(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の各実施形態において、機能構成例、処理フローの説明では、同じ処理については、同じ参照番号、同じステップ番号を付加し、重複説明を省略する。
<実施形態1>
図1に本実施例の検出装置100とモータ101との機能構成例を示す。
図1の例のモータ101は例えばブラシレスモータであり、固定子105、回転子(ロータ)106、N個のホール素子108を含む。Nは2以上の整数であり、
図1の例では、N=3となる。
図1の例では、固定子105には、3相の励磁コイル104u、104v、104wが設けられている。このように、励磁コイルは、3相結線とすることが好ましい。
【0009】
供給手段102は、3相の励磁コイル104u、104v、104wそれぞれに対して、交流電流iu、iv、iwを供給する。交流電流iu、iv、iwが供給されると、励磁コイル104u、104v、104wそれぞれで磁界が発生される。
【0010】
また、
図1の例では、モータ101の回転子106には、回転方向に沿って、永久磁石106aが多極着磁されている。
図1の例では、N極とS極の4ペアの永久磁石106aが設けられている。そして、3相の励磁コイル104u、104v、104wによる発生された磁界と、当該永久磁石106aの磁界との相互関係により、回転トルクが生じ、回転子106が回転する。
【0011】
生成手段108u、108v、108wは、回転子106の回転角度に応じて、それぞれの位相が異なるL個(Lは、2以上の整数)の第1正弦波信号を生成して出力する。ここで、第1正弦波信号とは、回転子106の回転角度(回転位置)を示す信号であり、正弦波形状である。また、
図1の例では、L=3とする。また、生成手段108u、108v、108wは、モータの回転子が発生させる磁界を検出する磁気センサ手段であることが好ましい。更には、生成手段108u、108v、108wはホール素子が用いられることが好ましい。以下では、生成手段108u、108v、108wをホール素子108u、108v、108wとして説明する。
【0012】
図1の例では、3個のホール素子108u、108v、108wは、着磁位相基準で互いに120度ずつずらして、配置される。これにより、電気角度(位相)がそれぞれ120度ずつ異なる3相の第1正弦波信号(正弦波形状の電圧)hu、hv、hwが出力される。
図1の例では、回転子106に着磁極数は4ペアなので、回転子106が1回転すると、第1正弦波信号hu、hv、hwは4周期分出力される。以下では、正弦波信号の位相を「電気角度」といい、モータ101の回転角度を「機械角度」という。
【0013】
図2に、第1正弦波信号hu、hv、hwそれぞれの波形の一例を示す。横軸は、電気角度(位相)を示す。また、第1正弦波信号hu、hv、hwの1周期分は、回転子106の1ペアの磁極1周期分に相当する。つまり、
図1に示すような、4ペアの着磁極数である場合には、第1正弦波信号hu、hv、hwの4周期(電気角度の4周期)=回転子106の1周期(機械角度の1周期)となる。
【0014】
ホール素子108u、108v、108wそれぞれから出力された第1正弦波信号hu、hv、hwは、演算手段110に入力される。演算手段110は、L個(この例は3個)の第1正弦波信号hu、hv、hw各々を用いた演算を行なうことにより、M個の第2正弦波信号を生成する。ここで、Mは、M>Lを満たす整数であり、この例では、M=24とする。
【0015】
また、第1正弦波信号hu、hv、hwを用いた演算とは、第1正弦波信号hu、hv、hwのうち、2つ以上の第1正弦波信号の加算または減算であることが好ましい。また、当該演算は、演算結果の2つ以上の第2正弦波信号を更に演算するようにしても良い。
【0016】
例えば、第1正弦波信号huと第1正弦波信号hvとの加算を行なった場合には、第1正弦波信号huや第1正弦波信号hvの振幅と、加算結果の正弦波信号(第2正弦波信号)の振幅と、が異なる場合がある。この場合には、第1正弦波信号huや第1正弦波信号hvの振幅と、第2正弦波信号との振幅を同一にするために、当該第2正弦波信号に所定ゲインkを乗算するようにしてもよい。このように、必要に応じて、演算手段11の演算に所定ゲインkを乗算する処理を含めても良い。また、所定ゲインk=−1とすることで、M個の第1正弦波信号hu、hv、hwを符号反転を行なうことができる。
