(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6050211
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】内視鏡
(51)【国際特許分類】
A61B 1/00 20060101AFI20161212BHJP
G02B 23/24 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
A61B1/00 300Q
G02B23/24 A
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-211144(P2013-211144)
(22)【出願日】2013年10月8日
(65)【公開番号】特開2015-73689(P2015-73689A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2015年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075281
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 和憲
(72)【発明者】
【氏名】池田 利幸
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 雄一
(72)【発明者】
【氏名】井山 勝蔵
【審査官】
佐藤 高之
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2005/027738(WO,A1)
【文献】
特開2011−120863(JP,A)
【文献】
特開2010−279533(JP,A)
【文献】
特開2012−179078(JP,A)
【文献】
特開2012−179221(JP,A)
【文献】
特開2005−230360(JP,A)
【文献】
実開昭55−156701(JP,U)
【文献】
実開昭61−121802(JP,U)
【文献】
実開昭56−093201(JP,U)
【文献】
特開2012−050512(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/017861(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0260118(US,A1)
【文献】
特開2006−034628(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0038027(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0253966(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00−1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体内へ挿入される挿入部の先端部に、該挿入部の軸方向と直交して形成される平坦面と、
前記平坦面に配置されて、前記被検体内を観察するための観察窓と、
前記平坦面に配置されて、前記観察窓の表面に向けて流体を噴射する流体噴射ノズルと、
前記流体噴射ノズルから噴射される流体噴射範囲内に位置し、前記観察窓に隣接して前記平坦面に配置されて、前記被検体を照明する照明光を放射するための照明窓と、
前記照明窓、前記観察窓及び前記流体噴射ノズルに隣接して前記平坦面に配置されて、流体を吸引するための吸引口と、
前記照明窓及び吸引口の間で、前記流体噴射範囲内に配置され、前記平坦面に対して傾斜して前記平坦面及び前記吸引口を連接し、前記流体噴射ノズルから離れるに従い前記平坦面から前記吸引口までの間隔が次第に広くなる流体ガイド傾斜面と、
を備える内視鏡。
【請求項2】
前記流体噴射ノズルは、気体及び液体を選択的に噴射し、
前記気体の噴射範囲は、前記液体の噴射範囲に比べて両側に広がっており、
前記観察窓は前記液体の噴射範囲内にあり、
