は、そのつど反応混合物(RG)の全質量に対して、ギ酸メチル、メタノール、ギ酸カリウム、カリウムメタノラート、一酸化炭素および水とは異なる、さらなる成分を最大1質量%、有利に最大0.5質量%含有する。
【0059】
前記量で反応混合物(RG)中に含まれていてよい、さらなる成分は、例えば、原料中の汚染物質、例えば使用された一酸化炭素からの窒素、アルゴン、水素またはメタンおよび使用されたメタノールからの汚染物質、例えばホルムアルデヒドおよびホルムアルデヒドジメチルアセタールならびに使用されたアルコラートおよびホルメート中に含まれている汚染物質、およびメタノールカルボニル化の副生成物、例えばジメチルエーテルおよびメチルグリオキサールメチルヘミアセタールである。
【0060】
好ましい実施態様において、カルボニル化反応器に供給される液状供給原料は、本質的にメタノール、アルカリ金属アルコラートおよびアルカリ金属ホルメートならびに任意にギ酸メチルから構成されている。好ましい実施態様において、前記液状供給原料は、そのつど液状供給原料の全質量に対して、メタノール、アルカリ金属メタノラートおよびアルカリ金属ホルメートならびに任意にギ酸メチルとは異なる成分を最大1質量%、有利に最大0.5質量%含有する。
【0061】
液状供給原料とは、本明細書中で、反応器に供給される全ての液状成分、すなわち新しく供給された液状成分と返送された液状成分との総和であると解釈することができる。
【0062】
反応混合物(RG)の組成は、一酸化炭素、メタノールおよび触媒系(アルカリ金属ホルメートおよびアルカリ金属アルコラート)の前記供給原料の比率により制御しうる。
【0063】
反応混合物(RG)中に含まれるギ酸メチルの量は、カルボニル化反応器中で一酸化炭素とメタノールとから形成されるギ酸メチルの量と、任意に下流の後処理段階からカルボニル化反応器へ返送されるギ酸メチルの量とから構成されている。
【0064】
反応混合物(RG)中に含まれる一酸化炭素およびメタノールの量は、メタノールに対する一酸化炭素の供給原料比率により制御され、ならびにカルボニル化反応器中でのギ酸メチルへの一酸化炭素とメタノールとの反応により制御され、ならびにカルボニル化の反応圧力により制御される。
【0065】
その際に、反応混合物(RG)の組成は、当業者に公知の通常の調整法により調整することができ、例えばカルボニル化反応器から取り出される反応混合物(RG)の組成を測定する測定ユニットにより調整することができ、かつ目標組成からずれる場合には、供給原料比は、相応して適合される。
【0066】
反応混合物(RG)中に含まれるアルカリ金属ホルメートおよびアルカリ金属アルコラートの量は、カルボニル化反応器に供給される、アルカリ金属ホルメートおよびアルカリ金属アルコラートの量、すなわち触媒系の量および組成により制御される。アルカリ金属ホルメートおよびアルカリ金属アルコラートは、一般に、有利にメタノール中に溶解された溶液として、カルボニル化反応器に供給される。
【0067】
アルカリ金属ホルメートおよびアルカリ金属アルコラートを含有する触媒系は、カルボニル化反応器に外側から新しく供給されうる。好ましい実施態様において、本発明による方法は、連続的に実施され、かつ触媒系中に含まれるアルカリ金属ホルメートおよびアルカリ金属アルコラートは、下流の後処理段階からカルボニル化反応器に返送される。
【0068】
その際に、触媒系中に含まれるアルカリ金属アルコラートは、カルボニル化反応器中で部分的に反応されてアルカリ金属ホルメートとなることに注意すべきである。このことは、アルカリ金属ホルメートおよびジメチルエーテルへのアルカリ金属アルコラートとギ酸メチルとの反応によって行なわれ、かつアルカリ金属ホルメートおよびメタノールへの微少量の水でのアルカリ金属アルコラートおよびギ酸メチルの加水分解によって行なわれる。アルカリ金属ホルメートの形成は、次の反応式iii)〜v)
