【文献】
Masanori Koshiba, Kunimasa Saitoh, and Yasuo Kokubun,Heterogeneous multi-core fibers: proposal and design principle,IEICE Electronics Express,2009年 1月25日,Vol. 6, No. 2,pp. 98 - 103
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1コアと、前記第1コアの外周面を囲む内側クラッドと、前記内側クラッドよりも低い屈折率とされると共に前記内側クラッドを囲む低屈折率層とを有する複数のコア要素と、
複数の第2コアと、
前記第1コア及び前記第2コアよりも低い屈折率とされると共に前記低屈折率層よりも高い屈折率とされ、それぞれの前記コア要素及びぞれぞれの第2コアとを囲む外側クラッドと、
を備え、
前記コア要素の実効屈折率と前記第2コアの実効屈折率とは互いに異なり、
前記複数のコア要素は、実効屈折率が互いに異なる少なくとも3種類のコア要素に分類でき、
前記外側クラッドの中心を囲む正六角形の各頂点を基準とした三角格子において、前記各頂点で囲まれる格子点を第1層とし、前記各頂点上に位置する格子点から成る層を第2層とし、前記第2層の各格子点と外側に隣り合う各格子点から成る層を第3層とし、前記第3層の各格子点と外側に隣り合う各格子点から成る層を第4層とする場合に、
前記第1層の格子点上にはコアが非配置とされ、
前記第2層の各格子点上には前記コア要素の前記第1コアが配置され、
前記第3層の各格子点上には前記コア要素の前記第1コアと前記第2コアとが交互に配置され、
前記第4層では6個の格子点上にはコアが非配置とされ他の格子点上には前記コア要素の前記第1コアが配置され、
それぞれの前記第2コアは前記第4層のコアが非配置とされる格子点と隣り合い
互いに隣り合う前記コア要素同士の実効屈折率は互いに異なる
ことを特徴とするマルチコアファイバ。
波長が1550nmの光が前記コア要素及び第2コアを伝搬する場合に、互いに隣り合う前記コア要素間及び互いに隣り合う前記コア要素と前記第2コア間のクロストークが100km当たり−37dB以下とされる
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のマルチコアファイバ。
【背景技術】
【0002】
現在、一般に普及している光ファイバ通信システムに用いられる光ファイバは、1本のコアの外周がクラッドにより囲まれた構造をしており、このコア内を光信号が伝搬することで情報が伝送される。そして、近年、光ファイバ通信システムの普及に伴い、伝送される情報量が飛躍的に増大している。このような伝送される情報量の増大に伴い、光ファイバ通信システムにおいては、数十本から数百本といった多数の光ファイバが用いられることで、大容量の長距離光通信が行われている。
【0003】
こうした光ファイバ通信システムにおいて、複数のコアの外周が1個のクラッドにより囲まれたマルチコアファイバを用いて、それぞれのコアを伝搬する光により、複数の信号を伝送させることが知られている。
【0004】
下記特許文献1にはマルチコアファイバの一例が記載されている。このマルチコアファイバでは、クラッドの中心に1個のコアが配置され、この中心に配置されたコアの周りに6個のコアが配置されている。このような配置は、コアを細密充填できる構造であるため、特定のクラッドの外径に対して、多くのコアを配置することができる。また、この特許文献1に記載のマルチコアファイバでは、それぞれのコアを伝播する光のクロストークを抑制するために互いに隣り合うコアの実効屈折率が互いに異なるものとされている。
【0005】
しかし、特許文献1に記載のマルチコアファイバのように互いに隣り合うコアの実効屈折率を変化させる場合よりもクロストークを更に抑制したいという要請がある。そこで、それぞれのコアの外周面を囲むようにクラッドよりも屈折率の低い低屈折率層が配置され、クロストークがより防止されたマルチコアファイバが知られている。このマルチコアファイバを屈折率の観点から見ると上記低屈折率層がトレンチ状となるため、当該マルチコアファイバはトレンチ型と称され、コアから低屈折率層までの構成をコア要素と称する。
【0006】
しかし、このマルチコアファイバでは、コア要素が特定のコアやコア要素を囲むように配置されると、当該特定のコアやコア要素を伝搬する光における高次モードの光が逃げづらく、カットオフ波長が長波長化する傾向がある。そこで、下記特許文献2に記載のマルチコアファイバのように、特定のコアやコア要素を囲む複数のコア要素のうち、一部のコア要素についてはトレンチ層を除去して単にコアとする構成とすることが知られている。このようなマルチコアファイバによれば、クロストークを抑制しつつ、カットオフ波長が長波長化することを抑制することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献1及び上記特許文献2に記載のマルチコアファイバにおいて、30個以上のコアを配置しようとすると、クロストークが増加したり、カットオフ波長が長波長化する傾向がある。
