(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記波長変換部材は、硫化物系蛍光体、ハロゲンケイ酸塩系蛍光体、窒化物蛍光体、及び酸窒化物蛍光体から構成される群から選択される少なくとも一種の化合物を含有することを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の発光装置。
【発明を実施するための形態】
【0067】
以下、本発明における発光装置、この発光装置の製造方法について説明する。
【0068】
<発光装置>
[発光装置の構成]
本発明の実施形態に係る発光装置の構造を、
図1を参照して説明する。
図1(a)に示すように、第1実施形態に係る発光装置1は、半導体発光素子2の側面及び、半導体発光素子2の上面に、蛍光体層(無機粒子層)3が設けられている。また、蛍光体層3は、粒状の無機蛍光体(
波長変換部材)31と、無機蛍光体31を被覆する被覆層32とから形成されている。更に詳細には、
図1(b)に示すように、蛍光体層3の内部には、空隙33が形成されている。
【0069】
なお、ここでは、便宜上、
図1の紙面における上方を半導体発光素子2の上面としている。発光装置1は、半導体発光素子2の少なくとも上面に蛍光体層3が設けられていればよい。ここで、「上面」とは、半導体発光素子2の基板側、あるいは半導体層側のいずれかの面である。すなわち、後記する発光装置の製造方法で説明するように、半導体発光素子2を治具や絶縁性基板に載置する面は、蛍光体層3で被覆されないため、半導体発光素子2の基板側及び半導体層側のいずれか一方のみに蛍光体層3が設けられる。
【0070】
また、「少なくとも上面」とは、半導体発光素子2の上面及び側面のいずれか一方のみに蛍光体層3が設けられていればよいことを意味する。なお、半導体発光素子2の側面には蛍光体層3が設けられていない場合があってもよいが、ここでは、半導体発光素子2の側面にも蛍光体層3が設けられている場合について説明する。半導体発光素子2の側面にも蛍光体層3が設けられていれば、側面からの光も上面と同様の色調へ色調変換することができるため、色調の均一な半導体発光素子2が得られる。
【0071】
従来の焼結して作製する無機蛍光体を含有するセラミックス成形体を用いて半導体発光素子2の上面と側面とに蛍光体を設ける場合には、それぞれの面に設ける蛍光体を板状に加工し、それぞれの面に貼付する必要がある。ここで、板同士の接合箇所に隙間が生じた場合はその部分から青色光が漏出し、発光色の均一性が低下する問題が生じる。また、板同士の接合箇所において、上面の板あるいは側面の板が所望よりも長くなって横方向あるいは上方向にはみ出し、接合箇所に板の余剰が生じた場合も、同様に発光色の均一性が低下する問題が生じる。しかしながら、半導体発光素子2の側面はダイシングやスクライブ、ブレイクで生成する面であり、面の平坦性、平行度に乏しい。また、半導体発光素子2の大きさのばらつきも発生するうえ、半導体発光素子2の高さはせいぜい数百μmであり、側面へ貼り付ける板状蛍光体の大きさは非常に小さいものとなる。そのため、接合部での隙間、余剰が無く貼付けることは非常に困難であり、均一な色調を得ることが難しいという問題があった。
【0072】
また、板状の蛍光体を上面のみに設置し、側面を光反射フィラーを含有する樹脂等の反射材で覆うという方法もあるが、この場合、半導体発光素子2の側面から出た光を再び素子に戻すため、光の損失が大きくなり、効率の高い半導体発光装置を得ることが難しいという問題がある。
半導体発光素子2の側面にも蛍光体層3が設けられていれば、このような問題も解決することができる。
【0073】
本実施形態に係る発光装置1は、半導体発光素子2からの発光により、蛍光体層3に入射した光の一部又は全部を蛍光体層3の無機蛍光体31によって吸収し、入射光とは異なる色の光に変換して出射する透過型の色変換用成形体を備えた発光装置である。
以下、発光装置1の各部の構成について詳細に説明する。
【0074】
(半導体発光素子)
半導体発光素子2としてはどのような構造のものでもよく、一例として、
図2(a)に示すフェースダウン実装型又はフェースアップ実装型の素子2aや、
図2(b)に示す垂直構造型の素子2bが挙げられる。
【0075】
半導体発光素子2aは、
図2(a)に示すように、基板(支持基板)41と、支持基板41の上(図面上では下)に積層された半導体層42を有する。この半導体層42はn型半導体層42a、活性層42b、p型半導体層42cが順に積層されており、n型半導体層42aにn側電極43が形成されている。また、p型半導体層42cには、反射電極(あるいは透明電極)45、カバー電極46を介してp側電極44が形成されている。また、半導体発光素子2aの半導体層42(及びカバー電極46)は、絶縁性の保護膜47で被覆されている。
【0076】
半導体発光素子2bは、
図2(b)に示すように、支持基板41と、支持基板41の上に、ウェハ貼り合わせ層(Au−Au接合層)49を介して積層された半導体層42を有する。この半導体層42はp型半導体層42c、活性層42b、n型半導体層42aが順に積層されており、n型半導体層42aにn側電極43が形成されている。また、p型半導体層42cの裏面には、反射電極(Ag)45、及び、電流狭窄(誘電体)48が所定の間隔で設けられている。そして、支持基板41の裏面には、p側電極44が形成されている。また、半導体発光素子2bの半導体層42は、絶縁性の保護膜47で被覆されている。
なお、半導体発光素子2の形態は、前記の半導体発光素子2(2a,2b)の形態に限るものではなく、例えば、支持基板41やウェハ貼り合わせ層49がない形態であってもよい。
また、
図2(a)、(b)に示す半導体発光素子2(2a,2b)を他の図面では更に簡略化して示す。
【0077】
半導体発光素子2としては、発光ダイオードを用いるのが好ましく、任意の波長のものを選択することができる。例えば、青色(波長430nm〜490nmの光)、緑色(波長490nm〜570nmの光)の半導体発光素子2としては、ZnSe、窒化物系半導体(In
XAl
YGa
1−X−YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)、GaP等を用いることができる。また、赤色(波長620nm〜750nmの光)の半導体発光素子2としては、GaAlAs、AlInGaP等を用いることができる。なお、本発明のように、蛍光物質を用いた発光装置1とする場合には、その蛍光物質を効率良く励起できる短波長の発光が可能な窒化物半導体(In
XAl
YGa
1−X−YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)が好適に用いられる。そして、活性層42bの材料やその混晶を調整することによって、発光波長を種々選択することができる。さらに、これら以外の材料からなる半導体発光素子2を用いることもできる。なお、用いる半導体発光素子2の成分組成や発光色、大きさ等は、目的に応じて適宜選択することができる。
また、可視光領域の光だけでなく、紫外線や赤外線を出力する半導体発光素子2とすることもできる。
【0078】
(蛍光体層(無機粒子層))
図1に示すように、蛍光体層3は、無機蛍光体31の粒子の凝集体を、無機材料からなる被覆層32で被覆した無機粒子層である。本実施形態では、蛍光体層3は、半導体発光素子2の上面及び側面を被覆するように設けられている。蛍光体層3は、半導体発光素子2からの発光により、蛍光体層3に入射する光の一部又は全部を吸収し、入射した光とは異なる色の光を発光する色変換機能を有する層である。
【0079】
図1(b)に示したように、蛍光体層3は、粒状の無機蛍光体31の粒子が、無機材料からなる被覆層32によって被覆されていると共に、この被覆層32によって無機蛍光体31の粒子及び半導体発光素子2、並びに粒子同士が固着され、粒状の無機蛍光体31が一体化した発光装置を構成している。また、蛍光体層3の表面は、無機蛍光体31の粒径に起因した凹凸が形成されている。更に、蛍光体層3の内部において、無機蛍光体31の粒子間に空隙33が形成されている。
【0080】
蛍光体層3に入射した光は、この空隙33によって散乱され、蛍光体層3に含有される無機蛍光体31に効率的に吸収されるため、空隙33を有さない場合に比べて高い色変換効率を得ることができる。このため、同じ色変換率を得るためには、空隙33を有さない場合よりも蛍光体層3の厚さを薄くすることができる。
【0081】
また、蛍光体層3の表面に、無機蛍光体31の粒径に起因する凹凸を有するため、界面での全反射を低減して蛍光体層3から効率的に光を取り出すことができる。このため、この発光装置1は、高い発光効率を得ることができる。
【0082】
また、蛍光体層3は、透光性のアルカリ土類金属塩からなる無機結着材(不図示)が含まれていてもよい。無機結着材は、無機蛍光体31と半導体発光素子2との間、及び/又は無機蛍光体31同士を結着するものである。この無機結着材は、無機蛍光体31を半導体発光素子2の表面に積層する製造工程において添加されたものであり、無機材料からなる被覆層32によって、無機蛍光体31の粒子と半導体発光素子2との間、及び無機蛍光体31の粒子同士を被覆する強固の結着する被覆層32が形成されるまで、無機蛍光体31の粒子が散逸しないように結着させる結着材である。
【0083】
また、蛍光体層3は、無機フィラー、金属粉などの導電体粒子などが含まれるようにしてもよい。例えば、無機フィラーの添加によって、蛍光体層3に入射した光を散乱、拡散させたり、前記したストークスロスによる発熱を効率的に半導体発光素子2に伝導することで、放熱性を向上させたりすることができる(なお、フィラー粒子を含む形態については、