【0017】
このように、演算手段110の演算内容を、M個の第1正弦波信号のうち少なくとも2つの加算または減算、所定ゲインの乗算に限定することで、演算手段110の演算処理量を少なくすることが出来る。
【0018】
図3に、演算手段110、後述する比較手段112の機能構成例を示す。特に演算手段110を模式的に示す。以下の説明では、説明簡略化のために、第1正弦波信号hu、hv、hwをそれぞれ第1正弦波信号u、v、wという場合がある。演算手段110は、M個(この例では、M=24)の第1加減算器110−1、第2加減算器110−2,...,第24加減算器110−24を含む。
図3に示す第1加減算器110−1、第2加減算器110−2,...,第24加減算器110−24それぞれは、
図3の枠内に記載されている演算式を演算することで、第2正弦波信号u0、v0、w0、u1、v1、w1,...,u7、v7、w7を出力する。つまり、演算手段110は、24個の第2正弦波信号u0、v0、w0、u1、v1、w1,...,u7、v7、w7を生成して、出力する。
【0019】
第1加減算器110−1、第2加減算器110−2、第3加減算器110−3それぞれは、第2正弦波信号u0、v0、w0それぞれを出力する。第2正弦波信号u0、v0、w0それぞれについては、
第2正弦波信号u0=第1正弦波信号u
第2正弦波信号v0=第1正弦波信号v
第2正弦波信号w0=第1正弦波信号w
とする。
【0020】
また、第4加減算器110−4、第5加減算器110−5,...,第24加減算器110−24それぞれは、枠内に記載されている演算式を演算することで、第2正弦波信号u1、v1、w1,...,u7、v7、w7を求め出力する。また、第4加減算器110−4、第5加減算器110−5,...,第24加減算器110−24それぞれは、
図3に示す線分の直角部分で演算をしているとする。
【0021】
例えば、第2正弦波信号u1については、直角部分110αで演算をしている。直角部分110αには、第1正弦波信号uと第1正弦波信号vとが入力されている。そして、当該直角部分110αにおいて、
第2正弦波信号u1=(u0−v0)*0.577
が演算され、出力される。ここで「*」は乗算を示し、0.577は、所定ゲインkである。この所定ゲイン0.577を乗算することで、第2正弦波信号u1の振幅と、第1正弦波信号u0、v0との振幅を同一にすることが出来る。
【0022】
一般的に、位相の異なる2つの正弦波を加算または減算すると、当該2つの正弦波とは位相が異なる正弦波が生成される。
図4に第2正弦波信号u0と、(hu−hw)*0.577と、を示す。
図2に示すように、第1正弦波信号huと第2正弦波信号hwとは位相が240度ずれているが、
図4に示すように(hu−hw)*0.577の正弦波信号は、第1正弦波信号huと比べて、30度ずれている。なお、
図3の例では、第2正弦波信号(u−w)*0.577を反転させることで、第2正弦波信号u2が求められる。
【0023】
ホール素子108u、108v、108wからの第1正弦波信号だけでは、60度単位のゼロクロス情報しか得られない(ゼロクロス点が、60度ずつずれている)。そこで、第2正弦波信号u1、v1、w1を求めることにより、30度単位のゼロクロス情報を得ることが出来る。そして、演算手段110が当該演算を繰り返すと、更に小さい単位の位相ずれをしているゼロクロス点を持った第2正弦波信号を生成することが出来る。
図3に示す演算手段110では、当該演算処理を24回行なっていることから、7.5度単位(=180/24)のゼロクロス信号を得ることが出来る(ゼロクロス点が7.5度ずつずれている)。
【0024】
このようにして、演算手段110により、24個の第2正弦波信号u0、v0、w0、u1、v1、w1,...,u7、v7、w7が求められる。演算手段110の演算内容は、それぞれの位相差Δθが、180度/Mとなるような、M個の第2正弦波信号を生成するように定められる。この例では、M=24となるので位相差は、Δθ=7.5度となる。
【0025】
