特許第6050839号(P6050839)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6050839
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】表面選択性研磨組成物
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20161212BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20161212BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20161212BHJP
【FI】
   H01L21/304 622D
   C09K3/14 550D
   C09K3/14 550Z
   H01L21/304 622X
   B24B37/00 H
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-559578(P2014-559578)
(86)(22)【出願日】2014年1月29日
(86)【国際出願番号】JP2014000461
(87)【国際公開番号】WO2014119301
(87)【国際公開日】20140807
【審査請求日】2016年9月8日
(31)【優先権主張番号】61/759,956
(32)【優先日】2013年2月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100108914
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 壯兵衞
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 勇毅
(72)【発明者】
【氏名】キム フーイーサン
(72)【発明者】
【氏名】ミラー アン
【審査官】 山口 大志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−021291(JP,A)
【文献】 特開2009−212378(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 37/00
C09K 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コロイダルシリカ及び水溶性ポリマーを含む研磨組成物であって、
前記研磨組成物は6以下のpHを有し、
前記コロイダルシリカが前記コロイダルシリカに結合された有機酸を含み、
前記水溶性ポリマーがポリオキシアルキレンヒドロカルビルエーテルを含み、
前記ポリオキシアルキレンヒドロカルビルエーテル中のヒドロカルビル基が12個以上の炭素原子を有する研磨組成物。
【請求項2】
前記ポリオキシアルキレンヒドロカルビルエーテルが、下記の式(I)で表される化合物、あるいは前記化合物の硫酸塩、有機カルボキシレート、またはリン酸エステルであり、下記式(I)において、mは10〜30であり、nは0〜30であり、Rはヒドロカルビル部である、請求項1に記載の組成物。
【化1】
【請求項3】
前記ポリオキシアルキレンヒドロカルビルエーテルは11〜20の疎水性親油性バランス(HLB)値を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリオキシアルキレンヒドロカルビルエーテルがポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテルである請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリオキシアルキレンヒドロカルビルエーテルが、質量比で、前記組成物中100〜450ppm存在する請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
SiN、酸化シリコン、及び/又はポリシリコンを、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物に接触させることを含む研磨方法。
【請求項7】
前記SiNが、酸化シリコン及び/又はポリシリコンに対して選択的に除去される請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化シリコン表面に対する窒化シリコン(SiN)表面の研磨速度比が高く及び/又は、多結晶シリコン(ポリSi)表面に対するSiN表面の研磨速度の比が高い特性を有する、シリカ及び水溶性ポリマーを含む研磨組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造における窒化シリコン膜除去工程は、例えば素子分離構造形成工程における停止膜としての窒化シリコン膜除去等、様々な局面に見られるが、従来このような工程は燐酸硝酸混液等を150℃程度の高温下で用いたウェットエッチング処理で実施されるのが一般的であり、砥粒を用いた研磨工程が利用されることは殆どなかった。
