特許第6051922号(P6051922)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6051922
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】R−T−B系焼結磁石の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/02 20060101AFI20161219BHJP
   H01F 1/08 20060101ALI20161219BHJP
   H01F 1/057 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   H01F41/02 G
   H01F1/08 B
   H01F1/04 H
【請求項の数】4
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-31062(P2013-31062)
(22)【出願日】2013年2月20日
(65)【公開番号】特開2014-160760(P2014-160760A)
(43)【公開日】2014年9月4日
【審査請求日】2015年11月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(72)【発明者】
【氏名】森本 英幸
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 亨
【審査官】 井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/043692(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/112403(WO,A1)
【文献】 特開2011−223007(JP,A)
【文献】 特開2008−263179(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/036294(WO,A1)
【文献】 特開2012−174920(JP,A)
【文献】 特開2009−54754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 41/02
H01F 1/057
H01F 1/08
B22F 3/24
C22C 28/00
C22C 38/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)ネオジム(Nd)を含む希土類元素と、鉄(Fe)と、ホウ素(B)とを含み、下記一般式で表される金属間化合物を主相とする焼結体を形成する工程と、
2)ジスプロシウム(Dy)およびテルビウム(Tb)の少なくとも一方を含む重希土類元素供給源と、前記焼結体とを容器内に配置し、該重希土類元素供給源と該焼結体とを第1の拡散温度で加熱し、該重希土類元素供給源から該焼結体にジスプロシウム(Dy)およびテルビウム(Tb)の少なくとも一方を拡散させる工程と、
3)前記工程2)の後に、アルミニウム(Al)を含むアルミニウム供給源と、前記重希土類元素供給源から前記焼結体にジスプロシウム(Dy)およびテルビウム(Tb)の少なくとも一方を拡散させた焼結体とを容器内に配置し、該アルミニウム供給源と該焼結体とを前記第1の拡散温度より低くかつ600℃〜760℃の範囲の第2の拡散温度で加熱し、該アルミニウム供給源から該焼結体にアルミニウム(Al)を拡散させる工程と、を含むことを特徴とするR−T−B系焼結磁石の製造方法。
一般式: R14
(ここで、Rはネオジム(Nd)が質量比で50%以上である1種類以上の希土類元素であり、Tは鉄(Fe)または鉄(Fe)とコバルト(Co)。)
【請求項2】
前記工程3)において、前記ジスプロシウム(Dy)およびテルビウム(Tb)の少なくとも一方を拡散させた焼結体のアルミニウム(Al)含有量を、質量比で0.01〜0.05パーセントポイント増加させることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記工程3)において、前記ジスプロシウム(Dy)およびテルビウム(Tb)の少なくとも一方を拡散させた焼結体のアルミニウム(Al)含有量を、質量比で0.01〜0.03パーセントポイント増加させることを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記工程3)において、前記アルミニウム供給源がNd−Al合金であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、R−T−B系焼結磁石の製造方法、とりわけ希土類元素としてネオジムを含むR−T−B系焼結磁石(希土類系焼結磁石)およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
14B型化合物を主相とし、主相結晶粒の結晶粒界にRリッチ相(希土類元素リッチ相)を有するR−T−B系焼結磁石(Rは希土類元素(イットリウム(Y)を含む概念)の少なくとも1種でネオジム(Nd)を必ず含み、Tは鉄(Fe)または鉄とコバルト(Co)、Bはホウ素を意味する)は、高い残留磁束密度B(以下、単に「B」という場合がある)と高い固有保磁力HcJ(以下、単に「HcJ」という場合がある)とを有し、これまでに知られている各種磁石の中でも最も高い磁気エネルギー積を示すという利点に加えて、比較的安価であるという利点も有している。
【0003】
このため、ハードディスクドライブのボイスコイルモータ、ハイブリッド自動車用モータ、電気自動車用モータ等の各種モータならびに家電製品など多種多様な用途に用いられている。
【0004】
例えばハイブリッド自動車用モータ、電気自動車用モータを含む各種モータ等に用いる場合、例えば140℃〜180℃のような高温下に曝される。
【0005】
R−T−B系焼結磁石は、高温になるとHcJが低下し、不可逆熱減磁が起こるという問題がある。
このため、例えば特許文献1に示すようにR−T−B系焼結磁石の表面から内部に重希土類元素(以下、重希土類元素のことを「RH」という場合がある)であるジスプロシウム(Dy)またはテルビウム(Tb)を拡散させ、主相結晶粒の粒界近傍(主相結晶粒の外殻部)にジスプロシウム(Dy)またはテルビウム(Tb)を濃化させて高いHcJを得る方法が採られている。
【0006】
特許文献2、3には、重希土類元素RHを粒界拡散させる場合、Alを含む金属元素Mとともに粒界拡散させることにより、金属元素Mが重希土類元素RHの粒界拡散を促進するため、より低い拡散温度でも厚い磁石の内部に重希土類元素RHを浸透させ、磁石特性を向上させることが可能になる旨が記載されている。
【0007】
さらに、特許文献4においても、Dyおよび/またはTbを磁石基材の結晶粒界を通じて磁石基材内部に拡散させる粒界拡散処理を行うNd−Fe−B焼結磁石の製造方法において、拡散させるDyおよび/またはTbの供給源であるDyF等の粉体中に30質量%以下のAlを添加することにより保磁力が向上する旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2007/102391号公報
【特許文献2】WO2006/112403号公報
【特許文献3】特開2011−223007号公報
