特許第6051543号(P6051543)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6051543分光計測装置、画像評価装置及び画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6051543
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】分光計測装置、画像評価装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/50 20060101AFI20161219BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20161219BHJP
   G03G 15/01 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   G01J3/50
   G03G15/00 303
   G03G15/01 Y
【請求項の数】9
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2012-52478(P2012-52478)
(22)【出願日】2012年3月9日
(65)【公開番号】特開2013-186023(P2013-186023A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2015年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100102901
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 篤司
(72)【発明者】
【氏名】上条 直裕
(72)【発明者】
【氏名】新保 晃平
(72)【発明者】
【氏名】窪田 陽一
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 学
【審査官】 塚本 丈二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−256324(JP,A)
【文献】 米国特許第03908192(US,A)
【文献】 特開2011−099718(JP,A)
【文献】 特開2011−145233(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/113987(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0299104(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02414796(EP,A1)
【文献】 西独国特許出願公開第02147820(DE,A)
【文献】 仏国特許出願公開第02107978(FR,A1)
【文献】 蘭国特許発明第07113271(NL,C)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0106472(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02320205(EP,A1)
【文献】 特開2011−209267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/00−3/52
G03G 15/00
G03G 15/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光照射手段から対象物に照射した光の反射光が通過する複数の開口を含む開口部と、
前記開口部を通過した複数の光から複数の回折像を形成する回折手段と、
前記回折手段で形成した複数の回折像を受光する受光手段と、を有し、
前記受光手段は、所定の次数以外の回折像を遮光する遮光部及び所定の次数の回折像を受光するリニアセンサを含み、
前記開口部の複数の開口は、前記リニアセンサの画素配列方向に平行な一軸方向に関する位置が互いに異なるように2次元配列されている分光計測装置。
【請求項2】
前記受光手段は、所定の次数の回折像のみを全て受光させる複数の通過部を含むことを特徴とする請求項1に記載の分光計測装置。
【請求項3】
前記開口部の複数の開口と、前記複数の通過部と、の位置が対応することを特徴とする請求項2に記載の分光計測装置。
【請求項4】
前記複数の通過部は、前記複数の開口に対応させて、前記仮想平面に平行に、前記一軸方向に平行な方向に関する位置が互いに異なるように2次元配列されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の分光計測装置。
【請求項5】
前記開口部の複数の開口に対応させて、複数のレンズを含むレンズアレイを備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の分光計測装置。
【請求項6】
前記開口部と前記回折手段との間の前記複数の光の光路上に結像手段を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の分光計測装置。
【請求項7】
前記結像手段は、像側テレセントリックな光学特性を有していることを特徴とする請求項6に記載の分光計測装置。
【請求項8】
媒体上の画像の品質を評価する画像評価装置であって、
画像を対象物とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の分光計測装置と、
前記媒体と前記分光計測装置とを前記光照射手段からの光の進行方向に交差する方向に相対的に移動させる移動系と、
前記分光計測装置の受光手段の出力信号に基づいて、前記画像を評価する処理装置と、を備える画像評価装置。
【請求項9】
画像情報に応じた画像形成条件で画像を形成する画像形成装置において、
請求項1〜7のいずれか一項に記載の分光計測装置と、
前記分光計測装置の受光手段の出力信号に基づいて、前記画像形成条件を調整する調整装置と、を備えることを特徴とする画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光計測装置、画像評価装置及び画像形成装置に係り、更に詳しくは、波長スペクトルを計測する分光計測装置、該分光計測装置を有する画像評価装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の光源から射出された複数の光を、複数のコリメータレンズ及びスロット隔膜を介して対象物に照射し、その反射光を線形光学アレイ及びカラーフィルタを介して複数の光センサを有するラインセンサで受光することで、上記反射光の波長スペクトルを測定する測定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に開示されている測定装置では、ラインセンサの複数の光センサ間で所謂クロストークが発生し、対象物からの反射光の波長スペクトルを精度良く測定することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、光照射手段から対象物に照射した光の反射光が通過する複数の開口を含む開口部と、前記開口部を通過した複数の光から複数の回折像を形成する回折手段と、前記回折手段で形成した複数の回折像を受光する受光手段と、を有し、前記受光手段は、所定の次数以外の回折像を遮光する遮光部及び所定の次数の回折像を受光するリニアセンサを含み、前記開口部の複数の開口は、前記リニアセンサの画素配列方向に平行な一軸方向に関する位置が互いに異なるように2次元配列されている分光計測装置。
