(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
撮影した放射線画像を無線送信可能な電子カセッテを含む放射線撮影装置と、前記放射線撮影装置の通信環境を制御する通信環境制御装置とを含む放射線撮影システムであり、
前記通信環境制御装置は、
前記電子カセッテが前記放射線画像の送信に使用する無線通信チャンネルと、前記放射線撮影装置以外の他の無線通信装置が使用する無線通信チャンネルのそれぞれの周波数情報を記憶する周波数情報記憶部と、
前記電子カセッテが使用する前記無線通信チャンネルについて、前記他の無線通信装置に対して前記電子カセッテが優先して使用するための優先要求を、前記電子カセッテが前記放射線画像の送信を開始する前に、受け付ける優先要求受け付け部と、
前記優先要求を受け付けた場合において、前記周波数情報記憶部を参照して、前記電子カセッテが使用する前記無線通信チャンネルの周波数と競合する周波数の前記無線通信チャンネルを使用する前記他の無線通信装置の有無を判定する周波数競合判定部と、
前記周波数が競合している場合において、前記電子カセッテが前記放射線画像を送信する際に、前記周波数が競合する前記他の無線通信装置を規制対象として通信規制を行う通信規制部とを備えていることを特徴とする放射線撮影システム。
前記通信規制には、通信の停止、単位時間当たりのデータ転送量である転送レートの制限、前記規制対象が使用する前記無線通信チャンネルの前記周波数の変更のうち、少なくとも1つが含まれることを特徴とする請求項1に記載の放射線撮影システム。
前記通信環境制御装置は、さらに、前記他の無線通信装置から、前記無線通信チャンネルの周波数情報を取得する周波数情報取得部を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の放射線撮影システム。
前記他の無線通信装置は、無線端末、及び前記無線端末を通信ネットワークに接続するための中継器であるアクセスポイントのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射線撮影システム。
前記放射線撮影装置は、前記電子カセッテに加えて、前記電子カセッテからの前記放射線画像を受信する画像受信機能と、前記放射線画像を表示する表示機能と、前記電子カセッテに対して指示を入力する指示入力機能とを有するコンソールを含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の放射線撮影システム。
前記放射線撮影装置は、1回の撮影において前記電子カセッテが前記放射線画像の送信を開始する前までの所定のタイミングで前記通信環境制御装置に対して前記優先要求を発行することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の放射線撮影システム。
前記放射線撮影装置は、放射線を発生する放射線源と前記放射線の照射を開始させるための操作を行う照射スイッチとを有する放射線発生装置と組み合わせて使用されることを特徴とする請求項8に記載の放射線撮影システム。
前記タイミングは、前記電子カセッテが撮影準備状態に移行したタイミング、前記電子カセッテが前記放射線画像を検出する際の蓄積動作が終了したタイミング、及びマニュアル操作により優先指示が入力されたタイミングのいずれかのタイミングであることを特徴とする請求項8又は9に記載の放射線撮影システム。
前記放射線撮影装置は、前記電子カセッテの単位時間当たりの転送レートを測定し、前記転送レートが所定の閾値未満の場合に前記優先要求を発行することを特徴とする請求項8〜15のいずれか1項に記載の放射線撮影システム。
前記放射線撮影装置は、前記電子カセッテ及び前記コンソール間の無線通信を中継する中継機能と、前記電子カセッテ及び前記コンソールを通信ネットワークに接続するための中継機能とを有する中継器である無線アクセスポイントを含むことを特徴とする、請求項7、又は請求項7を引用する請求項8〜16のいずれか1項に記載の放射線撮影システム。
前記放射線撮影装置は、前記電子カセッテが前記放射線画像を送信している間、他の無線通信を停止することを特徴とする請求項7〜17のいずれか1項に記載の放射線撮影システム。
撮影した放射線画像を無線送信可能な電子カセッテを含む放射線撮影装置と前記放射線撮影装置以外の他の無線通信装置が使用する無線通信チャンネルのそれぞれの周波数情報を記憶する周波数情報記憶部と、
前記電子カセッテが前記放射線画像の送信に使用する無線通信チャンネルについて、前記他の無線通信装置に対して前記電子カセッテが優先して使用するための優先要求を、前記電子カセッテが前記放射線画像の送信を開始する前に、受け付ける優先要求受け付け部と、
前記優先要求を受け付けた場合において、前記周波数情報記憶部を参照して、前記電子カセッテが使用する前記無線通信チャンネルの周波数と競合する周波数の前記無線通信チャンネルを使用する前記他の無線通信装置の有無を判定する周波数競合判定部と、
前記周波数が競合している場合において、前記電子カセッテが前記放射線画像を送信する際に、前記周波数が競合する前記他の無線通信装置を規制対象として通信規制を行う通信規制部とを備えていることを特徴とする通信環境制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0032】
「第1実施形態」
図1において、X線撮影システム10は、X線発生装置11と、X線撮影装置12と、通信環境制御装置13で構成されている。X線発生装置11は、車輪が設けられた走行可能な台車に搭載された移動型X線発生装置であり、台車を含めて回診車14とも呼ばれる。X線撮影装置12は、電子カセッテ16、コンソール17及び機能ユニット18を有する可搬型のものであり、回診車14に積載することが可能である。回診車14は、使用しないときには、医療施設内の駐機場15に止められている。回診撮影の際には、回診車14に可搬型のX線撮影装置12が積載されて、駐機場15から運び出される。放射線技師(以下、単に技師という)Tは回診車14を押しながら、病棟19内の各病室R11、R12、R21、R22を巡回して、被写体となる、ベッド20上の各患者Pの回診撮影を行う。
【0033】
各病室R11、R12、R21、R22及び駐機場15、その他医療施設内の要所には、無線端末を院内の通信ネットワークであるLAN(Local Area Network)21に接続するための中継器であるアクセスポイント(AP:Access Point)22が設置されている。AP22は、無線端末と同様に無線通信装置であり、無線端末と通信するための無線通信部と、通信ケーブルを介してLAN21に接続するための有線通信部とを備えている。無線通信部は、アンテナ、変復調回路、伝送制御部などで構成される。無線通信部は、後述する、電子カセッテ16及びコンソール17の無線通信部37、38(
図3参照)と同様に、現在の無線LANの代表的な規格であるIEEE802.11nに準拠した通信プロトコルに従った伝送制御を行う。LAN21には、病院情報システム(HIS:Hospital Information System)サーバ25、放射線科情報システム(RIS:Radiology Information System)サーバ23、画像サーバ24が接続されている。
【0034】
HISサーバ25は、電子カルテを管理するためのサーバであり、主として内科や外科などの診療科の医師や看護師などの医療スタッフが使用する診療科端末によってアクセスされる。診療科端末には、デスクトップ型やノート型のコンピュータの他、看護師や医師が携行するタブレット型コンピュータなどの携帯型の無線端末も含まれる。これらの診療科端末によって電子カルテの閲覧や診療情報の入力が行われる。
【0035】
RISサーバ23は、放射線科が管理するサーバであり、診療科から放射線科に向けて送信される撮影依頼情報である撮影オーダを管理する。撮影オーダには、診療科名、医師名を含む依頼元情報と、患者の氏名、年齢及び性別を含む患者基本情報と、頭部、胸部、腹部、手、指等の撮影部位と、正面、側面、斜位、PA(X線を被写体の背面から照射)、AP(X線を被写体の正面から照射)等の撮影方向と、オーダ元の診療科の医師からの撮影目的や注意点などのメッセージなどが含まれる。技師Tは、撮影オーダの内容をコンソール17で確認して、撮影オーダに適した撮影条件を決定する。決定した撮影条件を電子カセッテ16やX線発生装置11に設定する。
【0036】
撮影条件には、X線源10が照射するX線のエネルギースペクトルを決める管電圧(単位;kV)、単位時間当たりの照射量を決める管電流(単位;mA)、およびX線の照射時間(単位;s)で規定される照射条件が含まれる。管電流と照射時間の積でX線の累積の照射量が決まるため、照射条件としては、管電流と照射時間のそれぞれの値を個別に入力する代わりに、両者の積である管電流時間積(mAs値)の値が入力される場合もある。
【0037】
画像サーバ24は、撮影オーダに従ってX線撮影装置12で撮影されたX線画像などの画像データを管理するサーバである。画像サーバ24は、撮影オーダの依頼元の診療科端末からもアクセスが可能であり、診療科の医師は、診療科端末を通じて画像サーバ24にアクセスして撮影されたX線画像を閲覧することができる。
【0038】
X線撮影装置12において、コンソール17は無線通信機能を有する無線端末である。コンソール17は、機能ユニット18に内蔵された無線アクセスポイント(WAP:Wireless Access Point)36(
図3参照)を介して電子カセッテ16と通信することが可能である。また、コンソール17はWAP36及びAP22を介してLAN21に接続して、RISサーバ23、画像サーバ24にアクセスすることが可能である。コンソール17は、RISサーバ23にアクセスして撮影オーダを受信し、撮影したX線画像を画像サーバ24に送信する。撮影オーダは、例えば、回診撮影を開始する前に、駐機場15のAP22を介してコンソール17にダウンロードされる。X線画像は、病棟19又は駐機場15の各AP22から画像サーバ24にアップロードされる。
【0039】
通信環境制御装置13は、X線撮影装置12の通信環境を制御する。後に詳述するように、X線撮影装置12において、電子カセッテ16が撮影したX線画像をコンソール17に無線送信する際に、AP22やAP22に接続する無線端末などの他の無線通信装置との間で電波干渉が生じることがないように、X線撮影装置12の通信環境を制御する。通信環境制御装置13は、LAN21に通信ケーブルによって有線接続されている。通信環境制御装置13は、LAN21を介して、回診撮影が行われる病棟19内の各AP22に対して指令を送信して制御する。通信環境制御装置13は、例えば、駐機場15内に設置されている。また、通信環境制御装置13は、X線撮影装置12を積載した回診車14が病棟19にある間も、LAN21及び病棟19内のAP22を経由してX線撮影装置12と通信することが可能である。
【0040】
図2において、X線発生装置11は、X線源26と、X線源26を制御する線源制御装置27と、照射スイッチ28とを有する。X線源26は、X線を放射するX線管(図示せず)とX線管が放射するX線の照射野を限定する照射野限定器(コリメータ)(図示せず)とを有している。X線管は、熱電子を放出するフィラメントからなる陰極と、陰極から放出された熱電子が衝突してX線を放射する陽極(ターゲット)とを有している。照射野限定器は、例えば、中央に四角形の照射開口が形成され、四角形の各辺にX線を遮蔽する4枚の鉛板を配置したものであり、各鉛板を移動させることで照射開口の大きさを変化させて、照射野を限定する。