例えば、特許文献1に記載の方法では、酸化シリコン砥粒に対して燐酸あるいは燐酸誘導体を添加することで、(窒化シリコン膜に対する研磨速度)/(酸化シリコン膜に対する研磨速度)で表される選択比が最大で10倍前後となっている。特許文献1に記載の研磨用組成物の場合、窒化シリコン膜を研磨して酸化シリコン膜と窒化シリコン膜が共存する面が露出した時点で研磨を終了する工程においては、残留すべき窒化シリコン膜が過剰研磨時に化学的侵食される弊害がある程度生じてしまう。また、燐酸自体がシリコン膜や酸化シリコン膜に対して浸透性を有している為、製造される半導体の電気的特性に影響を及ぼす可能性もある。これらの悪影響を防止または抑制する目的で、燐酸または燐酸誘導体の添加量を減少させると、窒化シリコン膜の研磨速度が低下してしまって窒化シリコン膜の除去能率が悪化するだけでなく、選択比も低下してしまう。この結果、本来、研磨停止膜であるべき酸化シリコン膜をも付随的に研磨され、停止膜の露出密度に応じて相対的な凹部を発生させるエロージョンにより、平坦性が損なわれることとなる。
【0003】
また、特許文献2には、ナイトライド(窒化シリコン膜等)に対して、高選択比を有する研磨用組成物を提供するために、研磨スラリーのpHを1〜5の範囲内に調整することが提案されている。しかしながら、この研磨組成物を使用しても特許文献1と同様の弊害を伴うだけでなく、使用する砥粒自体の機械的研磨力による酸化シリコン膜の研磨速度が発現する為、目的とする選択比も2程度と非常に低くなってしまう。
さらに、特許文献3では、コロイダルシリカとスルホン酸基又はスルホン酸基を有する有機酸とを含有するpHが2.5〜5の研磨組成物が提案されている。しかしながら、この研磨組成物も窒化ケイ素の研磨速度に関するユーザーの要求を十分に満足するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−176773号公報
【特許文献2】特開2004−214667号公報
【特許文献3】特開2010−41037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体デバイス製造プロセスにおいて、高速でSiNを研削、研磨及び/又は除去すること、ならびに、酸化シリコン及び/又はポリシリコンに対して高い選択比で選択的にSiNを研磨することが必要とされている。本発明は、SiNを高い選択比で研磨するための研磨組成物及び研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の実施形態の研磨組成物を使用することにより、酸化シリコン表面の研磨速度に対する窒化シリコン(SiN)表面の研磨速度比が高く、多結晶シリコン(Poly−Si、ポリシリコン)表面の研磨速度に対するSiN表面の研磨速度比が高い特性を有する、シリカ及び水溶性ポリマーを含む研磨組成物を提供することができる。
一実施形態において、このような研磨組成物はシリカ及び水溶性ポリマーを含み、6以下のpHを有し、この際、シリカはその表面に結合した状態で1以上の有機酸を含み、水溶性ポリマーはヒドロカルビル基が12以上の炭素原子を有するポリオキシアルキレンヒドロカルビルエーテルである。
【0007】
一実施形態において、シリカはコロイダルシリカである。シリカは、本明細書に提供されるように様々な表面を研磨及び/又は研削する効果的な砥粒である。
一実施形態において、ポリオキシアルキレンヒドロカルビルエーテルは、C1837O(CHCHO)20H又はポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテルである。
他の実施形態において、ポリオキシアルキレンヒドロカルビルエーテルは、質量%で組成物中0.001%〜0.5%存在する。他の実施形態において、ポリオキシアルキレンヒロドカルビルエーテルは、質量比で組成物中100〜450ppm存在する。研磨組成物中のポリオキシアルキレンヒドロカルビルエーテルが0.001%未満または0.5%を超えると酸化シリコン及び/又はポリシリコン表面の研磨速度に対するSiN表面の研磨速度比が低くなる傾向にある。
【0008】
他の実施形態において、組成物は更に、コロイダルシリカと結合される有機酸以外の有機酸を含む。
