(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリイソブテンコハク酸無水物が、ポリイソブテン基一つ当たり二つのコハク酸基を有する20重量%未満のポリイソブテンコハク酸を含む、請求項8又は9に記載の使用。
香料、界面活性剤、染料、保存剤、消毒剤、錯化剤、増粘剤、湿潤剤、崩壊剤、泡安定剤、及び、ライムスケール又は尿石を溶解する物質から選択される少なくとも1種のさらなる成分Cを含む、請求項11又は12に記載のヒドロゲル。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明によるヒドロゲルは安定である。すなわち、それらは、例えば、0〜90℃、特に、0〜70℃の広い温度範囲にわたって、寸法的に安定であり、機械的応力時でさえ、分離する傾向を有さない。さらに、ヒドロゲル中に存在するゲル形成剤、すなわち、本明細書に記述するポリイソブテンコハク酸エステルは、表面活性特性を示さない。すなわち、1g/lの濃度で、それらは、DIN53914:1980-03に従ったリング法により25℃で測定される、水の表面張力を45mN/m以下に低下させない。使用するゲル形成剤について、さらに、ヒドロゲルは、生体適合性である。すなわち、それらは、生物又は細胞材料若しくは組織などの生物材料に悪影響を全く与えないか、著しい悪影響を与えない。
【0016】
本発明によるヒドロゲルは、極性表面、特に、ガラス又はセラミックなどの無機表面への良好な付着性を有し、水の作用時に直ちに洗い落されないが、長く頻繁に繰り返される水の作用の後にのみ、残留物を残すことなく溶解する。さらに、それらは、香料、又は衛生陶器の洗浄若しくは除菌を促進する他の物質と、不利益なしに配合することができる。加えて、これらのヒドロゲルは、乾ききる傾向をわずかに有するに過ぎない。さらに、これらのヒドロゲルは寸法的に安定であり、したがって、例えば、香料ディスペンサーにおける、成形品を製造するのに適している。
【0017】
本発明によるヒドロゲルは、香料、又は洗浄剤用の他の添加剤、例えば、界面活性剤、染料、保存剤、消毒剤、錯化剤、増粘剤、湿潤剤、崩壊剤、泡安定剤、又は、ライムスケール若しくは尿石を溶解する物質と容易に配合することができ、サニタリー分野での使用に特に適している。本発明によるヒドロゲルは、セラミック表面によく付着し、水の作用下で、全体として洗い落されないが、頻繁に繰り返される水の作用の後にのみ、ゆっくりと完全に溶解する。特に、水の作用が少ない場合、及び/又は、繰り返される水の作用の間の間隔が長い場合に、このタイプのペーストは、乾ききる傾向を全く有さないか、少し有するに過ぎず、水の作用が相対的に少ない場合でさえ、水で繰り返しすすぐことにより、完全に除去することができることが利点であると判明した。
【0018】
「ヒドロゲル形成剤」とは、少なくともある種の温度範囲内での、例えば、5〜40℃の範囲での、水の作用及びそれに関連する膨潤時に、安定なヒドロゲルを水と形成するポリマーを意味するとして理解される。「安定なヒドロゲル」とは、少なくともある種の温度範囲、例えば、5〜40℃の範囲での機械的応力及び/又は長期貯蔵時に著しく分離しない、すなわち、水性セラムの著しい分解がこれらの条件下で起こらないヒドロゲルを意味するとして理解される。
【0019】
一つの理論に縛られるものではないが、本発明によるヒドロゲルにおいて、ポリイソブテンコハク酸エステルは、水に結合して三次元ポリマーネットワークを形成し、そのエステルのポリアルキレン基が、おそらく、水の結合、及び極性表面への良好な付着性をもたらし、その一方で、非極性ポリイソブテニル基が、疎水的相互作用及び会合のためにポリマー鎖の物理的、すなわち、非共有結合的な架橋をもたらし、それ故に、三次元の寸法的に安定なポリマーネットワークの形成をもたらすと考えられる。
【0020】
「ポリイソブテンコハク酸」とは、イソブテンから誘導され、かつ、その末端1又は2の一方に、コハク酸から誘導される基、すなわち、式SA
-CH(COOH)CH
2COOH(SA)
の基、したがって、二つ又は四つのカルボキシル基を有するオリゴマー基又はポリマー基をそれぞれ有するオリゴマー巨大分子又はポリマー巨大分子及びそれらの混合物を意味するとして理解される。
【0021】
したがって、ポリイソブテンコハク酸は、以下の式IIa及びIIbによって示すことができる:
PIB-CH(COOH)CH
2COOH(IIa)
PIB'-[CH(COOH)CH
2COOH]
2(IIb)
(ここで、式IIa中のPIBは、ポリイソブテンから誘導される一価のオリゴマー基又はポリマー基であり、式IIb中のPIB'は、ポリイソブテンから誘導される二価のオリゴマー基又はポリマー基である)。
【0022】
本発明に従って使用するポリイソブテンコハク酸エステルにおいて、カルボキシル基の少なくとも一つは、ポリ-C
2〜C
4-アルキレングリコール又はポリ-C
2〜C
4-アルキレングリコールモノ-C
1〜C
22-アルキルエーテルとのエステルの形態で存在する。このタイプのエステルは、一般式Ia及びIbによって示すことができる:
【化1】
【0023】
(式中、PIB及びPIB'は、式IIa及びIIbについて上で示した意味を有し、R及びR'は互いに独立に、水素又はPagであり、Pagは、ポリ-C
2〜C
4-アルキレングリコール又はポリ-C
2〜C
4-アルキレングリコールモノ-C
1〜C
22-アルキルエーテルから誘導される基である。式Ia及びIb中、Rは、特に、水素である)。
【0024】
「ポリ-C
2〜C
4-アルキレングリコール」とは、AがC
2〜C
4-アルカンジイルである、式-A-O-の繰り返し単位(以下、アルキレンオキシド繰り返し単位とも呼ぶ)から本質的に構成され、かつ、それらの末端にヒドロキシル基を有する、直鎖若しくは分岐オリゴマー又はポリマーを意味するとして理解される。