前記照明窓は前記気体の噴射範囲内にある請求項1記載の内視鏡。
【請求項3】
前記流体ガイド傾斜面は、前記吸引口の中心及び前記流体噴射範囲内に位置する前記照明窓の中心とを結ぶ線上の面が前記平坦面に対して最も深くなる請求項1または2記載の内視鏡。
【請求項4】
前記流体ガイド傾斜面は、前記吸引口の中心から前記照明窓の中心に向かって前記吸引口の内径を拡大するように形成されている請求項3記載の内視鏡。
【請求項5】
前記流体ガイド傾斜面は、前記吸引口の中心、前記照明窓の中心、前記観察窓の中心を結ぶ範囲内に少なくとも位置する請求項1ないし4いずれか1項記載の内視鏡。
【請求項6】
前記先端部は、先端部本体と、前記先端部本体の先端側に装着される先端キャップとを備え、
前記流体ガイド傾斜面は、前記先端キャップに形成される請求項1ないし5いずれか1項記載の内視鏡。
【請求項7】
前記流体ガイド傾斜面は、前記流体噴射ノズルから噴射される液体の噴射範囲の縁に沿って形成される請求項1ないし6いずれか1項記載の内視鏡。
【請求項8】
前記流体噴射ノズルの外周と前記吸引口の周縁とが0mm以上0.5mm以下の間隔を持って配置されている請求項1ないし7いずれか1項記載の内視鏡。
【請求項9】
前記流体ガイド傾斜面を間に挟み、前記流体噴射ノズルの流体噴射方向に対して前記流体噴射ノズルの噴射口と反対側の位置に前記照明窓が配置されている請求項1ないし8いずれか1項記載の内視鏡。
【請求項10】
前記観察窓の周縁に沿って、前記平坦面から前記観察窓に向かって次第に縮径するテーパ面を有し、
前記テーパ面及び前記流体ガイド傾斜面が連続して形成されている請求項1ないし9いずれか1項記載の内視鏡。
【請求項11】
前記観察窓の周縁に沿って、前記平坦面から前記観察窓に向かって次第に縮径するテーパ面が設けられており、
前記テーパ面の周縁と前記照明窓の外周とが0.1mm以上0.3mm以下の間隔を持って配置されている請求項1ないし10いずれか1項記載の内視鏡。
【請求項12】
前記照明窓を複数有し、前記流体噴射ノズルから最も離れ且つ前記吸引口に最も近い位置にある前記照明窓及び前記吸引口の間に前記流体ガイド傾斜面が配置されている請求項1記載の内視鏡。
【請求項13】
前記吸引口は、処置具出口を兼ねることを特徴とする請求項1ないし12いずれか1項記載の内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察窓に向けて流体を噴射する流体噴射ノズルを備えた内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡は、被検体内へ挿入する挿入部の先端に、被検体の像光を取り込むための観察窓と、被検体へ向けて照明光を照射するための照明窓と、観察窓に向けて流体(水または空気や炭酸ガス等の気体)を噴射する流体噴射ノズル(送気送水ノズル)とを備えている。観察窓の表面には、被検体内の液や汚物が付着するため、流体噴射ノズルの噴射口から水を噴射して観察窓の汚れを洗い流し、噴射口から空気を噴射して観察窓の表面に残った水滴が吹き飛ばされる。観察窓の一部に汚れや水滴が残っていると観察がしにくいので、流体噴射ノズルから噴射される流体は、観察窓の表面全体に行き渡ることが好ましい。
【0003】
このため、特許文献1または2記載の内視鏡では、挿入部先端部の平坦面に対して観察窓の表面を所定高さ突出させて配設するとともに、観察窓の周縁に沿って、平坦面から観察窓の表面に向かって徐々に高さが高くなるように傾斜する傾斜部が形成されている。流体噴射ノズルの噴射口から噴射した流体は傾斜部の傾斜面にぶつかり、観察窓の表面に向かってスムーズに流れるので、流体を観察窓の表面全体に行き渡らせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−120863号公報