【0041】
回診車14には、垂直方向に支柱31が立設されており、支柱31には水平方向に延びるアーム32が設けられている。X線源26は、アーム32の一端に取り付けられる。支柱31は長手軸周りに回動自在であり、支柱31の回転によりアーム32及びX線源26が回転する。アーム32は、支柱31に対して昇降自在である。X線源26は、アーム32に対して回転自在に取り付けられている。支柱31の回転、アーム32の昇降、X線源26の回転により、X線源26の照射位置や向きが調節される。支柱31には、ロック機構33が設けられている。ロック機構33は、回診車14の走行中において、支柱31、アーム32及びX線源26が不用意に変位しないようにロックする機構である。ロック機構33は、例えば、X線源26などの変位を規制する位置と退避位置との間で移動するロックピンを有している。ロック部材34の操作によりロックピンが移動して、ロック機構33のロックと解除が行われる。
【0042】
線源制御装置27は、X線源26に対して高電圧を供給する高電圧発生器と、管電圧、管電流、及び照射時間を制御する制御部とからなる。高電圧発生器は、トランスによって入力電圧を昇圧して高圧の管電圧を発生し、高電圧ケーブルを通じてX線源26に駆動電力を供給する。管電圧、管電流、照射時間といった照射条件は、線源制御装置27の操作パネル(図示せず)を通じて技師Tによって手動で設定される。また、コンソール17から照射条件を線源制御装置27に送信して設定することも可能である。
【0043】
照射スイッチ28は、技師Tによって操作され、線源制御装置27に信号ケーブルで接続されている。照射スイッチ28は二段階押しのスイッチになっており、一段階押しでX線源26のウォームアップを開始させるためのウォームアップ開始信号を発生し、二段階押しでX線源26に照射を開始させるための照射開始信号を発生する。これらの信号は信号ケーブルを通じて線源制御装置27に入力される。
【0044】
線源制御装置27は、照射スイッチ28からの信号に基づいて、X線源26の動作を制御する。照射スイッチ28から照射開始信号を受けた場合、線源制御装置27は、X線源26への電力供給を開始するとともに、タイマを作動させてX線の照射時間の計測を開始する。そして、照射条件で設定された照射時間が経過すると、線源制御装置27は、X線の照射を停止させる。X線の照射時間は、照射条件に応じて変化する。線源制御装置27には、安全規制上の最大照射時間が設定されており、照射条件に基づいて設定される照射時間は、最大照射時間の範囲内で設定される。
【0045】
線源制御装置27内には、無線通信部29が設けられている。無線通信部29も、後述する、電子カセッテ16の無線通信部37(
図6参照)と同様に、アンテナ、変復調回路、伝送制御部などを有している。
【0046】
図3において、X線撮影装置12の機能ユニット18には、制御部35と、WAP(無線アクセスポイント)36が設けられている。制御部35は、機能ユニット18の各部を統括的に制御する。WAP36は、電子カセッテ16とコンソール17の間の無線通信を中継する。このように、電子カセッテ16とコンソール17は、直接通信するアドホックモードではなく、WAP36を介したインフラストラクチャモードで通信を行う。さらに、WAP36は、AP22に対しては無線端末として機能するクライアントモードを有しており、AP22と無線通信を行って、コンソール17をAP22経由でLAN21に接続する中継機能を有する。
【0047】
また、制御部35は、通信環境制御装置13に対して優先要求を発行する。優先要求は、X線撮影装置12が無線通信で使用する電波である無線通信チャンネルについて、他の無線通信装置(携帯型の無線端末やAP22)に対して、X線撮影装置12が優先して使用することを要求する通知である。通信環境制御装置13は、優先要求を受け付けると、他の無線通信装置に対する通信規制を行って、X線撮影装置12の通信環境を制御する。これにより、電子カセッテ16からコンソール17に対してX線画像を送信する際にX線撮影装置12が優先的に使用できるようにしている。優先要求は、WAP36、AP22及びLAN21を経由して通信環境制御装置13に送信される。
【0048】
また、優先要求が発行されるタイミングは、後述するように、電子カセッテ16がX線の照射開始を検知したタイミングである。電子カセッテ16にはX線の照射開始を検知する機能が設けられており、電子カセッテ16はX線の照射開始を検知したときに開始検知信号をコンソール17に送信する。制御部35は、WAP36が中継する開始検知信号を取得して、電子カセッテ16がX線の照射開始を検知したと判定する。また、制御部35は、X線画像の送信が終了すると、通信環境制御装置13に対して、終了通知を送信する。通信環境制御装置13は、終了通知を受信すると、通信規制を解除する。
【0049】
コンソール17及び電子カセッテ16には、無線通信部29と同様に、IEEE802.11nの無線LAN規格に準拠した無線通信部37、38が設けられている。各無線通信部37、38がWAP36に無線接続することにより、コンソール17と電子カセッテ16の間の無線通信が行われる。コンソール17と電子カセッテ16の間では、コンソール17から電子カセッテ16に対しては、技師Tによってコンソール17に入力される撮影準備指示などの操作信号を含む制御信号や撮影条件が送信され、電子カセッテ16からコンソール17に対しては、コンソール17からの制御信号に対する応答、さらに、電子カセッテ16が検出したX線画像が送信される。電子カセッテ16は、撮影準備指示を受信すると、撮影準備状態(Ready)に移行する。
【0050】
コンソール17は、WAP36を介してLAN21に接続し、RISサーバ23や画像サーバ24にアクセスすることが可能であり、RISサーバ23からの撮影オーダのダウンロードや画像サーバ24へのX線画像のアップロードをすることが可能である。さらに、WAP36は、コンソール17と、回診車14に搭載された線源制御装置27との間の無線通信を中継する。これにより、コンソール17から線源制御装置27に対して照射条件を無線送信することが可能である。コンソール17から照射条件を送信すれば、回診車14において操作パネルからマニュアルで線源制御装置27に照射条件を設定しなくても済む。また、WAP36により、X線撮影装置12は、線源制御装置27から照射スイッチ28が操作されたことを表す信号を受信することも可能である。
【0051】
電子カセッテ16は、センサーパネル41(
図4参照)と、センサーパネル41を収容する可搬型の筐体とで構成され、X線源26から照射され被写体となる患者Pを透過したX線を受けて患者PのX線画像を検出する、可搬型のX線画像検出装置である。筐体は、扁平な平板状をしており、平面サイズは、例えばフイルムカセッテやIPカセッテとほぼ同じ大きさである。
【0052】
図4に示すように、センサーパネル41は、撮像領域43が形成されたTFTアクティブマトリクス基板、ゲートドライバ44、読み出し回路46、制御回路47、A/D変換器48、メモリ49、及び無線通信部37を備えている。また、筐体内には、センサーパネル41の各部を駆動するためのバッテリ(図示せず)が収容されている。
【0053】
撮像領域43には、X線の入射線量に応じた信号電荷を蓄積する複数の画素42が、所定のピッチでn行(X方向)×列(Y方向)のマトリクスに配列されている。なお、n、mは2以上の整数であり、例えばn、m≒2000である。なお、画素42の配列は正方配列でなくともよく、ハニカム配列でもよい。センサーパネル41は、X線を可視光に変換するシンチレータ(蛍光体、図示せず)を有し、シンチレータによって変換された可視光を画素42で光電変換する間接変換型である。シンチレータは、CsI:Tl(タリウム賦活ヨウ化セシウム)やGOS(Gd2O2S:Tb、テルビウム賦活ガドリウムオキシサルファイド)等からなり、画素42が配列された撮像領域43の全面と対向するように配置されている。なお、センサーパネル41としては、間接変換型の代わりに、X線を直接電荷に変換する直接変換型でもよい。
【0054】
画素42は、可視光の入射によって電荷(電子−正孔対)を発生する光電変換素子であるフォトダイオード51と、スイッチング素子である薄膜トランジスタ(TFT)52とを備える。フォトダイオード51は、a−Si(アモルファスシリコン)などの半導体層(例えばPIN型)とその上下に上部電極及び下部電極を配した構造を有している。フォトダイオード51は、下部電極にTFT52が接続され、上部電極には、バイアス電圧が印加される。バイアス電圧の印加により半導体層内に電界が生じるため、光電変換により半導体層内で発生した電荷(電子−正孔対)は、一方がプラス、他方がマイナスの極性を持つ上部電極と下部電極に移動して、キャパシタとしても機能するフォトダイオード51に電荷が蓄積される。
【0055】
TFT52は、ゲート電極が走査線53に接続され、ソース電極が信号線54に接続され、ドレイン電極がフォトダイオード51に接続される。走査線53と信号線54は格子状に配線されており、走査線53は、撮像領域43内の画素42の行数分(n行分)、信号線54は画素42の列数分(m列分)それぞれ配線されている。走査線53はゲートドライバ44に接続され、信号線54は読み出し回路46に接続される。
【0056】
ゲートドライバ44は、制御回路47の制御の下にTFT52を駆動することにより、X線の入射線量に応じた信号電荷を画素42に蓄積する蓄積動作と、画素42が蓄積した信号電荷を読み出す読み出し動作と、画素42に蓄積される不要な電荷を除去するリセット動作とをセンサーパネル41に行わせる。ゲートドライバ44は、X線の照射が行われている間、全画素42のTFT52をオフ状態にすることにより、画素42に信号電荷の蓄積動作を開始させる。そして、X線の照射終了後、ゲートパルスG1〜Gnを走査線53に対して順次入力して一行ずつTFT52をオン状態にすることにより、信号電荷の読み出し動作を行わせる。画素42から読み出された信号電荷は、信号線54に読み出されて、読み出し回路46に入力される。
【0057】
また、フォトダイオード51は、X線の入射の有無に関わらず発生する暗電荷を発生する。暗電荷は画像データに対してはノイズ成分となるので、これを除去するためにX線の照射前にリセット動作が行われる。リセット動作は、画素42に発生する暗電荷を、信号線54を通じて掃き出す動作である。
【0058】
読み出し回路46は、画素42から信号電荷D1〜Dmを読み出す。制御回路47は、各部を統括的に制御する。A/D変換器48は、読み出した信号電荷をデジタルデータに変換する。メモリ49には、A/D変換器48で変換されたデータが書き込まれる。
【0059】
読み出し回路46は、画素42から読み出した信号電荷を電圧信号に変換する積分アンプと、撮像領域内の画素42の列を順次切り替えて1列ずつ電圧信号を順次出力するためのマルチプレクサとからなる。読み出し動作においては、読み出し回路46に入力された電圧信号は、A/D変換器48でデジタルデータに変換されて、メモリ49にデジタルな画像データとして書き込まれる。また、メモリ49から読み出された画像データは、無線通信部37を通じてコンソール17に送信される。