【0025】
「ポリ-C
2〜C
4-アルキレングリコールモノ-C
1〜C
22-アルキルエーテル」とは、AがC
2〜C
4-アルカンジイルである、式-A-O-の繰り返し単位から本質的に構成され、かつ、それらの末端の一つに、酸素を介して結合されたC
1〜C
22-アルキル基を有し、他の末端(複数可)にヒドロキシル基を有する、直鎖若しくは分岐オリゴマー又はポリマーを意味するとして理解される。
【0026】
これらのポリ-C
2〜C
4-アルキレングリコール及びポリ-C
2〜C
4-アルキレングリコールモノ-C
1〜C
22-アルキルエーテルにおいて、式-A-O-の繰り返し単位は、同一であってもよいし、異なってもよい。ポリ-C
2〜C
4-アルキレングリコール及びポリ-C
2〜C
4-アルキレングリコールモノ-C
1〜C
22-アルキルエーテルが、式-A-O-の異なる繰り返し単位を有する場合、これらは、ランダムに、交互に、又は複数、例えば、2、3、若しくは4ブロックに配列させることができる。本発明の一つの特定の実施形態では、ポリ-C
2〜C
4-アルキレングリコール及びポリ-C
2〜C
4-アルキレングリコールモノ-C
1〜C
22-アルキルエーテルは、ランダムに配列させた、式-A-O-の異なる繰り返し単位を有する。
【0027】
本発明において、C
2〜C
4-アルカンジイルは、2個〜4個の炭素原子を有する飽和した二価の炭化水素基、例えば、1,2-エタンジイル、1,2-プロパンジイル、1,3-プロパンジイル、1,4-ブタンジイル、1,2-ブタンジイル、1,3-ブタンジイル、2,3-ブタンジイル、又は1-メチル-1,2-プロパンジイルである。
【0028】
本発明において、C
1〜C
22-アルキルは、1個〜22個の炭素原子、特に1個〜8個の炭素原子又は1個〜4個の炭素原子を有する飽和した非環状の一価の炭化水素基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、1-ブチル、2-ブチル、tert-ブチル、イソブチル、n-ペンチル、イソペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、n-ヘプチル、イソヘプチル、n-オクチル、イソオクチル、2-エチルヘキシル、n-ノニル、イソノニル、n-デシル、2-プロピルヘプチル、n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、ミリスチル、ペンタデシル、パルミチル(=セチル)、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、アラキニル、又はベヘニルである。
【0029】
「イソブテンから誘導されるポリマー基(以下、ポリイソブテニル基とも呼ぶ)」とは、イソブテンの直鎖若しくは分岐オリゴマー又はポリマーから誘導され、かつ、そこで重合される20重量%までの、好ましくは10重量%以下の、イソブテンとは異なるC
2〜C
12-オレフィン、例えば、1-ブテン、2-ブテン、2-メチル-1-ブテン、2-メチルペンテン-1、2-メチルヘキセン-1、2-エチルペンテン-1、2-エチルヘキセン-1、2-プロピルヘプテン-1を含むことができる、有機基を意味するとして理解される。このタイプの基は、一価の基PIBの場合には、例えば、以下の式によって示すことができ、
【化2】
【0030】
二価の基PIB'の場合には、例えば、以下の式によって示すことができる
【化3】
【0031】
(式中、値p+2は、重合度に相当し、ポリイソブテン基中のイソブテン単位の数を示し、*は、コハク酸(エステル)基への結合を示す)。これらの式において、イソブテン単位-CH
2C(CH
3)
2-のいくつか、一般に、20重量%以下、好ましくは10重量%以下は、それとは異なるC
2〜C
12-オレフィンから誘導されるC
2〜C
12-アルカン-1,2-ジイル基に置きかえることができる。重合度p+2は、典型的には、5〜100の範囲、特に、8〜80の範囲、とりわけ、15〜65の範囲にある。
【0032】
ヒドロゲルにおける本発明による使用に関して、該エステルの総重量に対して少なくとも50重量%の、特に、少なくとも70重量%の式Iaのエステルからなる、ポリイソブテンコハク酸のエステルが好ましい。好ましくは、ポリイソブテンコハク酸のエステルは、該エステルの総重量に対して30重量%未満、特に、20重量%未満の式Ibのエステルを含む。
【0033】
調製の結果として、ポリイソブテンコハク酸のエステルは、未改質ポリイソブテンを含み得る。特に明記しない限り、これは、ここでの、及び以下のエステルに含まれない。ポリイソブテンの割合は、エステル+ポリイソブテンの総量に対して、50重量%まで、しかし、好ましくは40重量%以下又は30重量%以下を占め得る。
【0034】
ヒドロゲルにおける本発明による使用に関して、該エステルのポリイソブテン基が、500〜5000ダルトン、特に、800〜3600の範囲の数平均分子量を有する、ポリイソブテンコハク酸のエステルが好ましい。
【0035】
本発明の特定の実施形態では、ポリイソブテンコハク酸エステルのポリイソブテン基は、狭い分子量分布を有する。多分散度は、好ましくは、高くても1.4、特に好ましくは、高くても1.3、特に、高くても1.2である。「多分散度」とは、重量平均分子量M
wと数平均分子量M
nとの商(PDI=M
w/M
n)を意味するとして理解される。
【0036】
ヒドロゲルにおける、本発明による使用に関して、ポリ-C
2〜C
4-アルキレングリコール及びポリ-C
2〜C
4-アルキレングリコールモノ-C
1〜C