【特許文献4】特開2009−224413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の方法によりHcJを向上させることができる。しかし、多くの用途でよりいっそうの小型化・軽量化と高効率化が求められており、さらに高温においてより高いHcJを有するR−T−B系焼結磁石(希土類系焼結磁石)が強く求められている。
【0010】
一方、特許文献2〜4に記載の方法に従ってDy等のRHに加えてAl(アルミニウム)等の金属元素を添加した場合、高温において、ある程度のHcJの向上は認められるものの、その向上の効果は概して小さく、高温で十分に高いHcJを得ることが困難であった。さらに、これら従来の方法で、RHとAlとを添加すると高温におけるBが低下する場合があるという問題もあった。
【0011】
そこで、本発明は、高温において、残留磁束密度Bの低下を抑制し、高い固有保磁力HcJを有するR−T−B系焼結磁石の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の態様1は、 1)ネオジム(Nd)を含む希土類元素と、鉄(Fe)と、ホウ素(B)とを含み、下記一般式で表される金属間化合物を主相とする焼結体を形成する工程と、 2)ジスプロシウム(Dy)およびテルビウム(Tb)の少なくとも一方を含む重希土類元素供給源と、前記焼結体とを容器内に配置し、該重希土類元素供給源と該焼結体とを第1の拡散温度で加熱し、該重希土類元素供給源から該焼結体にジスプロシウム(Dy)およびテルビウム(Tb)の少なくとも一方を拡散させる工程と、 3)前記工程2)の後に、アルミニウム(Al)を含むアルミニウム供給源と、前記重希土類元素供給源から前記焼結体にジスプロシウム(Dy)およびテルビウム(Tb)の少なくとも一方を拡散させた焼結体とを容器内に配置し、該アルミニウム供給源と該焼結体とを前記第1の拡散温度より低くかつ600℃〜760℃の範囲の第2の拡散温度で加熱し、該アルミニウム供給源から該焼結体にアルミニウム(Al)を拡散させる工程と、を含むことを特徴とするR−T−B系焼結磁石の製造方法である。
一般式: R14
(ここで、Rはネオジム(Nd)が質量比で50%以上である1種類以上の希土類元素であり、Tは鉄(Fe)または鉄(Fe)とコバルト(Co)。)
【0013】
本発明の態様2は、 前記工程3)において、前記ジスプロシウム(Dy)およびテルビウム(Tb)の少なくとも一方を拡散させた焼結体のアルミニウム(Al)含有量を、質量比で0.01〜0.05パーセントポイント増加させることを特徴とする請求項1に記載の製造方法である。
【0014】
本発明の態様3は、前記工程3)において、前記ジスプロシウム(Dy)およびテルビウム(Tb)の少なくとも一方を拡散させた焼結体のアルミニウム(Al)含有量を、質量比で0.01〜0.03パーセントポイント増加させることを特徴とする請求項2に記載の製造方法である。
【0015】
本発明の態様4は、前記工程3)において、前記アルミニウム供給源がNd−Al合金であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、高温において、残留磁束密度Bの低下を抑制し、高い固有保磁力HcJを発現するR−T−B系焼結磁石の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明者らは鋭意検討した結果、希土類元素と、鉄(Fe)と、ホウ素(B)とを含み、下記(1)式で表される金属間化合物を主相とする焼結体に対し、主相の結晶粒(以下、単に「結晶粒」という場合、および「主相結晶粒」という場合がある。)の外殻部にジスプロシウム(Dy)およびテルビウム(Tb)の少なくとも一方を濃化させることで、焼結体の表面から内部にジスプロシウム(Dy)およびテルビウム(Tb)の少なくとも一方を拡散させるという従来から行われている手法を行った後に、ジスプロシウム(Dy)およびテルビウム(Tb)の少なくとも一方を拡散させる温度よりも低く且つ600℃〜760℃の範囲の温度でAl(アルミニウム)を拡散させることにより、例えば140℃のような高温において、Bの低下を抑制し、高いHcJを発現するR−T−B系焼結磁石を得ることができることを見出した。

一般式: R14B (1)
(ここで、Rはネオジム(Nd)が質量比で50%以上である1種類以上の希土類元素であり、Tは鉄(Fe)または鉄とコバルト(Co)。)
【0018】
上述したように、特許文献2〜4には、DyおよびTbの少なくとも一方とAl等の金属とを拡散させる方法が記載されている。これら従来の方法では、DyおよびTbの少なくとも一方とAlとを同時に拡散させている。しかし、これらの方法では、HcJの向上効果が小さく、Brが低下する。
これに対して、本発明に係る製造方法は、DyおよびTbの少なくとも一方を第1の拡散温度で拡散させる重希土類元素拡散処理を行った後、Alを第1の温度よりも低くかつ600℃〜760℃の範囲内の第2の拡散温度で拡散させるアルミニウム拡散処理(Al拡散処理)を行う点が従来の方法と異なる。これにより高温で高いHcJが得られると共に、残留磁束密度Bの低下を抑制できる。
【0019】
さらに、本発明に係る製造方法は、上述した温度条件でAl拡散処理を行うことで、Al拡散処理前における焼結体(重希土類元素供給源からジスプロシウム(Dy)およびテルビウム(Tb)の少なくとも一方を拡散させた焼結体)のAl含有量が質量比で0.01〜0.05パーセントポイント(好ましくは、0.01〜0.03パーセントポイント)増加させることを特徴とする。拡散処理によるAl増加量を所定範囲にすることにより、確実に高温で高いHcJが得られると共に、残留磁束密度Bの低下を抑制することができる。
【0020】
このように、重希土類元素拡散処理によりDyおよびTbの少なくとも一方を拡散させた後に、Al拡散処理を行ってAlを拡散させることで、高温で高いHcJが得られると共に、残留磁束密度Bの低下を確実に抑制できるメカニズムについては、未だ不明な点もある。現在までに得られている知見を基に本発明者らが考えるメカニズムについて以下に説明する。以下のメカニズムについての説明は本発明の技術的範囲を制限することを目的とするものではないことに留意されたい。
【0021】
原料配合時に重希土類元素であるDyおよびTbの少なくとも一方(以下、「Dyおよび/またはTb」と記載する場合がある)を添加して焼結体を作製すると、該焼結体の主相結晶粒の全体(中心部および外殻部)において、該主相結晶粒に含有されるNd等の軽希土類元素がDyおよび/またはTbにより置換される。これによって、室温および高温(例えば140℃)においてHcJは向上するものの、Bが低下する。
一方、焼結体の表面からDyおよび/またはTbを拡散させると、主相結晶粒の外殻部にDyおよび/またはTbを濃化させることができるので、Bをほとんど低下させることなくHcJを向上させることができる。
本発明は、主相結晶粒の外殻部にDyおよび/またはTbを濃化させた後、Dyおよび/またはTbを拡散させる温度よりも低くかつ600℃〜760℃の温度でAlを拡散させる。これにより、主相結晶粒の外殻部にDyおよび/またはTbが濃化した状態を維持しながら、Alを結晶粒界に濃化させることができる。その結果、主相結晶粒間の磁気的結合が結晶粒界に濃化したAlによって抑制され、高温において高いHcJ向上効果が得られると考えられる。
