(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カチオン性ポリウレタン樹脂(A)が、脂環式ポリイソシアネート及び/又は脂肪族ポリイソシアネートに由来する構造単位を有する樹脂である請求項1記載のインクジェット記録用水性インクセット。
前記色材が顔料であり、前記ヒドロキシ基及び/またはカルボキシル基を有する樹脂が水溶性溶媒及び/または水に分散している請求項1〜4のいずれかに記載の水性インクジェット記録用インクセット。
前記ヒドロキシ基及び/またはカルボキシル基を有する樹脂が、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、又はエポキシ樹脂の樹脂エマルションである請求項1〜5のいずれかに記載の水性インクジェット記録用インクセット。
前記ヒドロキシ基及び/またはカルボキシル基を有する樹脂が、重量平均分子量10,000以上1,000,000以下であり、且つ酸価が1〜200mgKOH/gであるポリオレフィン樹脂である請求項1〜6のいずれかに記載の水性インクジェット記録用インクセット。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のインクジェット記録用水性インクセットは、第1のインクは色材、ヒドロキシ基及び/またはカルボキシル基を有する樹脂、水溶性溶媒及び/または水を含むインクであり、第2のインクは、下記一般式[I]
【0014】
〔式(I)中、R
1は脂肪族環式構造を含んでいてもよいアルキレン鎖、2価フェノール類の残基、又はポリオキシアルキレン鎖であり、R
2及びR
3は、互いに独立して脂肪族環式構造を含んでいてもよいアルキル基であり、R
4は水素原子又は4級化反応により導入された4級化剤の残基であり、X
−はアニオン性の対イオンである。〕
で示される構造単位を含有するカチオン性ポリウレタン樹脂(A)、水溶性溶媒及び/または水を含むインクである。
両インクを重ね刷りすることで被印刷物に対して迅速に固着する。この結果、滲み、色間滲み等の画像の乱れがなく、且つ印刷直後の耐擦性に優れるインキを得ることができる。
【0015】
両インクを重ね刷りすることで被印刷物に対して迅速に固着することについて、そのメカニズムは明確ではないが、以下を推定している。即ち、カチオン性ポリウレタン樹脂(A)がトリガーとなって、ヒドロキシ基及び/またはカルボキシル基を有する樹脂の分子間水素結合により巨大会合体へと成長し、ファンデルワールス力などの相互作用によりそれらが束になって網目状に絡まり相互に運動を妨げあって流動性を失い、印刷物表面に固定化されている可能性がある。あるいは、第1のインク中に存在するヒドロキシ基及び/またはカルボキシル基を有する樹脂と、第2のインクに存在するカチオン性ポリウレタン樹脂(A)とが反応して、印刷物表面に固定化されている可能性もある。
【0016】
(第1のインクヒドロキシ基及び/またはカルボキシル基を有する樹脂)
本発明で使用する第1のインクは色材、ヒドロキシ基及び/またはカルボキシル基を有する樹脂、水溶性溶媒及び/または水を含む。
【0017】
ヒドロキシ基及び/またはカルボキシル基を有する樹脂としては、公知慣用のヒドロキシ基及び/またはカルボキシル基を有する樹脂を使用すればよく特に限定はない。
【0018】
本願発明におけるヒドロキシ基及び/またはカルボキシル基を有する樹脂は、少なくともヒドロキシ基及び/またはカルボキシル基を有する樹脂を有すればよい。当該カルボキシル基を有する樹脂の入手形態は特に限定されない。また取扱いの容易さから、固体よりも樹脂の水溶性溶媒及び/または水への分散体、いわゆる樹脂エマルションが好ましく用いられる。また市販品の樹脂エマルションを用いても良い。
これらの中でも、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、又はエポキシ樹脂の樹脂粒子が水溶性溶媒及び/または水に分散していることを特徴とする樹脂エマルションが好ましく、ポリオレフィン樹脂の樹脂粒子が水溶性溶媒及び/または水に分散した樹脂エマルションがより好ましい。
【0019】
前記第一のインク中の前記ヒドロキシ基及び/またはカルボキシル基を有する樹脂の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、2.0質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以上8.0%質量以下がなお好ましく、3.0質量%以上5.0%質量以下が更により好ましい。
【0020】
前記ヒドロキシ基及び/またはカルボキシル基を有する樹脂の酸価は、樹脂固形分あたり10〜200mgKOH/gであることが好ましい。酸価が10mgKOH/g未満では、インクの貯蔵安定性に劣る恐れがある。一方、酸価が200mgKOH/gを超えると、好ましい耐久性、耐水性等の物性が得られないことがある。
より好ましくは5〜100mgKOH/gの範囲であり、さらに好ましくは10〜80mgKOH/gの範囲であり、さらに好ましくは15〜60mgKOH/gの範囲である
【0021】
前記ヒドロキシ基及び/またはカルボキシル基を有する樹脂の水酸基価は、樹脂固形分あたり30mgKOH/g以下であることが好ましい。水酸価が30mgKOH/gを超えると、インクの貯蔵安定性に劣る恐れがある。より好ましくは20mgKOH/g以下であり、さらに好ましくは10mgKOH/g以下である。
なお、ここでいう酸価と水酸基価は、JIS0070に準拠した方法により測定した値である。
【0022】
また、前記ヒドロキシ基及び/またはカルボキシル基を有する樹脂のガラス転移点温度(以下、Tgと略す)は、所望する用途に応じて適宜設定することが好ましい。例えば食品用の包装材料用途等の可とう性を有するプラスチックフィルムに印字する場合は、フレキシビリティー(柔軟性)が要求されることから、Tgはあまり高くないほうが好ましい。適当なフィルムへの密着性とフレキシビリティーとを両立させるために、前記ヒドロキシ基及び/またはカルボキシル基を有する樹脂のTgは−80℃〜80℃の範囲であることが好ましく、−80℃〜30℃の範囲であることが特に好ましい。
【0023】
また、前記ヒドロキシ基及び/またはカルボキシル基を有する樹脂の重量平均分子量(ポリスチレン換算)が10,000以上1,000,000以下、さらには20,000以上700,000以下であることが、インクの物性バランスを発現しやすいので好ましい。
なお、ここでいう重量平均分子量(Mw)は、下記の条件でGPC測定により求めたものとする。
【0024】
[GPC測定条件]
測定装置:東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「SuperHZ−L」(内径4.6mm×2cm)
+東ソー株式会社製「TSKgelSuperHZ4000」(内径4.6mm×15cm)
+東ソー株式会社製「TSKgelSuperHZ3000」(内径4.6mm×15cm)
+東ソー株式会社製「TSKgelSuperHZ2000」(内径4.6mm×15cm)
+東ソー株式会社製「TSKgelSuperHZ1000」(内径4.6mm×15cm)
測定条件:カラム温度40℃
流速0.35ml/分
試料:樹脂水溶液を乾燥固化し、樹脂固形分換算で0.5質量%のテトラヒドロフラン(THF)溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(10μl)。
校正曲線:単分散標準ポリスチレンSTKstandardポリスチレン(東ソー株式会社製)分子量4000000〜250までのサンプルによる校正曲線を使用した。
【0025】
本発明で使用するヒドロキシ基及び/またはカルボキシル基を有する樹脂が水溶性溶媒及び/または水に分散している樹脂組成物、いわゆる樹脂エマルション等の場合、その平均粒子径が大きすぎるとヘッド詰まりの原因となり吐出不良を引き起す。そのため、前記ヒドロキシ基及び/またはカルボキシル基を有する樹脂粒子の平均粒子径はできるだけ小さいことが吐出不良への影響が少ないことから好ましい。具体的には10nm〜500nmの範囲であることが好ましく、10〜300nmの範囲であることが特に好ましい。
ここで粒子径の測定は、公知慣用の遠心沈降方式、レーザー回折方式(光散乱方式)、ESA方式、キャピラリー方式、電子顕微鏡方式などで行うことができる。好ましいのは、動的光散乱法を利用したマイクロトラックUPAによる測定である。
【0026】
本発明のインクに使用できる樹脂エマルションは、所望する物性に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、乳化剤を特に限定されず含有していてもよい。例えば、乳化剤の存在下で、モノマー及び重合開始剤を滴下し、重合させる方法や、樹脂の水溶液ないしは水懸濁液を撹拌することなどによる乳化方法などにより得られる樹脂エマルションであってもよい。また、超音波照射技術等の様々な乳化・分散技術を駆使して得られた乳化剤無添加の樹脂エマルションであってもよいことはもちろんである。乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類などのノニオン性乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、水溶性のアクリル樹脂のようなポリカルボン酸塩などのカルボン酸型、アルキルベンゼンスルホン酸塩などのスルホン酸型、アルコール硫酸エステル塩類、アルキルアリルスルホン酸塩類などのアニオン性乳化剤などが挙げられる。
【0027】
本発明におけるポリオレフィン樹脂は、所望する物性に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、疎水性のポリオレフィン骨格に共有結合を介して、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基などの極性基や、ポリマー鎖を導入した変性ポリオレフィンとすることができる。
変性ポリオレフィンの製造方法、すなわち、ポリオレフィン骨格に共有結合を介して、極性基や、ポリマー鎖を導入する方法としては、ポリオレフィン存在下で極性基を有するモノマーを重合する方法、又はポリマー鎖をポリオレフィンに結合させる方法等を挙げることができる。目的とする樹脂エマルションの特性等に応じて、ポリオレフィン、極性基を有するモノマーやポリマー鎖の種類及び組合せを適宜選択できる。言い換えれば、変性ポリオレフィンの化学構造分類は特に限定されることはなく、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト変性体などのいずれでもよい。またポリオレフィンとしては、反応性基を有しないポリオレフィン、又は反応性基を有するポリオレフィンのいずれでも用いることができる。
【0028】
反応性基を有しないポリオレフィンとしては、公知の各種ポリオレフィン及び変性ポリオレフィンを用いることができ、特に限定されないが、例えば、エチレン又はプロピレンの単独重合体、エチレンとプロピレンとの共重合体、エチレン又は/及びプロピレンとその他コモノマーとの共重合体が挙げられる。コモノマーとしては例えばブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、シクロペンテン、シクロヘキセン、及びノルボルネンなどの炭素数2以上のα−オレフィンコモノマーが挙げられる。α−オレフィンコモノマーとして好ましくは炭素数2〜8のα−オレフィンコモノマーであり、より好ましくは炭素数2〜6のα−オレフィンコモノマーであり、更により好ましくは炭素数2〜4のα−オレフィンコモノマーである。
【0029】
もしくは、これらα−オレフィンコモノマー同士2種類以上の共重合体も用いることができる。 またα−オレフィンモノマーと酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルなどのコモノマーとの共重合体、芳香族ビニルモノマーと共役ジエンモノマーとから選ばれる2種以上のモノマーの共重合体の水素添加体、なども用いることができる。なお単に共重合体という場合はランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。またポリオレフィンは直鎖状であっても分岐状であってもよい。