【特許文献2】特開2012−179221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1または2記載の内視鏡では、流体噴射ノズルから噴射される流体は、ノズル開口の中央付近では流速が速く、ノズル開口の周辺付近では流速が遅い。特に、同一の流体噴射ノズルを用いて液体と気体とを選択的に噴射させる場合、両者の粘度や比重などの違いによってその噴射範囲が異なることになる。例えば、液体の方は噴射範囲が両側に広がることは少ないのに対して、気体の方は噴射範囲が両側に広がる。したがって、観察窓を洗浄する場合に流体噴射ノズルから液体、例えば水を噴射させた後に、観察窓に付着した水滴を気体の噴射により吹き飛ばす時に、流体噴射ノズルから噴射された気体流のうち、中央付近の流速が速い範囲で観察窓に付着した水分を確実に吹き飛ばせるように設定している。しかし、周辺の流速の遅い部分では先端面に残った水分が水滴となって押し流されて移動し、照明窓に到達し滞留する。特に、ノズルの先端から離れる程、水滴の滞留は顕著となる。
【0006】
照明窓に水滴が滞留すると、ハレーションやフレアなどの原因となり、内視鏡画像を劣化させることになる。また、観察視野が広角化しつつある最近の内視鏡では、観察視野内に水滴が写り込み、その分だけ観察視野が狭くなってしまう。先端部の平坦面での水滴の滞留を防ぐためには、観察窓と照明窓を離して配置すればよい。この場合には、水滴は観察窓と照明窓の間をすり抜けて平坦面外へ移動する。また、平坦面に水滴が残ったとしても観察視野外となり、観察像に影響を及ぼすことは少ない。しかし、被検体への負担軽減のため、先端部を含め挿入部を細径化したいという要請がある。一方、観察画像の高画質化に伴い、観察窓や照明窓は大径化したいという要請もある。このため、観察窓と照明窓を接近させた配置が避けられない状況になってきており、これらの事情を考慮した上で、水滴を残存させないことが求められている。
【0007】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、先端部に滞留する液滴を、確実に取り除くことができる内視鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の内視鏡は、被検体内へ挿入される挿入部の先端部に、該挿入部の軸方向と直交して形成される平坦面と、平坦面に
配置されて、被検体内を観察するための観察窓と、平坦面に
配置されて、観察窓の表面に向けて流体を噴射する流体噴射ノズルと、流体噴射ノズルから噴射される流体噴射範囲内に位置し、観察窓に隣接して平坦面に
配置されて、被検体を照明する照明光を放射するための照明窓と、照明窓、観察窓及び流体噴射ノズルに隣接して平坦面に
配置されて、流体を吸引するための吸引口と、照明窓及び吸引口の間で、流体噴射範囲内に
配置され、平坦面に対して傾斜して平坦面及び吸引口を連接し、流体噴射ノズルから離れるに従い平坦面から吸引口までの間隔が次第に広くなる流体ガイド傾斜面とを備える。
【0009】
流体噴射ノズルは、気体及び液体を選択的に噴射し、気体の噴射範囲は、液体の噴射範囲に比べて両側に広がっており、観察窓は液体の噴射範囲内にあり、照明窓は気体の噴射範囲内にあることが好ましい。
【0010】
流体ガイド傾斜面は、吸引口の中心及び流体噴射範囲内に位置する照明窓の中心とを結ぶ線上の面が平坦面に対して最も深くなることが好ましい。また、流体ガイド傾斜面は、吸引口の中心から照明窓の中心に向かって吸引口の内径を拡大するように形成されている
ことが好ましい。
【0011】
流体ガイド傾斜面は、吸引口の中心、照明窓の中心、観察窓の中心を結ぶ範囲内に少なくとも位置することが好ましい。先端部は、先端部本体と、先端部本体の先端側に装着される先端キャップとを備え、流体ガイド傾斜面は、先端キャップに形成されることが好ましい。
【0012】
流体ガイド傾斜面は、流体噴射ノズルから噴射される液体の噴射範囲の縁に沿って形成されることが好ましい。
【0013】
流体噴射ノズル
の外周と吸引口の周縁とが0mm以上0.5mm以下の間隔を持って配置されていることが好ましい。また、流体ガイド傾斜面を間に挟み、流体噴射ノズルの流体噴射方向に対して流体噴射ノズルの噴射口と反対側の位置に照明窓が
配置されていることが好ましい。