また、Dyおよび/またはTbを拡散させると、Dyおよび/またはTbは主相結晶粒の外殻部に濃化するが、一部は結晶粒界にも存在していると考えられる。Alを拡散させることにより、結晶粒界に存在するDyおよび/またはTbが何だかの挙動を起こし、主相結晶粒の外殻部に濃化していると考えられる。このDyおよび/またはTbの拡散とAlの拡散の相乗効果により、高温において高いHcJが得られると考えられる。
【0022】
上述した効果を得るには、Alを結晶粒界に濃化させる必要がある。そのためには、Alが極力主相結晶粒内に拡散しないようにしなければならない。Alが主相結晶粒内に拡散すると結晶粒界に濃化させるAl量が少なくなり、上述した効果を得ることができなくなる。さらにBが低下する恐れがある。
AlはDyおよび/またはTbに比べ低い温度で拡散する。そのため、特許文献2〜4の方法によりDyおよび/またはTbとAlを同時に拡散させると、比較的高い拡散温度では、Dyおよび/またはTbは主相結晶粒の外殻部に濃化されるが、Alは結晶粒界とともに主相結晶粒内にも多く拡散することとなり、結晶粒界に濃化させるAl量が少なくなり、上述した効果を得ることができなくなる。さらにBが低下する恐れがある。一方、比較的低い拡散温度では、Alは結晶粒界に濃化し主相結晶粒内には拡散しないが、Dyおよび/またはTbを主相結晶粒の外殻部へ濃化することができなくなり、HcJの向上効果が小さくなる。
【0023】
さらに、AlはDyおよび/またはTbに比べ低い温度で拡散するとともに、比較的容易に焼結体内部(焼結体中央部近傍)にまで拡散する。Dyおよび/またはTbが拡散し難い領域(焼結体中央部近傍)にまでAlが拡散することも、高温において高いHcJが得られることに寄与しているものと考えられる。
【0024】
本発明の好ましい態様では、前記Al拡散処理によって、Dyおよび/またはTbを拡散させた焼結体のAl含有量を、質量比で0.01〜0.05パーセントポイント、好ましくは0.01〜0.03パーセントポイント増加させる。すなわち、Al拡散処理後のR−T−B系焼結磁石のAl含有量を、アルミニウム拡散処理前(重希土類元素拡散処理後)の焼結体のAl含有量に対して、質量比で0.01〜0.05パーセントポイント、好ましくは0.01〜0.03パーセントポイント増加させる。これによって、より確実にAlを結晶粒界に濃化させることができるとともに、Alが主相結晶粒内に拡散することを極めて少なくすることができる。
【0025】
なお、本明細書において、「結晶粒の外殻部」とは、結晶粒の表層部を含む概念である。従って、例えば、Dyが結晶粒の外殻部に濃化するとは、結晶粒の表層部においてDyが濃化している(結晶粒の中央部に比べて濃度が高くなっている)ことを意味する。
また、本明細書における用語「表層部」は、文字「層」を含んでいるが、層状となった組織を有することを規定するものではなく(層状の組織を必須とするものではなく)、断面において、表面およびその近傍を意味する(「表面部」または「表面近傍部」と言い換えることができる)
【0026】
このような結晶粒の外殻部での濃化は、例えば、透過電子顕微鏡およびエネルギー分散型X線分光法(TEM−EDX)により測定可能である。
一方、結晶粒界に存在するAlについては、Al拡散処理により増加するAlの量は、例えば質量比で0.01質量%〜0.05質量%程度と少量であるため、TEM−EDX等の分析手段を用いても結晶粒界に存在するAlを検出できない場合がある。そのため、本発明では、態様2、3において、Al拡散処理前後のAlの増加量を規定している。
【0027】
本発明のR−T−B系焼結磁石の主相は、一般式:R14Bで表される金属間化合物である。一般に、焼結磁石などの磁性材料においては、主要構成相でその磁性材料の特性(物性、磁気特性など)を決定づけている化合物が「主相」と定義される。本発明における主相、すなわち、一般式:R14Bで表される金属間化合物も、主要構成相で本発明のR−T−B系焼結磁石の物性、磁気特性などの基本部分を決定づけている。また、本明細書において「主相結晶粒」とは、前記主相から構成される結晶粒のことである。主相結晶粒は、R−T−B系焼結磁石の断面観察において、面積比で80%以上、好ましくは90%以上存在している。
【0028】
以下に本発明に係るR−T−B系焼結磁石の製造方法をより詳細に説明する。
以下に詳述するように本発明に係る製造方法では、焼結体に、DyおよびTbの少なくとも一方を拡散させる重希土類元素拡散処理を行った後、Alを拡散させるAl拡散処理を実施する。本明細書では、焼結体に重希土類元素拡散処理およびAl拡散処理のいずれか一方を行った状態でも「焼結体」と呼ぶ場合があり(「××処理を行った焼結体」と言う場合もある)、焼結体に重希土類元素拡散処理とAl拡散処理の両方を行った状態を「磁石」と呼ぶ場合がある(「焼結磁石」または「R−T−B系焼結磁石」という場合もある。)。
【0029】
1.焼結体の作製
(1)焼結体の組成
焼結体は、Ndを含む希土類元素と、Feと、Bとを含む焼結体として知られている任意の組成であってよい。以下に好ましい焼結体の組成を示す。
Rは、希土類元素であって、Ndが必須であり、Rのうち質量比で50%以上をNdとする。焼結体全体でNdと他の希土類元素を合計して25質量%以上35質量%以下含有することが好ましい。25質量%未満では焼結ができない場合があり、35質量%を超えるとBが著しく低下する場合があるためである。
また、拡散処理を行う前の焼結体の段階で、DyおよびTbのような重希土類元素を多く含むと、最終的に得られたR−T−B系焼結磁石のBが低下することから、重希土類元素は焼結体全体で0.5〜3.0質量%以下であることが好ましい。
Nd以外の希土類元素は、例えば、ミッシュメタルおよび/またはジジム合金(Nd−Pr合金)を用いることにより含まれることが多い。例えば、ジジム合金を用いると、焼結体はPrを含む。
【0030】
Tは、鉄を含み、質量比率でその50%以下をCoで置換してもよい。Coは温度特性の向上、耐食性の向上に有効である。
Tの含有量は、Rとボロン(B)あるいはRとBと後述するM元素との残部を占めてよい。
【0031】
ボロン(B)の含有量についても公知の含有量で差し支えなく、例えば、0.9質量%〜1.2質量%が好ましい範囲である。0.9質量%未満では高いHcJが得られない場合があり、1.2質量%を超えるとBが低下する場合がある。なお、Bの一部はC(炭素)で置換することができる。Cによる置換は磁石の耐食性を向上させることができる場合がある。B+Cとした場合(BとCの両方含む場合)の合計含有量は、Cの置換原子数をBの原子数に換算し、上記のB濃度の範囲内に設定されることが好ましい。
【0032】
上記元素に加え、室温でのHcJ向上のためにM元素を添加することができる。M元素は、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Ga、Zr、Nb、Mo、In、Sn、Hf、TaおよびWからなる群から選択される一種以上である。M元素の添加量は2.0質量%以下が好ましい。また、不可避的不純物も許容することができる。
【0033】
なお、Alについては、例えば原料合金製造時に不純物として(すなわち、意図せずに)焼結体に含まれる場合がある。このような不純物としてのAlの含有量は、通常、0.1質量%以下である。