【0030】
更に、これらポリオレフィンを塩素化した塩素化ポリオレフィンも使用しうる。塩素化ポリオレフィンの塩素化度は通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上であり、また塩素化度は通常50重量%以下であり、好ましくは30重量%以下である。但し環境負荷を低減する目的からは、ポリオレフィンは実質的に塩素を含まないことが望ましい。実質的に塩素を含まないとは、例えばポリオレフィンの塩素化率が5重量%未満である。
【0031】
反応性基を有するポリオレフィンとしては、例えば、ポリオレフィン重合時に反応性基を有しない不飽和化合物と反応性基を有する不飽和化合物とを共重合した共重合体、又は、反応性基を有するラジカル重合性不飽和化合物をポリオレフィンにグラフト重合した重合体、不飽和末端基を持つポリオレフィンを13族〜17族の元素基等に変換した重合体を用いることができる。
【0032】
反応性基としては、例えばカルボン酸基、ジカルボン酸無水物基、及びジカルボン酸無水物モノエステル基、水酸基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基などが挙げられ、カルボン酸基、ジカルボン酸無水物基、及びジカルボン酸無水物モノエステル基がより好ましい。カルボン酸基、ジカルボン酸無水物基、及びジカルボン酸無水物モノエステル基は、反応性が高く親水性高分子と結合が容易なだけでなく、これらの基を有する不飽和化合物も多くポリオレフィンへ共重合もしくはグラフト反応させることも容易であり、ポリオレフィンがこれらの基を有する、いわゆる酸変性ポリオレフィン樹脂は水分散性に優れるからである。
【0033】
ポリオレフィン重合時に反応性基を有しない不飽和化合物と反応性基を有する不飽和化合物とを共重合した共重合体とは、反応性基を有する不飽和化合物が主鎖に挿入された共重合体である。例えば、エチレン、プロピレン、ブテン等のα−オレフィンと、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸(ジメチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸(2−イソシアナト)エチル、無水マレイン酸等のα、β−不飽和カルボン酸、同エステル又は無水物とを共重合体して得られる。(なお本発明において、「(メタ)アクリル酸〜」とは、「アクリル酸〜またはメタクリル酸〜」を意味する。)
これら共重合体として具体的には、例えばプロピレン−ブテン−無水マレイン酸共重合体などが使用できる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また市販品を使用することももちろん可能である。
【0034】
反応性基を有するラジカル重合性不飽和化合物をポリオレフィンにグラフト重合した重合体は、予め重合したポリオレフィンに、反応性基を有するラジカル重合性不飽和化合物をグラフト重合して得られ、反応性基を有する不飽和化合物は主鎖にグラフトされている。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンに(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸又はその無水物、イタコン酸又はその無水物、クロトン酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルや(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸(ジメチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸(2−イソシアナト)エチル等をグラフトした重合体である。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本反応のポリオレフィンとしては、上述の反応性基を有しないポリオレフィンを使用することができる。
【0035】
反応性基を有するラジカル重合性不飽和化合物をポリオレフィンにグラフト重合した重合体として、具体的には、例えば無水マレイン酸変性ポリプロピレン及びその塩素化物、無水マレイン酸変性プロピレン−エチレン共重合体及びその塩素化物、無水マレイン酸変性プロピレン−ブテン共重合体及びその塩素化物、アクリル酸変性ポリプロピレン及びその塩素化物、アクリル酸変性プロピレン−エチレン共重合体及びその塩素化物、アクリル酸変性プロピレン−ブテン共重合体及びその塩素化物などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
グラフト重合に用いるラジカル重合開始剤としては、通常のラジカル開始剤から適宜選択して使用することができ、例えばベンゾイルパーオキシド及びt−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボナートなどの有機過酸化物、アゾニトリル等を挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
反応性基を有するラジカル重合性不飽和化合物をポリオレフィンにグラフト重合した重合体の製造方法は特に限定されず、いかなる製法であってもよい。例えば、溶液変性法(溶液中で加熱攪拌して反応する方法)、溶融変性法(無溶媒で溶融加熱攪拌して反応する方法、又は、押し出し機で加熱混練して反応する方法)等が挙げられる。
【0038】
不飽和末端基を持つポリオレフィンを13族〜17族の元素基等に変換した重合体は、例えば、特開2001−288372号に記載されているように末端二重結合を有するポリオレフィンの二重結合部をホウ素基、アルミニウム基のような13族元素基に変換したポリオレフィン、特開2005−48172号に記載されているように末端二重結合を有するポリオレフィンの二重結合部をハロゲン元素に変換したポリオレフィン、特開2001−98140号に記載されているように末端二重結合を有するプロピレン系重合体の二重結合部をメルカプト基に変換したポリオレフィンを用いることができ、通常、ブロック共重合体を得ることができる。
【0039】
疎水性のポリオレフィン骨格に共有結合を介して導入するポリマー鎖は、所望する物性に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、特に限定されず用いることができる。直鎖状であっても分岐状であってもよい。例えば、ポリ(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等の合成高分子、カチオンデンプン、デキストリン、ヒドロキシエチルセルロース等の半合成高分子、寒天、アラビアゴム、ゼラチン等の天然高分子のいずれも用いることができる。当該ポリマー鎖は反応性基を有していてもよい。
【0040】
当該ポリマー鎖は、安定した物性を得やすいことから合成高分子を用いるのが好ましい。なかでも、ポリ(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、及びポリビニルピロリドン樹脂がより好ましく、両親媒性を有するポリエーテル樹脂が更により好ましい。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
当該ポリマー鎖に用いるポリ(メタ)アクリル樹脂は、不飽和カルボン酸若しくはそのエステル又は無水物を、ラジカル重合、アニオン重合、又はカチオン重合により重合することで得られる。不飽和カルボン酸若しくはそのエステル又は無水物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸(ジメチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸(2−イソシアナト)エチル、無水マレイン酸等を挙げることができる。また、所望する物性に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、様々な熱可塑性樹脂フィルム基材との良好な接着性を持たせるために、疎水性ラジカル重合性化合物(疎水性モノマー)を共重合することができる。共重合可能な疎水性モノマーとしては、例えば炭素原子数1〜12のアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系モノマーや、炭素原子数1〜12の炭化水素基を有する重合性ビニルモノマーなどが挙げられる。
【0042】
当該ポリマー鎖に用いるポリビニルアルコール樹脂は、通常、酢酸ビニルを重合させポリ酢酸ビニルを得た後、ケン化することで得ることができる。ケン化度は完全ケン化でも部分ケン化でもよい。 また、当該ポリマー鎖に用いるポリビニルピロリドン樹脂は、ビニルピロリドンを重合させることで得ることができる。市販品を用いてもよいことは当然である。
【0043】
当該ポリマー鎖をポリオレフィンに導入する方法は特に限定されないが、例えば、ポリオレフィンの存在下でラジカル重合する方法、水酸基、アミノ基、グリシジル基、(無水)カルボン酸基等の反応性基を有するアクリル系樹脂を、反応性基を有するポリオレフィンと反応させる方法、等が挙げられる。
【0044】
疎水性のポリオレフィン骨格に共有結合を介して導入するポリマー鎖として用いる両親媒性を有するポリエーテル樹脂は、環状アルキレンオキサイドまたは環状アルキレンイミンを開環重合することで得られる。ポリオレフィンとの結合方法は特に限定はされないが、例えば、反応性基を有するポリオレフィン中で環状アルキレンオキサイドを開環重合する方法、開環重合等により得られたポリエーテルポリオールやポリエーテルアミンなどの反応性基を有するポリエーテル樹脂を、反応性基を有するポリオレフィンと反応する方法等を挙げることができる。
【0045】
ポリエーテルアミンは、ポリエーテル骨格を有する樹脂の片末端又は両末端に、反応性基としての1級アミノ基を有する化合物である。ポリエーテルアミンとしては、米国ハンツマン社製ジェファーミンMシリーズ、Dシリーズ、EDシリーズなどを使用してもよい。
ポリエーテルポリオールはポリエーテル骨格を有する樹脂の両末端に、反応性基としての水酸基を有する化合物である。親水性を示すポリアルキレンオキサイドやポリアルキレンイミンとして好ましくは、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレンイミンが挙げられる。
【0046】
反応性基は1以上あればよいが、反応性基を1つのみ有することがより好ましい。反応性基が2以上あると、ポリオレフィンと結合させる際に3次元網目構造となりゲル化してしまう可能性があるからである。ただし、反応性基を複数有していても、他より反応性の高い反応性基が1つのみであれば、前述のゲル化は回避可能である。例えば、複数の水酸基と、それより反応性の高い1つのアミノ基を有する親水性高分子は好ましい例の一つである。ここでの反応性とはポリオレフィンの有する反応基との反応性である。
本発明におけるポリオレフィン樹脂は、水分散体として市販させているオレフィン樹脂を好ましく使用できる。例えば東洋紡績(株)製のハードレンシリーズ、三菱化学(株)製のアプトロックシリーズ、ユニチカ(株)製のアロベースシリーズ等を使用できる。
【0047】
(第1のインク色材)
本発明で使用する色材は、特に限定はなく、水性インクジェットインクにおいて通常使用される色材を使用することができ、顔料や染料等が挙げられる。
耐候性、耐水性を要求される用途であれば、顔料を使用することが好ましい。顔料としては、公知慣用の有機顔料あるいは無機顔料を使用することができる。
【0048】
本発明で使用する顔料は、公知慣用の有機顔料あるいは無機顔料の中から選ばれる少なくとも一種の顔料である。また、本発明は未処理顔料、処理顔料のいずれでも適用することができる。