【0060】
一方、リセット動作においては、読み出し動作と同様に、画素42のTFT52が行単位で順次オン状態にされて、画素42から暗電荷が読み出し回路46に入力される。しかし、リセット動作においては、暗電荷は積分アンプのリセットにより破棄されて、A/D変換器48には出力されない。リセット動作は、例えば、電子カセッテ16の電源が投入されると開始し、所定時間間隔で繰り返される。そして、電子カセッテ16が撮影準備状態に入ったときにリセット動作はいったん停止し、その後、画素42が蓄積動作を開始する直前に1画面分のリセット動作が1回行われる。
【0061】
また、撮像領域43内には、画素42の一部を利用した形態の検知センサ56が設けられている。検知センサ56は、X線の照射が開始されたことを検知するためのセンサである。検知センサ56は、画素42と同様にフォトダイオード51を有しているが、TFT52は設けられておらず、検知センサ56のフォトダイオード51と信号線54は短絡接続されている。そのため、画素42においてTFT52がオフされているかオンされているかに関わらず、検知センサ56の出力(フォトダイオード51が発生する電荷量)は信号線54に流出する。
【0062】
検知センサ56の出力は、画素42と同様に、読み出し回路46、A/D変換器48によってメモリ49に読み出される。検知センサ56の出力の読み出しは、μsecのオーダの短い間隔で繰り返し行われる。1回の読み出しによって得られる検知センサ56の出力は、X線の単位時間当たりの入射線量に相当する。X線の照射が開始されると、X線の単位時間当たりの入射線量は徐々に増加するので、それに応じて検知センサ56の出力が増加する。
【0063】
制御回路47は、メモリ49に検知センサ56の出力が記録される毎に、出力の読み出しを行い、検知センサ56の出力を所定の閾値と比較して、出力が閾値以上に達したときにX線の照射が開始されたと判定する。これにより、X線発生装置11からの同期信号を受信することなく、センサーパネル41自体で、X線の照射開始検知を行うことができる。また、検知センサ56の出力は、センサーパネル41が蓄積動作中でも読み出すことが可能であるので、制御回路47は、検知センサ56の出力に基づいてX線の照射終了を検知することもできる。
【0064】
センサーパネル41は、電子カセッテ16の電源が投入された後、画素42のリセット動作を開始する。その後、コンソール17からの撮影準備指示を受信すると、センサーパネル41は、リセット動作を停止して撮影準備状態(Ready)に入り、照射開始検知動作、すなわち、検知センサ56の出力の読み出しを開始する。そして、センサーパネル41は、X線の照射開始を検知した場合には、1画面分のリセット動作を行った後、画素42のTFT52をオフ状態にして、蓄積動作を開始させる。また、センサーパネル41は、照射開始を検知したときには、開始検知信号を、無線通信部37を通じてコンソール17に送信する。センサーパネル41は、蓄積動作へ移行後も検知センサ56の出力の読み出しを継続して、読み出した出力が所定の閾値以下になったときにX線の照射終了を検知する。センサーパネル41は、照射終了を検知すると、蓄積動作を終了し、X線画像の読み出し動作を行う。
【0065】
図3において、コンソール17は、CPU(Central Processing Unit)や、メモリやハードディスクドライブなどのデータストレージデバイスを有する本体部と、ディスプレイを一体にしたノート型コンピュータをベースにコンソールアプリケーションソフトをインストールしたものである。
【0066】
図5に示すように、コンソールアプリケーションソフトを起動すると、コンソール17のディスプレイには、GUI(Graphical User Interface)による操作画面61が表示される。操作画面61には、操作画面61の一部を指示するためのポインタ62が表示され、ポインタ62は、コンソール17に付属するマウスや入力パッドなどの入力デバイスによって操作される。
【0067】
操作画面61には、患者基本情報表示領域63、画像表示領域64、撮影オーダ表示領域66、操作部表示領域67が設けられている。撮影オーダ表示領域66は、RISサーバ23から受信した撮影オーダ68を表示する領域である。ポインタ62により1件の撮影オーダ68が選択されると、選択された撮影オーダ68が反転表示して未選択の撮影オーダ68と識別可能に表示される。そして、患者基本情報表示領域63には、選択された撮影オーダ68に対応する患者基本情報(患者名、患者ID、性別、年齢)が表示される。
【0068】
画像表示領域64は、撮影後に電子カセッテ16から送信されたX線画像を表示する領域である。
図5において、画像表示領域64は、X線画像が表示された状態で示しているが、撮影前の状態では、画像表示領域64には何も表示されない。画像表示領域64にX線画像が表示されることにより、撮影直後にX線画像を確認することができる。技師Tは、画像表示領域64のX線画像を見て撮影が適切に行われたか否かを確認する。また、撮影オーダ表示領域66において撮影済みの撮影オーダ68が選択された場合には、選択された撮影オーダ68に対応するX線画像が画像表示領域64に表示される。
【0069】
操作部表示領域67には、設定ボタン71、撮影準備指示ボタン72、インジケータ73が設けられている。設定ボタン71は、撮影条件や電子カセッテ16の各種の設定を行うためのボタンである。設定ボタン71がポインタ62で選択されると、設定画面が表示される。撮影準備指示ボタン72は、電子カセッテ16に対して撮影準備指示を送信するための操作ボタンである。撮影準備指示ボタン72の操作により、コンソール17から電子カセッテ16に対して撮影準備指示が送信される。電子カセッテ16は、撮影準備指示を受信すると、撮影準備状態への移行処理を行って、移行が完了した場合には、応答として移行完了信号をコンソール17に送信する。インジケータ73は、コンソール17が移行完了信号を受信したときに点灯する。技師Tは、インジケータの点灯により電子カセッテ16が撮影準備状態にあることを確認することができる。
【0070】
図6に示すように、電子カセッテ16の無線通信部37は、アンテナ75、変復調回路76、伝送制御部77などで構成されている。変復調回路76は、送信するデータを搬送波(キャリア)に載せる変調と、アンテナ75で受信した搬送波(キャリア)からデータを取り出す復調を行う。
【0071】
伝送制御部77は、無線LAN規格に準拠した伝送制御を行う。具体的には、TCP(Transmission Control Protocol)/IP(Internet Protocol)に準拠した通信プロトコルや、IEEE802.11nに準拠した通信プロトコルに従って伝送制御を行う。OSI(Open Systems Interconnection)参照モデルに示されるように、通信プロトコルは、階層化されており、階層が異なる複数の通信プロトコルを組み合わせて使用される。TCP/IPは、有線LANにおいても使用される通信プロトコルであり、無線LANにおいても、上位層の通信プロトコルとして使用される。IEEE802.11nは、TCP/IPの下位に位置する通信プロトコルであり、無線特有の通信手順を規定している。IEEE802.11nでは、2.4GHz帯又は5GHz帯の周波数帯域の電波を無線通信チャンネルとして使用することが可能である。本例の電子カセッテ16を含むX線撮影システム10は、5GHz帯を使用している。
【0072】
機能ユニット18のWAP36も、アンテナ78、変復調回路79、伝送制御部80を有している。伝送制御部80は、電子カセッテ16の伝送制御部77と同様に、IEEE802.11nに準拠した伝送制御を行って無線通信を行う。コンソール17の無線通信部38の他、線源制御装置27の無線通信部29、AP22も、同様にIEEE802.11nに準拠した無線通信が可能である。
【0073】
上述のとおり、X線撮影装置12内においては、WAP36は、電子カセッテ16とコンソール17の無線通信を中継する。無線通信は、有線通信と異なり物理的に接続される通信ケーブルが存在しないため、電子カセッテ16及びコンソール17は、WAP36の中継機能の提供を受けるために、WAP36との間で論理的な接続を行うことが必要である。無線接続を行う場合において、WAP36は、中継機能を提供するホストとして動作し、電子カセッテ16とコンソール17のどちらも、WAP36の中継機能の提供を受ける無線端末として動作する。以下、電子カセッテ16とWAP36を例に、IEEE802.11nで規定されている接続や通信の手順を説明する。
【0074】
図7に示す電子カセッテ16とWAP36の接続シーケンスにおいて、まず、WAP36は、起動中、所定時間間隔(約100msec間隔)でビーコン信号と呼ばれる電波を発信している。ビーコン信号は、WAP36の周囲に存在する、電子カセッテ16などの無線端末に対して、WAP36の存在を通知するための信号である。電子カセッテ16において、無線通信部37は、起動中、ビーコン信号の有無を常時監視している。そのため、無線通信部37は、WAP36のビーコン信号が到達する範囲内にあるときは、ビーコン信号を常時受信することができる。
【0075】
ビーコン信号には、SSID(Service Set Identifier)やESSID(Extended Service Set Identifier)などのネットワーク識別子が含まれている。ネットワーク識別子は、WAP36やAP22などのアクセスポイントや、それらを含むネットワークを、電子カセッテ16などの無線端末が識別するための識別情報である。
【0076】
電子カセッテ16は、機能ユニット18のWAP36以外のアクセスポイントと接続することが無いように、無線通信部37に予めWAP36のネットワーク識別子が設定されている。無線通信部37は、WAP36から設定されたネットワーク識別子を持つビーコン信号を受信すると、WAP36に対して接続要求を送信する。WAP36が接続を許容する無線端末は電子カセッテ16とコンソール17に限定されており、WAP36では接続要求の要求元の無線端末に対して認証を行う。そのため、電子カセッテ16は、接続要求にパスワードなどの認証情報を含めてWAP36に送信する。
【0077】
WAP36は、接続要求を受信すると、受信したパスワードと予め設定されたパスワードを照合することにより認証を行って、パスワードが一致した場合には、電子カセッテ16に対して許可応答を送信する。許可応答には、電子カセッテ16に割り当てるIP(Internet Protocol)アドレスなどが含まれている。電子カセッテ16が許可応答を受信すると、論理的な通信リンクが確立されて、電子カセッテ16とWAP36が論理的に接続する。
【0078】
このようなWAP36と電子カセッテ16との間の接続シーケンスと同様の手順によって、WAP36とコンソール17との間でも接続が行われる。この接続により、電子カセッテ16とコンソール17には、WAP36からそれぞれIPアドレスの割り当てが行われて、電子カセッテ16とコンソール17は、WAP36の中継機能の提供を受けて、電子カセッテ16とコンソール17間のデータ通信が可能となる。IPアドレスに基づく通信はTCP/IPに従って行われる。
