特許第6050384号(P6050384)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6050384
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】多層フィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/082 20060101AFI20161212BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20161212BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20161212BHJP
   B05D 7/14 20060101ALI20161212BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20161212BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20161212BHJP
   H01L 31/049 20140101ALI20161212BHJP
【FI】
   B32B15/082 B
   B32B9/00 A
   B32B27/30 D
   B05D7/14 G
   B05D7/00 C
   B05D7/24 302L
   H01L31/04 562
【請求項の数】14
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-556479(P2014-556479)
(86)(22)【出願日】2013年2月7日
(65)【公表番号】特表2015-511185(P2015-511185A)
(43)【公表日】2015年4月16日
(86)【国際出願番号】KR2013001017
(87)【国際公開番号】WO2013119069
(87)【国際公開日】20130815
【審査請求日】2014年10月6日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0012932
(32)【優先日】2012年2月8日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2013-0014007
(32)【優先日】2013年2月7日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヒュン・チョル・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヒュン・ソン・コ
【審査官】 細井 龍史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−251765(JP,A)
【文献】 特開昭61−007360(JP,A)
【文献】 特開平10−102011(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/139052(WO,A1)
【文献】 特表2013−525164(JP,A)
【文献】 特開平06−322316(JP,A)
【文献】 特開平02−004868(JP,A)
【文献】 米国特許第03306800(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00 − 7/26
B32B 1/00 −43/00
H01L 31/049
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バリアフィルムと;
前記バリアフィルム上部のプライマー層と;
前記プライマー層上部のフッ素重合体コーティング層と;を含み、
前記プライマー層は、フッ素重合体と相溶性を有する共重合体を含み、前記フッ素重合体と相溶性を有する共重合体は、シランカップリング剤、チタン系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤またはアルミニウム系カップリング剤と共重合されて形成される官能基を含み、前記フッ素重合体コーティング層は、ビニリデンフルオライド(VDF、Vinylidene Fluoride)及びヘキサフルオロプロピレン(HFP、Hexafluoropropylene)を重合された形態で含むフッ素重合体,及びビニリデンフルオライド(VDF、Vinylidene Fluoride)及びクロロトリフルオロエチレン(CTFE、chlorotrifluoroethylene)を重合された形態で含むフッ素重合体を含み、
前記フッ素重合体と相溶性を有する共重合体は、(メタ)アクリル系単量体及びシランカップリング剤、チタン系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤またはアルミニウム系カップリング剤の重合された形態でなされたものであり、
前記バリアフィルムは、金属薄膜または無機蒸着フィルムである、多層フィルム。
【請求項2】
上記バリアフィルムと上記プライマー層との界面にSi−O、Ti−O、Zr−OまたはAl−O結合が形成される、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項3】
上記バリアフィルムと上記プライマー層との界面に水素結合が形成される、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項4】
上記(メタ)アクリル系単量体及びシランカップリング剤、チタン系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤またはアルミニウム系カップリング剤の混合比率は、質量比を基準として1:99〜99:1である、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項5】
上記プライマー層は、フッ素重合体と相溶性を有する共重合体のコーティング層である、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項6】
上記フッ素重合体の重量平均分子量は、50,000〜1,000,000である、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項7】
上記フッ素重合体の融点が80℃〜175℃である、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項8】
上記フッ素重合体コーティング層は、顔料、充填剤、UV安定剤、熱安定剤、分散剤または障壁粒子をさらに含む、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項9】
上記バリアフィルムの下部に基材(substrate)をさらに含む、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項10】
上記バリアフィルムと基材との間に接着剤層をさらに含む、請求項に記載の多層フィルム。
【請求項11】
バリアフィルムの上部にフッ素重合体と相溶性を有する共重合体を含むプライマーコーティング液をコーティングし、プライマー層を形成する段階と、
上記プライマー層の上部にフッ素重合体コーティング用組成物をコーティングし、フッ素重合体コーティング層を形成する段階とを含み、
上記プライマーコーティング液の上記フッ素重合体と相溶性を有する共重合体は、シランカップリング剤、チタン系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤またはアルミニウム系カップリング剤と共重合されて形成される官能基を含み、
前記フッ素重合体コーティング用組成物は、ビニリデンフルオライド(VDF、Vinylidene Fluoride)及びヘキサフルオロプロピレン(HFP、Hexafluoropropylene)を重合された形態で含むフッ素重合体,及びビニリデンフルオライド(VDF、Vinylidene Fluoride)及びクロロトリフルオロエチレン(CTFE、chlorotrifluoroethylene)を重合された形態で含むフッ素重合体を含み、
前記フッ素重合体と相溶性を有する共重合体は、(メタ)アクリル系単量体及びシランカップリング剤、チタン系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤またはアルミニウム系カップリング剤の重合された形態でなされたものであり、
前記バリアフィルムは、金属薄膜または無機蒸着フィルムである、多層フィルムの製造方法。
【請求項12】
上記フッ素重合体コーティング用組成物は、フッ素重合体及び沸点が200℃以下の溶媒を含む、請求項11に記載の多層フィルムの製造方法。
【請求項13】
請求項1に記載の多層フィルムを含む光電池モジュール製造用副資材。
【請求項14】
請求項13に記載の光電池モジュール製造用副資材を含む光電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層フィルム、その製造方法、光電池モジュール製造用副資材、及び光電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、地球環境問題と化石燃料の枯渇などによる新再生エネルギー及び清浄エネルギーに対する関心が高まっていて、そのうち、太陽光エネルギーは、環境汚染問題及び化石燃料枯渇問題を解決することができる代表的な無公害エネルギー源として注目されている。