【発明の効果】
【0005】
これによれば、対象物からの反射光の波長スペクトルを精度良く計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略構成を説明するための図である。
図2図1における光走査装置を説明するための図(その1)である。
図3図3(A)及び図3(B)は、それぞれ図1における光走査装置を説明するための図(その2及びその3)である。
図4図1における光走査装置を説明するための図(その4)である。
図5】画質検出装置を説明するための図(その1)である。
図6】画質検出装置を説明するための図(その2)である。
図7図7(A)及び図7(B)は、それぞれ光源ユニットを説明するための図である。
図8図8(A)は、マイクロレンズアレイを説明するための図であり、図8(B)は、開口素子を説明するための図である。
図9】マイクロレンズアレイと開口素子の位置関係を説明するための図である。
図10図10(A)は、マスク素子を説明するための図であり、図10(B)は、リニアセンサを説明するための図である。
図11図11(A)は、複数の回折像のマスク素子への入射位置を示す図であり、図11(B)は、図11(A)のA−A線断面図である。
図12】回折素子による波長分光を説明するための図である。
図13図13(A)は、回折素子における凹凸の配列方向の配列方向を示す図であり、図13(B)は、分光センサ間のクロストークを説明するための図である。
図14】シミュレーションで得られた色差ΔEとバンド数Nとの関係を説明するための図である。
図15図15(A)及び図15(B)は、それぞれセルフォック(登録商標)レンズアレイを用いたときの不都合を説明するための図(その1及びその2)である。
図16図16(A)〜図16(C)は、それぞれ図15(A)の不都合を解消するのに適したレンズSLと開口の位置関係を説明するための図である。
図17図15(A)の不都合が解消された状態を説明するための図(その1)である。
図18図15(A)の不都合が解消された状態を説明するための図(その2)である。
図19図15(A)の不都合を解消するためのスリット部材を説明するための図である。
図20】画像評価装置の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の一実施形態を図1図14に基づいて説明する。図1には、一実施形態に係る画像形成装置2000の概略構成が示されている。
【0008】
この画像形成装置2000は、4色(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)を重ね合わせてフルカラーの画像を形成するタンデム方式の多色画像形成装置であり、光走査装置2010、4つの感光体ドラム(2030a、2030b、2030c、2030d)、4つのクリーニングユニット(2031a、2031b、2031c、2031d)、4つの帯電装置(2032a、2032b、2032c、2032d)、4つの現像ローラ(2033a、2033b、2033c、2033d)、4つのトナーカートリッジ(2034a、2034b、2034c、2034d)、転写ベルト2040、転写ローラ2042、定着装置2050、給紙コロ2054、レジストローラ対2056、排紙ローラ2058、給紙トレイ2060、排紙トレイ2070、通信制御装置2080、画質検出装置2245、温湿度センサ(図示省略)、及び上記各部を統括的に制御する制御装置2090などを備えている。
【0009】
なお、ここでは、XYZ3次元直交座標系において、各感光体ドラムの長手方向に沿った方向をX軸方向、4つの感光体ドラムの配列方向に沿った方向をZ軸方向として説明する。
【0010】
通信制御装置2080は、ネットワークなどを介した上位装置(例えばパソコン)との双方向の通信を制御する。
【0011】
制御装置2090は、CPU、該CPUにて解読可能なコードで記述されたプログラム及び該プログラムを実行する際に用いられる各種データが格納されているROM、作業用のメモリであるRAM、アナログデータをデジタルデータに変換するAD変換回路などを有している。そして、制御装置2090は、通信制御装置2080を介して受信した上位装置からの多色の画像情報(ブラック画像情報、シアン画像情報、マゼンタ画像情報、イエロー画像情報)を光走査装置2010に通知する。
【0012】
温湿度センサは、画像形成装置2000内の温度と湿度を検出し、制御装置2090に通知する。
【0013】
感光体ドラム2030a、帯電装置2032a、現像ローラ2033a、トナーカートリッジ2034a、及びクリーニングユニット2031aは、組として使用され、ブラックの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Kステーション」ともいう)を構成する。
【0014】
感光体ドラム2030b、帯電装置2032b、現像ローラ2033b、トナーカートリッジ2034b、及びクリーニングユニット2031bは、組として使用され、シアンの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Cステーション」ともいう)を構成する。
【0015】
感光体ドラム2030c、帯電装置2032c、現像ローラ2033c、トナーカートリッジ2034c、及びクリーニングユニット2031cは、組として使用され、マゼンタの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Mステーション」ともいう)を構成する。
【0016】
感光体ドラム2030d、帯電装置2032d、現像ローラ2033d、トナーカートリッジ2034d、及びクリーニングユニット2031dは、組として使用され、イエローの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Yステーション」ともいう)を構成する。
【0017】
各感光体ドラムはいずれも、その表面に感光層が形成されている。すなわち、各感光体ドラムの表面がそれぞれ被走査面である。なお、各感光体ドラムは、不図示の回転機構により、図1における面内で矢印方向に回転するものとする。
【0018】
各帯電装置は、対応する感光体ドラムの表面をそれぞれ均一に帯電させる。
【0019】
