特許第6051539号(P6051539)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6051539
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】光走査装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/10 20060101AFI20161219BHJP
   G02B 26/12 20060101ALI20161219BHJP
   B41J 2/47 20060101ALI20161219BHJP
   H04N 1/113 20060101ALI20161219BHJP
   G02B 7/02 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   G02B26/10 F
   G02B26/12
   B41J2/47 101D
   H04N1/04 104A
   G02B7/02 A
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-46637(P2012-46637)
(22)【出願日】2012年3月2日
(65)【公開番号】特開2013-182172(P2013-182172A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2015年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090103
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 章悟
(74)【代理人】
【識別番号】100067873
【弁理士】
【氏名又は名称】樺山 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 修一
(72)【発明者】
【氏名】城野 寛
(72)【発明者】
【氏名】芹沢 敬一
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 一範
【審査官】 山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−096957(JP,A)
【文献】 特開2008−268752(JP,A)
【文献】 特開2010−140011(JP,A)
【文献】 特開2006−350251(JP,A)
【文献】 特許第5652714(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02,26/10,26/12
B41J 2/47
H04N 1/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、該光源からの光ビームを偏向する偏向手段と、前記光源からの光ビームを主走査方向に長い線像に結像せしめ前記偏向手段に導く、副走査方向にのみパワーを有するシリンドリカルレンズと、前記偏向手段からの光ビームを被走査面に導く走査光学系と、前記光源及び前記偏向手段を保持するハウジングとを有し、前記シリンドリカルレンズが中間部材を介して前記ハウジングに接着固定される光走査装置において、
前記中間部材は、前記ハウジングに対して、主走査方向の端部における一箇所のみの接着部で固定され、且つ、前記ハウジングに固定可能な前記接着部を主走査方向の両端部に有していることを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光走査装置において、
前記中間部材が、前記接着部を副走査方向に複数有していることを特徴とする光走査装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光走査装置において、
前記中間部材を前記ハウジングから剥がしたときに、前記中間部材の前記接着部に接着層が付随するように、前記接着部は、これに対応する前記ハウジングの被接着部よりも接着表面積が大きいことを特徴とする光走査装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の光走査装置において、
前記中間部材を前記ハウジングから剥がしたときに、前記中間部材の前記接着部に接着層が付随するように、前記接着部は、これに対応する前記ハウジングの被接着部よりも接着材に対する接着性が高い材質で形成されていることを特徴とする光走査装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の光走査装置において、