【0003】
太陽光発電原理が適用される光電池は、太陽光を電気エネルギーに転換させる素子であって、太陽光を容易に吸収することができるように外部環境に長期間露出されなければならないので、セルを保護するためのさまざまなパッケージングが行われ、ユニット(unit)形態で製造され、このようなユニットを光電池モジュール(Photovoltaic Modules)という。
【0004】
光電池モジュールは、長期間外部環境に露出された状態でも、光電池を安定的に保護することができるように、耐候性及び耐久性に優れた裏面シートを使用しなければならない。光電池用裏面シートは、光電池封止材として使用されるエチレンビニルアセテート(EVA、ethylene vinyl acetate)と接合されながら、光電池のセルを物理的に保護すると共に、セル内部への水分浸透を防止し、電気的に絶縁を維持し、光電池モジュールが25年以上出力特性の低下なしに作動することができるようにする役目をする。したがって、光電池用裏面シートは、UV抵抗性、耐候性に優れていて、使用期間の間に機械的特性、水分遮断性、電気絶縁性などの低下が少ない、すなわち長期信頼性に優れていることが要求される。
【0005】
このような特性を満足するために、現在は、PET(Polyethylene Terephtalate)フィルムの両面にPVF(Polyvinyl Fluoride)フィルムを積層した3層構造の製品が広範に使用されている。しかし、従来技術の場合、製造方法が複雑であり、相変らず水分に脆弱なことがあり、光電池の長期信頼性で影響を及ぼすおそれがある。
【0006】
また、最近、PVFフィルムの代わりに、PVDF(Polyvinylidene Fluoride)やCTFE(Chlorotrifluoro ethylene)、ECTFE(Ethylene Chlorotrifluoro ethylene)などの他のフッ素重合体をフィルム加工して製造された光電池用裏面シートの比率が徐々に増加しているが、フッ素重合体の場合、接着力が良くない問題が相変らず存在する。
【0007】
したがって、水分遮断性に優れていて、長期間接着力を維持し、優れた耐久性及び耐候性を有しながらも、製造方法が簡単で、製造費用を節減することができ、光電池モジュールの生産性及び品質を向上させることができる光電池用裏面シートに対する要求は持続されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、多層フィルム、その製造方法、光電池用裏面シート、及び光電池モジュールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、バリアフィルムと、上記バリアフィルム上部のプライマー層と、上記プライマー層上部のフッ素重合体コーティング層とを含む多層フィルムを提供する。上記プライマー層は、フッ素重合体と相溶性を有する共重合体を含み、上記フッ素重合体と相溶性を有する共重合体は、シランカップリング剤、チタン系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤またはアルミニウム系カップリング剤と共重合されて形成される官能基を含む。
【0010】
また、本発明は、バリアフィルムの上部にフッ素重合体と相溶性を有する共重合体を含むプライマーコーティング液をコーティングし、プライマー層を形成する段階と、上記プライマー層の上部にフッ素重合体コーティング用組成物をコーティングする段階とを含む多層フィルムの製造方法を提供する。
【0011】
本発明の多層フィルムは、例えば、多様な光電池モジュール製造用副資材として使用されることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、耐湿性に優れた金属薄膜や無機蒸着フィルムのようなバリアフィルムを含み、耐候性に優れたフッ素重合体層をコーティングによってバリアフィルムに形成し、バリアフィルムとフッ素重合体層との間のシランなどカップリング剤によって変性された相溶性共重合体を含むプライマー層によって接着力を確保し、耐湿性及び耐候性に優れていると同時に、接着力に優れた多層フィルムを提供することができる。また、上記多層フィルムは、低沸点溶媒を使用して低い乾燥温度で低費用で製造することができ、生産性を高め、熱変形または熱衝撃などによる製品の品質低下を防止することができる。このような本発明の多層フィルムは、例えば、光電池用裏面シートなどに有用に使用され、長期間外部環境に露出しても、優れた耐久性を有する光電池モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の1つの例示による多層フィルムを示す断面図である。
図2】本発明の実施例1による多層フィルムのPCTを進行する前と後の表面を観察した図である。
図3】本発明の比較例2による多層フィルムのPCTを進行する前と後の表面を観察した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付する図面を参照して本発明の具現例をさらに具体的に説明する。また、本発明を説明するに際して、関連した公知の汎用的な機能または構成に対する詳細な説明を省略する。また、添付の図面は、本発明の理解を助けるための概略的なものであって、本発明をさらに明確に説明するために説明と関系ない部分は省略し、図面で様々な層及び領域を明確に表現するために厚さを拡大して示し、図面に表示された厚さ、サイズ、比率などによって本発明の範囲が制限されない。
【0015】
本発明の一具現例による多層フィルムは、バリアフィルムと;上記バリアフィルム上部のプライマー層と;上記プライマー層上部のフッ素重合体コーティング層と;を含む。
【0016】
上記プライマー層は、フッ素重合体と相溶性を有する共重合体を含み、上記フッ素重合体と相溶性を有する共重合体は、シランカップリング剤、チタン系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤またはアルミニウム系カップリング剤と共重合されて形成される官能基を含んで、下部のバリアフィルムと上部のフッ素重合体コーティング層との結合力を増進させることができる。
【0017】
上記バリアフィルムは、水分遮断特性を有するフィルムであって、その例としては、金属薄膜または無機蒸着フィルムを挙げることができる。具体的に、上記金属薄膜としては、アルミニウムホイル、銅ホイルまたはステンレスホイルなどを使用することができ、上記無機蒸着フィルムとしては、ITO(Indium tin oxide)、IZO(Indium zinc oxide)、SiOx(Silicon oxide)またはAlOx(Aluminum oxide)などを使用することができる。本発明の一具現例で、上記無機蒸着フィルムの場合、PETなどのような基材の上部に上記物質よりなる無機蒸着層を含むものを使用することができる。このようなバリアフィルムは、表面にヒドロキシ基などを含む。
【0018】
上記バリアフィルムは、水分遮断特性に優れているが、外部気候による耐食性、耐候性などにいては脆弱な面があり、光電池用裏面シートなどの光電池モジュール製造用副資材に使用するためには、耐候性樹脂であるフッ素重合体層で表面を保護する必要がある。フッ素重合体層で金属のようなバリアフィルムの表面を保護するためには、大きくフッ素重合体フィルムをバリアフィルムに付着するか、またはバリアフィルムにフッ素重合体をコーティングする方法があり得る。
【0019】
前者(フッ素重合体フィルムをバリアフィルムに付着する方法)は、まず、フッ素重合体を押出(extrusion)法やキャスティング(casting)法によってフィルムを製造した後、接着剤を利用してバリアフィルムにフッ素重合体フィルムを付着する方法であるが、これは、高価のフィルム製造設備を必要とし、接着剤を使用するので、接着剤のコーティング及びラミネート工程が必要であり、工程でのフィルム取り扱い性のために実際要求されるフッ素重合体層の厚さよりさらに厚いフィルムを使用するようになり、不要な損失が発生するようになり、フッ素重合体層にフィラーなどの多様な添加剤を添加することに制約が生じ、高い工程温度を必要とする短所がある。
【0020】
後者(バリアフィルムにフッ素重合体をコーティングする方法)は、金属薄膜または無機蒸着フィルムのようなバリアフィルムの表面にコーティングのためにフッ素重合体ペイントを使用し、従来のフッ素重合体ペイントは、エポキシプライマーをコーティングした後、フッ素重合体をコーティングするようになり、この際、それぞれの工程温度が230℃以上であり、ベイキング工程は、300℃以上になり、工程上短所がある。また、エポキシプライマーの場合、本発明の具現例によるシランなどの変性アクリル系プライマーとは異なって、フッ素重合体との相溶性が低くて、フッ素重合体との接着力が低い。本発明のプライマーは、フッ素重合体と相溶性を有する共重合体であって、シランカップリング剤、チタン系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤またはアルミニウム系カップリング剤と共重合されて形成される官能基を含んで、親水性であるヒドロキシ基を有するバリアフィルムの表面を疎水性に改質することができ、これにより、バリアフィルムの界面で耐水性が優秀になって、水分による内部食性が優秀になる。また、このような特定の官能基を有する疎水性のプライマー層を形成することによって、フッ素重合体コーティング液と親水性のバリアフィルムを連結することができる役目をするようになる。