図11(b)を参照して後記する)。また、無機フィラーの添加によって、蛍光体層3における無機蛍光体31の含有率を調整することができる。また、添加する無機フィラーの粒径や形状によって、空隙33の形状、空隙率、蛍光体層3の表面の凹凸形状を調整することができる。
また、導電体粒子の添加によって、前記したストークスロスによる発熱を効率的に半導体発光素子2に伝導することで、放熱性を向上させることができる。
【0084】
無機フィラーとしては、例えば、窒化アルミニウム、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、銀、シリカ(ヒュームシリカ、沈降性シリカ等)、チタン酸カリウム、ケイ酸バリウム、ガラスファイバー、カーボン、ダイヤモンド等及びこれらの2種以上の組み合わせが挙げられる。
また、酸化タンタル、酸化ニオブ、希土類酸化物など、主に光吸収の少ない透光性材料や、特定の波長の光を反射又は吸収する無機化合物を用いることができる。
なお、無機フィラーは、後記する無機蛍光体31の粒径と同程度のものや、やや小さいものあるいはやや大きいものを用いることができる。
【0085】
また、蛍光体層3は、無機蛍光体31の粒子の凝集体を被覆層32で連続的に被覆して一体化した層であるが、保護層や反射防止層などを更に積層するようにしてもよい。この場合、半導体発光素子2の表面から、保護層や反射層などを含めた蛍光体層3の上面までの膜厚である蛍光体層3の総膜厚は、10〜300μm程度とすることが好ましい(なお、保護層を含む形態については、
図11(a)を参照して後記する)。
【0086】
また、蛍光体層3は、無機蛍光体31の粒子の凝集体であるため、それらの粒径によって膜厚は影響されるが、実質的に色変換に寄与する蛍光体層3の厚さが、1〜100μm程度のものを用いることができ、5〜70μmとすることが好ましく、10〜50μmとすることがより好ましい。なお、「実質的に色変換に寄与する蛍光体層」とは、前記した保護層や反射層を除き、無機蛍光体31の粒子の凝集体を被覆層32で連続的に被覆して一体化した層を指す。
この蛍光体層3の厚さ(実質的に色変換に寄与する蛍光体層の厚さ及び総膜厚)は、走査型電子顕微鏡を用いて測定することができる。
【0087】
また、従来の焼結セラミックスなどからなる蛍光体の成形体に比べ、蛍光体層3における無機蛍光体31の含有率を高くして、また空隙33の存在によって、同じ色変換率を得るための蛍光体層3の膜厚を薄くすることができる。このため、蛍光体層3に含有される無機蛍光体31で生じたストークス発熱を、放熱機能を持つ半導体発光素子2へ迅速に伝導することができる。すなわち、放熱性の優れた発光装置1とすることができる。
【0088】
(無機蛍光体(
波長変換部材))
無機蛍光体31は、蛍光体層3に入射した光を吸収し、入射光の色とは異なる色の光を発光する無機材料からなる蛍光体である。
無機蛍光体31として使用される蛍光体材料は、励起光である入射光を吸収して、異なる色(波長)の光に色変換(波長変換)するものであればよい。特に、無機蛍光体31が、紫外光ないし青色光を吸収して、青色光ないし赤色光を放出する材料であることが好ましい。
【0089】
また、無機蛍光体31の粒子の平均粒径は、特に限定されないが、0.1〜100μm程度のものを用いることができ、取り扱いやすさの観点から、好ましくは1〜50μm、より好ましくは2〜30μmのものを用いることができる。
なお、平均粒径の値は、空気透過法又はF.S.S.S.No(Fisher−SubSieve−Sizers−No.)によるものとする(いわゆるDバー(Dの上にバー)で表される値)。
【0090】
また、レーザ回折式粒度分布測定装置(例えば、島津製作所製のSALDシリーズなど)又は電気抵抗式粒度分布装置(例えば、コールター(BECKMAN COULTER)社製のコールターカウンターなど)で測定される中心粒径Dm(Median Diameter)と前記した平均粒径Dバーとの比である(Dm/Dバー)を、無機蛍光体31の粒子の分散性を示す指標とした場合に、この指標値が1に近いほど好ましい。すなわち、指標値が1に近いほど粒子の分散性が高く(粒子が凝集せず)、応力の少ない蛍光体層3を形成することができる。これによって、蛍光体層3におけるクラックの発生を抑制することができる。
【0091】
また、無機蛍光体31は、1種類だけでなく、複数種類の無機蛍光体31の粒子を混合して用いてもよい。また、複数種類の無機蛍光体31の粒子層を順次積層するようにしてもよい。
【0092】
無機蛍光体31として用いる具体例としては、以下のものを挙げることができる。
例えば、Eu、Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される窒化物系蛍光体・酸窒化物系蛍光体・サイアロン系蛍光体、Eu等のランタノイド系、Mn等の遷移金属系の元素により主に付活されるアルカリ土類ハロゲンアパタイト蛍光体、アルカリ土類金属ハロゲンホウ酸塩蛍光体、アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体、アルカリ土類ケイ酸塩蛍光体、アルカリ土類硫化物蛍光体、アルカリ土類チオガレート蛍光体、チオケイ酸塩蛍光体、アルカリ土類窒化ケイ素蛍光体、ゲルマン酸塩蛍光体、アルカリ金属ハロゲンケイ酸塩蛍光体、アルカリ金属ゲルマン酸塩蛍光体、又は、Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される希土類アルミン酸塩蛍光体、希土類ケイ酸塩蛍光体等から選ばれる少なくともいずれか1以上であることが好ましい。具体例として、下記の蛍光体を使用することができるが、これに限定されない。
【0093】
Eu、Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される窒化物系蛍光体は、M
2Si
5N
8:Eu、MAlSiN
3:Eu(Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Znから選ばれる少なくとも1種以上である。)などがある。また、M
2Si
5N
8:EuのほかMSi
7N
10:Eu、M
1.8Si
5O
0.2N
8:Eu、M
0.9Si
7O
0.1N
10:Eu(Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Znから選ばれる少なくとも1種以上である。)などもある。
【0094】
Eu、Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される酸窒化物系蛍光体は、MSi
2O
2N
2:Eu(Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Znから選ばれる少なくとも1種以上である。)などがある。
【0095】
Eu、Ce等のランタノイド系元素で主に賦活されるサイアロン系蛍光体は、M
p/2Si
12−p−qAl
p+qO
qN
16−p:Ce、M−Al−Si−O−N(Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Znから選ばれる少なくとも1種以上である。qは0〜2.5、pは1.5〜3である。)などがある。
【0096】
Eu等のランタノイド系、Mn等の遷移金属系の元素により主に賦活されるアルカリ土類ハロゲンアパタイト蛍光体には、M
5(PO
4)
3X:R(Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Znから選ばれる少なくとも1種以上である。Xは、F、Cl、Br、Iから選ばれる少なくとも1種以上である。Rは、Eu、Mn、EuとMn、のいずれかである。)などがある。
【0097】
アルカリ土類金属ハロゲンホウ酸塩蛍光体には、M
2B
5O
9X:R(Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Znから選ばれる少なくとも1種以上である。Xは、F、Cl、Br、Iから選ばれる少なくとも1種以上である。Rは、Eu、Mn、EuとMn、のいずれかである。)などがある。
【0098】
アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体には、SrAl
2O
4:R、Sr
4Al
14O
25:R、CaAl
2O
4:R、BaMg
2Al
16O
27:R、BaMg
2Al
16O
12:R、BaMgAl
10O
17:R(Rは、Eu、Mn、EuとMn、のいずれかである。)などがある。
【0099】
アルカリ土類金属ケイ酸塩蛍光体には、M
2SiO
4:Eu(Mは、Ca、Sr、Ba、Mg、Znから選ばれる少なくとも1種以上である。)などがある。
【0100】
アルカリ土類硫化物蛍光体には、La
2O
2S:Eu、Y
2O
2S:Eu、Gd
2O
2S:Euなどがある。
【0101】
アルカリ金属ハロゲンケイ酸塩蛍光体には、MSiX
6:Mn(Mは、Li、Na、Kから選ばれる1種以上であり、Xは、F、Cl、Br、Iから選ばれる1種以上であり、またSiの一部をGeで置換することができる)、Li
2SiF
6:Mn、K
2(SiGe)F
6:Mnの組成式で表される蛍光体がある。
【0102】
Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される希土類アルミン酸塩蛍光体には、Y
3Al
5O
12:Ce、(Y
0.8Gd
0.2)
3Al
5O
12:Ce、Y
3(Al
0.8Ga
0.2)
5O
12:Ce、(Y,Gd)
3(Al,Ga)
5O
