特許第6051632号(P6051632)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6051632
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】研磨剤及び基板の研磨方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20161219BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20161219BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   H01L21/304 622D
   B24B37/00 H
   C09K3/14 550C
   C09K3/14 550Z
【請求項の数】8
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2012-156809(P2012-156809)
(22)【出願日】2012年7月12日
(65)【公開番号】特開2013-42123(P2013-42123A)
(43)【公開日】2013年2月28日
【審査請求日】2015年6月19日
(31)【優先権主張番号】特願2011-158993(P2011-158993)
(32)【優先日】2011年7月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三嶋 公二
(72)【発明者】
【氏名】飛田 文子
【審査官】 鈴木 和樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−091248(JP,A)
【文献】 特開2011−023448(JP,A)
【文献】 特開2009−278061(JP,A)
【文献】 特開2008−112969(JP,A)
【文献】 国際公開第2003/103033(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/071351(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 37/00
C09K 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フタル酸化合物、イソフタル酸化合物及び下記一般式(I)で表されるアルキルジカルボン酸化合物並びにこれらの塩及び酸無水物からなる群より選択される少なくとも1種からなるカルボン酸誘導体と、金属防食剤と、水とを含有し、pHが4.0以下である、コバルト元素を含む層を研磨するための研磨剤。
HOOC−R−COOH・・・(I)
(上記一般式(I)中、Rは炭素数が4〜10であるアルキレン基を示す。)
【請求項2】
フタル酸化合物、イソフタル酸化合物及び下記一般式(I)で表されるアルキルジカルボン酸化合物並びにこれらの塩及び酸無水物からなる群より選択される少なくとも1種のカルボン酸誘導体と、金属防食剤と、水とを含有し、pHが4.0以下であり、50℃におけるコバルトに対するエッチング速度が10.0nm/min以下である、コバルト元素を含む層を研磨するための研磨剤。
HOOC−R−COOH・・・(I)
(上記一般式(I)中、Rは炭素数が4〜10であるアルキレン基を示す。)
【請求項3】
前記金属防食剤はトリアゾール骨格を有する化合物を含有する請求項1又は請求項2に記載の研磨剤。
【請求項4】
更に酸化剤を含有する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の研磨剤。
【請求項5】
更に有機溶剤を含有する請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の研磨剤。
【請求項6】
更に水溶性ポリマーを含有する請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の研磨剤。
【請求項7】
更に砥粒を含有する請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の研磨剤。
【請求項8】
基板の少なくとも一方の表面に形成されたコバルト元素を含む被研磨膜を、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の研磨剤を用いて研磨して、コバルト元素を含む余分な部分を除去する基板の研磨方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨剤及び基板の研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路(以下、「LSI」と記す。)の高集積化、高性能化に伴って、新たな微細加工技術が開発されている。化学機械研磨(以下、「CMP」と記す。)法もその一つであり、LSI製造工程、特に多層配線形成工程における絶縁体の平坦化、金属プラグ形成、埋め込み配線形成等において頻繁に利用される技術である。
【0003】
また、最近は、LSIを高性能化するために、配線材料として銅合金の利用が試みられている。しかし、銅合金は従来のアルミニウム合金配線の形成で頻繁に用いられたドライエッチング法による微細加工が困難である。そこで、例えば、予め溝が形成された絶縁膜上に銅合金薄膜を堆積して埋め込み、溝部以外の銅合金薄膜を、CMPにより除去して埋め込み配線を形成する、いわゆるダマシン法が主に採用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
金属のCMPでの一般的な方法は、円形の研磨定盤(プラテン)上に研磨布を貼り付け、研磨布の表面を液状の金属用研磨剤で浸し、基板の金属膜を形成した面を押し付けて、その裏面から所定の圧力(以下、「研磨圧力」と記す。)を加えた状態で研磨定盤を回し、金属用研磨剤と金属膜の凸部との機械的摩擦によって、凸部の金属膜を除去するものである。
【0005】
CMPに用いられる金属用研磨剤は、一般には酸化剤及び砥粒を含有し、必要に応じて更に金属溶解剤、金属防食剤等が添加される。これらを添加した場合は、金属溶解剤によって金属膜表面を酸化し、その酸化層を砥粒によって削り取るのが基本的なメカニズムと考えられている。凹部となっている金属膜表面の酸化層は、研磨布にあまり触れず、研磨砥粒による削り取りの効果が及ばないので、CMPの進行と共に凸部の金属層が除去されて、基板表面が平坦化されると考えられている。
【0006】
一方、図1(a)に示すように、銅又は銅合金などの配線用金属からなる導電性物質層5の下層には、シリコン基板1上に形成した絶縁体2中への銅拡散防止や密着性向上のためのバリア金属導体膜(以下、「バリア金属層3」ともいう)が形成される。したがって、配線用金属を埋め込む配線部以外では、露出したバリア金属層3をCMPにより取り除く必要がある。
【0007】
そこで、図1(a)に示される状態から図1(b)に示される状態まで導電性物質層5を研磨する「第1の研磨工程」と、図1(b)に示される状態から図1(c)に示される状態までバリア金属層3を研磨する「第2の研磨工程」とに分け、それぞれ異なる研磨剤で研磨を行う2段研磨方法が一般に適用されている。
【0008】
ところで、デザインルールの微細化とともに、前記配線形成工程の各層も薄くなる傾向がある。しかしながら前記バリア金属層3は、薄くなることにより、例えば銅又は銅合金及びこれらの酸化物から選ばれた少なくとも1種を含む導電性物質の拡散を防止する効果が低下する。また、配線幅が狭くなることで、導電性物質の埋め込み性が低下し、配線部にボイドと呼ばれる空孔が発生する。さらに、導電性物質層との密着性も低下する傾向がある。このため、図1におけるバリア金属層3に用いる金属をCo(コバルト)元素を含む金属に置き換えることが検討されている。また、図2(a)に示すように、バリア金属層3と導電性物質層5の間に、コバルト元素を含む金属の層(以下、「コバルト層4」ともいう。)を介在させることも提案されている。コバルト層4を用いることで導電性物質の拡散が抑えられる上、コバルトは導電性物質として広く用いられている銅との親和性が高いため、銅層の配線部への埋め込み性が向上し、さらに銅層との密着性を補うことができる。