光走査装置2010は、制御装置2090からの多色の画像情報(ブラック画像情報、マゼンタ画像情報、シアン画像情報、イエロー画像情報)に基づいて、各色毎に変調された光束を、対応する帯電された感光体ドラムの表面にそれぞれ照射する。これにより、各感光体ドラムの表面では、光が照射された部分だけ電荷が消失し、画像情報に対応した潜像が各感光体ドラムの表面にそれぞれ形成される。ここで形成された潜像は、感光体ドラムの回転に伴って対応する現像装置の方向に移動する。なお、光走査装置の構成については後述する。
【0020】
トナーカートリッジ2034aにはブラックトナーが格納されており、該トナーは現像ローラ2033aに供給される。トナーカートリッジ2034bにはシアントナーが格納されており、該トナーは現像ローラ2033bに供給される。トナーカートリッジ2034cにはマゼンタトナーが格納されており、該トナーは現像ローラ2033cに供給される。トナーカートリッジ2034dにはイエロートナーが格納されており、該トナーは現像ローラ2033dに供給される。
【0021】
各現像ローラは、回転に伴って、対応するトナーカートリッジからのトナーが、その表面に薄く均一に塗布される。そして、各現像ローラの表面のトナーは、対応する感光体ドラムの表面に接すると、該表面における光が照射された部分にだけ移行し、そこに付着する。すなわち、各現像ローラは、対応する感光体ドラムの表面に形成された潜像にトナーを付着させて顕像化させる。ここでトナーが付着した像(トナー画像)は、感光体ドラムの回転に伴って転写ベルト2040の方向に移動する。
【0022】
イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナー画像は、所定のタイミングで転写ベルト2040上に順次転写され、重ね合わされてカラー画像が形成される。
【0023】
給紙トレイ2060には記録紙が格納されている。この給紙トレイ2060の近傍には給紙コロ2054が配置されており、該給紙コロ2054は、記録紙を給紙トレイ2060から1枚ずつ取り出し、レジストローラ対2056に搬送する。該レジストローラ対2056は、所定のタイミングで記録紙を転写ベルト2040と転写ローラ2042との間隙に向けて送り出す。これにより、転写ベルト2040上のカラー画像が記録紙に転写される。ここで転写された記録紙は、定着装置2050に送られる。
【0024】
定着装置2050では、熱と圧力とが記録紙に加えられ、これによってトナーが記録紙上に定着される。ここで定着された記録紙は、排紙ローラ2058を介して排紙トレイ2070に送られ、排紙トレイ2070上に順次積み重ねられる。
【0025】
各クリーニングユニットは、対応する感光体ドラムの表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。残留トナーが除去された感光体ドラムの表面は、再度対応する帯電装置に対向する位置に戻る。
【0026】
画質検出装置2245は、定着装置2050を通過した記録紙の搬送路近傍に配置され、該記録紙上の画像の品質を検出する。該画質検出装置2245の検出結果は、制御装置2090に通知される。
【0027】
次に、前記光走査装置2010の構成について説明する。
【0028】
光走査装置2010は、一例として図2図4に示されるように、4つの光源(2200a、2200b、2200c、2200d)、4つのカップリングレンズ(2201a、2201b、2201c、2201d)、4つの開口板(2202a、2202b、2202c、2202d)、4つのシリンドリカルレンズ(2204a、2204b、2204c、2204d)、光偏向器2104、4つの走査レンズ(2105a、2105b、2105c、2105d)、6枚の折り返しミラー(2106a、2106b、2106c、2106d、2108b、2108c)、及び不図示の走査制御装置などを備えている。
【0029】
なお、以下では、便宜上、主走査方向に対応する方向を「主走査対応方向」と略述し、副走査方向に対応する方向を「副走査対応方向」と略述する。
【0030】
光源2200aとカップリングレンズ2201aと開口板2202aとシリンドリカルレンズ2204aと走査レンズ2105aと折り返しミラー2106aは、感光体ドラム2030aに潜像を形成するための光学部材である。
【0031】
光源2200bとカップリングレンズ2201bと開口板2202bとシリンドリカルレンズ2204bと走査レンズ2105bと折り返しミラー2106bと折り返しミラー2108bは、感光体ドラム2030bに潜像を形成するための光学部材である。
【0032】
光源2200cとカップリングレンズ2201cと開口板2202cとシリンドリカルレンズ2204cと走査レンズ2105cと折り返しミラー2106cと折り返しミラー2108cは、感光体ドラム2030cに潜像を形成するための光学部材である。
【0033】
光源2200dとカップリングレンズ2201dと開口板2202dとシリンドリカルレンズ2204dと走査レンズ2105dと折り返しミラー2106dは、感光体ドラム2030dに潜像を形成するための光学部材である。
【0034】
各カップリングレンズは、対応する光源から射出された光束の光路上に配置され、該光束を略平行光束とする。各開口板は、開口部を有し、対応するカップリングレンズを介した光束を整形する。各シリンドリカルレンズは、対応する開口板の開口部を通過した光束を、光偏向器2104の偏向反射面近傍にY軸方向に関して結像する。
【0035】
光偏向器2104は、2段構造のポリゴンミラーを有している。各ポリゴンミラーは、4面の偏向反射面を有している。そして、1段目(下段)のポリゴンミラーではシリンドリカルレンズ2204aからの光束及びシリンドリカルレンズ2204dからの光束がそれぞれ偏向され、2段目(上段)のポリゴンミラーではシリンドリカルレンズ2204bからの光束及びシリンドリカルレンズ2204cからの光束がそれぞれ偏向されるように配置されている。なお、1段目のポリゴンミラー及び2段目のポリゴンミラーは、互いに位相が略45°ずれて回転し、書き込み走査は1段目と2段目とで交互に行われる。
【0036】
光偏向器2104で偏向されたシリンドリカルレンズ2204aからの光束は、走査レンズ2105a、及び折り返しミラー2106aを介して、感光体ドラム2030aに照射され、光スポットが形成される。この光スポットは、光偏向器2104の回転に伴って感光体ドラム2030aの長手方向に移動する。
【0037】
また、光偏向器2104で偏向されたシリンドリカルレンズ2204bからの光束は、走査レンズ2105b、及び2枚の折り返しミラー(2106b、2108b)を介して、感光体ドラム2030bに照射され、光スポットが形成される。この光スポットは、光偏向器2104の回転に伴って感光体ドラム2030bの長手方向に移動する。
【0038】
また、光偏向器2104で偏向されたシリンドリカルレンズ2204cからの光束は、走査レンズ2105c、及び2枚の折り返しミラー(2106c、2108c)を介して、感光体ドラム2030cに照射され、光スポットが形成される。この光スポットは、光偏向器2104の回転に伴って感光体ドラム2030cの長手方向に移動する。
【0039】