22-アルキルエーテルから選択されるアルコール又はこれらのアルコールの混合物でエステル化されるポリイソブテンコハク酸のエステルが好ましく、そこでは、アルコールは、500〜15000ダルトンの範囲、特に、800〜10000ダルトンの範囲、とりわけ、1200〜5000ダルトンの範囲の数平均分子量を有する。
【0037】
さらに、ポリイソブテンコハク酸でエステル化されるアルコールが分岐していない、すなわち、直鎖ポリ-C
2〜C
4-アルキレングリコール及び直鎖ポリ-C
2〜C
4-アルキレングリコールモノ-C
1〜C
20-アルキルエーテルから選択される場合が有利であると判明した。分岐していない、すなわち、直鎖ポリ-C
2〜C
4-アルキレングリコール及び直鎖ポリ-C
2〜C
4-アルキレングリコールモノ-C
1〜C
20-アルキルエーテルは、以下の式(III)によって示すことができる:
【化4】
【0038】
ここで、Aは、先に定義した通りのC
2〜C
4-アルカンジイルであり、それは、同一であってもよいし、異なってもよく、好ましくは、1,2-エタンジイル及び1,2-プロパンジイルから選択される。R'は、水素又はC
1〜C
22-アルキル、特に、水素又はC
1〜C
10-アルキル、とりわけ、水素又はC
1〜C
4-アルキル、例えば、メチルである。変数nは、繰り返し単位[A-O]の平均数(数平均)を示し、典型的には、10〜350の範囲、特に、15〜200の範囲である。
【0039】
したがって、式Ia及びIb中の基Pagは、好ましくは、下式の基である:
【化5】
【0040】
(式中、A、R、及びnは、上で示した意味を有し、*は、ポリイソブテンコハク酸基の酸素原子への結合を示す)。
【0041】
式III又はPagの式において、式-A-O-の繰り返し単位は、同一であってもよいし、異なってもよい。式III又はPagの式に、式-A-O-の異なる繰り返し単位があった場合、これらは、ランダムに、又は複数、例えば、2、3、若しくは4ブロックに配列させることができる。本発明の特定の実施形態では、式III及びPagの式には、ランダムに配列させた、式-A-O-の異なる繰り返し単位がある。
【0042】
さらに、ポリイソブテンコハク酸でエステル化されるアルコールが、アルコールにおけるアルキレンオキシド繰り返し単位の総数に対して少なくとも50mol%の、特に、少なくとも70mol%の、式[CH
2CH
2O]の繰り返し単位から構成される場合が有利であると判明した。したがって、式III及びPagにおいて、式[CH
2CH
2O]の繰り返し単位の割合は、繰り返し単位A-Oの総数に対して、少なくとも50mol%、特に、少なくとも70mol%である。
【0043】
本発明の特定の実施形態では、ポリ-C
2〜C
4-アルキレングリコール若しくはポリ-C
2〜C
4-アルキレングリコールモノ-C
1〜C
20-アルキルエーテルの繰り返し単位A-Oのすべて若しくはほぼすべて、又は、式III及びPagにおける繰り返し単位A-Oのすべて若しくはほぼすべてが、式[CH
2CH
2O]の繰り返し単位である。
【0044】
本発明のさらに好ましい実施形態では、ポリイソブテンコハク酸でエステル化されるアルコール、特に、式IIIのアルコール又は基Pagは、
アルコールにおけるアルキレンオキシド繰り返し単位の総数に対して50mol%〜99mol%、特に、70mol%〜98mol%の式[CH
2CH
2O]の繰り返し単位と、
アルコールにおけるアルキレンオキシド繰り返し単位の総数に対して0.1mol%〜50mol%、特に、2mol%〜30mol%の式[A'-O]の繰り返し単位(ここで、A'は、C
3〜C
4-アルカンジイルである)、特に、式[CH
2CH(CH
3)O]の繰り返し単位と
を含む。
【0045】
この好ましい実施形態の一つの特定の変形では、互いに異なる繰り返し単位[CH
2CH
2O]及び[A'-O]は、ブロック様に配列させないが、ランダムな配置であるか、交互に配列させる。
【0046】
加えて、エステルのベースとなる、アルコール成分及びポリイソブテンコハク酸が、エステルが、平均で、10:1〜1:30の範囲、好ましくは、1.5:1〜1:20の範囲、特に、1:1〜1:10の範囲の、ポリイソブテン基対アルコール基の重量比を有するように選択される場合が有利であると判明した。
【0047】
本発明に従って使用するポリイソブテンコハク酸のエステルの調製は、ポリイソブテンコハク酸又はポリイソブテンコハク酸のエステル形成性誘導体を、エステル化条件下で、ポリ-C
2〜C
4-アルキレングリコール若しくはポリ-C
2〜C
4-アルキレングリコールモノ-C
1〜C
22-アルキルエーテル、又はそれらの混合物と反応させることにより、それ自体公知の方法で可能である。このための方法は、例えば、初めに引用したDE10125158及びWO2007/014915から、基本的に既知である。
【0048】
ポリイソブテンコハク酸の適切なエステル形成性誘導体は、ポリイソブテンコハク酸の酸ハロゲン化物及びC
1〜C
4-アルキルエステル、特に、ポリイソブテンコハク酸無水物である。
【0049】
本発明の一つの好ましい実施形態では、ポリイソブテンコハク酸無水物を、ポリ-C
2〜C
4-アルキレングリコール及びポリ-C
2〜C
4-アルキレングリコールモノ-C
2〜C
20-アルキルエーテルから選択されるアルコール、特に、式IIIのアルコール、又はこれらのアルコールの混合物と反応させることにより得ることができる、ポリイソブテンコハク酸のエステルが使用される。
【0050】
「ポリイソブテンコハク酸無水物」とは、以下、ポリイソブテンコハク酸の内部無水物、すなわち、コハク酸基の二つのカルボキシル基が1-オキソラン-2,5-ジオン-2-イル基を形成する物質を意味するとして理解される。このタイプのポリイソブテンコハク酸無水物は、特に、以下の式によって示すことができる:
【化6】
【0051】
(式中、PIB及びPIB'は、式Ia、Ib、IIa、及びIIbについて上で示した意味を有する)。