【0009】
バリア金属層としてコバルトを用いる場合、金属用研磨剤が、余分のコバルト層を除去できる必要がある。金属用研磨剤としては、種々のものが知られているが、一方で、ある金属用研磨剤があったときに、それがどのような金属も除去できるとは限らない。従来の金属用研磨剤としては、銅、タンタル、チタン、タングステン、アルミニウム等の金属を研磨対象(余分の部分を除去する対象)とするものが知られているが、コバルトを研磨対象とする研磨剤は余り知られていない。
【0010】
しかしながら、コバルトは、従来配線用金属として使用されてきた銅等の導電性物質と比較して腐食性が強いため、従来の研磨剤をそのまま使用すると、コバルトが過度に浸食(エッチング)されたり、配線層にスリットが生じたりするため、バリア金属層としての機能を果たさずに導電性金属イオンを拡散する懸念がある。絶縁体に金属イオンが拡散した場合、半導体デバイスはショートの可能性が高くなる。一方で、これを防ぐために、防食作用の強い防食剤を添加したり、防食剤の添加量を増やしたりすると、全体の研磨速度が低下してしまうという課題あった。
【0011】
このような課題に対して、四員環〜六員環の複素環式化合物であって、二重結合を2つ以上含み、窒素原子を1つ以上含む、特定の金属防食剤を用いる研磨剤が知られている(例えば、特許文献2参照。)。このような研磨剤によれば、配線層を保護しつつ、配線層にスリットが入るのを防ぐことが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平2−278822号公報
【特許文献2】特開2011−91248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、金属防食剤のみによる作用では、コバルトのエッチングを抑制できるものの、同時にコバルトに対して高い研磨速度を維持することは容易ではなく、コバルトに対する研磨速度をより向上させることが求められてきた。本発明は、前記の課題を解決しようとするものであって、コバルト層に対する良好な研磨速度を保ちながら、コバルト層の腐食を抑制して、スリットの発生を抑制する研磨剤及びそれを用いる基板の研磨方法を提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような従来の問題点を解決するために鋭意検討した結果、本発明者らは、特定のカルボン酸誘導体を使用することによって、コバルト層に対する良好な研磨速度を保ちながら、コバルト層の腐食抑制性に優れスリットの発生を抑制できることを見いだした。
【0015】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> フタル酸化合物、イソフタル酸化合物及び下記一般式(I)で表されるアルキルジカルボン酸化合物並びにこれらの塩及び酸無水物からなる群より選択される少なくとも1種からなるカルボン酸誘導体と、金属防食剤と、水とを含有し、pHが4.0以下である、コバルト元素を含む層を研磨するための研磨剤である。
HOOC−R−COOH・・・(I)
(上記一般式(I)中、Rは炭素数が4〜10であるアルキレン基を示す。)
このような研磨剤とすることによって、コバルト層に対する良好な研磨速度を保ちながら、腐食抑制性を向上させることができる。
【0016】
<2> フタル酸化合物、イソフタル酸化合物及び下記一般式(I)で表されるアルキルジカルボン酸化合物並びにこれらの塩及び酸無水物からなる群より選択される少なくとも1種以上のカルボン酸誘導体該と、金属防食剤と、水とを含有し、pHが4.0以下であり、50℃の研磨剤におけるコバルトに対するエッチング速度が10.0nm/min以下である、コバルト元素を含む層を研磨するための研磨剤である。
HOOC−R−COOH・・・(I)
(上記一般式(I)中、Rは炭素数が4〜10であるアルキレン基を示す。)
このような研磨剤とすることによって、コバルト層に対する良好な研磨速度を保ちながら、腐食抑制性を向上させることができる。
【0017】
<3> 前記金属防食剤はトリアゾール骨格を有する化合物を含有する前記<1>又は<2>に記載の研磨剤である。
これにより、腐食性をより効果的に抑制することができる。
【0018】
<4> 更に酸化剤を含有する前記<1>〜<3>のいずれか1つに記載の研磨剤である。
これにより、被研磨膜がコバルト層以外の層を含む場合に、コバルト層以外の層の研磨速度をより向上させることができる。
【0019】
<5> 更に有機溶剤を含有する前記<1>〜<4>のいずれか1つに記載の研磨剤である。
これにより、被研磨膜がコバルト層以外の層を含む場合に、コバルト層以外の層に対する濡れ性が向上するため、研磨速度をより向上させることができる。
【0020】
<6> 更に水溶性ポリマーを含有する前記<1>〜<5>のいずれか1つに記載の研磨剤である。
これにより、被研磨面が保護されて腐食を抑制し、傷等のディフェクト発生を低減することができる。
【0021】
<7> 更に砥粒を含有する前記<1>〜<6>のいずれか1つに記載の研磨剤である。
これにより、被研磨膜がコバルト層以外の層を含む場合に、コバルト層以外の層の研磨速度をより向上させることができる。
【0022】
<8> 基板の少なくとも一方の表面に形成されたコバルト元素を含む被研磨膜を、前記<1>〜<7>のいずれか1つに記載の研磨剤を用いて研磨して、コバルト元素を含む余分な部分を除去する基板の研磨方法である。
本発明の研磨方法によれば、コバルト元素を含む被研磨膜を高速にかつ過度な腐食を抑制しつつ研磨することが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、コバルト層に対する良好な研磨速度を保ちながら、コバルト層の腐食抑制性に優れる研磨剤及びそれを用いる基板の研磨方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】従来のダマシンプロセスにおける配線形成過程を示す模式断面図である。
図2】コバルト層を用いたダマシンプロセスにおける配線形成過程を示す模式断面図である。
図3】本発明の研磨方法による研磨後の基板の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。さらに研磨剤中の各成分の含有量は、研磨剤中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、研磨剤中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0026】
以下、本発明のコバルト元素を含む層を研磨するための研磨剤(以下、単に「研磨剤」ともいう。)及び基板の研磨方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0027】
[研磨剤]
本発明の研磨剤は、フタル酸化合物、イソフタル酸化合物及び下記一般式(I)で表されるアルキルジカルボン酸化合物並びにこれらの塩及び無水物からなる群より選択される少なくとも1種からなるカルボン酸誘導体と、金属防食剤と、水とを含有し、pHが4.0以下である。
HOOC−R−COOH・・・(I)
(上記一般式(I)中、Rは炭素数が4〜10であるアルキレン基を示す。)
【0028】
<カルボン酸誘導体>