また、光偏向器2104で偏向されたシリンドリカルレンズ2204dからの光束は、走査レンズ2105d、及び折り返しミラー2106dを介して、感光体ドラム2030dに照射され、光スポットが形成される。この光スポットは、光偏向器2104の回転に伴って感光体ドラム2030dの長手方向に移動する。
【0040】
各感光体ドラムにおける光スポットの移動方向が、「主走査方向」であり、感光体ドラムの回転方向が、「副走査方向」である。
【0041】
光偏向器2104と各感光体ドラムとの間の光路上に配置される光学系は、走査光学系とも呼ばれている。
【0042】
画質検出装置2245は、一例として図5に示されるように、分光計測装置10及び処理装置20を有している。ここでは、記録紙Pの+Z側の面にトナー画像が定着されており、該記録紙Pのトナー画像が定着されている面を「表面」ともいう。
【0043】
分光計測装置10は、記録紙Pの+Z側に配置され、光照射手段としての光源ユニット11、マイクロレンズアレイ12、開口部としての開口素子13、結像手段としての結像光学系14、回折手段としての回折素子15、受光手段21などを有している。
【0044】
ここで、分光計測装置10の動作原理を説明する。まず、記録紙Pの表面に光源ユニット11から光が照射される。光源ユニット11から記録紙Pに照射した光の反射光が、マイクロレンズアレイ12に結像し、開口素子13を通過する。開口素子13を通過した光は、結像光学系に結像し、回折素子15に入射する。回折素子15で、光が回折することにより、回折像が形成される。そして、この回折像が受光手段21で受光される。
以上が、分光計測装置10の動作原理である。次に、分光計測装置10の各構成について具体的に説明する。
【0045】
光源ユニット11は、一例として図6に示されるように、Y軸方向に関して、マイクロレンズアレイ12、開口素子13、結像光学系14、回折素子15、受光手段21に対して−Y側に離れた位置に配置されている。
【0046】
この光源ユニット11は、一例として図7(A)及び図7(B)に示されるように、LEDアレイ11a、及びコリメートレンズアレイ11bを有している。
【0047】
LEDアレイ11aは、X軸方向に沿って配置された複数のLED(Light Emitting Device)を有している。各LEDは、可視光のほぼ全域において光強度を有する白色光を射出する。そして、各LEDは、処理装置20によって点灯及び消灯される。
【0048】
なお、LEDアレイに代えて、冷陰極管などの蛍光灯やランプ光源を用いることができる。要するに、光源としては、分光計測に必要な波長領域の光を射出し、かつ計測領域全体にわたって均質に照明可能であることが好ましい。
【0049】
コリメートレンズアレイ11bは、複数のLEDに対応した複数のコリメートレンズを有している。該複数のコリメートレンズは、それぞれ対応するLEDから射出された白色光の光路上に配置され、該白色光を平行光とする。このコリメートレンズアレイ11bを介した光が記録紙Pの表面を照明する。すなわち、光源ユニット11は、X軸方向を長手方向とする線状の照明光を射出する。
【0050】
ここでは、光源ユニット11からの白色光は、YZ面内において、記録紙Pの表面に斜入射されるように設定されている(図7(B)参照)。以下では、記録紙Pの表面で拡散反射された光を単に「反射光」ともいう。
【0051】
図5に戻り、マイクロレンズアレイ12は、記録紙Pの+Z側に配置されている。このマイクロレンズアレイ12は、図8(A)に示されるように、複数のマイクロレンズ12aを有している。
【0052】
複数のマイクロレンズ12aは、一例として、それぞれの光軸がZ軸に平行になり、かつそれぞれの中心のX軸方向に関する位置が互いに異なるようにXY平面に平行な平面に沿って2次元配列されている。ここでは、複数のマイクロレンズ12aとして、実質的に同一のものが用いられている。
【0053】
詳述すると、マイクロレンズアレイ12では、XY平面に平行な平面内でX軸と角度φ(例えば鋭角)を成す方向(以下、Dφ方向と称する)に等間隔で並ぶ複数(例えば3個)のマイクロレンズ12aから成るレンズ列が、X軸方向に等間隔で複数列(例えば8列)並んでいる。そして、隣り合う2つのレンズ列は、Y軸方向に関して重ならないように、すなわちX軸方向に関してオーバーラップしないように配置されている(図8(A)の符号ε参照)。
【0054】
そこで、反射光のうち、各マイクロレンズ12aに入射した光は、収束光に変換されて+Z方向に射出される。
【0055】
開口素子13は、マイクロレンズアレイ12の+Z側に配置されている(図5参照)。この開口素子13は、図8(B)に示されるように、複数(例えば24個)のマイクロレンズ12aに個別に対応する位置に複数(例えば24個)の開口13aを有している。すなわち、各開口13aは、対応するマイクロレンズ12aを介した光の集光位置近傍に位置している(図9参照)。ここでは、複数の開口13aは、一例として、同じ大きさ(径)の円形のピンホールとされている。
【0056】
詳述すると、複数の開口13aは、X軸方向に関する位置が互いに異なるようにXY平面に平行な平面に沿って2次元配列されている。ここで、本明細書中、「X軸方向に関する位置が互いに異なる」とは、Y軸方向に関して重ならない、すなわちX軸方向に関してオーバーラップしないという意味である(図8(B)の符号γ及びδ参照)。
【0057】
より詳細には、開口素子13では、Dφ方向と平行な方向に等間隔で並ぶ複数(例えば3個)の開口13aから成る開口列がX軸方向に等間隔で複数列(例えば8列)並んでいる。そして、隣り合う2つの開口列は、Y軸方向に関して重ならないように、すなわちX軸方向に関してオーバーラップしないように配置されている(図8(B)の符号δ参照)。各開口列における隣り合う2つの開口13aの中心間の距離は、各レンズ列における隣り合う2つのマイクロレンズ12aの中心間の距離と同じ長さPに設定されている。また、X軸方向に隣り合う2つの開口13aの中心間の距離は、X軸方向に隣り合う2つのマイクロレンズ12aの中心間の距離と同じ長さQに設定されている。
【0058】
そこで、各マイクロレンズ12aを介した光は、対応する開口13aに入射される(集光される)。
【0059】
なお、各開口は、スリットであっても良い。また、開口の形状は円形に限られるものではなく、多角形、楕円等のその他の形状であっても良い。
【0060】
また、開口素子としては、黒化処理された金属板に複数の貫通孔が形成されたもの、黒色部材(例えば、クロムやカーボン含有樹脂)が所定の形状で表面に塗布されたガラス板等を用いることもできる。
【0061】
結像光学系14は、図6に示されるように、開口素子13の+Z側に配置されている。そこで、各開口13aを通過した光は、結像光学系14に入射する。
【0062】
結像光学系14は、一例として、Z軸方向に並べて配置された複数(例えば2つ)の集光レンズから構成され、各開口13aを通過した光を収束光に変換して射出する。
【0063】