一方、上述のようにM元素としてAlを選択する(意図的にAlを添加)場合がある。この場合、好ましいAlの含有量は0.2質量%〜0.5質量%程度である。
【0034】
本発明に係る製造方法は、焼結体にAlを意図的に添加していない場合(不純物として含む場合)だけでなく、Alを意図して添加している場合であっても、高温においてBの低下を抑制しかつ高いHcJを得ることができる。
これは、焼結体に含まれるAlは、焼結時に高温の焼結温度まで加熱されるため、結晶粒界だけに留まらず、結晶粒内を含め、比較的均一に分布しており、Al拡散処理を行うことにより、結晶粒界に存在するAl量のみを確実に増加できるためと考えられる。また、このように焼結によりAlは比較的均一に分布しているため、上述した好ましい範囲内の含有量であればBを著しく低下させることもほとんどない。
【0035】
R−T−B系焼結磁石用原料合金の製造方法は、例えば最終的に必要な組成となるように事前に調整した金属を溶解し、鋳型に入れるインゴット鋳造法により合金インゴットを得ることができる。
また、溶湯を単ロール、双ロール、回転ディスクまたは回転円筒鋳型等に接触させて急冷し、インゴット法で作られた合金よりも薄い凝固合金を作製するストリップキャスト法または遠心鋳造法に代表される急冷法により合金フレークを製造することができる。
【0036】
本発明においては、インゴット法と急冷法のどちらの方法により製造された材料も使用可能であるが、急冷法により製造されるものが好ましい。
急冷法によって作製したR−T−B系焼結磁石用原料合金(急冷合金)の厚さは、通常0.01mm〜3mmの範囲にあり、フレーク形状である。合金溶湯は冷却ロールの接触した面(ロール接触面)から凝固し始め、ロール接触面から厚さ方向に結晶が柱状に成長してゆく。急冷合金は、従来のインゴット鋳造法(金型鋳造法)によって作製された合金(インゴット合金)に比較して、短時間で凝固されているため、初晶Feの析出を抑制でき、組織が微細化され、結晶粒径が小さい。急冷合金を水素粉砕することで、水素粉砕粉(粗粉砕粉)のサイズを例えば1.0mm以下とすることができる。
【0037】
このようにして得た粗粉砕粉をジェットミル等により微粉砕することで、例えば気流分散式レーザー解析法によるD50粒径で3〜7μmの微粉末粉(合金粉末)を得ることができる。
【0038】
得られた合金粉末は、乾燥したまま回収してもよく、また油等の分散媒中に分散させてスラリーとして回収してもよい。
【0039】
また、粗粉砕粉、ジェットミル粉砕中及びジェットミル粉砕後の合金粉末に助剤として公知の潤滑剤を使用してもよい。
【0040】
(2)プレス成形
得られた合金粉末を用いて磁場中プレス成形を行い、成形体を得る。磁界中プレス成形は、磁界を印加した金型のキャビティー内に乾燥した合金粉末を挿入しプレスする乾式法、および金型のキャビティー内にスラリーを注入し、スラリーの分散媒を排出しながらプレスする湿式法を含む既知の任意の方法を用いてよい。
【0041】
なお、湿式法により得た成形体は、焼結を行う前に成形体中に残存する分散媒(油等)を除去する脱油処理を施すことが好ましい。脱油処理は、好ましくは50〜500℃、より好ましくは50〜250℃でかつ圧力13.3Pa(10−1Torr)以下の条件で30分以上保持して行う。成形体に残留する分散媒を充分に除去することができるからである。
【0042】
(3)焼結
成形体を焼結することにより焼結体を得る。
成形体の焼結は、公知の焼結体の製造方法と同様の方法を用いることができる。なお、焼結時の雰囲気による酸化を防止するために、雰囲気ガスは、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスにより置換しておくことが好ましい。
【0043】
焼結体は、Ndを含む希土類元素と、Feと、Bとを含み、下記(1)式で表される金属間化合物を主相とする。
そして、主相結晶粒は、焼結体の断面観察において、50%(体積比または断面の面積比)以上、好ましくは70%(体積比または断面の面積比)以上存在している。
14B (1)
ここで、RはNdを質量比で50%以上含有する1種類以上の希土類元素であり(すなわち、R全体の50質量%以上がNd)、TはFeまたはFeとCoである。
【0044】
2.拡散処理
次に、焼結体にDyおよびTbの少なくとも一方を拡散させる重希土類元素拡散処理を行った後、該焼結体にAlを拡散させるAl拡散処理を行う。なお、重希土類元素拡散処理前の焼結体に研削等の機械加工などを施してもよい。以下に、重希土類元素拡散処理とAl拡散処理の詳細を示す。
【0045】
2−1.重希土類元素拡散処理
DyおよびTbの少なくとも一方を焼結体の表面から拡散し、主相結晶粒の外殻部にDyおよびTbの少なくとも一方を濃化できる既知の任意の方法を用いてよい。多くの既知の拡散方法は、同じ処理室内に、DyおよびTbの少なくとも一方を含有する重希土類元素供給源と焼結体とを配置し、重希土類元素供給源および焼結体を加熱することにより重希土類元素拡散処理を行っている。このような処理として、既知の任意の方法を用いてよい。以下に既知の拡散処理の詳細を説明する。
【0046】
(1)特許文献1に記載の方法
特許文献1に記載の方法は、焼結体と、DyおよびTbの少なくとも一方を含有する重希土類元素供給源とをNb製またはMo製の網等を介して離間して処理室に配置し、処理室を所定温度に加熱することにより、前記重希土類元素供給源からDyおよびTbの少なくとも一方を焼結体の表面に供給しつつ、焼結体の内部に拡散させる方法である。焼結体の加熱温度と重希土類元素供給源の加熱温度は実質的に同じである。
【0047】
特許文献1に記載の方法を用いる場合、重希土類元素供給源は、例えば、Dyメタル、Dy−Fe合金、Tbメタル、TbFe合金などから選択される。重希土類元素供給源の形状は、例えば、板状、ブロック状、球状など任意であり、大きさも特に限定されない。
焼結体および重希土類元素供給源を加熱する温度(重希土類元素拡散処理を行う温度)は、それぞれ、850℃以上1000℃以下が好ましい。また、処理容器内の雰囲気ガスの圧力は、10−5Pa以上500Pa以下が好ましい。なお、本明細書における「雰囲気ガス」とは、真空または不活性ガスを含むものとする。また、「不活性ガス」とは、例えば、アルゴン(Ar)などの希ガスである。
【0048】
(2)国際公開公報WO2012/043692号に記載の方法
国際公開公報WO2012/043692号に記載された方法は、焼結体と重希土類元素供給源とを相対的に移動可能かつ近接または接触可能に処理容器内に挿入し、焼結体と重希土類元素供給源とを処理容器内にて連続的または断続的に移動させながら、焼結体および重希土類元素供給源を加熱することにより、重希土類元素供給源からDyおよびTbの少なくとも一方を焼結体に拡散する方法である。焼結体の加熱温度と重希土類元素供給源の加熱温度は実質的に同じである。
【0049】
国際公開公報WO2012/043692号に記載された方法を用いる場合、重希土類元素供給源は、DyおよびTbの少なくとも一方を含むフッ化物、酸化物、酸フッ化物であることが好ましい。例えば、Dy−F、Dy−Oなどである。重希土類元素供給源の形状は、球状、楕円球状、円柱状などの表面に曲面が形成されている形状が好ましい。重希土類元素供給源は、粒子状であってもよいが、粒径が200μm以上であることが好ましい。粒径が200μm未満であると、焼結体との溶着が生じやすい傾向があるためである。
