(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6050605
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】丸棒鋼探傷装置及びその方法
(51)【国際特許分類】
G01N 29/275 20060101AFI20161212BHJP
【FI】
G01N29/275
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-105830(P2012-105830)
(22)【出願日】2012年5月7日
(65)【公開番号】特開2013-234865(P2013-234865A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2015年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000180070
【氏名又は名称】山陽特殊製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100067541
【弁理士】
【氏名又は名称】岸田 正行
(74)【代理人】
【識別番号】100126147
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 成年
(72)【発明者】
【氏名】青山 陽亮
【審査官】
横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭59−126952(JP,A)
【文献】
特開2011−214891(JP,A)
【文献】
特開昭60−198455(JP,A)
【文献】
特開平07−191001(JP,A)
【文献】
特開2006−337151(JP,A)
【文献】
特開2006−250873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00−29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水浸超音波探傷により丸棒鋼内の欠陥を検出する丸棒鋼探傷装置であって、
前記丸棒鋼と所定の間隔をおいて備わり、前記丸棒鋼の圧延方向と垂直な方向に電子走査を行う円弧状の電子走査式アレイ探触子と、
前記円弧状の電子走査式アレイ探触子を前記丸棒鋼の圧延方向に所定のピッチで機械走査させるアレイ探触子移動部と、を有し、
前記丸棒鋼の所定の領域について、前記円弧状の電子走査式アレイ探触子の電子走査方向と前記円弧状の電子走査式アレイ探触子の機械走査方向とを垂直とし、前記電子走査と前記所定のピッチの機械走査を交互に行う探傷を行い、
前記丸棒鋼を所定の角度で前記丸棒鋼の軸を中心に回転させる回転駆動部をさらに有し、
前記丸棒鋼の所定の領域について探傷を行った後に、前記丸棒鋼を所定の角度で回転させ、前記丸棒鋼の他の領域についても探傷を行うことを特徴とする丸棒鋼探傷装置。
【請求項2】
水浸超音波探傷により丸棒鋼内の欠陥を検出する丸棒鋼探傷方法であって、
前記丸棒鋼と所定の間隔をおいて備わる円弧状の電子走査式アレイ探触子により、前記丸棒鋼の圧延方向と垂直な方向に電子走査を行い、前記円弧状の電子走査式アレイ探触子を前記丸棒鋼の圧延方向に所定のピッチで機械走査を行って、前記丸棒鋼の所定の領域について、前記円弧状の電子走査式アレイ探触子の前記電子走査の方向と前記円弧状の電子走査式アレイ探触子の前記機械走査の方向とを垂直とし、前記電子走査と前記所定のピッチの機械走査を交互に行う探傷を行い、
前記丸棒鋼の所定の領域について探傷を行った後に、前記丸棒鋼を所定の角度で前記丸棒鋼の軸を中心に回転させ、前記丸棒鋼の他の領域についても探傷をさらに行うことを特徴とする丸棒鋼探傷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレイ探触子を用いた水浸超音波探傷による丸棒鋼探傷装置及びその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特殊鋼からなる丸棒鋼は、鋼片が圧延されることで得られる。通常は、タンデムに並べられた粗列圧延機、中間列圧延機及び仕上列圧延機による多段圧延が施される。この圧延によって鋼片は徐々に細径化し且つ長尺化して、丸棒鋼が得られる。ユーザーの要求によっては、圧延によって得られた丸棒鋼に、さらに、熱処理、ピーリング加工などを施して丸棒鋼(成品)とする。