前記中間部材の前記接着部は、副走査方向の断面形状が、光軸を略中心とする仮想円に沿う円弧形状を有していることを特徴とする光走査装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の光走査装置において、
前記中間部材が、前記シリンドリカルレンズを保持する収容部を有し、前記シリンドリカルレンズは、前記収容部に対して、主走査方向の端部における一箇所のみのレンズ接着部で固定されていることを特徴とする光走査装置。
【請求項7】
請求項6に記載の光走査装置において、
前記収容部が、前記レンズ接着部を複数有していることを特徴とする光走査装置。
【請求項8】
請求項7に記載の光走査装置において、
前記レンズ接着部が前記収容部の主走査方向一端部において副走査方向に複数設けられ、これらのレンズ接着部の主走査方向の高さが異なっていることを特徴とする光走査装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1つに記載の光走査装置において、
前記中間部材が、前記シリンドリカルレンズの光軸方向における長さが同方向における該シリンドリカルレンズの厚みよりも大きい部分を有していることを特徴とする光走査装置。
【請求項10】
像担持体に画像情報に基づいて光走査装置により静電潜像を形成し、該静電潜像を現像装置により可視像化し、該可視像を記録媒体に間接にあるいは直接に転写して画像形成を行う画像形成装置において、
前記光走査装置が請求項1〜9のいずれか1つに記載のものであることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被走査面に静電潜像を形成する光走査装置、該光走査装置を有する複写機、プリンタ、ファクシミリ、プロッタ、これらのうち少なくとも1つを備えた複合機等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光走査装置に用いられる走査光学系では、搭載部品数の削減によるコストダウン効果を狙い、従来より、光学素子の搭載数を削減した光学系が知られている。
このような光学系では、素子数を削減していない従前の光学系と比べ、光学素子やハウジングなどの各種搭載部品の形状ばらつきなどによる特性劣化を招きやすい。これを改善するために、光学素子の取付時に光学特性をモニタしながら、素子の姿勢調整を行い、光学特性が良好な状態を保ったまま、接着して光学素子をハウジングに固定する技術が知られている。
【0003】
近年、環境への影響を懸念し、リサイクル、リユースへの関心が強まる中、従来の接着技術を用いた光学系では前述のように、素子間の姿勢ばらつきを低減させるために、姿勢調整を行っているため、ポリゴンモータ、LD(レーザダイオード)などの寿命部品を交換した場合、姿勢調整が必要な光学素子の再調整が必要となる。
しかしながら、姿勢調整が必要となる光学素子は上記のように接着されており、また、工場出荷後の市場での接着面剥離による故障を防ぐために、強力な接着剤(接着材)を用いている。
このため、剥がすのが困難である他、光学特性向上のために、光学素子面に微細加工されている物も多く、無理に剥離しようとすると、光学素子特性が保障できず、結果として再利用できないといった問題があった。
【0004】
特許文献1には、光学素子の調整のしやすさと、調整軸の確保を目的として、光学素子(シリンドリカルレンズ)とハウジング間に中間部材を用いた技術が開示されている。
この方式によれば、中間部材に対する光学素子の位置調整と、ハウジングに対する中間部材の位置調整との組み合わせで多次元の調整が可能である。
光学素子は直接ハウジングに接着されていないため、光学素子を取り除く場合には、ハウジングから中間部材を剥離すればよく、光学素子を傷付ける心配もない。
すなわち、シリンドリカルレンズがハウジングに直接接着されている場合、シリンドリカルレンズをハウジングより剥離する際、シリンドリカルレンズそのものにストレスがかかるため、場合によっては、レンズ面に傷がつく可能性がある。
しかしながら、中間部材を用いることによって、レンズ面に傷を付けることなく、剥離することが可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方式では、中間部材をハウジングから剥離した場合、双方に接着層が残るため、リサイクル又はリユースにおける所定の光学性能を得るべく位置調整した後に再接着しようとしても、残存接着層により阻害される。