12:Ceの組成式で表されるYAG系蛍光体などがある。また、Yの一部若しくは全部をTb、Lu等で置換したTb
3Al
5O
12:Ce、Lu
3Al
5O
12:Ceなどもある。
【0103】
その他の蛍光体には、MS:Eu、Zn
2GeO
4:Mn、0.5MgF
2・3.5MgO・GeO
2、MGa
2S
4:Eu(Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Znから選ばれる少なくとも1種以上である。)などがある。これらの蛍光体は、所望に応じてEuに代えて、又は、Euに加えてTb、Cu、Ag、Au、Cr、Nd、Dy、Co、Ni、Tiから選択される1種以上を含有させることもできる。
【0104】
また、前記した蛍光体以外の蛍光体であって、同様の性能、効果を有する蛍光体も使用することができる。
【0105】
これらの蛍光体は発光素子からの励起光により、黄色、赤色、緑色、青色に発光スペクトルを有するものを使用することができるほか、これらの中間色である黄色、青緑色、橙色などに発光スペクトルを有するものも使用することができる。これらの蛍光体を種々組み合わせて使用することにより、種々の発光色を有する発光装置を製造することができる。
【0106】
例えば、光源として青色に発光するGaN系又はInGaN系化合物半導体発光素子を用いて、Y
3Al
5O
12:Ce若しくは(Y
0.8Gd
0.2)
3Al
5O
12:Ceの蛍光体に照射し、色変換を行うようにし、発光素子からの光と、蛍光体からの光との混合色により白色に発光する発光装置を提供することができる。
【0107】
例えば、緑色から黄色に発光するCaSi
2O
2N
2:Eu又はSrSi
2O
2N
2:Euと、青色に発光する(Sr,Ca)
5(PO
4)
3Cl:Eu、赤色に発光するCa
2Si
5N
8:Eu又はCaAlSiN
3:Euと、からなる3種の蛍光体を使用することによって、演色性に優れた白色に発光する発光装置を提供することができる。これは、光の三原色である赤・青・緑を使用しているため、蛍光体の配合比を変えることのみで、所望の白色光を実現することができる。
【0108】
なお、無機蛍光体31の具体例として前記した蛍光体中には、例えば、非酸化物系の蛍光体である硫化物系蛍光体、ハロゲンケイ酸塩系蛍光体、窒化物蛍光体、酸窒化物蛍光体等のように、熱により母体が分解したり賦活剤が失活したりしやすいものがある。また、フッ化物蛍光体のように、水分により潮解するなど、雰囲気により劣化するものがある。
【0109】
本発明では、発光装置1を形成する際に、焼結やガラス封止による成形のような高温となることがないため、熱により劣化しやすい、例えば、非酸化物系の蛍光体であるCASNやSCASNのような窒化物蛍光体を用いることができる。
また、本発明では、無機蛍光体31は、好ましくは後記する原子層堆積法により形成される被覆層32によって緻密に被覆されるため、水分により潮解しやすい、例えば、LiSiF
4:Mnのようなフッ化物蛍光体を用いることができる。
なお、半導体発光素子2に無機蛍光体31を直接接合させる場合には、温度特性の良い無機蛍光体31として、前記したYAG、CASN、SCASN等が用いられる場合が多い。その他、LAG、βサイアロン、αサイアロン等を用いてもよい。
【0110】
(被覆層)
被覆層32は、粒状の無機蛍光体31の粒子を被覆すると共に、当該粒子及び半導体発光素子2、並びに粒子同士を固着させる透光性の被膜である。すなわち、被覆層32は、無機蛍光体31の保護層としての機能と、バインダーとしての機能と、熱伝導経路としての機能とを有するものである。
【0111】
被覆層32としては、Al
2O
3、SiO
2、ZrO
2、HfO
2、TiO
2、ZnO、Ta
2O
5、Nb
2O
5、In
2O
3、SnO
2、TiN、AlNなどから構成される群から選ばれる少なくとも1種の化合物を好適に用いることができる。また、被覆層32は、ALD(Atomic Layer Deposition;原子層堆積)法やMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition;有機金属化学的気相成長)法、PECVD(Plasma-Enhanced Chemical Vapor Deposition;プラズマCVD)法、大気圧プラズマ成膜法などによって形成することができる。
【0112】
特に、ALD法は、形成される被膜が緻密であり、段差(凹凸)を有する形状の被覆性が高く、均一な厚さの被膜を形成することができるため好ましい。また、ALD法により形成される被覆層32は、膜厚が薄くても、無機蛍光体31の粒子を良好に被覆すると共に、無機蛍光体31の粒子の凝集体を一体化することができ、蛍光体層3の膜厚を更に薄く形成することができる。このため、無機蛍光体31の粒子で生じたストークス発熱を、薄い被覆層32を介して放熱機能を持つ半導体発光素子2へ迅速に伝導することができる。これによって、放熱性の優れた発光装置1を形成することができる。なお、良好な放熱性を得るために、蛍光体層3の膜厚を前記した範囲とすることが好ましく、また、被覆層32の膜厚を後記する範囲とすることが好ましい。
【0113】
また、ALD法により形成される被覆層32の原料には常温から300℃以下に蒸気圧を持つ有機金属材料、金属ハロゲン化物等が用いられる。特に、ALD法で形成したAl
2O
3からなる被膜は、水分などの雰囲気に対するバリア性が高く、好ましい。Al
2O
3膜を形成するための原料には、TMA(トリメチルアルミニウム)と水とが用いられる。
【0114】
また、被覆層32の膜厚は、平均厚さで10nm〜50μmとすることができ、好ましくは50nm〜30μm、より好ましくは100nm〜10μmとすることができる。
なお、被覆層32の膜厚は、無機蛍光体31の粒子(無機フィラーなどを添加している場合は、無機蛍光体31及び無機フィラーなどの粒子)を均一に被覆している部分の厚さを指す。
【0115】
なお、被覆層32は、前記した化合物による単一層として形成することも、異種材料による多層膜として形成することもできる。多層膜で形成する場合には、例えば、第1層(無機蛍光体31に接する層)としてALD法による緻密な層を形成し、次いで第2層として、PECVD法や大気圧プラズマ成膜法などの成膜速度の速い手法で成膜することもできる。
【0116】
(空隙)
空隙33は、半導体発光素子2の表面に積層された無機蛍光体31の粒子間の隙間として形成されるものである。すなわち、空隙33は、半導体発光素子2と無機蛍光体31と被覆層32との何れかによって取り囲まれた空間である。なお、蛍光体層3に、無機フィラーや導電性粒子などの、無機蛍光体31以外の粒子が含まれる場合は、空隙33は、無機蛍光体31を含めたこれらの粒子間の隙間として形成される。
【0117】
空隙33は、蛍光体層3に入射した光を散乱させ、入射光を効率的に無機蛍光体31に吸収させることができる。空隙率は、1〜50%程度とすることが好ましく、より好ましくは5〜30%である。空隙率の最適値は、無機蛍光体31の粒径と被覆層32の膜厚とに依存するが、空隙率を1%以上とすることで、効果的に入射光を散乱させることができ、50%以下とすることで、蛍光体層3を薄肉化した場合でも、色変換に十分な無機蛍光体31の含有量とすることができる。
【0118】
また、前記した空隙率の範囲で空隙33を設けることにより、半導体発光素子2と蛍光体層3との間の線膨張係数の差が大きい場合でも、製造工程や製造後の使用時における温度上昇によって発光装置に掛かる歪を吸収し、クラックの発生を防止することができる。
【0119】
なお、蛍光体層3における空隙率は、無機蛍光体31の平均粒径と、被覆層32の膜厚とを、それぞれ前記した範囲で調整することにより制御することができる。すなわち、無機蛍光体31の平均粒径に応じて、被覆層32の膜厚を定めることで、所望の空隙率となる空隙33を形成することができる。また、蛍光体層3に無機フィラーを添加する場合は、無機蛍光体31の粒子と無機フィラーの粒子とを合わせた平均粒径と、被覆層32の膜厚とによって空隙率を制御することができる。また、空隙率の制御には、更に粒子の形状及び粒子の分散性を考慮することが好ましい。
【0120】
(空隙の充填物)
また、空隙33を充填物で埋めるようにしてもよい。充填物としては、空気層(N
2、O
2、CO
2等の混合気体)などの気体が好ましい。但し、これに限定されず、無機化合物(例えば、AlOOH、SiOx等)、無機原料(例えば、ポリシラザン等)、ガラスやナノ無機粒子等の固体が、充填物の一部もしくは全部を占めるようにしてもよい。このような固体の充填物の原料として、液体ガラス材料、ゾルゲル材料などの、無機化合物を含有する液体を挙げることができる。また、前記したような無機化合物を含有する液体の溶媒として、水、有機溶媒、更にはシリコーンやフッ素樹脂などの無機物を主体とする樹脂を用いることもできる。
【0121】
なお、空隙33に設けられるこれらの固体の充填物は、被覆層32を構成する材料と同じ材料を含むようにしてもよい。この場合には、被覆層32と空隙33の充填物とで、互いに屈折率や透過率などの物性が異なるようにすることが好ましい。このために、例えば、被覆層32がALD法で形成されたAl
2O
3とし、空隙33の充填物がゾルゲル法で形成されたAl
2O
3とすることができる。このように形成方法が異なることにより、結晶性や密度が異なり、前記した物性を異なるようにすることができる。
このように空隙33を、被覆層32とは物性の異なる材料で充填することにより、蛍光体層3に入射した光の拡散や取り出しを制御することができる。
【0122】
発光装置の他の実施形態として、