本発明の研磨剤は、フタル酸化合物、イソフタル酸化合物及び上記一般式(I)で表されるジカルボン酸化合物(以下、これらを「特定ジカルボン酸化合物」ともいう)並びにこれらの塩及び酸無水物からなる群より選択される少なくとも1種であるカルボン酸誘導体(以下、「特定カルボン酸誘導体」ともいう。)を含む。前記特定カルボン酸誘導体は、1種類単独で、もしくは2種類以上混合して用いることができる。無数に存在するカルボン酸及びカルボン酸誘導体の中から、前記特定カルボン酸誘導体を選択することにより、コバルト層に対する良好な研磨速度を保ちながら、適度にエッチング速度が制御されて腐食が抑制され、良好な研磨面を得ることができる。更により厳しい条件下(例えば50℃)であっても、コバルト層のエッチング速度がより効果的に抑制され、優れた腐食抑制性が達成できる。ここで腐食抑制性に優れるとは、被研磨面において、コバルト層がエッチングされたり、配線層にスリットが生じたりすることが効果的に抑制されることを含む。
【0029】
このような効果が得られる理由は明らかではないが、本発明者は次のように推察している。すなわち、前記特定カルボン酸誘導体は、例えば金属溶解剤として機能し、コバルト層に対する研磨速度を向上させる効果を有していると考えられる。前記特定カルボン酸誘導体は同時に、コバルト原子に対して二つのカルボキシ基がキレートして環状構造をとることにより、安定な錯体状態を形成するためエッチング速度を制御して、被研磨面における腐食を抑制する機能をも有すると推測される。なお、この安定な錯体状態の形成には、後述する金属防食剤も寄与している可能性もある。
【0030】
前記特定カルボン酸誘導体は、コバルト層に対する研磨速度、エッチング速度の制御性及び腐食抑制性の観点から、特定ジカルボン酸化合物、これらの塩及びこれらの酸無水物からなる群より選択される。前記特定カルボン酸誘導体以外の酸性化合物では、コバルト層に対する良好な研磨速度と、コバルト層のエッチング速度の抑制との両立が難しい場合がある。これは、前述のように安定な錯体状態の形成が重要であり、酸性化合物の立体構造が重要なファクターとなるためと考えられる。また、前記特定カルボン酸誘導体を含んでいても、それ以外の他の酸性化合物を含有すると、コバルト層のエッチング速度が顕著に上昇してしまう場合がある。これは、他の酸性化合物によるコバルト層のエッチング効果が、前述のような錯体状態の形成より優先してしまうためと考えられる。
【0031】
本発明の研磨剤の第一の態様は、前記カルボン酸誘導体が、フタル酸化合物、イソフタル酸化合物及び上記一般式(I)で表されるジカルボン酸化合物並びにこれらの塩及び酸無水物からなる群より選択される少なくとも1種からなるものである。但し、前記カルボン酸誘導体は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、フタル酸化合物、イソフタル酸化合物及び上記一般式(I)で表されるジカルボン酸化合物以外のジカルボン酸化合物、その塩及びその酸無水物からなる群より選ばれる少なくとも1種であるその他のカルボン酸誘導体を含んでいてもよい。すなわち前記カルボン酸誘導体は、フタル酸化合物、イソフタル酸化合物及び上記一般式(I)で表されるジカルボン酸化合物並びにこれらの塩及び酸無水物からなる群より選択される少なくとも1種である特定カルボン酸誘導体から実質的に構成されるものである。ここで「実質的に」とは、本発明の効果が著しく損なわれない範囲であることであり、具体的には前記その他のカルボン酸誘導体の含有率が特定カルボン酸誘導体の総質量に対して10質量%以下であることを意味する。さらに前記その他のカルボン酸誘導体の含有率は、特定カルボン酸誘導体の総質量に対して5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
【0032】
同様の観点で、本発明の研磨剤の第二の態様は、前記カルボン酸誘導体が、フタル酸化合物、イソフタル酸化合物及び上記一般式(I)で表されるジカルボン酸化合物並びにこれらの塩及び酸無水物からなる群より選択される少なくとも1種を含有するものであって、50℃の研磨剤におけるコバルトに対するエッチング速度が10.0nm/min以下である。第二の態様において、前記カルボン酸誘導体は、フタル酸化合物、イソフタル酸化合物及び上記一般式(I)で表されるジカルボン酸化合物以外のジカルボン酸化合物、その塩及びその酸無水物からなる群より選ばれる少なくとも1種であるその他のカルボン酸誘導体を含んでいてもよいが、50℃の研磨剤におけるコバルトに対するエッチング速度が10.0nm/minを超えない必要がある。前記その他のカルボン酸誘導体の含有率の好ましい範囲については、前記第一の態様と同様である。
【0033】
50℃の研磨剤におけるコバルトに対するエッチング速度は、下記のようにして測定することができる。すなわち、シリコン基板上に厚さ0.3μmのコバルト層を形成した20mm角のチップ(評価用チップ)を用意し、研磨剤50gを入れたビーカの中に前記評価用チップを入れ、50℃の恒温槽に1分間浸漬し、浸漬前後のコバルト層の膜厚を測定することによって、(浸漬前のコバルト層の膜厚−浸漬後のコバルト層の膜厚)/1分[nm/min]として求めることができる。
【0034】
本発明の研磨剤の第二の態様において、前記エッチング速度は10.0nm/min以下であるが、より腐食抑制性を向上させる観点で、9.0nm/min以下が好ましく、8.0nm/min以下がより好ましい。
【0035】
また、本発明の研磨剤の第一の態様においても、より腐食抑制性を向上させる観点で、前記エッチング速度が10.0nm/min以下であることが好ましく、9.0nm/min以下がより好ましく、8.0nm/min以下が更に好ましい。
【0036】
前記特定ジカルボン酸化合物のうち、フタル酸化合物には、フタル酸(ベンゼン−1,2−ジカルボン酸)及びベンゼン環上に1以上の置換基を有するフタル酸誘導体の少なくとも1種が含まれる。前記置換基としては、メチル基、アミノ基、ニトロ基等が挙げられる。中でも、ニトロ基及びメチル基の少なくとも一方が好ましく、ニトロ基がより好ましい。
【0037】
前記フタル酸化合物としては、具体的には、フタル酸、3-メチルフタル酸、4−メチルフタル酸等のアルキルフタル酸;3−アミノフタル酸、4−アミノフタル酸等のアミノフタル酸;3−ニトロフタル酸、4−ニトロフタル酸等のニトロフタル酸などが挙げられる。中でも、ニトロ基を置換基として有するフタル酸化合物(ニトロフタル酸)が好ましく、3−ニトロフタル酸及び4−ニトロフタル酸の少なくとも一方がより好ましく、3−ニトロフタル酸が特に好ましい。前記フタル酸化合物は、酸無水物として用いられてもよく、塩として用いられてもよい。
【0038】
前記イソフタル酸化合物には、イソフタル酸(ベンゼン−1,3−ジカルボン酸)及びベンゼン環上に1以上の置換基を有するイソフタル酸誘導体の少なくとも1種が含まれる。前記置換基としては、ニトロ基、メチル基、アミノ基、ヒドロキシ基等が挙げられる。中でも、ニトロ基が好ましい。
【0039】
前記イソフタル酸化合物としては、具体的には、イソフタル酸、5−ニトロイソフタル酸等が挙げられる。前記イソフタル酸化合物は塩として用いられてもよい。
【0040】
前記一般式(I)で表されるアルキルジカルボン酸化合物は、炭素数4〜10のアルキレン基を有するアルキルジカルボン酸化合物であればよい。なお、前記炭素数はアルキレン基の炭素数であり、カルボン酸基に含まれる炭素原子は前記炭素数として数えない。前記アルキレン基は、環状、直鎖状及び分岐鎖状のいずれであってもよい。中でも直鎖状であることが好ましい。コバルト層に対する研磨速度、エッチング速度の制御性及び腐食抑制の観点から、炭素数は4〜8であることが好ましく、4〜6であることがより好ましい。
【0041】
炭素数4〜10のアルキレン基を有するアルキルジカルボン酸として具体的には、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸等が挙げられる。中でもアジピン酸、ピメリン酸が好ましく、ピメリン酸がより好ましい。