【0079】
また、WAP36だけでなく、各AP22と各AP22に接続する無線端末の間の接続シーケンスも同様である。さらに、WAP36がクライアントモードで動作して、各AP22に対して接続する接続シーケンスも同様である。なお、病棟19内に設置されるすべてのAP22に対して、WAP36及び無線端末が接続できるように、ネットワーク識別子やパスワードの設定が行われている。
【0080】
WAP36は、電子カセッテ16との間で接続が行われた後も、ビーコン信号の発信を続ける。電子カセッテ16とWAP36との接続は、電子カセッテ16がビーコン信号を受信できている間、継続し、電子カセッテ16がビーコン信号を受信できなくなった時点で終了する。電子カセッテ16がビーコン信号を受信できなくなる場合とは、例えば、WAP36がビーコン信号の発信を停止した場合や、電子カセッテ16が、WAP36のビーコン信号の到達範囲から出てしまった場合である。電子カセッテ16が、再びビーコン信号の到達範囲に入ってビーコン信号の受信が可能となった場合には、再接続が行われる。
【0081】
また、WAP36やAP22を含む各アクセスポイントには、1台に付き1つの無線通信チャンネルの周波数が、設定により割り当てられている。ビーコン信号は、各アクセスポイントに割り当てられた周波数で送信される。電子カセッテ16は、ビーコン信号の周波数に合わせて、送出する電波の周波数を決定する。これにより、電子カセッテ16とWAP36との間で使用する無線通信チャンネルの周波数が設定される。IEEE802.11n規格では、2.4GHz帯と5GHz帯の2つの周波数帯域が規定されており、これらの周波数帯域が複数の無線通信チャンネルに分割して利用される。
【0082】
図8に示すように、5GHz帯の周波数帯域は、5.15GHzから5.725GHzの範囲であり、この周波数帯域を、5.2GHz帯(W52)、5.3GHz帯(W53)、5.6GHz帯(W56)の3つのサブ帯域に分割し、さらに、各サブ帯域において、20MHzの幅を1チャンネル分とした複数の無線通信チャンネルに分割されている。
【0083】
W52のサブ帯域では、チャンネル番号が36ch、40ch、44ch、48chの4チャンネルに分割される。36ch、40ch、44ch、48chの中心周波数は、それぞれ5.18GHz、5.20GHz、5.22GHz、5.24GHzである。同様に、W53のサブ帯域では、中心周波数が5.26GHzの52chから、中心周波数が5.32GHzの64chの4チャンネルに分割される。W56のサブ帯域では、中心周波数が5.50GHzの100chから、中心周波数が5.70GHzの140chの11チャンネルに分割される。したがって、5GHz帯の周波数帯域全体としては、20MHzの幅のチャンネルを1チャンネルとすると、19チャンネル分の無線通信チャンネルを使用することが可能である。
【0084】
そのため、5GHz帯においては、理論的には、アクセスポイントが19台までならば、周波数が競合しないように無線通信チャンネルを割り当てることが可能である。このような割り当てによれば、各アクセスポイント間において電波干渉の懸念は無い。しかし、アクセスポイントが19台を超えた場合には、同じ周波数の無線通信チャンネルを使用するアクセスポイントが存在することになるため、周波数の競合が生じる。
【0085】
IEEE802.11n規格では、W52のサブ帯域において点線で示すように、20MHzの幅のチャンネルを2つ束ねて、40MHzの幅を1つのチャンネルとして使用するチャンネルボンディングという機能を使用することが可能となっている。チャンネルボンディングにより1チャンネルの帯域幅が広くなると、高速通信が可能となる。すべてのアクセスポイントでチャンネルボンディングを行う場合には、1台のアクセスポイントに対して20MHzの幅のチャンネルが2チャンネルずつ割り当てられる。
【0086】
この場合には、5GHz帯において、電波干渉の懸念なく同時に使用可能な無線通信チャンネルは9チャンネル分となる。そのため、アクセスポイントの数が9台以上に増えると、当然ながら同じ周波数の無線通信チャンネルを使用する複数のアクセスポイントが存在することになり、アクセスポイント間で周波数が競合する。
【0087】
例えば、
図9に示すように、X線撮影装置12のWAP36で使用する無線通信チャンネルの周波数と、病室R11のAP22が使用する無線通信チャンネルの周波数が同じ44ch、48chで競合しているとする。この場合において、WAP36の電波の到達範囲である通信セルCM1と、AP22の電波の到達範囲である通信セルCR11が重なると、電子カセッテ16と、AP22に接続する無線端末82(例えば、医師や看護師が携行する携帯型の無線端末)とがそれぞれ同じタイミングで通信を開始した場合に、電波干渉が生じて、通信エラーや通信遅延が発生する。
【0088】
チャンネルボンディングの技術も進化しており、IEEE802.11nの後継規格であるIEEE802.11ac規格では、
図8に示すW53のサブ帯域において点線で示すように、4チャンネルのチャンネルボンディングも可能となっている。4チャンネルのチャンネルボンディングにより1チャンネルの幅は80MHzとなるため、さらに高速化が実現される反面、5GHz帯において、電波干渉の懸念なく同時に使用できる無線通信チャンネルの数は、4チャンネルに減少することになる。そうなると、アクセスポイント間での周波数の競合もさらに増加する。
【0089】
また、例えば日本国内においては、W53、W56のサブ帯域はレーダーの周波数と競合するため屋外では利用制限があるというように、国や地域によっては、一部のチャンネルを使用することについて制約がある場合もある。こうした制約を考慮して、日本国内において5GHz帯を使用する場合には、屋内においてもW53、W56のサブ帯域を避けて、W52のサブ帯域のみが使用される場合もある。このような場合には、使用できる無線通信チャンネルの数は、さらに減少する。また、2.4GHz帯においては、電波干渉の懸念なく同時に使用できる無線通信チャンネルの数は、22MHz幅のチャンネルが3チャンネル分であり、5GHz帯と比較して少ない。こうした事情を鑑みると、周波数の競合や電波干渉を回避する対策についてよりいっそうの考慮が必要になる。
【0090】
IEEE802.11n規格では、こうした電波干渉を回避するために、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access/Collision Avoidance:搬送波感知多重アクセス/衝突回避)方式という制御方式が採用されている。
【0091】
例えば、
図10に示すデータ通信シーケンスに示すように、電子カセッテ16がWAP36に接続後、CSMA/CA方式でデータ送信を行う場合には、まず、電子カセッテ16は、周辺に同一周波数の無線通信チャンネルを使用する他の無線端末が無いかを確認するためにキャリアセンス(搬送波感知)を行う。キャリアセンスにおいて、電子カセッテ16は、同一周波数の電波を受信した場合には、無線通信チャンネルが使用中(チャンネルビジー)と判定して、電波衝突を回避するために電波の送出を開始せずに待機する。そして、キャリアセンスを継続し、他の無線端末が同一周波数の無線通信チャンネルを解放(電波の送出を停止)したタイミングで、電波の送出を開始する。同一周波数の無線通信チャンネルの占有を継続できる時間には上限があるため、他の無線端末が無線通信チャンネルを解放した後に、電子カセッテ16は電波の送出を開始する。
【0092】
電波の送出が可能になった後、電子カセッテ16は、まず、WAP36に対して、送信してよいかどうかの許可を求める送信要求(RTS:Request To Send)を送信する。これに対して、WAP36は、受信可能な場合には許可応答(CTS:Crear To Send)を返す。受信不可能な場合には、許可応答を返さない。電子カセッテ16は、一定時間待っても許可応答が無い場合には、送信要求を再送する。電子カセッテ16は、許可応答が有った場合には、X線画像などのデータ送信を開始する。
【0093】
データは、フレーム(パケットとも呼ばれる)単位で送信される。WAP36はデータを受信すると受信確認(ACK:ACKnowledgement)を電子カセッテ16に応答する。1フレームで送信できるデータサイズの上限は決まっているので、X線画像などのデータ送信を行う場合には、データを複数フレームに分けて送信を行う。電子カセッテ16は、電波を占有できる時間が経過した場合には、いったんデータ送信を中断して(電波の送出を停止して)、無線通信チャンネルを解放する。無線通信チャンネルを解放後、再びキャリアセンスが行われて上記手順が繰り返される。
【0094】
図11に示すように、CSMA/CA方式によるデータ通信において、WAP36とAP22の無線通信チャンネルの周波数が同じ44ch、48chで競合する場合には、1つの無線通信チャンネルを、WAP36とAP22が時分割で共有することになる。例えば、WAP36は、1枚分のX線画像のデータの送信開始から送信完了まで無線通信チャンネルの占有を継続できるわけではなく、途中で無線通信チャンネルを解放しながら、断続的に行われる。他のAP22がデータ送信を行っている場合には、WAP36がいったん解放した無線通信チャンネルをAP22が占有することになる。つまり、無線端末82とAP22が通信を行っている時間T2の間は、電子カセッテ16とWAP36にとっては、無線通信チャンネルが他の無線通信装置で使用されている状態(チャンネルビジー)と認識されるので、通信ができない。一方、電子カセッテ16とWAP36が通信を行っている時間T1の間は、無線端末82及びAP22にとってはチャンネルビジーと認識されるので、通信ができない。
【0095】
一般的に、単位時間当たりのデータ転送量である転送レートは、チャンネルビジーの時間を含めた実効的な転送レートとして測定される。この転送レートはチャンネルビジーの時間が長いほど低下する。そのため、
図11の例で言えば、電子カセッテ16の転送レートは、無線端末82とAP22のデータ転送量が多く時間T2が長くなるほど(反対に時間T1が短くなるほど)、低下することになる。さらに、実際には、電子カセッテ16はWAP36を介してコンソール17との間で通信を行うため、コンソール17とも無線通信チャンネルを時分割で共通する。したがって、本例においては、電子カセッテ16、コンソール17、無線端末82の3台の端末が、1つの無線通信チャンネルを時分割で共有することになるため、電子カセッテ16の転送レートはさらに低下することになる。
【0096】
図12に示すように、通信環境制御装置13は、制御部86、通信部87、メモリ88を有している。制御部86は、各部を統括的に制御する。通信部87は、LAN21と有線接続するための通信インタフェースである。メモリ88は、周波数情報テーブル91が格納されており、周波数情報記憶部として機能する。周波数情報テーブル91には、制御部86が取得した、各AP22及びWAP36が使用する無線通信チャンネルの周波数情報が登録される。周波数情報テーブル91には、AP22及びWAP36のID、AP22及びWAP36が使用する無線通信チャンネルのチャンネル番号、ステータス、及び優先要求の有無の各項目が設けられている。