図3に示すように、半導体発光素子2の少なくとも上面に透光性層5を有していてもよい。
すなわち、
図3に示すように、発光装置1Aは、半導体発光素子2の側面及び上面に透光性層5を有し、透光性層5を介して半導体発光素子2の側面及び上面に蛍光体層3が設けられている。
【0123】
(透光性層)
透光性層5は、後記する蛍光体層形成工程S14,S26,S33(
図4、7、9参照)において、半導体発光素子2の表面に電気沈着法又は静電塗装法により、無機蛍光体31の粒子層34を形成するための電極として用いるために形成された導電体層6(
図5(b)参照)を透明化したもの、もしくは透明導電体層である。従って、透光性層5は、後記する製造工程において導電性を有し、その後に透明化が可能な材料か、導電性を有する透光性の材料を用いることができる。
【0124】
導電性を有し、後に透明化が可能な材料としては、Al、Si、Zn、Sn、Mg、Inから選択された少なくとも一種を含む金属材料を挙げることができる。例えば、Alは、90℃程度の熱水に晒すことで酸化でき、透光性のAl
2O
3に変化させることができる。また、このようにAlは比較的低温で酸化させて、透明化することができるため好ましい。この場合は、Al
2O
3膜が透光性層5として形成される。更にまた、被覆層32としてAl
2O
3膜を形成する場合は、同じ材料であるため、被覆層32と透光性層5とが良好に密着する。このため、無機蛍光体31を水分などの雰囲気から良好に保護すると共に、蛍光体層3の半導体発光素子2からの剥離が防止される。Al以外の材料についても、透光性層5と被覆層32とが同じ材料となるようにすることで、透光性層5と被覆層32との間の良好な密着性が得られるため好ましい。
【0125】
また、導電体層6を透光性層5に変換する他の方法として、アンモニア水による処理を用いることができる。例えば、導電体層6の材料としてAl又はZnを用いた場合は、アンモニア水で処理することにより、それぞれ透光性のAl(OH)
3(水酸化アルミニウム)、Zn(OH)
2(水酸化亜鉛)に変換することができる。また、これらはゲル状の物質として生成するため、無機蛍光体31の粒子同士の結着材としての効果も期待できる。
【0126】
また、導電性を有する透光性の材料としては、例えば、Zn(亜鉛)、In(インジウム)、Sn(スズ)、Ga(ガリウム)及びMg(マグネシウム)からなる群から選択された少なくとも1種の元素を含む導電性金属酸化物が挙げられる。具体的には、ZnO、AZO(AlドープZnO)、IZO(InドープZnO)、GZO(GaドープZnO)、In
2O
3、ITO(SnドープIn
2O
3)、IFO(FドープIn
2O
3)、SnO
2、ATO(SbドープSnO
2)、FTO(FドープSnO
2)、CTO(CdドープSnO
2)、MgOなどの導電性金属酸化物がある。
なお、導電性を有する透光性の材料を用いた場合は、後記する製造方法において、導電体層透明化工程S15,S27(
図4、7参照)を省略することができる。
【0127】
なお、蛍光体層3の内部構成は、
図1(b)に示した実施形態に係る発光装置1の蛍光体層3と同様である。また、
図3において、空隙33の記載は省略している。
【0128】
≪発光装置の製造方法≫
次に、本発明に係る発光装置の製造方法について、
図4〜10を参照して説明する。ここでは、3とおりの製造方法について説明する。
【0129】
(第1の製造方法)
図4に示すように、第1の製造方法は、
図3に示した発光装置1Aの製造方法であり、半導体発光素子製造工程S11と、配列工程S12と、導電体層形成工程S13と、蛍光体層形成工程S14と、導電体層透明化工程S15と、被覆層形成工程S16と、最終個片化工程S17と、を含み、この順で行われる。
なお、ここでは、複数の発光装置1Aを製造することを前提として、配列工程S12、最終個片化工程S17を含むものとして説明する。また、後記するように、製造方法の条件によっては、導電体層形成工程S13、導電体層透明化工程S15は含まないものであってもよい。
以下、
図5を参照(適宜
図1〜4参照)して、各工程について詳細に説明する。
【0130】
(半導体発光素子製造工程)
半導体発光素子製造工程S11は、個片化された半導体発光素子2を製造する工程である。この工程により、
図2(a)に示す構造の半導体発光素子2aを製造する。
【0131】
この半導体発光素子2aの製造は、従来公知の方法で行えばよい。例えば、サファイア(C面)からなる支持基板41上に、MOVPE(Metal-Organic Vapor Phase Epitaxy)反応装置にて、n型半導体層42a、活性層42b、p型半導体層42cを構成するそれぞれの窒化物半導体を順次成長させる(窒化物半導体の各層を成長させた基板を、適宜、ウェハという)。次に、レジストマスクを形成してエッチングを行い、レジストを除去し、その後、反射電極(あるいは透明電極)45、カバー電極46を構成する膜をスパッタリングにて成膜する。さらに、レジストマスクを形成してエッチングを行い、レジストを除去し、その後、p側電極44及びn側電極43をスパッタリングにて設ける。そして、保護膜47をスパッタリングにて成膜し、レジストマスクを形成してエッチングを行い、レジストを除去する。さらにエッチングによりp側電極44及びn側電極43を露出させる。そして、ダイシング等により、ウェハを個片化する。
【0132】
(配列工程)
配列工程S12は、半導体発光素子2を平板状の治具に所定の間隔を空けて配列する工程である。
配列工程S12において、
図5(a)に示すように、半導体発光素子製造工程S11で製造した半導体発光素子2を、電極43,44面を下側にして、所定の間隔を空けて粘着シート(図示省略)が貼付された治具50上に配列する。その際、電極43,44に例えば図示しないバンプ等を設けて高さを調整してもよい。治具50上に配列された半導体発光素子2は、粘着シートによって治具50に貼付され、その位置が保持される。
【0133】
なお、配列工程S12において、半導体発光素子2を、例えば、コレットを用いて1個ずつ半導体発光素子2を吸着し、治具50上に配列することができる。
【0134】
ここで、治具50は、半導体発光素子2の配列を保持する板状の部材である。治具50としては、剛性を有するセラミックス、ガラス、金属、プラスチックなどの板状部材を用いることができる。
【0135】
(導電体層形成工程)
導電体層形成工程S13程は、配列工程S12と蛍光体層形成工程S14との間に、半導体発光素子2の表面に金属からなる導電体層6を形成する工程である。
導電体層形成工程S13において、
図5(b)に示すように、治具50に配置された半導体発光素子2の上面及び側面が被覆されるように、治具50及び半導体発光素子2の表面に導電体材料(金属材料)からなる導電体層6を形成する。導電体層6としては、後工程である導電体層透明化工程S15で透明化できる材料として、例えば、Alを用いることができる。導電体層6は、例えば、スパッタリング法、蒸着法、メッキ法などにより形成することができる。
【0136】
また、導電体材料として、ITO、ZnOなどの前記した透光性を有する材料を用いて、導電体層6を、例えば、スパッタリング法や蒸着法などの物理的方法、あるいはスプレー法やCVD(化学気相成長)法などの化学的方法などにより形成することができる。なお、導電体層6を、透光性材料を用いて形成した場合は、導電体層透明化工程S15を省略することができる。
なお、半導体発光素子2の支持基板41を剥離することで、導電性エピタキシャル層により導電性を付与することもできる。
【0137】
なお、本明細書において「透光性を有する」とは、半導体発光素子2から発する光(第1の色の光)及び蛍光体層3によって色変換された光(第2の色の光)に対して透光性を有することをいう。
【0138】
(蛍光体層形成工程(無機粒子層形成工程))
蛍光体層形成工程S14は、半導体発光素子2の表面に、半導体発光素子2が発光する第1の色の光を吸収し、第1の色とは異なる第2の色の光を発光する無機材料からなる
波長変換部材(無機蛍光体31)の粒子を含有する凝集体(粒子層34)を形成する工程である。
蛍光体層形成工程S14において、
図5(c)に示すように、導電体層6を一方の電極として、電気沈着(電着)法又は静電塗装法により、半導体発光素子2の表面(上面及び側面)に、導電体層6を介して無機蛍光体31の粒子層34を形成する。
なお、半導体発光素子2が絶縁体であっても、導電体である金属を導電体層6として用いることで、導電体層6を電極として、電気沈着法や静電塗装法により無機蛍光体31の粒子層34を形成することができる。
【0139】
なお、蛍光体層3に無機フィラーや導電性粒子などの無機粒子を添加する場合は、粒子層34は、無機蛍光体31の粒子と、これらの粒子との凝集体となる。
【0140】
ここで、電気沈着法を用いた場合の蛍光体層形成工程S14について詳細に説明する。
電気沈着法によれば、室温下で、粒状の無機蛍光体31を懸濁させた溶液を入れた電着槽に、一方の電極となる、導電体層6が形成された半導体発光素子2と、他方の電極となる対電極とを浸漬させ、電極間に電圧を印加する。なお、半導体発光素子2側には、無機蛍光体31が帯電する極性と異なる極性の電圧を印加する。これによって、無機蛍光体31の粒子が電気泳動して、導電体層6を介して半導体発光素子2に付着する。無機蛍光体31の粒子層34の厚さは、電極間に通電する電流及び時間で定められるクーロン量を調整することで制御することができる。
【0141】
この電気沈着法に用いる溶媒は、特に限定されないが、IPA(イソプロピルアルコール)などのアルコール系溶媒を好適に用いることができる。
【0142】