プラスチックを被記録材とする印刷の場合、インクジェットインクとしては、イエローインク、シアンインク、マゼンタインク、ブラックインク等のほか、視認性を高める目的から白色インクも使用される。これらの使用される顔料は特に限定はなく、通常水性インクジェット記録用インク用の顔料として使用されているものが使用できる。具体的には、水や水溶性有機溶剤に分散可能であり、公知の無機顔料や有機顔料が使用できる。無機顔料としては例えば、酸化鉄、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法等の公知の方法によって製造されたカーボンブラック等がある。また、有機顔料としては、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などを含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用することができる。
【0049】
例えばブラックインクに使用される顔料としては、カーボンブラックとして、三菱化学社製のNo.2300、No.2200B、No.900、No.960、No.980、No.33、No.40、No,45、No.45L、No.52、HCF88、MA7、MA8、MA100、等が、コロンビア社製のRaven5750、Raven5250、Raven5000、Raven3500、Raven1255、Raven700等が、キャボット社製のRegal400R、Regal330R、Regal660R、MogulL、Mogul700、Monarch800、Monarch880、Monarch900、Monarch1000、Monarch1100、Monarch1300、Monarch1400等が、デグサ社製のColorBlackFW1、同FW2、同FW2V、同FW18、同FW200、同S150、同S160、同S170、Printex35、同U、同V、同1400U、SpecialBlack6、同5、同4、同4A、NIPEX150、NIPEX160、NIPEX170、NIPEX180等が挙げられる。
【0050】
またイエローインクに使用される顔料の具体例としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、12、13、14、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、114、120、128、129、138、150、151、154、155、174、180、185等が挙げられる。
【0051】
また、マゼンタインクに使用される顔料の具体例としては、C.I.ピグメントレッド5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、112、122、123、146、168、176、184、185、202、209、等が挙げられる。
【0052】
また、シアンインクに使用される顔料の具体例としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:3、15:4、16、22、60、63、66等が挙げられる。
【0053】
また、白インクに使用される顔料の具体例としては、アルカリ土類金属の硫酸塩、炭酸塩、微粉ケイ酸、合成珪酸塩、等のシリカ類、ケイ酸カルシウム、アルミナ、アルミナ水和物、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、クレイ等があげられる。また、前記無機白色顔料が各種表面処理方法で表面処理されていてもよい。
【0054】
また、染料としては、例えば、C.I.アシッドブラック1、2、7、16、17、24、26、28、31、41、48、52、58、60、63、94、107、109、112、118、119、121、122、131、155、156;C.I.アシッドイエロー1、3、4、7、11、12、13、14、17、18、19、23、25、29、34、38、40、41、42、44、49、53、55、59、61、71、72、76、78、79、99、111、114、116、122、135、142、161、172、;C.I.アシッドオレンジ7、8、10、19、20、24、28、33、41、45、51、56、64;C.I.アシッドレッド1、4、6、8、13、14、15、18、19、21、26、27、30、32、34、35、37、40、42、44、51、52、54、57、80、82、83、85、87、88、89、92、94、97、106、108、110、111、114、115、119、129、131、133、134、135、143、143:1、144、152、154、155、172、176、180、184、186、187、249、254、256、289、317、318;C.I.アシッドバイオレット7、11、15、34、35、41、43、49、51、75;C.I.アシッドブルー1、7、9、15、22、23、25、27、29、40、41、43、45、49、51、53、55、56、59、62、78、80、81、83、90、92、93、102、104、111、113、117、120、124、126、138、145、167、171、175、183、229、234、236、249;C.I.アシッドグリーン3、9、12、16、19、20、25、27、41、44;C.I.アシッドブラウン4、14等の酸性染料や、
【0055】
C.I.ベイシックブラック2.8;C.I.ベイシックイエロー1、2、11、12、14、21、32、36;C.I.ベイシックオレンジ2、15、21、22;C.I.ベイシックレッド1、2、9、12、13、37;C.I.ベイシックバイオレット1、3、7、10、14;C.I.ベイシックブルー1、3、5、7、9、24、25、26、28、29;C.I.ベイシックグリーン1、4;ベイシックブラウン1、12等の塩基性染料や、
【0056】
C.I.ダイレクトブラック2、4、9、11、14、17、19、22、27、32、36、38、41、48、49、51、56、62、71、74、75、77、78、80、105、106、107、108、112、113、117、132、146、154、168、171、194;I.C.ダイレクトイエロー1、2、4、8、11、12、24、26、27、28、33、34、39、41、42、44、50、51、58、72、85、86、87、88、98、100、110、127、135、141、142、144;C.I.ダイレクトオレンジ6、8、10、26、29、41、49、52、102;C.I.ダイレクトレッド1、2、4、8、9、11、13、15、17、20、23、24、28、31、33、37、39、44、46、47、48、51、59、62、63、73、75、77、80、81、83、84、85、87、89、90、94、95、99、101、108、110、145、189、197、220、224、225、226、227、230、250、254、256、257;C.I.ダイレクトバイオレット1、7、9、12、35、48、51、90、94;C.I.ダイレクトブルー1、2、6、8、15、22、25、34、69、70、71、72、75、76、78、80、81、82、83、86、90、98、106、110、110、120、123、158、163、165、192、193、194、195、196、199、200、201、202、203、207、218、236、237、239、246、258、287;ダイレクトグリーン1、6、8、28、33、37、63、64;C.I.ダイレクトブラウン1A、2、6、25、27、44、58、95、10、101、106、112、173、194、195、209、210、211等の直接染料や、
【0057】
C.I.リアクテブブラック1、3、5、6、8、12、14;C.I.リアクテブイエロー1、2、3、13、14、15、17;C.I.リアクテブオレンジ2、5、7、16、20、24;、リアクテブレッド6、7、11、12、15、17、21、23、24、35、36、42、63、66、84、184;C.I.リアクテブバイオレット2、4、5、8、9;C.I.リアクテブブルー2、5、7、12、13、14、15、17、18、19、20、21、25、27、28、37、38、40、41;C.I.リアクテブグリーン5、7;リアクテブブラウン1、7、16等の反応性染料や、
【0058】
C.I.フードブラック1、2;C.I.フードイエロー3、4、5;C.I.フードレッド2、3、7、9、14、52、87、92、94、102、104、105、106;C.I.フードバイオレット2;C.I.フードブルー1、2;C.I.フードグリーン2、3等の食品用色素等が挙げられる。
【0059】
本発明においては、顔料表面に水分散性付与基を有し、分散剤が無くとも安定に分散状態が維持できる、いわゆる自己分散型顔料(表面処理顔料)でも良いし、顔料表面の全体をポリマーで被覆し、これにより分散剤が無くとも安定に分散状態が維持できる、いわゆるカプセル顔料(水分散性ポリマー包含顔料)でも良いし、分散剤により分散された顔料を使用してもよい。
前記顔料の平均粒子径は、通常インクジェットインクに使用される粒径であることが好ましく、具体的には50〜500nmが好ましく、カラーインクに関しては50〜300nmがより好ましい。
【0060】
前記顔料は、公知慣用の顔料分散剤やバインダーを使用して水に分散してもよいし、界面活性剤を使用してもよい。
前記顔料分散剤としては水性樹脂がよく、好ましい例としては、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのアクリル系樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのスチレン−アクリル樹脂、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、及び該水性樹脂の塩が挙げられる。
前記共重合体の塩を形成するための化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどの水酸化アルカリ金属類、およびジエチルアミン、アンモニア、エチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、モルホリンなどが挙げられる。これらの塩を形成するための化合物の使用量は、前記共重合体の中和当量以上であることが好ましい。
また市販品を使用することも勿論可能である。市販品としては、味の素ファインテクノ(株)製品)のアジスパーPBシリーズ、ビックケミー・ジャパン(株)のDisperbykシリーズ、BYK−シリーズ、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製のEFKAシリーズ等を使用できる。
【0061】
(第1のインク水溶性溶媒及び/または水)
本発明で使用する水溶性溶媒及び/または水は、水単独で使用してもよいし、水と水溶性溶媒からなる混合溶媒でもよい。水溶性溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、等のケトン類;メタノール、エタノール、2−プロパノール、2−メチル−1−プロパノール、1−ブタノール、2−メトキシエタノール、等のアルコール類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、等のアミド類が挙げられ、とりわけ炭素原子数が3〜6のケトン及び炭素原子数が1〜5のアルコールからなる群から選ばれる化合物を用いるのが好ましい。
【0062】
(第1のインクの製造方法)
本発明で使用する第1のインクは、前記顔料の分散液(顔料ペースト)を作成し、それを水で希釈し、前記ヒドロキシ基及び/またはカルボキシル基を有する樹脂を加え、必要に応じて湿潤剤(乾燥抑止剤)、浸透剤、あるいはその他の添加剤を添加して、インクを調製することができる。
【0063】
(顔料ペースト)
前記顔料ペーストを調製する方法としては、特に限定されず公知の方法を挙げることができる。例えば下記の方法があげられる。
(1)顔料分散剤及び水を含有する水性媒体に、顔料を添加した後、攪拌・分散装置を用いて顔料を該水性媒体中に分散させることにより、顔料ペーストを調製する方法。
(2)顔料、及び顔料分散剤を2本ロール、ミキサー等の混練機を用いて混練し、得られた混練物を、水を含む水性媒体中に添加し、攪拌・分散装置を用いて顔料ペーストを調製する方法。
