特許第6050403号(P6050403)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6050403リチウムイオン電池用正極活物質、リチウムイオン電池用正極、及び、リチウムイオン電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6050403
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池用正極活物質、リチウムイオン電池用正極、及び、リチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/131 20100101AFI20161212BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20161212BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20161212BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20161212BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   H01M4/131
   H01M4/525
   H01M4/505
   H01M4/62 Z
   C01G53/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-40794(P2015-40794)
(22)【出願日】2015年3月2日
(65)【公開番号】特開2016-162602(P2016-162602A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2015年8月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 博人
【審査官】 浅野 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−041502(JP,A)
【文献】 特開2011−181386(JP,A)
【文献】 特開2005−340056(JP,A)
【文献】 特開2005−276454(JP,A)
【文献】 特開2009−099523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13〜4/1399
H01M 4/36〜4/62
C01G 53/00
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Li含有遷移金属複合酸化物、及び、
平均粒子径が0.18〜1μmで10〜1000wtppmの無機セラミックス
を含み、
前記Li含有遷移金属複合酸化物が、組成式:Li1+xNi1-yMey2+z
(前記式において、MeはMn、Co、Al及びMgのいずれか一種以上であり、xは−0.1〜0.1であり、yはMeで示される金属の合計の組成を示し且つ0.1〜0.5であり、zは−0.1〜0.2である。)
で表され
前記無機セラミックスが、Al、Si、Mg、Zr、Yから選ばれる1種類以上の元素の酸化物、窒化物、炭化物、又は、これらの組合せであり、
前記Li含有遷移金属複合酸化物の平均粒子径が4〜12μmであるリチウムイオン電池用正極活物質。
【請求項2】
前記無機セラミックスが、Al23、SiO2、MgO、ZrO2、SiC、及び、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)の群から選択された1種以上である請求項に記載のリチウムイオン電池用正極活物質。
【請求項3】
請求項1または2に記載のリチウムイオン電池用正極活物質を用いたリチウムイオン電池用正極。
【請求項4】
請求項に記載のリチウムイオン電池用正極を用いたリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池用正極活物質、リチウムイオン電池用正極、及び、リチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池の正極活物質には、一般にリチウム含有遷移金属酸化物が用いられている。具体的には、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn24)等であり、特性改善(高容量化、サイクル特性、保存特性、内部抵抗低減、レート特性)や安全性を高めるためにこれらを複合化することが進められている。車載用やロードレベリング用といった大型用途におけるリチウムイオン電池には、これまでの携帯電話用やパソコン用とは異なった特性が求められている。