焼結体と重希土類元素供給源を加熱する温度(重希土類元素拡散処理を行う温度)は、800℃以上950℃以下が好ましい。また、処理容器内の雰囲気ガスの圧力は、大気圧以下で実施でき、100kPa以下で行うのが好ましく、例えば10−3Pa以上10Pa以下の範囲内に設定することができる。
【0050】
(3)国際公開公報WO2006/043348号に記載の方法
国際公開公報WO2006/043348号に記載された方法は、重希土類元素供給源を焼結体表面に存在させた状態で焼結温度よりも低い温度で加熱することで、前記重希土類元素供給源からDyおよびTbの少なくとも一方を焼結体に拡散させる方法である。
【0051】
国際公開公報WO2006/043348号に記載された方法を用いる場合、重希土類元素供給源は、Dy−Fe、Dy−Fe−Hなどが好ましい。さらに、本発明の効果を損なわない限りにおいて酸化物、フッ化物、酸フッ化物を含有させてもよい。重希土類元素供給源は、粒子状であることが好ましく、その平均粒径は、100μm以下、好ましくは10μm以下である。
重希土類元素供給源を焼結体表面に存在させる方法としては、例えば、粒子状の重希土類元素供給源をそのまま焼結体表面に吹き付ける方法、同供給源を溶媒に溶解した溶液を焼結体表面に塗布する方法、同供給源を分散媒に分散させたスラリーを焼結体表面に塗布する方法等があげられる。スラリーに用いる分散媒としては、例えばアルコール、アルデヒド、エタノール、ケトン等が挙げられる。
【0052】
焼結体と重希土類元素供給源を加熱する温度(重希土類元素拡散処理を行う温度)は、焼結温度T℃以下(好ましくは、T℃−10℃)である。焼結温度より高い温度であると、重希土類元素が結晶粒内へ拡散したり、焼結体の組織が変質し、高い磁気特性が得られない場合があるためである。また、処理容器内の雰囲気ガスの圧力は、大気圧以下であることが好ましい。
【0053】
本明細書において、温度(拡散温度)を指定して拡散させる旨を規定した場合の温度(拡散温度)は、通常、供給源や焼結体の温度(加熱温度)を意味する。ただし、測定が困難等の理由により供給源や焼結体の温度を得ることができない場合は、加熱する加熱炉内の雰囲気温度で代替する等、代替するのに合理的な根拠を有する、測定可能な他の部位の温度を用いてよい。
【0054】
なお、このような重希土類元素拡散処理を行うことで、当然ながら焼結体全体でもDyおよびTbの少なくとも一方の含有量は増加する。焼結体全体としてDyおよびTbの少なくとも一方の含有量がどの程度増加するかは、焼結体の体積等の要因によって異なる。しかし、例えば、縦、横および高さのうちの最小寸法が10mm程度以下の一般的な形態の焼結体であれば、本発明に係る拡散処理を行うことにより、多くの場合、焼結体全体でDyおよびTbの少なくとも一方の含有量が質量比で0.1パーセントポイント〜2.0パーセントポイント増加する。
念のために言及するが、本明細書において、「1パーセントポイント増加する」とは、パーセント(質量%)で示される含有量において、その数値が1増加することを意味する。例えば、対象物の希土類元素中のDyの含有量が10質量%である場合、Dyの含有量が1パーセントポイント増加するとは、対象物のDyの含有量が11質量%になることを意味する。
【0055】
なお、重希土類元素拡散処理において、拡散させようとする元素(DyおよびTbの少なくとも一方)を予め焼結体に含有させておいてよい。この場合、拡散させようとする元素を焼結体に0.5〜3.0質量%含有させておくことが好ましい。
【0056】
重希土類元素拡散処理の後に追加で熱処理(以下、「追加熱処理」と記載する場合がある。)を施すことが好ましい。重希土類元素をさらに焼結体内部へ拡散させることができるからである。なお、本発明における追加の熱処理とは、焼結体への重希土類元素の供給を行わずに拡散のみを行う処理のことをいう。通常、追加の熱処理を行う温度(熱処理温度)は、800℃以上950℃以下であることが好ましい。
【0057】
2−2.Al拡散処理
次に、重希土類元素拡散処理を行った焼結体にAl拡散処理を施す。焼結体の表面から内部にAlを拡散させる。
【0058】
Al拡散処理は、アルミニウム供給源から焼結体にAlを拡散させることができる限り任意の拡散処理を行ってよい。以下にAl拡散処理の詳細を説明する。
【0059】
(1)アルミニウム供給源
アルミニウム供給源として、Alを含む固体、スラリー等、任意の形態のアルミニウム供給源を用いてよい。
上述のように、Al拡散処理により増加するAl含有量が、例えば0.01パーセントポイント〜0.05パーセントポイントと少量であることから、アルミニウム供給源は、アルミニウム単体よりも合金の方が好ましい。
このような好ましい合金として、Nd−Al合金を例示できる。Nd−Al合金の中でもAl含有量が1〜10質量%(残部がNdと不可避的不純物)である合金が好ましく、Al含有量が2〜8質量%である合金がより好ましい。
アルミニウム供給源の形態は、例えば直径が100μm以下のような粉末であってもよく、また板状、ブロック状または球状等のバルク状であってもよく、以下に述べる拡散方法に適した形態を選べばよい。
【0060】
(2)拡散処理方法
Al拡散処理によりAlを拡散させる温度(拡散温度)は、重希土類元素拡散処理の拡散温度より低くかつ600℃〜760℃の範囲の温度(好ましくは600℃〜700℃の範囲の温度)である。これにより、例えば140℃のような高温において、Bの低下を抑制しつつ高いHcjを有するR−T−B系焼結磁石を得ることができる。重希土類元素拡散処理の処理温度以上では重希土類元素拡散処理により主相結晶粒の外殻部へ拡散、濃化されたDyおよびTbの少なくとも一方の状態を維持できない恐れがある。また、600℃未満であると、温度が低すぎるために、Alが十分に粒界拡散せず、所望の効果を得ることができない恐れがあり、760℃を超えると、Alが主相結晶粒内へ多量に拡散してしまう恐れがあるからである。
アルミニウム供給源として粉末を用いる場合、焼結体の表面に直接散布してもよい。またヒドロキシプロピルセルロース水溶液等のバインダーを焼結体表面に塗布した後、アルミニウム供給源の粉末を散布し、さらに乾燥させることによりバインダーにより粉末状のアルミニウム供給源を焼結体の表面に固定してもよい。
【0061】
一方、バルク状のアルミニウム供給源を用いる場合、アルミニウム供給源を焼結体に接触させてもよく、またNbやMo製の網等を介して離間させてもよい。
【0062】
なお、アルミニウム拡散処理時の処理容器内(本発明における容器とは、容器が炉であってもよいし、炉の中に容器を入れてもよい。)の雰囲気は散布の場合は、Ar(大気圧)が好ましく、Nb網製の網等を介して離間させる場合は、10−5Pa以上500Pa以下が好ましい。処理容器内の雰囲気は、処理方法により適宜選定すればよい。また、処理の時間は3〜8時間が好ましい。
【0063】
このようなAl拡散処理を行うことで、当然ながら焼結体全体でもAlの含有量は増加する。焼結体全体としてAl含有量がどの程度増加するかは、焼結体の体積等の要因によって異なる。しかし、例えば、縦、横および高さのうちの最小寸法が10mm程度以下の一般的な形態の焼結体であれば、焼結体全体でAl含有量が、質量比で0.01パーセントポイント〜0.05パーセントポイント(好ましくは、0.01パーセントポイント〜0.03パーセントポイント)増加するようにAl拡散処理を行うことで本発明の効果を十分に得ることができる。