【0097】
制御部86は、周波数情報取得部92、優先要求受け付け部93、周波数競合判定部94、通信規制部96を有している。周波数情報取得部92は、通信部87を介して、各AP22が使用する無線通信チャンネルのチャンネル番号を周波数情報として取得する。WAP36が使用する無線通信チャンネルの周波数情報は、AP22及び通信部87を介して取得される。周波数情報には、各AP22及びWAP36のIDが含まれている。周波数情報取得部92は、取得したIDとチャンネル番号を、周波数情報テーブル91内の該当箇所に登録する。
図12において、各AP22に付した、R11、R12、R21・・・、及びWAP36に付したM1の符号は、それぞれのIDを示し、周波数情報テーブル91に登録されるIDと対応する。また、各AP22及びWAP36は、チャンネルボンディングを行っているので、36chと40chというように、1台に付き2つのチャンネルが割り当てられている。
【0098】
周波数情報の取得方式は、例えば、周波数情報取得部92がWAP36や各AP22に対してポーリングで取得要求を送信することにより通知させてもよいし、WAP36や各AP22から所定時間間隔で自発的に通知させてもよい。
【0099】
優先要求受け付け部93は、機能ユニット18からAP22経由で送信される優先要求を受け付ける。優先要求の発行タイミングは、上述のとおり、電子カセッテ16がX線の照射開始を検知したタイミングである。優先要求受け付け部93は、優先要求を受け付けると、周波数情報テーブル91の優先要求の有無の項目に優先要求が有ったことを登録する。また、優先要求受け付け部93は、周波数競合判定部94に優先要求を受け付けたことを通知する。
【0100】
周波数競合判定部94は、優先要求が有った場合には、周波数情報テーブル91を参照して、WAP36(ID=M1)が使用する無線通信チャンネルの周波数と競合するAP22の有無を判定する。本例では、AP22(ID=R12)が、WAP36が使用している周波数と同じ44cn、48chを使用しているので、競合するAP22(ID=R12)が有ると判定する。周波数競合判定部94は、判定結果を通信規制部96に通知する。
【0101】
通信規制部96は、周波数競合判定部94からの判定結果に基づいて、WAP36の周波数が競合している場合には、規制対象(本例ではAP(ID=R12))に対して、規制指令を通知して、通信を停止させる通信規制を行う。具体的には、通信規制部96は、規制対象のAP22に対して、ビーコン信号、無線端末に対する応答を含む電波の発信を停止させる。これにより、規制対象のAP22に接続していた無線端末もAP22との接続が切断されて通信が不能になる。また、ビーコン信号の発信が停止されるため、規制対象のAP22への新たな接続も停止される。これにより、WAP36が使用する無線通信チャンネルと周波数が競合する電波の出力が停止され、WAP36が使用する無線通信チャンネルの競合状態が解消される。
【0102】
通信規制部96は、通信規制を行う場合には、周波数情報テーブル91のステータスを更新する。規制対象となるAP22に対しては規制中であることを記録し、優先対象となるWAP36に対しては優先中であることを記録する。なお、通信環境制御装置13からコンソール17に対して、通信規制を実施していることや、規制対象となるAP22のIDを通知してもよい。この場合には、コンソール17は、操作画面61(
図5参照)に、その旨を表示する。
【0103】
機能ユニット18は、電子カセッテ16からコンソール17へのX線画像の送信が終了した場合に、通信環境制御装置13に対して、データ送信が終了したことを知らせる終了通知を送信する。通信規制部96は、終了通知を受信すると、規制対象のAP22に対して通信規制を解除する解除指令を送信する。AP22は、解除指令を受けると、ビーコン信号を含む電波の発信を再開する。
【0104】
上記構成による作用について、
図13〜15を参照しながら説明する。技師Tは、回診撮影を行う場合には、駐機場15(
図1参照)において、電子カセッテ16、コンソール17、機能ユニット18を含むX線撮影装置12を回診車14に積載する。そして、X線撮影装置12のコンソール17及び機能ユニット12を起動する。機能ユニット18が起動されると、WAP36がビーコン信号の発信を開始する。
【0105】
コンソール17は、ビーコン信号を受信して、
図7に示す電子カセッテと同様の接続シーケンスでWAP36に接続する。さらに、WAP36は、駐機場15のAP22からのビーコン信号を受信する。WAP36は、AP22に対してはクライアントモードで動作するので、
図7における電子カセッテと同様の接続シーケンスで駐機場15のAP22に接続する。技師Tの操作により、コンソール17は、機能ユニット18のWAP36を通じてRIS23にアクセスして、撮影オーダを受信する。技師Tは、コンソール17で受信した撮影オーダを確認して、回診先の病室を把握する。なお、コンソール17の撮影オーダの受信は、WAP36を経由することなく、駐機場15のAP22に直接接続して行ってもよい。
【0106】
技師Tは、走行中にX線源26が不用意に変位しないように、回診車14の走行を開始させる前にロック部材34の位置を見て、ロック機構33のロックが掛かっていることを確認する。ロックが掛かっていない場合にはロック部材34を操作してロックする。この後、回診車14を走行させて駐機場15から病棟19に向かう。一方、通信環境制御装置13において、周波数情報取得部92は、各AP22及びWAP36から定期的に通知される周波数情報を取得する。取得した周波数情報に基づいて、周波数情報テーブル91を更新する。
【0107】
図13に示すように、技師Tは、回診車14を回診先の病室R11に運び込むと、撮影準備を開始する。まず、技師Tは、コンソール17で、撮影オーダで指定された撮影条件を確認する。そして、電子カセッテ16を起動する。電子カセッテ16が起動されると、無線通信部37は、機能ユニット18のWAP36のビーコン信号を受信して、
図7に示す接続シーケンスでWAP36に接続する。これにより、コンソール17と電子カセッテ16間のWAP36を介した無線通信が可能となる。技師Tの操作により、コンソール17から電子カセッテ16に撮影条件が送信される。電子カセッテ16は、撮影条件に基づいて、例えば、センサーパネル41の信号処理の処理条件(積分アンプのゲインなど)を設定する。
【0108】
技師Tは、回診車14に内蔵のX線発生装置11の操作パネルの操作により、撮影条件で指定されたX線源26の照射条件を設定する。あるいは、
図3で説明したように、コンソール17からX線発生装置11に対して照射条件を無線送信して設定してもよい。また、機能ユニット18は、病室R11に設置されたAP22(ID=R11)からビーコン信号を受信すると、AP22(ID=R11)に対して、上述のとおりクライアントモードで接続する。
【0109】
図14に示すように、撮影条件の設定完了後、撮影部位に応じた適切な位置に、X線源26と電子カセッテ16のポジショニングが行われる(S1010)。例えば、撮影部位が胸部の場合には、
図13に示すように、仰臥している患者Pとベッド20の間に電子カセッテ16が挿入される。電子カセッテ16が胸部に対応するように電子カセッテ16の位置が調整される。電子カセッテ16のポジショニングが終了後、X線源26のポジショニングが行われる。X線源26のポジショニングを行う場合には、まず、回診車14のロック部材34の操作によりロック機構33が解除される。これにより、X線源26の位置や向きを動かすことが可能になる。技師Tは、回診車14のアーム32、支柱31及びX線源26を動かして、X線源26の照射位置及び照射方向を電子カセッテ16と対向する位置に合わせる。
【0110】
ポジショニング完了後、コンソール17の操作画面61において撮影準備指示ボタン72(
図5参照)が操作されると、コンソール17から機能ユニット18のWAP36を介して電子カセッテ16に対して撮影準備指示が送信される。電子カセッテ16は撮影準備指示を受信すると、撮影準備状態(Ready)に移行する(S1020)。電子カセッテ16は、撮影準備状態(Ready)に移行すると、検知センサ56(
図4参照)によって照射開始検知動作を開始する。
【0111】
技師Tは、電子カセッテ16が撮影準備状態(Ready)に移行したことを、操作画面61のインジケータ73で確認する。その後、患者Pの体勢が適切であることを確認しながら適切なタイミングで、照射スイッチ28を操作する(S1030)。照射スイッチ28が操作されると、X線源26はX線の照射を開始する(S1040)。X線の照射が開始されると、電子カセッテ16は検知センサ56によってX線の照射開始を検知する(S1050)。
【0112】
電子カセッテ16は、開始検知信号をWAP36経由でコンソール17に送信する。機能ユニット18は、開始検知信号をWAP36で中継したときに、制御部35が優先要求を発行し、通信環境制御装置13に送信する(S1060)。電子カセッテ16は、照射開始を検知すると、センサーパネル41が蓄積動作に移行して、画像検出を開始する(S1070)。
【0113】
一方、通信環境制御装置13は、優先要求を待機しており(S2010)、優先要求が送信されると、受信した優先要求を優先要求受け付け部93が受け付ける(S2010でY)。優先要求が受け付けられると、周波数競合判定部94は、通信規制の規制対象の有無を判定する(S2020)。周波数競合判定部94は、周波数情報テーブル91を参照して、WAP36が使用する無線通信チャンネルの周波数と競合するAP22の有無を調べる。本例において、
図12及び
図13に示すように、WAP36(ID=M1)と、回診車14がある病室R11の隣の病室R12のAP22(ID=R12)のそれぞれの無線通信チャンネルのチャンネル番号が44cn、48chで同一であるため、周波数が競合している。そのため、周波数競合判定部94は、通信規制の規制対象が有ると判定する(S2020でY)。
【0114】
通信規制部96は、周波数競合判定部94から、規制対象有りの判定結果を受けると、規制対象のAP22(ID=R12)に対して規制指令を送信して、通信規制を開始する(S2030)。この際に、通信規制部96は、周波数情報テーブル91のステータスを更新する。規制対象のAP22は、規制指令を受けると、電波の発信を停止して通信を停止する。
図13に示すように、病室R12において、看護師Nの無線端末82が規制対象のAP22に接続している場合には、無線端末82の通信が停止される。AP22(ID=R12)の通信セルCR12は、WAP36の通信セルCM1と重なっているが、AP22(ID=R12)が通信を停止することにより、点線で示すように通信セルCR12は一時的に消滅する。そのため、WAP36が、他の無線通信装置との電波干渉の懸念なく、44ch、48chの無線通信チャンネルを優先的に使用することができる。
【0115】
X線源26は、照射時間が経過するとX線源26は照射を終了する。検知センサ56によってX線の照射終了が検知されると、センサーパネル41は、蓄積動作を終了して、X線画像の読み出しを行う。読み出されたX線画像は、いったんメモリ49に書き込まれる。この後、無線通信部37から、WAP36経由でコンソール17へのX線画像の送信が開始される(S1080)。X線画像の送信は、