【0003】
このようなリチウムイオン電池において求められる電池特性の向上について、従来、種々の研究・開発が行われている。電池特性を向上させるための手段として、例えば、正極材の電極密度を向上させ、大小粒子を混合した材料が提案されている。当該材料では、Li含有遷移金属複合酸化物の大粒子の隙間を同材料の小粒子が埋める構成となっている。
【0004】
このような技術として、例えば、特許文献1では、リチウム複合酸化物粒子の平均粒子径が0.1〜50μmの範囲内にあり、且つ該リチウム複合酸化物粒子の粒度分布にピークが2個以上存在することを特徴とする正極活物質が開示されている。そして、これによれば、優れた初期容量並びに容量保持率を有する非水電解質二次電池を提供可能な正極活物質が得られると記載されている。
【0005】
また、特許文献2では、リチウム金属複合酸化物の粉末を構成する粒子が、リチウム金属複合酸化物の一次粒子が複数集合して形成した二次粒子から主として構成され、該二次粒子の形状は球状または楕円球状であり、粒子径が実質的に1〜40μmの範囲内にあり、平均粒子径が5〜11μmで、粒子径の分布が正規分布である粒子に、粒子径1μm以下の粒子を0.5〜3.5体積%の割合で混合したものからなり、該粉末の比表面積は、該粉末から前記粒子径1μm以下の粒子を除いて構成される粉末の比表面積より最大で0.3m2/g大きく、該粉末のタップ密度は、該粉末から前記粒子径1μm以下の粒子を除いて構成される粉末のタップ密度より最大で0.2g/cm3小さいことを特徴とする非水系電解質二次電池用正極活物質が開示されている。そして、これにより、非水系電解質二次電池用正極活物質を構成する前記粉末の全体を微粉化した時に粉塵発生等の製造上の不都合や、充填密度が低くなることによる容量低下が起こらず、また電解液と正極活物質の接触面積が増え、Liイオンが拡散する場所が増えることで、高出力化が可能な二次電池を提供することができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−82466号公報
【特許文献2】特許第4766840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、大粒径と小粒径のLi含有遷移金属複合酸化物を混合して正極活物質を作製する場合には以下のような問題がある。一般に、小粒径のLi含有遷移金属複合酸化物は充放電により電解液の反応等によって形成される表面変質部分の面積が体積に対して大きいために、劣化が早く、大きく充放電特性が劣る。従って、大粒径及び小粒径のLi含有遷移金属複合酸化物を混合した正極活物質を用いた場合には、電池の充放電機能の低下をもたらすおそれがある。また、小粒径のLi含有遷移金属複合酸化物は、その近傍の電解液を変質させるために、隣接した大粒径のLi含有遷移金属複合酸化物の表面の活性を低下させ、結果として全体の充放電特性を低下させるおそれがある。
【0008】
このような問題に対し、本発明は、電池特性が良好なリチウムイオン電池用正極活物質を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、このような問題を解決するため種々の検討を行った結果、Li含有遷移金属複合酸化物と、小粒径の粒子として所定量の無機セラミックスとを混合することで、電池特性が良好となるリチウムイオン電池用正極活物質が得られることを見出した。
【0010】
上記知見を基礎にして完成した本発明は一側面において、Li含有遷移金属複合酸化物、及び、平均粒子径が0.18〜1μmで10〜1000wtppmの無機セラミックスを含み、前記Li含有遷移金属複合酸化物が、組成式:Li1+xNi1-yMey2+z
(前記式において、MeはMn、Co、Al及びMgのいずれか一種以上であり、xは−0.1〜0.1であり、yはMeで示される金属の合計の組成を示し且つ0.1〜0.5であり、zは−0.1〜0.2である。)
で表され、前記無機セラミックスが、Al、Si、Mg、Zr、Yから選ばれる1種類以上の元素の酸化物、窒化物、炭化物、又は、これらの組合せであり、前記Li含有遷移金属複合酸化物の平均粒子径が4〜12μmであるリチウムイオン電池用正極活物質である。
【0012】