【0003】
このように製造される丸棒鋼には中心部に欠陥が存在することがある。欠陥の大きさや数によっては丸棒鋼の品質を損なうため、丸棒鋼の用途にあわせた欠陥の検査を行い、高品質の丸棒鋼のみを出荷する必要がある。また、欠陥の実寸法(√AREA)は数100μm以下であるが、そのうち特に大きな100μm級またはそれ以上の寸法の欠陥を精度よく検出する必要がある。なお、√AREAとは、観察する方向からみたときの欠陥の面積の平方根であって、検知された欠陥の長辺をA、短辺をBとした場合において、√AREA=√(A×B)とするのが一般的である。ここで、短辺(B)方向は長辺(A)方向と直交するようにとる。√AREAとは、欠陥を等価の長方形に見立てて平均径を求める方法である。
【0004】
丸棒鋼の欠陥の代表的な検査方法には、例えば、アレイ探触子とこのアレイ探触子に接続された制御盤とを備える装置において、アレイ探触子は丸棒鋼の周りを相対的に回転し、丸棒鋼はこの丸棒鋼の軸手方向に進行する方法がある(例えば、特許文献1参照)。このフェイズドアレイ技術を用いる装置によれば、回転とピッチ送りを同時に行い探傷を行うスパイラル走査(
図3(a))、もしくは、アレイ探触子は固定され電子走査を行うと共に、丸棒鋼を1回転させて探傷を行いその後軸方向に1ピッチ送りする送り走査(
図3(b))などの機械走査が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-309664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の走査方法ではアレイ探触子の電子走査方向(アレイ素子配列方向)と機械走査方向が同じであるため、アレイ技術を生かせなかった。つまり、機械走査のみの探傷であるため探傷に時間が必要となり、迅速な評価が困難であった。
【0007】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされたもので、超音波探傷による迅速な欠陥検出が可能な丸棒鋼探傷装置及びその方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
水浸超音波探傷により丸棒鋼内の欠陥を検出する丸棒鋼探傷装置であって、丸棒鋼と所定の間隔をおいて備わり、丸棒鋼の圧延方向と垂直な方向に電子走査を行う円弧状の電子走査式アレイ探触子と、円弧状の電子走査式アレイ探触子を丸棒鋼の圧延方向に所定のピッチで機械走査させるアレイ探触子移動部と、を有し、丸棒鋼の所定の領域について、円弧状の電子走査式アレイ探触子の電子走査方向と円弧状の電子走査式アレイ探触子の機械走査方向とを垂直とし、電子走査と所定のピッチの機械走査を交互に行う探傷を行い、丸棒鋼を所定の角度で丸棒鋼の軸を中心に回転させる回転駆動部をさらに有し、丸棒鋼の所定の領域について探傷を行った後に、丸棒鋼を所定の角度で回転させ、丸棒鋼の他の領域についても探傷を行うことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、
水浸超音波探傷により丸棒鋼内の欠陥を検出する丸棒鋼探傷方法であって、丸棒鋼と所定の間隔をおいて備わる円弧状の電子走査式アレイ探触子により、丸棒鋼の圧延方向と垂直な方向に電子走査を行い、円弧状の電子走査式アレイ探触子を前記丸棒鋼の圧延方向に所定のピッチで機械走査を行って、丸棒鋼の所定の領域について、円弧状の電子走査式アレイ探触子の電子走査の方向と円弧状の電子走査式アレイ探触子の機械走査の方向とを垂直とし、電子走査と所定のピッチの機械走査を交互に行う探傷を行い、丸棒鋼を所定の角度で丸棒鋼の軸を中心に回転させ、丸棒鋼の他の領域についても探傷をさらに行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の丸棒鋼探傷装置及びその方法によれば、欠陥の探傷を迅速に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態の丸棒鋼探傷装置の構成を示す図である。
【
図2】本実施形態の丸棒鋼探傷装置の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態である丸棒鋼探傷装置及びその方法について、図を参照して詳細に説明をする。