【0009】
そこで、本発明は、クロストーク及びカットオフ波長の長波長化を抑制しつつも、配置されるコアの数を多くできるマルチコアファイバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明のマルチコアファイバは、第1コアと、前記第1コアの外周面を囲む内側クラッドと、前記内側クラッドよりも低い屈折率とされると共に前記内側クラッドを囲む低屈折率層とを有する複数のコア要素と、複数の第2コアと、前記第1コア及び前記第2コアよりも低い屈折率とされると共に前記低屈折率層よりも高い屈折率とされ、それぞれの前記コア要素及びぞれぞれの第2コアとを囲む外側クラッドと、を備えるもので、以下の特徴を有する。
【0011】
すなわち、前記コア要素の実効屈折率と前記第2コアの実効屈折率とは互いに異なり、前記複数のコア要素は、前記コア要素の実効屈折率が互いに異なる少なくとも3種類のコア要素に分類できる。
【0012】
さらに、前記外側クラッドの中心を囲む正六角形の各頂点を基準とした三角格子において、前記各頂点で囲まれる格子点を第1層とし、前記各頂点上に位置する格子点から成る層を第2層とし、前記第2層の各格子点と外側に隣り合う各格子点から成る層を第3層とし、前記第3層の各格子点と外側に隣り合う各格子点から成る層を第4層とする場合に、前記第1層の格子点上にはコアが非配置とされ、前記第2層の各格子点上には前記コア要素の前記第1コアが配置され、前記第3層の各格子点上には前記コア要素の前記第1コアと前記第2コアとが交互に配置され、前記第4層では6個の格子点上にはコアが非配置とされ他の格子点上には前記コア要素の前記第1コアが配置される。そして、それぞれの前記第2コアは前記第4層のコアが非配置とされる格子点と隣り合い、互いに隣り合う前記コア要素同士の実効屈折率は互いに異なる。
【0013】
上記を特徴とする本発明のマルチコアファイバによれば、第2層から第4層において、コアが30個配置される。従って、本発明のマルチコアファイバでは30個以上のコアを配置することができる。
【0014】
また、第2層に配置されるそれぞれのコア要素は、第1層のコアが非配置の格子点と隣り合うと共に、第3層に配置される第2コアの1個または2個と隣り合う。従って、第2層に配置される何れのコア要素からも高次モードの光を逃げ易くすることができる。また、第3層に配置されるそれぞれの第2コアは、第4層のコアが非配置とされる格子点と隣り合うため、これら第2コアから高次モードの光を逃げ易くすることができる。また、第3層に配置されるそれぞれのコア要素は、第3層に配置される第2コアのうち2個と隣り合うため、第3層に配置されるそれぞれのコア要素から高次モードの光を逃げ易くすることができる。また、第4層に配置されるそれぞれのコア要素は、第4層のコアが非配置とされる格子点と隣り合う。従って、第4層に配置されるそれぞれのコア要素から高次モードの光を逃げ易くすることができる。こうして、それぞれのコアのカットオフ波長が長波長化することを抑制することができる。
【0015】
また、全ての第1コア及び第2コアにおいて、互いに隣合うコア間には低屈折率層が配置される。さらに、互いに隣り合うコア要素同士の実効屈折率或いは互いに隣り合うコア要素と第2コアとの実効屈折率が異なる。従って、互いに隣り合うコアとコア要素とのクロストークや互いに隣り合うコア要素同士のクロストークを抑制することができる。
【0016】
以上のようなコア要素や第2コアの配置とすることで、クロストーク及びカットオフ波長の長波長化を抑制しつつ配置されるコアの数を多くできる。
【0017】
また、前記第2コアは、前記第3層の互いに隣り合う格子点を結ぶことで形成される六角形の各頂点上に配置されることが好ましい。
【0018】
このように第2コアが第3層の六角形の頂点上に位置する場合、それぞれの第2コア間に必ずコア要素が位置する。従って、低屈折率層を有さない第2コア間のクロストークをより適切に低減することができる。
【0019】
また、全てのコア要素は、コアが非配置とされる少なくとも1個の格子点及び少なくとも1個の第2コアと隣り合う。つまり、全てのコア要素は、高次モードが逃げ易い少なくとも2カ所の格子点と隣り合う。一方、全ての第2コアは、コアが非配置とされる1個の格子点と隣り合うと共に5つのコア要素により囲まれる。つまり、全ての第2コアは、高次モードが逃げ易い格子点の1つのみと隣り合う。ところで、隣接するコア要素やコアの影響を無視すると、低屈折率層で囲まれない第2コアの方が、低屈折率層を有するコア要素よりも高次モードが逃げ易い。従って、本構成によれば、コア要素と第2コアとの間で、高次モードの逃げ易さのバランスをとることができる。