(3)メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等のような水と相溶性を有する有機溶剤中に顔料分散剤を溶解して得られた溶液に顔料を添加した後、攪拌・分散装置を用いて顔料を有機溶液中に分散させ、次いで水性媒体を用いて転相乳化させた後、前記有機溶剤を留去し顔料ペーストを調製する方法。
(4)メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等のような水と相溶性を有する有機溶剤中に顔料分散剤を溶解して得られた溶液に顔料を添加した後、攪拌・分散装置を用いて顔料を有機溶液中に分散させ、次いで塩基性化合物を用いて中和し水に分散させ顔料ペーストを調製する方法。
(5)メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等のような水と相溶性を有する有機溶剤中に顔料分散剤を溶解して得られた溶液に顔料を添加した後、攪拌・分散装置を用いて顔料を有機溶液中に分散させ、次いで塩基性化合物を用いて中和し水に分散させた後、さらに、酸性化合物を加えて顔料分散剤を疎水性化することによって前記顔料分散剤を顔料に固着する、いわゆる酸析法によって顔料ペーストを調整する方法。
【0064】
攪拌・分散装置としては、例えば、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ボールミル、ロールミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、ナノマイザー等を挙げることができ、これらのうちの1つを単独で用いてもよく、2種類以上装置を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
また、混練機としては、2本ロール、ヘンシェルミキサー、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、プラネタリーミキサー等を上げることができ、これらのうちの1つを単独で用いてもよく、2種類以上装置を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
前記顔料ペーストに占める顔料量は5〜60質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることがより好ましい。顔料量が5質量%より少ない場合は、前記顔料ペーストから調製した水性インクの着色が不充分であり、充分な画像濃度が得られない傾向にある。また、逆に60質量%よりも多い場合は、顔料ペーストにおいて顔料の分散安定性が低下する傾向がある。
【0067】
また、インクの調製例の際には、粗大粒子が、ノズル詰まり、その他の画像特性を劣化させる原因になるため、インク調製後に、遠心分離、あるいは濾過処理等により粗大粒子を除去することが好ましい。
【0068】
(湿潤剤)
前記湿潤剤は、インクの乾燥防止を目的として添加する。乾燥防止を目的とする湿潤剤のインク中の含有量は3〜50質量%であることが好ましい。
本発明で使用する湿潤剤としては特に限定はないが、水との混和性がありインクジェットプリンターのヘッドの目詰まり防止効果が得られるものが好ましい。例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、分子量2000以下のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、メソエリスリトール、ペンタエリスリトール、等が挙げられる。中でも、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオールを含むことが安全性を有し、かつインク乾燥性、吐出性能に優れた効果が見られる。
【0069】
(浸透剤)
前記浸透剤は、被記録媒体への浸透性改良や記録媒体上でのドット径調整を目的として添加する。浸透剤としては、例えばエタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール、エチレングリコールヘキシルエーテルやジエチレングリコールブチルエーテル等のアルキルアルコールのエチレンオキシド付加物やプロピレングリコールプロピルエーテル等のアルキルアルコールのプロピレンオキシド付加物等が挙げられる。
インク中の浸透剤の含有量は0.01〜10質量%であることが好ましい。
【0070】
(界面活性剤)
前記界面活性剤は、表面張力等のインク特性を調整するために添加する。このために添加することのできる界面活性剤は特に限定されるものではなく、各種のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられ、これらの中では、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が好ましい。
【0071】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩及びスルホン酸塩、高級アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩等が挙げられ、これらの具体例として、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、イソプロピルナフタレンスルホン酸塩、モノブチルフェニルフェノールモノスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、ジブチルフェニルフェノールジスルホン酸塩などを挙げることができる。
【0072】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、脂肪酸アルキロールアミド、アルキルアルカノールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー、等を挙げることができ、これらの中では、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマーが好ましい。
【0073】
その他の界面活性剤として、ポリシロキサンオキシエチレン付加物のようなシリコーン系界面活性剤;パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、オキシエチレンパーフルオロアルキルエーテルのようなフッ素系界面活性剤;スピクリスポール酸、ラムノリピド、リゾレシチンのようなバイオサーファクタント等も使用することができる。
【0074】
これらの界面活性剤は、単独で用いることもでき、又2種類以上を混合して用いることもできる。また、界面活性剤の溶解安定性等を考慮すると、そのHLBは、7〜20の範囲であることが好ましい。界面活性剤を添加する場合は、その添加量はインクの全質量に対し、0.001〜2質量%の範囲が好ましく、0.001〜1.5質量%であることがより好ましく、0.01〜1質量%の範囲であることがさらに好ましい。界面活性剤の添加量が0.001質量%未満の場合は、界面活性剤添加の効果が得られない傾向にあり、2質量%を超えて用いると、画像が滲むなどの問題を生じやすくなる。
【0075】
また、必要に応じて防腐剤、粘度調整剤、pH調整剤、キレート化剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を添加することができる。
【0076】
前記顔料ペーストから調製するインクジェット記録用インクに占める顔料量は、充分な画像濃度を得る必要性と、インク中での顔料の分散安定性を確保するために、1〜20質量%であることが好ましい。
【0077】
本発明において第1のインクの表面張力は、20mN/m以上60mN/m以下であることが好ましい。より好ましくは、20mN以上45mN/m以下であり、更に好ましくは、20mN/m以上40mN/m以下である。表面張力が20mN/m未満となるとノズル面に液体が溢れ出し、正常に印字できない場合がある。一方、60mN/mを超えると非吸収基材でのはじきが発生し易い傾向がある。
【0078】
本発明において第1のインクの粘度は、1.2mPa・s以上20.0mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは2.0mPa・s以上15.0mPa・s未満、更に好ましくは3.0mPa・s以上12.0mPa・s未満である。粘度がこの範囲において、優れた吐出性と、長期間にわたる良好な噴射性の維持が達成できる。
第1のインクの表面張力や粘度は、含有する界面活性剤や水溶性溶媒の種類や添加量を調製するにより上記の好ましい範囲に維持することができる。
【0079】
(第2のインクカチオン性ポリウレタン樹脂(A))
本発明で使用する第2のインクは、前記カチオン性ポリウレタン樹脂(A)を含む。前記カチオン性ポリウレタン樹脂(A)は、前記一般式[I]で表される構造単位を有し、水性媒体中で安定に分散した水性分散体を形成するものである。前記水性媒体としては、水を主成分とする均一溶媒系であれば特に限定はされない。このような溶媒系としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールといったアルコール系の水溶性有機溶媒と水とを混和させた溶媒系や、テトラヒドロフラン、ブチルセロソルブといったエーテル系の水溶性有機溶媒と水とを混和させた溶媒系が挙げられる。この中で最も好適な水性媒体としては、イソプロパノール/水の混合溶媒系である。また、このような水溶性の有機溶媒を添加する量としては、インク全体中に含まれる水の量に対して、50質量%以下にすることが好ましい。
【0080】
前記カチオン性ポリウレタン樹脂(A)は、第2のインクの溶媒である水溶性溶媒及び/または水中で分散するものである。その分散した樹脂粒子の平均粒子径としては、安定した吐出性を確保しやすいとの観点から、5nm〜1000nmであることが好ましく、より好ましくは10nm〜400nmである。
【0081】
前記一般式[I]中のカチオン性の官能基の含有量としては、カチオン性ポリウレタン樹脂(A)が水性媒体中で溶解することがなく、安定な分散体を形成できる範囲であれば、特に限定されるものではない。従って、カチオン性ポリウレタン樹脂(A)の分子量・分岐度等の前記一般式[I]以外の構造等によって、好ましいカチオン性官能基の含有量が異なるものであるが、通常、該カチオン性ポリウレタン樹脂(A)固形分中に、カチオン当量として0.01〜1当量/kg含有していれば水性分散体とすることができ、特にカチオン性ポリウレタン樹脂(A)の水性媒体中への分散性に優れる点から、0.02〜0.8当量/kg含有していることが好ましく、0.03〜0.6当量/kg含有していることが特に好ましい。
【0082】
カチオン性ポリウレタン樹脂(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算値で求められる数平均分子量(Mn)としては、カチオン性ポリウレタン樹脂(A)が水性媒体中で溶解せずに安定な分散体を形成できる範囲であれば特に限定されるものではなく、通常1,000〜5,000,000の範囲であり、好ましくは、5,000〜1,000,000の範囲である。
【0083】
前記カチオン性ポリウレタン樹脂(A)は、種々の化合物を使用して製造することができるが、工業的に入手容易でかつ安価な原料を用いる製造方法としては、下記一般式[IV]で示される1分子中にエポキシ基を2個有する化合物(a−1)と2級アミン(a−2)とを反応させて得られる3級アミノ基含有ポリオール(a)を、後述するポリイソシアネート(g)と反応させる方法が最も有用である。
【0085】
(式[IV]中、R
1は、脂肪族環式構造を含んでいてもよいアルキレン鎖、2価フェノール類の残基、又はポリオキシアルキレン鎖である。)
【0086】
前記3級アミノ基含有ポリオール(a)は、ポリウレタン樹脂に水分散性を付与するための3級アミノ基の中和塩や4級アミノ基なるカチオン性基を、ポリウレタン樹脂骨格の側鎖に導入するために用いる化合物である。
【0087】