【0013】
図1は、本実施形態の丸棒鋼探傷装置の構成を示す図である。
図1(a)は、本実施形態の丸棒鋼探傷装置を丸棒鋼のT断面で見た図であり、
図1(b)は、本実施形態の丸棒鋼探傷装置の正面図である。
【0014】
本実施形態の丸棒鋼探傷装置100は、制御部10と、アレイ探触子(電子走査式アレイ探触子)20とから構成される。
【0015】
制御部10は、例えば、パーソナルコンピュータ等で構成される。
【0016】
検査対象となる丸棒鋼Aは、水槽30にセットされる。また、水槽30内は水40で満たされている。そして、水槽30内の丸棒鋼A全体が水40に完全に浸ることにより、本実施形態の丸棒鋼探傷装置100は、いわゆる水浸法による超音波探傷を行うことが可能である。
【0017】
また、本実施形態の丸棒鋼探傷装置100には、丸棒鋼を回転させる不図示のターニングローラー等の回転機構が付設されており、丸棒鋼Aを
図1中のD2方向へ所定の角度で回転させる。
【0018】
アレイ探触子20の丸棒鋼Aに対向する面には、略円周面状の探触子面20aが形成されている。
【0019】
アレイ探触子20には、アレイ探触子20を丸棒鋼の軸方向(圧延方向)に往復動させる不図示の移動機構が付設されており、アレイ探触子20を
図1中のD1方向へ往復動させる。また、アレイ探触子20の電子走査の方向を
図1中のD3で示す。アレイ探触子20は
図1中のD3方向に電子走査を行うことにより、鋼中の欠陥を検知する。
【0020】
図からわかるように、本実施形態において、アレイ探触子20の電子走査の方向D3と、アレイ探触子20を往復動させる機械走査の方向D1とは垂直となる。
【0021】
アレイ探触子20の電子走査及び往復動作及び丸棒鋼の回転動作は制御部10で制御され、制御部10は、アレイ探触子20で検知された欠陥信号のすべてを総合して、丸棒鋼A内の欠陥検出位置のマップなどを作成する。
【0022】
次に、本実施形態の丸棒鋼探傷装置の動作について説明をする。
図2は、本実施形態の丸棒鋼探傷装置の動作を説明する図である。
【0023】
なお、以下の説明では、丸棒鋼Aを断面A1、A2、A3、A4を各々軸方向に延伸した4つの部分に分けて探傷動作を行う例で説明を行うが、断面の分割数はこれに限られるものではなく、アレイ探触子の電子走査範囲に応じて適宜変更すればよい。
【0024】
まず、本実施形態の丸棒鋼探傷装置では、アレイ探触子20が、所定位置においてD3方向に電子走査を行い、当該所定位置の丸棒鋼の欠陥を検出する。
【0025】
次に、アレイ探触子20をD1の方向1に1ピッチ送り、この位置においてD3方向に電子走査を行い、当該所定位置の丸棒鋼の欠陥を検出する。
【0026】
以後、この動作を丸棒鋼Aの右端まで繰り返し、丸棒鋼Aの断面A1領域についての探傷が完了する。
【0027】
次に、丸棒鋼AをD2の方向2に所定の角度回転させ、当該位置においてD3方向に電子走査を行い、当該所定位置の丸棒鋼の欠陥を検出する。
【0028】
次に、アレイ探触子20をD1の方向3に1ピッチ送り、この位置においてD3方向に電子走査を行い、当該所定位置の丸棒鋼の欠陥を検出する。
【0029】
以後、この動作を丸棒鋼Aの左端まで繰り返し、丸棒鋼Aの断面A2領域についての探傷が完了する。
【0030】
以後、丸棒鋼AをD2の方向4に所定の角度回転させ、同様の探傷動作を丸棒鋼Aの断面A3、A4領域についても行う。
【0031】
(実験例)
φ80×250mmL棒鋼中の√Area100μm級欠陥を検出する条件で探傷を行った。従来走査方法(送り走査)では、探傷時間が15minであったものが、本実施形態の丸棒鋼探傷装置及びその方法では1.75minまで短縮された。よって、本実施形態の丸棒鋼探傷装置及びその方法の有効性が確認された。
【0032】
以上説明したように、本実施形態の丸棒鋼探傷装置及びその方法によれば、アレイ探触子20の電子走査の方向D3と、アレイ探触子20の機械走査の方向D1とを垂直の関係とすることにより、欠陥の探傷を迅速に行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0033】
100:本実施形態の丸棒鋼探傷装置
10:制御部
20:アレイ探触子ユニット
30:水槽
40:水