本発明のリチウムイオン電池用正極活物質は別の一実施形態において、前記無機セラミックスが、Al23、SiO2、MgO、ZrO2、SiC、及び、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)の群から選択された1種以上である。
【0015】
本発明は更に別の一側面において、本発明のリチウムイオン電池用正極活物質を用いたリチウムイオン電池用正極である。
【0016】
本発明は更に別の一側面において、本発明のリチウムイオン電池用正極を用いたリチウムイオン電池である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電池特性が良好なリチウムイオン電池用正極活物質を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(リチウムイオン電池用正極活物質の構成)
本発明のリチウムイオン電池用正極活物質は、Li含有遷移金属複合酸化物、及び、平均粒子径が0.02〜1μmで10〜1000wtppmの無機セラミックスを含む。このような構成によれば、無機セラミックスが小粒径の粒子として機能し、大粒径の粒子であるLi含有遷移金属複合酸化物同士の接触を促進するため、正極活物質を用いた電池のレート特性が向上する。また、従来のようにLi含有遷移金属複合酸化物を小粒径の粒子として用いておらず、小粒径の粒子の劣化が抑制されるため、正極活物質を用いた電池のレート特性の劣化が良好に抑制される。
【0019】
無機セラミックスの平均粒子径が0.02μm未満であると、上記レート特性の向上の効果が乏しく、1μmを超えると抵抗が増加するためレート特性が低下する。また、無機セラミックスの含有量が10wtppm未満であると、上記レート特性の向上の効果が乏しく、1000wtppmを超えると正極活物質を用いた電池の初期容量が低下する。無機セラミックスは、平均粒子径が0.1〜1μmであるのが好ましく、0.3〜0.9μmであるのがより好ましい。また、無機セラミックスの含有量は、50〜1000wtppmであるのが好ましく、100〜500wtppmであるのがより好ましい。
【0020】
本発明のリチウムイオン電池用正極活物質は、無機セラミックスが、Al、Si、Mg、Zr、Yから選ばれる1種類以上の元素の酸化物、窒化物、炭化物、又は、これらの組合せであるのが好ましく、Al23、SiO2、MgO、ZrO2、SiC、及び、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)の群から選択された1種以上であるのが好ましい。
【0021】
本発明のリチウムイオン電池用正極活物質は、Li含有遷移金属複合酸化物の平均粒子径が4〜12μmであるのが好ましい。Li含有遷移金属複合酸化物の平均粒子径が4μm未満であると、添加したセラミックス粒子の粒度がLi含有遷移金属複合酸化物の粒度に比べ相対的に増大するため、添加したセラミックス粒子がLi含有遷移金属複合酸化物同士の接触を逆に妨げる効果が生じるおそれがある。また、Li含有遷移金属複合酸化物の平均粒子径が12μmを超えると、Li含有遷移金属複合酸化物粒子間の隙間が大きくなってLi含有遷移金属複合酸化物粒子同士の接触を促進するためには多量のセラミックス粒子を添加する必要があり、電池の放電容量を低下させるという問題が生じるおそれがある。Li含有遷移金属複合酸化物の平均粒子径は、4〜10μmであるのがより好ましく、6〜10μmであるのが更により好ましい。
【0022】
本発明のリチウムイオン電池用正極活物質は、Li含有遷移金属複合酸化物が、組成式:Li1+xNi1-yMey2+z
(前記式において、MeはMn、Co、Al及びMgのいずれか一種以上であり、xは−0.1〜0.1であり、yはMeで示される金属の合計の組成を示し且つ0.1〜0.5であり、zは−0.1〜0.2である。)
で表されるのが好ましい。
【0023】
リチウムイオン電池用正極活物質における全金属に対するリチウムの比率が0.9〜1.1であるが、これは、0.9未満では、安定した結晶構造を保持し難く、1.1超では電池の高容量が確保できなくなるおそれがあるためである。また、リチウムイオン電池用正極活物質におけるニッケルの組成が0.5〜0.9であるため、当該リチウムイオン電池用正極活物質を用いたリチウムイオン電池の容量、出力、安全性の三つがバランスよく向上する。
【0024】
(リチウムイオン電池用正極活物質の製造方法)
本発明の実施形態に係るリチウムイオン電池用正極活物質の製造方法について詳細に説明する。