重希土類元素拡散処理およびAl拡散処理後の焼結磁石の表面は、粗面化される場合がある。またこれら拡散処理時に重希土類元素やAlと相互拡散したNdなどが焼結磁石表面に染み出し、固化して酸化し易い状態になっていることが多い。このような場合、表面を切削、研磨等の機械加工等(面出し加工)を行うことが好ましい。
【0064】
(3)熱処理
Al拡散処理を行った後の焼結磁石は、磁気特性を向上させることを目的とした熱処理を行うのが好ましい。熱処理温度、熱処理時間などの熱処理条件は、焼結体の焼結後の熱処理条件として公知の条件(例えば、500℃で3時間)を採用することができる。なお、最終的な磁石寸法の調整を研削などの機械加工等により行ってもよい。この場合、熱処理の前に行っても、後に行ってもよい
【0065】
以上に説明したように本発明に係る製造方法により、高温において、残留磁束密度Bの低下を抑制しつつ、高い固有保磁力HcJを有するR−T−B系焼結磁石の製造方法を提供することができる。
このことは、本発明にかかる製造方法を用いれば、高温において、従来と同等の残留磁束密度Bと固有保磁力HcJを有するR−T−B系焼結磁石を従来よりも少ないDyおよび/またはTbの含有量により実現できることを意味することに留意されたい。
【実施例】
【0066】
実施例1
ストリップキャスト法により、R−T−B系焼結磁石用原料合金のフレークを作製し、このフレークに水素を吸収(吸蔵)させて水素粉砕を行い、粗粉砕し、この粗粉砕粉をジェットミルにより更に粉砕して微粉砕粉(合金粉末)を得た。得られた微粉砕粉を油に分散させてスラリーを作製した。そして、このスラリーから湿式法により成形体を作製し、脱油処理を行った後、真空炉により1000℃で4時間の焼結を行い、長さ23.0mm×幅15.0mm×厚さ4.0mmの焼結体を得た。
焼結体の組成は、Nd:29.6質量%、Pr:0.08質量%、Dy:1.0質量%、B:0.94質量%、Ga:0.10質量%、Co:2.0質量%、Al:0.11質量%、Cu:0.10質量%、Fe:残部であり、焼結体に含まれる酸素、窒素、炭素濃度はそれぞれ、酸素:0.13質量%、窒素:0.04質量%、炭素:0.09質量%であった。また、機械加工を行うことで、長さ23.0mmの中央部分から長さ7mm×幅14.6mm×厚さ3.6mmの評価試料を得た。評価試料に対し、磁気特性の向上を目的として行う熱処理を500℃で3時間施した後、BHトレーサを用いて140℃における磁気特性を測定した結果、B1.22T、HcJ:454kA/mであった。
【0067】
得られた焼結体を用いて、重希土類元素拡散処理として、Dyをこの焼結体に拡散させた。重希土類元素(Dy)拡散処理は、焼結体とほぼ同寸法のDyメタルを準備し、容器内へ前記焼結体の長さ23.0mm×幅15.0mmの両面に前記Dyメタルが対向するように、前記焼結体と前記DyメタルとをMo製の網を介して離間配置して、加熱することにより行った。重希土類元素拡散処理は0.05Paの圧力下で880℃で5時間の加熱により焼結体の表面全体にDyの蒸気を供給しつつ拡散後、引き続きArガスを流気して大気圧に保持することによりDyの供給が行われない状態にして880℃で5時間の追加熱処理を施した。
【0068】
次に、重希土類元素拡散処理を行った焼結体に対して、Al拡散処理を行った。アルミニウム供給源として篩目で100μm以下のNd−Al合金を用いた。Nd−Al合金は、表1に示すようにAlの含有量が2質量%(98Nd−2Al)、4質量%(96Nd−4Al)、6質量%(94Nd−6Al)3種類の合金を用いた。また、比較例サンプルのためにAlを含まないNdメタルを用いた。
重希土類元素拡散処理を行った焼結体にバインダー(ヒドロキシプロピルセルロース2%水溶液)を塗布し、焼結体の長さ23.0mm×幅15.0mmの面(2面)にアルミニウム供給源(またはNdメタル)を1面につき60mg(合計120mg)散布した後、温風にて乾燥させた。
乾燥後の焼結体を処理容器内に載置しAr雰囲気中で加熱し、Al拡散処理を行った。Al拡散処理を行った温度及び時間を表1に示す。表1から判るように試料No.1は、重希土類元素拡散処理を行った後、Al拡散処理を行っていないサンプルであり、試料No.2は、アルミニウム供給源を用いず(すなわちAlを拡散させず)Al拡散処理と同等の熱履歴を与えたサンプルであり、試料No.11は、重希土類元素拡散処理を行なわずにAl拡散処理を行なったサンプルである。
【0069】
次に、それぞれのサンプルについて、磁気特性の向上を目的として行う熱処理を500℃で3時間施し焼結磁石を得た。
拡散処理を行った23.0mm×15.0mmの両面を0.2mmずつ研削した後、さらに切断加工を施して、長さ23.0mmの中央部分から長さ7mm×幅14.6mm×厚さ3.6mmの評価試料を得た。これらの試料について、BHトレーサを用いて140℃における磁気特性(HcJ、B、Hk)を測定し、ICP発光分光分析を行いDy含有量とAl含有量を求めた。ここで、Hkとは、磁気ヒステリスループ(4πI−Hカーブ)の第2象限における磁化がBの90%となるときの磁界強度である。Hを用いて、H/HcJで表される角型比を求めた。角型比が小さいと、減磁の程度が大きい性質を意味する。これらの測定結果を表1に示す。なお総希土類量(Nd+Pr+Dy)は、30.6質量%〜30.8質量%の範囲内であり、磁気特性に影響するほどの差異はなかった。
【0070】
【表1】
【0071】
試料No.1〜10は、重希土類元素拡散処理を行うことによりDy含有量が1.0質量%から1.5質量%に0.5パーセントポイント増加した。また、試料No.11は、重希土類元素拡散処理を行なっていないため、Dy含有量は、重希土類元素拡散処理前と同じ1.0質量%であった。
本発明サンプルである試料No.4〜7は、重希土類元素拡散処理の拡散温度より低くかつ600℃〜760℃の範囲でAl拡散処理を行うことによりAl含有量が0.12〜0.16質量%と、Al拡散処理前のAlの量(0.11質量%)から0.01〜0.05パーセントポイント増加した。そして、試料No.4〜7では、140℃におけるHCJが795kA/m以上(試料No.4〜6では800kA/m以上)と高い値を示した。一方、140℃でのBは1.21Tであり、Al拡散処理を行っていない試料No.1と比べて低下は認められなかった。
一方、比較例サンプルである試料No.1は、Al拡散処理を行っておらず、試料No.2はAl供給源を用いずAl拡散処理と同等の熱履歴の加熱を行い、試料No.3はAl供給源に代えてNdメタルを用いているため、いずれのサンプルでもAlの含有量の増加が認められなかった。このため、HCJは746〜756kA/mと低い値であった。
試料No.8は、Al拡散処理の拡散温度が550℃と低いため、Al含有量が増加しておらず、この結果、HCJは747kA/mと低い値であった。
試料No.9、10では、HCJは745〜764kA/mと低かった。これは拡散温度がそれぞれ、900℃、850℃と高く、このため相当量のAlが主相結晶粒内に拡散したためと考えられる。
【0072】
さらに、表1に示すように、重希土類元素拡散処理の拡散温度より低くかつ600℃〜760℃の範囲でAl拡散処理を行なった本発明サンプルである試料No.4〜7は、重希土類元素拡散処理の後にAl拡散処理を行っていないサンプル(試料No.1)と比べて角型比(H/HcJ)を大きく向上することができる。