様々な実施形態において、本発明で提供される研磨組成物のSiN/酸化シリコン及び/又はSiN/ポリシリコン除去選択性は、研磨組成物の希釈、特に組成物のシリカ成分の希釈によって制御される。いくつかの実施形態では、シリカ濃度が低くなると、SiN/酸化シリコン除去選択性が高くなる。
意外なことに、本発明の研磨組成物のSiN/ポリシリコン除去選択性は、水溶性ポリマーの濃度を変化させることによって制御される。水溶性ポリマーの濃度が高くなればなるほど、SiN/ポリシリコン除去選択性が高くなる。理論によって束縛されるものではないが、水溶性ポリマーは、SiN上よりもポリシリコン上に広範囲に存在する及び/又はポリシリコンを被覆するので、研磨中にポリシリコンの除去を妨げると考えられる。
【0009】
また、本明細書において提供されるのは、本発明の研磨組成物を用いることを含む研磨のための方法である。本発明の研磨組成物及び方法は、例えば半導体デバイス製造プロセスにおいて有用である。いくつかの実施形態では、そのような組成物は、柔らかい研磨パッドを用いる方法において有用である。そのような柔らかいパッドの例は、限定するものではないが、ポリウレタン製のソフトパッドを含む。他の実施形態では、そのような組成物は、硬い又は中程度の硬さの研磨パッドを用いる方法において有用である。そのような硬いパッドの例は、限定するものではないが、ポリウレタン製のハードパッドを含む。
別の実施形態において、研磨のための方法は、SiN、酸化シリコン、及び/又はポリシリコンを、本発明の研磨組成物に接触させることを含む。別の実施形態では、SiNは、酸化シリコン及び/又はポリシリコンに対して選択的に除去される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の研磨組成物が、低欠陥ILD組成物よりも研磨性に優れることを示す。
図2】本発明の研組成物であるサンプルAの欠陥数が従来例のサンプルBと同等又はサンプルBよりも少ないことをグラフで示す。
図3】本発明の研磨組成物であるサンプルAが、TEOSシリカ及びポリシリコンよりもSiNに対して選択的な研磨機能が優れていること、ならびに研磨率及び選択性に対する組成物濃度の影響をグラフで示す。
図4】サンプルAの研磨速度をグラフ及び表で示す。
図5A】本発明の研磨組成物中の成分の濃度を変更することが研磨速度及び研磨選択性に与える影響をグラフで示す。
図5B】本発明の研磨組成物中の成分の濃度を変更することが研磨速度及び研磨選択性に与える影響をグラフで示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書における以下の用語は、以下のように定義される。単数で使用される用語であっても、文脈が示すとおり、複数の形態を含む。例えば、pH調整剤は1つ以上のpH調整剤を意味する。
「約」は、文脈が示すとおり、ある量の±1%、±%5%、又は±10%を指す。本明細書で用いる場合、あらゆる量、数、及びその範囲は、「約」という言葉を前に付す。
「ヒドロカルビル」は、炭素原子及び水素原子を含有する部位を指す。炭素原子数は、通常約1〜70(C〜C70)である。
「アルキル」は、飽和の、直鎖又は分岐の1価のヒドロカルビル部を指す。炭素原子数は、通常1〜40である。
「アルケニル」は、5までの炭素−炭素二重結合を含有する、直鎖又は分岐の1価のヒドロカルビル部を指す。炭素原子数は、通常1〜40である。
「アルキニル」は、5までの炭素−炭素三重結合を含有する、直鎖又は分岐の1価のヒドロカルビル部を指す。炭素原子数は、通常1〜40である。
【0012】
「アリール」は、芳香族の環式ヒドロカルビル部を指す。炭素原子数は、通常6〜10である。
「シクロアルキル」環式の非芳香族ヒドロカルビル部を指す。シクロアルキルは、完全に飽和しているか又は部分的に不飽和の場合がある。炭素原子数は、通常3〜15である。部分的に不飽和のシクロアルキル基は1〜4の炭素−炭素二重結合を含有する。
「アルキレン」は、飽和の、2価の直鎖又は分岐のヒドロカルビル部を指す。炭素原子数は、通常2〜200である。
「ポリオキシアルキレン」は、8〜60の酸素原子が炭素原子鎖を置換したアルキレンを指す。オキシアルキレンの繰り返し数は、通常8〜60である。
【0013】
(組成物及び方法)
本発明は、酸化シリコン表面に対するSiN表面の、及びポリシリコン表面に対するSiN表面の高い研磨速度比を示す研磨組成物を提供する。一態様において、そのような組成物はシリカ及び水溶性ポリマーを含み、6以下のpHを有する。この場合、シリカはその表面に結合した状態で1つ以上の有機酸又はその塩を含み、水溶性ポリマーはヒドロカルビル基が12以上の炭素原子を有するポリオキシアルキレンヒドロカルビルエーテルである。炭素原子が12未満の場合、酸化シリコン及び/又はポリシリコン表面の研磨速度に対するSiN表面の研磨速度比が低くなる傾向にある。