iii) HCOOCH3 + KOCH3 → HCOOK + CH3OCH3
iv) KOCH3 + H2O → KOH + CH3OH
v) KOH + HCOOCH3 → HCOOK + CH3OH
につきカリウムメタノラートからのギ酸カリウムの形成の例で説明される。
【0069】
したがって、反応混合物(RG)中のアルカリ金属ホルメートおよびアルカリ金属アルコラートの本発明による組成を調整するために、一般に、反応混合物(RG)から反応式iii)〜v)により形成されるアルカリ金属ホルメートの一部を分離することが必要である。さらに、一般に、反応式iii)およびiv)により反応されたアルカリ金属メタノラートを代えることが必要である。
【0070】
その際に、形成されたアルカリ金属ホルメートの分離および反応されたアルカリ金属アルコラートの代用は、順次に行なわれてよいし、連続的に行なわれてよい。好ましくは、形成されたアルカリ金属ホルメートは、連続的に分離され、かつ反応されたアルカリ金属アルコラートは、連続的に新しく外側から供給されたアルカリ金属アルコラートによって代えられる。
【0071】
特に好ましい実施態様において、カルボニル化反応器から取り出される反応混合物(RG)は、次の工程
(a)分離装置中で一酸化炭素を反応混合物(RG)から分離して一酸化炭素を含むガス流(G1)とギ酸メチル、アルカリ金属ホルメート、アルカリ金属アルコラートおよびメタノールを含む液体流(L1)とを得る工程、
(b)第1の蒸留装置中でギ酸メチルを液体流(L1)から分離してギ酸メチルを含む留出物(D1)とアルカリ金属ホルメート、アルカリ金属アルコラートおよびメタノールを含む塔底混合物(S1)とを得る工程、
(c)塔底混合物(S1)を、カルボニル化反応器に返送される部分流(S1a)と部分流(S1b)とに分ける工程、および
(d)第2の蒸留装置中でメタノールを部分流(S1b)から分離してメタノールを含みかつ第1の蒸留装置に返送される留出物(D2)とアルカリ金属ホルメートおよびアルカリ金属アルコラートを含む塔底混合物(S2)とを得る工程を含めて、さらに後処理される。
【0072】
工程(a)における一酸化炭素の分離は、必ずしも必要ではない。工程(b)において反応混合物(RG)を直接第1の蒸留装置に供給することも可能である。一酸化炭素を反応混合物(RG)から分離する場合には、ガス流(G1)は、有利にカルボニル化反応器に返送される。工程a)において一酸化炭素を分離する場合には、分離装置として、有利にフラッシュ分離装置が使用される。
【0073】
工程(b)において、液体流(L1)から、ギ酸メチルは全体的または部分的に分離されうるか、または、反応混合物(RG)から、ギ酸メチルは全体的または部分的に分離されうる。
【0074】
部分的な分離の場合、例えば、液体流(L1)中に含まれるギ酸メチルは、そのつど液体流(L1)中に含まれるギ酸メチルの全質量に対して、50〜90質量%、有利に60〜90質量%、より有利に80〜90質量%が分離されるか、または、反応混合物(RG)中に含まれるギ酸メチルは、そのつど反応混合物(RG)中に含まれるギ酸メチルの全質量に対して、50〜90質量%、有利に60〜90質量%、より有利に80〜90質量%が分離される。
【0075】
本発明による方法のさらなる実施態様において、第1の蒸留装置中で方法の段階(b)でギ酸メチルは、全体的に分離される。“全体的に分離される”とは、本発明の範囲内で、液体流(L1)中に含まれるギ酸メチルが、そのつど液体流(L1)中に含まれるギ酸メチルの全質量に対して、90%を上回り、有利に98.5%を上回り、特に有利に99%を上回り、殊に99.5%を上回り分離されることであるか、または、反応混合物(RG)中に含まれるギ酸メチルが、そのつど反応混合物(RG)中に含まれるギ酸メチルの全質量に対して、90%を上回り、有利に98.5%を上回り、特に有利に99%を上回り、殊に99.5%を上回り分離されることであると解釈される。