【0021】
本発明者は、従来技術とは異なって、200℃以下の低温工程でもフッ素重合体コーティング層がバリアフィルムに対して高い界面接着力を有することができるように特定の共重合体を含むプライマー層を導入した。本発明の具現例で使用することができるプライマー層の共重合体は、上部のフッ素重合体と相溶性を有し、また、シランカップリング剤、チタン系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤またはアルミニウム系カップリング剤と共重合されて官能基を形成することによって、変性共重合体を提供し、上記官能基、例えばシラノール基などがバリアフィルム表面のヒドロキシ基などと共有結合または水素結合を形成し、界面接着力を向上させることができる。
【0022】
すなわち、上記のようなプライマーをバリアフィルム表面にコーティングした後、プライマー層上にフッ素重合体をコーティングし、バリアフィルムとフッ素重合体コーティング層との接着力を確保しながらも、簡単なコーティング工程でバリアフィルムに耐候性フッ素重合体層を適用することができる。
【0023】
本発明の具現例では、上記バリアフィルムと上記プライマー層との界面でシラン、有機チタン、有機ジルコニウムまたは有機アルミニウムと上記バリアフィルム表面のヒドロキシ基との共有結合が形成され、接着力を確保することができる。金属薄膜または無機蒸着フィルムのようなバリアフィルムの表面には、ヒドロキシ基が存在し、このようなヒドロキシ基は、シラン化合物、有機チタン、有機ジルコニウムまたは有機アルミニウムとそれぞれSi−OTi−O、Zr−OまたはAl−O共有結合を形成し、シラン化合物、有機チタン、有機ジルコニウムまたは有機アルミニウムの水素と水素結合を形成し、バリアフィルムとプライマー層との接着力を向上させる。
【0024】
また、上記シランカップリング剤、チタン系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤またはアルミニウム系カップリング剤と共重合されて形成される官能基を含む変性共重合体よりなるプライマー層は、シランカップリング剤、チタン系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤またはアルミニウム系カップリング剤単独よりなるプライマーとは異なって、フッ素重合体と相溶性に優れた共重合体、例えばアクリル共重合体などを含むので、上記プライマー層の上部にフッ素重合体をコーティングするようになれば、相溶性共重合体とフッ素重合体コーティング層間の物質の相互拡散(interdiffusion)が生じ、層間接着力が追加に確保される。これは、2つの層間の物質の拡散による接着を利用したものであって、2つ層間の物質が接触に引き続いて、分子鎖の相互拡散で界面がなくなり、接着がなされる性質を利用してフッ素重合体単一コーティング層及びその下部のプライマーコーティング層の相溶性共重合体の間の相互拡散によって接着力に優れた多層フィルムを製造することができる。
【0025】
したがって、バリアフィルムに対してプライマーとしてシランカップリング剤、チタン系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤またはアルミニウム系カップリング剤と共重合されて形成される官能基を含み、フッ素重合体と相溶性を有する共重合体を使用することによって、フッ素重合体フィルムを別に形成する必要なしにコーティングによって低温の簡単な工程でバリアフィルムにフッ素重合体をコーティングすることができる。
【0026】
上記バリアフィルムの厚さは、金属薄膜の場合、約1〜200μmの範囲にあり得、10〜100μm、または15〜50μmの範囲を有することができる。上記バリアフィルムが無機蒸着フィルムの場合、約1〜1000nmの厚さを有することができ、例えば、10〜500nmまたは50〜300nmの厚さを有することもできる。但し、本発明でバリアフィルムの厚さが前述した範囲に制限されるものではなく、これは、必要に応じて適切に調節されることができる。
【0027】
上記バリアフィルムの表面には、プライマー適用の前に接着力をさらに向上させるためにコロナ処理またはプラズマ処理のような高周波数のスパーク放電処理;熱処理;火炎処理;カップリング剤処理;アンカー剤処理または気相ルイス酸(例えば、BF)、硫酸または高温水酸化ナトリウムなどを使用した化学的活性化処理などを行うことができる。
【0028】
また、上記バリアフィルムは、下部に基材(substrate)をさらに含むことができる。本発明の具現例で使用することができる基材の具体的な種類は、特に制限されず、この分野で公知された多様な素材を使用することができ、要求される機能、用途などによって選択されることができる。
【0029】
本発明の1つの例示で、上記基材は、各種金属または重合体シートであることができる。上記で金属の例としては、アルミニウム、鉄などを挙げることができ、重合体シートの例としては、ポリエステル系シート、ポリアミド系シートまたはポリイミド系シートなどを挙げることができ、このうちポリエステル系シートを使用することが一般的であるが、これに制限されるものではない。ポリエステル系シートの例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)またはポリブチレンテレフタレート(PBT)などの単一シート、積層シートまたは共押出物などを挙げることができるが、これに制限されるものではない。また、必要に応じて、耐加水分解特性が向上したポリエステル系シートを使用することもできる。
【0030】
基材の厚さは、約50μm〜500μmの範囲にあり得、または100〜300μmの範囲であることができる。基材の厚さを上記のように調節し、多層フィルムの電気絶縁性、水分遮断性、機械的特性及び取り扱い性などを優秀に維持することができる。但し、本発明で基材の厚さが前述した範囲に制限されるものではなく、これは、必要に応じて適切に調節されることができる。
【0031】
また、本発明で上記基材には、接着力向上のために前述したスパーク放電処理;熱処理;火炎処理;カップリング剤処理;アンカー剤処理または化学的活性化処理などが行われていてもよい。
【0032】
上記バリアフィルムを上記基材に積層する方法としては、接着剤層によるラミネート、熱と圧力を利用したラミネートなどを挙げることができるが、これに制限されるものではない。
【0033】
本発明の多層フィルムは、上記基材とフッ素重合体コーティング層との間にプライマー層を含む。本発明の一具現例で、上記多層フィルムのプライマー層に含まれる共重合体は、フッ素重合体と相溶性を有し、基材とフッ素重合体コーティング層間の接着力を確保する。
【0034】
上記フッ素重合体と相溶性を有する共重合体は、フッ素重合体と相溶性を有する主鎖骨格を含み、上記主鎖骨格にシランカップリング剤、チタン系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤またはアルミニウム系カップリング剤が共重合されて形成される官能基を含む。
【0035】
本発明で用語「Aと相溶性を有するB」は、A及びBが互いによく混合されるか、相互拡散がよくなされる物性を意味する。
【0036】
本発明で上記プライマー層に含まれる共重合体の主鎖骨格は、上記のような性質を示す限り、特に制限されず、例えば、(メタ)アクリル系主鎖骨格;(メタ)アクリルアミド系主鎖骨格;及び(メタ)アクリル系単量体、(メタ)アクリルアミド系単量体またはビニル系単量体を主成分として含む単量体混合物から誘導される自由ラジカル付加重合体の主鎖骨格よりなる群から選択された1つ以上であることができるが、これに制限されるものではない。
【0037】
上記プライマー層は、後述するフッ素重合体コーティング層に含まれるフッ素重合体及び前述したバリアフィルムとの接着力が充分に発揮され得る程度に相溶性を有し、2つの層が共にコーティング方法によって形成されることによって、各層の分子鎖の相互拡散(inter−diffusion)で界面がなくなる。すなわち、多層フィルムの形成過程で、プライマー層及びフッ素重合体コーティング層の界面では、フッ素重合体コーティング層に含まれるフッ素重合体とプライマーの間の相互拡散が起きる。これによって、フッ素重合体コーティング層の成分とプライマー層の成分の分子鎖の間に絡み合い(chain entanglement)及びファンデルワールス引力などによる物理的相互作用が発生し、これによって接着力が向上するものと予測されることができる。したがって、2つの層間に別途の接着剤なしも接着が可能になって、従来界面接着剤によって発生した耐久性問題をも解決することができる。また、ファンデルワールス引力は、双極子間の相互作用(dipole−dipople interaction)によってさらに増加することができる。
