【実施例1】
【0016】
図1は、本実施例の重ね合わせ計測装置の構成図であり、装置本体は電子光学系であるカラム1、ならびに試料室2からなる。カラム1は、電子銃3、コンデンサレンズ4、対物レンズ8、ディフレクタ7、アライナ5、2次電子検出器9、E×Bフィルタ6、反射電子検出器10を含む。電子銃3によって発生された一次電子線(照射電子)は、コンデンサレンズ4と対物レンズ8によってウェハ11に対して収束させて照射する。アライナ5は一次電子線が対物レンズ8に入射する位置をアライメントする。一次電子線は、ディフレクタ7によってウェハ11に対して走査される。ディフレクタ7は、ビーム走査コントローラ17からの信号に従って一次電子線を前記ウェハ11に対して走査させる。一次電子線の照射によってウェハ11から得られる2次電子はE×Bフィルタ6で2次電子検出器9の方向に向けられ、2次電子検出器9で検出される。また、ウェハ11からの反射電子は反射電子検出器10によって検出される。2次電子や反射電子を総称して電子線照射により試料から得られる信号を信号電子と呼ぶこととする。荷電粒子光学系には、これ以外に他のレンズや電極、検出器を含んでもよいし、一部が上記と異なっていてもよく、荷電粒子光学系の構成はこれに限られない。試料室2に設置されるXYステージ13は、ステージコントローラ18からの信号に従ってカラム1に対してウェハ11を移動される。XYステージ13上には、ビーム校正のための標準試料12が取り付けられている。また、本装置はウェハアライメントのための光学顕微鏡14を有している。2次電子検出器9および反射電子検出器10からの信号はアンプ15ならびにアンプ16により信号変換され、画像処理ボード19に送られ画像化される。また、本実施例の重ね合わせ計測装置は制御PC20により装置全体の動作が制御される。なお、制御PCには、マウスやキーボードなどユーザが指示入力するための入力部と、画面を表示するモニタ等の表示部、ハードディスクやメモリ等の記憶部が含まれている。
【0017】
荷電粒子線装置には、このほかにも各部分の動作を制御する制御部や、検出器から出力される信号に基づいて画像を生成する画像生成部が含まれている(図示省略)。制御部や画像生成部は、専用の回路基板によってハードウェアとして構成されていてもよいし、荷電粒子線装置に接続されたコンピュータで実行されるソフトウェアによって構成されてもよい。ハードウェアにより構成する場合には、処理を実行する複数の演算器を配線基板上、または半導体チップまたはパッケージ内に集積することにより実現できる。ソフトウェアにより構成する場合には、コンピュータに高速な汎用CPUを搭載して、所望の演算処理を実行するプログラムを実行することで実現できる。このプログラムが記録された記録媒体により、既存の装置をアップグレードすることも可能である。また、これらの装置や回路、コンピュータ間は有線又は無線のネットワークで接続され、適宜データが送受信される。
【0018】
以下、
図2により本実施例にて重ね合わせ計測を行うシリコンウェハ試料の構造を説明する。
図2(a)は、該試料を走査型電子顕微鏡で観察したときの画像であり、上層22は矩形開口部が配列された形状であり、該矩形パターンの穴底に、下層21の円形パターンの一部が見えている。
図2(b)は、
図2(a)のA−A’部分の断面図である。下層21は酸化シリコン23中にシリコンパターン24を有した構造であり、上層22は酸化シリコン膜に矩形ホール25が形成された構造となっている。
図2(c)は、下層21におけるシリコンパターン24の配列を示す模式図である。また、
図2(d)は、上層22の矩形ホール25のパターン配列を示す模式図である。
【0019】
矩形ホール25は、後の工程において導電性物質で埋められ、プラグが形成される。
図2(a)は、上層21と下層22の重ね合わせが良好になされている状態であり、各ホール25の内部にはシリコンパターン24の一部が見えている。この場合はプラグ形成時に、各プラグがシリコンパターン25と適切な抵抗値で電気的にコンタクトされる。
【0020】
図3は、上層22の下層21に対する重ね合わせにずれが生じたケースを示している。矩形ホール26aでは、ホール底面に十分なシリコンパターン24が存在するため、プラグ形成時に下層との間に適切な電気コンタクトを取ることができる。しかしながら、矩形ホール26b、26cにおいては、ホール底面のシリコンパターン24の面積が狭いため、プラグ形成時にシリコンパターン24とのコンタクト部の抵抗が正常よりも大きくなってしまう。さらに、矩形ホール26dでは、ホール底面にシリコンパターン24が全く存在しないため、シリコンパターンとの電気的コンタクトを取ることができない。このように、重ね合わせずれが生じた場合には、最終的に製造されるデバイスが正常に動作しない可能性がある。