前記3級アミノ基含有ポリオール(a)は、その分子内に含有する3級アミノ基を、酸による中和、あるいは4級化剤による4級化によってカチオン性基を発生させるための前駆体である。
【0088】
前記3級アミノ基含有ポリオール(a)は、例えば、1分子中にエポキシ基を2個有する化合物(a−1)と2級アミン(a−2)とを、エポキシ基1当量に対してNH基1当量となるように配合し、無触媒で、常温下又は加熱下で開環付加反応させることにより容易に得られる。
【0089】
前記一般式[IV]で示される1分子中にエポキシ基を2個有する化合物(a−1)としては、下記の化合物を、単独で、あるいは2種以上を併用して使用することができる。
【0090】
前記R
1が、脂肪族環式構造を含んでいてもよいアルキレン鎖であるものを得る場合の原料としては、例えばエタンジオール1,2−ジグリシジルエーテル、プロパンジオール1,2−ジグリシジルエーテル、プロパンジオール1,3−ジグリシジルエーテル、ブタンジオール1,4−ジグリシジルエーテル、ペンタンジオール1,5−ジグリシジルエーテル、3−メチル−ペンタンジオール1,5−ジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオール1,6−ジグリシジルエーテル、ポリブタジエングリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジオール1,4−ジグリシジルエーテル、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパン(水素添加ビスフェノールA)のジグリシジルエーテル、水素添加ジヒドロキシジフェニルメタンの異性体混合物(水素添加ビスフェノールF)のジグリシジルエーテル等を使用することができる。
【0091】
また、R
1が2価フェノール類の残基であるものを得る場合の原料としては、例えばレゾルシノール−ジグリシジルエーテル、ハイドロキノン−ジグリシジルエーテル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン(ビスフェノールA)のジグリシジルエーテル、ジヒドロキシジフェニルメタンの異性体混合物(ビスフェノールF)のジグリシジルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3−3’−ジメチルジフェニルプロパンのジグリシジルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルシクロヘキサンのジグリシジルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルのジグリシジルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジベンゾフェノンのジグリシジルエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−エタンのジグリシジルエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタンのジグリシジルエーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3−tertブチルフェニル)−2,2−プロパンのジグリシジルエーテル、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタンのジグリシジルエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(ビスフェノールS)のジグリシジルエーテル等を使用することができる。
【0092】
また、R
1がポリオキシアルキレン鎖であるものを得る場合の原料としては、例えばジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、更にオキシアルキレンの繰り返し単位数が3〜60のポリオキシアルキレングリコールジグリシジルエーテル、例えば、ポリオキシエチレングリコールジグリシジルエーテル及びポリオキシプロピレングリコールジグリシジルエーテル、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体のジグリシジルエーテル、ポリオキシテトラエチレングリコールジグリシジルエーテル等を使用することができる。
【0093】
これらの中でも、カチオン性ポリウレタン樹脂の水分散性をより向上させることができることから、上記一般式[IV]のR
1が、ポリオキシアルキレン鎖となるポリオキシアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、特に、ポリオキシエチレングリコールジグリシジルエーテル、及び/又はポリオキシプロピレングリコールジグリシジルエーテル、及び/又はエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体のジグリシジルエーテルを用いることが好適である。
【0094】
前記一般式[IV]のR
1がポリオキシアルキレン鎖となるポリオキシアルキレングリコールのジグリシジルエーテルを用いる場合の該化合物のエポキシ当量としては、カチオン性ポリウレタン樹脂水性分散体中のカチオン濃度の設計を広範囲に行える点で、好ましくは1000g/当量以下、より好ましくは500g/当量以下、特に好ましくは300g/当量以下である。
【0095】
前述の方法において、1分子中にエポキシ基を2個有する化合物(a−1)との開環付加反応により3級アミノ基含有ポリオール(a)を製造するには、2級アミン(a−2)が必要である。
【0096】
前記2級アミン(a−2)としては、種々の化合物を使用できるが、反応制御の容易さの点で、分岐状又は直鎖状の脂肪族2級アミンが好ましい。
【0097】
前記2級アミン(a−2)として使用することができるものとしては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジ−tert−ブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジ−n−ペンチルアミン、ジ−n−ペプチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジイソオクチルアミン、ジノニルアミン、ジイソノニルアミン、ジ−n−デシルアミン、ジ−n−ウンデシルアミン、ジ−n−ドデシルアミン、ジ−n−ペンタデシルアミン、ジ−n−オクタデシルアミン、ジ−n−ノナデシルアミン、ジ−n−エイコシルアミンなどが挙げられる。
【0098】
これらの中で、3級アミノ基含有ポリオール(a)を製造する際に揮発し難いこと、あるいは、含有する3級アミノ基の一部又は全てを酸で中和、又は4級化剤で4級化する際に立体障害を軽減できること、などの理由から、炭素数2〜18の範囲の脂肪族2級アミンが好ましく、炭素数3〜8の範囲の脂肪族2級アミンがより好ましい。
【0099】
3級アミノ基含有ポリオール(a)が有する3級アミノ基の一部又は全てを、酸で中和、又は4級化剤で4級化することにより、3級アミノ基含有ポリオール(a)とポリイソシアネート(g)とを反応させて得られるカチオン性ポリウレタン樹脂(A)に水分散性を付与することができる。
【0100】
上記の3級アミノ基の一部又は全てを中和する際に使用することができる酸としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グルタル酸、酪酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、マロン酸、アジピン酸などの有機酸類や、スルホン酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の有機スルホン酸類、及び、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、硼酸、亜リン酸、フッ酸等の無機酸等を使用することができる。これらの酸は単独使用してもよく2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0101】
また、前記3級アミノ基の一部又は全てを4級化する際に使用することができる4級化剤としては、例えば、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等のジアルキル硫酸類や、メチルクロライド、エチルクロライド、ベンジルクロライド、メチルブロマイド、エチルブロマイド、ベンジルブロマイド、メチルヨーダイド、エチルヨーダイド、ベンジルヨーダイドなどのハロゲン化アルキル類、メタンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸メチル等のアルキル又はアリールスルホン酸メチル類、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等のエポキシ類などを使用することができる。これらは単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。
【0102】
本発明において、3級アミノ基の中和又は4級化に使用する酸や4級化剤の量は、特に制限はないが、本発明で用いるカチオン性ポリウレタン樹脂(A)の優れた分散安定性を発現させるために、3級アミノ基1当量に対して、0.1〜3当量の範囲であることがこのましく、0.3〜2.0当量の範囲であることがより好ましい。
【0103】
本発明で用いるカチオン性ポリウレタン樹脂(A)が、従来の手法により得られるカチオン性ポリウレタン樹脂と、樹脂中に存在するカチオン濃度を同一にして比較した場合、より優れた自己水分散性を有し、得られるカチオン性ポリウレタン樹脂は水性媒体への良好な分散安定性を有する。
【0104】
この様な効果を発現できる機構としては、ポリウレタン樹脂中のウレタン結合同士は、水素結合などにより擬結晶構造をとることは周知であり、カチオン性ポリウレタン樹脂(A)の側鎖に存在する3級アミノ基の中和塩、又は4級アミノ基は、例えば従来の手法のような3級アミノ基の中和塩、又は4級アミノ基がポリウレタン樹脂骨格の主鎖に存在する場合と比較して、立体障害の影響を受け難く、自由度が大きいため、水分散に重要な水分子との会合構造を容易に取れるためと推測される。
【0105】
3級アミノ基含有ポリオール(a)を得るための、1分子中にエポキシ基を2個有する化合物(a−1)と2級アミン(a−2)との反応方法について以下に説明する。
前記1分子中にエポキシ基を2個有する化合物(a−1)が有するエポキシ基と2級アミン(a−2)が有するNH基との反応比率[NH基/エポキシ基]は、好ましくは当量比で0.5/1〜1.1/1の範囲であり、より好ましくは当量比で0.9/1〜1/1の範囲である。
【0106】
これらの反応は無溶剤条件下にて行うこともできるが、反応制御を容易にする目的で、あるいは粘度低下による撹拌負荷の低減や均一に反応させる目的で、有機溶剤を使用し行うこともできる。
【0107】
前記有機溶剤としては、反応を阻害しない有機溶剤であればよく、例えばケトン類、エーテル類、酢酸エステル類、炭化水素類、塩素化炭化水素類、アミド類及びニトリル類などを使用することができる。
【0108】
前記ケトン類としては、例えばアセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等を使用することができる。エーテル類としては、例えばジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等を使用することができる。
【0109】
前記酢酸エステル類としては、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル等が例示できる。炭化水素類としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等を使用することができる。塩素化炭化水素類としては、例えば四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエタン等を使用することができる。アミド類としては、例えばジメチルホルムアミド、ニトリル類としては、例えばN−メチルピロリドン、アセトニトリル等を使用することができる。