【0038】
また、上記プライマー層の共重合体は、シランカップリング剤、チタン系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤またはアルミニウム系カップリング剤が共重合されて形成される官能基をさらに含み、そういう官能基は、高分子主鎖内部、側鎖または末端に導入されることができる。以下、シランカップリング剤、チタン系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤またはアルミニウム系カップリング剤が共重合されて形成される官能基を含む共重合体を変性共重合体と指称する。
【0039】
上記のような共重合体は、フッ素重合体と相溶性を有する重合性単量体;及びシランカップリング剤、チタン系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤またはアルミニウム系カップリング剤の共重合体であることができる。この際、使用されるシランシランカップリング剤、チタン系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤またはアルミニウム系カップリング剤はラジカル共重合のために二重結合がある化合物を使用する。
【0040】
上記フッ素重合体と相溶性を有する重合性単量体は、(メタ)アクリル系単量体、(メタ)アクリルアミド系単量体及びビニル系単量体よりなる群から選択された1種以上であることができる。
【0041】
上記(メタ)アクリル系単量体の例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルアルキル(メタ)アクリレート、及びイソシアネートアルキル(メタ)アクリレートよりなる群から選択されることができ、単独または混合で使用することができるが、これに制限されるものではない。
【0042】
上記(メタ)アクリルアミド系単量体の例としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、ビスアクリルアミド、ヒドロキシアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、イソブトキシメチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、メトキシプロピルアクリルアミド、エチレンビスアクリルアミドなどの1種以上を使用することができるが、これに制限されるものではない。
【0043】
上記二重結合を含むシランカップリング剤の具体的な例は、ビニルアルコキシシランであることができる。例えば、上記シランカップリング剤は、ビニルトリメトキシシラン(CH=CHSi(OCH)、ビニルトリエトキシシラン(CH=CHSi(OC)、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリフェントキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン(CH=CHSi(OCOCH)、メタクリルオキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、N−(3−メタクリルオキシヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、メタクリロイルオキシプロピルトリストリメチルシリルオキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン及びトリ(イソプロポキシ)ビニルシランまたはその混合物であることができる。
【0044】
上記二重結合を含むチタン系カップリング剤は、イソプロピルトリメタクリルチタネート(isopropyl trimethacryl titanate)、イソプロピルトリアクリロイルチタネート(isopropyl triacryloyl titanate)、イソプロピルトリオレイルチタネート(isopropyl trioleyl titanate)、チタンIV 2、2(ビス2−プロフェノラートメチル)ブタノラート、トリス(ジオクチル)ピロフォスフェート−O(titanium IV 2、2(bis2−propenolatomethyl)butanolato、tris(dioctyl)pyrophosphate−O)、チタン、(イソオクタデカノラート−κO)ビス(2−メチル−2−プロフェノラート−κO)(2−プロパノラート)(titanium、(isooctadecanolato−κO)bis(2−methyl−2−propenolato−κO)(2−propanolato)、チタンIV 2、2(ビス2−プロフェノラートメチル)ブタノラート、テトラ(2、2−ジアリルオキシメチル−1−ブトキシチタンジ(ジトリデシル)フォスフェート(titanium IV 2、2(bis 2−propenolatomethyl)butanolato、tetra(diallyloxymethyl)−1−butoxytitaniumdi(ditridecyl)phosphate)、ネオペンチルジアリルオキシトリス−ネオデカノイル−チタネート(neopentyl diallyloxy tris−neodecanoyl titanate)、ネオペンチル(ジアリル)オキシ、トリ(ジオクチル)フォスフェートチタネート(neopentyl(diallyl)oxy、tri(dioctyl)phosphatotitanate)、ネオペンチルジアリルオキシトリス(N−エチレンジアミノ)エチルチタネート(neopentyl diallyloxy tris(N−ethylenediamino)ethyl titanate)、イソプロピルトリエタノールアミンチタネート(isopropyl triethanolamine titanate)、エトキシイソ−プロポキシチタンアセチルアセトネート(ethoxyiso−propoxy titanium acetylacetonate)、ジイソプロポキシジ(エトキシアセトアセチル)チタネート(diisopropoxydi(ethoxyacetoacetyl titanate)及びジイソブトキシ−ビスエチルアセトアセテートチタネート(diisobutoxy−bis ethylacetoacetato titanate)よりなる群から選択された1種以上であることができる。
【0045】
上記二重結合を含むジルコニウム系カップリング剤は、ジルコニウムIVテトラキス2、2(ビス−2プロフェノラートメチル)ブタノラート(Zirconium IV tetrakis 2、2(bis−2 propenolatomethyl)butanolato)、ジルコニウムIV 2、2−ジメチル1、3−プロパンジオールライト、ビス(ジオクチル)ピロフォスフェート−O(Zirconium IV 2、2−dimethyl1、3−propanediolato、bis(dioctyl)pyrophosphato−O)、ジルコニウムIV 1、1(ビス−2プロフェノラートメチル)ブタノラート、トリス(2−アミノ)フェニルラート(Zirconium IV 1、1(bis−2propenolatomethyl)butanolato、tris(2−amino)phneylato−O)、及びジルコニウムIV 2、2(ビス−2プロフェノラートメチル)ブタノラート、ビス(3−メルカプト)プロピオナート−O(Zirconium IV 2、2(bis−2propenolatomethyl)butanolato、bis(3−mercapto)propionato−O)よりなる群から選択された1種以上であることができる。
【0046】
上記二重結合を含むアルミニウム系カップリング剤は、アルミニウムIIIジイソプロポキシド−エチルアセトアセテート(aluminium III diisopropoxide−ethylacetoacetate)及びアルミニウム2、4−ペンタンジオネート(aluminium 2、4−pentane dionate)よりなる群から選択された1種以上であることができる。
【0047】
本発明の具現例によるプライマー層に含まれる変性共重合体の製造時、上記重合性単量体及びカップリング剤の混合比率は、質量比を基準として1:99〜99:1であることができ、例えば、10:90〜95:5または40:60〜90:10であることができる。上記のように、重合性単量体及びカップリング剤の含量を調節し、フッ素重合体コーティング層との相互拡散及び下部バリアフィルム表面との結合力増進を調節することができる。
【0048】
上記プライマーとしてシランカップリング剤、チタン系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤またはアルミニウム系カップリング剤のみを使用する場合、上記カップリング剤が単量体であるか、または低分子である場合、金属または無機蒸着フィルムとのコーティング性(Wetting性)が劣化し、コーティング後にも、結合反応が起きない単量体がコーティング膜の物性を劣化させる。すなわち、上記プライマーとしてシランカップリング剤、チタン系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤またはアルミニウム系カップリング剤だけを使用する場合、上記カップリング剤の分子量が小さくて、プライマー膜が緻密に形成されず、これによって、時間が経つにつれて水分がプライマー膜内に浸透し、均一な膜の形成が難しいことがある。また、この場合、フッ素重合体と相互拡散が十分ではないため、接着力が劣化する。したがって、カップリング剤を相溶性共重合体に共重合させた変性共重合体、例えばシラン変性アクリル共重合体などを使用する。このような変性共重合体は、カップリング剤の共重合体による官能基を含まない相溶性共重合体に比べて基材とフッ素重合体コーティング層との界面で結合反応が起きることができるサイトが多くなって、反応時間、反応メカニズムで有利であり、それによって、所望の物性を達成することができるようになる。