【0021】
以下、
図4により、本実施例におけるレイヤ間の重ね合わせ計測31の手順を説明する。まず、重ね合わせ計測の対象のウェハをロードする(ステップ32)。次に、光学顕微鏡およびSEMによるウェハアライメント点を登録して(ステップ33)、アライメントを実行する。なお、アライメントとは、登録されたパターンの位置を基準としてウェハの座標系と装置の座標系を対応付ける処理のことである。
【0022】
その後、繰り返しパターンの加算処理を行うためのテンプレート登録(ステップ34)、および、ウェハ上における重ね合わせ測定点登録(ステップ35)を行う。ステップ34のテンプレートは後述するようにオーバレイ計測対象となるパターンの位置を特定するための基準となる画像である。また、ステップ35ではオーバレイ計測対象とするパターンを含む画像の取得位置を登録する。オーバレイ計測対象となるパターンを含む画像の中から、登録されたテンプレートとマッチングするパターンを探索し、マッチングした位置の画像を加算する処理を行う。この処理については詳しく後述する。以上のプロセスにより、重ね合わせ計測のためのレシピ作成がなされ、以降のプロセスでは作成されたレシピによる計測を実施する。
【0023】
レシピを実行すると、最初の測定点へ移動し(ステップ36)、テンプレート登録時(ステップ34)に規定した条件にて画像を取得する(ステップ37)。次に、取得された画像の中の同一パターン部の加算により高SN画像を作成し、位置ずれ量計算を行う(ステップ38)。レシピに登録された全点の測定が終了したのかを判断し(ステップ39)、測定点が残っていれば次の測定点へ移動して画像取得と位置ずれ量計算を実行する。全ての測定点での測定が終了していれば、ウェハアンロードを行う(ステップ40)とともに、結果出力を実行する(ステップ41)。以下、個々のプロセスの詳細について
図4(b)(c)のフローに沿って各図を用いて説明する。
【0024】
まず、
図5と
図6により、
図4(b)のフローに沿って、ステップ34におけるテンプレート登録の詳細手順を説明する。
図5のGUI51上には、マップ表示エリア52と画像表示エリア53が配置されている。マップ表示エリア52には、ウェハマップ選択ボタン54とショットマップ選択ボタン55により、ウェハマップ表示とショットマップ表示を切替え可能である。
図6は画像処理ボード19および制御PC20の内部処理を説明する図である。GUI制御ユニット76と情報記憶ユニットは制御PC20に配置され、画像記憶ユニット77と画像処理ユニット79は画像処理ボード19に配置されている。なお、
図6に示した各機能ブロックは相互に情報線で接続されているものとする。
【0025】
図5ではショットマップが選択された状態であり、ショットマップ選択ボタン55がハイライト表示となっている。この状態でショットマップ内をクリックすることにより、ショット内の画像取得位置へステージにより移動する(ステップ34a)。画像表示エリア53には、光学顕微鏡画像選択ボタン57とSEM画像選択ボタン58により、光学顕微鏡像とSEM像とを切替えて表示させることができる。表示倍率は表示倍率変更ボタン59により変更することができる。その他の画像取得条件は、画像条件設定ボタン60aにより画像条件設定ウィンドウを立ち上げて行い、GUI制御ユニット76の情報入出力部76aを通じて情報記憶ユニット78のパラメータ記憶部78aに画像条件を記憶させる。画像取得ボタン60bをクリックすることにより設定した画像条件で取得された画像は、画像記憶ユニット77の取得画像記憶部77aに記憶され、画像表示部76aを通じてGUIに表示される(ステップ34b)。
【0026】
テンプレートの登録は、テンプレート登録タブ61aを選択した状態で画像表示エリア53にてパターンを選択することで行う。画像中央付近にてテンプレートとして登録したい基準点62aを選択し(ステップ34c)、次に一周期分ずれた基準点62bを選択する(ステップ34d)。この状態でピッチ計算ボタン63を押すと、選択した二点間のピッチがGUI制御ユニット76で計算されてピッチ表示部64に表示されるとともにピッチ情報がパラメータ記憶部78aに記憶される(ステップ34e)。ここで、ピッチとは上下レイヤともに同じパターンが繰り返される周期を意味する。サブピッチ登録部65には、点62aと点62bの間の上層パターンのピッチ数を入力する。すなわち、サブピッチとは上層パターンのみに着目したときに上層パターンの繰返し周期を意味する。