【0076】
前記ギ酸メチルを部分的に分離する場合、塔底混合物(S1)は、なおギ酸メチルを含む。ギ酸メチルを全体的に分離する場合、塔底混合物(S1)は、可能な限りギ酸メチルを含まない。ギ酸メチルを全体的に分離することは、好ましい。
【0077】
前記ギ酸メチルは、例えば蒸発器中で分離されうるかまたは蒸発器および塔からなる蒸留ユニット中で分離されることができ、その際に前記塔は、パッキンおよび/または充填体および/または棚段で充填されている。
【0078】
工程(b)に従って分離された留出物(D1)は、ギ酸メチルの他に、なおメタノールを含有することができる。好ましい実施態様において、留出物(D1)は、ギ酸メチルを60〜97質量%およびメタノールを3〜40質量%、有利にギ酸メチルを75〜85質量%およびメタノールを15〜25質量%含有する。留出物(D1)は、例えば蒸留によって、さらに後処理することができる。その際に分離されたメタノールは、カルボニル化反応器に返送されうる。返送されたメタノールは、ギ酸メチルを含有することができる。
【0079】
ギ酸メチルをさらに反応させることも可能である。ギ酸メチルは、例えば加水分解されてギ酸とすることができる。その際に生じるメタノールは、同様に、カルボニル化反応器に返送されうる。返送されたメタノールは、ギ酸メチルを含有することができる。
【0080】
工程(b)においてギ酸メチルを分離する場合には、アルカリ金属ホルメート、アルカリ金属アルコラートおよびメタノールを含有する塔底混合物(S1)が得られる。塔底混合物(S1)中には、アルカリ金属ホルメートおよびアルカリ金属アルコラートが有利にメタノール中に溶解されて存在する。
【0081】
反応混合物(RG)中に含まれる、アルカリ金属ホルメートおよびアルカリ金属アルコラートの量は、好ましい実施態様において、塔底混合物(S1)を部分流(S1a)と部分流(S1b)とに分けることによって制御される。
【0082】
反応混合物(RG)から形成されたアルカリ金属ホルメートは、部分流(S1b)により分離される。反応混合物(RG)中でのアルカリ金属ホルメートのレベリングは、分離された部分流(S1b)の量により制御される。形成されたアルカリ金属ホルメートを排出するために、部分流(S1b)は、第2の蒸留装置に供給される。反応混合物(RG)の本発明による組成を調整するために、塔底混合物(S1)は、部分流(S1a)対部分流(S1b)の質量による量の比が50対1を上回り、有利に100対1を上回るように分けられる。
【0083】
換言すれば、このことは、排出された部分流(S1b)の1質量部当たり、部分流(S1a)少なくとも50質量部、有利に部分流(S1a)少なくとも100質量部がカルボニル化反応器に返送されることを意味する。
【0084】
第2の蒸留装置の塔底部において、アルカリ金属ホルメートおよびアルカリ金属メタノラートを含有する塔底混合物(S2)が得られる。固体の沈殿を阻止するため、および第2の蒸留装置の塔底部中での結垢または閉塞の危険を最小化するために、第2の蒸留装置には、好ましい実施態様において、水が添加される。水は、例えば蒸気または蒸気凝縮物として第2の蒸留装置に供給されうる。
【0085】
前記の実施態様において、反応混合物(RG)の後処理は、次の工程:
(a)分離装置中で一酸化炭素を反応混合物(RG)から分離して一酸化炭素を含むガス流(G1)とギ酸メチル、アルカリ金属ホルメート、アルカリ金属アルコラートおよびメタノールを含む液体流(L1)とを得る工程、