【0049】
上記のような変性共重合体は、例えば、下記化学式1のシリル基を提供することができ、二重結合を含むシランカップリング剤を共重合させて製造するか、または相溶性共重合体に上記のようなシランカップリング剤をグラフト(grafting)させることによって製造することもできる。
【0050】
[化学式1]
−Si(OR)
【0051】
上記化学式1で、Rは、それぞれ同一であるかまたは異なることができ、水素、アルキル基、アリール基、アラキル基(aralkyl group)、アルコキシ基を示す。
【0052】
上記でアルキル基は、例えば、炭素数1〜12、炭素数1〜8または炭素数1〜4のアルキル基であることができる。また、上記アリール基は、炭素数6〜18、好ましくは、炭素数6〜12のアリール基、例えばフェニル基であることができ、アラキル基は、炭素数7〜19、好ましくは、炭素数7〜13のアラルキル、例えばベンジル基であることができ、アルコキシ基は、炭素数1〜12、炭素数1〜8または炭素数1〜4のアルコキシ基であることができる。
【0053】
すなわち、本発明の一具現例で、上記変性共重合体は、シラン変性アクリル共重合体であることができ、アクリル単量体及び下記化学式2で表示されるシランカップリング剤を共重合された形態で含む共重合体;またはアクリル共重合体に下記化学式2で表示されるシランカップリング剤をグラフトさせたグラフト重合体であることができる。
【0054】
[化学式2]
DSi(OR)
【0055】
上記化学式2で、Dは、エチレン性不飽和炭化水素基または炭化水素オキシ基であり、Rは、上記化学式1で定義した通りである。
【0056】
本発明の具現例で、上記化学式2のDは、ビニル、アリル、イソプロフェニル、ブテニル、シクロヘキセニルまたはγ−メタクリルオキシプロピルなどであることができ、好ましくは、ビニルであることができる。
【0057】
上記変性共重合体を製造するためにラジカル開始剤をさらに上記重合性単量体及びカップリング剤に添加することができ、上記ラジカル開始剤は、各単量体のビニル基のラジカル重合を誘導して共重合が可能になるようにすることができる。
【0058】
本発明で使用することができるラジカル開始剤の具体的な種類は、ラジカル重合を開始することができるものなら特に制限されず、例えば、有機過酸化物、ヒドロ過酸化物、またはアゾ化合物などの1種または2種以上を挙げることができる。
【0059】
上記でラジカル開始剤の例としては、t−ブチルクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジ−クミルペルオキシド、2、5−ジメチル−2、5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2、5−ジメチル−2、5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシンなどのジアルキルペルオキシド類、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、2、5−ジメチル−2、5−ジ(ヒドロペルオキシ)ヘキサン、t−ブチルヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド類、ビス−3、5、5−トリメチルヘキサノイルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、o−メチルベンゾイルペルオキシド、2、4−ジクロロベンゾイルペルオキシドなどのジアシルペルオキシド類、t−ブチルペルオキシイソブチレート、t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシオクトエート、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルペルオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルペルオキシフタレート、2、5−ジメチル−2、5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、2、5−ジメチル−2、5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)−3−ヘキシンなどのペルオキシエステル類、メティエチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシドなどのケトンペルオキシド類、ラウリルペルオキシド、アゾビスイソブチロニトリル及びアゾビス(2、4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物よりなる群から選択された1種以上を挙げることができる。
【0060】
上記ラジカル開始剤は、重合性単量体及びカップリング剤の固形分100重量部に対して0.1重量部〜5重量部、または0.5重量部〜2重量部で含むことができる。このような重量比率で全体的な樹脂組成物の物性を効率的に調節し、バリアフィルムとの接着性を高め、樹脂組成物に含まれるUV安定剤などのような添加剤の活性を優秀に維持することができる。
【0061】
上記のように、プライマーとしてシラン変性アクリル共重合体を製造するようになれば、官能基としてシリル基を含むようになるが、プライマー層でコーティング及び乾燥過程でシリル基がシラノール基に転換され、バリアフィルム(金属)の表面のヒドロキシ基と結合するようになる。また、プライマー製造時からシラノール基が含まれていてもよい。これは、一定の熱や湿度でシリル基がシラノール基に容易に転換されるからである。また、プライマー物質の製造後、シリル基をシラノール基に転換する過程をさらに行った後、プライマーコーティングを行うこともできる。
【0062】
上記変性共重合体を含むプライマー層は、バリアフィルム上にバーコーティング、スプレイコーティング、グラビアコーティングなど一定厚さ以上のプライマー層を形成することができるコーティング方法によって形成されることができる。
【0063】
上記プライマー層の厚さは、約0.01μm〜5μmの範囲にあり得、例えば0.05μm〜3μmまたは0.1〜2μmの範囲であることができる。プライマー層の厚さは、固形分の含量を調節することによって調節することができ、上記範囲に調節し、フッ素重合体コーティング層とプライマー層の間の相互拡散領域を広げて、接着力を向上させることができる。一定の厚さ以上にプライマー層が厚くなるようになれば、プライマー層がこわれやすくて、むしろ接着力が劣化するおそれがあり、フッ素重合体コーティング層の物性が変わることができ、プライマー層は、上記厚さ範囲で形成することができる。
【0064】
本発明の多層フィルムは、プライマー層上に形成されるフッ素重合体コーティング層を含む。コーティング層は、フッ素重合体を含むフッ素重合体コーティング層が、キャスティング法または押出方式で製造されたシートを基材に接着剤などを使用してラミネートされる方式ではない、溶媒、好ましくは、低い沸点を有する溶媒にフッ素重合体を溶解して製造されたコーティング液を基材またはプライマー層にコーティングする方式で形成されることを意味する。
【0065】
上記のように、フッ素重合体を含む層をコーティングで形成することによって、プライマー層との相互拡散作用が効果的に進行され、接着力の向上効果を極大化することができる。また、フッ素重合体コーティング層の形成過程で沸点が低い溶媒を使用することができ、これにより、乾燥工程を低温で進行することができるようになって、製品の生産性を向上させ、優れた品質を確保することができる。
【0066】
本発明の具現例で使用することができるフッ素重合体の具体的な種類は、特に制限されず、例えば、ビニリデンフルオライド(VDF、Vinylidene Fluoride)、ビニルフルオライド(VF、Vinyl Fluoride)、テトラフルオロエチレン(TFE、Tetrafluoroethylene)ヘキサフルオロプロピレン(HFP、Hexafluoropropylene)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE、chlorotrifluoroethylene)、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブチレン、パーフルオロブチルエチレン、パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE、perfluoro(methylvinylether))、パーフルオロエチルビニルエーテル(PEVE、perfluoro(ethylvinylether))、パーフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)、パーフルオロヘキシルビニルエーテル(PHVE)、パーフルオロ−2、2−ジメチル−1、3−ジオクソル(PDD)及びパーフルオロ−2−メチルレン−4−メチル−1、3−ジオクソラン(PMD)よりなる群から選択された1つ以上の単量体を重合された形態で含む単独重合体、共重合体またはこれらの混合物であることができる。