【0014】
A.シリカ
一実施形態において、シリカはコロイダルシリカである。一実施形態において、シリカは、各粒子に結合された1〜6、2〜5、又は3〜4の種類の有機酸基又はその塩で誘導体化したシリカを含む。いくつかの実施形態では、有機酸はカルボキシル酸及びスルホン酸の1つ又は双方である。有機酸の官能基がシリカに結合されるように、そのような有機酸をシリカへ共有結合する方法は、当業者には理解されよう。例えば、有機酸の一種であるスルホン酸をコロイダルシリカに共有結合するのであれば、Cano-Serrano et al.,"Sulfonic acid-functionalized silica through quantitative oxidation of thiol groups"、Chem. Commun., 246-247 (2003) を参照することができる。具体的には、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のチオール基を有するシランカップリング剤をコロイダルシリカにカップリングさせた後に過酸化水素でチオール基を酸化することにより、スルホン酸が表面に固定化されたコロイダルシリカを得ることができる。あるいは、例えば、カルボン酸をコロイダルシリカに共有結合するのであれば、Yamaguchi et al.,”Novel silane coupling agents containing a photolabile 2-nitrobenzyl ester for introduction of a carboxy group”, Chemistry Letters, 3, 228-229 (2000)を参照することができる。具体的には、光反応性2−ニトロベンジルエステルを含むシランカップリング剤をコロイダルシリカにカップリングさせた後に光照射することにより、カルボン酸が表面に固定化されたコロイダルシリカを得ることができる。
【0015】
別の実施形態において、コロイダルシリカの平均一次粒子径は少なくとも5nm以上、7nm以上、又は10mm以上である。いくつかの実施形態では、コロイダルシリカの平均一次粒子径が大きくなると、本発明の研磨組成物によるSiNの研磨速度が上がる。
他の実施形態において、コロイダルシリカの平均一次粒子径は150nm以下、120nm以下、又は100nm以下である。コロイダルシリカの平均一次粒子径は、例えばBET吸着法によってコロイダルシリカの比表面積に基づいて算出される。
別の実施形態において、コロイダルシリカは非粒状又は非球形の形態である。非球形の形状のコロイダルシリカでは、2つ以上の一次粒子が連結する場合がある。コロイダルシリカの平均会合度については、いくつかの実施形態において1.2以上、又は1.5以上である。他の実施形態では、コロイダルシリカの平均会合度は4.0以下、3.0以下、又は2.5以下である。
【0016】
コロイダルシリカの含有量については、いくつかの実施形態において、組成物の全質量に対して少なくとも0.05質量%、少なくとも0.1質量%、又は少なくとも0.3質量%である。他の実施形態では、コロイダルシリカの含有量は、組成物の全質量に対して5質量%未満、1質量%未満、又は0.9質量%未満である。他の実施形態では、コロイダルシリカは、組成物の全質量に対して0.5質量%、0.2〜0.8質量%、又は0.1〜0.9質量%の量で存在する。
B.水溶性ポリマー
いくつかの実施形態において、本発明の研磨組成物は水溶性ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、本発明の研磨組成物は本質的に水溶性ポリマーを含有する。いくつかの実施形態では、水溶性ポリマーを界面活性剤と称する場合がある。一実施形態では、水溶性ポリマーは式(I)のものであるか、
【0017】
【化1】
あるいはその硫酸塩、有機カルボン酸塩、又はリン酸エステルである。
また、別の実施形態では、水溶性ポリマーは式(II)のものであるか、
【0018】
【化2】
あるいはその硫酸塩、有機カルボキシレート、又はリン酸エステルである。
また、別の実施形態では、水溶性ポリマーは式(III)のものであるか、
あるいはその硫酸塩、有機カルボキシレート、又はリン酸エステルである。
【0019】
【化3】
【0020】
上記式(I)〜式(III)において、mは10〜30であり、nは0〜30であり、R及びRはヒドロカルビル部である。式(I)及び式(II)の構造は、エチレン及びプロピレングリコールのコポリマー及びブロックポリマーを含むことを意味する。式(III)の構造は、エチレン及びメチルエチレングリコールのコポリマー及びブロックポリマーを含むことを意味する。上記式(I)〜式(III)において、mが10未満並びに/またはmおよびnが30を超えると酸化シリコン及び/又はポリシリコン表面の研磨速度に対するSiN表面の研磨速度比が低くなる傾向となる。