双方の残存接着層を完全に除去するには時間と労力を要し、新品の状態での位置決め、接着固定と同等の状態を得るのは極めて困難となっており、実際上、剥離後の再接着が不可能であり、リサイクル、リユースができないといったという問題があった。
【0006】
本発明は、このような現状に鑑みて創案されたもので、中間部材を用いることによる姿勢調整が必要なシリンドリカルレンズのリサイクル、リユースを可能とし、さらに、調整精度も向上させることができる光走査装置の提供を、その主な目的する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、光源と、該光源からの光ビームを偏向する偏向手段と、前記光源からの光ビームを主走査方向に長い線像に結像せしめ前記偏向手段に導く、副走査方向にのみパワーを有するシリンドリカルレンズと、前記偏向手段からの光ビームを被走査面に導く走査光学系と、前記光源及び前記偏向手段を保持するハウジングとを有し、前記シリンドリカルレンズが中間部材を介して前記ハウジングに接着固定される光走査装置において、前記中間部材は、前記ハウジングに対して、主走査方向の端部における一箇所のみの接着部で固定され、且つ、前記ハウジングに固定可能な前記接着部を主走査方向の両端部に有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ハウジングから中間部材を剥離して再接着・固定するときに未使用の接着部を用いるため、剥離後に残る接着層の除去における労力や時間を大幅に軽減できるとともに、初回調整固定時と同等の位置調整・接着固定機能を得ることができる。
これにより、リサイクル、リユースを容易且つ高精度に行うことができ、再使用率の拡大に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概要構成図である。
図2】光走査装置の上部を除いて上から見た斜視図である。
図3図2のCS線での要部断面図である。
図4】光走査装置の副走査方向の概要断面図である。
図5】光走査装置の概要平面図である。
図6】シリンドリカルレンズを保持した中間部材の斜視図である。
図7】ハウジングに対する中間部材の固定状態を示す正面図である。
図8】ハウジングに対する中間部材を介したシリンドリカルレンズの位置調整を示す図である。
図9】ハウジングに対する中間部材の固定状態を示す斜視図である。
図10】中間部材側とハウジング側の接着面の表面形状の違いを示す模式図である。
図11】中間部材を剥離後、ハウジングに再接着して固定した状態を示す正面図である。
図12】第2の実施形態におけるハウジングに対する中間部材の固定状態を示す正面図である。
図13】第3の実施形態におけるハウジングに対する中間部材の固定状態を示す正面図である。
図14】第4の実施形態における中間部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図を参照して説明する。
図1乃至図11に基づいて第1の実施形態を説明する。まず、図1に基づいて、本実施形態に係るフルカラー画像形成が可能な画像形成装置の構成の概要を説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る画像形成装置は、像担持体ユニットまたはプロセスユニットとしての4色分の作像装置15Y(イエロー)、15C(シアン)、15M(マゼンタ)、15K(黒)を有しており、各作像装置15は装置本体80に対して着脱自在に設けられている。
各作像装置15の他に、レーザ光を照射可能な露光手段としての光走査装置20、中間転写体ユニット30、給紙ユニット60、及び定着手段としての定着ユニット50等を備えている。
【0011】
各作像装置15Y、15C、15M、15Kの構造は現像色が異なるだけで同一である。イエローの作像装置15Yを代表して説明すると、それぞれ像担持体としての感光体ドラム9Yと、感光体ドラムを帯電する帯電装置13Yと、感光体ドラムに残留した現像剤等を除去するクリーニング装置14Yと、感光体ドラムに形成された潜像を現像する現像装置16Yとを一体に備えている。
また、各作像装置は、装置本体の操作面側に設けられた図示しない開閉式面板の開閉方向、すなわち感光体ドラムの回転軸方向に装置本体に対して着脱自在な構成になっている。
【0012】
中間転写体ユニット30は、中間転写体としての無端状の転写ベルト31と、各感光体ドラム9に形成されたトナー像を転写ベルト31に転写する一次転写手段としての4本の一次転写ローラ35と、転写ベルト31上に転写されたトナー像を更に記録媒体としての記録紙Pに転写する二次転写手段としての二次転写ローラ36とを備えている。