−Li含有遷移金属複合酸化物粉体の作製−
まず、金属原子が所定量になるように硝酸ニッケル、必要に応じて硝酸コバルト、硝酸マンガン、硝酸アルミニウム、硝酸マグネシウムを純水に溶解した金属塩溶液を作製する。次に、炭酸リチウムを、リチウムと前記金属元素合計とのモル数が0.9〜1.1:1になるように純水に添加して分散させた溶液を撹拌しながら前記金属塩溶液を滴下し、Li、Ni、場合によってはCo、Mn、Al、Mgを含むスラリーを作製する。
次に、前記スラリーを、例えば、三流体ノズルを有するマイクロミストドライヤーを用いて噴霧乾燥し、Li、Ni、場合によってはCo、Mn、Al、Mgを含む粉体を得る。
次に、前記粉体がNiを全金属量に対して70%以上90%以下含む場合は、例えばローラーハースキルンを用いて、当該粉体を880℃で2時間焼成後、1時間かけて700℃まで降温して2時間保持した後、3時間かけて室温まで冷却する。また、前記粉体がNiを全金属量に対して50%以上70%未満含む場合は、例えばローラーハースキルンを用いて、当該粉体を900℃で2時間焼成後、1時間かけて700℃まで降温して2時間保持した後、3時間かけて室温まで冷却する。
次に、得られた焼成物を、例えばロールミルとパルベライザーを用いて解砕し、Li含有遷移金属複合酸化物粉体を得る。
【0025】
−無機セラミックス粉の準備−
無機セラミックス粉を適宜、例えばジェットミル等で粉砕し所定の粒度の物を作製しておく。
【0026】
−正極活物質の作製−
上述のLi含有遷移金属複合酸化物の粉体に、上述の無機セラミックス粉を添加し、例えばボールミルを用いて混合することで、本発明のリチウムイオン電池用正極活物質が得られる。
【0027】
(リチウムイオン電池用正極及びそれを用いたリチウムイオン電池の構成)
本発明の実施形態に係るリチウムイオン電池用正極は、例えば、上述の構成のリチウムイオン電池用正極活物質と、導電助剤と、バインダーとを混合して調製した正極合剤をアルミニウム箔等からなる集電体の片面または両面に設けた構造を有している。また、本発明の実施形態に係るリチウムイオン電池は、このような構成のリチウムイオン電池用正極を備えている。
【実施例】
【0028】
以下、本発明及びその利点をより良く理解するための実施例を提供するが、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。
【0029】
−Li含有遷移金属複合酸化物粉体の作製−
(実施例1〜7、9〜23、比較例1〜14、参考例1〜3、9
まず、Ni、Mn、Co原子のモル比がそれぞれ8:1:1になるように硝酸ニッケル、硝酸マンガン、硝酸コバルトを純水に溶解した金属塩溶液を作製した。次に、炭酸リチウムを、リチウムと前記金属元素合計とのモル比が1.04:1になるように純水に添加して分散させた溶液を撹拌しながら前記金属塩溶液を滴下し、Li、Ni、Co及びMnを含むスラリーを作製した。次に、前記スラリーを、三流体ノズルを有するマイクロミストドライヤーを用いて噴霧乾燥し、Li、Ni、Co及びMnを含む粉体を得た。次に、ローラーハースキルンを用いて、当該粉体を室温から880℃まで1時間かけて昇温し、2時間保持することで焼成を行った後、1時間かけて700℃まで降温して2時間保持した後、3時間かけて室温まで冷却した。次に、得られた焼成物を、ロールミルとパルベライザーを用いて解砕し、パルベライザーにおける解砕強度を調整し3種類の粒度のLi含有遷移金属複合酸化物粉体Aを得た。
【0030】
(実施例24〜25、比較例15、参考例4)
Ni、Mn原子のモル比がそれぞれ8:2になるように硝酸ニッケル、硝酸マンガンを純水に溶解した金属塩溶液を作製した。次に、炭酸リチウムを、リチウムと前記金属元素合計とのモル比が1.02:1になるように純水に添加して分散させた溶液を撹拌しながら前記金属塩溶液を滴下し、Li、Ni、Mnを含むスラリーを作製した。次に、前記スラリーを、三流体ノズルを有するマイクロミストドライヤーを用いて噴霧乾燥し、Li、Ni、Mnを含む粉体を得た。次に、ローラーハースキルンを用いて、当該粉体を室温から880℃まで1時間かけて昇温し、2時間保持することで焼成を行った後、1時間かけて700℃まで降温して2時間保持した後、3時間かけて室温まで冷却した。次に、得られた焼成物を、ロールミルとパルベライザーを用いて解砕し、Li含有遷移金属複合酸化物粉体Bを得た。
【0031】
(実施例26〜27、比較例16、参考例5)