【0052】
好ましくは、エステルを製造するために使用するポリイソブテンコハク酸無水物は、無水物の総重量に対して少なくとも50重量%の、特に、少なくとも70重量%の、式IVaの無水物を含む。好ましくは、エステルを製造するために使用するポリイソブテンコハク酸無水物は、無水物の総重量に対して30重量%未満、特に、20重量%未満の、式IVbの無水物を含む。調製の結果として、ポリイソブテンコハク酸無水物は、ポリイソブテンを含み得る。ポリイソブテンの割合は、ポリイソブテンコハク酸無水物+ポリイソブテンの総量に対して、50重量%まで、しかし、好ましくは40重量%以下又は30重量%以下を占め得る。
【0053】
エステルを製造するために使用するポリイソブテンコハク酸無水物における、式IVa及びIVbの化合物の相対的な割合は、DIN53401に準じて測定される、ポリイソブテンコハク酸無水物の鹸化価に対応する。そのエステルの特性について、ポリイソブテンコハク酸無水物が、DIN53401に従って測定される、40〜140mgKOH/gの範囲、特に、70〜100mgKOH/gの範囲の鹸化価(SN)を有する場合が有利であると判明した。
【0054】
反応に使用するポリイソブテンコハク酸無水物は、例えば、DE2702604 A1、US5,883,196、US5,420,207、及びEP629638、並びに、M. Tessierらによる刊行物、Eur. Polym. J、20、1984、p.269〜280、及びH. Machら、Lubrication Science 12-2、1999、p.175〜185から既知である。
【0055】
オレフィン性不飽和ポリイソブテンを、無水マレイン酸と反応させることにより得ることができる、ポリイソブテンコハク酸無水物が好ましい。高反応性ポリイソブテンを、無水マレイン酸と反応させることにより得られる生成物が特に好ましい。「高反応性ポリイソブテン」とは、ポリイソブテン巨大分子の総数に対して少なくとも50mol%、しばしば、少なくとも60mol%、特に、少なくとも80mol%の末端配置された二重結合を有するポリイソブテンを意味するとして理解される。末端配置された二重結合は、ビニル二重結合[-CH=C(CH
3)
2](β-オレフィン)又はビニリデン二重結合[-CH-C(=CH
2)-CH
3](α-オレフィン)のいずれかであってよい。好ましい高反応性ポリイソブテンは、主にビニリデン二重結合を有する。高反応性ポリイソブテンは、市販されているもの、例えば、BASF SE製のGlissopal級のもの、例えば、Glissopal(登録商標)1000及びGlissopal(登録商標)1300、Glissopal(登録商標)2300である。
【0056】
反応に使用するポリ-C
2〜C
4-アルキレングリコール及びポリ-C
2〜C
4-アルキレングリコールモノ-C
2〜C
20-アルキルエーテルは、先行技術から同様に既知であり、また、例えば、商品名Pluriol(登録商標)で市販されているもの、例えば、Pluriol(登録商標)E級のもの、例えば、Pluriol(登録商標)E600、Pluriol(登録商標)E600S、Pluriol(登録商標)E1000、Pluriol(登録商標)E1000S、Pluriol(登録商標)E1500、Pluriol(登録商標)E3400、Pluriol(登録商標)E6000、Pluriol(登録商標)E8000、Pluriol(登録商標)E9000;Pluriol(登録商標)P級のもの、例えば、Pluriol(登録商標)E600、Pluriol(登録商標)E900、Pluriol(登録商標)E2000、Pluriol(登録商標)E4000;Pluriol(登録商標)A級のもの、例えば、Pluriol(登録商標)A1020E、Pluriol(登録商標)A2000E、Pluriol(登録商標)A3010E、Pluriol(登録商標)A5010E、Pluriol(登録商標)A1020PE;Pluronic(登録商標)、例えば、Pluronic(登録商標)PE級のもの、例えば、Pluronic(登録商標)PE3100、Pluronic(登録商標)PE3500、Pluronic(登録商標)PE4300、Pluronic(登録商標)PE6100、Pluronic(登録商標)PE6120、Pluronic(登録商標)PE6200、Pluronic(登録商標)PE6400、Pluronic(登録商標)PE6800、Pluronic(登録商標)PE7400、Pluronic(登録商標)PE8100、Pluronic(登録商標)PE9200、Pluronic(登録商標)PE9400、Pluronic(登録商標)PE10100、Pluronic(登録商標)PE10300、Pluronic(登録商標)PE10400及びPluronic(登録商標)PE10500であるか、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、2-メチル-1,2-プロピレンオキシド(=イソブチレンオキシド)などのC
2〜C
4-アルキレンオキシドの、塩基触媒による単独重合又は共重合により、標準の方法に準じて調製することができる。
【0057】
ポリイソブテンコハク酸無水物と、ポリ-C
2〜C
4-アルキレングリコール及びポリ-C
2〜C
4-アルキレングリコールモノ-C
2〜C
20-アルキルエーテルから選択されるアルコールとの反応は、DE10125158及びWO2007/014915に記載されている手順に準じて、それ自体公知の方法で行うことができる。
【0058】
このために、通常、ポリイソブテンコハク酸無水物を、ポリ-C
2〜C
4-アルキレングリコール及びポリ-C
2〜C
4-アルキレングリコールモノ-C
2〜C