演算手段110により、生成された24個の第2正弦波信号u0、v0、w0、u1、v1、w1,...,u7、v7、w7は、調整手段111(
図3参照)に入力される。調整手段111は、入力された24個の第2正弦波信号の調整を行なう。演算手段110から出力された24個の第2正弦波信号u0、v0、w0、u1、v1、w1,...,u7、v7、w7は、それぞれが位相の異なる正弦波信号であるが、その位相順は必ずしも昇順ではない。そこで、調整手段111が、第2正弦波信号の位相順が昇順になるように、第2正弦波信号の並び替えと、または/および、第2正弦波信号の符号反転を行なう。この並び替え処理により、24個の正弦波信号は、位相が0度から7.5度ずつずれた順序になる。
【0026】
図5に第2正弦波信号を昇順に並べた一例を示す。
図5の例では、第2正弦波信号u0、u7、−v2・・・の順番で昇順になっている。つまり調整手段111は、第2正弦波信号u0、v0、w0・・・に対して、
図5に示す並び替え、符号反転をした後に、第2正弦波信号を出力する。
【0027】
また、調整手段111は必ずしも設ける必要はなく、
図1には、調整手段111は記載していない。調整手段111を設けずとも、全ての第2正弦波信号がそれぞれの位相が所定角度(この例では、7.5度)ずれた信号であれば、問題はない。
【0028】
演算手段110または調整手段111からの24個の第2正弦波信号は、比較手段112に入力される。比較手段112は、M個(この例では24個)の第2正弦波信号それぞれの振幅値と、予め定められた閾値th1とを比較し、比較結果を示すN個(Nは、N≧Mを満たす整数)の比較結果信号を生成する。また、比較手段112の当該処理は、M個の第2正弦波信号を予め定められた閾値th1でスライスする、ともいう。また、当該閾値th1はスライスレベル、ともいう。つまり、比較結果信号はスライス処理の結果を示す信号である。
【0029】
ここで、予め定められた閾値を1つとし、閾値th1とする。また、閾値th1=0とする。また、この例では、N=24(=M)とし、第2正弦波信号と同数であるとする。閾値th1は、記憶手段113に記憶されている。また、この例では、比較結果を示す比較結果信号とは、閾値th1より大きい区間をHigh信号(=1)とし、閾値th1より小さい区間をLow信号(=0)とする2値信号とする。
【0030】
比較手段112は、24個の正弦波信号それぞれの振幅と、閾値th1とを比較し、24個の正弦波信号それぞれについて、比較結果信号が生成される。具体的には、比較手段112は、第0比較手段112−0、第1比較手段112−1,...,第23比較手段112−23を具備する。そして、第0比較手段112−0、第1比較手段112−1,...,第23比較手段112−23それぞれは、第2正弦波信号u0、v0、w0、u1、v1、w1,...,u7、v7、w7それぞれの振幅と、閾値th1とを比較し、第2正弦波信号u0、v0、w0、u1、v1、w1,...,u7、v7、w7それぞれについての比較結果信号z1、z2,...,z23を生成して出力する。
【0031】
図6Aに、比較結果信号z0、z1,...,z23を示す。
図6Aでは、比較結果信号z23のみについてHigh状態、Low状態を示す。比較結果信号z0、z1,...,z23それぞれについて、High状態の区間は、比較結果信号z0、z1,...,z23に対応する第2正弦波信号が、閾値th1より大きい区間となる。また、Low状態の区間は、比較結果信号z0、z1,...,z23に対応する第2正弦波信号が、閾値th1より小さい区間となる。また、24個の比較結果信号z0、z1,...,z23は、48個のエッジe(立ち上がりと立ち下がり)を持つことになる。
【0032】
また、第2正弦波信号はそれぞれ位相差Δθが7.5度ずつずれていることから、比較結果信号z0、z1,...,z23それぞれの位相差Δθが7.5度ずつずれている。比較手段112によるスライス処理により生成された24個比較結果信号z0、z1,...,z23は、検出手段114に入力される。
【0033】