図10に示したデータ通信シーケンスで行われる。
【0116】
図15に示すように、規制対象のAP22は通信規制されているため、AP22や無線端末82が電波を発信することはない。電子カセッテ16がWAP36経由でコンソール17にX線画像のデータ送信を行う間、電子カセッテ16とコンソール17で無線通信チャンネルは時分割で共有されるため、キャリアセンスとチャンネル解放は繰り返される。しかし、キャリアセンスを行っても、電子カセッテ16及びコンソール17は、他の無線端末82からの電波を感知することは無いため、通信規制を行わない
図11の例のように無線端末82がデータ通信を行うことによるチャンネルビジーが発生しない。
【0117】
そのため、電子カセッテ16及びコンソール17を含むX線撮影装置12が1つの無線通信チャンネルを実質的に占有することが可能となり、
図11の例と比べて、チャンネルビジーの時間が減り、通信時間T1が相対的に増加するため、X線画像の転送レートが上がる。さらに、他の無線通信装置との電波干渉が無いため、それ起因する通信エラーや通信遅延の懸念も無い。このため、電子カセッテ16からコンソール17へのX線画像の送信が短時間でかつ確実に行われることになる。
【0118】
上述のとおり、技師Tは、多い日には50枚以上の撮影を1人でこなさなければならない。1回の撮影に限ってみれば、通信エラーや通信遅延による時間的ロスが短時間であっても、それが累積されると無視できないロスとなり、技師Tの心理的なストレスも大きくなる。本発明によれば、通信エラーや通信遅延を防止することができるので、技師Tの心理的ストレスも軽減することができる。
【0119】
一方、通信規制を行うことで、規制対象のAP22は一時的に通信ができなくなる。しかし、通信規制は、電子カセッテ16によるX線の照射開始検知から、X線画像の送信が終了するまでの比較的短い時間である。そのため、回診撮影が行われる場合においては回診車14の周辺で通信規制が実施される可能性がある旨を、無線端末82を使用する看護師Nなどの医療スタッフに予め周知しておけば、許容度は高い。
【0120】
電子カセッテ16からコンソール17へのX線画像の送信が終了すると(S1090)、機能ユニット18は、通信環境制御装置13に対して終了通知を送信する(S1100)。通信環境制御装置13は、終了通知を受信すると(S2040でY)、通信規制部96が、規制対象のAP22に対して解除指令を送信して、通信規制を解除する(S2050)。規制対象のAP22は解除指令を受けると、電波の発信を再開する。
【0121】
また、本発明によれば、上記効果に加えて、次のような効果も期待できる。すなわち、通信エラーや通信遅延が頻発すると、X線撮影装置12が電波を発信する時間が必要以上に長くなる。回診撮影で巡回する病室には、呼吸、心拍、脈拍などのバイタルサインを計測する無線バイタルモニタや、ペースメーカなどの無線医療機器が存在する。X線撮影装置12が発する電波が、無線医療機器に影響を及ぼす可能性もあるので、X線撮影装置12が電波を発する時間をできるだけ抑制する必要性も高い。本発明によれば、通信エラーや通信遅延を防止することにより、X線撮影装置12が電波を発信する時間を抑制することができるので、他の無線医療機器に与える影響を抑制することができる。
【0122】
また、通信エラーが発生すると、最悪の場合にはX線画像の紛失といった事態が生じる懸念もあり、紛失があった場合には当然ながら再撮影が必要になる。通信エラーを防止することで、そうした事態を回避することができる。また、一般的に、X線の照射が終了した後も、コンソール17でX線画像が確認されるまでの間は、患者Pはポジショニングされた姿勢を保ち続けることを強いられる。X線画像の送信時間が短くなれば、X線画像の確認までの時間も早くなるため、患者Pの負担も軽減される。
【0123】
さらに、回診撮影において、電子カセッテ16は、バッテリ駆動で使用される場合が多い。通信エラーや通信遅延を防止すれば、X線画像の送信時間が短くなるので、バッテリの消費電力も抑制できる。その結果、バッテリの持続時間も長くできる。また、消費電力を抑制できるため、バッテリの小型化も可能となる。バッテリの小型化は、電子カセッテ16の軽量化につながるので、電子カセッテ16の取り扱い性が向上し、ポジショニングなどの労力の軽減にも寄与する。
【0124】
なお、上記例において、機能ユニット18から通信環境制御装置13に対して終了通知を送信する際には、AP22経由で送信している。上記例の場合には、機能ユニット18の最も近くにあるAP22(ID=R11)経由で送信しているが、機能ユニット18の最も近くにあるAP22(ID=R11)が規制対象となる場合もありうる。上記例の通信規制では、ビーコン信号が停止されるため、仮にAP22(ID=R11)に対して通信規制が行われた場合には、機能ユニット18も、規制対象のAP22に接続ができない。その場合には、機能ユニット18は、他の規制対象以外のAP22経由(例えば、AP(ID=R12)が規制対象でない場合にはそのAP経由)で、通信環境制御装置13に対して終了通知を送信する。
【0125】
また、通信環境制御装置13が、終了通知の有無に関わらず、通信規制を開始後、所定時間が経過した際に、通信規制を終了させてもよい。所定時間は、電子カセッテ16からコンソール17へのX線画像の送信に必要な平均的な時間を考慮して決められる。この場合には、通信環境制御装置13の制御部86が、所定時間を計時する。こうすれば、機能ユニット18から通信環境制御装置13に対して終了通知を送信できない場合でも、通信規制を終了させることができる。
【0126】
なお、本例では、WAP36を内蔵した機能ユニット18が、AP22を経由して、通信環境制御装置13に対して優先要求や終了通知を送信する例で説明したが、機能ユニット18ではなく、コンソール17が無線通信部38を利用してAP22に直接接続して、コンソール17から通信環境制御装置13に優先要求や終了通知を送信してもよい。
【0127】
「第2実施形態」
(通信規制の種々の態様)
第1実施形態では、通信規制の方法として、優先要求の受け付けからX線画像の送信が終了するまでの間、規制対象のAP22の通信を停止させる例で説明したが、通信規制の方法は他の方法でもよい。
【0128】
例えば、規制対象のAP22の転送レートを制限してもよい。転送レートを制限する方法としては、例えば、
図16に示すように、通信環境制御装置13が優先要求を受け付けてからX線画像の送信終了までの間、規制対象のAP22の通信を断続的に停止させる方法がある。この場合には、通信環境制御装置13は、規制対象のAP22に対して規制指令と解除指令の通知を繰り返す。規制指令と解除指令の発信間隔は、WAP36の通信時間T1がAP22の通信時間T2よりも多くなるように設定する。これにより、WAP36の転送レートに対して規制対象のAP22の転送レートを制限することができる。このように転送レートを制限する方法であれば、転送レートは低下するものの規制対象のAP22も通信を行うことができる。
【0129】
また、第1実施形態及び第2実施形態において、通信規制について、AP22の通信を停止させる方法として、ビーコン信号を停止させる方法で説明したが、ビーコン信号を停止させなくてもよい。例えば、
図7に示す接続シーケンスを参照して説明すると、AP22がビーコン信号の発信を継続する一方、無線端末82からの接続要求に対しては許可応答を返さずに、接続を拒否するという方法でもよい。AP22に対して無線端末82が接続できない限り、無線端末82は、
図10に示すデータ通信を開始することはできないので、この方法によっても、AP22と無線端末82の通信を停止させることができる。
【0130】
また、AP22の通信を停止させるもう1つの方法としては、AP22が、
図7に示す接続シーケンスにおいて、無線端末82からの接続要求に対して許可を与えた後、
図10に示すデータ通信シーケンスにおいて、RTS(送信要求)に対する許可応答(CTS)を返さないという方法でもよい。この方法では、無線端末82は、AP22との接続はできるが、データ通信を開始することはできないので、接続を拒否する方法と同様に、AP22と無線端末82の通信を停止させることができる。
【0131】
なお、AP22のビーコン信号を停止させずに通信規制を行う方法では、X線画像のデータ通信は行われないものの、AP22からはビーコン信号が発信され、ビーコン信号を検知した無線端末82からは接続要求が断続的に発信されることになる。ビーコン信号や接続要求も電波であるため、電波干渉の原因になる。しかし、X線画像のデータが含まれるデータフレーム(あるいはデータパケット)と比較すれば、ビーコン信号や接続要求などの伝送制御用の制御フレーム(あるいは制御パケット)はフレームサイズ(パケットサイズ)が小さいため、電波の出力時間は短い。そのため、AP22のビーコンを停止させずに通信規制を行う方法でも、データフレームの送信は禁止されるので、X線撮影装置12が無線通信チャンネルを使用できる時間が長くなり、無線通信チャンネルの優先的な使用が可能となる。
【0132】
以上の方法は、通信環境制御装置13がAP22を制御することにより通信規制を行う方法である。ビーコン信号を停止させるなど、通信環境制御装置13がAP22の動作を制御するための制御コマンドは、AP22の標準的なコマンドとしてサポートされている場合もあるため、上記の通信規制方法であれば、既存のAP22に対してファームウエアの大規模な変更など、AP22のプログラムの改造を行うことなく、実施することができる。
【0133】
もちろん、AP22のファームウエアの変更や、無線端末82に対して、通信環境制御装置13からの制御を可能とする通信規制用のアプリケーションソフトをインストールするなど、AP22や無線端末82に対してプログラムの追加や改造を行えば、さらに多様な通信規制を行うことができる。
【0134】
例えば、無線端末82に通信規制用のアプリケーションソフトをインストールすれば、無線端末82が送信するデータの通信量を制限することも可能である。この場合には、通信環境制御装置13が無線端末82に対して通信量を制限する規制指令を与えることにより、通信規制を行う。通信量を制限する内容としては、例えば、無線端末82に対して、テキストデータなど比較的データサイズが小さいデータの送信については許可する一方、画像データなど比較的データサイズが大きいデータの送信については禁止する。また、AP22に対してプログラムの追加や改造を行って、AP22に対して中継するデータ量を制限する規制指令を与えて、データの通信量を制限してもよい。
【0135】
さらに、AP22や無線端末82に対するプログラムの追加や改造を行えば、通信規制を開始する前に、通信環境制御装置13が、AP22や無線端末82に対して、通信規制が開始されることを予告する規制予告通知を送信することも可能となる。AP22や無線端末82は、規制予告通知を受信できれば、通信規制に備えて準備を行うことが可能となる。AP22や無線端末82が行う準備としては、例えば、規制予告通知を受信した際には、データの送信中であれば、区切りのよいところでデータの送信を終了させる、あるいは、規制予告通知を受信後は、サイズの大きいデータの送信を開始しない、などである。
【0136】