【0020】
上記のように前記第2コアが第3層の六角形の各頂点上に配置される場合、前記第4層のコアが非配置とされる格子点は、前記第4層の互いに隣り合う格子点を結ぶことで形成される六角形の各頂点上に位置することとしても良い。
【0021】
第4層の六角形の頂点にコアが非配置とされることで、この頂点にコアが配置される場合よりも、クラッドの中心から第4層のコアまでの距離を小さくすることができる。従って、第4層までのコアの配置を考慮する場合にクラッドの外径を小さくすることができる。
【0022】
また、上記のように前記第2コアが第3層の六角形の各頂点上に配置される場合、前記第4層のコアが非配置とされる格子点は、前記第4層の互いに隣り合う格子点を結ぶことで形成される六角形の各辺上に位置することとしても良い。
【0023】
このようなコアの配置とすることで、第4層のコアが非配置とされる格子点の位置やコア要素の配置位置が、マルチコアファイバの両端で異なる。従って、コアを識別するマーカが無い場合であっても、コアの種類を特定することができる。
【0024】
また或いは、前記第2コアは、前記第3層の互いに隣り合う格子点を結ぶことで形成される六角形の各辺上に配置されることが好ましい。
【0025】
このようなコアの配置とすることで、第4層のコアが非配置とされる格子点の位置やコア要素の配置位置が、マルチコアファイバの両端で異なる。従って、コアを識別するマーカが無い場合であっても、コアの種類を特定することができる。
【0026】
前記外側クラッドの外径が230μm以下とされ、前記格子の間隔が30μm以下とされることが好ましい。
【0027】
当該格子の間隔は互いに隣り合うコア間距離に他ならない。このようなコア間距離とされ、上記クラッドの外径とされることで、マルチコアファイバの機械的強度を維持しつつ、クラッドの外周面が樹脂層で被覆される場合であっても当該被覆による過剰な損失が生じることを抑えることができる。
【0028】
また、互いに隣り合う前記コア要素間及び互いに隣り合う前記コア要素と前記第2コア間のクロストークの大きさが、半径100mmより小さい曲げ半径でピークとなることが好ましい。
【0029】
一般的に光ファイバは、曲げ半径が100mm以上で使用される。そのため、上記の構成とされることで、通常の仕様においてはクロストークがピークとなることが無い。このため、クロストークを抑制することができる。
【0030】
また、波長が1550nmの光が前記コア要素及び第2コアを伝搬する場合に、互いに隣り合う前記コア要素及び互いに隣り合う前記コア要素と前記第2コア間のクロストークが100km当たり−37dB以下とされることが好ましい。
【0031】
クロストークがこのような値とされることで、通信用の光ファイバとして十分に使用することができる。
【0032】
また、前記コア要素及び前記第2コアは波長が1530nm以上の光をシングルモードで伝搬することとしても良い。
【0033】
また、互いに隣り合う前記コア要素間及び互いに隣り合う前記コア要素と前記第2コア間の実効屈折率の差が0.0005以上であることが好ましい。
【0034】
互いに隣り合うコア要素間や互いに隣り合うコア要素と第2コア間が上記のような実効屈折率の差を有することで、クロストークをより適切に抑制することができる。
【0035】
また、それぞれの前記コア要素及びそれぞれの第2コアの実効断面積が等しいことが好ましい。
【0036】
それぞれのコア要素や第2コアの実効断面積が等しいことにより、各コア間の光信号対雑音比や接続損失のばらつきを小さくすることができる。
【発明の効果】
【0037】
以上のように、本発明によれば、クロストーク及びカットオフ波長の長波長化を抑制しつつも、配置されるコアの数を多くできるマルチコアファイバが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明に係るマルチコアファイバの好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、理解の容易のため、ぞれぞれの図に記載のスケールと、以下の説明に記載のスケールとが異なる場合がある。
【0040】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な断面における構造を示す図である。
図1に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ1は、複数のコア要素10a,10b,10c及び複数の第2コア21と、それぞれのコア要素10a,10b,10cを囲む外側クラッド30を備える。
【0041】