【0067】
本発明では、例えば、フッ素重合体は、ビニルフルオライドを重合された形態で含む単独重合体または共重合体;またはビニリデンフルオライドを重合された形態で含む単独重合体または共重合体;または上記のうち2種以上を含む混合物であることができる。
【0068】
上記で共重合体に重合された形態で含まれることができる共単量体の種類は、特に制限されず、例えば、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブチレン、パーフルオロブチルエチレン、パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、パーフルオロ−2、2−ジメチル−1、3−ジオクソル(PDD)及びパーフルオロ−2−メチルレン−4−メチル−1、3−ジオクソラン(PMD)などの1種または2種以上を挙げることができるが、これに制限されるものではない。また、上記共重合体内の共単量体の含量は、例えば、全体共重合体の重量を基準として約0.5重量%〜50重量%、1重量%〜40重量%、7重量%〜40重量%、10重量%〜30重量%、または10重量%〜20重量%であることがある。このような共単量体の範囲内で多層フィルムの耐久性及び耐候性などを確保しながら、効果的な相互拡散作用及び低温乾燥を誘導することができる。
【0069】
上記フッ素重合体の形態は、直鎖型または分岐型重合体(branched polymer)であることができる。
【0070】
本発明で上記フッ素重合体は、50,000〜1,000,000の重量平均分子量を有することができる。本発明で重量平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatograph)で測定される標準ポリスチレンの換算数値である。本発明では、樹脂の重量平均分子量を上記のように調節し、優れた溶解度及びその他物性を確保することができる。
【0071】
本発明で上記フッ素重合体は、また、融点が80℃〜175℃、好ましくは、120℃〜165℃であることができる。本発明で樹脂の融点を80℃以上に調節し、多層フィルムの使用過程での変形を防止することができ、また、融点を175℃以下に調節し、溶媒に対する溶解度を調節し、コーティング面の光沢を向上させることができる。
【0072】
本発明のフッ素重合体コーティング層は、必要に応じて上記のようなフッ素重合体とともに非結晶性樹脂をさらに含むことができる。このように、非結晶性樹脂とのブレンドを使用することによって、前述したプライマー層との相互作用及び低沸点溶媒に対する溶解性を含む工程性をさらに極大化することができる。本発明で用語非結晶性樹脂には、樹脂の全体構造が非結晶性を有する場合はもちろん、樹脂の一部に結晶質領域が存在しても、非結晶性領域がさらに優勢に存在し、樹脂が全体的に非結晶性を示す場合をも含まれる。
【0073】
本発明で使用することができる非結晶性樹脂の種類は、特に制限されず、例えば、アクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、スチレン−(メタ)アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、シクロオレフィン重合体、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンまたはポリアリレートの1種または2種以上の混合を挙げることができ、このうち非反応性アクリル系樹脂を使用することが好ましいが、これに制限されるものではない。
【0074】
上記でアクリル系樹脂の例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸及びイソボルニル(メタ)アクリレートなどの1種または2種以上を重合された形態で含む、単独重合体または共重合体を挙げることができる。また、場合によって、ガラス転移温度及び分子量分布などの制御のために、上記のうち1種または2種以上の単量体;及びシクルロヘキシルマレイミド、メチルスチレンまたは(メタ)アクリロニトリルなどの1種以上の共単量体を重合された形態で含むアクリル系樹脂を使用することもできる。
【0075】
本発明で上記非結晶性樹脂が2種以上の単量体を重合された形態で含む共重合体の形態である場合、共単量体の種類及び含量は、特に制限されず、目的する非結晶性を考慮して調節されることができる。
【0076】
本発明でフッ素重合体コーティング層が非結晶性樹脂を含む場合、フッ素重合体コーティング層は、フッ素系樹脂を50重量部以上で含み、非結晶性樹脂を50重量部以下で含むことができ、より具体的には、フッ素系樹脂70重量部〜97重量部及び非結晶性樹脂3重量部〜30重量部を含むことができる。樹脂間の重量比率を上記のように制御し、フッ素重合体コーティング層を構成する成分が適切な結晶化度を有し、プライマー層との相互拡散が効果的に進行され、多層フィルムに優れた耐久性及び耐候性などの物性を示すようにすることができる。
【0077】
本明細書では、特に別途規定しない限り、単位「重量部」は、各成分間の重量比率を意味する。
【0078】
本発明のフッ素重合体コーティング層は、前述した成分に、さらに、フッ素重合体コーティング層の色相や不透明度の調節またはその他目的のために、顔料または充填剤をさらに含むことができる。この際、使用されることができる顔料または充填剤の例としては、二酸化チタン(TiO)、シリカまたはアルミナなどのような金属酸化物、炭酸カルシウム、硫酸バリウムまたはカーボンブラックなどのようなブラックピグメントまたは他の色相を示すピグメント成分などを挙げることができるが、これに制限されるものではない。上記のような顔料または充填剤は、フッ素重合体コーティング層の色相や不透明度を制御する固有の効果とともに、各成分が含む固有の作用基によってフッ素重合体コーティング層及びプライマー層の相互拡散時に界面接着力をさらに改善する作用をすることもできる。上記顔料の含量は、フッ素重合体コーティング層の固形物を基準として60重量%以下であることができるが、これに限定されるものではない。
【0079】
本発明のフッ素重合体コーティング層は、また、UV安定化剤、熱安定化剤、分散剤または障壁粒子のような通常的な成分をさらに含むこともできる。
【0080】
本発明で上記のような成分を含むフッ素重合体コーティング層は、厚さが約3μm〜50μm、好ましくは、10μm〜30μmであることができるが、これは、目的に応じて変更されることができる。
【0081】
図1は、本発明の多層フィルムを例示的に示す図である。すなわち図1に示されたように、本発明の多層フィルム10は、基材11と;上記基材の一面に形成されたバリアフィルム12と;上記バリアフィルム12上に形成されたプライマー層13と;上記プライマー層13上に形成されたフッ素重合体コーティング層14と;を含むことができる。
【0082】
また、図示してはいないが、多層フィルムが基材またはバリアフィルムの両面に形成されたプライマー層及び上記それぞれのプライマー層上に形成されたフッ素重合体コーティング層を含むこともできる。
【0083】
また、本発明の多層フィルムは、必要に応じて当業界で公知されている多様な機能性層をさらに含むことができる。機能性層の例としては、接着層または絶縁層などを挙げることができる。例えば、本発明の多層フィルムには、基材の一面には、前述したプライマー層及びフッ素重合体コーティング層が形成されていて、他の面には、接着層及び絶縁層が順次に形成されていてもよい。接着層または絶縁層は、この分野で公知されている多様な方式で形成することができる。例えば、絶縁層は、エチレンビニルアセテート(EVA)または低密度線形ポリエチレン(LDPE)の層であることができる。上記エチレンビニルアセテート(EVA)または低密度線形ポリエチレン(LDPE)の層は、絶縁層としての機能はもちろん、封止材(encapsulant)との接着力を高め、製造費用の節減が可能であり、再作業性(re−workability)を優秀に維持する機能を同時に行うことができる。
【0084】
本発明は、また、多層フィルムの製造方法に関する。
【0085】
一例として、上記多層フィルムの製造方法は、バリアフィルムの上部にフッ素重合体と相溶性を有する共重合体を含むプライマーコーティング液をコーティングし、プライマー層を形成する段階と、上記プライマー層の上部にフッ素重合体コーティング用組成物をコーティングする段階とを含む。
【0086】
本発明の多層フィルムの製造方法は、バリアフィルム上にプライマー層及びフッ素重合体層を共にコーティングによって形成することを特徴とする。この際、コーティング方式は、特に制限されず、例えば、オフセット、グラビア、ロールコートまたはナイフエッジコートなどを含み、コーティング層を形成することができるものなら、どんな方式も適用可能である。