(b)第1の蒸留装置中でギ酸メチルを液体流(L1)から分離してギ酸メチルを含む留出物(D1)とアルカリ金属ホルメート、アルカリ金属アルコラートおよびメタノールを含む塔底混合物(S1)とを得る工程、
(c)塔底混合物(S1)を、カルボニル化反応器に返送される部分流(S1a)と部分流(S1b)とに分ける工程、および
(d)水が添加される第2の蒸留装置中でメタノールを部分流(S1b)から分離してメタノールを含みかつ第1の蒸留装置に返送される留出物(D2)とアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属ホルメートおよび水を含む塔底混合物(S2w)とを得る工程を含む。
【0086】
水は、例えば蒸気または蒸気凝縮物として第2の蒸留装置に供給されうる。その際に、水は、好ましい実施態様において、第2の蒸留装置の塔底部中に添加される。
【0087】
水の添加は、アルカリ金属アルコラートが加水分解されて相応するアルカリ金属水酸化物および相応するアルコールとなることをもたらす。好ましいカリウムメタノラートの場合には、このカリウムメタノラートは、加水分解されて水酸化カリウムおよびメタノールとなる。こうして形成されたメタノールは、同様に、留出物(D2)として第2の蒸留装置の塔頂部で分離され、かつ有利に第1の蒸留装置に返送される。
【0088】
部分流(S1b)によりアルカリ金属ホルメートとともに、アルカリ金属アルコラートも分離されるので、カルボニル化反応器には、新しいアルカリ金属アルコラートが外側から供給されなければならない。カルボニル化反応器への外側からのアルカリ金属アルコラートの供給は、好ましい実施態様において、連続的に行なわれる。その際に、新しく供給されるアルカリ金属アルコラートは、固体としてカルボニル化反応器に供給されうるが、しかし、好ましくは、メタノール中に溶解されてカルボニル化反応器に供給されうる。新しく供給されたアルカリ金属アルコラートは、分かれた流れとして、カルボニル化反応器に供給されうる。新しく供給されたアルカリ金属アルコラートを、工程(c)からカルボニル化反応器へ返送される部分流(S1a)に混入することも可能である。
【0089】
本発明は、次の図および次の例によって明示されるが、しかし、本発明は、これらによって限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0090】
図1図1は、本発明による方法の好ましい実施態様を示すブロック図である。
図2図2は、本発明による方法が実施される実験装置を示すブロック図である。
【0091】
カルボニル化反応器Iに一酸化炭素、メタノールならびにアルカリ金属ホルメートおよびアルカリ金属アルコラートを含む触媒系を供給する。そのうえ、カルボニル化反応器中でメタノールと一酸化炭素とを反応させてギ酸メチルとし、その際に、反応混合物(RG)が得られる。そのうえ、一酸化炭素の供給は、流れ1(外側から新しく供給された一酸化炭素)および流れ5(分離装置IIによって返送された一酸化炭素)により行なわれる。アルカリ金属ホルメートおよびアルカリ金属アルコラートは、流れ8a(部分流S1aに相応する)として第1の蒸留装置IIIの塔底部から前記カルボニル化反応器へ返送される。その際に、流れ8aは、メタノール、アルカリ金属ホルメートおよびアルカリ金属アルコラートを、有利に溶解された形で含有する。
【0092】
アルカリ金属アルコラートの損失は、任意に流れ3により解消されうる。流れ3は、有利にメタノール中に溶解されたアルカリ金属アルコラートを含有する。メタノールは、カルボニル化反応器に、有利に流れ2または2aにより供給される。流れ2は、外側から新しいメタノールを供給した場合を説明するものである。しかし、それとは別に、または、さらに、メタノールを、後の後処理段階またはギ酸メチルの反応に由来する流れ2aにより供給することも可能である。