コア要素10aは、第1コア11aと、第1コア11aの外周面を隙間なく囲む内側クラッド12aと、内側クラッド12aの外周面を隙間なく囲み、外側クラッド30に外周面が隙間なく囲まれる低屈折率層13aとを有している。また、コア要素10bは、第1コア11bと、第1コア11bの外周面を隙間なく囲む内側クラッド12bと、内側クラッド12bの外周面を隙間なく囲み、外側クラッド30に外周面が隙間なく囲まれる低屈折率層13bとを有している。また、コア要素10cは、第1コア11cと、第1コア11cの外周面を隙間なく囲む内側クラッド12cと、内側クラッド12cの外周面を隙間なく囲み、外側クラッド30に外周面が隙間なく囲まれる低屈折率層13cとを有している。また、それぞれの第2コア21は外側クラッド30で隙間なく囲まれている。なお、以下の説明で単にコアという場合、第1コア11a〜11c及び第2コア21の両方を意味する場合がある。
【0042】
図1に示すように、外側クラッド30の中心軸を囲むように3つのコア要素10aと3つのコア要素10bとが配置されている。具体的には、それぞれのコア要素10aとそれぞれのコア要素10bとが互い違い配置され、3つのコア要素10aの第1コア11a及び3つのコア要素10bの第1コア11bがそれぞれ正六角形の頂点に位置するように配置されている。
【0043】
ここで、この正六角形を基準として三角格子を描く、すなわち当該正六角形のそれぞれの頂点を格子点とする三角格子を描く。この場合、三角格子を形成する三角形はそれぞれ正三角形となり、上記正六角形の辺が三角形の辺となる。なお、
図1では、各三角格子の格子点が点で示されている。このように三角格子を描くと、
図1に示すように、それぞれのコア要素10a〜10cの第1コア11a〜11c及び第2コア21は、格子点上に配置されることとなる。
【0044】
また、この正六角形で囲まれる格子点を第1層LY1とすると、第1層LY1上に位置する格子点は1個となる。本実施形態では、この格子点が外側クラッド30の中心軸上に位置しているが、格子点が外側クラッド30の中心軸から多少ずれても良い。
図1に示すように第1層LY1上に位置する格子点上には外側クラッド30が位置しておりコアが非配置とされる。
【0045】
上記のように第1層LY1を定義すると、上記の正六角形の各頂点から成る層が第2層LY2となり、第2層LY2のそれぞれの格子点上には、コア要素10aの第1コア11a及びコア要素10bの第1コア11bが交互に配置されることとなる。
【0046】
また、第2層LY2の各格子点と外側に隣り合う各格子点から成る層を第3層LY3とすると、第3層LY3の各格子点上にはコア要素10cの第1コア11cと第2コア21とが交互に配置される。本実施形態では、第2コア21が第3層LY3の互いに隣り合う格子点を結ぶことで形成される六角形の各頂点上に配置されており、第1コア11cが第3層LY3における六角形の辺上の格子点上に配置されている。
【0047】
また、第3層LY3の各格子点と外側に隣り合う各格子点から成る層を第4層LY4とすると、第4層LY4の6個の格子点上にコアが非配置とされ、第4層LY4の他の12個の格子点上に6個のコア要素10aの第1コア11a及び6個のコア要素10bの第1コア11bがそれぞれ配置され、かつ、第3層LY3上に配置されているそれぞれの第2コア21が第4層LY4のコアが非配置とされる格子点と隣り合っている。本実施形態では、第4層LY4のコアが非配置とされる格子点は、第4層LY4の互いに隣り合う格子点を結ぶことで形成される六角形の各頂点上に位置する格子点とされる。また、第4層LY4のそれぞれの辺上には格子点が2個ずつ位置し、それぞれの辺上に位置する格子点上には、コア要素10aの第1コア11aとコア要素10bの第1コア11bとが1個ずつ配置される。
【0048】
また、本実施形態のマルチコアファイバ1では、第4層LY4の各格子点と外側で隣り合う格子点上にはコアが配置されていない。こうして、コア要素10a同士、及び、コア要素10b同士、及び、コア要素10c同士、及び、第2コア21同士は、互いに隣り合わず、それぞれのコア要素10a,10b,10c及び第2コア21は配置される。また、上記のようにコア要素10a,10b,10c、第2コア21が配置されることで、本実施形態のマルチコアファイバ1では30個のコアが配置されている。
【0049】
図2は、
図1に示すマルチコアファイバ1のそれぞれのコア要素10a〜10c及び第2コアの屈折率、実効屈折率を示す図である。
図2では、コア要素10a、コア要素10b、コア要素10c、第2コア21を並べて、それぞれのコア要素10a〜10c及び第2コア21の間を外側クラッド30で埋めた場合について、屈折率を実線で示している。また
図2では、コア要素10a〜10c及び第2コア21の実効屈折率を破線で示している。
【0050】