ここでは、横方向には矩形開口部が2つ、縦方向には矩形開口部が4つ存在しているので、XとYのサブピッチ数としてそれぞれ2と4を入力する(ステップ34f)。ピッチ単位で基準点と同じパターンが繰り返されるが、それ以外にも基準点と同じパターンである箇所が存在する場合がある。このような箇所をサブパターンと称し、ユーザがその位置をサブパターン登録部66にサブピッチ単位で入力する(ステップ34g)。本実施例では、点62aからX方向に1ピッチとY方向に2ピッチ移動した点62eをサブパターンとして登録する。画像表示エリア53にて、基準点と同じパターンの位置に×マークがなされていることを確認後、テンプレートサイズ登録エリア67にテンプレートのサイズをピクセル単位で設定し(ステップ34h)、テンプレート取得ボタン68をクリックする(ステップ34i)。これにより、画像処理ユニット79のパターンマッチング部79aで点62aから点62eの切り出しの画像の同一パターン位置を正確に特定し、加算処理部79bで加算画像を作成する。加算画像はテンプレート中間画像記憶部77bに記憶され、画像表示部76bを通じてテンプレート69とテンプレート70がそれぞれGUIに表示される。
【0027】
テンプレート69(第一のテンプレート画像)は上層パターンに対して最適なコントラストとなるように、輝度値のオフセットやゲインが調整されたものである。具体的には、ユーザがオフセット調整ボタン71とゲイン調整ボタン72を操作することにより、
図7に示されるような変換テーブルを調整する(ステップ34j)。また、テンプレート70(第二のテンプレート画像)は下層パターンに対して最適なコントラストとなるように、輝度値のオフセットやゲインが調整されたものである。具体的には、ユーザがオフセット調整ボタン73とゲイン調整ボタン74により
図7に示されるような変換テーブルを調整する(ステップ34k)。テンプレート69とテンプレート70のコントラスト調整は独立して行うことができる。
【0028】
変換テーブルは画像処理ユニット79内の明るさ変換部79bに上層パターン用と下層パターン用の2つが保存されており、デフォルトでは
図7(a)のように12ビットを8ビットに線形変換するものとなっている。ステップ34jおよびステップ35kにおいてオフセットやゲインが変更されると、変更されたオフセットとゲインに基づいて明るさ変換部79bの変換テーブルが更新され、明るさ変換されたテンプレート画像を再作成される。テンプレート画像は、テンプレート中間画像記憶部77bに保存されるとともに画像表示部76bを通じてGUIに表示される。テンプレート確定ボタン75を押すことで、テンプレート中間画像記憶部77bに保存されていたテンプレート画像が、情報記憶ユニット78内のテンプレート画像記憶部78bに保存される(ステップ34l)。
【0029】
このように、レシピ作成時に、変換テーブルを更新しながら最適なテーブルを作成する。一方、レシピ動作時は、レシピ開始時にオフセットとゲインのレシピ設定値に基づいて作成される変換テーブルを明るさ変換部79cに保存しておき、レシピ動作中は明るさ変換部79cに保存された変換テーブルを常時使用することができる。
【0030】
図7(b)はテンプレート69に対する変換テーブルの説明図であり、入力画像の信号値がAの点と信号値がBの点が、保存画像にて信号値0から256に均等に割り当てられる。一方、
図7(c)はテンプレート70に対する変換テーブルの説明図であり、入力画像の信号値がA’の点と信号値がB’の点が、保存画像にて信号値0から256に均等に割り当てられる。ここで、
図7(b)は上層の明るいパターンを、
図7(c)は下層の暗いパターンをそれぞれ強調するような変換テーブルとなっている。
【0031】
本実施例においては、画像コントラストを変えることで上層および下層パターンに対してコントラストが最適な画像を作成しているが、異なる検出器からの信号を用いることでそれぞれのレイヤに最適な画像を得ることも可能である。例えば、上層パターンはエッジ部が明確に画像化される二次電子検出器(SE検出器)からの信号を利用し、下層パターンは材質コントラストが得られやすい反射電子検出器(BSE検出器)からの信号を利用してもよい。
【0032】
次に