【0042】
前記カルボン酸誘導体の含有量は、研磨剤の総質量を基準として、0.001質量%〜10質量%の範囲であることが好ましい。前記カルボン酸誘導体の含有量を前記範囲に調整することにより、コバルト層の近傍に設けられたコバルト層以外の層(例えば、図2(a)に示す導電性物質層5である銅等の配線用金属や、バリア金属層3など)の良好な研磨速度を得ることができる。
【0043】
前記カルボン酸誘導体の含有量は、研磨速度の観点で、0.01質量%以上がより好ましく、0.03質量%以上が更に好ましく、0.05質量%以上が特に好ましい。また、前記ジカルボン酸の含有量は、コバルト層に対するエッチング抑制効果及び腐食抑制性の観点で、5.0質量%以下が好ましく、3.0質量%以下がより好ましく、1.0質量%以下が更に好ましく、0.7質量%以下が非常に好ましく、0.5質量%以下が極めて好ましい。
【0044】
前記研磨剤は、研磨速度の観点から、カルボン酸誘導体として、アルキルフタル酸、アミノフタル酸、ニトロフタル酸、イソフタル酸、5−ニトロイソフタル酸、及び一般式(I)で表され、Rが炭素数4〜8の直鎖状アルキレン基であるアルキルジカルボン酸化合物、並びにこれらの塩及び酸無水物からなる群より選択される少なくとも1種を0.01質量%以上含むことが好ましい。
【0045】
また前記研磨剤は、コバルト層に対するエッチング効果抑制の観点から、カルボン酸誘導体として、アルキルフタル酸、アミノフタル酸、ニトロフタル酸、イソフタル酸、5−ニトロイソフタル酸、及び一般式(I)で表され、Rが炭素数4〜8の直鎖状アルキレン基であるアルキルジカルボン酸化合物、並びにこれらの塩及び酸無水物からなる群より選択される少なくとも1種を5.0質量%以下含むことが好ましい。
【0046】
<金属防食剤>
本発明の研磨剤に含まれる金属防食剤としては特に制限はなく、金属に対する防食作用を有する化合物として従来公知のものがいずれも使用可能である。具体的には、トリアゾール化合物、ピリジン化合物、ピラゾール化合物、ピリミジン化合物、イミダゾール化合物、グアニジン化合物、チアゾール化合物、テトラゾール化合物、トリアジン化合物、ヘキサメチレンテトラミンから選択される少なくとも1種を用いることができる。ここで「化合物」とは、その骨格を有する化合物の総称であり、例えばトリアゾール化合物とはトリアゾール骨格を有する化合物を意味する。
【0047】
トリアゾール化合物としては、例えば、1,2,3−トリアゾ−ル、1,2,4−トリアゾ−ル、3−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾ−ル、ベンゾトリアゾ−ル、1−ヒドロキシベンゾトリアゾ−ル、1−ジヒドロキシプロピルベンゾトリアゾ−ル、2,3−ジカルボキシプロピルベンゾトリアゾ−ル、4−ヒドロキシベンゾトリアゾ−ル、4−カルボキシ−1H−ベンゾトリアゾ−ル、4−カルボキシ−1H−ベンゾトリアゾ−ルメチルエステル(1H−ベンゾトリアゾール−4−カルボン酸メチル)、4−カルボキシ−1H−ベンゾトリアゾ−ルブチルエステル(1H−ベンゾトリアゾール−4−カルボン酸ブチル)、4−カルボキシ−1H−ベンゾトリアゾ−ルオクチルエステル(1H−ベンゾトリアゾール−4−カルボン酸オクチル)、5−ヘキシルベンゾトリアゾ−ル、(1,2,3−ベンゾトリアゾリル−1−メチル)(1,2,4−トリアゾリル−1−メチル)(2−エチルヘキシル)アミン、トリルトリアゾ−ル、ナフトトリアゾ−ル、ビス[(1−ベンゾトリアゾリル)メチル]ホスホン酸、3H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−b]ピリジン−3−オール、1H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−b]ピリジン、1−アセチル−1H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−b]ピリジン、3−ヒドロキシピリジン、1,2,4−トリアゾロ[1,5−a]ピリミジン、1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−2H−ピリミド[1,2−a]ピリミジン、2−メチル−5,7−ジフェニル−[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリミジン、2−メチルサルファニル−5,7−ジフェニル−[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリミジン、2−メチルサルファニル−5,7−ジフェニル−4,7−ジヒドロ−[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリミジン等が挙げられる。なお、一分子中にトリアゾール骨格と、それ以外の骨格を有する場合には、トリアゾール化合物と分類するものとする。
【0048】
ピリジン化合物としては、例えば、8−ヒドロキシキノリン、プロチオナミド、2−ニトロピリジン−3−オール、ピリドキサミン、ニコチンアミド、イプロニアジド、イソニコチン酸、ベンソ[f]キノリン、2,5−ピリジンジカルボン酸、4−スチリルピリジン、アナバシン、4−ニトロピリジン−1−オキシド、ピリジン−3−酢酸エチル、キノリン、2−エチルピリジン、キノリン酸、アレコリン、シトラジン酸、ピリジン−3−メタノール、2−メチル−5−エチルピリジン、2−フルオロピリジン、ペンタフルオロピリジン、6−メチルピリジン−3−オール、ピリジン−2−酢酸エチル等が挙げられる。
【0049】
ピラゾール化合物としては、例えば、ピラゾール、1−アリル−3,5−ジメチルピラゾール、3,5−ジ(2−ピリジル)ピラゾール、3,5−ジイソプロピルピラゾール、3,5−ジメチル−1−ヒドロキシメチルピラゾール、3,5−ジメチル−1−フェニルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3−アミノ−5−ヒドロキシピラゾール、4−メチルピラゾール、N−メチルピラゾール、3−アミノピラゾール、3−アミノピラゾール等が挙げられる。
【0050】
ピリミジン化合物としては、ピリミジン、1,3−ジフェニル−ピリミジン−2,4,6−トリオン、1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、2,4,5,6−テトラアミノピリミジンサルフェイト、2,4,5−トリヒドロキシピリミジン、2,4,6−トリアミノピリミジン、2,4,6−トリクロロピリミジン、2,4,6−トリメトキシピリミジン、2,4,6−トリフェニルピリミジン、2,4−ジアミノ−6−ヒドロキシルピリミジン、2,4−ジアミノピリミジン、2−アセトアミドピリミジン、2−アミノピリミジン、4−アミノピラゾロ[3,4−d]ピリミジン等が挙げられる。
【0051】
イミダゾール化合物としては、例えば、1,1′−カルボニルビス−1H−イミダゾール、1,1′−オキサリルジイミダゾール、1,2,4,5−テトラメチルイミダゾール、1,2−ジメチル−5−ニトロイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−(3−アミノプロピル)イミダゾール、1−ブチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール、ベンズイミダゾール等が挙げられる。
【0052】
グアニジン化合物としては、例えば、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、1,2,3−トリフェニルグアニジン、1,3−ジ−o−トリルグアニジン、1,3−ジフェニルグアニジン等が挙げられる。
【0053】