20-アルキルエーテルから選択されるアルコールと、各場合において、ポリイソブテンコハク酸無水物における無水物基に基づいて、2:1〜1:2、特に、1.5:1〜1:1.5、とりわけ、1.05:1〜1:1.2のモル比で反応させる。
【0059】
反応は、溶液中で、又は希釈せずに行うことができる。適切な溶媒の例は、芳香族炭化水素、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ナフタレン、tert-ブチルベンゼン、及びそれらの混合物;(シクロ)脂肪族炭化水素、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、テトラリン、及びそれらの混合物;ハロゲン化炭化水素、例えば、ジクロロメタン、1,1-ジクロロエタン、1,2-ジクロロエタン、1,1-ジクロロエテン、1,2-ジクロロエテン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン、及びそれらの混合物;並びに、前述の芳香族炭化水素と(シクロ)脂肪族炭化水素との混合物、及び前述の炭化水素とハロゲン化炭化水素との混合物である。
【0060】
反応は、触媒の存在下で、又は触媒の非存在下で行うことができる。通常、反応は、60〜250℃の範囲、しばしば、80〜200℃の範囲、特に、100〜180℃の範囲の温度で行う。適切な触媒は、特に、塩基化合物、例えば、アルカリ金属及びアルカリ土類金属酸化物、水酸化物、炭酸塩及び炭酸水素塩;並びに、第三級有機アミン、例えば、トリアルキルアミン、例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、メチルジイソプロピルアミン、トリブチルアミン、ジメチル-tert-ブチルアミン;及び、環状アルキルアミン、例えば、N-メチルモルホリン、N-メチルピペリジン、N-メチルピロリジン、並びにトリエチレンジアミンである。必要な場合、触媒は、ポリイソブテンコハク酸無水物における無水物基に対して0.1〜20mol%の量で使用する。
【0061】
導入部ですでに述べた通り、ポリイソブテンコハク酸と、ポリ-C
2〜C
4-アルキレングリコール及びポリ-C
2〜C
4-アルキレングリコールモノ-C
1〜C
22-アルキルエーテルから選択されるアルコールとのエステルは、安定なヒドロゲルを水と形成する。すなわち、それらは、ゲル形成剤として使用することができる。
【0062】
したがって、本発明はまた、水(以下、成分Bとも呼ぶ)の他に、ヒドロゲルを形成するのに十分な量の上記した通りの、ポリイソブテンコハク酸とポリ-C
2〜C
4-アルキレングリコール及びポリ-C
2〜C
4-アルキレングリコールモノ-C
1〜C
22-アルキルエーテルから選択されるアルコールとの少なくとも一つのエステルを含むヒドロゲルに関する。
【0063】
ヒドロゲルを形成するのに必要な成分Aの量は、当然のことながら、ヒドロゲルの他の成分に、及び成分Aの正確な性質に依存し、また、当業者により、通常の実験を通して容易に確認できる。
【0064】
通常、他の添加剤に関係なく、成分A対成分B(すなわち水)との重量比が、4:1〜1:6の範囲、しばしば、3:1〜1:4の範囲、特に、2:1〜1:3の範囲にある場合、安定なヒドロゲルが得られる。
【0065】
本発明によるヒドロゲルにおいて、成分Aは、概して、ヒドロゲルの総重量に対して、15〜80重量%、しばしば、20〜75重量%、特に、25〜65重量%を占める。
【0066】
本発明によるヒドロゲルにおいて、成分A及びBの総量は、概して、ヒドロゲルの少なくとも70重量%、特に、少なくとも80重量%である。
【0067】
典型的には、本発明によるヒドロゲルは、
a.ヒドロゲルの総重量に対して15〜80重量%、しばしば、20〜75重量%、特に、25〜65重量%の成分Aと、
b.ヒドロゲルの総重量に対して20〜85重量%、しばしば、25〜80重量%、特に、35〜75重量%の成分Bとしての水と
を含む。
【0068】
前述の成分の他に、本発明によるヒドロゲルは、成分A及びBと異なり、また、所望の使用目的に向けられる1以上のさらなる成分を含むことができる。これらの成分を、以下、成分Cとも呼ぶ。
【0069】
成分Cの例は、香料、及び洗浄剤に存在する通例の添加剤、例えば、界面活性剤、染料、保存剤、消毒剤、錯化剤、増粘剤、湿潤剤、崩壊剤、泡安定剤、及び、ライムスケール又は尿石を溶解する物質、並びに、前述の物質の混合物である。
【0070】
したがって、本発明の一実施形態は、成分A及び水(成分B)の他に、好ましくは、香料、界面活性剤、染料、保存剤、消毒剤、錯化剤、増粘剤、湿潤剤、崩壊剤、泡安定剤、及び、ライムスケール又は尿石を溶解する物質、並びに、それらの混合物から選択される、成分Cとしての少なくとも一つのさらなる成分を含むヒドロゲルに関する。
【0071】
成分Cの割合は、概して、ヒドロゲルの総重量に対して30重量%、しばしば、25重量%、特に、20重量%を超えず、所望により、典型的には、0.1〜30重量%の範囲、特に、1〜20重量%の範囲にある。
【0072】
成分Cの性質は、所望の使用目的により、それ自体公知の方法で制御される。
【0073】
したがって、本発明の一実施形態は、
a.ヒドロゲルの総重量に対して15〜79.9重量%、特に、20〜74.5重量%、とりわけ、25〜64重量%の成分Aと、
b.ヒドロゲルの総重量に対して20〜84.9重量%、特に、25〜79.5重量%、とりわけ、35〜74重量%の成分Bとしての水と、
c.ヒドロゲルの総重量に対して0.1〜30重量%、特に、0.5〜25重量%、とりわけ、1〜20重量%の、成分A及びBと異なる少なくとも一つのさらなる成分(以下成分Cとも呼ぶ)と
を含むヒドロゲルに関するものであり、そこでは、成分A、B及びCの総量が100重量%である。
【0074】