図8により、ショット内での測定座標を登録する手順を説明する。測定点登録タブ61bを選択した後、ショットマップ選択ボタン55によりマップ表示エリア52にショットマップを表示させる。この状態で、ショットマップ上をクリックするとクリックした場所の画像が取得される。画像表示エリアにて画像をクリックすると、その場所が重ね合わせ測定位置として登録される。登録された重ね合わせ測定位置としてショットマップ上に×印として対応する位置が表示されるとともに、ショット内座標表示エリア82に登録座標が表示される。本実施例では、マップ表示エリア52のショットマップにおいて81a、81b、81c、81dで示される4つの測定点を登録しており、これらに対応するショット内座標がショット内座標表示エリア82に表示されている。また、測定ショット表示エリア83には、初期状態として原点ショット(0,0)のみが選択された状態となっている。
【0033】
測定ショットを変更する場合は、
図9のようにウェハマップ選択ボタン54によりウェハマップを表示させた状態で、測定を実行したいショットをウェハマップ上で選択する。
図9ではショット85aとショット85bの2つのショットが選択されているが、選択されているショットは測定ショット表示エリア83にて確認することができる。
【0034】
図10は画像条件設定ボタン60aをクリックしたときに表示される画像条件設定ウィンドウ92を示している。ウィンドウ内には、加速電圧設定エリア93、プローブ電流設定エリア94、画像表示エリア53における横方向の保存画像の画素数を設定するX方向の画像サイズ設定エリア95、画像表示エリア53における縦方向の保存画像の画素数を設定するY方向の画像サイズ設定エリア96、ならびに画像加算回数設定エリア97が配置されている。
【0035】
次に
図11、
図12、
図13により、
図4(c)のフローに沿って位置ずれを計測する手順を説明する。ここで、画像サイズは512画素から4096画素の間において128画素単位で設定可能である。テンプレート作成時のように512×512画素で取得された画像を16回加算することによりSNのよい画像を得るかわりに、重ね合わせずれ計測時は1024×1024画素で取得された画像を4回加算してもよい。1024×1024画素で取得された画像は512×512画素の画像の4倍の視野を持つため、4回加算された1024×1024画素の画像内の同一パターン部を加算することで、16回加算した512×512画素の画像を用いたとき以上にSNを上げることが可能である。この場合、ウェハ上の各場所に照射される電子のドーズ量は1/4となるため、ウェハのダメージを大幅に低減することができる。
【0036】
設定した条件にて画像が取得されると、明るさ変換部79cによって当該一の画像に対して異なる二つのグレーレベル変換処理により、上層と下層とのそれぞれに最適化された画像が生成される。具体的には、明るさ変換部79cによって
図7(c)の下層のコントラストを上げる変換テーブルで変換された画像90(
図11参照)と、
図7(b)の上層のコントラストを上げる変換テーブルで変換された画像100(
図12参照)が画像記憶ユニット77内の明るさ変換画像記憶部77c装置のメモリ内に保存される(ステップ38a)。画像90は下層パターンに最適化されたコントラストに調整されており、上層パターンは輝度が飽和している。一方、画像100は上層パターンに最適化されたコントラストに調整されており、下層パターンは暗くなりすぎて判別しにくい状態となっている。
【0037】
はじめに、下層パターンに最適化されたテンプレート70(第二のテンプレート画像)を用いて、画像90の中央付近にてテンプレートと同じパターンの位置を探索(マッチング)する。具体的には、画像90の中央部でパターンピッチ分の範囲でテンプレート70との正規化相関をパターンマッチング処理部79aで計算し、相関値の高い位置を求める(ステップ38b)。この場合、
図11(c)に示すようにテンプレートを完全に一致している位置91dと91fにてもっとも高い相関値となり、上層のみが一致している位置91a、91b、91c、91e、91g、91hにて次に高い相関値が得られる。ここで、もっとも高い相関値である位置91dを周期パターン探索の基準点として設定する。なお、ここでは91dと91fは上層下層ともに同じパターンであるため同程度の相関値となっているが、ノイズ等の影響により偶然91dのマッチング率が少しだけ高くなっている例を示している。
【0038】
次に、パターンマッチング処理部79aは、
図12(a)の画像100において画像90で設定した基準点に相当する位置を基準としてテンプレート69(第一のテンプレート画像)と同じパターンを有する位置を探索(マッチング)する。より具体的には画像90で設定した基準点の近傍で、テンプレート69との正規相関値が最大となる位置をピクセル以下の精度にて決定する。画像100においてテンプレート69との相関値が最大となる位置はテンプレート69と同じパターンを有する位置とみなせるのでこの位置へ基準点101を変更する(ステップ38c)。画像100およびテンプレート69では上層パターンのみが明確に見えているため、SNの低い下層パターンに影響されずにテンプレートとのマッチングを行うことができ、その結果ピクセル以下の精度でマッチング位置を求めることができる。