チアゾール化合物としては、例えば、2−メルカプトベンゾチアゾール、2,4−ジメチルチアゾール等が挙げられる。
【0054】
テトラゾール化合物としては、例えば、テトラゾール、5−メチルテトラゾール、5−アミノ−1H−テトラゾール、1−(2−ジメチルアミノエチル)−5−メルカプトテトラゾール等が挙げられる。
【0055】
トリアジン化合物としては、例えば、3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−1,2,4−トリアジン等が挙げられる。
【0056】
前記金属防食剤は1種類を単独で、又は2種類以上を混合して用いることができる。前記金属防食剤の含有量は、コバルト元素を含む被研磨膜に対して良好な研磨速度を得ることができる点で、研磨剤の総質量中に、0.001質量%〜10質量%であることが好ましい。同様の観点で、前記金属防食剤の含有量は、0.01質量%以上であることがより好ましく、0.02質量%以上であることが更に好ましい。また、同様の観点で、前記金属防食剤の含有量は、5.0質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%であることが更に好ましい。
【0057】
前記金属防食剤は、前記カルボン酸誘導体と組み合わせることにより、厳しい温度条件下(例えば、50℃)でもコバルト層のエッチング速度を顕著に抑制しつつ、コバルト層を適度な速度で研磨して、コバルト層の腐食抑制を可能とする。これは、例えば金属防食剤が前記特定ジカルボン酸化合物との共存下において、優れた錯体形成剤と膜保護剤としての機能を発揮するためと考えられる。
【0058】
このような観点で、前記金属防食剤の中でも、トリアゾール化合物、ピリジン化合物、イミダゾール化合物、テトラゾール化合物、トリアジン化合物及びヘキサメチレンテトラミンからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、3H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−b]ピリジン−3−オール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、1H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−b]ピリジン、ベンゾトリアゾール等のトリアゾール化合物、3−ヒドロキシピリジン、ベンズイミダゾール、5−アミノ−1H−テトラゾール、3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−1,2,4−トリアジン及びヘキサメチレンテトラミンからなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0059】
前記研磨剤におけるカルボン酸誘導体と金属防食剤との比率(カルボン酸誘導体/金属防食剤)は、エッチング速度と研磨速度を良好に制御する観点から、質量比で10/1〜1/5の範囲であることが好ましく、7/1〜1/5の範囲であることがより好ましく、5/1〜1/5の範囲であることが更に好ましく、5/1〜1/1の範囲であることが特に好ましい。
【0060】
更に前記研磨剤は、エッチング速度と研磨速度を良好に制御する観点から、カルボン酸誘導体と、トリアゾール化合物、ピリジン化合物、イミダゾール化合物、テトラゾール化合物、トリアジン化合物及びヘキサメチレンテトラミンからなる群より選択される少なくとも1種の金属防食剤との比率(カルボン酸誘導体/金属防食剤)が10/1〜1/5であることが好ましく、
前記カルボン酸誘導体と、トリアゾール化合物、ピリジン化合物、イミダゾール化合物、テトラゾール化合物、トリアジン化合物及びヘキサメチレンテトラミンからなる群より選択される少なくとも1種の金属防食剤との比率(カルボン酸誘導体/金属防食剤)が5/1〜1/5であることがより好ましく、
前記カルボン酸誘導体と、3H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−b]ピリジン−3−オール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、1H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−b]ピリジン、ベンゾトリアゾール等のトリアゾール化合物、3−ヒドロキシピリジン、ベンズイミダゾール、5−アミノ−1H−テトラゾール、3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−1,2,4−トリアジン及びヘキサメチレンテトラミンからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属防食剤との比率(カルボン酸誘導体/金属防食剤)が5/1〜1/1であることが更に好ましい。
【0061】
<酸化剤>
前記研磨剤は、少なくとも1種の酸化剤を更に含むことが好ましい。酸化剤を更に含むことでコバルト層以外の層の研磨速度をより向上させることができる。前記酸化剤は、特に制限はなく、通常用いられる酸化剤から適宜選択することができる。具体的には、過酸化水素、ペルオキソ硫酸塩、硝酸、過ヨウ素酸カリウム、次亜塩素酸、オゾン水等が挙げられ、中でも過酸化水素が好ましい。これら金属酸化剤は、1種類単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。
【0062】
研磨剤が酸化剤を含む場合、金属酸化剤の含有量は、研磨剤の総質量中に、0.01質量%〜50質量%とすることが好ましい。前記含有量は、金属の酸化が不充分となり、研磨速度が低下することを防ぐ観点から、0.02質量%以上が好ましく、0.05質量%以上が更に好ましい。また、被研磨面に荒れが生じるのを防ぐことができる点で、30質量%以下がより好ましく、15質量%以下が更に好ましい。
【0063】
<有機溶剤>
前記研磨剤は、さらに有機溶剤が含まれてもよい。有機溶剤の添加により、コバルト層の近傍に設けられたコバルト層以外の層の濡れ性を向上させることができ、研磨速度をより向上させることができる。前記有機溶剤としては、特に制限はないが、水溶性のものが好ましい。ここで水溶性とは、水100gに対して25℃において0.1g以上溶解するものとして定義される。
【0064】
前記有機溶剤としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等の炭酸エステル溶剤;ブチルラクトン、プロピルラクトン等のラクトン溶剤;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ポリエチレンオキサイド、エチレングリコールモノメチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエーテル溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、イソプロパノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール等のアルコール溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶剤;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、酢酸エチル、乳酸エチル、スルホラン等のその他の有機溶剤などが挙げられる。
【0065】