【0021】
一実施形態において、RはC10〜C30アルキル、C10〜C30アルケニル、又はC10〜C30アルキニルであり、各アルキル、アルケニル、又はアルキニル基は選択的に1〜3C〜C10アリール又はC〜C10シクロアルキル基で置換される。別の実施形態では、Rは、選択的に1〜3C〜Cアルキル基で置換されたC〜C10アリール又はC〜C10シクロアルキルである。別の実施形態では、RはC15〜C25アルキル又はC17〜C23アルキルである。
一実施形態において、nは少なくとも1である。別の実施形態において、nは0である。別の実施形態では、mは15〜25又は18〜22である。別の実施形態では、m+nは15〜25である。別の実施形態では、水溶性ポリマーは式C1837−CH−O−(CHCHO)20H又はC1837−O−(CHCHO)20Hのものである。
【0022】
いくつかの実施形態において、水溶性ポリマーは、少なくとも10、少なくとも12、又は少なくとも14である疎水性親油性バランス(HLB)値を有する。他の実施形態では、水溶性ポリマーは、20以下であるHLB値を有する。更に別の実施形態では、HLB値は11〜20、12〜19、13〜18、又は約14〜17である。HLB値が10未満では、水溶性ポリマーが水に溶解しにくく、また酸化シリコン及び/又はポリシリコン表面の研磨速度に対するSiN表面の研磨速度比が低くなる傾向となる。
【0023】
いくつかの実施形態において、水溶性ポリマーは組成物中に0.001g/L以上、0.005g/L以上、又は0.01g/L以上の量で存在する。他の実施形態では、水溶性ポリマーは10g/L以下、5g/L以下、又は1g/L以下の量で存在する。他の実施形態では、水溶性ポリマーは質量%で組成物中0.001%〜0.5%存在する。他の実施形態では、水溶性ポリマーは組成物中200ppm(又は0.02%)以下、100〜450ppm、又は50〜450ppm存在する。特に、水溶性ポリマーを組成物中に100〜450ppm含むとき、SiN除去選択性が良好であるため、より好ましい。上記式(I)の水溶性ポリマーを200ppm含む本発明の研磨組成物は、本明細書の実施例(表及び図)に示されるように、ポリシリコン及び酸化シリコンに対して驚くべきSiN除去選択性を実証した。
【0024】
C.組成物のpH
一実施形態において、組成物のpHは6以下である。他の実施形態では、pHは5以下、4以下、又は4.5以下である。他の実施形態では、pHは1以上、1.5以上、又は2.5以上である。一実施形態では、pHは3である。いくつかの実施形態において、pHが6を超える場合、組成物を用いて高速でSiNを研磨することが難しい場合がある。
組成物のpHを所望の値に調節するために、pH調整剤を用いることができる。用いるpH調整剤は、無機酸もしくは有機酸とすることができ、又はキレート剤とすることができる。
無機酸としては、例えば、塩化水素、硫酸、硝酸、フッ素酸、ホウ酸、炭酸、次亜リン酸、ホスホン酸、リン酸が挙げられるが、限定されるものではない。
【0025】
有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、バレリアン酸、2−メチルブチル酸、N−ヘキサン酸、3,3−ジメチルブタン酸、2−エチルブタン酸、4−メチルペンタン酸、n−ヘプタン酸、2−メチルヘキサン酸、n−オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、安息香酸、グリコール酸、サリチル酸、グリセリン酸、シュウ酸、マロン酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、ジグリコール酸、2−フランカルボン酸、3−フランカルボン酸、2−テトラヒドロフランカルボン酸、メトキシ酢酸、メトキシフェニール酢酸、及びフェノキシ酢酸が挙げられるが、限定されるものではない。また、そのような有機酸としては、限定するものではないが、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、及びイセチオン酸等の有機スルホン酸が挙げられる。
他の実施形態において、無機酸又は有機酸のアンモニア塩及びアルカリ金属塩等の塩を、1つ以上の無機酸又は有機酸と組み合わせて、pH調整剤として用いることができる。
【0026】