【0039】
画像100での基準点が決まったら、基準点101に対して、次の位置関係にある点の近傍にて同様にテンプレートとの正規化相関値が最大になる位置を探索する(ステップ38d)。なお、基準点の画像上のピクセル単位での座標を(Tx,Ty)、ピクセル単位でのXおよびY方向のパターン周期をPxならびPy、整数M、整数Nとする。
I: {Tx+N・Px,Ty+N・Py}
II: {Tx+(N+1/2)・Px,Ty+(N+1/2)・Py}
【0040】
ここで、Iは
図5の画像表示エリアにて62aを基準点としたときに、62aからピッチの整数倍だけ上下左右方向にシフトさせた一連の位置である。また、IIは基準点に対して62eの位置関係にある点から、ピッチの整数倍だけ上下左右方向にシフトさせた一連の位置となる。
【0041】
相関値が最大となる位置をパターンマッチング処理部79aにより複数特定し、特定された位置(第一の部分)から切り出した画像102a、102b、102c・・・(第一の部分画像)を加算処理部79bで加算して、加算画像103(第一の加算画像)を生成する。加算画像103は加算画像記憶部に記憶される(ステップ38e)。位置ずれ計算部79dにおいて加算画像103を用いて上層の十字パターンの中心位置104を求める(ステップ38f)。画像102a、102b、102c・・・および加算画像103は上層に最適化されたコントラストの画像なので上層の十字パターンの中心位置104を精度良く求めることができる。なお、以下で「パターンの中心位置」とは幾何学的な中心位置以外にも重心位置であってもよい。またそれ以外でも、パターン形状から一意に特定される所定の位置であればよい。
【0042】
同様に
図13に示すように、画像90のうち、画像100での最大相関値となる位置(すなわち画像102a、102b、102c・・・)に対応する位置(第二の部分)を複数特定する。特定された位置から切り出した画像112a、112b、112c・・・(第二の部分画像)を加算処理部79bで加算することで下層パターン画像の加算画像113(第二の加算画像)を生成する。加算画像113は加算画像記憶部に保存される(ステップ38g)。画像112a、112b、112c・・・および加算画像113では下層パターンがはっきり見えるようにコントラスト調整されているので、加算画像113を用いて下層パターンの位置を特定することで高精度に位置計測をすることができる。
【0043】
ただし、加算画像113には上層パターンも含まれているため、そのままでは下層パターンの中心位置を正確に求めることができないことがある。そこで、上層パターンにコントラストが最適化された加算画像103から得られる上層パターンの位置の情報を用いて、閾値以上の明るさである上層パターン部分をマスクアウトした画像114を作成し(ステップ38h)、位置ずれ計算部79dは画像114を用いて下層パターンの中心位置115を求める(ステップ38i)。ここで、ステップ38hのマスク処理とステップ39iの中心位置計算はともに位置ずれ計算部79dで実行される。本実施例では切り出す画像のサイズはテンプレートと同サイズとしたが、テンプレートと異なるサイズの画像を切り出すように設定することも可能である。重ね合わせずれ量は、ピクセル単位での上層パターンの中心位置103(Mx,My)と下層パターンの中心位置115(Nx,Ny)と、ピクセルサイズSとから以下の式で算出する(ステップ38j)。
X方向のずれ量: (Mx−Nx)・S
Y方向のずれ量: (My−Ny)・S
【0044】
全ての測定点の測定が終了すると、
図14に示す測定結果ファイル120を出力する。各測定点の加算画像103と加算画像113を測定結果ファイルにリンクさせて保存し、重ね合わせ計測が正常に行われていることの検証などの目的に利用することも可能である。
【実施例2】
【0045】
以下、実施例2において、実施例1の変形例を説明する。特記しない限り、実施例2の装置構成、対象試料の構造、計測プロセス、ならびにGUI構成は実施例1と同じである。
【0046】
実施例1では、ステップ38bにおいて下層パターンによる基準位置の探索を行っているが、下層パターンのSNによっては下層パターンの探索が困難となるケースが発生する。このため、実施例2においては、テンプレート70に示される下層パターンが必ず含まれるサイズにて画像を切り出して加算処理を行うことで、下層パターンの探索ステップを不要とした。