本実施形態では、各コア要素10a,10b,10cの各第1コア11a,11b,11c及び第2コア21の直径が異なるようにされている。例えば、第1コア11aの半径が4.76μmとされ、第1コア11bの半径が4.62μmとされ、第1コア11cの半径が4.47μmとされ、第2コア21の半径が4.68μmとされる。また、本実施形態では、それぞれのコア要素10a〜10cの内側クラッド12a〜12cの外径が異なっている。例えば、内側クラッド12aの半径(外周面の半径)が8.09μmとされ、内側クラッド12bの半径が7.85μmとされ、内側クラッド12cの半径7.60μmとされる。内側クラッド12a〜12cの半径がそれぞれ上記例示の大きさであり、第1コア11a〜11cの半径が上記例示の大きさである場合、第1コア11aの半径と内側クラッド12aの半径との比と、第1コア11bの半径と内側クラッド12bの半径との比と、第1コア11cの半径と内側クラッド12cの半径の比は、互いに概ね同じ値とされる。また、本実施形態では、それぞれのコア要素10a〜10cの低屈折率層13a〜13cの厚みは互いに異なっている。例えば、低屈折率層13aの厚みが4.76μmとされ、低屈折率層13bの厚みが4.62μmとされ、低屈折率層13cの厚みが5.36μmとされる。この場合、第1コア11a〜11cの半径が上記例示の大きさであれば、低屈折率層13aと第1コア11aの半径との比は1.0となり、低屈折率層13bと第1コア11bの半径との比は1.0となり、低屈折率層13cと第1コア11cの半径との比は1.2となる。
【0051】
また、外側クラッド30の外径Rは、例えば156μm以上230μm以下とされ、それぞれの格子点の間隔、すなわち、互いに隣り合うコアの中心間距離Λは、例えば20μm以上34μm以下とされ、第4層LY4上に配置される第1コア11a,11bから外側クラッド30の外周面までの距離は、例えば25μm以上45μm以下とされる。
【0052】
また、コア要素10aの第1コア11aの屈折率n
11aは、内側クラッド12aの屈折率n
12aよりも高く、低屈折率層13aの屈折率n
13aは、内側クラッド12aの屈折率n
12a及び外側クラッド30の屈折率n
30よりも低くされている。同様に、コア要素10bの第1コア11bの屈折率n
11bは、内側クラッド12bの屈折率n
12bよりも高く、低屈折率層13bの屈折率n
13bは、内側クラッド12bの屈折率n
12b及び外側クラッド30の屈折率n
30よりも低くされており、コア要素10cの第1コア11cの屈折率n
11cは、内側クラッド12cの屈折率n
12cよりも高く、低屈折率層13cの屈折率n
13cは、内側クラッド12cの屈折率n
12c及び外側クラッド30の屈折率n
30よりも低くされている。なお、本実施形態では、内側クラッド12a,12b,12cの屈折率n
12a〜n
12cは互いに等しく、外側クラッド30の屈折率n
30と同じ屈折率とされている。また、第2コア21の屈折率n
21は外側クラッド30の屈折率n
30より高くされている。
【0053】
このようにそれぞれのコア要素10a〜10cを屈折率の観点から見る場合に、低屈折率層13a〜13cはそれぞれ溝状となり、それぞれのコア要素10a〜10cはトレンチ構造を有している。このような、トレンチ構造にすることにより、マルチコアファイバ1のそれぞれの第1コア11a〜11cを伝搬する光の損失を抑制することができる。
【0054】
マルチコアファイバ1は、このような屈折率を有するため、例えば、外側クラッド30及びそれぞれの内側クラッド12a〜12cはドーパントが何ら添加されていない石英から成り、それぞれの第1コア11a〜11c及び第2コア21は、ゲルマニウム等の屈折率を上げるドーパントが添加された石英から成り、低屈折率層13a〜13cは、フッ素等の屈折率を下げるドーパントが添加された石英等から成る。また、上記のように第1コア11a〜11c、第2コア21の屈折率が異なる場合には、第1コア11a〜11c、第2コア21に添加されるドーパントの量が適宜変えられる。
【0055】
なお、上記と異なり、内側クラッド12a〜12cの屈折率が外側クラッド30の屈折率と異なるようにされても良く、この場合、コア要素10a〜10cの実効屈折率が互いに異なる限りにおいて、内側クラッド12a〜12cの屈折率が互いに同じでも良く互いに異なっていても良い。内側クラッド12a〜12cの屈折率が外側クラッド30と異なる場合、内側クラッド12a〜12c必要なドーパントが添加される。或いは、外側クラッド30にドーパントが適宜添加されても良い。
【0056】
また、本実施形態では、それぞれの第1コア11a,11b,11c及び第2コア21の屈折率n
11a,n
11b,n
11c,n
21は互いに異なっており、例えば、外側クラッド30に対する第1コア11aの比屈折率差Δ
11aは0.338%とされ、外側クラッド30に対する第1コア11bの比屈折率差Δ
11bは0.305%とされ、外側クラッド30に対する第1コア11cの比屈折率差Δ