転写ベルト31は、支持ローラ32、33、34、37間に掛け回されており、支持ローラ32は転写ベルト31を挟んで二次転写ローラ36と対向し、二次転写ローラ36との間で二次転写ニップ部を形成している。
支持ローラ33に対向する部位には、転写後の転写ベルト31の表面をクリーニングするベルトクリーニング装置38が設けられている。
【0013】
給紙ユニット60は、図示しない上昇モータにて給紙カセット41内部に設置したアーム48を稼動させてトレイ底板47を上昇させることで、記録紙Pの束を呼び出しコロ61に当接させる構成を有している。
呼び出しコロ61を回転させることによって記録紙Pの束を給紙方向下流にずらし、給紙コロ62と逆転コロ63とによって最上紙の一枚を分離し、搬送コロ対64、レジストローラ対65によって二次転写領域に搬送する。
定着ユニット50は、定着ローラ51及び加圧ローラ52を備え、記録紙P上のトナー像に熱と圧を加えることで定着を行う。
【0014】
上記構成において、まず1色目のイエローの作像装置15Yにおいて、感光体ドラム9が帯電装置13によって一様に帯電された後、光走査装置20から照射されたレーザ光によって潜像が形成され、該潜像は現像装置16によってトナー像として可視像化される。
感光体ドラム9上に形成されたトナー像は、一次転写ローラ35の作用によって転写ベルト31上に転写される。一次転写が終了した感光体ドラム12はクリーニング装置14によってクリーニングされ、次の画像形成に備える。
クリーニング装置14によって回収された残留トナーは、作像装置の取り出し方向に設置された図示しない廃トナー回収ボトルに貯蔵される。この廃トナー回収ボトルは満杯になると交換できるように装置本体に対し着脱自在になっている。
【0015】
同様の画像形成工程が作像装置15C、15M、15Kにおいても行われて各色のトナー像が形成され、先に形成されたトナー像に順次重ねて転写される。
一方、記録紙Pが給紙カセット41から二次転写領域に搬送され、二次転写ローラ36の作用によって転写ベルト31上に形成されたトナー像が記録紙Pに二次転写される。
トナー像を転写された記録紙Pは定着ユニット50に搬送され、該定着ユニット50の定着ローラ51と加圧ローラ52とのニップ部にてトナー像が定着され、排紙ローラ対55によって排紙トレイ56に排紙される。
手差しトレイ59にも記録紙Pがセットされており、給紙ローラ58にて同様に給紙・搬送されるとともに、転写、定着され、排紙トレイ56に排出される。
画像形成によって各作像装置15Y、15C、15M、15Kのトナーは消費される。これに応じて新しいトナーがトナーボトル57Y、57C、57M、57Kから補給される。トナー補給時には、トナーボトル57Y、57C、57M、57Kが回転され、図示しないパイプを通してトナーが各作像装置に搬送される。
【0016】
図2乃至図5に基づいて光走査装置20の構成を説明する。
図2において、符号1a、1b、1c、1dは光源としてのLD(レーザダイオード)を、2a、2b、2c、2dは光源から出た発散光束を平行光へ変換するコリメートレンズを、5は正多角形の側面に反射ミラーを有し、高速回転により、レーザ光を偏向・走査する偏向手段としてのポリゴンスキャナを、3a、3b、3c、3dは光ビームを主走査方向に長い線像に結像せしめ偏向手段に導く、副走査方向にのみパワーを有するシリンドリカルレンズを、4はポリゴンスキャナ設置部を密閉するための防音ガラスを、6a、6b、6c、6dはfθ補正機能と面倒れ補正機能を併せ持つ複合レンズを、これらの光学素子が配置される10はハウジング(光学ハウジング)をそれぞれ示している。
複合レンズ6はポリゴンスキャナ5により偏向された光束を被走査面としての感光体ドラム9上に結像させる光学素子である。
【0017】
図3は、図2のCS線での断面を示している。図3に示すように、光源1、コリメートレンズ2、シリンドリカルレンズ3はそれぞれ、副走査方向に2段に配置され、これに対応してポリゴンスキャナ5も2段のポリゴンミラー5a、5bを有している。複合レンズ6もこれに対応した2段構成となっている。
ポリゴンスキャナ5の回転軸を中心として反対側の走査構成も同様となっている。
【0018】
図4に示すように、ポリゴンスキャナ5により偏向されたレーザ光(走査光)は、長尺ミラーとしての複数の反射ミラー7(a、b、c、d)により光路12を折り曲げられ、各感光体ドラム9に到る。
図4において、符号8はハウジング内への塵などの落下を防止する防塵ガラスを、11aはハウジング10を密閉するための上段蓋を、11bはハウジング10を密閉するための下段蓋をそれぞれ示している。
ハウジング10は、図面上明示しないが、ポリゴンスキャナ5、第一の光学系及び前記光学素子を保持する第一のハウジングと、各反射ミラー7を保持する第二のハウジングとからなる分割構造を有しており、これらを締結して構成されている。