【0014】
観察窓の周縁に沿って、平坦面から観察窓に向かって次第に縮径するテーパ面を有し、テーパ面及び流体ガイド傾斜面が連続して形成されていることが好ましい。また、観察窓の周縁に沿って、平坦面から観察窓に向かって次第に縮径するテーパ面が設けられており、テーパ面
の周縁と照明窓の外周とが0.1mm以上0.3mm以下の間隔を持って配置されていることが好ましい。
【0015】
照明窓を複数有し、
流体噴射ノズルから最も離れ且つ吸引口に最も近い位置にある照明窓と吸引口との間に流体ガイド傾斜面が
配置されていることが好ましい。また、吸引口は、処置具出口を兼ねることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の内視鏡によれば、照明窓と吸引口との間で、流体噴射範囲内に
配置され、平坦面に対して傾斜して平坦面及び吸引口を連接し、流体噴射ノズルから離れるに従い平坦面から吸引口までの間隔が次第に広くなる流体ガイド傾斜面を有するから、先端部の平坦面に滞留する水滴や送気時に移動する水滴を、確実に取り除くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図3】電子内視鏡の先端部の構成を示す斜視図である。
【
図5】観察窓へ流体噴射した状態を示す平面図である。
【
図6】水滴が付着しやすい箇所への傾斜面の配置の一例を示す平面図である。
【
図7】テーパ面と流体ガイド面とを連続させた第2実施形態の挿入部先端を示す斜視図である。
【
図8】
図7のVIII−VIII線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に示すように、内視鏡システム2は、電子内視鏡10、プロセッサ装置11、光源装置12、送気送水装置13、及び吸引装置14を備えている。送気送水装置13は、光源装置12に内蔵され、気体の送気を行う周知の送気装置(ポンプなど)13aと、光源装置12の外部に設けられ、洗浄水を貯留する洗浄水タンク13bとを有する。電子内視鏡10は、被検体内に挿入される可撓性の挿入部16と、挿入部16の基端部分に連設された操作部17と、プロセッサ装置11や光源装置12に接続されるユニバーサルコード18とを有する。
【0019】
挿入部16は、その先端に設けられ、被検体内撮影用の撮像素子としてのCCD型イメージセンサ(
図2及び
図4参照。以下、CCDという)43等が内蔵された先端部16aと、先端部16aの基端に連設された湾曲自在な湾曲部16bと、湾曲部16bの基端に連設された可撓性を有する可撓管部16cとを有する。以下、挿入部16の先端側を単に「先端側」といい、挿入部16の基端側を単に「基端側」という。
【0020】
ユニバーサルコード18の先端には、コネクタ19が取り付けられている。コネクタ19は複合タイプのコネクタであり、プロセッサ装置11、及び光源装置12、送気送水装置13がそれぞれ接続されている。コネクタ19には、連結チューブ20を介して吸引装置14が接続されている。
【0021】
プロセッサ装置11は、光源装置12と電気的に接続され、内視鏡システム2の動作を統括的に制御する。プロセッサ装置11は、ユニバーサルコード18や挿入部16内に挿通された伝送ケーブルを介して電子内視鏡10に給電を行い、CCD43の駆動を制御する。また、プロセッサ装置11は、伝送ケーブルを介してCCD43から出力された撮像信号を取得し、各種画像処理を施して画像データを生成する。プロセッサ装置11で生成された画像データは、プロセッサ装置11にケーブル接続されたモニタ21に観察画像として表示される。
【0022】
図2に示すように、挿入部16及び操作部17の内部には、送気送水チャンネル22及び処置具挿通チャンネル23が配されている。送気送水チャンネル22は、一端が先端部16aに設けられた送気送水ノズル(流体噴射ノズル)24に連通している。送気送水チャンネル22の他端は、送気管路22aと送水管路22bとに分岐している。送気管路22aと送水管路22bは、操作部17に設けられた送気送水ボタン25に接続している。