【0093】
カルボニル化反応器I中で、反応混合物(RG)が得られ、この反応混合物(RG)は、カルボニル化反応器Iから取り出され、かつ流れ4として分離装置IIにさらに導かれる。分離装置IIにおいて、反応混合物(RG)から未反応の一酸化炭素が分離される。このことは、有利に反応混合物(RG)を放圧することによって行なわれる。分離装置II中で、本質的に一酸化炭素からなりかつ流れ5としてカルボニル化反応器Iへ返送されるガス流(G1)が得られる。
【0094】
分離装置IIから、ギ酸メチル、アルカリ金属ホルメート、アルカリ金属アルコラートおよびメタノールを含有する液体流(L1)が取り出され、かつ流れ6として第1の蒸留装置IIIにさらに導かれる。第1の蒸留装置III中で、この蒸留装置の塔頂部で、ギ酸メチルを含む流れ7が分離される(留出物(D1))。第1の蒸留装置IIIの塔頂部で、ギ酸メチルとメタノールとの混合物が分離されてもよい。好ましい実施態様において、流れ7は、さらに反応される。好ましくは、ギ酸メチルは、加水分解されてギ酸となる。加水分解の際に生じるメタノールは、流れ2aとしてカルボニル化反応器Iへ返送されうる。第1の蒸留装置IIIの塔底部中で、アルカリ金属ホルメート、アルカリ金属アルコラートおよびメタノールを含有する塔底混合物(S1)が得られる。塔底混合物(S1)は、流れ8として蒸留装置IIIから取り出される。流れ8は、部分流8aと部分流8bとに分けられる。部分流8a(部分流S1aに相応する)は、カルボニル化反応器Iへ返送される。流れ8b(部分流S1bに相応する)は、第2の蒸留装置IV中でさらに後処理される。第2の蒸留装置IVには、流れ11として水が供給される。流れ11は、有利に第2の蒸留装置IVの塔底部中に供給される。第2の蒸留装置IV中で、流れ8b中に含まれているアルカリ金属アルコラートは、加水分解されて相応するアルカリ金属水酸化物および相応するアルコールとなる。好ましくは、流れ8b中に含まれるカリウムメタノラートの場合、加水分解で水酸化カリウムおよびメタノールが生じる。第2の蒸留装置IVの塔頂部で、メタノールは、流れ10として取り出され、かつ第1の蒸留装置IIIへ返送される。流れ9として、第2の蒸留装置IVから、水酸化カリウム、ギ酸カリウムおよび水を含有する水溶液が取り出される。
【0095】
本発明を以下、実施例につき詳説するが、しかし、本発明は、これに限定されるものではない。
【実施例】
【0096】
一酸化炭素でのメタノールのカルボニル化の試験を、図2に示した実験装置中で実施した。容器A中に、メタノールとカリウムメタノラートと任意にアルカリ金属ホルメートとの混合物を予め装入した。カルボニル化反応器を、270mlの容積を有する、HC鋼製のオートクレーブによってシミュレートした。前記オートクレーブの反応器容積を、上昇管を用いて150mlの液相と120mlの気相とに分けた。加熱は、油浴を用いて行なわれた。温度を熱電対によって調整した。
【0097】
カルボニル化反応器(B)に貯蔵容器Aから連続的にメタノールおよび触媒系を供給する(図2中の流れ10を参照)。一酸化炭素は、流れ11により供給される。分析のために、カルボニル化反応器(B)から流れ12が取り出され、この流れ12は、オンラインATR−FIR測定プローブを経てカルボニル化反応器(B)へ返送される。ATR−FIR測定プローブ(C)は、メタノール中の蟻酸メチル0〜80質量%の補正処理を有する。前記測定プローブにおいて、全部で60秒間1つの測定点を算出し、その際に、これに関して64回の個々の測定からの平均値を出した。
【0098】