検出手段114は、比較手段112により生成されたN個(この例では24個)の比較結果信号z0〜z23に基づいて、検出信号を生成して出力する。ここで、検出信号とは、モータ101(回転子106)の回転位置およびモータ101(回転子106)の回転速度のうち少なくとも一方を検出するための信号である。
【0034】
また、一般的に、モータ101(回転子106)の回転位置およびモータ101(回転子106)の回転速度のうち少なくとも一方を検出するためには、互いに位相が90度ずれた2つのパルス信号を用いる。そして、本実施例においても、
図6Bに示すように、検出信号を、エンコーダ信号A、エンコーダ信号Bとする。エンコーダ信号A、エンコーダ信号Bは、互いに位相が90度ずれたパルス信号である。
【0035】
本実施形態1の検出装置100によれば、一般的な回転式の光学エンコーダを用いる必要はない。従って、モータ101に検出装置100を搭載したとしても、従来と比較して、小型化を図ることが出来る。また、従来の光学エンコーダの2相パルス信号を生成するエンコーダ素子は、高価であった。更に、従来の光学エンコーダはスリット部分に付着される汚れを回避するために、カバーを装着させる必要があった。本実施形態1の検出装置100では、当該エンコーダ素子を用いる必要はなく、カバーも装着させる必要はないので、従来の光学エンコーダと比較してコストを低減させることが出来る。
【0036】
また、ホール素子108u、108v、108wからの第1正弦波信号では、60度単位のゼロクロス情報しか含まれておらず低分解能であるが、演算手段110の演算処理により、更に細やかな単位(位相差)のゼロクロス情報を取得することが出来る(上記例では、7.5度単位)。従って、検出手段114は、高分解能化されたエンコーダ信号A、Bを出力することが出来、より正確なモータ101の回転速度を求めることが出来る。
【0037】
また、本実施形態で説明したように、比較手段112が用いる閾値th1(スライスレベル)は1つとすることが好ましい。何故なら、記憶手段113の記憶容量を削減することが出来、比較手段112のスライス処理コストも低減できるからである。
【0038】
また、本実施形態で説明したように、閾値th1(スライスレベル)=0としていることが好ましい。何故なら、スライス処理としてゼロクロスのみを使うことになり、スライスレベルの誤差(ばらつき)が生じ難くなるからである。また、正弦波の最も急な部分を用いるので、オフセットや振幅誤差に対して、位相精度を確保し易くなるからである。
【0039】
また、本実施形態で説明したように、演算手段110の演算処理は、第1正弦波信号についての加算処理、減算処理、所定ゲインkの乗算処理のうち少なくとも1つであることが好ましい。何故なら、演算手段110の回路構成を簡略化することができ、低コストで演算手段110を構成できるからである。
【0040】
また、本実施形態で説明したように、検出手段114は、互いに位相が90度または略90度異なる2相パルス信号であるエンコーダ信号A、Bを生成して出力することが好ましい。何故なら、従来のモータ駆動装置と検出装置とのインターフェース部分をそのまま用いることが出来、開発コストを抑えることが出来るからである。
【0041】
また、本実施形態で説明したように、生成手段108u、108v、108wとして、モータ101の回転子106が発生させる磁界を検出する磁気センサ(
図1の例ではホール素子)を用いることが好ましい。何故なら、このような磁気センサは、一般的なブラシレスモータに元々備わっている場合が多く、当該磁気センサを流用することが出来、新たに、センサを設ける必要は無く、コストアップを回避することが出来るからである。
【0042】
また、上記の例では、第2正弦波信号は24個であるとして説明したが、第2正弦波信号の数が多ければ多いほど、高分解能なエンコーダ信号A、Bを生成することが出来、結果として、モータ101の回転速度や回転方向の検出精度を高めることが出来る。
[実施形態2]
次に実施形態2の検出装置200について説明する。
図9に実施形態2の検出装置200の機能構成例を示す。検出装置200は、検出装置100と比較して、演算手段110が演算手段210に代替され、比較手段112が比較手段212に代替されている。
【0043】
図10に、演算手段210の機能構成例を示す。演算手段110(
図3参照)は、24回の演算を行なっていたが、