本発明の一つの好ましい実施形態では、ヒドロゲルは、少なくとも1種の香料を含む。本発明によるヒドロゲル中に存在し得る適切な香料は、合成香料、半合成香料混合物、及び天然香料オイルを含む。合成香料の例は、エステル、エーテル、アルデヒド、ケトン、アルコール、及び炭化水素タイプの合成生成物である。天然香料としては、特に、植物源から入手できる香油が挙げられる。心地よい香調を一緒に生じる、異なる香料の混合物を使用することが好ましい。
【0075】
本発明の一つの好ましい実施形態では、本発明によるヒドロゲルは、少なくとも1種の界面活性剤を含む。適切な界面活性剤は、典型的には、アニオン性、非イオン性、両性、及びカチオン性界面活性剤、並びに、それらの混合物から選択される。所望により、本発明によるヒドロゲルは、好ましくは、ヒドロゲルの総重量に対して0.01〜30重量%の量の界面活性剤を含む。
【0076】
本発明によるヒドロゲルは、一般に保存剤としても働くことができる、1種以上の抗菌活性成分をさらに含むことができる。
【0077】
本発明によるヒドロゲルは、ライムスケール又は尿石を溶解する物質をさらに含むことができる。これらとしては、水溶性ビルダー、及びそれと酸との混合物が挙げられる。
【0078】
本発明によるヒドロゲルはまた、1種以上の従来の増粘剤を含むこともできる。これに適しているものは、原則として、洗剤及び洗浄剤において先行技術で使用されているすべての粘度調節剤である。本発明の一つの好ましい実施形態では、ヒドロゲルは、従来の増粘剤を全く含まない。
【0079】
本発明によるヒドロゲルはまた、相対的に大きなせん断応力下でさえ、非常に寸法的に安定である。すなわち、円錐/平板形状及び10
2〜10
4Paのせん断応力範囲を有するせん断応力制御型回転式粘度計を使用して30℃で測定される、30℃及び10
2Paのせん断応力でのそれらの変形可能性(deformability)は、典型的には、5%未満、特に、1%未満である。弾性変形範囲の限界としての降伏点は、通常、少なくとも10
3Paの、例えば、10
3〜10
6Paの範囲のせん断応力で、30℃である。
【0080】
本発明によるヒドロゲルは、典型的には、10
2〜10
4Paのせん断応力範囲の、円錐/平板形状を有するせん断応力制御型回転式粘度計を使用して30℃で測定される、10
5〜10
10Pa・sの範囲、しばしば、10
5〜10
8Pa・sの範囲の粘度を有する。
【0081】
本発明によるヒドロゲルは、極性表面、特に、ガラス又はセラミックなどの無機表面への良好な付着性を有し、水の作用時に直ちに洗い落されないが、長く頻繁に繰り返される水の作用の後にのみ、残留物を残すことなく溶解する。さらに、それらは、香料、又は衛生陶器の洗浄又は除菌を促進する他の物質と、不利益なしに配合することができる。したがって、本発明はまた、WO99/66021、WO02/26925、又はEP1318191に記載されているように、ホームケア製品のための、特に、香料を放出する組成物、例えば、香料放出ペーストを製造するための、又は、サニタリー分野用の洗浄及びケア組成物、とりわけ、WC及びビデで適用するペーストを製造するための本明細書に記述するヒドロゲルの使用に関する。
【0082】
本発明によるヒドロゲルは、本明細書に記述した通りの、ポリイソブテンコハク酸と、ポリ-C
2〜C
4-アルキレングリコール及びポリ-C
2〜C
4-アルキレングリコールモノ-C
2〜C
20-アルキルエーテルから選択されるアルコールとの少なくとも一つのエステルを、場合により成分Cの構成成分のいくつか又はすべてと共に、水性液体に組み入れることによって、簡単に調製することができ、その水性液体は、所望により、水の他に成分Cの構成成分のいくらかの量又は総量をすでに含んでいることができる。
【0083】
組み入れは、水、又は、場合により所望の成分Cの構成成分のいくらかの量若しくは総量を水の他に含む水性液体を、単に混合することによって行うことができる。しかし、場合により所望の成分Cの構成成分のいくらか若しくはすべてを場合により含む、成分Aの溶液を水又は水性液体に組み入れ、次いで、溶媒を除去することも可能である。
【0084】
成分A、及び場合よりさらなる成分の水又は水性液体への組み入れは概して、10〜100℃の範囲の温度で行う。混合装置の使用は、有利であり得るが、概して必要ではない。
【0085】
以下の図及び実施例は、本発明をより詳細に示すのに役立つ。
【実施例】
【0086】
I 略語
EO:エチレンオキシド
PO:プロピレンオキシド
PIBSA:ポリイソブテンコハク酸無水物
M
n:数平均分子量
M
w:重量平均分子量
SN:鹸化価
AN:酸価
OHN:OH価
ST:表面張力。
【0087】
II 分析
鹸化価SNを、DIN53401:1998-06に準じて測定した。
【0088】
酸価ANを、トルエンとエタノールとの混合物中のポリイソブテンコハク酸エステルの滴定により測定した。ANは、1gのサンプルを中和するために使いきった水酸化カリウムのmg数を示す。
【0089】
OH価を、DIN53401:1971-12に準じて測定した。
【0090】
ポリイソブテンコハク酸エステルの粘度を、60〜90℃の温度で、せん断応力制御型回転式レオメーター(MCR300、平板/平板形状、φ25mm、h=1mm)により、並びに、70℃及び90℃の温度で、スタンピングキャピラリー粘度計(Rosand、KVMジオメトリー、環状キャピラリー:L/R=294.70、L=150.00mm、R=0.509mm)により調べた。
【0091】
ポリイソブテンコハク酸エステル及びそれから製造して得られたヒドロゲルの変形可能性及び降伏点を、30℃の温度で、せん断応力制御型回転式粘度計(Physika MCR、平板/平板形状、上方平板d=25mm、間隔:2mm)により測定した。
【0092】