ここで、結像光学系14は、一例として像側テレセントリックな光学特性を有しており、結像光学系14から射出された光の光路は、その光軸(Z軸)に略平行となる(図5参照)。
【0064】
回折素子15は、図5に示されるように、結像光学系14の+Z側に配置されている。回折素子15は、一例として、透明基板の+Z側の面に、鋸歯形状の凹凸が形成されているグレーティング(回折格子)から成る(図11(B)参照)。そして、互いに隣接する2つの凹凸の中心間距離を「格子ピッチ」という。ここでは、回折素子15の凹凸の配列方向は、一例としてX軸に平行である(図13(A)参照)。
【0065】
ところで、回折素子15における格子ピッチをp、回折素子15への反射光の入射角をα、回折次数をmとすると、反射光に含まれる波長λの光は、次の(1)式で示される角度θで回折される。以下では、角度θを回折角度とも称する。
【0066】
sinθ=mλ/p+sinα ……(1)
【0067】
グレーティングの凹凸が鋸歯形状の場合は、+1次回折像の光強度を強くすることが可能である。なお、グレーティングの凹凸を階段状形状としても良い。
【0068】
そこで、結像光学系14からの光は、回折素子15に入射角α(=0°)で入射され、回折される。回折素子15で回折された光は、波長によって異なる方向に進行する。すなわち、反射光は、回折素子15によって波長分光され、例えば−1次回折像、0次像、+1次回折像及び+2次回折像を形成する。
【0069】
受光手段21は、マスク素子17、リニアセンサ16などを有している。
【0070】
マスク素子17は、図5に示されるように、回折素子15の+Z側に配置されている。そこで、回折素子15で形成された反射光の複数の回折像(例えば−1次回折像、0次像、+1次回折像及び+2次回折像)は、マスク素子17に入射する。
【0071】
マスク素子17は、図5及び図10(A)から分かるように、XY平面に平行な板状部材(例えば、黒化処理された金属板)から成り、複数(例えば24個)の通過部17aと、遮光部17bとを有する。マスク素子17に複数の通過部17aと、遮光部と、を設けることによって、リニアセンサ16で、所定の次数のみの回折像を全て受光することができる。さらに、この所定の次数以外の回折像(不要光)は遮光部によって、遮断される。以下では、一例として、「所定の次数」を「+1次」とし、「所定の次数以外」を「−1次、0次、+2次」として、説明を進める。
【0072】
複数(例えば24個)の通過部17aは、開口素子13の複数(例えば24個)の開口13aに個別に対応している。ここでは、一例として、複数の通過部17aの大きさ(径)は、同じに設定されている。
【0073】
詳述すると、複数の通過部17aは、X軸方向に関する位置が互いに異なるようにXY平面に平行な平面に沿って2次元配列されている(図10(A)の符号σ及びξ参照)。
【0074】
より詳細には、マスク素子17では、一例として、図10(A)に示されるように、Dφ方向と平行な方向に等間隔で並ぶ複数(例えば3個)の通過部17aから成る通過部列がX軸方向に等間隔で複数列(例えば8列)並んでいる。そして、隣り合う2つの通過部列は、X軸方向に関する位置が互いに異なるように配置されている(図10(A)の符号ξ参照)。
【0075】
ここで、回折素子15の凹凸の配列方向はX軸に平行なため(図13(A)参照)、各開口13a及び結像光学系14を介した反射光の回折素子15で形成された複数の回折像(例えば−1次回折像、0次像、+1次回折像及び+2次回折像)は、XZ平面に沿って異なる回折角度で並ぶ(図11(B)参照)。この場合、これら複数の回折像は、X軸方向に関する位置、及びXY平面に平行な所定平面で切断された断面のX軸方向に関する幅が互いに異なる。
【0076】
そこで、各通過部17aは、対応する開口13a及び結像光学系14を介した光の+1次回折像のみが入射されるように、その大きさ及び位置が設定されている。
【0077】
詳述すると、各開口13aの位置及び結像光学系14の縮小倍率に基づいて、該開口13aからの光の回折素子15への入射位置を求めることができる。そして、上記(1)式を用いて、該開口13aからの光の+1次回折像の回折角度θ+1を求めることで、該+1次回折像のリニアセンサ16への入射位置を求めることができる。そこで、この入射位置に基づいて、該開口13aに対応する通過部17aの位置を設定することができる。なお、本実施形態では、α=0°なので、θ+1=λ/pとなる。
【0078】
また、回折素子15とリニアセンサ16との距離L、及びθ+1に基づいて、リニアセンサ16上での+1次回折像のX軸方向に関する長さを求めることができ、この長さに基づいて、通過部17aの大きさを設定することができる。
【0079】
遮光部17bは、マスク素子17における複数(例えば24個)の通過部17a以外の部分、すなわち24個の通過部17aの周囲部で構成されており、各開口13a及び結像光学系14を介した光の回折素子15による複数の回折像のうち、−1次回折像、0次回折像及び+2次回折像が入射される位置に配置されている。
【0080】
ここで、各開口13a及び結像光学系14を介した光の回折素子15による例えば4つの回折像(例えば−1次の回折像、0次像、+1次回折像及び+2次回折像)は、図11(A)に示されるように、マスク素子17に入射される。以下では、これら4つの回折像を合わせて回折像群と称する。
【0081】
回折像群では、+2次回折像、+1次回折像、0次回折像及び−1次回折像は、この順にX軸方向に並んでいる。
【0082】
そして、図11(A)では、この回折像群がX軸方向に等間隔で8つ並んでおり(但し、図11(A)では、4つのみを図示)、これら8つの回折像群から成る回折像群列がDφ方向と平行な方向に3つ並んでいる。すなわち、同一次数の複数(例えば3つ)の回折像がDφ方向と平行な方向に並んでいる。そして、Dφ方向と平行な方向に並ぶ+1次の複数(例えば3つ)の回折像は、X軸方向に関する位置が互いに異なっている(図11(A)の符号β参照)。
【0083】
そこで、本実施形態では、X軸方向に隣り合う2つの通過部17aの中心間の距離が、X軸方向に隣り合う2つの回折像群の+1次回折像の中心間の距離Sに等しく設定されているとともに、Dφ方向に隣り合う2つの通過部17aの中心間の距離が、Dφ方向に平行な方向に隣り合う2つの+1次回折像の中心間距離Tに等しく設定されている。そして、各通過部17aの大きさが、+1次回折像のマスク素子17への入射位置でのXY断面の大きさよりも幾分大きく設定されている。
【0084】
結果として、マスク素子17は、回折素子15の複数の回折像のうち、+1次の回折像を通過させ、+1次以外の次数の回折像(0次像を含む)を遮光する。
【0085】
リニアセンサ16は、図5に示されるように、マスク素子17の+Z側の面に取り付けられている。リニアセンサ16は、一例として図10(B)に示されるように、X軸方向に隣接して配置された複数の画素16aを有している。そして、X軸方向に関して、隣り合う2つの画素の中心間距離を「画素ピッチd」という。各画素16aは、受光光量に応じた信号を処理装置20に出力する。
【0086】