【0047】
図15に示すように、実施例2の画像条件設定ウィンドウ121には、ウィンドウ内には、加速電圧設定エリア122、プローブ電流設定エリア123、X方向の画像サイズ設定エリア124、Y方向の画像サイズ設定エリア125、画像加算回数設定エリア126、検出器選択エリア127、加算画像拡張サイズ設定エリア128が配置されている。
【0048】
実施例2においては、4096×4096画素の1回加算で得られた画像内において画像内の同一パターン部を加算する。実施例1では1024×1024画素の画像を4回加算する例を説明したが、本実施例の場合には加算を1回のみとすることでウェハ上の同一領域電子へのドーズ量がさらに少なくなり、ウェハのダメージを大幅に低減することができる。ここで、X方向のパターンピッチが100画素、Y方向のパターンピッチが200画素である場合、加算される繰り返しパターン数は以下のように計算される。
(加算回数)=(X方向のピッチ数)×(Y方向のピッチ数)×(ピッチ内のターゲットパターン)
【0049】
ここで、X方向のピッチ数=40(すなわち4096/100の整数部分)、Y方向のピッチ数=20(すなわち4096/200の整数部分)、ピッチ内のターゲットパターン数=2(すなわち1+サブパターン数)であるので、加算回数は160回となり、加算前の4096×4096画素の画像に対してSNを約13倍向上させることが出来る。
【0050】
検出器選択エリア127では、上層パターンおよび下層パターンに最適な検出をそれぞれ選択する。実施例2においては、上層パターンには二次電子検出器を、下層パターンに対しては反射電子検出器をそれぞれ選択している。また、実施例2では加算画像拡張サイズ設定エリア128に、加算する画像のテンプレートサイズに対する拡張量を、
図5のテンプレート70のパターンが必ず加算画像内に入るように上層パターンのピッチ単位(すなわちサブピッチ単位)で設定する。
【0051】
以下、加算画像拡張量の決定方法を
図11により説明する。ユーザは
図4(b)に示したテンプレート登録フローの中で上層及び下層に形成されているパターンの画像を確認して以下の方法により拡張量を決定することができる。または、上層及び下層に形成されるべきパターンを設計データ等から予め把握することができるので、以下の方法により拡張量を決定することができる。
【0052】
まず、仮に基準位置として91aまたは91gが選択された場合、テンプレート70のパターンは
図11(a)にて上に1サブピッチ移動した位置にあるため、必要な拡張量は上に1サブピッチとなる。同様に、91bまたは91hの場合は右に1サブピッチ、91cまたは91eの場合は上に1サブピッチと右に1サブピッチ分拡張すればよい。91dまたは91fはテンプレート70と同一の下層パターンであるため拡張は必要ない。これらから、下層のパターンが
図11のような配置となっている場合は、上層パターンのどの位置が基準位置として選択された場合でも、上に1サブピッチかつ右に1サブピッチ拡張した大きさの画像であれば、必ずテンプレート70のパターンと同一のパターンが画像内に含まれる。
【0053】
以上をまとめると、試料上で任意に設定された仮想的な基準点の各々から、上層および下層がテンプレートと同じパターンである最近接の位置までの距離をそれぞれ求め、求められた距離のうち最大距離の分だけ、加算する画像の視野範囲が拡張されるので、結果としてこの分だけテンプレートより大きな画像を加算対象とすることになる。なお、上記ではテンプレートの大きさより1サブピッチだけ拡張して加算対象の画像を取得する例を示したが、拡張量は試料のパターンによって異なる。どのようなパターンの試料であっても少なくとも1ピッチ以上の視野範囲を持つように拡張すれば必ずテンプレート70と同じパターンを含むようにすることができる。
【0054】
次に
図16、
図17、
図18により実施例2における位置ずれを計測する手順を説明する。設定した条件にて画像が取得されると、二次電子検出器による画像130(
図16参照)と、反射電子検出器による画像140(
図18参照)が装置のメモリ内に保存される。はじめに、上層パターンに最適化されたテンプレート69を用いて、画像130の中央付近の探索エリア131にてテンプレートと同一パターンの位置を探索する。具体的には、画像130の中央部でパターンピッチ分の範囲でテンプレート69との正規化相関を計算により相関値の高い位置を求め、基準点132とする。実施例2は、下層パターンのSNが不十分であり、元画像において下層パターンを含めてテンプレートと一致する位置を探索するのが困難なケースを想定している。このため、基準点132では下層パターンがテンプレート69と異なっているが、このような場合でもテンプレートと同じ画像が加算画像に含まれるよう加算画像のサイズを十分に大きく設定することで対応することができる。