また、有機溶剤はグリコール溶剤の誘導体であってもよい。例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールモノエーテル溶剤;エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジプロピルエーテル、トリエチレングリコールジプロピルエーテル、トリプロピレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、トリプロピレングリコールジブチルエーテル等のグリコールエーテル溶剤などが挙げられる。
【0066】
中でも、グリコール溶剤、グリコール溶剤の誘導体、アルコール溶剤及び炭酸エステル溶剤から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、アルコール溶剤から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。これら有機溶剤は、1種類単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。
【0067】
研磨剤が有機溶剤を含む場合、有機溶剤の含有量は、研磨剤の総質量中に、0.1質量%〜95質量%であることが好ましい。前記有機溶剤の含有量は、研磨剤の基板に対する濡れ性が低くなるのを防ぐ点で、0.2質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上が更に好ましい。また、研磨剤の調製、使用、廃液処理等が容易になる点で、50質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましい。
【0068】
<水溶性ポリマー>
前記研磨剤は、少なくとも1種の水溶性ポリマーを含むことが好ましい。これにより、腐食効果の抑制、膜表面の保護、ディフェクト発生の低減等がより効果的に達成できる。ここで水溶性とは、25℃において、水100gに対して0.1g以上溶解するものとして定義される。
【0069】
前記水溶性ポリマーとしては、カルボン酸基又はカルボン酸塩基を有する水溶性ポリマー等が挙げられる。このような水溶性ポリマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等のカルボン酸基を有するモノマーの単独重合体;当該重合体のカルボン酸基の部分がアンモニウム塩等のカルボン酸塩基となった単独重合体などが挙げられる。また、カルボン酸基を有するモノマーとカルボン酸塩基を有するモノマーとカルボン酸のアルキルエステル等の誘導体との共重合体も好ましい。水溶性ポリマーとして具体的には、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸のカルボン酸基の少なくとも一部がカルボン酸アンモニウム塩基に置換されたポリマー(以下、「ポリアクリル酸アンモニウム塩」という)等が挙げられる。
【0070】
また上記以外のその他の水溶性ポリマーとしては、例えば、アルギン酸、ペクチン酸、カルボキシメチルセルロース、寒天、カードラン、プルラン等の多糖類;ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリリシン、ポリリンゴ酸、ポリアミド酸、ポリアミド酸アンモニウム塩、ポリアミド酸ナトリウム塩、ポリグリオキシル酸等のポリカルボン酸及びその塩;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクロレイン等のビニル系ポリマーなどが挙げられる。
【0071】
研磨対象の基板が半導体集積回路用基板等の場合は、上記アルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン化物等による汚染を回避する視点から、上記水溶性ポリマーは、酸性基を有するポリマー又はそのアンモニウム塩であることが望ましい。但し、研磨対象の基板が、ガラス基板等である場合はその限りではない。
【0072】
前述した水溶性ポリマーの中でも、カルボン酸基又はカルボン酸塩基を有する水溶性ポリマー、ペクチン酸、寒天、ポリリンゴ酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンからなる群(エステル、塩を形成しうる場合は、これらを含む。)から選択される水溶性ポリマーが好ましく、カルボン酸基又はカルボン酸塩基を有する水溶性ポリマー(エステル、塩を含む。)がより好ましく、ポリアクリル酸(塩を含む。)が更に好ましく、ポリアクリル酸アンモニウム塩が特に好ましい。これらは1種類を単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。
【0073】
水溶性ポリマーの重量平均分子量は、500〜1,000,000が好ましく、1,000〜500,000がより好ましく、2,000〜200,000が更に好ましく、5,000〜150,000が特に好ましい。
【0074】
前記重量平均分子量は、例えば、以下の方法に基づいて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、標準ポリアクリル酸換算した値を使用して測定することができる。
【0075】
(条件)
試料:10μL
標準ポリアクリル酸:日立化成テクノサービス株式会社製 商品名:PMAA−32
検出器:株式会社日立製作所製、RI−モニター、商品名「L−3000」
インテグレーター:株式会社日立製作所製、GPCインテグレーター、商品名「D−2200」
ポンプ:株式会社日立製作所製、商品名「L−6000」
脱気装置:昭和電工株式会社製、商品名「Shodex DEGAS」
カラム:日立化成工業株式会社製、商品名「GL−R440」、「GL−R430」、「GL−R420」をこの順番で連結して使用
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
測定温度:23℃
流速:1.75mL/分
測定時間:45分
【0076】
研磨剤が水溶性ポリマーを含む場合、水溶性ポリマーの含有量は、研磨剤の総質量中に、0.001質量%〜10質量%であることが好ましい。良好な腐食抑制性を確保することができる点で、0.001質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.02質量%以上が更に好ましい。また、充分な研磨速度を維持することができる点で、10質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以下であることが更に好ましい。
【0077】
<砥粒>
前記研磨剤は、少なくとも1種の砥粒を含むことが好ましい。砥粒を含むことで、コバルト層の近傍に設けられたコバルト層以外の層の研磨速度を向上させることができる。
【0078】
主な砥粒としては、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、セリア、チタニア、ゲルマニア、炭化ケイ素等の無機物研磨粒子、ポリスチレン、ポリアクリル、ポリ塩化ビニル等の有機物研磨粒子などが挙げられる。これらの中でも、シリカ、アルミナ、ジルコニア、セリア、チタニア及びゲルマニアからなる群より選択される無機物研磨粒子が好ましく、特に、シリカ及びアルミナからなる群より選択される無機物研磨粒子がより好ましい。
【0079】
シリカ及びアルミナからなる群より選択される無機物研磨粒子の中でも、研磨剤中での分散安定性が良く、CMPにより発生する研磨傷(スクラッチ)の発生数の少ない点で、コロイダルシリカ又はコロイダルアルミナが好ましく、コロイダルシリカがより好ましい。これら砥粒は、1種類を単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。
【0080】
砥粒の平均粒径は、良好な研磨速度を得ることができる点で、10nm〜100nmであることが好ましく、20nm〜90nmであることがより好ましく、40nm〜80nmであることが更に好ましい。
【0081】