【0087】
例えば、プライマー層の場合、フッ素重合体と相溶性を有する共重合体を含むプライマーコーティング液をバリアフィルム上に塗布した後、所定条件で乾燥させるなどの方式でプライマー層の形成が可能である。
【0088】
別途の接着剤または接着層の使用なしもバリアフィルムに対して優れた接着力のフッ素重合体コーティングを有する多層フィルムを提供するために、上記プライマーは、前述したシランカップリング剤、チタン系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤またはアルミニウム系カップリング剤と共重合されて形成される官能基を含む変性共重合体であることができ、コーティング液は、上記変性共重合体を適切な有機溶媒に溶解または分散させて製造することができる。上記有機溶媒としては、メチルエチルケトン、エタノール、イソプロパノール、トルエン、エチルアセテート、ブチルアセテート、シクロヘキサノールなどの1種またはそれ以上の混合物を使用することができる。
【0089】
上記コーティング液には、必要に応じて、その他多様な添加剤、例えば、酸化防止剤、防錆剤、硬化剤などをさらに含ませることもできる。
【0090】
また、本発明で使用されることができるバリアフィルムの具体的な種類は、前述した通りであり、上記バリアフィルムに適切な蒸着処理、プラズマ処理、コロナ処理、プライマー、アンカー剤、カップリング剤処理または熱処理を行う段階をさらに行うことができる。
【0091】
本発明では、上記のような方式でプライマー層を形成した後、コーティング方式でフッ素重合体コーティング層を形成する。本発明でフッ素重合体コーティング層を形成するコーティング液は、前述したフッ素重合体コーティング層を形成する各成分を相対的に低い沸点を有する溶媒、具体的には、沸点が200℃以下の溶媒に溶解または分散させて製造されることができる。本発明の一具現例では、フッ素重合体が非結晶性領域を有するか、あるいは非結晶性樹脂と混合することによって、沸点が相対的に低い溶媒に効果的に溶解されることができる。これによって、本発明では、製造過程で高温の乾燥工程が要求されないため、製造費用を節減すると同時に、高温乾燥時に誘発されることができる基材の熱変形や熱衝撃などを防止し、製品の品質を向上させることができる。
【0092】
本発明で使用することができる上記のような溶媒の例としては、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、ジメチルホルムアミド(DMF)またはジメチルアセトアミド(BMAC)などの1種または2種以上の混合を挙げることができるが、これに制限されるものではない。
【0093】
また、上記フッ素重合体コーティング用組成物は、水分散液コーティング組成物であってもよい。例えば、水に分散したフッ素重合体を含む水分散液でコーティングすることができ、この場合、分散剤が含まれることが好ましい。
【0094】
本発明でフッ素重合体コーティング層の形成に適用されるコーティング液には、上記フッ素重合体以外にも、顔料、充填剤、UV安定剤、分散剤または熱安定剤のような多様な添加剤をさらに含むことができる。上記各添加剤は、フッ素重合体などとともに溶媒に溶解されるか、または上記成分とは別にミルベイス形態で製造された後、また上記フッ素重合体を含む溶媒と混合することもできる。
【0095】
本発明でコーティング液の製造方法や、コーティング液に含まれる各成分の比率などは、特に制限されず、この分野に公知されている多様な方式を適切に採用すれば良い。
【0096】
本発明で上記コーティング液を使用したコーティング方式は、特に制限されず、例えば、前述したプライマー層の形成のためのコーティング方式に準じて行うことができる。特に、このコーティング過程で、コーティング液の溶媒は、プライマー層の表面をスウェリング(swelling)させることによって、プライマー層及びフッ素重合体コーティング層の相互拡散作用を促進することができる。
【0097】
本発明では、上記各層のコーティング工程に引き続いて、各層を乾燥させる段階をさらに行うことができる。乾燥時の条件は、特に制限されず、例えば、室温〜200℃以下、好ましくは、約25℃〜180℃の温度で約30秒〜30分、好ましくは、約1分〜10分間行われることができる。乾燥条件を上記のように制御し、製造費用の上昇を防止し、熱変形または熱衝撃などによる製品品質低下を防止することができる。また、乾燥条件によってプライマー層とフッ素重合体コーティング層の間の物質の相互拡散程度を調節することができ、例えば、フッ素重合体の乾燥温度が高いか、乾燥時間が長くなるほど、拡散効果を高めることができる。本発明の一具現例では、上記プライマー層は、約100℃〜120℃の温度で数分〜1分程度の条件で乾燥することができ、上記フッ素重合体コーティング層は、約160℃〜200℃の温度で1分〜2分程度の条件で乾燥することができる。
【0098】
本発明は、また、上記多層フィルムを含む光電池モジュール製造用副資材及び上記光電池モジュール製造用副資材を含む光電池モジュールに関する。
【0099】
本発明の光電池モジュールの構造は、上記多層フィルムを光電池モジュール製造用副資材として含んでいる限り、特に制限されず、この分野で公知されている多様な構造を有することができる。一例として、上記多層フィルムは、光電池用裏面シートとして使用されることができ、この際、バリアフィルムは、光電池側に配置され、それによって、フッ素重合体コーティング層が表面層になる。
【0100】
通常、光電池モジュールは、透明前面基板、裏面シート及び上記前面基板と裏面シートとの間で封止材によって封止されている光電池または直列または並列で配置された光電池アレイを含むことができる。
【0101】
上記で光電池または光電池アレイを構成する活性層の例としては、代表的に結晶質または非結晶質シリコーンウェーハや、CIGSまたはCTSなどのような化合物半導体などを挙げることができる。
【0102】
本発明の多層フィルムは、上記のような活性層を有するモジュールを含み、この分野に知られている多様な光電池モジュールに制限なしに適用されることができ、この場合、上記モジュールを構成する方式や、その他素材の種類は、特に制限されない。
【0103】
以下、本発明による実施例及び本発明によらない比較例を通じて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の範囲が下記提示された実施例によって制限されるものではない。
【0104】
実施例及び比較例でフィルムの各物性は次の方式で測定した。
【0105】
1.180度剥離強度
剥離強度は、ASTM D1897に準拠して、試験片を10mmの幅でカットした後、4.2mm/secの速度及び180度の剥離角度に剥離しながら測定した。
【0106】
2.クロス−ハッチ接着力
クロスカット試験基準であるASTM D3002/D3359の規格に準拠して、クロスカットテストを行った。具体的に、試験片を1mmの間隔で横及び縦方向にそれぞれ11列ずつ刀で引いて、横と縦がそれぞれ1mmである100個の正四角形格子を形成した。その後、Nichiban社のCT−24接着テープを上記カット面に付着した後、引き離すとき、一緒に脱離する面の状態を測定し、下記基準で評価した。
〈クロス−ハッチ接着力評価基準〉
5B:脱離した面がない場合
4B:脱離した面が全体面積に対して5%以内の場合
3B:脱離した面が全体面積に対して5〜15%の場合
2B:脱離した面が全体面積に対して15〜35%の場合
1B:脱離した面が全体面積に対して35〜65%の場合
0B:ほぼ大部分が脱離する場合
【0107】
3.PCT(pressure cooker test)
実施例及び比較例で製造された多層フィルムを2気圧、121℃及び100%R.H.の条件が維持されるオーブンに25時間または50時間放置した後、接着力の変化を観察した。
【0108】
4.膜の変性測定
実施例1及び比較例2で製造された多層フィルムを2気圧、121℃及び100%R.H.の条件が維持されるオーブンに25時間放置した後、膜の変化を観察した。観察結果は、図2及び図3に示した。
【0109】
製造例1〜6:プライマーの製造
反応器にトルエン300gを入れ、温度を80℃に維持させた。この際、反応器の内部は、一般空気による酸化反応を抑制するために窒素ガスで充填させ、反応がよく起きるように撹拌器を用いて持続的に反応物を撹拌させた。80℃の条件に調整された後、反応器の内に下記表1に示されたように、それぞれ用意したアクリル単量体を注入した。アクリル単量体をすべて注入した後、シランカップリング剤KBM503を注入し、各製造例でのアクリル単量体とシランカップリング剤の比率及び注入量は、表1に示した。
【0110】
その後、ラジカル共重合のために開始剤として2、2−アゾビス(2、4−ジメチルバルロニトリル))(2、2−Azobis(2、4−dimethylvaleronitrile)、V−65)1gをトルエン20gに溶解し、注射器を利用して上記反応器内に注入した。80℃の温度条件で8時間撹拌させた後、反応を終了させて、シラン変性アクリル共重合体であるプライマーMSC1〜MSC6を製造した。
【0111】
【表1】
【0112】
実施例1〜12
基材層の準備