11cは0.273%とされ、外側クラッド30に対する第2コア21の比屈折率差Δ
21は0.388%とされる。
【0057】
また、本実施形態では、それぞれの低屈折率層13a,13b,13cの屈折率が互いに等しくされ、例えば、外側クラッド30に対するそれぞれの低屈折率層13a,13b,13cの比屈折率差は、−0.7%とされる。
【0058】
上記のようにマルチコアファイバ1を構成するそれぞれの部材の径や屈折率が定められることで、それぞれのコア要素10a〜10c及び第2コア21の実効屈折率は互いに異なっている。例えば、マルチコアファイバ1を構成するそれぞれの部材の径や屈折率が上記の例示のように定められる場合、波長1550nmの基本モードの光において、コア要素10aの実効屈折率は1.45241450とされ、コア要素10bの実効屈折率は1.45190751とされ、コア要素10cの実効屈折率は1.45141253とされる。なお、
図2では、それぞれの第1コア要素10a〜10c及び第2コア21の実効屈折率が上記例示の状態について破線で示している。このようにコア要素10a〜10cの実効屈折率の観点からそれぞれのコア要素10a〜10cは3種類に分類できる。また、第2コア21の実効屈折率は1.45304244とされる。上記のように、コア要素10a同士、及び、コア要素10b同士、及び、コア要素10c同士、及び、第2コア21同士は、互いに隣り合わないため、マルチコアファイバ1において、互いに隣り合うコア要素同士、及び、互いに隣り合うコア要素と第2コアの実効屈折率は互いに異なる。
【0059】
また、マルチコアファイバ1を構成するそれぞれの部材の径や屈折率が上記の例示のように定められる場合、波長1550nmの基本モードの光において、コア要素10aの実効断面積は80.2μm
2となり、コア要素10bの実効断面積は80.3μm
2となり、コア要素10cの実効断面積は80.2μm
2となり、第2コア21の実効断面積は80.0μm
2となり、それぞれのコア要素10a〜10c及び第2コア21の実効断面積は概ね等しくなる。
【0060】
また、マルチコアファイバ1を構成するそれぞれの部材の径や屈折率が上記の例示のように定められる場合、LP11モードの光に対して、コア要素10aのカットオフ波長は1.53μmとなり、コア要素10bのカットオフ波長は1.35μmとなり、コア要素10cのカットオフ波長は1.39μmとなり、第2コア21のカットオフ波長は1.53μmとなる。
【0061】
ここで、上記の第1コア11a〜11c及び第2コア21の半径r
1及び外側クラッド30に対する比屈折率差Δ
1、及び、低屈折率層13a〜13cの外側クラッド30に対する比屈折率差Δ
t、及び、第1コア11a〜11cの半径r
1と内側クラッド12a〜12cの半径r
2の比r
2/r
1、及び、第1コア11a〜11cの半径r
1と低屈折率層13a〜13cの厚みWとの比W/r
1、コア要素10a〜10c及び第2コア21の波長1550nmの基本モードの光における実効コア断面積A
eff及びLP11モードの光に対するカットオフ波長λ
ccをコア要素10a〜10c、第2コアで分類して下記表1に示す。
【表1】
【0062】
このようにマルチコアファイバ1の各パラメータが定められる場合、外側クラッド30の外径は、例えば228μmとされる。また、例えば、このようなパラメータとされることで、それぞれのコア要素10a〜10c及び第2コア21は、波長が1530nm以上の波長帯域の光をシングルモードで伝搬することができる。
【0063】
次に互いに隣り合うコア、すなわち互いに隣り合うコア要素同士或いは互いに隣り合うコア要素と第2コア21の実効屈折率差と、互いに隣り合うコア要素同士或いは互いに隣り合うコア要素と第2コア21のクロストークがピークとなるマルチコアファイバ1の曲げ半径との関係について説明する。
【0064】
一般的にマルチコアファイバにおいて、互いに隣り合うコア間のクロストークがピークとなる曲げ半径R
pkは、次の式(1)で与えられる。ただし、下記式(1)において、n
eff1は互いに隣り合うコアおける一方のコアの実効屈折率であり、n
eff2は互いに隣り合うコアにおける他方のコアの実効屈折率であり、Δn
effは互いに隣り合うコアの実効屈折率差とされる。また、Λは互いに隣り合うコアの中心間距離(コア間距離)であり、本実施形態のマルチコアファイバ1であれば三角格子の格子間距離に一致する。
【数1】
【0065】
ところで、通常光ファイバはケーブル化して使用されるが,ケーブル内で光ファイバに加わる最小の曲げ半径は数百mmであることが知られている。従って、クロストークがピークとなる光ファイバの曲げ半径R
pkが、この最小の曲げ半径より小さければ、光ファイバの通常の使用環境下において、クロストークを十分に抑制できると考えられる。従って、コア間距離Λが20μm〜34μmの範囲において、本実施形態のマルチコアファイバ1のクロストークが最大となる曲げ半径R