キレート剤の例としては、限定するものではないが、ヒドロキシエチルイミノ−2−酢酸、イミノ二酢酸、アセトアミドイミノ二酢酸、ニトリロ−3−プロパン酸、ニトリロ−3−メチルホスホン酸、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、及びエチレンジアミン四酢酸が挙げられる。
一実施形態において、乳酸又は他の有機酸は、組成物に対して質量%で0.001〜1%、0.01〜0.1%、又は0.09%存在する。
【0027】
D.研磨速度
いくつかの実施形態において、研磨のための組成物はSiNを高速で研磨することができるが、ポリシリコンを高速で研磨することは望ましくない場合がある。研磨対象の物体の表面がSiNだけでなくポリシリコンも含有するいくつかの実施形態において、ポリシリコンの研磨速度に対するSiNの研磨速度の比は、好ましくは2以上、さらに好ましくは4以上、より好ましくは6以上である。
研磨対象の物体の表面がSiNだけでなく酸化シリコン及び/又はポリシリコンも含有するいくつかの実施形態において、酸化シリコン及び/又はポリシリコンの研磨速度に対するSiNの研磨速度の比は、好ましくは2以上、さらに好ましくは4以上、より好ましくは6以上である。このため、いくつかの実施形態において、本発明の研磨組成物を用いて同様の研磨条件のもとで、酸化シリコン表面及びSiN表面、又はポリシリコン表面及びSiN表面を別個に研磨する場合、本明細書で記載するように、酸化シリコン表面及び/又はポリシリコンの表面の研磨速度に対するSiN表面の研磨速度は同等であるか又は高い。
【0028】
理論によって束縛されるものではないが、6以下のpHでは、その表面に有機酸(複数の有機酸)が結合されたコロイダルシリカのゼータ電位は負電位である。6以下のpHでは、SiNのゼータ電位は正電位である。従って、本発明の研磨組成物のpHが6以下である場合、研磨のための組成物内のコロイダルシリカは静電気によりSiNに引き付けられる。
従って、研磨のためのこの組成物によれば、SiNを高速度で研磨することができ、その結果、酸化シリコンやポリシリコンよりもSiNを優先的に高速で研磨することができる。
【0029】
E.他の添加物
いくつかの実施形態において、本発明の研磨組成物は更に、過酸化水素等の酸化剤、又は消毒剤又は抗真菌剤を含んでもよい。消毒剤及び抗真菌剤の限定的でない例としては、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン及び5−クロロ−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、p−ヒドロキシ安息香酸エステル、及びフェノキシエタノール等のイソチアゾリン系消毒剤が挙げられる。
いくつかの実施形態では、研磨で使用される研磨組成物は、水溶液又は水等の希釈液を用いて、研磨組成物の原液(濃縮品)を4〜10倍以上に希釈することによって調製される。
他の研磨組成物及びこれを生成し用いる方法は、WO2012/026329(引用により本願にも含まれるものとする)に記載されており、これを本発明の方法を考慮して適宜変更し適合させることで、発明の方法以外の他の組成物ならびにその組成物及び本明細書に記載の組成物を生成する方法、使用する方法を提供することができる。
【0030】
(組成物を調製し研磨速度を測定するための一般的な手順)
一般に、コロイダルシリカ及び水溶性ポリマー(例えば、ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル)を水中で混合し、組成物のpHをpH調製剤(例えば、乳酸)によって適切に調整する。各成分を混合する際の温度は特に制限されないが、10〜40℃が好ましく、溶解速度を上げるために加熱してもよい。また、混合時間も特に制限されない。
研磨装置としては、研磨対象物を有する基板等を保持するホルダーと回転数を変更可能なモータ等とが取り付けてあり、研磨パッド(研磨布)を貼り付け可能な研磨定盤を有する一般的な研磨装置を使用することができる。
【0031】
研磨条件にも特に制限はなく、例えば、研磨定盤の回転速度は、10〜500rpmが好ましく、研磨対象物を有する基板にかける圧力(研磨圧力)は、0.5〜10psiが好ましい。研磨パッドに研磨用組成物を供給する方法も特に制限されず、例えば、ポンプ等で連続的に供給する方法が採用される。この供給量に制限はないが、研磨パッドの表面が常に本発明の研磨用組成物で覆われていることが好ましい。
研磨終了後、基板を流水中で洗浄し、スピンドライヤ等により基板上に付着した水滴を払い落として乾燥させることにより、基板が得られる。
一定時間においてウェハの研磨を行い、SiN等の実施例に記載した他のウェハの表面の研磨速度を測定する。研磨前後のウェハの厚さの差及び研磨時間を測定することによって、研磨速度を計算する。厚さの差は、例えば光干渉式膜厚測定装置を用いて測定する。