【0023】
送気送水ボタン25には、送気管路22a、送水管路22bの他に、送気装置13aに通じる送気源管路26の一端と、洗浄水タンク13bに通じる送水源管路27の一端とが接続されている。送気装置13aは、電子内視鏡10による内視鏡検査時に気体(空気や炭酸ガス)を供給する。
【0024】
送気送水ボタン25によって送気操作を行うと、送気装置13aが発生する気体が送気送水ノズル24に送られ、送水操作を行うと、送気装置13aが発生する気体の圧力によって洗浄水タンク13bから洗浄水が送気送水ノズル24に送られる。送気送水ノズル24は、送気送水チャンネル22を介して供給された気体、洗浄水を選択的に噴射する。
【0025】
処置具挿通チャンネル23は、一端が処置具出口(吸引口)28に連通し、他端が処置具入口29に接続されている。処置具入口29は、注射針や高周波メスなどが先端に配された各種処置具が挿入され、処置具を挿入するとき以外は栓(図示せず)により塞がれている。また、処置具挿通チャンネル23からは、吸引管路30が分岐しており、この吸引管路30は、吸引ボタン31に接続している。
【0026】
吸引ボタン31には、吸引管路30の他に、一端が連結チューブ20を介して吸引装置14に通じる吸引源管路32の他端が接続されている。吸引装置14も電子内視鏡10による内視鏡検査時には常時作動する。吸引ボタン31によって吸引操作を行うと、吸引装置14が発生する負圧により吸引が行われ、遮断操作を行うと負圧が遮断されて吸引が停止する。
【0027】
操作部17には、処置具入口29と、送気送水ボタン25と、吸引ボタン31と、湾曲操作ノブ33などが設けられている。湾曲操作ノブ33が操作されると、挿入部16内に挿設されたワイヤが押し引きされることにより、湾曲部16bが上下左右方向に湾曲動作する。これにより、先端部16aが被検体内の所望の方向に向けられる。
【0028】
図3、
図4及び
図5に示すように、先端部16aは、先端部本体35、この先端部本体35の先端側に装着されるキャップ状の先端キャップ36、観察窓37、2つの照明窓38a,38b、送気送水ノズル24、及び処置具出口28を備える。先端部本体35は、送気送水ノズル24や、後述する対物レンズユニット41、接続パイプ47、及びライトガイドなどの各部品を保持する貫通孔35a,35bなどが挿入部16の軸方向に沿って形成されている。先端部本体35の後端は、湾曲部16bを構成する先端側の湾曲駒39に連結されている。なお、
図4において、各部材を図示化するために径方向の各部材の厚みが強調されている。このため、処置具出口28や観察窓37の径は実際のものよりも小径で図示されており、
図3の斜視図とは厚み関係において対応が取れていない。
【0029】
先端キャップ36は、先端部本体35の先端側を覆う先端板部36aと、先端部本体35の外周面を覆う円筒部36bとを有する。湾曲部16bの外周面を覆う外皮層40が先端部本体35まで延在し、外皮層40の先端と円筒部36bの後端とが突き合わされて端部同士が接着剤などにより固着されている。先端板部36aには、挿入部16の軸方向と直交する面であり、挿入部16の先端面を構成する平坦面36cが形成されている。なお、ここでいう「直交」する面とは、挿入部16の軸方向に対しほぼ直交な面も含む。
【0030】
先端板部36aには、平坦面36cを先端側から視たとき、観察窓37、照明窓38a,38b、送気送水ノズル24を露呈させる貫通孔36d〜36g、及び処置具出口28が形成されている。
【0031】
なお、
図5における上下方向は、湾曲部16bが湾曲する上下方向と一致しており、観察窓37は、平坦面36cの上方に位置し、送気送水ノズル24及び処置具出口28は、その下方に配される。また、照明窓38a,38bは、観察窓37に関して対称な位置に配されている。
【0032】