各画素16aは、一例として、Y軸方向を長手方向とする矩形状の外形を有しており、Y軸方向の長さが、少なくとも通過部列のY軸方向の幅W(図10(A)参照)よりも長く設定されている。
【0087】
ここで、リニアセンサ16は、X軸方向に隣接する複数(例えば6つ)の画素16aを含み、X軸方向に並べて配置された複数(例えば24個)の分光センサ(受光部)を有している。複数(例えば24個)の分光センサは、複数(例えば24個)の通過部17aに個別に対応し、それぞれ対応する通過部17aの+Z側に位置している(図11(A)及び図11(B)参照)。
【0088】
この場合、複数(例えば24個)の通過部17aを通過した複数(例えば24個)の+1次回折像は、それぞれ互いに異なる分光センサで波長スペクトル毎に受光される。
【0089】
具体的には、例えば、リニアセンサ16の画素ピッチdが10μm、回折素子15の格子ピッチpが10μm、回折素子15とリニアセンサ16との距離L(図11(B)参照)が2mmのときは、各開口13a及び結像光学系14を介した光の+1次回折像は、一例として図12に示されるように、波長に応じて6つの画素16aで受光される。
【0090】
すなわち、各分光センサは、互いに異なる開口13aを通過した反射光の+1次回折像のみを受光する。なお、各分光センサで受光される+1次回折像の大きさは、開口13aの大きさ、該+1次回折像の回折角度θ+1、リニアセンサ16の位置などによって調整することができる。
【0091】
なお、以下では、+1次回折像における1つの画素で受光される波長帯を「バンド」といい、+1次回折像を複数のバンドに分光することを「マルチバンド分光」ともいう。また、1つの開口を通過した反射光における波長と光強度(あるいは反射率)との関係を「反射光波長スペクトル」ともいう。
【0092】
ところで、マルチバンド分光では、バンド数が多いほど反射光波長スペクトルを精度良く得ることができる。しかしながら、リニアセンサ16の画素数は一定であるため、バンド数が増えると、1つの分光センサに用いられる画素数が多くなり、分光センサの数が減少し、計測点の数が少なくなる。
【0093】
そこで、本実施形態では、バンド数を必要最小限に抑え、処理装置20において、ウィナー推定などの推定手段によって反射光波長スペクトルの推定を行っている。
【0094】
反射光波長スペクトルの推定に利用することができる手法としては、多くの手法がある(例えば、「ディジタルカラー画像の解析・評価」、東京大学出版会、p.154−p.157参照)。
【0095】
ここで、1つの分光センサの出力信号から、反射光波長スペクトルを推定する手法の一例について説明する。なお、1つの分光センサは、N個の画素を有するものとする。また、ここでは、反射光波長スペクトルとして、所定の波長帯(例えば、400〜700[nm])を所定の波長ピッチ(例えば、10[nm])で分割し、それぞれの反射率を算出するものとする。
【0096】
各反射率が格納される行ベクトルrは、N個の画素の出力信号vi(i=1〜N)が格納された行ベクトルをv、変換行列をGとすると、次の(2)式で表すことができる。
【0097】
r=Gv ……(2)
【0098】
上記変換行列Gは、反射光波長スペクトルが既知のn個のサンプルでのn個の行ベクトル(r1、r2、・・・・・、rn)が格納されている行列R(=[r1,r2,・・・,rn])と、同様のn個のサンプルを本実施形態と同じ分光計測装置で測定したときのn個の行ベクトル(v1、v2、・・・・・、vn)が格納された行列V(=[v1,v2,・・・,vn])とを用い、R−GVの誤差の二乗ノルムが最小となるときのGである。
【0099】
このとき、一般的に、Vを説明変数、Rを目的変数としたVからRへの回帰式の回帰係数行列Gは、行列Vの上記二乗最小ノルム解を与えるMoore−Penroseの一般化逆行列を用いて次の(3)式から計算することができる。
【0100】
G=RV(VV−1 ……(3)
【0101】
上記(3)式において、上付きTは行列の転置を、上付き−1は逆行列を表す。上記(3)式から算出された回帰係数行列Gを変換行列Gとする。
【0102】
変換行列Gは、分光センサ毎に予め算出され処理装置20のメモリに格納されている。そこで、処理装置20は、分光センサ毎の変換行列Gを読み出し、リニアセンサ16の出力信号に基づいて、分光センサ毎に行ベクトルvを作成し、分光センサ毎に行ベクトルvと上記メモリから読み出した対応する変換行列Gを積算し、分光センサ毎に行ベクトルrを算出する。このようにして、処理装置20は、分光センサ毎、すなわち計測位置毎に反射光波長スペクトルを算出する。
【0103】
図14には、算出された反射光波長スペクトルから得られる色と実際の色との差(色差)と、バンド数Nとの関係をシミュレーションにより求めた結果が示されている。これによると、バンド数Nが多くなるにつれ、精度が高くなっている。但し、バンド数Nが6以上では、精度の差は小さい。
【0104】
ところで、処理装置20では、分光センサ毎に反射光波長スペクトルの推定演算をしなければならないため、分光センサの数が多くなると、全体として多大な演算時間を要する。しかしながら、本実施形態の分光計測装置では、計測のタイミングに応じて分光センサの数を調整することが可能なため、操作性を低下させることなく分光計測を行うことができる。
【0105】
制御装置2090は、電源投入時には、(1)感光体ドラムの停止時間が6時間以上のとき、(2)装置内の温度が10℃以上変化しているとき、(3)装置内の相対湿度が50%以上変化しているとき、印刷時には、(4)プリント枚数が所定の枚数に達したとき、(5)現像ローラの回転回数が所定の回数に達したとき、(6)転写ベルトの走行距離が所定の距離に達したときなどに、画像プロセス制御を行う。
【0106】
制御装置2090は、画像の解像度、及び画像プロセス制御のタイミングに応じて、処理装置20に分光計測を指示する。ここでは、電源投入時には精度を重視し、印刷時には高速性を重視している。これにより、効率化を図ることができる。
【0107】
そして、制御装置2090は、処理装置20からの演算結果に基づいて、計測位置毎に色情報を取得する。なお、制御装置2090のメモリには、複数の色について、それらの波長スペクトルデータが格納されている。
【0108】
そして、制御装置2090は、1枚の記録紙内(ページ内)で色変動(色むら)が検出されたときには、光走査装置2010の光源から射出される光束の光量を制御する。また、記録紙間(ページ間)で色変動が検出されたときには、現像バイアス、定着温度、及び1走査毎の光源の発光光量の少なくともいずれかを制御する。
【0109】
以上説明したように、本実施形態に係る分光計測装置10は、記録紙P(対象物)に光を照射する光源ユニット11と、記録紙Pからの前記光の反射光の光路上に配置され、複数の開口13aを有する開口素子13と、記録紙Pからの反射光のうち、複数の開口13aを通過した複数の光の光路上に配置された回折素子15と、該回折素子15で形成された複数の光の複数の回折像のうち、+1次の複数の回折像を個別に通過させる複数の通過部17aと、回折素子15で形成された複数の光の複数の回折像のうち、+1次以外の次数の回折像を遮光する遮光部17bとを有するマスク素子17と、複数の通過部17aを通過した+1次の複数の回折像を個別に受光する複数の分光センサ(受光部)を有するリニアセンサ16とを備えている。