【0110】
前記した有機溶剤のうち、低沸点を有する有機溶剤を使用する場合は、揮発による飛散を防止するために、密閉系により加圧反応をすることが好ましい。
【0111】
1分子中にエポキシ基を2個有する化合物(a−1)と2級アミン(a−2)とは、反応容器中に一括供給し反応させてもよく、また、1分子中にエポキシ基を2個有する化合物(a−1)と2級アミン(a−2)の何れか一方を反応容器に仕込み、他方を滴下することにより反応させてもよい。
【0112】
1分子中にエポキシ基を2個有する化合物(a−1)と2級アミン(a−2)との反応は、反応性が高いため通常は触媒を必要としない。しかし、2級アミン(a−2)の窒素原子が有する脂肪族などの置換基が大きく、前記化合物(a−1)との反応が、立体障害により遅くなる場合には、フェノール、酢酸、水、アルコール類などに代表されるプロトン供与性物質を触媒として使用してもよい。
【0113】
また、反応温度は、好ましくは室温〜160度の範囲であり、より好ましくは60〜120度の範囲である。また、反応時間は、特に限定しないが、通常30分〜14時間の範囲である。また、反応終点は、赤外分光法(IR法)にて、エポキシ基に起因する842cm−1付近の吸収ピークの消失によって確認できる。また、常法によりアミン当量(g/当量)と水酸基当量(g/当量)を求めることができる。
【0114】
前記カチオン性ポリウレタン樹脂(A)を製造する際には、前記3級アミノ基含有ポリオール(a)の他に、目的、用途に応じて一般にポリウレタンの合成に利用される種々のポリオール(f)を用いることができる。
【0115】
その中でも、好ましくは数平均分子量200〜10,000の範囲、より好ましくは数平均分子量300〜5,000の範囲のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリアセタールポリオール、ポリチオエーテルポリオール、及びポリブタジエンポリオール等の各種ポリオールが挙げられ、これらを単独使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0116】
上記ポリオールの中でも、工業的に入手が容易なポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールについて下記に代表的化合物を例示する。
【0117】
前記ポリエステルポリオールとしては、低分子量ポリオールとポリカルボン酸とをエステル化反応して得られるものを使用することができる。
【0118】
前記低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール(数平均分子量300〜6000の範囲)、ポリプロピレングリコール(数平均分子量300〜6000の範囲)、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体(数平均分子量300〜6000の範囲);ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA及びそのアルキレンオキサイド付加体;トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリストール、ソルビトール等を使用することができる。
【0119】
前記ポリエステルポリオールを製造する際に使用できるポリカルボン酸としては、例えばコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、トデカンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p’−ジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、及びこれらのポリカルボン酸の無水物あるいはエステル形成誘導体等を使用することができる。
【0120】
また、前記ポリエステルポリオールとしては、ε−カプロラクトン等の環状エステル化合物の開環重合反応によって得られるポリエステル、及びこれらの共重合ポリエステル等を使用することもできる。
【0121】
また、ポリエーテルポリオールとしては、例えば、後述する活性水素原子を少なくとも2個有する化合物を開始剤として使用し、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン、シクロヘキシレン等の化合物の1種以上を付加重合することによって得られるものを使用することができる。
【0122】
前記活性水素原子を少なくとも2個有する化合物としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール;アクニット酸、トリメリット酸、ヘミメリット酸、燐酸、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリイソプロパノールアミン、ピロガロール、ジヒドロ安息香酸、ヒドロキシフタール酸、1,2,3−プロパントリチオール等を使用することができる。
【0123】
また、ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はポリテトラメチレングリコール(PTMG)等のようなジオール類と、ジメチルカーボネート等によって代表されるようなジアルキルカーボネート或いはエチレンカーボネート等によって代表されるような環式カーボネートとの反応生成物などが挙げられる。
【0124】
なかでも、印字物の劣化を防止し、長期にわたって安定な印字物を保持するためには、ポリオールとして高耐久性のポリオールを使用することが好ましいことから、ポリカーボネートポリオールを使用することにより、カチオン性ポリウレタン樹脂(A)に、ポリカーボネートポリオールに由来する構造単位を導入することが好ましい。
【0125】
本発明で用いるカチオン性ポリウレタン樹脂(A)を製造する際に使用することができるポリイソシアネート(g)としては、芳香族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、及び脂肪族ポリイソシアネート等の、水性ポリウレタン樹脂の製造において用いられる種々の有機ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0126】
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−及び1,4−フェニレンジイソシアネート、1−メチル−2,4−フェニレンジイソシアネート、1−メチル−2,6−フェニレンジイソシアネート、1−エチル−2,4−フェニレンジイソシアネート、1−イソプロピル−2,4−フェニレンジイソシアネート、1,3−ジメチル−2,4−フェニレンジイソシアネート、1,3−ジメチル−4,6−フェニレンジイソシアネート、1,4−ジメチル−2,5−フェニレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)−ベンゼン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)−ベンゼン、メタ−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、パラ−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジエチルベンゼンジイソシアネート、ジイソプロピルベンゼンジイソシアネート、1−メチル−3,5−ジエチルベンゼンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ジエチルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、1,3,5−トリエチルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、ナフタレン−1,4−ジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、1−メチル−ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、ナフタレン−2,6−ジイソシアネート、ナフタレン−2,7−ジイソシアネート、1,1’−ジナフチル−2,2’−ジイソシアネート、ビフェニル−2,4’−ジイソシアネート、ビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,2’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート等を使用することができる。
【0127】
また、脂環式ポリイソシアネート及び脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−シクロペンチレンジイソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,2’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等及びこれらの3量体等を使用することができる。
【0128】
比較的安価なこと、原料を入手しやすいことから、1−メチル−2,4−フェニレンジイソシアネート、1−メチル−2,6−フェニレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)−ベンゼン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)−ベンゼン、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,2’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,2’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートが好適である。
【0129】
また、前記同様、得られる印字物の耐光変色等の劣化を防止するために、ポリイソシアネートとして、一般に無黄変型といわれる脂環式ポリイソシアネート及び/又は脂肪族ポリイソシアネートを使用することにより、カチオン性ポリウレタン樹脂(A)にかかる脂環式ポリイソシアネート及び/又は脂肪族ポリイソシアネートに由来する構造単位を導入することが好ましい。
【0130】
また、前記ポリイソシアネート(g)としては、原料を入手しやすさを考慮すると、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,2’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを使用することが特に好ましい。
【0131】
更に、得られる印字物の耐水性をより向上させる目的で、シラノール基を含有する構造単位を前記カチオン性ポリウレタン樹脂(A)に導入することが好ましい。シラノール基を含有する構造単位を導入すると、有機成分であるカチオン性ポリウレタン樹脂(A)からなる粒子と、金属アルコキシド(B)により形成される無機の金属酸化物マトリクスとの間に架橋構造が形成される。
【0132】
シラノール基を含有する構造単位としては、下記一般式[II]で表される構造単位を例示できる。
【0134】
(式[II]中、R
5は水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基であり、、R
6はハロゲン原子、アルコキシル基、アシロキシ基、フェノキシ基、イミノオキシ基又はアルケニルオキシ基であり、nは0、1又は2である。)
【0135】
前記一般式[II]で表される構造単位をカチオン性ポリウレタン樹脂(A)に導入するために用いる化合物としては、下記一般式[III]で示される化合物(h)であることが好ましい。
【0137】
(式[III]中、R
5は水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基であり、R