貯蔵容器A中に含まれる混合物の組成ならびに前記試験において得られた反応混合物(RG)の組成は、以下の例に記載されている。
【0099】
比較例1
比較例を図2による実験装置中で実施した。最初に、この実験装置全体を窒素で不活性化した。同様に、窒素の下で、メタノール99.2質量%とカリウムメチラート0.8質量%(カリウムメタノラート)とからなる溶液1400gを調合し、かつ窒素の下で、計量器上に置かれた貯蔵容器(A)中に移した。この混合物555g/hを流れ(10)として連続的に下方からオートクレーブ(B)中にポンプ輸送した。一酸化炭素188Nl/h(純度99.97体積%)を流れ(11)としてカルボニル化反応器中の蓋側で供給した。オートクレーブ(B)を毎分750回転で強力に攪拌し、かつ85℃で操作した。2相の反応混合物(RG)を流れ(13)として上昇管を介してカルボニル化反応器から連続的に排出する。前記排出管中の圧力保持弁を用いて、カルボニル化反応器中の圧力を55バールに保持した。オンラインでの分析のために、反応混合物(RG)80l/hを流れ(12)として、ポンプを用いて連続的にカルボニル化反応器から輸送した。流れ(12)を30℃に冷却し、引き続きATR−FIRプローブ(C)を介してポンプ輸送し、かつそこからカルボニル化反応器中へ返送した。1時間後、前記反応器中の定常状態でのギ酸メチル含量10.5質量%を測定した。
【0100】
例2
例2を比較例1と同様に実施した。供給原料として、MeOH96.7質量%、カリウムメチラート0.8質量%およびギ酸カリウム2.5質量%を有する溶液1400gを窒素の下で貯蔵容器(A)中に充填した。試験の実施および試験パラメーターを比較例1と同様に実施した。試験の実施から1時間後、反応器中の定常状態でのギ酸メチル含量12.8質量%を測定した。
【0101】
例2から、ギ酸メチルは、供給原料中のギ酸カリウム2.5質量%を使用することによって、それ以外は同じ反応条件下で、22%だけ上昇して形成されうることが判明する。
【0102】
例3
例3を比較例1と同様に実施した。供給原料として、MeOH94.2質量%、カリウムメチラート0.8質量%およびギ酸カリウム5.0質量%を有する溶液1400gを窒素の下で貯蔵容器(A)中に充填した。試験の実施および試験パラメーターを比較例1と同様に選択した。試験の実施から1時間後、反応器中の定常状態でのギ酸メチル含量13.3質量%を測定した。
【0103】
例3から、ギ酸メチルは、ギ酸カリウム5質量%を使用することによって、それ以外は同じ反応条件下で、例2に比べて再び上昇して形成されうることが判明する。
【0104】
比較例4
比較例4を図2による実験装置中で実施した。最初に、この実験装置全体を保護ガスとしての窒素で不活性化した。同様に、窒素の下で、メタノール99.3質量%とカリウムメチラート0.7質量%とからなる溶液850gを調合し、かつ窒素の下で、計量器上に置かれた貯蔵容器(A)中に移した。この混合物480g/hを流れ(10)として連続的に下方からオートクレーブ(B)中にポンプ輸送した。一酸化炭素155Nl/h(純度99.97体積%)を流れ(11)としてカルボニル化反応器中の蓋側で供給した。オートクレーブ(B)を毎分750回転で強力に攪拌し、かつ85℃で操作した。2相の反応混合物(RG)を流れ(13)として上昇管を介してカルボニル化反応器から連続的に排出する。前記排出管中の圧力保持弁を用いて、前記反応器中の圧力を55バールに保持した。オンラインでの分析のために、反応混合物(RG)80l/hを流れ(12)として、ポンプを用いて連続的にカルボニル化反応器から輸送した。流れ(12)を30℃に冷却し、引き続きATR−FIRプローブ(C)を介してポンプ輸送し、かつそこからカルボニル化反応器(B)中へ返送した。1時間後、前記反応器中の定常状態でのギ酸メチル含量11.6質量%を測定した。