また、無機蛍光体31の粒子及び半導体発光素子2、並びに無機蛍光体31の粒子同士を結着させるための無機結着材を溶液中に添加することが好ましい。無機結着材は、電気沈着法によって積層した無機蛍光体31の粒子を、後工程である被覆層形成工程S16で被覆層32が形成されるまで、散逸させないようにするためのものである。無機結着材としては、例えば、Mgイオン、Caイオン、Srイオンなどのアルカリ土類金属イオンを用いることができる。添加したアルカリ土類金属イオンは、水酸化物や炭酸塩として析出して結着力を発揮する。これらの水酸化物や炭酸塩は、無色透明であるため、製造後の蛍光体層3中に残存しても色変換効率を低下することがない。また、無機物であるため、経時変化により色変換効率を低下させることもない。
【0143】
また、無機蛍光体31の電気泳動を効率的に行わせるために、溶液中に金属塩などの帯電制御剤を添加することが好ましい。また、帯電制御剤は、溶液中に添加せず、無機蛍光体31の粒子にコーティングするようにしてもよい。
【0144】
なお、本実施形態では、蛍光体層形成工程S14において、電気沈着法により無機蛍光体31の粒子層34を形成するようにしたが、これに限定されるものではない。例えば、半導体発光素子2を一方の電極として、静電塗装法を用いることもできる。また、蛍光体層3を上面に形成する場合は、遠心沈降法を用いることもできる。その他に、パルススプレー法を用いることもできる。また、前記した方法を組み合わせて用いることもできる。
【0145】
なお、遠心沈降法又はパルススプレー法を用いて無機蛍光体31の粒子層34を形成する場合は、導電体層6の形成は不要である。この場合は、導電体層形成工程S13及び導電体層透明化工程S15は省略することができる。この場合は、透光性層5を有さずに、非導電性の透光性を有する半導体発光素子2の表面に蛍光体層3が直接に設けられた構成の発光装置1が形成される。
【0146】
(導電体層透明化工程)
導電体層透明化工程S15は、蛍光体層形成工程S14と被覆層形成工程S16との間で、導電体層6の金属を酸化して透明化する工程である。
導電体層透明化工程S15において、
図5(d)に示すように、導電体層6を透明化して、透光性層5に変化させる。導電体層6をAl膜で形成した場合は、例えば、90℃程度の熱水に晒すことでAlを酸化し、透光性のAl
2O
3膜に変化させることができる。
また、導電体層6をAl膜で生成した場合は、アンモニア水で処理して、Alを透光性のAl(OH)
3に変化させることもできる。
【0147】
また、導電体層6を形成する金属を溶解させ、除去するようにしてもよい。導電体層6を除去する方法としては、酸による溶解反応を用いることができる。酸としては、例えば、HCl(塩酸)、H
2SO
4(硫酸)、HNO
3(硝酸)、その他の無機酸又は有機酸の水溶液を用いることができる。例えば、導電体層6の材料としてAlを用いた場合は、酸水溶液に浸漬させることで、Al
3+となり酸水溶液に溶解して除去される。
【0148】
更に、導電体層6の材料としてAl、Zn又はSnなどの両性金属を用いた場合は、導電体層6を除去する方法として、NaOH(水酸化ナトリウム)、KOH(水酸化カリウム)又はその他のアルカリ水溶液による溶解反応を用いることができる。例えば、導電体層6の材料としてAl、Zn又はSnを用いた場合は、水酸化ナトリウム水溶液と反応させることで、それぞれNa[Al(OH)
4]、Na
2[Zn(OH)
4]]、Na
2[Sn(OH)
4]などの錯イオンを生成してアルカリ水溶液に溶解して除去される。
【0149】
なお、導電体層6を除去する場合は、透光性層5を有さずに、非導電性の透光性を有する半導体発光素子2の表面に蛍光体層3が直接に設けられた構成の発光装置1が形成される。
【0150】
(被覆層形成工程)
被覆層形成工程S16は、半導体発光素子2の表面及び
波長変換部材(無機蛍光体31)の粒子の表面を連続的に被覆する無機材料からなる被覆層32を形成する工程である。
被覆層形成工程S16において、
図5(e)に示すように、蛍光体層形成工程S14で形成した無機蛍光体31の粒子層34を被覆し、粒子同士を固着させる被覆層32を形成する。被覆層形成工程S16において、被覆層32は、ALD法やMOCVD法などによって形成することができる。無機蛍光体31の粒子は被覆層32によって被覆されると共に、無機蛍光体31の粒子及び透光性層5、並びに無機蛍光体31の粒子同士が固着して、一体化した発光装置が得られる。
【0151】
また、透光性層5と被覆層32とを同じ材料で形成した場合は、蛍光体層3と透光性層5との密着性がよく、透光性層5に接する無機蛍光体31の水分などの雰囲気に対する良好なバリア性が得られると共に、蛍光体層3が半導体発光素子2から剥離しにくくすることができる。
【0152】
また、空隙33に、空気層以外の充填物として固体を設ける場合は、被覆層形成工程S16の後に続いて、以下に説明するようにして行うことができる。なお、被覆層形成工程S16を行った後の空隙33には、空気が充填されている。
【0153】
固体の充填物は、溶媒中に固体を分散させた溶液(固体含有液体)を空隙33内に充填し、溶媒を揮発させた後に、低温過熱して固体化することで設けることができる。例えば、液体ガラス、ゾルゲル材料などの固体含有液体を、蛍光体層3上に滴下又は塗布等によって設け、真空にする。これにより、空隙33内を充填している空気を空隙33から除去すると共に、入れ替わりに固体含有液体を空隙33内に充填することができる。その後、固体含有液体の溶媒が揮発する温度とすることで、空隙33内に固体の充填物を設けることができる。なお、溶媒を揮発させるために加熱する温度は、300℃程度以下の比較的低温であることが好ましい。
【0154】
(ALD法による被覆層形成工程)
ここで、
図6を参照して、ALD法を用いた場合の被覆層形成工程S16について詳細に説明する。
図6に示すように、本実施形態における被覆層形成工程S16は、プリベーク工程S121と、試料設置工程S122と、成膜前保管工程S123と、第1原料供給工程S124と、第1排気工程S125と、第2原料供給工程S126と、第2排気工程S127と、を含み、第1原料供給工程S124から第2排気工程S127は、所定回数繰り返し行われる。
【0155】
(プリベーク工程)
まず、プリベーク工程S121において、半導体発光素子2の上面及び側面に無機蛍光体31の粒子層34が形成された試料を、オーブンを用いて加熱するベーキング処理を行う。
本実施形態では、H
2O(水)を第1原料、TMA(トリメチルアルミニウム)を第2原料とし、Al
2O
3膜を被覆層32として形成する。このため、良好に成膜を行うために、成膜前の試料に含まれる水分などを蒸発させることで可能な限り除去することが好ましい。
【0156】
ベーキング処理は、例えば、試料を120℃のオーブンで2時間程度加熱することで行うことができる。
(試料設置工程)
次に、試料設置工程S122において、被覆層32の成膜を行うために、試料を反応容器(不図示)に投入する。この反応容器は、第1原料供給ライン、第2原料供給ライン、窒素ガス供給ライン及び真空ライン(何れも不図示)などに接続されている。
【0157】
(成膜前保管工程)
次に、成膜前保管工程S123において、試料を保管した反応容器内を、例えばロータリーポンプが接続された真空ラインを介して低圧状態にし、反応容器内の状態を安定化させる。また、このときに、反応容器内に窒素ガスを導入し、空気などの不要物を反応容器から排気する。
【0158】
反応容器内の圧力は、例えば、0.1〜10torr(133〜13332Pa)程度、窒素ガスの流量は20sccm(33×10
−3Pa・m
3/s)程度、安定化のためにこの状態を維持する時間は10分間程度とすることができる。
また、反応容器内の温度は、例えば、100℃程度とすることができるが、成膜温度は50〜500℃の範囲内で自由に設定することができる。以降の成膜中は、この温度を維持するのが一般的であるが、これに限定されず、途中で温度を変更するようにしてもよい。
【0159】
なお、成膜中の温度は、適宜に設定することができるが、用いる無機蛍光体31の耐熱性を考慮して50〜500℃程度の範囲で設定することが好ましく、100〜200℃とすることが更に好ましい。ALD法による成膜は、焼結法による成形や、MOCVD法による成膜と比較しても低温で行うことができる。このため、特に耐熱性の低いCASN、SCASNなどの赤色に発光する無機蛍光体31を用いた発光装置1(1A)を作製することができる。
【0160】
(第1原料供給工程)
次に、第1原料供給工程S124において、第1原料であるH
2Oを反応容器に導入する。H
2Oは、常温の蒸気として導入する。H
2Oを導入後、導入したH
2Oが試料の全面に行き渡るまで所定の時間待機して、試料の全面で反応させる。なお、H
2Oの導入は、第1原料供給工程S124の所要時間に対して、H
2Oの蒸気を、例えば0.001〜1秒などの短時間に反応容器に導入する。
但し、原料の導入時間は試料の表面積、装置の体積、単位時間当たりの原料供給量に応じて決めることができる。原料であるH
2Oを導入後は、試料の全面の反応に必要な十分な時間をかける。
【0161】
(第1排気工程)
次に、第1排気工程S125において、反応容器に真空ラインを接続すると共に、窒素ガスを導入し、反応に寄与しなかった過剰のH
2O及び副生成物を反応容器から排気する。なお、本工程における副生成物とは、メタンガスである。
【0162】
(第2原料供給工程)
次に、第2原料供給工程S126において、第2原料であるTMAを反応容器に導入する。TMAは、常温の蒸気として導入する。TMAを導入後、導入したTMAが試料の全面に行き渡るまで、所定の時間待機する。なお、TMAの導入は、前記したH