【実施例1】
【0032】
表面にスルホン酸が共有結合されたコロイダルシリカ(平均一次粒子径約35nm、平均二次粒子径約70nm):0.5%、乳酸:0.09%、ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル:200ppmを含み、スラリーのpHを3に調整した研磨組成物であるサンプルAを得た。また、サンプルAにおいて、ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテルを含まないこと以外は同じ組成の組成物を調整し、サンプルBを得た。研磨組成物としてサンプルA及びサンプルBを使用し、直径200mmの酸化シリコンとしてのテトラエチルオルソシリケート(TEOS),ポリシリコン及びSiNのウェハ表面をソフトポリウレタンパッド(ショア硬度A63)を使用して、研磨組成物スラリーの供給速度を300mL/分、研磨の圧力を2psi、プラテン回転速度は120rpmとして研磨した。それぞれのウェハについて得られた研磨速度を表1及び図1に示した。なお、研磨組成物スラリーの供給速度とは、全供給液の供給量の合計を単位時間当たりで割り付けた値をいう(以下の実施例においても同様)。
本発明の研磨組成物であるサンプルAを使用することにより、各ウェハについて高い研磨速度が得られ、特に、TEOSに対するSiNの高い研磨速度比(>10:1)を得られることがわかる。
【実施例2】
【0033】
実施例1で得たサンプルA及びサンプルBを使用して、ソフトポリウレタンパッド(ショア硬度A63)を使用して、直径300mmのTEOSウェハについて、研磨組成物スラリーの供給速度を200mL/分、研磨の圧力を2psi、プラテン回転速度を95rpmとして研磨した。研磨後のTEOSウェハについて、HF処理前と後において、表面欠陥の数を光干渉式ウェハ表面検査装置を使用して測定した。結果を図2にグラフにより示した。
本発明の研磨組成物であるサンプルAを使用することにより、表面欠陥の数を大幅に減らすことができた。
【実施例3】
【0034】
実施例1で得たサンプルAとサンプルAを4倍に濃縮した研磨組成物であるサンプルA(濃縮)を使用して、それぞれハードポリウレタンパッド(ショア硬度D60)及びソフトポリウレタンパッド(ショア硬度A63)を使用して、直径300mmのTEOS、ポリシリコン、SiNウェハについて、研磨組成物スラリーの供給速度を300mL/分、研磨の圧力を2psi、プラテン回転速度を100rpmとして研磨した際の研磨速度をそれぞれ図3にグラフで示した。
本発明の研磨組成物であるサンプルA及びその濃縮組成物を使用することにより、TEOS及びポリシリコンに対するSINの高い研磨速度比を得られるが、研磨組成物の濃度が低くなると研磨速度が低下することがわかる。
【0035】
【表1】
【実施例4】
【0036】
実施例1で得たサンプルAを使用して、それぞれハードポリウレタンパッド(ショア硬度D60)を使用して、直径300mmのTEOSウェハ及びSiNウェハについて、研磨組成物スラリーの供給速度を300mL/分、研磨の圧力を2psi、プラテン回転速度を87rpm、ヘッド回転速度を81rpmとして研磨した際の研磨速度をそれぞれ図4及び表2に示した。
本発明の研磨組成物であるサンプルA及びその希釈組成物を使用することにより、TEOSに対するSiNの高い研磨速度比が得られることがわかる。
【0037】
【表2】
【実施例5】
【0038】
表3に示される組成の研磨組成物1〜9を使用して、それぞれソフトポリウレタンパッド(ショア硬度A63)を使用して、直径200mmのTEOSシリカ、ポリシリコン、SiNについて、研磨組成物スラリーの供給速度を200mL/分、研磨の圧力を2psi、プラテン回転速度を120rpmとして研磨した際の研磨速度をそれぞれ図5A及び図5Bにグラフで示した。
研磨組成物中の砥粒(シリカ)の濃度を高くすることによりTEOS除去率が高くなるが、SiN:TEOSシリカの除去選択性が低くなることがわかる。
【0039】
【表3】
【実施例6】
【0040】
表4には、サンプルA及びサンプルAを4倍に濃縮したサンプルA(濃縮)の物理的特性およびそれらの55℃における特性を比較して示すことで、保存安定性を示した。本発明の研磨組成物であるサンプルA(濃縮)を希釈することにより保存安定性がやや劣化することが示されている。また、本発明の研磨組成物の組成及び物理特性を表5に、微量金属の含有量を表6に示した。
【0041】
【表4】
【0042】
【表5】
【0043】
【表6】
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B