【0073】
重希土類元素拡散処理後に、重希土類元素拡散処理の拡散温度より低くかつ600℃〜760℃の範囲でAl拡散処理を行なうことにより、重希土類元素拡散処理とAl拡散処理の相乗効果を得ることができる。以下に具体的に説明する。
880℃で重希土類元素拡散処理のみ(Al拡散処理なし)を行なうことにより、Dy含有量を1.0質量%から1.5質量%に0.5パーセントポイント増加させた試料No.1の140℃におけるHcJ(756kA/m)は、重希土類元素拡散処理する前の焼結体の140℃におけるHcJ(454kA/m)から302kA/m向上している。また、660℃でAl拡散処理のみ(重希土類元素拡散処理なし)を行うことにより、Al含有量を0.11質量%から0.13質量%に0.02パーセントポイント増加させた試料No.11の場合は、140℃におけるHcJ(465kA/m)がAl拡散処理をする前の焼結体の140℃におけるHcJ(454kA/m)から11kA/mとほとんど向上していない。そしてこれらの向上値を合計すると313(302+11)kA/mとなる。このため、相乗効果がなく、重希土類元素拡散処理の効果とAl拡散処理の効果を単純に加算すると(念のため断っておくが、単純に加算できるというだけでも顕著な効果である)上述した重希土類元素拡散処理前の焼結体の140℃におけるHcJ454kA/mに313kA/mを足した値=767kA/mとなるはずである。しかし、880℃で重希土類元素拡散処理を行い、Dy含有量を1.0質量%から1.5質量%に0.5パーセントポイント増加させた後、660℃に加熱してAl拡散処理を行ない、Al含有量を0.11質量%から0.13質量%に0.02パーセントポイント増加させた本発明である試料No.4は、140℃におけるHcJが813kA/mと767kA/mより明らかに高くなっている。これは、上述したように、Dy拡散処理後に本発明のAl拡散処理を行なうことにより、結晶粒界に存在しているDyに何らかの挙動を及ぼし、Dyを主相結晶粒の外殻部にさらに濃化することができたからと考えられる。
【0074】
試料No.1〜4、6、および9について、別に焼結磁石(Al拡散処理およびその後の熱処理まで行った状態)を用意し、拡散処理を行った23.0mm×15.0mmの両面を1.5mmずつ研削した後、さらに切断加工を施して、長さ23.0mmの中央部分から長さ2.5mm×幅2.5mm×厚さ1mmの評価試料を得た。サンプルについてVSM(振動試料型磁力計)を用いて140℃でHCJを測定した結果を表2に示す。すなわち、焼結磁石の中央部(表面から離れた焼結磁石の中心部分)の磁気特性を測定した。
【0075】
【表2】
【0076】
表2から判るように実施例サンプルである試料No.4、6の140℃でのHCJは、表1に示した表面を含んだ場合の測定結果より低くなっているものの比較例サンプルと比較して80〜100kA/m程度高い値であった。また、この実施例サンプルと比較例サンプルとの差は、表1に示す表面を含んだ場合の結果より大きくなっている。
これは、Dyの濃化が生じにくい焼結磁石の中央部では、Al拡散処理によりもたらされた結晶粒界へのAlの濃化により、140℃におけるHcJが向上していると考えられる
【0077】
さらに、比較のため、R−T−B系磁石用原料合金のフレークを作製する際の溶解時のAlの組成を0.11質量%から0.13、0.40、0.70質量%へそれぞれ変更した以外は、上述の実施例サンプルと同じ組成の焼結体(重希土類元素拡散処理前の焼結体)を準備した。そして、上述の実施例サンプルと同様の条件で、重希土類元素(Dy)拡散処理およびその後の熱処理を行った(Al拡散処理は、行っていない)。そして、上述の実施例サンプルと同様に長さ23.0mmの中央部分から長さ7mm×幅14.6mm×厚さ3.6mmに機械加工を施し得られた試料に対し、BHトレーサを用いて140℃における磁気特性(HcJ、B)を測定した。測定結果を表3に示す。
【0078】
【表3】
【0079】
R−T−B系磁石用原料合金のフレークを作製する際の溶解時にAlを0.13質量%含有させた試料No.12は、試料No.1と比べて、Alを0.02パーセントポイント多く含有しているが、140℃におけるHCJはほとんど向上していない。これに対し、Al拡散処理により試料No.1よりもAlを同じく0.02パーセントポイント多く含有させた本発明である試料No.4は、140℃におけるをHCJが大きく向上している。また、高いHCJを得るために、溶解時にAlを多量に添加した試料No.13、14は、Bが大きく低下している。
【0080】
さらに、比較のため、上述の試料No.1〜10作製時に使用した焼結体(重希土類元素拡散処理前の焼結体)と同じ組成の焼結体を準備し、重希土類元素(Dy)拡散処理とAl拡散処理を同時に行った。処理方法は、上述の実施例サンプル試料No.4〜10のAl拡散処理と基本的に同じ方法で実施した。すなわち、Dyメタル及びNd−Al合金粉末の代わりにDy−Al粉末を焼結体に散布することによりDyとAlの同時拡散を実施した。用いたDy−Al合金の組成、拡散処理の温度および時間を表4に示す。表4から判るように試料No.15は、重希土類元素拡散処理のみを行ったサンプルであり、試料No.16〜20は、重希土類元素(Dy)拡散処理とAl拡散処理を同時に行ったサンプルである。
【0081】
それぞれのサンプルについて、磁気特性の向上を目的として行う熱処理を500℃で3時間施し焼結磁石を得た。得られた焼結磁石を上述の実施例サンプルと同様の方法で、BHトレーサを用いて140℃における磁気特性(B、HcJ)を測定し、ICP発光分光分析を行いDy含有量とAl含有量を求めた。これらの測定結果を表4に示す。
【0082】
【表4】
【0083】
表4に示すように、重希土類元素(Dy)拡散処理とAl拡散処理を同時に行った、試料No.16〜20のうち、Alを0.02〜0.03質量%増加させた試料No.16〜19は、重希土類元素拡散処理の後にAl拡散処理を行っていないサンプル(試料No.15)に比べて、本発明ほど、高いHcJ向上効果が得られていない。さらに、Alを増加させた試料No.19は、Bが低下している。さらに、拡散処理を低温で長時間処理した試料No.20は、HcJもBも低下している。
【0084】
実施例2
実施例1と同様に、ストリップキャスト法により、R−T−B系焼結磁石用原料合金のフレークを作製し、このフレークに水素を吸収(吸蔵)させて水素粉砕を行い、粗粉砕し、この粗粉砕粉をジェットミルにより更に粉砕して微粉砕粉(合金粉末)を得た。得られた微粉砕粉を油に分散させてスラリーを作製した。そして、このスラリーから湿式法により成形体を作製し、脱油処理を行った後、真空炉により焼結を行い、長さ23.0mm×幅15.0mm×厚さ4.0mmの焼結体を得た。
本実施例で得た焼結体の組成(6種類)(質量%)を表5に示す。
【0085】
【表5】
【0086】
得られた焼結体を用いて、重希土類元素拡散処理として、Dyをこの焼結体に拡散させた。重希土類元素(Dy)拡散処理の条件は、拡散温度と時間以外は、実施例1と同じ条件とした。重希土類元素拡散処理を行った温度及び時間を表6に示す。
【0087】