2Oの導入と同様に行うことができる。
但し、原料の導入時間は試料の表面積、装置の体積、単位時間当たりの原料供給量に応じて決めることができる。原料であるTMAを導入後は、試料の全面の反応に必要な十分な時間をかける。
【0163】
(第2排気工程)
次に、第2排気工程S127において、反応容器に真空ラインを接続すると共に、窒素ガスを導入し、反応に寄与しなかった過剰のTMA及び副生成物を反応容器から排気する。
【0164】
本実施形態における成膜工程は、第1原料供給工程S124から第2排気工程S127を成膜の基本サイクルとして、所定の回数のサイクルを繰り返すものである。そのために、第2排気工程S127終了後に、このサイクルを所定回数行ったか判定し(ステップS128)、所定回数終了していない場合は(ステップS128でNo)、第1原料供給工程S124に戻り、前記したサイクルを繰り返す。一方、所定回数終了した場合は(ステップS128でYes)、被覆層形成工程を終了する。
【0165】
ALD法によれば、成膜の基本サイクルを1回行うことで、被覆層32が原子層レベルを単位として積層される。このため、実行するサイクル数に応じて、被覆層32の厚さを自在に制御することができる。
また、被覆層32は、原子層レベルを単位として積層されるため、凹凸形状などの段差の被覆性が高く、また、ピンホールの極めて少ない緻密で、かつ均一な厚さの膜を形成することができる。
また、適度な厚さの被覆層32を形成することで、無機蛍光体31の粒子間の隙間を完全に埋めることなく、蛍光体層3に空隙33(
図1(b)参照)として残すことができる。
【0166】
また、ALD法によれば、無機蛍光体31の粒子を緻密かつ均一に被覆するため、水分により劣化しやすいフッ化物蛍光体などを用いることができる。
【0167】
なお、フッ化物蛍光体のように、水分により劣化しやすい蛍光体を用いる場合は、次のようにすることが好ましい。まず、予め種々のコーティング法により無機蛍光体31の粒子の表面を耐水コートしておく。次に、耐水コートを施した無機蛍光体31を用いて短時間の内に、半導体発光素子2の表面に電気沈着法や静電塗装法などにより、粒子層34を形成する。そして、ALD法により、被覆層32を形成することで、半導体発光素子2及び粒子層34を一体化して発光装置1Aとする。これによって、製造工程における水分の影響を防止しつつ発光装置1Aを作製することができる。また、製造後において、被覆層32により水分などの雰囲気から保護された、劣化しにくい発光装置1Aとすることができる。
【0168】
(最終個片化工程)
最終個片化工程S17は、被覆層32が形成された半導体発光素子2を個片化する工程である。
図5(f)に示すように、ここでは、ダイシングや研磨等により、治具50上の被覆層32を形成した半導体発光素子2が載置されていない部位、すなわち、被覆層32を形成した半導体発光素子2同士の間の透光性層5及び蛍光体層3を除去する。さらに、被覆層32を形成した半導体発光素子2を治具50から剥離する。
【0169】
なお、
図5では、説明をわかりやすくするために蛍光体層3、透光性層5、導電体層6を厚く記載しているため、
図5(e)において被覆層32は半導体発光素子2の側面の一部を覆う形となっている。しかし、実際は蛍光体層3の膜厚を調整することで、半導体発光素子2の側面のほぼ全てを被覆層32で覆うようにすることもできる。
また、被覆層32を形成する前に半導体発光素子2同士の間の透光性層5を除去したり、被覆層32を形成した後、半導体発光素子2同士の間の透光性層5及び蛍光体層3を除去した後に、半導体発光素子2の側面全体に被覆層32を形成させたりしてもよい。よって、
図5(f)〜(h)では、便宜上、半導体発光素子2の側面全体に被覆層32が形成された状態を図示している。なお、蛍光体層3を形成する場合も同様に、蛍光体層3を形成する前に導電体層6を除去して半導体発光素子2の側面全体に蛍光体層3を形成させるようにしてもよい。
【0170】
そして、
図5(g)に示すように、このようにして製造された発光装置1Aは、パッケージ15の凹部15a内に設けられる。パッケージ15は、発光装置1Aを実装するための実装基板である。パッケージ15は、発光装置1Aを実装する凹部15aを有し、凹部15aの上方が開口している。
ここで、半導体発光素子2が、フェースダウン実装するFD素子の場合、電極43,44が、導電部材73,74上に実装される。一方、フェースアップ実装するFU素子の場合、電極43,44は上を向き、支持基板41側が導電部材73上に実装される。そして、電極43,44と導電部材73,74とがワイヤ80,80により接続される。
この発光装置1Aの実装方法は、接合部材として半田ペーストを用いた実装や、半田等を用いたバンプによる実装が用いられる。
【0171】
(第2の製造方法)
図7に示すように、第2の製造方法は、
図3に示した発光装置1Aの他の製造方法であり、半導体発光素子製造工程S21と、配列工程S22と、導電体層形成工程S23と、中途個片化工程S24と、予備実装工程S25と、蛍光体層形成工程S26と、導電体層透明化工程S27と、被覆層形成工程S28と、最終個片化工程S29と、を含み、この順で行われる。
なお、ここでは、複数の発光装置1Aを製造することを前提として、配列工程S22、最終個片化工程S29を含むものとして説明する。また、第1の製造方法と同様に、製造方法の条件によっては、導電体層形成工程S23、導電体層透明化工程S27は含まないものであってもよい。
以下、
図8を参照(適宜
図1〜3、
図7参照)して、各工程について詳細に説明する。
【0172】
(半導体発光素子製造工程)
第2の製造方法における半導体発光素子製造工程S21は、第1の製造方法における半導体発光素子製造工程S11と同様であるから、詳細な説明は省略する。
【0173】
(配列工程)
図8(a)に示すように、第2の製造方法における配列工程S22は、第1の製造方法における配列工程S12と同様であるから、詳細な説明は省略する。
【0174】
(導電体層形成工程)
図8(b)に示すように、第2の製造方法における導電体層形成工程S23は、第1の製造方法における導電体層形成工程S13と同様であるから、詳細な説明は省略する。
【0175】
(中途個片化工程)
中途個片化工程S24は、導電体層6が形成された半導体発光素子2を個片化する工程である。
中途個片化工程S24において、ここでは、ダイシングや研磨等により、治具50上の導電体層6を形成した半導体発光素子2が載置されていない部位、すなわち、導電体層6を形成した半導体発光素子2同士の間の導電体層6を除去する。さらに、導電体層6を形成した半導体発光素子2を治具50から剥離する。
【0176】
(予備実装工程)
予備実装工程S25は、半導体発光素子2を平板状の絶縁性基板60に所定の間隔を空けて実装する工程である。
予備実装工程S25において、
図8(c)に示すように、導電体層6が形成された半導体発光素子2を、電極43,44面を下側にして、所定の間隔を空けて、絶縁性基板60に貼付された導電部材71,72を介して絶縁性基板60上に配列して実装する。絶縁性基板60上に実装された半導体発光素子2は、導電部材71,72上に載置され、その位置が保持される。
この半導体発光素子2の実装方法は、接合部材として半田ペーストを用いた実装や、半田等を用いたバンプによる実装が用いられる。
【0177】
なお、予備実装工程S25において、半導体発光素子2を、例えば、コレットを用いて1個ずつ半導体発光素子2を吸着し、絶縁性基板60上に実装することができる。
【0178】
ここで、絶縁性基板60は、後記するパッケージ15に実装後、電源と電極とを電気的に接続するための板状の部材である。すなわち、絶縁性基板60は、この内部や側面等を通じて、後記するパッケージ15に実装後、例えば導線等の導電性の部材により、導電部材73と導電部材71、及び、導電部材74と導電部材72とを電気的に接続する。あるいはワイヤボンディングによりこれらを導通させてもよい。ただし、導通させる方法はこれらに限るものではなく、どのようなものでもよい。絶縁性基板60は、セラミックなどの板状部材を用いることができる。
【0179】
(蛍光体層形成工程(無機粒子層形成工程))
図8(d)に示すように、第2の製造方法における蛍光体層形成工程S26は、第1の製造方法における蛍光体層形成工程S14と同様であるから、詳細な説明は省略する。
【0180】
(導電体層透明化工程)
図8(e)に示すように、第2の製造方法における導電体層透明化工程S27は、第1の製造方法における導電体層透明化工程S15と同様であるから、詳細な説明は省略する。
【0181】
(被覆層形成工程)
図8(f)に示すように、第2の製造方法における被覆層形成工程S28は、第1の製造方法における被覆層形成工程S16と同様であるから、詳細な説明は省略する。
なお、絶縁性基板60上の被覆層32を形成した半導体発光素子2が載置されていない部位、すなわち、被覆層32を形成した半導体発光素子2同士の間の被覆層32をエッチング等で除去したり、マスキングを施して被覆層32が形成されないようにしたりしてもよい。
【0182】
(最終個片化工程)
最終個片化工程は、被覆層32が形成された半導体発光素子2を個片化する工程である。
図8(g)に示すように、ここでは、ダイシング等により絶縁性基板60を切断して被覆層32が形成された半導体発光素子2を個片化する。以上の工程により、
図3に示した発光装置1Aを製造することができる。
【0183】
そして、