【0105】
例5
例5を図2による実験装置中で同様に実施した。供給原料として、MeOH94.3質量%、カリウムメチラート0.7質量%およびギ酸ナトリウム5.0質量%を有する溶液850gを窒素の下で貯蔵容器(A)中に充填した。試験の実施および試験パラメーターを比較例4と同様に選択した。試験の実施から1時間後、反応器中の定常状態でのギ酸メチル含量13.0質量%を測定した。
【0106】
例6
例6を図2による実験装置中で同様に実施した。供給原料として、MeOH94.3質量%、カリウムメチラート0.7質量%およびギ酸カリウム5.0質量%を有する溶液850gを窒素の下で貯蔵容器(A)中に充填した。試験の実施および試験パラメーターを比較例4と同様に選択した。試験の実施から1時間後、反応器中の定常状態でのギ酸メチル含量15.2質量%を測定した。
【0107】
例7
例7を図2による実験装置中で同様に実施した。供給原料として、MeOH94.3質量%、カリウムメチラート0.7質量%およびギ酸ルビジウム5.0質量%を有する溶液850gを窒素の下で貯蔵容器(A)中に充填した。試験の実施および試験パラメーターを比較例4と同様に選択した。試験の実施から1時間後、反応器中の定常状態でのギ酸メチル含量13.6質量%を測定した。
【0108】
例5〜7から、ギ酸メチルは、ギ酸ナトリウム5質量%、ギ酸カリウム5質量%およびギ酸ルビジウム5質量%を添加することによって、それ以外は同じ反応条件下で、例4に比べて明らかに上昇して形成されうることが判明する。しかし、好ましくは、ギ酸カリウムの使用である(例6)。
【符号の説明】
【0109】
図1中:
1 一酸化炭素を含む流れ、 2 メタノールを含む流れ、 2a 下流の後処理段階から返送される、メタノールを含む流れ、 3 メタノール中に溶解されたアルカリ金属アルコラートを含む流れ、 4 ギ酸メチル、アルカリ金属ホルメート、アルカリ金属アルコラートならびに任意に未反応のメタノールおよび未反応の一酸化炭素を含む流れ;反応混合物(RG)に相応する、 5 一酸化炭素を含む流れ;ガス流(G1)に相応する、 6 ギ酸メチル、アルカリ金属ホルメート、アルカリ金属アルコラートおよびメタノールを含む流れ;液体流(L1)に相応する、 7 ギ酸メチルならびに任意にメタノールを含む流れ;留出物(D1)に相応する、 8 アルカリ金属ホルメート、アルカリ金属アルコラートおよびメタノールを含有する流れ;塔底混合物(S1)に相応する、 8a アルカリ金属ホルメート、アルカリ金属アルコラートおよびメタノラートを含む流れ;部分流(S1a)に相応する、 8b アルカリ金属ホルメート、アルカリ金属アルコラートおよびメタノールを含む流れ;部分流(S1b)に相応する、 9 アルカリ金属ホルメート、アルカリ金属水酸化物および水を含む流れ;塔底混合物(S2w)に相応する、 10 メタノールを含む流れ;留出物(D2)に相応する、 11 水を含む流れ、 I カルボニル化反応器、 II 分離装置、 III 第1の蒸留装置、 IV 第2の蒸留装置。
図2中:
A メタノールとカリウムメタノラートと任意にアルカリ金属ホルメートとの混合物を含む貯蔵容器、 B カルボニル化反応器I、 C オンラインATR−FIR測定プローブ(Bruker社のATR−MIR,Matrix MF)、 10 メタノール、カリウムメタノラートおよび任意にアルカリ金属ホルメートを含む流れ、 11 一酸化炭素を含む流れ、 12 ギ酸メチル、任意にアルカリ金属ホルメート、カリウムメタノラート、メタノールおよび任意に未反応の一酸化炭素を含む流れ、 13 ギ酸メチル、任意にアルカリ金属ホルメート、カリウムメタノラート、メタノールおよび任意に未反応の一酸化炭素を含む流れ;反応混合物(RG)に相応する。
図1
図2