両面にアクリルプライマー処理が施されたポリエチレンテレフタレート(PET、poly(ethylene terephthalate)、厚さ:250μm、コーロング社)表面にコロナ処理を行った。
【0113】
上記PETフィルムの一面に接着剤をコーティングし、100℃で1分間乾燥した後、厚さ20μmのアルミニウムホイル(Al foil)をラミネータ(laminator)を利用して接着させた。ラミネータで接着するとき、ラミネータロールの温度は、60℃の条件で接着した。その後、常温で一日、40〜60℃のオーブンで4日間保管する熟成過程を通じて十分に接着剤の硬化時間を有した。接着剤の乾燥後の厚さは、約10〜13μm程度に接着剤の固形分含量で調節した。
【0114】
フッ素重合体コーティング層用コーティング液の製造
白色フッ素重合体コーティング液の製造
ジメチルホルムアミド(DMF、N、N−dimethyl formamide)800gにビニリデンフルオライド(VDF;Vinylidene fluoride)とクロロトリフルオロエチレン(CTFE;Chlorotrifluoro ethylene)を85:15(VDF:CTFE)の重量比率で重合された形態で含む共重合体140g及びVDFとヘキサフルオロプロピレン(HFP;Hexafluoropropylene)を88:12(VDF:HFP)の重量比率で重合された形態で含む共重合体60gを溶解させて第1コーティング液を製造した。
【0115】
また、上記とは別に、DMF 100gに顔料分散剤であるBYK W9010(BYK社)4.8g及び二酸化チタン(TiPure TS6200、デュポン社)240gを溶解させて、さらに直径が0.3mmであるジルコニアビーズ(Zirconia bead)100gを入れた後、1,000rpmの速度で1時間撹拌させた後、ビーズを完全に除去し、ミルベイスを製造した。
【0116】
製造されたミルベイスをあらかじめ製造された第1コーティング液に投入し、さらに撹拌し、白色フッ素重合体コーティング液を準備した。上記でミルベイスは、ビーズの除去過程で損失される量を勘案して、実際フッ素重合体コーティング層に投入される量の1.5倍の量で準備したものである。
【0117】
プライマーコーティング
あらかじめ準備したアルミニウムホイルが接着されているPETフィルムのアルミニウムホイル表面にそれぞれ上記で製造したシラン変性アクリル共重合体をコーティングした。上記コーティングは、メイヤバー(Mayer bar)を利用し、メイヤバーの厚さを調節する番号とシラン変性アクリル共重合体の固形分の含量を20重量%で調節し、プライマー層の厚さを調節した。コーティング後、約120℃で約30秒間乾燥させて、厚さ1〜3μmのプライマー層を形成した。
【0118】
フッ素重合体コーティング層形成
上記シラン変性アクリル共重合体がプライマーでコーティングされたアルミニウムホイル上に上記で準備した白色フッ素重合体コーティング液をアプリケータを利用して乾燥後の厚さが約15〜30μmになるようにフッ素重合体コーティング液内の固形分の含量を調節し、コーティングした後、180℃で約2分間乾燥し、フッ素重合体コーティング層を形成した。
【0119】
実施例1〜6は、それぞれ上記製造例1〜6のプライマーでコーティングされたプライマー層の上部に上記白色フッ素重合体コーティング液を使用して多層フィルムを製造したものである。
【0120】
比較例1
アルミニウムホイルの上部にプライマー層を形成せず、すぐフッ素重合体コーティング層を形成し、多層フィルムを製造し、アルミニウムホイルの上部にフッ素重合体をコーティングする方法は、実施例1のよう行った。
【0121】
比較例2
実施例1でプライマーとして使用したシラン変性アクリル共重合体の代わりに、共重合させないシランカップリング剤KBM503のみをプライマーとして使用したことを除いて、実施例1と同一の方法で多層フィルムを製造した。
【0122】
比較例3
実施例1でプライマーとして使用したシラン変性アクリル共重合体の代わりに、共重合させないアクリル単量体MMAのみをプライマーとして使用したことを除いて、実施例1と同一の方法で多層フィルムを製造した。
【0123】
比較例4
アルミニウムホイルの上部にシラン変性アクリル共重合体よりなるプライマー層を形成する代わりに、アルミニウムホイルの上部にエポキシプライマー層が形成されたものを使用したことを除いて、実施例1と同一の方法で多層フィルムを製造した。
【0124】
実験例1
上記実施例1〜6及び比較例1及び4の多層フィルムに対して、PCT(Pressure cooker test)を行う前または後に、180度剥離強度及びクロス−ハッチテストをそれぞれ行った。具体的には、それぞれの多層フィルムを2気圧、121℃及び100%R.H.の条件でそれぞれ25時間または50時間放置した後、180度剥離強度及びクロス−ハッチテストを行い、剥離力の変化を評価した。評価結果は、下記表2に示した。
【0125】
【表2】
【0126】
上記表2に示されたように、シラン変性アクリル共重合体のプライマー層を含む本発明の実施例の多層フィルムの場合、良好な接着力が得られることを確認することができ、PCTを50時間進行した後にも、やはり優れた接着力を示した。一方、プライマー層がないか、シラン単量体、アクリル単量体またはエポキシプライマー層を含む比較例の場合、接着力が大きく劣化する点を確認した。
【0127】
また、図2のように、実施例1の場合には、PCTを25時間進行した後にも、膜の変性が発生しなかったが、図3のように、シランカップリング剤のみを使用した比較例2の場合には、PCT進行後に水泡が発生することを確認した。
【0128】
実施例7〜12
フッ素重合体コーティング液として実施例1〜6で使用した白色フッ素重合体コーティング液の代わりに、下記のように別に準備したブラックフッ素重合体コーティング液を使用したことを除いて、それぞれ実施例1〜6と同一の方法で多層フィルムを製造した。
【0129】
ブラックフッ素重合体コーティング液の製造
第1コーティング液は、白色フッ素重合体コーティング液で使用したものと同一であり、それとは別に、DMF 100gに顔料分散剤であるBYK 9076(BYK社)0.8g及びカーボンブラック(MA100、三菱社)8gを溶解させ、さらに直径が0.3mmであるジルコニアビーズ100gを入れた後、1,000rpmの速度で1時間撹拌させた後、ビーズを完全に除去し、ミルベイスを製造した。
【0130】
製造されたミルベイスとタルク(Talc、Nippon Talc社)60gをあらかじめ製造された第1コーティング液に投入し、さらに撹拌し、ブラックフッ素重合体コーティング液を準備した。上記でミルベイスは、ビーズの除去過程で損失される量を勘案して、実際フッ素重合体コーティング層に投入される量の1.5倍の量で準備したものである。
【0131】
比較例4〜6
フッ素重合体コーティング液として比較例1〜3で使用した白色フッ素重合体コーティング液の代わりに、実施例7〜12で使用したブラックフッ素重合体コーティング液を使用したことを除いて、それぞれ比較例1〜3と同一の方法で多層フィルムを製造した。
【0132】
実験例2
上記実施例7〜12及び比較例4及び6の多層フィルムに対して、PCT(Pressure cooker test)を行う前または後に、180度剥離強度及びクロス−ハッチテストをそれぞれ行った。具体的には、それぞれの多層フィルムを2気圧、121℃及び100%R.H.の条件でそれぞれ25時間または50時間放置した後、180度剥離強度及びクロス−ハッチテストを行い、剥離力の変化を評価した。評価結果は、下記表3に示した。
【0133】
【表3】
【0134】
上記表3に示されたように、フッ素重合体コーティング液と関系なく、シラン変性アクリル共重合体のプライマー層を含む本発明の実施例の多層フィルムの場合、良好な接着力が得られることを確認することができ、PCTを50時間進行した後にも、やはり優れた接着力を示した。一方、プライマー層がないか、シラン単量体またはアクリル単量体のプライマー層を含む比較例の場合、接着力が大きく劣化する点を確認した。
【0135】
すなわち、上記実施例1〜12及び比較例1〜比較例6とそれに対する実験例を通じて、シラン変性アクリル共重合体をプライマーとして使用する場合、フッ素重合体コーティング層がアルミニウムホイルに対して界面接着力に優れていると同時に、さらに良い耐久性を有することを確認することができる。これは、プライマー層のシラン変性アクリル共重合体がアルミニウムホイルの表面と化学的結合を形成すると同時に、フッ素重合体コーティング層への物質の拡散による接着力向上に起因するもので、接着力及び耐久性を同時に達成することができるものである。
【0136】
以上、本発明の例示的な実施例を参照として本発明について詳細に説明したが、これらは、ただ例示的なものに過ぎず、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者ならこれから多様な変形及び均等な他の実施例が可能であるという点を理解することができる。したがって、本発明の真正な技術的保護範囲は、添付の特許請求範囲の技術的思想によって定められなければならない。
【符号の説明】
【0137】
10 多層フィルム
11 基材
12 金属または無機蒸着フィルム
13 プライマー層
14 フッ素重合体コーティング層
図1
図2
図3