【0110】
この場合、各開口13aを通過した光の回折素子15による複数の回折像のうち、+1次回折像は、対応する通過部17aを通過し、+1次以外の回折像(例えば、−1次の回折像、0次像、+2次の回折像)は、遮光部17bで遮光される。
【0111】
そこで、各分光センサでは、対応する開口13aからの光の+1次回折像のみが受光される。
【0112】
すなわち、隣り合う分光センサ間でのクロストークの発生を防止できるとともに、各分光センサで、対応する開口13aからの光の+1次以外の次数の回折像が受光されることを防止できる。
【0113】
ここで、「分光センサ間でのクロストーク」とは、少なくとも1つの分光センサで、対応する開口13a以外の開口13aからの光の複数の回折像(例えば−1次回折像、0次像、+1次回折像、+2次回折像)の少なくとも1つが受光されることを意味する。より詳細には、各開口13aからの光の+1次回折像と、該開口13a以外の開口13aからの光の複数の回折像とが、該開口13aに対応する分光センサ上で重なり合うこと(図13(B)参照)を意味する。
【0114】
結果として、分光計測装置10では、記録紙Pからの反射光の波長スペクトルを精度良く計測することができる。
【0115】
また、複数の開口13aは、X軸を含む仮想平面(XY平面)に平行に、X軸方向に関する位置が互いに異なるように2次元配列されており、複数の通過部17aは、複数の開口13aに個別に対応して、XY平面に平行に、X軸方向に関する位置が互いに異なるように2次元配列されている。そして、複数の分光センサは、X軸方向に並べて配置されている。
【0116】
この場合、X軸方向に隣接して配置された複数の画素16aを有するリニアセンサ16を用いて、記録紙Pの表面上の2次元方向に並ぶ複数箇所からの反射光の波長スペクトルを精度良く計測することができる。
【0117】
また、分光計測装置10は、記録紙Pと開口素子13との間の反射光の光路上に配置され、複数の開口13aに個別に対応して配置された複数のマイクロレンズ12aを有するマイクロレンズアレイ12を更に備えている。
【0118】
この場合、記録紙Pからの反射光を各開口13aに集光することができる。この結果、各開口13aを通過させる光の強度を強くすることができる。
【0119】
また、分光計測装置10は、開口素子13と回折素子15との間の複数の光の光路上に配置された結像光学系14を更に備えている。
【0120】
この場合、各開口13aからの光を回折素子15に集光することができる。この結果、回折素子15、マスク素子17及びリニアセンサ16の小型化を図ることができる。
【0121】
また、結像光学系14は、像側テレセントリックな光学特性を有している。この場合、複数の開口13aからの複数の光の+1次回折像の回折角度を等しくすることができるため、複数の通過部17aの大きさを等しくできるとともに該複数の通過部17aをX軸方向に等間隔で形成することができる。この結果、マスク素子17の設計及び製造が容易となり、低コスト化を図ることができる。
【0122】
また、画質検出装置2245は、分光計測装置10及び処理装置20を有し、処理装置20は、分光計測装置10の出力信号に基づいて計測位置毎に反射光の波長スペクトルを推定演算する。
【0123】
制御装置2090は、形成される画像の解像度、及び画像プロセス制御のタイミングに基づいて、画質検出装置2245に画質検出を指示する。そして、制御装置2090は、画質検出装置2245の検出結果に基づいて画像形成プロセスを調整する。そこで、本実施形態に係る画像形成装置2000によると、安定した画像品質で画像を形成することができる。
【0124】
また、上記実施形態において、マイクロレンズアレイ12に代えて、XY平面に沿って2次元配列された複数の屈折率分布型レンズ(以下、「レンズSL」という)を有するセルフォック(登録商標)レンズアレイを用いても良い。なお、以下では、記録紙Pの表面で拡散反射された光の光路上に配置されているセルフォック(登録商標)レンズアレイを「セルフォック(登録商標)レンズアレイ121A」という。
【0125】
但し、この場合は、一例として図15(A)に示されるように、セルフォック(登録商標)レンズアレイ121Aの結像関係における光束の直進性から、結像光学系14の仕様次第では、図15(B)に示されるように、画像全幅における周辺領域では反射光を結像光学系14で捕捉することができない。また、セルフォック(登録商標)レンズアレイ121AのレンズSLの中心位置と開口素子13の開口13aの中心位置がずれていると、光量に明暗の分布が生じる。
【0126】
そこで、この場合は、一例として図16(A)〜図16(C)に示されるように、レンズSLと開口13aを対にして、レンズSLと開口13aの位置を、X軸方向の位置に応じてずらすことにより、図17に示されるように、画像全幅における反射光を結像光学系14で捕捉し、図18に示されるように、画像全幅で計測可能となる。
【0127】
詳述すると、各レンズSLと対応する開口13aとをX軸方向にずらした場合、該レンズSLを介した反射光のうち、対応する開口13aを通過した光のみが結像光学系14に入射される。結像光学系14を介した光は、回折素子15で回折され、複数の回折像が形成され、該複数の回折像のうち、+1次回折像のみがマスク素子17の対応する通過部17aを通過する。通過した+1次回折像は、リニアセンサ16の対応する分光センサで受光される
【0128】
なお、各レンズSLの形状、及び該レンズSLと対応する開口13aとのずらし量は、結像光学系14のF値、及び開口素子13と結像光学系14との間の光路長により定まる。また、開口13aを通過した光の結像光学系14への伝搬角度によりレンズSLの形状が定まる。
【0129】
また、例えば振動、温度変化、経時変化などに起因して、レンズSL及び開口の位置が変化すると、結像光学系14への光の伝搬角度が変化し、回折素子15への入射位置、リニアセンサ16上での回折像の結像位置が変化する。そこで、セルフォック(登録商標)レンズアレイと開口素子を一体として交換可能とすることで、精度を確保することが可能となる。
【0130】
なお、レンズSLの中心位置と開口の中心位置とを一致させ、レンズSLに入射する反射光を、図19に示されるようにスリット部材117で制限しても良い。この場合、記録紙表面でのフレア光、レンズSL等の光学素子表面での多重反射などで生じる迷光を排除することもできる。
【0131】
また、セルフォック(登録商標)レンズアレイを用いる場合に、結像光学系14として大口径の結像光学系を用いることができれば、セルフォック(登録商標)レンズアレイの複数のレンズの中心のXY位置(XY平面に平行な方向に関する位置)と、対応する複数の開口の中心のXY位置とを同じにしても良い。
【0132】