表面張力STを、DIN53914:1980-03に準じたリング法に従って測定した。STを、長さの単位当たりの表面での力と定義し、STは、単位がmN/m(10
-3ニュートン/メートル)である。
【0093】
サンプル11の最大吸水能力を、室温及び4℃の両方で、脱イオン水(脱塩水)及び非脱イオン水(Jayco溶液)の両方を用いて試験した。
【0094】
このために、約3gのサンプルを、ペトリ皿に入れ、加熱オーブン内で、80℃で溶かした。サンプルを冷却して室温に戻した後、脱塩水又はJayco溶液を添加し、サンプル対水の比を、1:9にした。次いで、サンプル11の膨潤挙動を、重量測定で測定した。
【0095】
Jayco溶液は、以下の塩濃度を含んでいた:2g/l塩化カリウム、2g/l硫酸ナトリウム、0.85g/lリン酸二水素アンモニウム、0.15g/lリン酸水素二アンモニウム、0.5g/l塩化マグネシウム六水和物、0.25g/l塩化カルシウム二水和物。
【0096】
III 供給材料
ポリイソブテンコハク酸無水物1:ポリイソブテン(M
n=1000g/mol)と、無水マレイン酸とを反応させることにより調製された、鹸化価SNが87.5mgKOH/gであるPIBSA(PIBSA1000)
ポリイソブテンコハク酸無水物2:ポリイソブテン(M
n=2300g/mol)と、無水マレイン酸とを反応させることにより調製された、鹸化価SNが44mgKOH/gであるPIBSA(PIBSA2300)
ポリイソブテンコハク酸無水物3:ポリイソブテン(M
n=1000g/mol)と、無水マレイン酸とを反応させることにより調製された、鹸化価SNが84mgKOH/gであるPIBSA
ポリイソブテンコハク酸無水物4:ポリイソブテン(M
n=1000g/mol)と、無水マレイン酸とを反応させることにより調製された、鹸化価SNが105mgKOH/gであるPIBSA
ポリイソブテンコハク酸無水物5:ポリイソブテン(M
n=550g/mol)と、無水マレイン酸とを反応させることにより調製された、鹸化価SNが145mgKOH/gであるPIBSA(PIBSA550)
ポリエーテル1:ランダムなポリ(エチレングリコール-co-プロピレングリコール)モノメチルエーテル(EO/PO比10、M
n=2587g/mol、SN=21.6mgKOH/g)
ポリエーテル1の調製:69.7gのジエチレングリコールモノメチルエーテル、及び3.1gの50重量%水酸化カリウム水溶液を、最初の装入物としてオートクレーブに入れた。混合物を80℃に加熱し、水を除去するために10mbarの真空を2時間適用した。次いで、その系を、窒素で不活性にし、反応混合物を130℃に加熱した。この温度で、1277.8gのエチレンオキシド(EO)と168.4gのプロピレンオキシド(PO)との混合物を、5時間にわたって注入し、その後、混合物を、130℃で2時間撹拌した。次いで、揮発性成分を、真空中で、反応混合物から除去すると、本質的にKOH及びランダムなEO/POコポリマーからなる、1570gの白色固体が得られた。
【0097】
ポリエーテル2:ポリエーテル1の調製に準じて調製した、ランダムなポリ(エチレングリコール-co-プロピレングリコール)モノメチルエーテル(EO/PO比20:3、M
n=1175g/mol)。
【0098】
ポリエーテル3:ポリエーテル1の調製に準じて調製した、ランダムなポリ(エチレングリコール-co-プロピレングリコール)モノメチルエーテル(EO/PO比50:3、M
n=2497g/mol、SN= 22.7mgKOH/g)。
【0099】
ポリエーテル4:ポリエーテル1の調製に準じて調製した、ランダムなポリ(エチレングリコール-co-プロピレングリコール)モノメチルエーテル(EO/PO比75:7.5、M
n=3860g/mol、SN= 16.8mgKOH/g)。
【0100】
ポリエーテル5:ポリエーテル1の調製に準じて調製した、ランダムなポリ(エチレングリコール-co-プロピレングリコール)モノメチルエーテル(EO/PO比10、M
n=5106g/mol、SN= 13.2mgKOH/g)。
【0101】
ポリエーテル6:ポリエーテル1の調製に準じて調製した、ランダムなポリ(エチレングリコール-co-プロピレングリコール)モノメチルエーテル(EO/PO比52:3、M
n=2623g/mol、SN= 23.9mgKOH/g)。
【0102】
ポリエーテル7:ポリエチレングリコール、M
n=1500g/mol
ポリエーテル8:ポリエチレングリコール、M
n=6000g/mol
ポリエーテル9:ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、M
n=2000g/mol
ポリエーテル10:ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、M
n=3010g/mol
ポリエーテル11:ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、M
n=5010g/mol
ポリエーテル12:ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、M
n=1020g/mol
ポリエーテル13:ポリ(エチレングリコール-co-プロピレングリコール)モノメチルエーテル、M
n=1020g/mol、モル比EO/PO1:1
ポリエーテル14:ポリエチレングリコール、M
n=600g/mol
ポリエーテル15:ポリエチレングリコール、M
n=1000g/mol
界面活性剤:非イオン性界面活性剤
IV 調製例
調製例1:ポリイソブテンコハク酸エステル
ポリイソブテンコハク酸無水物2(0.0506mol、129g)を、希釈することなく、140℃の温度で、ポリエーテル7(0.0506mol、75.9g)と反応させた。反応時間は、3時間であった。得られたコポリマーの酸価は、12.6mgKOH/gであった。