6はハロゲン原子、アルコキシル基、アシロキシ基、フェノキシ基、イミノオキシ基又はアルケニルオキシ基であり、nは0、1又は2であり、Yは活性水素基を少なくとも1個以上含有する有機残基である。)
【0138】
前記一般式[III]で示される化合物(h)としては、例えば、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−ヒドロキシルエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−ヒドロキシルエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(2−ヒドロキシルエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−ヒドロキシルエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシランまたはγ−(N,N−ジ−2−ヒドロキシルエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシランまたはγ−(N−フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトフェニルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0139】
カチオン性ポリウレタン樹脂(A)を製造する際には、種々の機械的特性や熱特性等の物性を有するポリウレタン樹脂の設計を行う目的で、ポリアミンを鎖伸長剤として使用してもよい。
【0140】
前記鎖伸長剤として使用可能なポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン等のジアミン類;N−ヒドロキシメチルアミノエチルアミン、N−ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、N−ヒドロキシプロピルアミノプロピルアミン、N−エチルアミノエチルアミン、N−メチルアミノプロピルアミン等の1個の1級アミノ基と1個の2級アミノ基を含有するジアミン類;ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアミン類;ヒドラジン、モノメチルヒドラジン、N,N’−ジメチルヒドラジン等のヒドラジン類;コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド等のジヒドラジド類;β−セミカルバジドプロピオン酸ヒドラジド、3−セミカルバジド−プロピル−カルバジン酸エステル、セミカルバジド−3−セミカルバジドメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン等のセミカルバジド類を使用することができる。更に、水も鎖伸長剤として使用することができる。
【0141】
カチオン性ポリウレタン樹脂(A)を製造する際には、前記ポリアミンの他に、ポリウレタン樹脂の種々の機械的特性や熱特性等の物性を調整する目的で、その他の活性水素原子含有の鎖伸長剤を使用することもできる。
【0142】
前記その他の活性水素含有の鎖伸長剤として使用することができるものは、例えば、エチレングリコール、ジエチレンリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等のグリコール類;ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン等のフェノール類、及び水が挙げられ、本発明のカチオン性ポリウレタン樹脂水分散体の保存安定性を低下させない範囲内においてこれらを単独もしくは併用しても構わない。
【0143】
本発明で使用するカチオン性ポリウレタン樹脂(A)を製造する方法としては、例えば、次のような方法を例示できる。これら方法によればカチオン性ポリウレタン樹脂(A)からなる粒子が水性媒体中に均一に分散した水性分散体を得ることができる。
【0144】
〔方法1〕ポリオール(f)とポリイソシアネート(g)と3級アミノ基含有ポリオール(a)と化合物(h)とを、一括又は分割して仕込み、溶剤中又は無溶剤下で反応させることによりポリウレタン樹脂を製造し、得られたポリウレタン樹脂中の3級アミノ基の一部又は全てを酸で中和、及び/又は4級化剤で4級化した後、水を投入して水分散せしめる方法。
【0145】
〔方法2〕ポリオール(f)とポリイソシアネート(g)と3級アミノ基含有ポリオール(a)と化合物(h)とを、一括又は分割して仕込み、溶剤中又は無溶剤下で反応させることにより末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを製造した後、ポリアミンを用いて鎖伸長することによりポリウレタン樹脂を製造し、前記ポリウレタン樹脂中の3級アミノ基の一部又は全てを酸で中和、及び/又は4級化剤で4級化した後、水を投入して水分散せしめる方法。
【0146】
〔方法3〕ポリオール(f)とポリイソシアネート(g)と3級アミノ基含有ポリオール(a)と化合物(h)とを、一括又は分割して仕込み、溶剤中又は無溶剤下で反応させることにより末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを製造し、得られたウレタンプレポリマー中の3級アミノ基の一部又は全てを酸で中和、及び/又は4級化剤で4級化した後、水を投入して水分散せしめ、その後にポリアミンを用いて鎖伸長する方法。
【0147】
〔方法4〕ポリオール(f)とポリイソシアネート(g)と3級アミノ基含有ポリオール(a)と化合物(h)とを、一括又は分割してこれらを仕込み、溶剤中又は無溶剤下で反応させることにより末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを製造し、得られたウレタンプレポリマー中の3級アミノ基の一部又は全てを酸で中和、及び/又は4級化剤で4級化した後、水系媒体中にホモジナイザー等の機械を用いて強制的に乳化させて水溶化又は水分散せしめ、その後にポリアミンを用いて鎖伸長する方法。
【0148】
〔方法5〕ポリオール(f)とポリイソシアネート(g)と3級アミノ基含有ポリオール(a)と化合物(h)とポリアミンとを、一括して仕込み、溶剤中又は無溶剤下で反応させることによりポリウレタン樹脂を製造し、得られたポリウレタン樹脂中の3級アミノ基の一部又は全てを酸で中和、及び/又は4級化剤で4級化した後、水を投入して水溶化又は水分散せしめる方法。
【0149】
〔方法6〕ポリオール(f)とポリイソシアネート(g)と3級アミノ基含有ポリオール(a)とを、一括又は分割して仕込み、溶剤中又は無溶剤下で反応させることによりポリウレタン樹脂を製造し、得られたポリウレタン樹脂中の3級アミノ基の一部又は全てを酸で中和、及び/又は4級化剤で4級化した後、水を投入して水分散せしめる方法。
【0150】
〔方法7〕ポリオール(f)とポリイソシアネート(g)と3級アミノ基含有ポリオール(a)とを、一括又は分割して仕込み、溶剤中又は無溶剤下で反応させることにより末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを製造した後、ポリアミンを用いて鎖伸長することによりポリウレタン樹脂を製造し、得られたポリウレタン樹脂中の3級アミノ基の一部又は全てを酸で中和、及び/又は4級化剤で4級化した後、水を投入して水分散せしめる方法。
【0151】
〔方法8〕ポリオール(f)とポリイソシアネート(g)と3級アミノ基含有ポリオール(a)とを、一括又は分割して仕込み、溶剤中又は無溶剤下で反応させることにより末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを製造し、得られたウレタンプレポリマー中の3級アミノ基の一部又は全てを酸で中和、及び/又は4級化剤で4級化した後、水を投入して水分散せしめ、その後にポリアミンを用いて鎖伸長する方法。
【0152】
〔方法9〕ポリオール(f)とポリイソシアネート(g)と3級アミノ基含有ポリオール(a)とを、一括又は分割してこれらを仕込み、溶剤中又は無溶剤下で反応させることにより末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを製造し、3級アミノ基の一部又は全てを酸で中和、及び/又は4級化剤で4級化した後、水系媒体中にホモジナイザー等の機械を用いて強制的に乳化させて水分散せしめ、その後にポリアミンを用いて鎖伸長する方法。
【0153】
〔方法10〕ポリオール(f)とポリイソシアネート(g)と3級アミノ基含有ポリオール(a)とポリアミンとを、一括して仕込み、溶剤中又は無溶剤下で反応させることによりポリウレタン樹脂を製造し、得られたポリウレタン樹脂中の3級アミノ基の一部又は全てを酸で中和、及び/又は4級化剤で4級化した後、水を投入して水分散せしめる方法。
【0154】
尚、上記〔方法1〕〜〔方法10〕の製造方法において、乳化剤を必要に応じて用いてもよい。
【0155】
本発明で使用可能な乳化剤としては、特に限定しないが、前記カチオン性ポリウレタン樹脂(A)の水分散体の優れた保存安定性を維持する観点から、基本的にノニオン性又はカチオン性であることが好ましい。例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合体等のノニオン系乳化剤;アルキルアミン塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等のカチオン系乳化剤等を使用することが好ましい。なお、前記カチオン性ポリウレタン樹脂水分散体への乳化剤の混和安定性が保たれる範囲内であれば、アニオン性又は両性の乳化剤を併用しても構わない。
【0156】
前記方法によりカチオン性ポリウレタン樹脂(A)を製造する際には、該樹脂の水分散性を助ける助剤として、親水基となりうる基を有する化合物(以下、親水基含有化合物という。)を使用してもよい。
【0157】
かかる親水基含有化合物としては、アニオン性基含有化合物、カチオン性基含有化合物、両性基含有化合物、又はノニオン性基含有化合物を用いることができるが、カチオン性ポリウレタン樹脂水分散体の優れた保存安定性を維持する観点から、ノニオン性基含有化合物が好ましい。
【0158】
前記ノニオン性基含有化合物としては、分子内に少なくとも1個以上の活性水素原子を有し、かつエチレンオキシドの繰り返し単位からなる基、及びエチレンオキシドの繰り返し単位とその他のアルキレンオキシドの繰り返し単位からなる基からなる群から選ばれる少なくとも一つの官能基を有する化合物を使用することができる。
【0159】
例えば、エチレンオキシドの繰り返し単位を少なくとも30質量%以上含有し、ポリマー中に少なくとも1個以上の活性水素原子を含有する数平均分子量300〜20,000のポリオキシエチレングリコール又はポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体グリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシブチレン共重合体グリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシアルキレン共重合体グリコール又はそれらのモノアルキルエーテル等のノニオン基含有化合物又はこれらを共重合して得られるポリエステルポリエーテルポリオールなどの化合物を使用することが可能である。
【0160】
次に、カチオン性ポリウレタン樹脂(A)を製造する際の、原料仕込み比率(当量比)について詳細に述べる。
【0161】
前記ポリオール(f)と3級アミノ基含有ポリオール(a)と、ポリイソシアネート(g)とを反応させる場合、イソシアネート基と活性水素原子含有基の当量比〔(g)が有するイソシアネート基の当量〕/〔(f)が有する水酸基の当量+(a)が有する水酸基の当量〕を、0.9/1〜1.1/1の範囲に調整することが好ましい。
【0162】
前記カチオン性ポリウレタン樹脂(A)を製造する際に、鎖伸長剤として、たとえばポリアミンを使用する場合、イソシアネート基と活性水素原子含有基の当量比〔(g)のイソシアネートの当量〕/〔(f)が有する水酸基の当量+(a)が有する水酸基の当量+ポリアミンが有するアミノ基の当量〕を、0.9/1〜1.1/1の範囲に調整することが好ましい。