図8(h)に示すように、このようにして製造された発光装置1Aは、導電部材71,72及び絶縁性基板60と一体となってパッケージ15の凹部15a内に設けられる。この際、発光装置1Aは、パッケージ15の凹部15a内の底部に設けられた導電部材73,74上に、導電部材71,72及び絶縁性基板60を介して実装される。なお、導電部材73と導電部材71、及び、導電部材74と導電部材72とは、例えば導線等の導電性の部材により、絶縁性基板60の内部や側面等を通じて電気的に接続される。あるいはワイヤボンディングによりこれらを導通させる。ただし、導通させる方法はこれらに限るものではなく、どのようなものでもよい。
この発光装置1Aの実装方法は、接合部材として半田ペーストを用いた実装や、半田等を用いたバンプによる実装が用いられる。
【0184】
(第3の製造方法)
図9に示すように、第3の製造方法は、
図1に示した発光装置1の製造方法であり、半導体発光素子製造工程S31と、予備実装工程S32と、蛍光体層形成工程S33と、被覆層形成工程S34と、最終個片化工程S35と、を含み、この順で行われる。
なお、ここでは、複数の発光装置1を製造することを前提として、予備実装工程S32、最終個片化工程S35を含むものとして説明する。
以下、
図10を参照(適宜
図1〜3、
図9参照)して、各工程について詳細に説明する。
【0185】
(半導体発光素子製造工程)
半導体発光素子製造工程S31は、半導体発光素子2を製造する工程である。この工程により、
図2(b)に示す構造の半導体発光素子2bを製造する。
【0186】
この半導体発光素子2bの製造は、従来公知の方法で行えばよい。例えば、サファイア(C面)からなる基板(不図示)上に、MOVPE反応装置にて、n型半導体層42a、活性層42b、p型半導体層42cを構成するそれぞれの窒化物半導体を順次成長させる。続いて、反射電極(Ag)45、及び、電流狭窄(誘電体)48をスパッタリングにて設ける。その後、ウェハ貼り合わせ層49をスパッタリングにて成膜し、Si等の導電性を持った支持基板41に、熱圧着等の方法で貼り合わせる。次にサファイア側からレーザーを当てるレーザーリフトオフ(LLO)法によりサファイア基板を剥離する。引き続いて、レジストマスクを形成して半導体層のパターニングを行い、レジストを除去し、その後、スパッタリングにてn側電極43を設ける。そして、保護膜47をスパッタリングにて成膜し、レジストマスクを形成してエッチングを行い、レジストを除去し、n側電極13を露出させる。一方、支持基板41の裏面には、p側電極44をスパッタリングにて設ける。
【0187】
(予備実装工程)
予備実装工程S32は、半導体発光素子2を、平板状の絶縁性基板60に所定の間隔を空けて配列する工程である。
予備実装工程S32において、
図10(a)に示すように、半導体発光素子2を、p側電極44面を下側にして、所定の間隔を空けて、絶縁性基板60に貼付された導電部材71を介して絶縁性基板60上に配列して実装する。絶縁性基板60上に実装された半導体発光素子2は、導電部材71上に載置され、その位置が保持される。
この半導体発光素子2の実装方法は、接合部材として半田ペーストを用いた実装や、半田等を用いたバンプによる実装が用いられる。
一方、n側電極43と、絶縁性基板60上に設けられた導電部材72とをワイヤ80により接続する。
このような垂直構造型の半導体発光素子2bにおいては、p側電極44とn側電極43とがワイヤ80を介して電気的に接続されていることで、半導体発光素子2bの側面及び上面が導通しているため、導電体層を設けることなく、電着が可能である。
【0188】
(蛍光体層形成工程(無機粒子層形成工程))
図10(b)に示すように、第3の製造方法における蛍光体層形成工程S33は、第1の製造方法における蛍光体層形成工程S14と同様であるから、詳細な説明は省略する。なお、ここでは、ワイヤ80の表面にも粒子層34が形成される。また、半導体層全体が電着又は静電塗装での電極として機能するため、半導体層の露出面に粒子層34が形成される。
【0189】
(被覆層形成工程)
図10(c)に示すように、第3の製造方法における被覆層形成工程S34は、第1の製造方法における被覆層形成工程S16と同様であるから、詳細な説明は省略する。なお、ここでは、ワイヤ80の表面にも被覆層32が形成される。
【0190】
(最終個片化工程)
図10(d)に示すように、第3の製造方法における最終個片化工程S35は、第2の製造方法における最終個片化工程S29と同様であるから、詳細な説明は省略する。なお、ここでは、ワイヤ80を備えた状態で個片化する。以上の工程により、
図1に示した発光装置1を製造することができる。なお、
図1においては、ワイヤは省略して図示している。
【0191】
そして、
図10(e)に示すように、このようにして製造された発光装置1は、導電部材71,72及び絶縁性基板60と一体となってパッケージ15の凹部15a内に設けられる。この際、発光装置1は、パッケージ15の凹部15a内の底部に設けられた導電部材73,74上に、導電部材71,72及び絶縁性基板60を介して実装される。なお、導電部材73と導電部材71、及び、導電部材74と導電部材72とは、例えば導線等の導電性の部材により、絶縁性基板60の内部や側面等を通じて電気的に接続される。あるいはワイヤボンディングによりこれらを導通させる。ただし、導通させる方法はこれらに限るものではなく、どのようなものでもよい。
この発光装置1の実装方法は、接合部材として半田ペーストを用いた実装や、半田等を用いたバンプによる実装が用いられる。
【0192】
以上、本発明の発光装置および発光装置の製造方法について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。以下、
図11(a)、(b)を参照して、その他の変形例について説明する。
【0193】
図11(a)に示すように、発光装置1Bは、蛍光体層3を覆うように保護層7が形成されている。保護層7は透明層であり、SiO
2等の酸化膜からなる。
【0194】
この様な構成にすることにより、蛍光体層3の強度向上と光取り出し向上を図ることが可能になる。また、製造された半導体発光素子2は、更なる小片化により最終形状が形成されるため、その分断加工に耐えられる強度が必要になる。そして、半導体発光素子2は、分断加工後に他の部材と接合されて使用される。その際、表面の平坦度が接合に影響することが予測され、保護層7の形成により平坦化が図れる。また、更なる平坦化が必要な場合に研磨、研削、CMPにより、加工層にも使用できる。
【0195】
次に、この保護層7を形成する保護層形成工程について説明する。
保護層形成工程は、被覆層形成工程の後、最終個片化工程の前に、半導体発光素子2の表面及び
波長変換部材(無機蛍光体31)の粒子の表面を連続的に被覆する無機材料からなる被覆層32の上部に酸化膜からなる保護層7を形成する工程である。
【0196】
保護層形成工程は
図11(a)に示すように、無機蛍光体31、被覆層32を覆うように形成する。保護層7は、CVD法、大気圧プラズマ成膜法、スパッタ法等によって形成することができる。これにより、蛍光体層3の凹凸を低減でき、また無機蛍光体31、被覆層32からなる形成体の固着化を向上させることができる。
上記で挙げた成膜方法は成膜材料の被覆率が低い状態で形成できる。このため、最表面の凹凸を低減できるだけでなく、最表面近傍の空隙をふさぐこともできる。更には、より平坦な表面が接合等で必要な場合、蛍光体層3を加工することなく、保護層7を研削、研磨、CMP等で加工することで可能になる。
【0197】
(CVD法による保護層形成工程)
CVD法を用いた場合の保護層形成工程について説明する。CVD法の工程は真空排気、プラズマ処理、パージ工程からなる。真空排気は10Pa程度まで行う。そして真空度到達後、200℃まで高温保管する。次に、TEOS、酸素を導入し、プラズマ発生、2μm単位で形成し剥がれと残留応力の緩和を行う。膜厚は16μm間で形成する。その後、大気圧に戻して取り出す。
【0198】
また、
図11(b)に示すように、無機蛍光体31の表面に、被覆層と屈折率の異なるフィラー粒子8を形成し、このフィラー粒子8の表面に被覆層32を形成した発光装置1Cとしてもよい。フィラー粒子8としては、前記した無機フィラーが挙げられる。
無機蛍光体31の形成後、被覆層32の形成前に無機蛍光体31の表面に被覆層32と屈折率の異なるフィラー粒子8を配置し、その後、被覆層32を形成することにより、光の拡散及び取り出しの効率を上げることができる。例えば、被覆層32がAl
2O
3の場合、SiO
2もしくはTiO
2粒子等を無機蛍光体31の最表面に配置し、その後被覆層32を形成する。フィラー粒子8は、例えば前記した電気沈着法、静電塗装法、パルススプレー法もしくは遠心沈降法、又はこれらの方法の組み合わせにより形成することができる。
なお、これらの変形例においても、半導体発光素子2の表面に透光性層5(
図3参照)が設けられていてもよい。
【0199】
[発光装置の動作]
次に、
図1(a)、
図3を参照して、発光装置1,1Aの動作について説明する。
なお、本実施形態では、光源として、青色光を発光する半導体発光素子2を用いた場合について説明する。また、色変換用成形体として、青色光を黄色光に変換する無機蛍光体31を有する発光装置1,1Aを用いるものとする。
【0200】
半導体発光素子2から出射された青色の光は、蛍光体層3の空隙33(
図1(b)参照)によって散乱されつつ蛍光体層3内を伝搬し、発光装置1,1Aから出力光として出力される。
【0201】
蛍光体層3に入射した青色光は、蛍光体層3を透過して出射されるまでの間に、一部が無機蛍光体31によって吸収される。無機蛍光体31は、吸収した青色光によって励起され、黄色光を放出(発光)する。すなわち、無機蛍光体31は、青色光を黄色光に色変換する。
【0202】