第二のハウジングと折り返しミラーは画像形成装置の仕様によらず共通のものを使用することが可能である。
図5は、上段蓋を外した状態の平面図で、ハウジング10を支持するフレームを含んでいる。
【0019】
図6乃至図11に基づいて、ハウジング10に対するシリンドリカルレンズ3の固定構成を説明する。
図9に示すように、シリンドリカルレンズ3は、中間部材25を介してハウジング10に固定されている。具体的に説明すると、ハウジング10の垂直フレーム10aには、主走査方向に突出する矩形の被接着部26が形成されており、シリンドリカルレンズ3を内包した中間部材25はその主走査方向の一端部を被接着部26に接着されてハウジング10に固定されている。
【0020】
図6に示すように、中間部材25は、長辺部が主走査方向(Y軸方向)に延び、光軸方向(X軸方向)に貫通した矩形の収容部27を有しており、全体として長方形のリング状に形成されている。ここでは、収容部27を光軸方向に貫通した透孔形状としたが、凹部として形成し、光軸方向底面に透過窓を形成するようにしてもよい。
中間部材25の主走査方向の両端部には、それぞれ主走査方向外側に突出する接着部25a、25bが一体に形成されている。
図7に示すように、中間部材25は、ハウジング10に対して、主走査方向の一端部における一箇所のみの接着部である接着部25aで、接着剤(接着層)28により被接着部26に接着固定されている。すなわち、中間部材25はハウジング10に対して片持ち方式で接着固定されている。
シリンドリカルレンズ3は、中間部材25に対して、収容部27の主走査方向一端部としての垂直面27aに接着剤(接着層)29により、中間部材25と同様の片持ち方式で接着固定されている。中間部材25に対するシリンドリカルレンズ3の固定は、反対側の垂直面27bであって構わない。
ハウジング10と中間部材25間の接着層28と、中間部材25とシリンドリカルレンズ3間の接着剤29とを符号上で区別しているが、接着層の厚みや材質が異なることを意味するものではない。
中間部材25の材質として、紫外線透過性を有する材質を用いれば、接着剤として紫外線硬化剤を用いることができ、調整接着が容易となる。
【0021】
中間部材25の接着部25aは、その接着用座面が、副走査方向(Z軸方向)の断面形状において、シリンドリカルレンズの光軸を略中心とする仮想円に沿う円弧形状を有している。接着部25bについても同様である。
接着用座面を光軸を中心とした円弧形状にすることで、図8に示すように、シリンダレンズ3を接着固定した中間部材25を光軸中心に回転調整する際に、どの回転角度においても接着層の厚みを常に同等とすることが可能となり、接着剤硬化時の挙動を安定させ、組立精度を向上させることが可能となる。ここでは、図8(b)に示すように、角度α反時計回りに調整した状態を示している。
図7に示すように、本実施形態では、ハウジング10側の被接着部26の接着用座面も光軸を中心とした同心円弧形状にしているので、さらに効果的である。
【0022】
図10に模式的に示すように、中間部材25の接着部25a、25bは、中間部材25をハウジング10から剥がしたときに、中間部材25の接着部に接着層が付随する(残る)ように、ハウジング10の被接着部26よりも接着表面積を大きくしている。
本実施形態では接着部25a、25bの接着用座面に凹凸を設けて接着表面積を大きくすることにより接着層28を接着部25a、25bに付着(転移)させるようにしているが、これに限定されない。
接着部25a、25bの少なくとも接着用座面を、被接着部26よりも接着材に対する接着性が高い材質で形成することによっても同様の効果を得ることができる。例えば、ハウジング10の被接着部26を樹脂で形成し、中間部材25の少なくとも接着用座面を金属で形成することができる。
【0023】
上述したように、リサイクル、リユースを行うべく、ポリゴンモータやLDなどの寿命部品を交換した場合、これに対応してシリンドリカルレンズ3の再調整が必要となる。
本実施形態では、ハウジング10から中間部材25を剥離した後、中間部材25の同じ接着部を再使用しない。
すなわち、図11に示すように、再調整のための再接着においては、他の未使用の接着部25bを用いて中間部材25をハウジング10に接着固定する。
【0024】
図7に示す初期接着時(例えば工場出荷時)に比べ、図11に示す再調整時(例えばリサイクル時)には、副走査断面で中間部材25を180°回転させた状態となる。