次に、実施例サンプルである、試料31、41、51、61、71および81については、重希土類元素拡散処理を行った焼結体に対して、Al拡散処理を行った。アルミニウム供給源として篩目で100μm以下のNd−Al合金を用意した。用いたNd−Alは、表6に示すようにAlの含有量が4質量%(96Nd−4Al)の合金である。また、比較例サンプルである試料30、40、50、60、70および80については、表6に示すようにAl拡散処理は実施しなかった。
【0088】
実施例1と同じく、重希土類元素拡散処理を行った焼結体にバインダー(ヒドロキシプロピルセルロース2%水溶液)を塗布し、焼結体の長さ23.0mm×幅15.0mmの面(2面)にアルミニウム供給源を1面につき60mg(合計120mg)を散布した後、温風にて乾燥させた。
乾燥後の焼結体を処理容器内に載置しAr雰囲気中で加熱し、Al拡散処理を行った。Al拡散処理を行った温度及び時間を表6に示す。
【0089】
次に、それぞれのサンプルについて、磁気特性の向上を目的として行う熱処理を施し焼結磁石を得た。
その後それぞれのサンプルの23.0mm×15.0mmの両面を0.2mmずつ研削した後、さらに切断加工を施して、長さ23.0mmの中央部分から長さ7mm×幅14.6mm×厚さ3.6mmの評価試料を得た。これらの試料について、BHトレーサを用いて140℃における磁気特性(Br、HcJ)を測定し、ICP発光分光分析を行いDy含有量とAl含有量を求めた。これらの測定結果を表6に示す。
【0090】
【表6】
【0091】
表6に示すように、重希土類元素拡散処理後に、重希土類元素拡散処理の拡散温度より低くかつ600℃〜760℃の範囲でAl拡散処理を行なった本発明サンプルである試料No.31、41、51、61、71、81は、いずれの焼結磁石においても、同じ焼結体組成で重希土類元素拡散処理の後にAl拡散処理を行なっていないサンプル試料No.30、40、50、60、70、80(試料No.30は試料No.31、試料No.40は試料No.41、試料No.50は試料No.51、試料No.60は試料No.61、試料No.70は試料No.71、試料No80は試料No.81にそれぞれ対応)と比較して、140℃における高いHcJ向上効果を得ることができた。
【0092】
実施例3
実施例1と同様に、ストリップキャスト法により、R−T−B系焼結磁石用原料合金のフレークを作製し、このフレークに水素を吸収(吸蔵)させて水素粉砕を行い、粗粉砕し、この粗粉砕粉をジェットミルにより更に粉砕して微粉砕粉(合金粉末)を得た。得られた微粉砕粉を油に分散させてスラリーを作製した。そして、このスラリーから湿式法により成形体を作製し、脱油処理を行った後、真空炉により1000℃で4時間の焼結を行い、長さ13.4mm×幅15.0mm×厚さ3.4mmの焼結体を得た。
焼結体の組成は、Nd:30.5質量%、Pr:0.14質量%、B:0.93質量%、Ga:0.11質量%、Co:2.0質量%、Al:0.13質量%、Cu:0.11質量%、Fe:残部であり、焼結体に含まれる酸素、窒素、炭素濃度はそれぞれ、酸素:0.12質量%、窒素:0.04質量%、炭素:0.10質量%であった
【0093】
得られた焼結体を用いて、重希土類元素拡散処理として、Dyをこの焼結体に拡散させた。重希土類元素(Dy)拡散処理は、下記のように行った。まず、Dyを60質量%含む複数個のDyFe合金を用意した。前記DyFe合金は球状で、粒径は、1.5mm〜2.5mmであった。前記DyFe合金と前記焼結体とを円筒状の処理容器内へ挿入し、前記処理室を毎秒0.03mの周速度で回転させながら、0.1Paの圧力下で900℃で5時間処理した。さらに処理後の焼結体に対しArガスを流気して大気圧に保持し、圧力を10kPa、温度を900℃にし、5時間の追加熱処理を施した。
【0094】
次に、重希土類元素拡散処理を行った焼結体に対して、Al拡散処理を行った。アルミニウム供給源として篩目で100μm以下のNd−Al合金を用いた。Nd−Al合金は、表7に示すようにAlの含有量が4質量%(96Nd−4Al)の合金を用いた。
重希土類元素拡散処理を行った焼結体にバインダー(ヒドロキシプロピルセルロース2%水溶液)を塗布し、焼結体の長さ13.4mm×幅15.0mmの面(2面)にアルミニウム供給源を1面につき30mg(合計60mg)散布した後、温風にて乾燥させた。
乾燥後の焼結体を処理容器内に載置しAr雰囲気中で加熱し、Al拡散処理を行った。Al拡散処理を行った温度及び時間を表7に示す。表7から判るように試料No.91は、重希土類元素拡散処理を行った後、Al拡散処理を行っていないサンプルである。
【0095】
次に、それぞれのサンプルについて、磁気特性の向上を目的として行う熱処理を500℃で3時間施し焼結磁石を得た。
拡散処理を行った13.4mm×15.0mmの両面を0.2mmずつ研削した後、さらに切断加工を施して、長さ13.4mmの中央部分から長さ13mm×幅14.6mm×厚さ3.0mmの評価試料を得た。これらの試料について、BHトレーサを用いて140℃における磁気特性(B、HcJ)を測定し、ICP発光分光分析を行いDy含有量とAl含有量を求めた。これらの測定結果を表7に示す。
【0096】
【表7】
【0097】
表7に示すように、重希土類元素拡散処理後に、重希土類元素拡散処理の拡散温度より低くかつ600℃〜760℃の範囲でAl拡散処理を行なった本発明サンプルである試料No.92は、重希土類元素拡散処理の後にAl拡散処理を行なっていないサンプル試料No.91と比較して、140℃における高いHcJ向上効果を得ることができた。
【0098】
さらに、重希土類元素(Dy)拡散処理後に長さ13.3mm×幅14.9mm×3.3mmに加工した(全面50μmずつ加工)こと以外、実施例3の試料No.92と同じ条件で焼結磁石(試料No.93)を準備した。
さらに、重希土類元素(Dy)拡散処理後に長さ13.3mm×幅14.9mm×3.3mmに加工した(全面50μmずつ加工)後、以下に説明する真空蒸着によりAlを焼結体へ成膜して拡散させたこと以外、実施例3の試料No.92と同じ条件で焼結磁石(試料No.94)を準備した。
前記真空蒸着は、焼結体と96Nd−4Al合金とを処理室内に配置した後、処理室内の圧力が10−1Paになるまで真空排気した後、Arガスを導入した。次にRF出力300Wを加えて10分間の逆スパッタを行って磁石表面の酸化膜を除去した。続いてDC出力300Wを印加し、Nd−4Al合金を加熱して溶融し、蒸発させて、前記焼結体の表面に1.5μmのAlを成膜させた。成膜後の焼結体に対し、Arガスを流気して大気圧に保持し、660℃で4時間加熱することによりAlの成膜を焼結体内部へ拡散させた。試料No.93、94に対し、試料No.91、92と同様の加工を行い評価試料を得た。これらの試料について、BHトレーサを用いて140℃における磁気特性(B、HcJ)を測定し、ICP発光分光分析を行いDy含有量とAl含有量を求めた。これらの測定結果を表8に示す。なお試料No.91〜94の総希土類量(Nd+Pr+Dy)は、30.7質量%〜30.8質量%の範囲内であり、磁気特性に影響するほどの差異はなかった。
【0099】
【表8】
【0100】
表8に示すように、重希土類元素拡散処理後に、重希土類元素拡散処理の拡散温度より低くかつ600℃〜760℃の範囲でAl拡散処理を行なった本発明である試料No.93、94共に、重希土類元素拡散処理の後にAl拡散処理を行なっていないサンプル試料No.91と比較して、140℃における高いHcJ向上効果を得ることができた。