無機蛍光体31から発光する黄色光、及び無機蛍光体31に吸収されずに蛍光体層3を透過した青色光は、発光装置1,1Aの側面及び上方の面から、透過光として出射される。このとき、透過光には、蛍光体層3で色変換された黄色光と、色変換されなかった青色光とが含まれ、透過光は、これらの光が混色した色となる。青色光と黄色光とが適宜な割合となるように蛍光体層3における無機蛍光体31の膜厚や、空隙33(
図1(b)参照)の割合を調整することで、発光装置1,1Aの出力光を白色光とすることができる。
【0203】
なお、本発明は、白色光に限定されるものではなく、半導体発光素子2から出射される光の全部を黄色光に色変換し、黄色光として出力するように構成することもできる。また、例えば緑色や赤色などに色変換する無機蛍光体31を用いるように構成してもよい。また、複数種類の無機蛍光体31を積層、あるいは混合して蛍光体層3を形成することで、様々な色に変換して出力するように構成することもできる。
なお、発光装置1B,1Cにおいても、保護層7、フィラー粒子8があること以外は、発光装置1,1Aと同様である。
【実施例】
【0204】
次に、本発明の実施例について説明する。
<実施例1>
実施例1として、
図3に示した実施形態に係る発光装置1Aの作製例について説明する。
【0205】
(半導体発光素子製造工程及び配列工程)
前記第1の製造方法で説明した方法により、
図2(a)に示す構造の半導体発光素子を製造する。この半導体発光素子を、平板状の治具に所定の間隔を空けて配列する。
【0206】
(導電体層形成工程)
この半導体発光素子の表面に導電性を持たせるため、スパッタリング法により、約0.1μmの厚さのAl層を形成する。
【0207】
(蛍光体層形成工程)
次に、無機蛍光体としてF.S.S.S.No法による平均粒径が7μmのCASNの粒子を分散させた約25℃の電着槽に対極と共に浸漬させ、電気泳動法により無機蛍光体を半導体発光素子の露出部に電着させる。電着槽には無機結着材としてMgイオンが添加されており、これが水酸化マグネシウム及び/又は炭酸マグネシウムとして析出することで結着力が得られる。なお、無機蛍光体の粒子層の厚さは、電極間に通電するクーロン量を制御することで30μmの厚さに制御する。
洗浄・乾燥後、無機蛍光体の粒子層が積層された半導体発光素子を得る。
【0208】
(導電体層透明化工程)
洗浄、乾燥後、Al層を90℃の熱水で処理し、導電体層であるAl層を酸化してAl
2O
3層とすることにより、導電体層を透明化する。
【0209】
(被覆層形成工程)
次に、半導体発光素子の表面に積層された無機蛍光体の粒子層を被覆する被覆層として、ALD法によりAl
2O
3層を形成する。
【0210】
CASN蛍光体の粒子層が積層された半導体発光素子を、ALD法による成膜装置であるALD装置の反応容器に挿入する。
約150℃の温度条件で、原料であるH
2OとTMAとを、真空パージを挟んで、交互に反応容器に導入する。原料を交互に導入する成膜工程の基本サイクルを繰り返して、Al
2O
3層を単分子ずつ堆積させ、Al
2O
3層を約1μmの厚さに形成する。
なお、被覆層形成工程の詳細については後記する。
【0211】
(最終個片化工程)
次に、被覆層が形成された半導体発光素子を個片化する治具50上の被覆層32を形成した半導体発光素子2が載置されていない部位をダイシング及び研磨により除去し、半導体発光素子を治具から剥離する。
【0212】
この発光装置は、蛍光体層の空隙が24.0%あり、半導体発光素子と蛍光体層の線膨張係数に差があるがクラック等が発生することが防止されている。
この発光装置は、LD光源により励起される、プロジェクタや自動車用のヘッドライトの光源に使用することができる。
【0213】
本実施例で作製された発光装置は、プロセス中の最高温度が150℃であり、無機蛍光体として窒化物蛍光体であるCASN蛍光体を用いても、CASN蛍光体は劣化していない。また、蛍光体層が、通常の焼結型セラミックスでは加工が困難な100μm以下の厚さである30μmで形成され、かつ直接金属と接している。このため、蛍光体の励起により発生するストークスロスによる発熱を効率よく放熱でき、温度上昇による蛍光体の色変換効率の低下が抑制される。
【0214】
また、蛍光体層の表面は無機蛍光体の粒子の粒径に起因する凹凸が形成され、発光装置の内部には適度に空隙が形成される。また、ALD法により緻密な膜が形成される。
【0215】
[被覆層形成工程]
実施例1のALD法による被覆層形成工程について、更に詳細に説明する。
なお、本実施例におけるALD装置の反応容器の内径はφ300mmであり、試料の厚さは6mmである。
【0216】
(プリベーク工程)
まず、導電体層を有する半導体発光素子の表面に無機蛍光体の粒子層が形成された試料をオーブンに入れ、120℃で2時間加熱し、試料中の水分を蒸発させる。
【0217】
(試料設置工程)
次に、ALD装置の反応容器内に試料を設置し、反応容器の蓋を閉める。
【0218】
(成膜前保管工程)
次に、ロータリーポンプを用いて、反応容器内を低圧状態にする。反応容器内の圧力設定は、10torr(13332Pa)とする。また、反応容器内に窒素ガス流を導入する。窒素ガスの流量は20sccm(33×10
−3Pa・m
3/s)とし、安定化及び最終的な水分除去のためにこの状態を約60分間維持する。
また、反応容器の温度は、150℃とし、以降の成膜中は、この温度を維持する。
【0219】
(第1原料供給工程)
反応容器内に、第1原料として、H
2Oを0.015秒間導入する。
試料とH
2Oとを反応させるため、反応容器と真空ラインとを接続するバルブであるストップバルブを閉じ、試料をH
2Oに15秒間暴露させる。
【0220】
(第1排気工程)
ストップバルブを開け、窒素ガス流で反応容器内から未反応のH
2O及び副生成物を60秒間排気する。
【0221】
(第2原料供給工程)
反応容器内に、第2原料として、TMAを0.015秒間導入する。
試料とTMAとを反応させるため、反応容器のストップバルブを閉じ、試料をTMAに15秒間暴露させる。
【0222】
(第2排気工程)
ストップバルブを開け、窒素ガス流で反応容器内から未反応のTMA及び副生成物を32秒間排気する。
【0223】
前記した第1原料供給工程から第2排気工程までを1サイクルとして、所望の厚さのAl
2O
3膜となるように、このサイクルを繰り返す。本実施例では、6000サイクルで、厚さ約1μmのAl
2O
3膜が形成される。
【0224】
成膜完了後に、ストップバルブを閉じ、窒素ガス流を流量100sccm(169×10
−3Pa・m
3/s)とし、反応容器内の圧力を常圧にしてから試料を取り出す。
以上の手順により、被覆層としてAl
2O
3膜が形成される。
【0225】
<実施例2>
実施例2として、
図3に示した実施形態に係る発光装置1Aの他の製造例について説明する。
【0226】
半導体発光素子の表面にITOからなる導電体層を、マスキングをして形成箇所を限定して形成する。マスキングを除去した後の半導体発光素子に、実施例1と同様の方法で、フッ化物蛍光体の粒子層を積層する。洗浄、乾燥後、ALD法により、約1μmの厚さのAl
2O
3層を形成する。
【0227】
本実施例における導電体層は透光性を有するため、導電体層透明化工程を行うことなく、透過型の発光装置を作製することができる。
【0228】
<実施例3>
実施例3として、YAG系の無機蛍光体を用い、被覆層としてALD法によりAl
2O
3層を形成することで作製した発光装置について、蛍光体層の断面を撮影した写真画像から、画像解析手法により蛍光体層の空隙率を測定した。以下、空隙率を測定する手順について説明する。
【0229】
なお、本実施例で用いた無機蛍光体の平均粒径は、F.S.S.S.No法による測定で3.6μmであった。また、コールターカウンターを用いて測定した粒度分布から求めた体積分布による中心粒径は6.2μmであった。
【0230】
まず、
図12に示すように、作製した発光装置を分割して、蛍光体層の断面を走査型電子顕微鏡で撮影する。
図12において、粒状の塊の薄い灰色部分が無機蛍光体31であり、粒状の塊の外縁部の濃い灰色部分が被覆層32である。
なお、
図12の右下部に表示されている目盛りは、1目盛りが1μmを示し、被覆層32の膜厚は、約300nmである。
【0231】
次に、
図12に示した写真画像から測定対象とする領域Aを切出し、
図13に示すように、被覆層32の部分を黒く塗りつぶす。
【0232】
次に、粒子解析ソフトを用いて、黒く塗りつぶした被覆層32に囲まれた領域を、
図14に示すように黒く塗りつぶし、この黒く塗りつぶした領域を、被覆層32を含む蛍光体の領域(31+32)とする。ここで、黒く塗りつぶした領域以外を空隙33とする。そして、黒く塗りつぶした領域の面積(画素数)を、領域Aの面積(画素数)で除することで、被覆層32を含む無機蛍光体(31+32)の含有率が求められ、その残余の部分として空隙率が求められる。
【0233】
本実施例では、無機蛍光体の含有率が75.4%であった。従って、空隙率は24.6%であった。
【0234】
以上のように、本発明の発光装置は、半導体発光素子の表面を無機材料で被覆することで、高電流、高温下でも劣化の少ない発光装置とすることができる。また、低電流、定温下では劣化し易い無機蛍光体を選択することが可能となり、出力変化を抑えることができる。また半導体発光素子に直接原子層体積法を施すことで、エピタキシャル層のダメージやダイス分断面の電極層やむき出しの各層を保護することも可能となる。
更に、無機材料で被覆することで、無機蛍光体間を樹脂で接着させている場合と異なり、材料の線膨張係数が小さいため、膨張収縮や接着の変化による発光装置の発光色の変化を抑えることが可能である。