ハウジング10に対する中間部材25と、中間部材25に対するシリンドリカルレンズ3は共に、主走査方向の一端部のみで接着固定されており、且つ、シリンドリカルレンズ3を含む中間部材25は回転対称形状となっているので、環境変動時に接着層28、29の厚さが変化した場合においても、その変動方向を主走査方向に限定することが可能となり、シリンドリカルレンズ3が副走査方向にのみパワーを有しているため、走査位置に影響を与えない。
【0025】
上記のように、中間部材25の接着部に接着層28が残る構成としているので、ほぼ新品の状態での位置決め、接着固定と同等の状態を得ることができる。
接着層が残ったままの座面では、2回目以降の接着時の接着層が1回目よりも厚くなるため、調整時の調整しやすさや、出荷後の温度変動の影響が異なってしまう。
ハウジング10の被接着部26に接着層28の一部が残ったとしても、従来における双方の残存接着層を完全に除去するのに比べて労力・時間を大幅に低減できる。
再接着に使用する中間部材25の接着部25bは新品と全く変わりがないので、位置決め、接着固定における高い精度を得ることができる。
これにより、リサイクル、リユースにおける作業効率、精度を高めることができる。
【0026】
図12に第2の実施形態を示す。なお、上記実施形態と同一部分は同一符号で示し、特に必要がない限り既にした構成上及び機能上の説明は省略して要部のみ説明する(以下の他の実施形態において同じ)。
本実施形態では、中間部材25の収容部27の垂直面27aに、シリンドリカルレンズ3を接着するためのレンズ接着部27cを形成している。
レンズ接着部27cは、主走査方向に突出する台形状に形成されており、これにより、平面である垂直面27aに直に接着する場合に比べ、中間部材25に対するシリンドリカルレンズ3の位置決め、接着固定が容易となる。
【0027】
図13に第3の実施形態を示す。
本実施形態で、シリンドリカルレンズ3の外形形状が複数あった場合においても、1つの中間部材で対応できる一例を示す。
本実施形態に係る中間部材25は、主走査方向両端部に位置する接着部25a、25bに加え、副走査方向に位置する接着部25c、25dを有している。
また、収容部27の垂直面27aには、レンズ接着部27cに加え、副走査方向に間隔をおいて位置するレンズ接着部27dが形成されている。レンズ接着部27dは、主走査方向の長さがシリンドリカルレンズ3に比べて大きいシリンドリカルレンズ3aを接着固定するためのものである。
光軸に対する主走査方向の位置が同等となるように、レンズ接着部27cとレンズ接着部27dの主走査方向の高さは異なっている(t1>t2)。
【0028】
初回出荷時、二点鎖線で示すシリンドリカルレンズ3aを使用し、回収後、シリーズ機で光源が変更となり、実線で示すような外形の異なるシリンドリカルレンズ3を採用することになった際にも、シリンドリカルレンズ3をレンズ接着部27cに再接着することで、同一の中間部材を用い、初回同様の位置、姿勢調整を行うことができる。
【0029】
図14に第4の実施形態を示す。
本実施形態では、中間部材が、シリンドリカルレンズの光軸方向における長さが同方向におけるシリンドリカルレンズの厚みよりも大きい部分を有していることを特徴とする。
図14に示すように、第1の実施形態で示した中間部材25の4隅には、光軸方向両側において光軸方向に突出する脚部70が一体に形成されている。
これにより、中間部材25中間部材を机の上などにおいた際、シリンドリカルレンズ3のレンズ面に傷などを与えない。各脚部70のうち1つでも存在すれば上記機能を得ることができるが、本実施形態のように4隅の両側が突出する構成であれば、作業者が中間部材25をハウジング10から剥離した後、不注意であるいは無造作に中間部材25を机の上などにおいた場合でも確実にシリンドリカルレンズ3のレンズ面を保護することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 光源としてLD
2 カップリングレンズ
3、3a シリンドリカルレンズ
5 偏向手段としてのポリゴンスキャナ
6 走査光学系としての複合レンズ
9 被走査面、像担持体としての感光体ドラム
10 ハウジング
20 光走査装置
25 中間部材
25a、25b、25c、25d 接着部
26 被接着部
27c、27d レンズ接着部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0031】
【特許文献1】特開2006−350251号公報
【特許文献2】特開2011−081249号公報
【特許文献3】特開平09−288245号公報
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