砥粒の平均粒径は、光回折散乱式粒度分布計(例えば、COULTER Electronics社製の商品名:COULTER N4SD)で測定した値である。Coulterの測定条件は、測定温度20℃、溶媒屈折率1.333(水に相当)、粒子屈折率Unknown(設定)、溶媒粘度1.005mPa・s(水に相当)、Run Time200sec、レーザ入射角90°であり、Intensity(散乱強度、濁度に相当)が5E+04〜4E+05の範囲に入るように、4E+05よりも高い場合には水で希釈して測定する。
【0082】
研磨剤が砥粒を含む場合、砥粒の含有量は、研磨剤の総質量中、1.0質量%以上が好ましく、3.0質量%以上がより好ましく、3.0質量%〜5.0質量%が更に好ましい。前記砥粒の含有量を、前記範囲に設定することにより、良好な研磨速度を得ることができる。
【0083】
<水>
本発明で用いられる水は、特に制限されるものではないが、純水を好ましく用いることができる。水は前述した研磨剤の構成材料の残部として配合されていればよく、含有量は特に制限はない。
【0084】
<その他>
前記研磨剤に添加できるその他の成分としては、例えば、界面活性剤、ビクトリアピュアブルー等の染料、フタロシアニングリーン等の顔料などの着色剤が挙げられる。
【0085】
前記研磨剤のpHは、4.0以下である。pHが4.0を越えると、配線用金属からなる導電性物質層及びコバルト層の研磨速度が低下する虞れがある。一方、徐々に配線用金属を腐食することが抑制され、また、酸性が強いことによる取り扱い難さも解決できる点で前記pHは1.0以上であることが好ましく、2.0以上であることがより好ましい。
【0086】
pHは、酸性化合物の添加量により調整することができる。また、アンモニア、水酸化ナトリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ性化合物の添加によっても調整可能である。
【0087】
前記研磨剤のpHの測定は、pHメータ(例えば、株式会社堀場製作所(HORIBA, Ltd.)製のModel F−51)で測定される。標準緩衝液(フタル酸塩pH緩衝液pH:4.21(25℃)、中性リン酸塩pH緩衝液pH6.86(25℃)、ホウ酸塩pH緩衝液pH:9.04(25℃))を用いて、3点校正した後、電極を研磨剤に入れて、3分以上経過して安定した後の値を測定することができる。
【0088】
前記研磨剤は、カルボン酸誘導体、金属防食剤及び水を含有してなる研磨剤(貯蔵液)として保管し、研磨時にこの研磨剤と、他の構成材料及び水を適宜配合して使用してもよい。または、カルボン酸誘導体、金属防食剤及び水に、その他の構成材料を適宜配合した研磨剤の状態で保管し使用してもよい。
【0089】
前記研磨剤は、半導体デバイスにおける配線層の形成に適用できる。研磨対象である被研磨膜は、少なくともコバルト元素を含む部分(以下「コバルト部分」という)が含まれていればよく、更に、コバルト部の近傍に設けられた導電性物質、バリア金属、又は絶縁体が含まれていてもよい。
【0090】
すなわち、本発明の別の態様は、フタル酸化合物、イソフタル酸化合物及び下記一般式(I)で表されるアルキルジカルボン酸化合物並びにこれらの塩及び酸無水物からなる群より選択される少なくとも1種からなるカルボン酸誘導体と、金属防食剤と、水とを含有し、pHが4以下である研磨剤の、コバルト元素を含む層を研磨することにおける使用である。
HOOC−R−COOH・・・(I)
(上記一般式(I)中、Rは炭素数が4〜10であるアルキレン基を示す。)
【0091】
また、本発明の別の態様は、フタル酸化合物、イソフタル酸化合物及び下記一般式(I)で表されるアルキルジカルボン酸化合物並びにこれらの塩及び酸無水物からなる群より選択される少なくとも1種のカルボン酸誘導体と、金属防食剤と、水とを含有し、pHが4.0以下であり、50℃におけるコバルトに対するエッチング速度が10.0nm/min以下である研磨剤の、コバルト元素を含む層を研磨することにおける使用である。
HOOC−R−COOH・・・(I)
(上記一般式(I)中、Rは炭素数が4〜10であるアルキレン基を示す。)
【0092】
[基板の研磨方法]
本発明の基板の研磨方法は、基板の少なくとも一方の表面に形成されたコバルト元素を含む被研磨膜を、前述した研磨剤を用いて研磨して、コバルト元素を含む余分の部分を除去する研磨方法である。より具体的には、基板の少なくとも一方の表面に形成されたコバルト元素を含む被研磨膜と研磨定盤上の研磨布との間に、前述した研磨剤を供給しながら、前記被研磨膜が設けられた面側の前記基板表面を研磨布に押圧した状態で、該基板と研磨定盤とを相対的に動かすことによって被研磨膜の少なくとも一部を除去する研磨方法である。
【0093】
以下、本発明の基板の研磨方法を用いる、半導体デバイスにおける配線層形成の一連の工程を、図2を参照しながら説明する。但し、本発明の研磨剤の用途は、下記工程に限定されない。
【0094】
研磨前の基板10は、図2(a)に示すように、シリコン基板1の上に、所定パターンの凹部を有する絶縁体2と、この絶縁体2の表面の凸凹に沿って絶縁体2を被覆するバリア金属層3と、バリア金属層3を被覆するコバルト層4とを有し、コバルト層4上に導電性物質層5が形成されている。
【0095】
絶縁体2としては、シリコン系絶縁体、有機ポリマー系絶縁体等が挙げられる。シリコン系絶縁体としては、二酸化ケイ素、フルオロシリケートグラス、トリメチルシランやジメトキシジメチルシランを出発原料として得られるオルガノシリケートグラス、シリコンオキシナイトライド、水素化シルセスキオキサン等のシリカ系絶縁体や、シリコンカーバイド及びシリコンナイトライド等が挙げられる。また、有機ポリマー系絶縁体としては、全芳香族系低誘電率絶縁体が挙げられる。これらの中でも特に、二酸化ケイ素が好ましい。
【0096】
絶縁体2は、CVD(化学気相成長)法、スピンコート法、ディップコート法、又はスプレー法によって成膜される。絶縁体2の具体例としては、LSI製造工程、特に多層配線形成工程における絶縁体等が挙げられる。
【0097】
バリア金属層3は、絶縁体2中への導電性物質が拡散するのを防止するため、及び絶縁体2と導電性物質層5との密着性向上のために形成される。バリア金属層3に用いられるバリア金属としては、タンタル、窒化タンタル、タンタル合金等のタンタル化合物、チタン、窒化チタン、チタン合金等のチタン化合物、タングステン、窒化タングステン、タングステン合金等のタングステン化合物、ルテニウム等のルテニウム化合物などが挙げられる。バリア金属層3は、これらの1種からなる単層構造であっても、2種以上からなる積層構造であってもよい。バリア金属層3は、蒸着、CVD(化学気相成長)等によって成膜される。なお、バリア金属層3としてコバルト層4のみを設けてもよい。
【0098】
コバルト層4に用いられるコバルト類としては、コバルト、コバルト合金、コバルトの酸化物、コバルト合金の酸化物等が挙げられる。コバルト層は、公知のスパッタ法等により成膜される。
【0099】
導電性物質層5に用いられる導電性物質としては、銅、銅合金、銅の酸化物、銅合金の酸化物等の銅を主成分とする金属、タングステン、タングステン合金等のタングステン金属、銀、金等の貴金属などが挙げられる。中でも、銅、銅合金、銅の酸化物、銅合金の酸化物等の銅を主成分とする金属が好ましい。導電性物質層5は、公知のスパッタ法、メッキ法等によって成膜される。
【0100】
絶縁体2の厚さは、0.01μm〜2.0μm程度、バリア金属層3の厚さは、0.01μm〜2.5μm程度、コバルト層4の厚さは、0.01μm〜2.5μm程度、導電性物質層5の厚さは、0.01μm〜2.5μm程度が好ましい。
【0101】