Ni、Co、Al原子のモル比がそれぞれ8:1:1になるように硝酸ニッケル、硝酸コバルト、硝酸アルミニウムを純水に溶解した金属塩溶液を作製した。次に、炭酸リチウムを、リチウムと前記金属元素合計とのモル比が1.00:1になるように純水に添加して分散させた溶液を撹拌しながら前記金属塩溶液を滴下し、Li、Ni、Co、Alを含むスラリーを作製した。次に、前記スラリーを、三流体ノズルを有するマイクロミストドライヤーを用いて噴霧乾燥し、Li、Ni、Co、Alを含む粉体を得た。次に、ローラーハースキルンを用いて、当該粉体を室温から880℃まで1時間かけて昇温し、2時間保持することで焼成を行った後、1時間かけて700℃まで降温して2時間保持した後、3時間かけて室温まで冷却した。次に、得られた焼成物を、ロールミルとパルベライザーを用いて解砕し、Li含有遷移金属複合酸化物粉体Cを得た。
【0032】
(実施例28〜29、比較例17、参考例6)
Ni、Co、Mg原子のモル比がそれぞれ8:1:1になるように硝酸ニッケル、硝酸コバルト、硝酸マグネシウムを純水に溶解した金属塩溶液を作製した。次に、炭酸リチウムを、リチウムと前記金属元素合計とのモル比が1.04:1になるように純水に添加して分散させた溶液を撹拌しながら前記金属塩溶液を滴下し、Li、Ni、Co、Mgを含むスラリーを作製した。次に、前記スラリーを、三流体ノズルを有するマイクロミストドライヤーを用いて噴霧乾燥し、Li、Ni、Co、Mgを含む粉体を得た。次に、ローラーハースキルンを用いて、当該粉体を室温から880℃まで1時間かけて昇温し、2時間保持することで焼成を行った後、1時間かけて700℃まで降温して2時間保持した後、3時間かけて室温まで冷却した。次に、得られた焼成物を、ロールミルとパルベライザーを用いて解砕し、Li含有遷移金属複合酸化物粉体Dを得た。
【0033】
(実施例30〜31、比較例18、参考例7)
Ni、Mn、Co原子のモル比がそれぞれ5:3:2になるように硝酸ニッケル、硝酸マンガン、硝酸コバルトを純水に溶解した金属塩溶液を作製した。次に、炭酸リチウムを、リチウムと前記金属元素合計とのモル比が1.04:1になるように純水に添加して分散させた溶液を撹拌しながら前記金属塩溶液を滴下し、Li、Ni、Mn、Coを含むスラリーを作製した。次に、前記スラリーを、三流体ノズルを有するマイクロミストドライヤーを用いて噴霧乾燥し、Li、Ni、Mn、Coを含む粉体を得た。次に、ローラーハースキルンを用いて、当該粉体を室温から900℃まで1時間かけて昇温し、2時間保持することで焼成を行った後、1時間かけて700℃まで降温して2時間保持した後、3時間かけて室温まで冷却した。次に、得られた焼成物を、ロールミルとパルベライザーを用いて解砕し、Li含有遷移金属複合酸化物粉体Eを得た。
【0034】
(実施例32〜33、比較例19、参考例8)
Ni、Co、Al、Mg原子のモル比がそれぞれ5:3:1:1になるように硝酸ニッケル、硝酸コバルト、硝酸アルミニウム、硝酸マグネシウムを純水に溶解した金属塩溶液を作製した。次に、炭酸リチウムを、リチウムと前記金属元素合計とのモル比が1.04:1になるように純水に添加して分散させた溶液を撹拌しながら前記金属塩溶液を滴下し、Li、Ni、Co、Al、Mgを含むスラリーを作製した。次に、前記スラリーを、三流体ノズルを有するマイクロミストドライヤーを用いて噴霧乾燥し、Li、Ni、Co、Al、Mgを含む粉体を得た。次に、ローラーハースキルンを用いて、当該粉体を室温から900℃まで1時間かけて昇温し、2時間保持することで焼成を行った後、1時間かけて700℃まで降温して2時間保持した後、3時間かけて室温まで冷却した。次に、得られた焼成物を、ロールミルとパルベライザーを用いて解砕し、Li含有遷移金属複合酸化物粉体Fを得た。
【0035】
−無機セラミックス粉の準備−
実施例で用いるために、市販の無機セラミックス粉を適宜ジェットミルで粉砕し所定の粒度の物を作製した。粒度はレーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(日機装株式会社製マイクロトラック)で測定し、得られた粒度分布曲線における体積累積頻度50%の粒径を平均粒径とした。なお、比較例3で用いたAl23は本機での測定範囲より小さい粒度であったため、走査型電子顕微鏡で観察したところ0.01μm程度であった。
【0036】
−小粒径のLi含有遷移金属複合酸化物の作製−
比較例で用いるために、前記パルベライザーで粉砕後のLi含有遷移金属複合酸化物の粉体を、さらにジェットミルで粉砕し比較例で添加用の小粒径のLi含有遷移金属複合酸化物を作製した。