図10記載の演算手段210は、6回の演算を行なう。従って、演算手段210は、演算処理110よりも処理コストが低減されている。
【0044】
演算手段210の演算により、6個(=M)の第2正弦波信号u0、v0、w0、u1、v1、w1が生成され出力される。6個の第2正弦波信号u0、v0、w0、u1、v1、w1はゼロクロス点が、30度ずつずれているものである。6個の第2正弦波信号u0、v0、w0、u1、v1、w1は、比較手段212に入力される。
【0045】
次に比較手段212は、スライス処理を行なうが、当該スライス処理は、P個(Pは2以上の整数)の閾値が用いられる。ここでは、P=4とし、4個の閾値をth0=0、th1=0.131、th2=0.259、th3=0.383とする。各閾値は、記憶手段113に記憶されている。
【0046】
図11に、比較手段212の機能構成例を示す。
図11の比較手段212は、M+1個(この例では、7個)の比較手段である、第1比較手段2121、第2比較手段2122、第3比較手段2123、第4比較手段2124、第5比較手段2125、第6比較手段2126、第7比較手段2127を含む。
【0047】
第1比較手段2121、第2比較手段2122、第3比較手段2123、第4比較手段2124、第5比較手段2125、第6比較手段2126、第7比較手段2127それぞれには、第2正弦波信号u0、−w1、−w0、v1、v0、−u1、−u0が入力される。
【0048】
また、第1比較手段2121は、閾値の数と同数であるP個(この例では4個)の比較器である、第0比較器21210、第1比較器21211、第2比較器21212、第3比較器21213を含む。また、他の比較手段2122〜2126も同様の構成となっている。
【0049】
図12に、第1比較手段2121による、第2正弦波信号u0(=hu)と、各閾値th0〜th3のそれぞれとの比較について示す。
図12に示すように、信号d0_0は、第2正弦波信号u0を、閾値th0=0でスライスした結果の信号である。信号d0_1は、第2正弦波信号u0を、閾値th1=0.131でスライスした結果の信号である。信号d0_2は、第2正弦波信号u0を、閾値th2=0.259でスライスした結果の信号である。信号d0_3は、第2正弦波信号u0を、閾値th3=0.383でスライスした結果の信号である。
【0050】
また、他の各々の比較手段である、第2比較手段2122、第3比較手段2123、第4比較手段2124、第5比較手段2125、第6比較手段2126、第7比較手段2127それぞれは、入力された第2正弦波信号−w1、−w0、v1、v0、u1、−u0に対して同様の処理を行なう。そして、第2比較手段2122は、信号d30_0、d30_1、d30_2、d30_3を出力する。第3比較手段2123は、信号d60_0、d60_1、d60_2、d60_3を出力する。第4比較手段2124は、信号d90_0、d90_1、d90_2、d90_3を出力する。第5比較手段2124は、信号d120_0、d120_1、d120_2、d120_3を出力する。第6比較手段2126は、信号d150_0、d150_1、d150_2、d150_3を出力する。
【0051】
また、第1比較手段2121〜第6比較手段2126から出力される信号dθ_sについて、θは基準位相(第1正弦波信号の位相)との位相ずれを示す。また、信号dθの参照符号である。また、第7比較手段2127は、信号md0_1、md0_2、md0_3を出力するが、これらの信号について後述する。
【0052】
そして、
図13に示すように、21個の信号である、d0_0、d0_1,...,d150_2、d150_3はこの順番で、位相差が7.5度ずつずれた信号となる。そして、比較手段112は、d0_0、d0_1,...,d150_2、d150_3を、比較結果信号z0〜z23として出力する。
【0053】
しかし、
図13のc1に示すように、信号d0_3の立ち下りエッジの位相(電気角度)と、信号d150_1の立ち上がりエッジの位相とが一致する。また、c2に示すように、信号d0_2の立ち下りエッジの位相と、信号d150_2の立ち上がりエッジの位相とが一致する。また、c3に示すように、信号d0_1の立ち下りエッジの位相と、信号d150_3の立ち上がりエッジの位相とが一致する。以下では、この位相が一致している箇所を一致箇所c1、c2、c3という。