図2(a)に示される状態から図2(b)に示される状態まで導電性物質層5を研磨する第1の研磨工程では、研磨前の基板10の表面の導電性物質層5を、例えば、導電性物質層5/コバルト層4の研磨速度比が充分大きい導電性物質用の研磨剤を用いて、CMPにより研磨する。これにより、基板上の凸部のコバルト層4が表面に露出し、凹部に導電性物質層5が残された導体パターンを有する基板20が得られる。導電性物質層5/コバルト層4の研磨速度比が充分大きい前記導電性物質用の研磨剤としては、例えば、特許第3337464号明細書に記載の研磨剤を用いることができる。第1の研磨工程では、導電性物質層5とともに凸部のコバルト層4の一部が研磨されてもよい。
【0102】
引き続く第2の研磨工程では、第1の研磨工程により得られた導体パターンを、第2の研磨工程用の被研磨膜として、本発明の研磨剤を用いて研磨する。
【0103】
第2の研磨工程では、研磨定盤の研磨布上に基板20を押圧した状態で、研磨布と基板との間に、本発明の研磨剤を供給しながら、研磨定盤と基板20とを相対的に動かすことにより、第1の研磨工程により露出したコバルト層4を研磨する。
【0104】
研磨する装置としては、研磨される基板を保持するホルダと、回転数が変更可能なモータ等と接続し、研磨布を貼り付けた研磨定盤とを有する一般的な研磨装置が使用できる。
研磨布としては、一般的な不織布、発泡ポリウレタン、多孔質フッ素樹脂等が使用でき、特に制限はない。
【0105】
研磨条件は、特に制限がないが、研磨定盤の回転速度は基板が飛び出さないように、200rpm以下の低回転が好ましい。被研磨膜を有する基板の研磨布への押し付け圧力は、1kPa〜100kPaであることが好ましく、研磨速度の被研磨面内均一性及びパターンの平坦性を満足するためには、5kPa〜50kPaであることがより好ましい。
【0106】
研磨している間、研磨布と被研磨膜との間には、本発明の研磨剤をポンプ等で連続的に供給する。この供給量に制限はないが、研磨布の表面が常に研磨剤で覆われていることが好ましい。研磨終了後の基板は、流水中でよく洗浄後、スピンドライ等を用いて基板上に付着した水滴を払い落としてから乾燥させることが好ましい。
【0107】
第2の研磨工程では、少なくとも、露出しているコバルト層4を研磨し、余分のコバルト部分を除去する。第2の研磨工程では、コバルト層4を研磨して、バリア金属層3が露出したら研磨を終了し、別途、バリア金属層研磨用の研磨剤によりバリア金属層3を研磨してもよい。また、図2(b)から図2(c)に示されるように、第2の研磨工程において一連でコバルト層4からバリア金属層3までを研磨してもよい。更に、凹部に埋め込まれた導電物質層5がコバルト層4及びバリア金属層3とともに研磨されてもよい。
【0108】
凸部のバリア金属層3の下の絶縁体2が全て露出し、凹部に配線層となる導電性物質層5が残され、凸部と凹部との境界にバリア金属層3及びコバルト層4の断面が露出した所望のパターンを有する基板30が得られた時点で研磨を終了する。
【0109】
研磨終了時のより優れた平坦性を確保するために、更に、図3に示すように、オーバー研磨(例えば、第2の研磨工程で所望のパターンを得られるまでの時間が100秒の場合、この100秒の研磨に加えて50秒追加して研磨することをオーバー研磨50%という。)してもよい。オーバー研磨する場合には、絶縁体2の一部も研磨で除去される。
【0110】
このようにして形成された金属配線の上に、更に、第2層目の絶縁体及び金属配線を形成した後、研磨して半導体基板全面に渡って平滑な面とする。この工程を所定数繰り返すことにより、所望の配線層数を有する半導体デバイスを製造することができる。
【0111】
本発明の研磨剤は、前記のような半導体基板に形成された金属膜の研磨だけでなく、磁気ヘッド等の基板を研磨するためにも使用することができる。
【実施例】
【0112】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0113】
<コバルトに対するエッチング量の評価>
[実施例及び比較例]
(研磨剤作製方法)
容器に、表1及び表2に示す金属防食剤及びカルボン酸誘導体を、最終的な研磨剤として表1に記載の配合量となるようにそれぞれ入れ、水溶性ポリマーとしてポリアクリル酸アンモニウム塩(日立化成テクノサービス製、分子量8000)を最終的な研磨剤として0.02質量%となる量、有機溶剤として3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールを最終的な研磨剤として1.4質量%となる量を入れ、そこに超純水を注ぎ、攪拌・混合して、全成分を溶解させた。
【0114】
次に、砥粒としてシリカ粒子であるコロイダルシリカ(扶桑化学工業株式会社製、粒径60nm)を、調製されるスラリの総質量中、4.0質量%に相当する量添加し、再度超純水を注ぎ、スラリを得た。得られたスラリの総質量中、0.2質量%となるように30質量%の過酸化水素水を添加し、種々の研磨剤を得た。
得られた各研磨剤のpHを測定し、表1及び表2に示した。
【0115】
(コバルトに対するエッチング量評価)
8インチのシリコン基板上にCVD法で厚さ300nmのコバルト層を形成したブランケット基板(a)を用意した。上記ブランケット基板(a)を、20mm角のチップに切り出して評価用チップ(b)を用意した。
【0116】
前記各研磨剤50gを入れたビーカの中に前記評価用チップ(b)をそれぞれ入れ、50℃の恒温槽に1分間浸漬した。浸漬後の評価用チップ(b)を取り出し、純水で充分に洗浄した後、窒素ガスを吹きかけてチップ上の水分を乾燥させた。乾燥後の評価用チップ(b)の抵抗を抵抗率計にて測定し、下記式(1)にて浸漬後のコバルト層の膜厚に換算した。
【0117】
ブランケット基盤(a)の各膜厚にそれぞれ対応する抵抗値の情報から検量線を得て、下記式(1)より、コバルト層の膜厚を求めた。
浸漬後のコバルト層の膜厚[nm]
=104.5×(評価用チップ(b)の抵抗値[mΩ]/1000)−0.893
・・・(1)
【0118】
そして、得られた浸漬後のコバルト層の膜厚と浸漬前のコバルト層の厚みから、下記式(2)より、コバルト層のエッチング速度を求めた。
コバルト層のエッチング速度(Co−ER)[nm/min]
=(浸漬前のコバルト層の膜厚[nm]―浸漬後のコバルト層の膜厚[nm])/1分
・・・(2)
【0119】
上記で得られた各研磨剤について、コバルト層に対するエッチング速度を求めた。この結果を表1及び表2に示す。尚、表1及び表2中、カルボン酸誘導体及び金属防食剤の欄における「−」は未配合であることを示す。
【0120】
(コバルトに対する研磨速度評価)
また、上記ブランケット基板(a)を、上記で得られた各研磨剤を用いて、下記条件で研磨したときの研磨速度(Co−RR)[nm/min]を評価した。この結果を表1及び表2に併せて示す。尚、比較例いくつかについては、エッチング速度が速すぎたため、研磨速度の評価を省略し、「−」で表記した。
【0121】
<研磨条件>
研磨布:IC1000
研磨圧力:10.3kPa(1.5psi)
回転数:プラテン/ヘッド=93/87rpm
研磨剤の供給量:200mL/分
研磨時間:0.5分
【0122】
【表1】

【0123】
【表2】
【0124】
表1及び表2から明らかなように、実施例1〜13では、特定のジカルボン酸と金属防食剤を同時に含むことで、50℃の条件下でもコバルトのエッチング速度が顕著に抑制され、コバルト層を適度な速度で研磨することができることがわかった。このことから、前記カルボン酸誘導体を含有する本発明の研磨剤においては、前記特定ジカルボン酸化合物が錯体形成剤と防食剤としての作用を兼ね揃えていることが示唆される。すなわち、本発明の研磨剤によれば、コバルト元素を含む層を研磨した場合に、良好な研磨速度で、コバルト元素を含む層が過剰にエッチングされたり、腐食によるスリットを生じたりすることを効果的に抑制して研磨できることが示唆される。
【符号の説明】
【0125】
1 シリコン基板
2 絶縁体
3 バリア金属層
4 コバルト層
5 導電性物質層(配線用金属)
図1
図2
図3