【0037】
(評価)
−Li含有遷移金属複合酸化物組成の評価−
各Li含有遷移金属複合酸化物中の金属含有量は、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP−OES)で測定し、各金属の組成を測定した。また、リチウム含有量はイオンクロマト法で、酸素含有量はLECO法で測定した。
実施例1〜7、9〜23、比較例1〜14、参考例1〜3、9で用いたLi含有遷移金属複合酸化物Aの組成はLi1.04Ni0.80Mn0.10Co0.102.15であった。
実施例24〜25、比較例15、参考例4で用いたLi含有遷移金属複合酸化物Bの組成はLi1.02Ni0.80Mn0.202.12であった。
実施例26〜27、比較例16、参考例5で用いたLi含有遷移金属複合酸化物Cの組成はLi1.00Ni0.80Co0.10Al0.102.04であった。
実施例28〜29、比較例17、参考例6で用いたLi含有遷移金属複合酸化物Dの組成はLi1.04Ni0.80Co0.10Mg0.102.07であった。
実施例30〜31、比較例18、参考例7で用いたLi含有遷移金属複合酸化物Eの組成はLi1.04Ni0.50Mn0.30Co0.202.12であった。
実施例32〜33、比較例19、参考例8で用いたLi含有遷移金属複合酸化物Fの組成はLi1.04Ni0.50Co0.30Al0.10Mg0.102.16であった。
【0038】
−平均粒径の評価−
大粒径のLi含有遷移金属複合酸化物の粒度分布、及び、小粒径のLi含有遷移金属複合酸化物の粒度分布(比較例のみ)を、それぞれレーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(日機装株式会社製マイクロトラック)によって測定し、得られた粒度分布曲線における体積累積頻度50%の粒径を平均粒径とした。
【0039】
−正極活物質の作製−
上述のLi含有遷移金属複合酸化物の粉体に、上述の無機セラミックス粉(実施例及び比較例)或いは上述の小粒径のLi含有遷移金属複合酸化物(比較例)を添加し、ボールミルを用いて混合することで、リチウムイオン電池用正極活物質を作製した。
【0040】
−電池特性の評価−
正極活物質96wt%、PVDF1.6wt%、カーボンブラック2.4wt%を秤量し、PVDFをN−メチルピロリドンに溶解したものに、正極活物質とカーボンブラックを混合したものを添加して得られたスラリーをAl箔上に塗布して乾燥後にプレスして正極とした。対極をLi金属、電解液に1M−LiPF6をEC−DMC(1:1)に溶解したものを用いて評価用の2032型コインセルを作製した。25℃恒温槽中で、充放電電圧範囲は3.0V〜4.3Vとし、すべてのサイクルで充電は0.1Cで行い、放電は1サイクル目と21サイクル目は0.1Cで行い、その他のサイクルは1Cで行った。2サイクル目1Cにおける放電容量を1サイクル目0.1Cにおける放電容量で除して初期レート特性、22サイクル目1Cにおける放電容量を21サイクル目0.1Cにおける放電容量で除して21サイクル後のレート特性を算出した。
これらの結果を表1、2に示す。
【0041】
【0042】
【表2】
【0043】
(評価結果)
表1及び2は、ベースとなる大粒径のLi含有遷移金属複合酸化物の組成によって整理されている。なお、参考例1〜8は、ベースとなる大粒子のみのサンプルである。正極活物質は、一般に組成によって特性が異なる。例えば、Niが多い方が容量は高いが、レート、サイクル経過後のレートが悪くなるという特徴を有している。
ベースとなる大粒径のLi含有遷移金属複合酸化物の組成ごとに比較した場合、セラミックス粒子添加により、1サイクル目の容量はほぼ変わらずに、サイクル経過後のレートが向上していることがわかる。また、同じ組成の小粒径のLi含有遷移金属複合酸化物粒子を添加した場合、初回のレートはわずかに改善が見られるものの、サイクル経過後は、添加しない場合より大きく劣化していることがわかる。
また、実施例1〜7、9〜33、参考例9は、いずれも、Li含有遷移金属複合酸化物、及び、平均粒子径が0.02〜1μmで10〜1000wtppmの無機セラミックスを含むため、電池特性がいずれも良好であった。
また、比較例1〜19は、いずれも、小粒子として無機セラミックスを含まない、或いは、小粒子として無機セラミックスを含むが、その平均粒子径が0.02〜1μm且つ10〜1000wtppmの範囲外であったため、電池特性の少なくともいずれかが不良であった。