【0054】
このような一致箇所c1、c2、c3が存在するまま、信号d150_1、d150_2、d150_3を、比較結果信z21、z22、z23として出力すると、検出手段114では正確な検出信号を生成することが出来ない。そこで、比較手段212では、このような一致箇所を解消することが好ましい。
【0055】
図14に、比較手段212の好ましい機能構成例を示す。
図14の例では、判断手段2130、消去手段2132が含まれている。
図15に、
図14に示す比較手段の処理フローを示す。ステップS2において、判断手段2130は、N個(=24)のうち、少なくとも2個の比較結果信号の立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジのうち少なくとも一方の位相が一致するか否かを判断する。この例では、一致箇所c1、c2、c3が存在することから、ステップS2ではYesと判断され、ステップS4に移行する。
【0056】
そして、ステップS4では、消去手段2132は、当該一致している箇所を消去する。ここでは、
図11に示すように、消去手段2132は、比較結果信z21、z22、z23を以下のように求める。
z21=〜d150_1*md0_1
z22=〜d150_2*md0_2
z23=〜d150_3*md0_3
ただし、「〜」は反転を示す。また、md0_1、md0_2、md0_3はそれぞれ、第7比較手段2127から出力されたものである。つまり、md0_1、md0_2、md0_3はそれぞれ、−u0を、th1、th2.th3でスライス処理した結果信号である。なお、−u0をth0でスライス処理した結果信号は用いない。
図11では、「no use」と示す。
【0057】
図16Aに、消去手段2132による、一致箇所を消去した後の比較結果信号z0〜23の一例を示す。
図16Aに示すように、消去手段2132により、一致箇所が消去されたことで、d150_1、d150_2、d150_3の位相が変化し、z21、z22、z23となる。
【0058】
そして、比較手段112で生成された比較結果信号は、検出手段114に入力される。そして、検出手段114は、
図16Bに示すように、エンコーダ信号A、Bを生成する。
【0059】
また、
図7に、検出手段114により、エンコーダ信号Aを生成するための論理式の一例を示し、
図8に、検出手段114により、エンコーダ信号Bを生成するための論理式の一例を示す。
図7、
図8の論理式は、ヴェリログ言語(Verilog言語)で記述されたものであり、宣言文などは省略している。
【0060】
この実施形態2の検出装置200であれば、演算手段110の演算処理量を少なくすることが出来る(上記説明では、6回)。そして、比較手段112で、P個の閾値(上記の説明ではth0、th1、th2、th3の4個)を用いて、24個の比較結果信号を生成することが出来、実施形態1と同様の効果を奏する。
【0061】
また、比較手段212に、判断手段2130、消去手段2132を含ませることが好ましい。判断手段2130が、複数(この例では、24個)比較結果信号について、少なくとも2個の比較結果信号の立ち上がりエッジまたは/および立ち下がりエッジのうち少なくとも一方の位相が一致する判断すると、消去手段2132が当該一致箇所を消去する。従って、当該一致箇所が存在したとしても、適切に、比較結果信号を生成することが出来る。
〔実施形態3〕
次に、実施形態3について説明する。実施形態3は、実施形態1または実施形態2で説明した検出装置100、200を備えた、モータ101を駆動する駆動装置である。
図17に実施形態3の駆動装置300の機能構成例を示す。
図17を
図1と比較すると、供給手段102に、比較手段112からの比較結果信号z0、z8、z16と、情報処理装置(図示せず)からのコントローラ信号が入力されている点で異なる。コントローラ信号とは、モータ101の回転速度の目標値となる目標速度や、回転方向などが含まれている。
【0062】