【0055】
次に、画像130に含まれ基準点132に対して次の位置関係にある点の近傍にて、同様にテンプレート69との正規化相関値最大になる位置を探索する。なお、基準点132の画像上のピクセル単位での座標を(Sx,Sy)、ピクセル単位でのXおよびY方向のパターン周期をPxならびPy、整数M、整数Nとする。
I:{Sx+N・Px,Sy+N・Py}
II:{Sx+(N+1/2)・Px,Sy+(N+1/2)・Py}
【0056】
ここで、Iは
図5の画像表示エリアにて62aを基準点としたときに、62aからピッチの整数倍だけ上下左右方向にシフトさせた一連の位置である。また、IIは基準点に対して62eの位置関係にある点から、ピッチの整数倍だけ上下左右方向にシフトさせた一連の位置である。これらは、Iは点134aのような点であり、IIは点134bのような点であり、実施例2の画像130で×印で示される点がこれらに当たる。
【0057】
相関値が最大となる位置に対して、加算画像サイズ設定エリア128で規定される大きさの画像を切り出して加算処理を行なう。実施例2では、基準点132における加算領域133のように、正規化相関で求めた位置において、上に1サブピッチ分かつ右に1サブピッチ分だけテンプレートサイズを拡張した画像を切り出している。次に、
図17に示すように、切り出した画像135a、135b、135c・・・を加算して、加算画像136を作成する。
【0058】
図18に示すように、同様に、画像の切り出しと加算処理を下層パターン用の画像140に対しても行う。本実施例では下層パターンのSN比が悪いため下層パターン用の画像140においても下層パターンが明確に見えていないが、上層パターン用の画像130を用いて下層パターン用の画像の切り出し位置を特定するため問題とならない。具体的には、画像140内の基準点142は、画像130の基準点132と同じ画像上の座標として設定する。また、点143aと点143bは、それぞれ点134aと点134bと同じ座標となる。このため、画像140から切り出す画像145a、145b、145cは、画像130からの切り出し時と同じ位置からの切り出しとなる。これらの切り出した画像を加算して加算画像146を作成する。加算画像146では加算によりSN比が改善され下層パターンが見えるようになっている。
【0059】
上層パターン画像および下層パターン画像の加算画像作成後、
図19に示す手順にて重ね合わせずれ量を求める。はじめに、下層パターンの加算画像146においてテンプレート70と一致する位置151を正規化相関によりもとめ、テンプレート70と同じ部分の画像152を切り出す。また、上層パターンの加算画像136からも、切り出した画像152に対応する位置から画像を切り出し、テンプレート69と同じ画像153を作成する。次に、画像153において上層の十字パターンの中心位置154を求める。その後、画像152にて閾値以上の明るさである部分の位置をマスクアウトした画像155を作成し、下層パターンの中心位置156を求める。
【0060】
重ね合わせずれ量は、ピクセル単位での上層パターンの中心位置154(Mx,My)と下層パターンの中心位置156(Nx,Ny)と、ピクセルサイズSとから以下の式で求める。
X方向のずれ量: (Mx−Nx)・S
Y方向のずれ量: (My−Ny)・S
【0061】
全ての測定点の測定が終了すると、
図14に示す測定結果ファイル120を出力する。
【0062】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、
図20に示すように、複数の荷電粒子線装置160とネットワークで接続されたコンピュータ161にて、上記の処理を行うことができる。荷電粒子線装置160で画像取得処理を行い、コンピュータ161で画像取得以外の作業を行うことで、効率のより良い重ね合わせ計測システムを構築することが可能となる。
【0063】
上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。
【0064】
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、光ディスク等の記録媒体に置くことができる。
【0065】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。