なお、マイクロレンズアレイ12を用いる場合にも、結像光学系14の仕様次第では、画像全幅における周辺領域では反射光を結像光学系14で捕捉することができないおそれがある。
【0133】
この場合、上述したセルフォック(登録商標)レンズアレイを用いる場合と同様に、マイクロレンズ12aと開口13aを対にして、マイクロレンズ12aと開口13aの位置を、X軸方向の位置に応じてずらすことにより、画像全幅における反射光を結像光学系14で捕捉し、画像全幅で計測可能となる。
【0134】
また、マイクロレンズ12aの中心位置と開口13aの中心位置とを一致させ、マイクロレンズ12aに入射する反射光を、上述したセルフォック(登録商標)レンズアレイの場合と同様に、スリット部材で制限しても良い。
【0135】
また、マイクロレンズアレイ12を用いる場合に、結像光学系14として大口径の結像光学系を用いることができれば、マイクロレンズアレイ12の複数のマイクロレンズの中心のXY位置と、対応する複数の開口の中心のXY位置とを同じにしても良い。
【0136】
また、上記実施形態では、結像光学系は、像側テレセントリックな光学特性を有しているが、有していなくても良い。この場合であっても、結像光学系は、複数の開口13aからの複数の光を互いに平行な状態で回折素子15に入射させる特性を有していることが好ましい。この場合、複数の開口13aからの複数の光の+1次回折像の回折角度を等しくすることができるため、複数の通過部17aの大きさを同じにするとともに該複数の通過部17aをX軸方向に等間隔で形成することができる。この結果、マスク素子17の設計及び製造が容易となり、低コスト化を図ることができる。
【0137】
また、上記実施形態では、記録紙Pと開口素子13との間の光路上に複数のレンズを有するレンズアレイが設けられているが、設けなくても良い。この場合、記録紙と開口素子とを近接して配置することとしても良い。
【0138】
また、上記実施形態では、開口素子13と回折素子15との間の光路上に結像光学系14が設けられているが、設けられていなくても良い。この場合、開口素子と回折素子とを近接して配置することとしても良い。
【0139】
また、上記実施形態では、マスク素子17とリニアセンサ16とが一体化されているが、別体とされても良い。
【0140】
また、上記実施形態では、マスク素子17の通過部の形状は、円形とされているが、これに限らず、例えば、多角形、楕円形などの他の形状であっても良い。
【0141】
また、上記実施形態では、マスク素子として、複数の開口が形成された板状部材が用いられているが、これに限らず、例えば、黒色部材(例えば、クロムやカーボン含有樹脂)が所定の形状で表面に塗布されたガラス板を用いても良いし、遮光性を有する複数の部材が所定の位置関係で連結されたものを用いても良い。要は、マスク素子は、各開口13aからの光の+1次回折像のみを透過させる構成を有していれば、どのような構成であっても良い。
【0142】
また、上記実施形態では、各開口13aからの光の回折素子15による複数の回折像として、−1次〜+2次の4つの回折像が代表的に取り上げられているが、これに加えて、例えば−2次回折像を取り上げても良い。この場合であっても、マスク素子17を用いて−2次回折像を遮光することが可能である。
【0143】
また、上記実施形態では、マイクロレンズアレイ12のマイクロレンズ12a、開口素子13の複数の開口13a及びマスク素子17の通過部17aは、それぞれXY平面に平行に2次元配列されているが、これに限らず、例えば、X軸に平行に1次元配列されても良い。
【0144】
また、上記実施形態では、受光素子として、1次元配列された複数の受光部を有するリニアセンサ16が用いられているが、これに代えて、例えば、2次元配列された複数の受光部を有するエリアセンサを用いても良い。この場合、+1次の複数の回折像をX軸方向に関して同じ位置に入射させ、異なる受光部で受光することができる。このため、それぞれが複数の通過部17aから成る複数の通過部のX軸方向に関する位置を同じにしても良い。これに併せて、それぞれが複数の開口13aから成る複数の開口列のX軸方向に関する位置を同じにするとともに、それぞれが複数のマイクロレンズ12aから成る複数のレンズ列のX軸方向に関する位置を同じにしても良い。
【0145】
また、上記実施形態では、光照射手段として、光源ユニット11が採用されているが、これに限られず、適宜変更可能である。例えば、コリメートレンズアレイ11bは、必ずしも設けられていなくても良い。
【0146】
また、上記実施形態では、画像形成装置が電子写真方式の場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、インクジェット方式であっても良い。この場合は、ヘッド位置に応じてインク吐出量を調整したり、ドットパターンを調整することによって、1枚の記録紙内での色変動、及び記録紙間での色変動を補正することができる。
【0147】
また、上記実施形態では、4色のトナーが用いられる場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、5色あるいは6色のトナーが用いられる場合であっても良い。
【0148】
また、上記実施形態では、トナー像が感光体ドラムから転写ベルトを介して記録紙に転写される場合について説明したが、これに限定されるものではなく、トナー像が記録紙に直接転写されても良い。
【0149】
また、記録紙としてビームスポットの熱エネルギにより発色する発色媒体(ポジの印画紙)を用いた画像形成装置であっても良い。
【0150】
また、上記実施形態における分光計測装置10は、画像形成装置以外に用いられても良い。例えば、分光計測装置10を、媒体上の画像の品質を評価する画像評価装置に用いても良い(図20参照)。この場合は、分光計測装置10と、媒体と分光計測装置とを光源ユニット11からの光の進行方向(光源ユニット11の照射方向)に交差する方向に相対的に移動させる移動系(例えば搬送ステージ)と、分光計測装置の受光系の出力信号に基づいて画像を評価する処理装置と、を備えることとなる。そこで、結果として、画像の品質を適切に評価することができる。もちろん、紙幣やクレジットカードの真偽や種類を評価する評価装置としても応用することができる。また、画像評価装置とは、紙以外のプラスチック等に印刷したものを評価することもできる。
【符号の説明】
【0151】
10…分光計測装置、11…光源ユニット(光照射手段)、12…マイクロレンズアレイ(レンズアレイ)、12a…マイクロレンズ(レンズ)、13…開口素子(開口部)、14…結像光学系(結像手段)、15…回折素子(回折手段)、16…リニアセンサ(受光手段の一部)、17a…通過部(受光手段の一部)、17b…遮光部(受光手段の一部)、20…処理装置、2000…画像形成装置、P…記録紙(対象物)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0152】
【特許文献1】特表2008−518218号公報
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