観察窓37は、対物レンズユニット41を構成する最先端側の対物レンズであり、カバーガラスを兼ねる。観察窓37は円板形状の外形をしており、光入射面である表面37aは凸レンズ面もしくは平坦に形成されるが、本実施形態では凸レンズ面に形成されている。観察窓37の観察窓37を含む対物レンズユニット41の光学系は、鏡胴42に保持される。鏡胴42は、観察窓37の外周面37bの基端側を保持する。観察窓37は、外周面37bの先端側が先端キャップ36の貫通孔36dに嵌合する。
【0033】
鏡胴42は、先端部本体35の貫通孔35aに嵌合するとともに、先端面が先端キャップ36の先端板部36aに突き当たって、観察窓37が平坦面36cの先端側から露呈する位置に配される。このようにして、観察窓37は、表面37aが平坦面36cと同一面、または平坦面36cから突出して取り付けられるが、本実施形態では、表面37aが平坦面36cから突出する位置に取り付けられる。観察窓37の表面37aが平坦面36cから突出する高さとしては、例えば0.1〜0.3mmである。
【0034】
なお、観察窓37としては、対物レンズユニット41の最先端側に位置し、レンズ効果を有しないカバーガラスであってもよい。また、観察窓37は、対物レンズユニット41を構成するものでなくてもよく、単なるカバーガラスとして、先端キャップ36の貫通孔36dに嵌合固着されるものでもよい。
【0035】
図4に示すように、対物レンズユニット41の奥には、CCD43が取り付けられている。CCD43は、例えばインターライントランスファ型のCCDからなり、対物レンズユニット41の光学系によって取り込まれた被検体像が撮像面に結像される。なお、撮像素子としては、CCD43に限らず、CMOSやその他の装置でもよい。
【0036】
照明窓38a,38bは、照射レンズを兼ねており、被検体内の観察部位に光源装置12からの照明光を照射する。照明窓38a,38bは、ライトガイド(図示せず)の出射端が面している。ライトガイドは、多数の光ファイバーを束ねて形成されている。このライトガイドは、挿入部16、操作部17、ユニバーサルコード18、及びコネクタ19の内部を通り、光源装置12からの照明光を照明窓38a,38bに導く。
【0037】
送気送水ノズル24は、基端部が送気送水チャンネル22の先端側外周面に嵌合して送気送水チャンネル22に接続される。また、送気送水ノズル24の基端部及び送気送水チャンネル22は、先端部本体35の貫通孔36gに嵌合している。送気送水ノズル24の先端側には、噴射筒部24aが形成されている。噴射筒部24aは、送気送水ノズル24の基端部から先端の噴射口44へ滑らかに略90°曲折された筒状に形成されており、先端キャップ36の貫通孔36gを通して外部に露呈し、平坦面36cに配されている。
【0038】
送気送水ノズル24及び処置具出口28は近接して配置される。なお、ここでいう送気送水ノズル24及び処置具出口28が「近接」して配置されるとは、例えば、送気送水ノズル24の外周と処置具出口28の周縁とが、0mm以上0.5mm以下の間隔D1(
図6参照)を持って接近している状態をいう。
【0039】
図5に示すように、送気送水ノズル24から噴射された流体のうち、洗浄水49は、
図5の点線で示すように、観察窓37に向けて直線状に吹き付けられ、気体50は、
図5の一点鎖線で示す範囲のように、送気送水ノズル24から離れるにつれて徐々に広がって吹き付けられる。観察窓37は、送気送水ノズル24から噴射される洗浄水の噴射範囲内に配されている。送気送水ノズル24から噴射された流体は、洗浄水及び気体のいずれにおいても、噴射口44の中央付近から噴射された流体は流速が速く、噴射口44の周辺付近から噴射された流体は流速が遅い。
【0040】
先端キャップ36には、観察窓37の周縁と平坦面36cとの間に、平坦面36cから所定高さ分突出する円環状凸部45が一体に形成されている。円環状凸部45は、内周面が貫通孔36dと連続しており、外周には、テーパ面46が形成されている。テーパ面46は観察窓37に向かって次第に縮径し、観察窓37の全周縁に形成されている。
【0041】