上述のように、供給手段102は、3相の交流電流iu、iv、iwを励磁コイル104u、104v、104wそれぞれに供給する。ここでは、供給する電流を交流電流とする。また、供給手段102は、位相決定手段1022を有する。位相決定手段1022は、供給する3相の交流電流iu、iv、iwそれぞれの位相を決定する。
【0063】
ここで、
図18を用いて、位相決定手段1022による、3相の電流iu、iv、iwの位相の定め方について説明する。
図18Aは、第1正弦波信号hu、hv、hwそれぞれの形状である(
図2と同様)。また、
図18Bは、第1正弦波信号hu、hv、hwそれぞれの形状に応じた比較結果信号z0、z16、〜z8である(
図6のz0、z8、z16)と同様。
【0064】
ここで、3個の第1正弦波信号hu、hv、hwそれぞれの形状に応じた3個の比較結果信号について説明する。
図2に示すように、1周期において、第1正弦波信号huの振幅値が0以上の位相θは、θ=0〜180になる。一方、
図6や
図18に示す比較結果信号において、位相θ=0〜180で、High状態の比較結果信号は、z0となる。従って、比較結果信号z0は、第1正弦波信号huの形状に応じた信号となる。
【0065】
同様に、比較結果信号z16は、第1正弦波信号hvの形状に応じた信号となる。また、比較結果信号〜z8は第1正弦波信号hwの形状に応じた信号となる。なお「〜」は上述のように、反転を示す。このように、供給手段102に入力される比較結果信号を予め定めておく。
【0066】
そして、
図18Cに示すように、位相決定手段1022は、3個の比較結果信号z0、z16、〜z8に基づいて、3相の交流電流iu、iv、iwの位相を決定する。更に詳細には、位相決定手段1022は、3個の比較結果信号z0、z16、〜z8それぞれの位相と一致または略一致するように、3相の交流電流iu、iv、iwの位相を決定する。
図18Cの例では、交流電流は矩形状となっているが、その他の形状(例えば、正弦波形状)などでもよい。
図18Cの例では、3相の交流電流iu、iv、iwの位相差は120度ずつずれるようになる。
【0067】
また、ユーザなどの設定により、コントローラ信号が供給手段102に入力される。上述のように、コントローラ信号には、モータ101の目標回転速度、目標回転方向が含まれている。コントローラ信号は例えば電圧であるとする。この場合には、当該電圧の符号を回転方向とし、当該電圧の絶対値が励磁コイル104u、104v、104wに供給される電圧または電流指令値とする。
【0068】
また、コントローラ信号が電圧であり、当該電圧の絶対値をコイル電流指令値とした場合には、3相の交流電流iu、iv、iwの波高値B(
図18C参照)は、以下の式で表すことが出来る。
iu(iv、iw)の波高値B=│電流指令値│・K
ただし、波高値Bの単位はアンペア(A)であり、│電流指令値│は電流指令値の絶対値であり、│電流指令値│の単位はボルト(V)であり、Kは予め定められた比例定数である。
【0069】
また、その他の手法として、電源電圧とゼロとの間で高速にスイッチングさせ、そのパルス幅がコントローラ信号に比例するように設計しても良い。この手法は、PWM(Pilse Width Modulation:パルス幅変調)という技術である。
【0070】
また、
図18に示す、3相の交流電流iu、iv、iwは、120度矩形駆動といい、当業者であれば、容易に設計できるものである。
【0071】
この実施形態3の駆動装置300によれば、位相決定手段1022がL個の第1正弦波信号(この例では、hu、hv、hwの3個)それぞれの形状に応じた当該L個の比較結果信号(この例では、z0、z8、z16)に基づいて、電流の位相を決定する。従って、光学エンコーダを用いずして、モータ101の回転方向や回転速度を制御することが出来る。
[実施形態3の変形例]
次に、実施形態3の変形例を示す。
図19に実施形態3の変形例の機能構成例を示す。
図19は
図17と比較すると、供給手段102、演算手段110、比較手段112、検出手段114とを1つの電子回路401で構成したことである。ここで電子回路401とは、例えば、半導体集積回路である。このように、供給手段102、演算手段110、比較手段112、検出手段114とを1つの電子回路401で構成することで、低コストで小型化された駆動装置400を設計することが出来る。