pkが100mmより小さくなるように、互いに隣り合うコアの実効屈折率差Δn
effが設定されれば良い。さらに、曲げ半径R
pkが、光ファイバの最小の曲げ半径100mmよりもさらに30%以上の余裕をもった70mm以下であれば、光ファイバの通常の使用環境下において、クロストークをさらに抑制できると考えられる。
【0066】
例えば、マルチコアファイバ1において、上記表1のようにそれぞれのパラメータが定められ、コア間距離Λが30μmとされる場合、互いに隣り合うコア要素間やコア要素と第2コア21との実効屈折率差Δn
eff、及び、クロストークが最大となる曲げ半径R
pkは、以下の表2の通りとなる。
【表2】
【0067】
表2に示す通り、上記パラメータとされることで、互いに隣り合うコア要素間やコア要素と第2コア21の実効屈折率差Δn
effは、0.0005以上とされ、クロストークが最大となる曲げ半径R
pkは100mmより小さくなる。
【0068】
以上説明したように本実施形態のマルチコアファイバ1によれば、少なくとも30個のコアを配置することができる。
【0069】
また、第2層LY2に配置されるそれぞれのコア要素10a,10bは、第1層LY1のコアが非配置の格子点と隣り合うと共に、第3層LY3に配置される第2コア21の1個と隣り合う。従って、第2層LY2に配置される何れのコア要素10a,10bからも高次モードの光を逃げ易くすることができる。また、第3層LY3に配置されるそれぞれの第2コア21は、第4層LY4のコアが非配置とされる格子点と隣り合うため、これら第2コア21からも高次モードの光を逃げ易くすることができる。また、第3層に配置されるそれぞれのコア要素10cは、第3層LY3に配置される第2コア21の2つと隣り合うため、第3層LY3に配置されるそれぞれのコア要素10cから高次モードの光を逃げ易くすることができる。また、第4層LY4に配置されるそれぞれのコア要素10a,10bは、第4層LY4のコアが非配置とされる格子点と隣り合う。従って、第4層LY4に配置されるそれぞれのコア要素10a,10bから高次モードの光を逃げ易くすることができる。こうして、それぞれのコアのカットオフ波長が長波長化することを抑制することができる。
【0070】
また、全ての第1コア11a〜11c及び第2コア21において、互いに隣合うコア間には低屈折率層が配置される。さらに、互いに隣り合うコア要素同士や互いに隣り合うコア要素と第2コア21の実効屈折率差が異なる。従って、互いに隣り合うコア要素同士や互いに隣り合うコア要素と第2コア21のクロストークを抑制することができる。
【0071】
以上のように本実施形態のマルチコアファイバ1によれば、クロストーク及びカットオフ波長の長波長化を抑制しつつ配置されるコアの数を多くできる。
【0072】
また、本実施形態のマルチコアファイバ1では、第2コア21が第3層LY3の互いに隣り合う格子点を結ぶことで形成される六角形の各頂点上に配置される。このため、それぞれの第2コア21間に必ずコア要素10a〜10cのいずれかが位置し、低屈折率層を有しない第2コア21間のクロストークをより適切に低減することができる。また、全てのコア要素10a〜10cは、コアが非配置とされる少なくとも1個の格子点及び少なくとも1個の第2コア21と隣り合う。つまり、全てのコア要素10a〜10cは、高次モードが逃げ易い少なくとも2カ所の格子点と隣り合う。一方、全ての第2コア21は、コアが非配置とされる1個の格子点と隣り合うと共に5つのコア要素により囲まれる。つまり、全ての第2コア21は、高次モードが逃げ易い格子点の1つのみと隣り合う。ところで、隣接するコア要素やコアの影響を無視すると、低屈折率層で囲まれない第2コア21の方が、低屈折率層13a〜13cを有するコア要素10a〜10cよりも高次モードが逃げ易い。従って、本実施形態のマルチコアファイバ1によれば、コア要素10a〜10cと第2コア21との間で、高次モードの逃げ易さのバランスをとることができる。
【0073】
また、本実施形態のマルチコアファイバ1では、第4層LY4のコアが非配置とされる格子点は、第4層LY4の互いに隣り合う格子点を結ぶことで形成される六角形の各頂点上に位置する。このように第4層LY4の六角形の頂点にコアが非配置とされることで、この頂点にコアが配置される場合よりも外側クラッド30の外径を小さくすることができる。
【0074】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について
図3を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、同一の参照符号を付して特に説明する場合を除き重複する説明は省略する。
【0075】
図3は、本実施形態に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な断面図である。