照明窓38a,38bは、観察窓37に隣接して平坦面36cと同一面に配され、送気送水ノズル24から噴射される気体の噴射範囲内に配されている。一方の照明窓38bは、観察窓37を挟んで処置具出口28に近接し、且つ送気送水ノズル24と離れた位置に配される。他方の照明窓38aは、観察窓37を挟んで処置具出口28と離れた位置で、且つ送気送水ノズル24の近傍に配される。照明窓38a,38bは、テーパ面46に近接して配置される。なお、ここでいう、照明窓38a,38b及びテーパ面46が「近接」して配置されるとは、例えば、照明窓38a,38の外周とテーパ面46の周縁とが、0.1mm以上0.3mm以下の間隔D2(
図6参照)を持って接近している状態をいう。
【0042】
処置具出口28は、先端部本体35の貫通孔35bに嵌合された接続パイプ47を介して処置具挿通チャンネル23に接続され、処置具入口29に連通している。処置具入口29に挿通された各種処置具は、その先端が処置具出口28から露呈される。処置具挿通チャンネル23には、上述したように吸引管路30が接続されるため、処置具出口28は、流体を吸引するための吸引口を兼ねる。
【0043】
先端キャップ36には、照明窓38bと処置具出口28との間で、流体ガイド傾斜面48a,48bが形成されている。流体ガイド傾斜面48a,48bは、平坦面36cに対して傾斜しており、平坦面36c及び処置具出口28を連接する。流体ガイド傾斜面48aは、照明窓38bの中心と処置具出口28の中心とを結ぶ線に対して送気送水ノズル24側に位置し、流体ガイド傾斜面48bは、先端キャップ36の外周面側に位置する。
【0044】
流体ガイド傾斜面48aは、送気送水ノズル24から噴射される気体の噴射範囲内に位置し、送気送水ノズル24から噴射される洗浄水の噴射範囲の縁に沿って配される。流体ガイド傾斜面48a,48bは、送気送水ノズル24から離れるに従い平坦面36cから処置具出口28までの間隔が次第に広くなる三日月状に形成されている。流体ガイド傾斜面48aは、送気送水ノズル24側の端部では、処置具出口28の端縁と滑らかに連続しており、処置具出口28の中心と照明窓38bの中心とを結ぶ線上の面が、平坦面36cに対して最も深くなる。具体的には、処置具出口28の中心と照明窓38bの中心とを結ぶ線に直交する方向での流体ガイド傾斜面48aの幅Mが最大となる。この幅Mは、0.3mm以上0.5mm以下である。
【0045】
また、
図6に示すように、流体ガイド傾斜面48aは、送気送水ノズル24から噴射された水滴が付着もしくは移動しやすい範囲に位置する。具体的には、その一部が処置具出口28の中心、照明窓38bの中心、及び観察窓37の中心を結んだ範囲内(網掛け線で示した部分)に少なくとも位置する。さらにまた、流体ガイド傾斜面48aは、観察窓37と照明窓38bとの間に位置し、且つ流体ガイド傾斜面48aを間に挟み、送気送水ノズル24の流体噴射方向に対して送気送水ノズル24の噴射口44とは反対側の位置に照明窓38bが配されている。
【0046】
流体ガイド傾斜面48bは、幅Mが最大となる位置で流体ガイド傾斜面48aと連続し、送気送水ノズル24から離反するにつれて徐々に間隔が小さくなる。先端キャップ36の外周面側の端部では、処置具出口28の端縁と滑らかに連続している。このように、流体ガイド傾斜面48a,48bは、処置具出口28の中心から照明窓38bの中心に向かって処置具出口28の内径を拡大するように形成されている。
【0047】
送気送水ノズル24から流体を噴射して観察窓37の洗浄を行うときのプロセスを説明する。上述したように、観察窓37及びテーパ面46は、送気送水ノズル24の流体噴射範囲に位置する。送気送水ノズル24から噴射された流体(洗浄水又は気体)のうち、洗浄水は、その一部が観察窓37に直接当たるとともに、残りがテーパ面46にぶつかって観察窓37の周方向に拡がり、テーパ面46を上る。これにより、観察窓37の表面全体に洗浄水が行き渡り、観察窓37に付着した液や汚物が吹き飛ばされる。さらに、気体の噴射によって洗浄水も吹き飛ばされる。
【0048】