このように、AP22や無線端末82に対してプログラムの追加や改造を行えば、多様な通信規制を行うことができるというメリットがある。その反面、AP22や無線端末82に対するプログラムの追加や改造は、作業の時間と手間がかかるというデメリットもある。AP22や無線端末82の台数が多い場合には、プログラムの追加や改造の作業の時間と手間も多くなるので、通信規制の方法としては、AP22のビーコン信号を停止させる方法や、無線端末82のAP22への接続を拒否するなど、AP22に対する制御のみで実現できる方法が好ましい。
【0137】
また、
図17に示すように、通信規制の方法としては、規制対象のAP22の無線通信チャンネルの周波数を変更する方法でもよい。通信環境制御装置13は、WAP36から優先要求を受け付けた場合には、通信規制部96が、規制対象のAP22に対してチャンネル変更指令を送信する。AP22は、チャンネル変更指令を受けると、無線通信チャンネルの周波数を変更する。例えば、規制対象のAP22が、WAP36と競合する44ch、48chを使用していた場合、36ch、40chに変更する。通信環境制御装置13は、WAP36からX線画像の送信が終了した場合には、規制対象のAP22に対してチャンネルを元に戻すように指令するチャンネル変更指令を出して通信規制を解除する。
【0138】
なお、これら各種の通信規制の方法を、規制対象となる無線通信装置の仕様などに応じて、選択的に切り替えられるようにしてもよいし、適宜組み合わせて使用してもよい。
【0139】
また、アクセスポイントには、予め設定された周波数の無線通信チャンネルを固定的に使用する他、周辺において使用されていない周波数の無線通信チャンネル(空きチャンネルと呼ばれる)をサーチして、使用する無線通信チャンネルとして自動的に選択するオートチャンネルセレクト機能が設けられている場合がある。オートチャンネルセレクトは、例えば、アクセスポイントの起動時に実行される。アクセスポイントは、まず、周辺の電波を検知して、使用中の無線通信チャンネルの周波数を判定する。そして、アクセスポイントにおいて選択可能な周波数のうち、使用されていない周波数の無線通信チャンネル(空きチャンネルと呼ばれる)をサーチし、空きチャンネルを使用する無線通信チャンネルとして選択する。
【0140】
こうしたオートチャンネルセレクトを、機能ユニット18のWAP36が実行してもよい。この場合には、WAP36は、起動時にオートチャンネルセレクトを実行して、空きチャンネルをサーチする。空きチャンネルが有る場合には、空きチャンネルを使用する無線通信チャンネルとして選択する。空きチャンネルが無い場合には、優先要求を発行して、通信環境制御装置13による通信規制を実行させる。
【0141】
「第3実施形態」
(監視対象のAPを限定する態様)
第1実施形態では、通信環境制御装置13は、病棟19内のすべてのAP22から周波数情報を取得し、周波数情報を取得したAP22のすべてを監視対象として、X線撮影装置12のWAP36との周波数の競合状態を判定することにより、通信環境を制御する例で説明している。この場合には、X線撮影装置12が使用する無線通信チャンネルと周波数は競合するものの、X線撮影装置12の通信セル(電波の到達範囲)が重ならない場所に設置されたAP22に対しても通信規制が実施される場合も起こりうる。しかし、こうした通信規制には意味が無いため、通信セルがX線撮影装置12の通信セルと重なるAP22に対して通信規制が実施されるように、監視対象を限定することが好ましい。
【0142】
図18、19に示す第3実施形態の通信環境制御装置101は、X線撮影装置12から位置情報を取得して、取得した位置情報に基づいてX線撮影装置12の周辺に存在するAP22を判定し、判定したAP22のみを監視対象とする機能を有している。例えば、
図18に示すように、X線撮影装置12が病室R11にある場合には、点線ARで示すように、監視対象を病室R11と隣の病室R12のAP22に限定する。そして、通信環境制御装置101は、これら監視対象のAP22の周波数がX線撮影装置12の周波数と競合する場合に、監視対象のAP22に対して通信規制を実施する。
【0143】
図19に示すように、通信環境制御装置101は、通信環境制御装置13の構成に加えて、位置情報取得部97と、監視対象判定部98とを有している。位置情報取得部97は、X線撮影装置12のWAP36からLAN21経由で位置情報を取得する。位置情報としては、例えば、WAP36がLAN21にアクセスする際に接続するAP22のIDである。WAP36が病室R11のAP22に接続する場合には、病室R11のAP22のID(R11)となる。X線撮影装置12は、WAP36が接続するAP22が変更される毎に、位置情報を送信する。
【0144】
監視対象判定部98は、位置情報取得部97が取得した位置情報に基づいて、監視対象となるAP22を判定する。本例では、病室R11とその周辺に位置する病室R12のAP22を監視対象と判定する。監視対象判定部98は、位置情報が更新される毎に、監視対象の判定を行う。このため、X線撮影装置12の移動に応じて、監視対象が変更される。位置情報を基準に監視対象をどの範囲にするかは、各AP22間の距離などを考慮して、適宜設定される。
【0145】
周波数情報テーブル102には、取得した位置情報(「R11」)と、監視対象と判定されたAP22の情報(「監視対象」)を記録する項目が設けられており、位置情報取得部97及び監視対象判定部98によってそれぞれ記録される。周波数情報テーブル102に示すように、病室R22のAP22(ID=R22)の周波数もX線撮影装置12のWAP(ID=M1)と競合しているが、AP22(ID=R22)は監視対象に入っていないため、通信規制は実施されない。本例によれば、通信規制の影響が及ぶAP22を必要最小限にすることができる。
【0146】
回診車14の移動に伴ってX線撮影装置12が移動する場合には、WAP36が接続するAP22も変更される。AP22が変更される毎に、位置情報の送信が行われる。監視対象判定部98は、位置情報が送信される毎に判定処理を行って、監視対象を更新する。なお、本例において位置情報を、WAP36が接続するAP22のIDとしたが、これに限らず、例えば、GPS(Global Positioning System)情報などでもよい。この場合には、X線撮影装置12にGPS機能を設ける必要がある。また、回診撮影の開始前に、回診撮影で巡回する病室の情報を、コンソール17を通じて通信環境制御装置101に対して予め登録しておいてもよい。
【0147】
「第4実施形態」
(通信環境制御装置をX線撮影装置に組み込む態様)
上記実施形態では、通信環境制御装置を、駐機場15に設置される据え置き型の例で説明したが、
図20及び
図21に示す第4実施形態のように、通信環境制御装置104を、X線撮影装置12に組み込んで、可搬型としてもよい。例えば、通信環境制御装置104は、機能ユニット18に内蔵される。通信環境制御装置104は、通信環境制御装置13とほぼ同様の構成である。
【0148】
WAP36は、周辺のAP22から発信されるビーコン信号BSを受信する。そして、受信したビーコン信号BSの周波数情報を、通信環境制御装置104に通知する。通信環境制御装置104の周波数情報取得部92は、WAP36から取得した周波数情報を周波数情報テーブル91に登録する。X線撮影装置12が移動すれば、WAP36の周辺のAP22も変わるので、その都度、周波数情報テーブル91は更新される。
【0149】
第4実施形態において、第1実施形態と同様に、機能ユニット18の制御部35は、電子カセッテ16とコンソール17で通信される撮影準備指示やその応答(Ready信号)などに基づいて優先要求を発行する。発行した優先要求は、通信環境制御装置104に通知される。通信環境制御装置104が優先要求を受け付けると、周波数競合判定部94は、周波数情報テーブル91に基づいて周波数が競合する規制対象を判定する。通信規制部96は、判定結果に基づいて、規制対象のAP22に対して通信規制を実施する。
【0150】
このように、X線撮影装置12に通信環境制御装置104を組み込めば、X線撮影装置12の移動に伴って、通信環境制御装置104も移動する。そして、通信規制の監視対象は、X線撮影装置12のWAP36がビーコン信号BSを受信できる範囲のAP22に限定されるので、第3実施形態の場合と同様に監視対象を必要最小限にすることができる。しかも、第3実施形態の場合には、監視対象を判定するために位置情報に基づいて判定する構成が必要になるが、第4実施形態の場合には、監視対象は、WAP36がビーコン信号BSを受信可能な範囲に存在するAP22に限定されるため、位置情報に基づいて監視対象を判定する構成が不要となるメリットがある。
【0151】
なお、本例において、機能ユニット18に通信環境制御装置104を内蔵した例で説明したが、コンソール17や電子カセッテ16に内蔵してもよい。また、機能ユニット18、コンソール17、電子カセッテ16とは別の可搬型ユニットとして構成してもよい。
【0152】
「第5実施形態」
(優先要求の発行タイミングの態様)
上記実施形態では、優先要求の発行タイミングを電子カセッテ16が撮影準備状態(Ready)に移行したタイミングとする例で説明したが、優先要求の発行タイミングは、1回の撮影においてX線画像の送信が開始される前までに行われればよく、
図22〜27に示すように、種々のタイミングに変更可能である。
【0153】
図22に示す例は、X線発生装置11の照射スイッチ28が操作れた際に優先要求を発行する例である。この場合には、照射スイッチ28が操作された際に(S1030)、X線発生装置11の線源制御装置27(
図1参照)は、照射スイッチ28が操作されたことを表す照射開始信号を、無線通信部29を通じて、X線撮影装置12に送信する。機能ユニット18の制御部35は、WAP36を通じて照射開始信号を受信して、優先要求を発行する(S1031)。
【0154】
図22に示す例によれば、
図14に示す電子カセッテ16の照射開始検知のタイミングと比較して、優先要求発行後、X線画像の送信開始までの時間が若干長くなるため、通信環境制御装置13において、通信規制を開始するまでの処理に時間的な余裕が生まれる。そのため、X線画像の送信開始までの間に通信規制を確実に開始させることができる。
【0155】
図23及び
図24に示す例は、
図22に示す例よりも、さらに通信環境制御装置13の処理に時間的な余裕を確保する例である。
図23に示す例は、優先要求の発行タイミングを、電子カセッテ16が撮影準備状態(Ready)に移行したタイミングとした例である。上述のように、電子カセッテ16は、コンソール17からの撮影準備指示により撮影準備状態に移行する。制御部35は、コンソール17からの撮影準備指示、あるいは撮影準備指示を受けた電子カセッテ16がコンソール17に返す応答をWAP36が中継する。機能ユニット18の制御部35は、WAP36が中継する信号に基づいて、電子カセッテ16が撮影準備状態に移行したと判定し、優先要求を発行する(S1021)。
【0156】
図24に示す例は、ポジショニングが完了したタイミングで優先要求を発行する例である。この場合には、例えば、コンソール17の操作画面61にポジショニングを完了したことを入力するポジショニング完了ボタンを設ける。ポジショニング完了ボタンが操作されると、コンソール17は機能ユニット18にポジショニング完了通知を送信する。機能ユニット18は、ポジショニング完了通知を受信すると、ポジショニングが完了したと判定し(S1011でY)、制御部35が優先要求を発行する(S1012)。