【0103】
調製例2〜16
調製例2〜16のポリイソブテンコハク酸エステルは、調製例1に準じた方法で調製した。供給材料、相対的使用量、及び特性を、以下の表1にまとめる。
【表1】
【0104】
調製例11からのポリイソブテンコハク酸エステルの粘弾性挙動の調査は、10
-3〜10
2s
-1の範囲、特に、10
-3〜10
1s
-1の範囲のせん断速度で、60〜90℃の温度範囲において、ニュートン粘弾性挙動、及び0〜10
3Pa・sの範囲の粘度、特に、6〜400Pa・sの粘度を明らかにした。10
2s
-1を超えるせん断速度上で、粘度は、2Pa・s未満に直線的に低下する(
図1を参照されたい)。
【0105】
調製例11及び12からのポリイソブテンコハク酸エステルの粘弾性挙動の調査は、粘度の温度プロファイルが、ポリ-C
2〜C
4-アルキレングリコール及びポリ-C
2〜C
4-アルキレングリコールモノ-C
2〜C
20-アルキルエーテルから選択されるアルコールの分子量に依存することを示した。調製例12(黒)からのエステルは、調製例11(グレー)からのエステルよりも高い温度依存性を示す(
図2を参照されたい)。
【0106】
調製例11からのポリイソブテンコハク酸エステルの最大吸水能力を、以下の表2に示す。
【表2】
【0107】
V ヒドロゲル
一般的な調製手順。
【0108】
ポリイソブテンコハク酸エステルを、70℃の温度で溶かし、表3に示した量の温水、及び場合により、界面活性剤で希釈した。すべての場合において、透明なヒドロゲルが形成された。
【0109】
例1:
一般的な調製手順に準じて、水/界面活性剤で希釈することにより、調製例11のポリイソブテンコハク酸エステルから、例21のゲルを調製した。次いで、ヒドロゲルを、粘度測定により分析した。例21の結果を、
図4及び6に示す。
【表3】
(付記)
(付記1)
ポリイソブテンコハク酸とポリ-C2〜C4-アルキレングリコール及びポリ-C2〜C4-アルキレングリコールモノ-C1〜C20-アルキルエーテルから選択されるアルコールとのエステルの、ヒドロゲルにおけるゲル形成剤としての使用。
(付記2)
エステルのポリイソブテン基が500〜5000ダルトンの範囲の数平均分子量を有する、付記1に記載の使用。
(付記3)
アルコールが500〜15000ダルトンの範囲の数平均分子量を有する、付記1又は2に記載の使用。
(付記4)
アルコールが直鎖ポリ-C2〜C4-アルキレングリコール及び直鎖ポリ-C2〜C4-アルキレングリコールモノ-C1〜C20-アルキルエーテルから選択される、付記1〜3のいずれか一つに記載の使用。
(付記5)
アルコールが、アルコール中のアルキレンオキシド繰り返し単位の総数に対して少なくとも50mol%の式[CH2CH2O]の繰り返し単位から構成される、付記1〜4のいずれか一つに記載の使用。
(付記6)
アルコールが、アルコール中のアルキレンオキシド繰り返し単位の総数に対して0.1〜50mol%の式[CH2CH(CH3)O]の繰り返し単位を有する、付記5に記載の使用。
(付記7)
エステルが、平均で、10:1〜1:30の範囲のポリイソブテン基対アルコール基の重量比を有する、付記1〜6のいずれか一つに記載の使用。
(付記8)
エステルが、ポリイソブテンコハク酸無水物と、ポリ-C2〜C4-アルキレングリコール及びポリ-C2〜C4-アルキレングリコールモノ-C1〜C22-アルキルエーテルから選択されるアルコールから選択されるアルコール又はこれらのアルコールの混合物とを反応させることにより得ることができる、付記1〜7のいずれか一つに記載の使用。
(付記9)
ポリイソブテンコハク酸無水物が40〜140mgKOH/gの範囲の鹸化価を有する、付記8に記載の使用。
(付記10)
ポリイソブテンコハク酸無水物が、ポリイソブテン基一つ当たり二つのコハク酸基を有する20重量%未満のポリイソブテンコハク酸を含む、付記8又は9に記載の使用。
(付記11)
成分Aとしての、ヒドロゲルを形成するのに十分な量の付記1〜10のいずれか一つに記載のポリイソブテンコハク酸とポリ-C2〜C4-アルキレングリコール及びポリ-C2〜C4-アルキレングリコールモノ-C1〜C22-アルキルエーテルから選択されるアルコールとの少なくとも一つのエステルと、
成分Bとしての水と
を含むヒドロゲル。
(付記12)
成分A対成分Bの重量比が4:1〜1:6の範囲にある、付記11に記載のヒドロゲル。
(付記13)
成分AとBとの総量がヒドロゲルの少なくとも70重量%を占める、付記11又は12に記載のヒドロゲル。
(付記14)
a.ヒドロゲルの総重量に対して15〜80重量%の成分Aと、
b.ヒドロゲルの総重量に対して20〜85重量%の水と
を含む、付記11〜13のいずれか一つに記載のヒドロゲル。
(付記15)
香料、界面活性剤、染料、保存剤、消毒剤、錯化剤、増粘剤、湿潤剤、崩壊剤、泡安定剤、及び、ライムスケール又は尿石を溶解する物質から選択される少なくとも1種のさらなる成分Cを含む、付記11〜14のいずれか一つに記載のヒドロゲル。
(付記16)
円錐/平板形状及び102〜104Paのせん断応力範囲を有するせん断応力制御型回転式粘度計を用いて30℃で測定される、30℃で、105〜1010Pa・sの範囲の粘度を有する、付記11〜15のいずれか一つに記載のヒドロゲル。
(付記17)
ポリイソブテンコハク酸とポリ-C2〜C4-アルキレングリコール及びポリ-C2〜C4-アルキレングリコールモノ-C1〜C22-アルキルエーテルから選択されるアルコールとの少なくとも一つのエステルを水性液体へ組み入れることを含む、付記11〜16のいずれか一つに記載のヒドロゲルを製造するための方法。
(付記18)
家庭用の洗浄剤及びケア組成物における、化粧品における、又は医療用品のための、付記10〜16のいずれか一つに記載のヒドロゲルの使用。