ここで、送気送水ノズル24から噴射された流体のうち、ノズル噴射口44の周辺付近から噴射される洗浄水は流速が遅いため、洗浄水の噴射終了間際に送気送水ノズル24付近の平坦面36cに水滴が滞留することがある。さらに、洗浄水の噴射後、気体の噴射開始時に送気送水ノズル24付近に残っていた洗浄水が水滴となって平坦面36cに滞留することがある。これらの水滴は、送気送水ノズル24から噴射された気体流のうち、中央付近の流速が速い範囲内では確実に吹き飛ばせるが、周辺の流速の遅い部分では吹き飛ばされずに照明窓38bの方向に向かって移動し、再度停滞することになる。しかし、送気送水ノズル24から噴射される気体の噴射範囲内に位置し、送気送水ノズル24から噴射される洗浄水の噴射範囲の縁に沿って流体ガイド傾斜面48aが配されているため、滞留した水滴や移動した水滴は流体ガイド傾斜面48aに沿って流れる。特に、観察窓37の中心と照明窓38aの中心と処置具出口28の中心との間に滞留した水滴が流体ガイド傾斜面48aに流れやすくなっている。また、吸引ボタン31を吸引操作することで、流体ガイド傾斜面48aに付着した水滴や、照明窓38b付近に停滞した水滴を流体ガイド傾斜面48a,48bに導き、吸引して取り除くことができる。一方、照明窓38aは照明窓38bよりも送気送水ノズル24に近接する位置にあり、送気送水ノズル24から噴射された気体流のうち、照明窓38a付近に滞留した水滴については、そのほとんどが流速の速い範囲内に位置するため、送気送水ノズル24から噴射された気体によって吹き飛ばされる。
【0049】
以上のように、先端部16aに流体ガイド傾斜面48aを設けたことにより、滞留した水滴や移動した水滴を確実に取り除くことができる。これにより、ハレーションやフレアなどを防ぎ、内視鏡画像の劣化を防止することができる。また、流体噴射範囲に流体ガイド傾斜面48aを設けることで、水滴が滞留しやすい平坦面36cの領域を減らすことができる。
【0050】
上記第1実施形態では、観察窓37の周囲に形成されたテーパ面46と、流体ガイド傾斜面48aとの間に平坦面36cが位置し、両者を隔てているが、これに限らず、
図7及び
図8に示す第2実施形態の先端部51のように、テーパ面46と流体ガイド傾斜面48aとを連続して形成してもよい。この場合には、先端部51では、上記第1実施形態と同様の流体ガイド傾斜面48a,48bを有する。また、流体ガイド傾斜面48aからテーパ面46に向かって延びる連結傾斜面52を有する。連結傾斜面52は、観察窓37の中心と処置具出口28の中心とを通る線に沿って配される。連続するテーパ面46、連結傾斜面52及び流体ガイド傾斜面48aは、全て先端側から基端側へ傾斜しているため、これらに付着した水滴が全て処置具出口28に流れ易くなっており、送気送水ノズル24から噴射された水滴がさらに除去しやすくなっている。なお、傾斜勾配は同じであっても、各傾斜面で変えてもよい。変える場合には勾配が増す方向または減少する方向のいずれでもよい。
【0051】
上記各実施形態の先端部16a,51では、流体ガイド傾斜面48a,48bを連続して形成しているが、少なくとも流体ガイド傾斜面48aが形成されていればよい。また、上記各実施形態では、流体ガイド傾斜面48a,48bの全てを先端キャップ36に形成する例で説明したが、これに限るものではない。例えば、先端側の一部分を先端キャップ36に形成し、残りの部分を先端部本体35や、接続パイプ47に形成してもよい。また上記各実施形態では、テーパ面46が形成される円環状凸部45を先端キャップ36と一体に形成する例で説明したが、これに限るものではなく、円環状凸部45を先端キャップ36とは別の部材、例えば鏡胴42に形成してもよい。
【0052】
上記実施形態においては、撮像装置を用いて被検体の状態を撮像した画像を観察する電子内視鏡を例に上げて説明しているが、本発明はこれに限るものではなく、光学的イメージガイドを採用して被検体の状態を観察する内視鏡にも適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
10 電子内視鏡
16 挿入部
22 送気送水チャンネル
23 処置具挿通チャンネル
24 送気送水ノズル
28 処置具出口(吸引口)
37 観察窓
46 テーパ面
38a,38b 照明窓
48a,48b 流体ガイド傾斜面