【0157】
ポジショニング完了ボタンは、電子カセッテ16や回診車14に設けてもよい。また、ポジショニング完了ボタンを設ける代わりに、ポジショニングの完了を検知する完了検知センサを設けてもよい。例えば、完了検知センサとして、電子カセッテ16に、加速度センサを設ける。ポジショニングを行っている間、電子カセッテ16の姿勢は変化するが、ポジショニングが完了すると、電子カセッテ16は静止する。加速度センサによって電子カセッテ16が静止したことを検知して、一定時間静止した状態が継続したときにポジショニングが完了したと判定する。そして、電子カセッテ16から機能ユニット18に対してポジショニング完了通知を送信する。
【0158】
また、完了検知センサとして、電子カセッテ16とX線源26に、それぞれ超音波信号の送受信器を設けてもよい。送受信器により、電子カセッテ16とX線源26が対向配置されたことを検知し、ポジショニングが完了したと判定する。
【0159】
図25に示す例は、電子カセッテ16の蓄積動作が終了したタイミング(S1071でY)で優先要求を発行する例である。電子カセッテ16は、蓄積動作を終了した際に、その旨を表す蓄積動作終了信号を機能ユニット18に送信する。電子カセッテ16は、蓄積動作を終了して、さらに、画像の読み出しが行われた後、画像送信が開始される。本例では、蓄積終了後、画像の読み出しが開始されるまでの間に機能ユニット18から優先要求が発行される(S1072)。この例によれば、優先要求を発行するタイミングがX線画像送信の直前になるので、通信規制の時間を必要最小限に抑えることができる。優先要求の発行から通信規制の開始までの処理時間を極めて短時間にできる場合には、有効である。
【0160】
図26に示す例は、回診車14のロック機構33(
図2参照)のロックが解除されたタイミングで優先要求を発行する例である。上述のとおり、回診撮影が行われる場合には、駐機場15から病棟19へ回診車14を走行させる。走行開始前には、ロック機構33のロック操作が行われる(S1001)。病室に到着後、ポジショニングが行われる際には、ロック部材34の操作により、ロック機構33のロックが解除される。ロックが解除された際に、線源制御装置27は、無線通信部29を通じて、X線撮影装置12の機能ユニット18にロック解除通知を送信する。機能ユニット18の制御部35は、ロック解除通知を受信したときに(S1002)、優先要求を発行する(S1003)。
【0161】
図27に示す例は、コンソール17の操作画面61に、優先要求の発行を指示する優先指示ボタンを設けて、優先指示ボタンが操作されたタイミングで優先要求を発行する例である。例えば、技師Tは、ポジショニング完了後、コンソール17の操作により電子カセッテ16を撮影準備状態に移行させる(S1020)。その際に、コンソール17の優先指示ボタンの操作により優先指示を、機能ユニット18に送信する。機能ユニット18は、優先指示を受信したときに、優先指示操作が行われたと判定して(S1021)、優先要求を発行する(S1022)。
【0162】
「第6実施形態」
(転送レートに応じた通信規制)
図28に示す第6実施形態は、通信テストにより、X線撮影装置12の転送レートを測定して、測定結果に応じて通信規制を実施する例である。例えば、
図28に示すように、優先指示操作が行われた際に(S1021)、X線撮影装置12は、電子カセッテ16からコンソール17に対してダミーデータを送信することにより、通信テストを行う(S1022)。そして、機能ユニット18の制御部35は、通信テストの測定結果である転送レートが所定の閾値Th以上である場合には、通信規制の必要が無いと判定する(S1023でY)。この場合には優先要求を発行しない。一方、転送レートが閾値Th未満の場合には、通信規制の必要が有ると判定して(S1023でN)、優先要求を発行する(S1024)。これによれば、X線撮影装置12が置かれている通信環境を評価した上で、通信規制の必要性を判定するため、必要に応じて通信規制を行うことができる。
【0163】
なお、本例においては、優先指示操作と通信テストを組み合わせた例で説明しているが、上記各実施形態と本実施形態を組み合わせてもよい。例えば、
図26のロック解除操作と組み合わせた場合には、ロックが解除された際に通信テストを実行し、測定結果に基づいて通信規制の必要性が有ると判定された場合に、優先要求を発行する。
【0164】
「第7実施形態」
(電子カセッテからのX線画像の送信以外の通信を停止する)
図29に示す第7実施形態は、X線撮影装置12において、優先要求が発行された以後は、電子カセッテ16からのX線画像の送信以外の通信、例えば、コンソール17によるRISサーバ23からの撮影オーダの受信を停止する例である。コンソール17がRISサーバ23にアクセスして撮影オーダを受信する場合には、WAP36経由で行うことになる。コンソール17と電子カセッテ16は、WAP36が使用する1つの無線通信チャンネルを時分割で共有するため、コンソール17が無線通信チャンネルを使用している間は、電子カセッテ16にとってはチャンネルビジーと認識されるため、通信ができない。そのため、電子カセッテ16からX線画像を送信する際には、X線画像以外の通信を停止することが好ましい。
【0165】
図29において、機能ユニット18によって優先要求が発行されると(S1021)、コンソール17は撮影オーダ受信を停止する(S1022)。そして、画像送信の終了通知を通信環境制御装置13に送信した後、撮影オーダの受信停止を解除する(S1101)。この他、電子カセッテ16からのX線画像の送信以外の通信としては、例えば、コンソール17が前回撮影したX線画像を画像サーバ24へアップロードする場合があり、これを停止してもよい。
【0166】
なお、コンソール17は、WAP36経由で無く、AP22に直接接続してRISサーバ23や画像サーバ24にアクセスすることも可能である。この場合には、コンソール17とAP22間で撮影オーダや画像のアップロードに使用する無線通信チャンネルと、コンソール17とWAP36間の無線通信チャンネルの周波数が競合していなければ、電子カセッテ16との関係では、電波干渉や無線通信チャンネルの時分割共有による転送レートの低下などの影響は無い。しかし、コンソール17において複数の相手との通信が重なることによる処理遅延の影響も考えられるので、この場合においても、電子カセッテ16からのX線画像の送信以外の通信を停止することが好ましい。また、今後チャンネルボンディングの技術が進み、ボンディング可能なチャンネル数がさらに多くなることを考えると、複数の通信を並行して行うことは、1つの通信に関して言えば、チャンネル数の減少を意味する。そのため、ボンディング可能なチャンネル数を確保するという意味でも、X線画像の送信以外の通信を停止することが好ましい。
【0167】
「第8実施形態」
(優先度に応じた通信規制)
図30に示す第8実施形態は、優先要求が複数有る場合に、優先度に応じて優先する対象を決める例である。優先要求が複数有る場合とは、例えば、通信環境制御装置13が、複数のX線撮影装置12から同じタイミングで優先要求を受け付けた場合である。この場合には、例えば、X線撮影装置12は、優先要求に、高、中、低のように優先するレベルを表す優先度を表す情報を含めて、通信環境制御装置13に送信する。
【0168】
通信環境制御装置13は、優先要求が1つだけの場合には(S2021でN)、そのX線撮影装置12と周波数が競合する規制対象の通信規制を開始する(S2030)。優先要求が複数有る場合(S2021でY)には、通信環境制御装置13は、要求元の複数のX線撮影装置12間において、使用する周波数が競合しているかを判定する(S2022)。周波数が競合していなければ(S2022でN)、それぞれのX線撮影装置12の周波数と競合する規制対象の通信規制を開始する。一方、複数のX線撮影装置12間において、使用する周波数が競合している場合には(S2022でY)、優先度が高い方を優先して、通信規制を開始する。
【0169】
上述したとおり、回診撮影では、緊急の撮影オーダが入る場合もある。緊急の撮影オーダは、他の撮影オーダと比較して優先させる必要性が高いので、このような場合に、本例は有効である。
【0170】
上記各実施形態において、IEEE802.11n規格の5GHz帯の無線通信チャンネルを例に説明したが、もちろん、2.4GHz帯でもよい。また、IEEE802.11a、IEEE802.11bや、次世代のIEEE802.11acなどの他の無線LAN規格でもよいし、IEEE802.11以外の他の通信規格でもよい。
【0171】
上記実施形態において、X線撮影装置12のWAP36に1つの無線通信チャンネルを割り当てて、この無線通信チャンネルを電子カセッテ16とコンソール17で共有する例で説明したが、WAP36に複数の無線通信チャンネルを割り当てて、電子カセッテ16とコンソール17が別の無線通信チャンネルを使用できるようにしてもよい。
【0172】
上記実施形態において、通信環境制御装置に、AP22やWAP36の各アクセポイントから周波数情報を取得する周波数情報取得部を設けた例で説明したが、周波数情報取得部は無くてもよい。例えば、回診先の病室が予め分かっている場合には、回診先の病室のアクセスポイントとX線撮影装置のそれぞれが使用する無線通信チャンネルの周波数情報を通信環境制御装置の周波数情報テーブルに予め登録しておけばよい。
【0173】
また、X線撮影装置12において、WAP36が内蔵される機能ユニット18を、電子カセッテ16やコンソール17と別体で構成する例で説明したが、機能ユニット18を電子カセッテ16又はコンソール17に内蔵してもよい。
【0174】
また、X線撮影装置12が優先要求を発行する例で説明したが、例えば、回診車14から優先要求を発行してもよい。この場合には、例えば、回診車14に優先要求を発行するための操作ボタンを設ける。
【0175】
また、X線撮影装置12において、電子カセッテ16とコンソール17間の通信を、WAP36を介したインフラストラクチャモードで行う例で説明したが、WAP36を介さずにアドホックモードで通信してもよい。
【0176】
また、X線撮影システムとして、X線撮影装置と通信環境制御装置に加えて、X線撮影装置との通信機能を有する移動型X線発生装置(X線発生装置11が搭載された回診車14)を含めた例で説明したが、X線撮影装置とX線発生装置は通信できなくてもよい。例えば、本発明のX線撮影システムを、X線撮影装置と通信環境制御装置で構成し、これをX線撮影装置との通信機能が無い既存の移動型X線発生装置(X線フイルムやIPカセッテ用の移動型X線発生装置)と組み合わせて使用してもよい。上記実施形態のように、照射開始検知機能を有する電子カセッテを用いれば、既存の移動型X線発生装置の組み合わせもしやすい。
【0177】
本発明は、上記実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない限り種々の構成を採り得ることはもちろんである。例えば、上述の種々の実施形態や種々の変形例を適宜組み合わせることも可能である。また、本発明は、X線に限らず、γ線等の他の放射線を使用する場合にも適用することができる。