図3に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ2は、第4層LY4のコアが非配置とされる格子点が第4層LY4の互いに隣り合う格子点を結ぶことで形成される六角形の各辺上に位置する点において、第1実施形態のマルチコアファイバ1と異なる。具体的には、本実施形態では、第4層LY4の六角形の各頂点上にコア要素10aの第1コア11aが位置する。
【0076】
このようなマルチコアファイバ2の構成によれば、第3層LY3における六角形の辺上の格子点上に配置されるコア要素10cが第4層LY4におけるコアが非配置とされる格子点と隣り合う。従って、コア要素10cからより高次モードの光を逃げ易くすることができる。
【0077】
また、本実施形態のように第4層LY4にコア要素10a,10bの配置とすることで、第4層LY4のコアが非配置とされる格子点の位置やコア要素10a,10bの配置位置が、マルチコアファイバ2の両端で異なる。従って、コアを識別するマーカが無い場合でも、コアの種類を特定することができる。
【0078】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について
図4を参照して詳細に説明する。なお、第2実施形態と同一又は同等の構成要素については、同一の参照符号を付して特に説明する場合を除き重複する説明は省略する。
【0079】
図4は、本実施形態に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な断面図である。
図4に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ3は、第2コア21が第3層LY3の互いに隣り合う格子点を結ぶことで形成される六角形の各辺上に配置される点において、第2実施形態のマルチコアファイバ2と異なる。
【0080】
このように第2コア21が配置されることで、第3層LY3上に配置されるコア要素10cは、第3層LY3の六角形の各頂点上に配置される。
【0081】
また、本実施形態のマルチコアファイバ3であっても、第2実施形態のマルチコアファイバ2と同様にして、コアを識別するマーカが無い場合でも、コアの種類を特定することができる。
【0082】
以上、本発明について、実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0083】
例えば、上記実施形態において、コア要素10a〜10cは屈折率の観点から3種類としたが、4種類以上のコア要素を用いても良い。例えば、コア要素10aを実効屈折率が互いに異なる2種類のコア要素に更に分類しても良い。ただしこの場合においても2種類に分けられたそれぞれのコア要素10aは、他のコア要素10b,10cや第2コア21と異なる実効屈折率とされる。同様に第2コア21が互いに異なる実効屈折率の2種類以上のコアとされても良い。この場合であっても、それぞれの第2コア21は、それぞれのコア要素10a〜10cの実効屈折率と異なる実効屈折率とされる。
【0084】
また、上記実施形態において、第5層目を想定し、第5層目にコアを配置しても良い。仮に第5層目の格子状の全てにコア要素が配置されたとしても、第4層目のコア要素10a,10bは、コアが非配置とされる格子点と隣り合うため高次モードの光を逃げ易くすることができる。
【実施例】
【0085】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものでは無い。
【0086】
表1に記載のパラメータを用いて第1実施形態のマルチコアファイバ1を作製した。なお、外側クラッド30の外径を228μmとし、コア間距離を30μmとした。従って、作製したマルチコアファイバ1は、上記表2より、クロストークがピークとなる曲げ半径R
pkが100mm以下となる。
【0087】
次に作製したマルチコアファイバ1のクロストークを波長1550nmの光、波長1590nmの光、波長1625nmの光について測定した。条長が9.6kmにおけるクロストークを24回測定し、それぞれの測定値を電力結合理論により100kmにおけるクロストークに換算した値とした。なお、この測定においてマルチコアファイバ1の曲げ半径を155mmとした。
【0088】
この結果を表3及び
図5に示す。なお、実線は、それぞれの波長のクロストークの平均値を最小二乗法を用いて計算した近似直線である
【表3】
【0089】
表3及び
図6より、条長が100kmにおいて、波長1530nmから1625nmの光(Cバンド帯からLバンド帯)において、クロストークが−37dBより小さい結果となった。実用上支障のない小さなクロストークとなった。
【0090】
以上の実施例の結果より、本発明のマルチコアファイバによれば、クロストークが抑制できることが示された。