【0163】
また、前記カチオン性ポリウレタン樹脂(A)は、ウレタンプレポリマーを製造した後に、ポリアミンを用いて鎖伸長反応させることにより製造してもよい。かかる場合、イソシアネート基と活性水素原子含有基との当量比〔(g)が有するイソシアネート基の当量〕/〔(f)が有する水酸基の当量+(a)が有する水酸基の当量〕を、1.1/1〜3/1の範囲に調整することが好ましく、1.2/1〜2/1の範囲に調整することがより好ましい。この場合、ポリアミンで鎖伸長する際のポリアミンが有するアミノ基と過剰のイソシアネート基との当量比は、好ましくは1.1/1〜0.9/1の範囲である。
【0164】
また、前記ポリオール(f)と3級アミノ基含有ポリオール(a)と化合物(h)と、ポリイソシアネート(g)とを反応させる場合、イソシアネート基と活性水素原子含有基の当量比〔(g)が有するイソシアネート基の当量〕/〔(f)が有する水酸基の当量+(a)が有する水酸基の当量+(h)が有する活性水素基の当量〕を、0.9/1〜1.1/1の範囲に調整することが好ましい。
【0165】
前記カチオン性ポリウレタン樹脂(A)を製造する際に、鎖伸長剤として、たとえばポリアミンを使用する場合、イソシアネート基と活性水素原子含有基の当量比〔(g)が有するイソシアネート基の当量〕/〔(f)が有する水酸基の当量+(a)が有する水酸基の当量+(h)が有する活性水素基の当量+ポリアミンが有する活性水素基の当量〕を、0.9/1〜1.1/1の範囲に調整することが好ましい。
【0166】
また、前記カチオン性ポリウレタン樹脂(A)は、ウレタンプレポリマーを製造した後に、ポリアミンを用いて鎖伸長反応させることにより製造してもよい。かかる場合、イソシアネート基と活性水素原子含有基との当量比〔(g)が有するイソシアネート基の当量〕/〔(f)が有する水酸基の当量+(a)が有する水酸基の当量+(h)が有する活性水素基の当量〕が、1.1/1〜3/1の範囲であることが好ましく、1.2/1〜2/1の範囲であることがより好ましい。この場合、ポリアミンで鎖伸長する際のポリアミンが有するアミノ基と過剰のイソシアネート基との当量比は、好ましくは1.1/1〜0.9/1の範囲である。
【0167】
かかる反応において、反応温度は、好ましくは20〜120℃の範囲であり、より好ましくは30〜100℃の範囲である。
【0168】
また、3級アミノ基含有ポリオール(a)は、優れた保存安定性を発現させることを目的として、最終的に得られるカチオン性ポリウレタン樹脂(A)に対して、好ましくは0.005〜1.5当量/kgの範囲であり、より好ましくは0.03〜1.0当量/kgであり、さらにより好ましくは0.15〜0.5当量/kgの範囲である。
【0169】
また、化合物(h)は、最終的に得られるカチオン性ポリウレタン樹脂(A)に対して、好ましくは0.1〜20質量%の範囲であり、より好ましくは0.5〜10質量%の範囲である。
【0170】
前記カチオン性ポリウレタン樹脂(A)は、無溶剤条件下で製造することもできるが、反応制御を容易にする目的で、又は粘度低下による撹拌負荷の低減や均一に反応させる目的で、有機溶剤下で製造することも可能である。
前記有機溶剤としては、例えば、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル等の酢酸エステル類;アセトニトリル等のニトリル類;n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエタン等の塩素化炭化水素類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類等を使用することができる。
【0171】
前記カチオン性ポリウレタン樹脂(A)は、無触媒下で製造することも可能であるが、種々の触媒、例えば、オクチル酸第一錫、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレート、ジブチル錫ジフタレート、ジブチル錫ジメトキシド、ジブチル錫ジアセチルアセテート、ジブチル錫ジバーサテート等の錫化合物、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、トリエタノールアミンチタネート等のチタネート化合物、その他、3級アミン類、4級アンモニウム塩等を使用してもよい。
【0172】
上記のようにして得られるカチオン性ポリウレタン樹脂(A)の水分散体中に含まれる有機溶剤は、必要により、反応の途中又は反応終了後に、例えば減圧蒸留などの方法により除去することが好ましい。
【0173】
前記カチオン性ポリウレタン樹脂(A)は、前記第2のインク中、固形分に換算して1〜30重量%含むことが好ましく、2〜25重量の範囲がなお好ましい。1重量%未満では第1のインクの硬化が不十分な傾向があり、30重量%を超える量では第2のインクの吐出安定性が劣る傾向がある。
【0174】
本発明で使用する第2のインクは、前記第1のインクで使用する色材や、湿潤剤(乾燥抑止剤)、浸透剤、あるいはその他の添加剤を適宜添加してインクを調製することができる。
第2のインクの表面張力は、20mN/m以上60mN/m以下であることが好ましい。より好ましくは、20mN以上45mN/m以下であり、更に好ましくは、20mN/m以上40mN/m以下である。表面張力が20mN/m未満となるとノズル面に液体が溢れ出し、正常に印字できない場合がある。一方、60mN/mを超えると記録媒体への浸透性の低下、はじきが発生することから画像再現性が劣る傾向がある。
【0175】
第2インクの粘度は、1.2mPa・s以上20.0mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは2.0mPa・s以上15.0mPa・s未満、更に好ましくは3.0mPa・s以上12.0mPa・s未満である。粘度がこの範囲において、優れた吐出性と、長期間にわたる良好な噴射性の維持が達成できる。
第2のインクの表面張力や粘度は、含有する界面活性剤や水溶性溶媒の種類や添加量を調整することにより上記の好ましい範囲に維持することができる。
【0176】
(インクセット)
本発明のインクジェット記録用水性インクセットは、少なくとも前記第1のインクと第2のインクとを含むものであり、これら前記第1のインクと、第2のインクとが互いに接するように非吸収性基材上に付与され、画像が形成されることになる。
【0177】
(非吸収基材)
本発明で用いる非吸収基材であるプラスチックフィルムとしては、例えば食品用の包装材料に使用されているもの等を使用することができ、公知のプラスチックフィルムが使用できる。具体例としては、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム、ナイロン等のポリアミド系フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリ乳酸フィルム等の生分解性フィルム等が挙げられる。特にポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリアミド系フィルムが好ましく、さらにポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ナイロンが好ましい。またバリア性を付与するためのポリ塩化ビニリデン等のコーティングをした上記フィルムでもよいし、必要に応じてアルミニウム等の金属、あるいはシリカやアルミナ等の金属酸化物の蒸着層を積層したフィルムを併用してもよい。
【0178】
前記プラスチックフィルムは、未延伸フィルムであってもよいが、1軸もしくは2軸方向に延伸されたものが好ましい。さらにフィルムの表面は、未処理であってもよいが、コロナ放電処理、オゾン処理、低温プラズマ処理、フレーム処理、グロー放電処理等、接着性を向上させるための各種処理を施したものが好ましい。
前記プラスチックフィルムの膜厚は用途に応じて適宜変更されるが、例えば軟包装用途である場合は、柔軟性と耐久性、耐カール性を有しているものとして、膜厚が10μm〜100μmであることが好ましい。より好ましくは10μm〜30μmである。
【0179】
本発明のインクジェット記録用水性インクセットは、通常のインクジェット記録装置は勿論、インクのドライングを制御するためのヒーター等を搭載した記録装置、または、中間体転写機構を搭載し、中間体に記録材料を印字した後、非吸収基材等の記録媒体に転写する記録装置等においても用いることもできる。
インクジェット記録方式としては、従来公知の方式がいずれも使用できる。例えば圧電素子の振動を利用して液滴を吐出させる方法(電歪素子の機械的変形によりインク滴を形成するインクジェットヘッドを用いた記録方法)や熱エネルギーを利用する方法が挙げられる。
【0180】
本発明の方法においては、前記第1のインクと第2のインクとを、互いに接するように非吸収基材上に付与するに際して、その付与する順には特に制限はなく、第1のインクの付与後に第2のインクを付与してもよく、第2のインクの付与後に第1のインクを付与してもよく、同時に付与してもよい。
【0181】
1画素を形成するために付与される前記第1のインクと第2のインクの付与量は、必ずしも等量でなくてもよいが、質量比で1:10〜10:1の範囲内となるようにインクを付与することが好ましい態様である。
【実施例】
【0182】
以下、実施例により、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、下記実施例に何ら制限されるものではない。なお、以下実施例中にある部とは、質量部を表す。
【0183】
(樹脂製造例)
〔中間体合成例1〕3級アミノ基含有ポリオール(TAP−1)の合成
温度計、撹拌装置、還流冷却管及び滴下装置を備えた4ツ口フラスコに、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(エポキシ当量201g/当量)590質量部を仕込んだ後、フラスコ内を窒素置換した。次いで、前記フラスコ内の温度が70℃になるまでオイルバスを用いて加熱した後、滴下装置を使用してジ−n−ブチルアミン380質量部を30分間で滴下し、滴下終了後、90℃で10時間反応させた。反応終了後、赤外分光光度計(FT/IR−460Plus、日本分光株式会社製)を用いて、反応生成物のエポキシ基に起因する842cm
−1付近の吸収ピークが消失していることを確認し、3級アミノ基含有ポリオール(TAP―1)(アミン当量339g/当量、水酸基当量339g/当量)を調製した。
【0184】
〔中間体合成例2〕3級アミノ基含有ポリオール(TAP−2)の合成
ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(エポキシ当量201g/当量)の代わりに、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(エポキシ当量185g/当量)543質量部を使用する以外は、中間体合成例1と同様の方法で、3級アミノ基含有ポリオール(TAP−2)(アミン当量315g/当量、水酸基当量315g/当量)を調製した。
【0185】
〔製造例1〕カチオン性ポリウレタン樹脂水分散体(CUR−1)の製造
温度計、撹拌装置、還流冷却管及び滴下装置を備えた4ツ口フラスコに、「ニッポラン980R」〔日本ポリウレタン工業株式会社製、1,6−ヘキサンジオールとジメチルカーボネートとを反応させて得られるポリカーボネートポリオール、水酸基当量986g/当量〕を705質量部、ネオペンチルグリコールと1,4−ブタンジオールとテレフタル酸とアジピン酸とを反応させて得られるポリエステル(水酸基当量951g/当量)を352質量部加え、減圧度0.095MPaにて120〜130℃で脱水を行った。
【0186】
脱水後、70℃に冷却し、酢酸エチル666質量部を加え、50℃まで冷却しながら十分に撹拌混合した。撹拌混合後、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(4,4−H−MDI)280質量部とオクチル酸すず(II)0.3質量部とを加え、70℃で2時間反応させた。
【0187】
反応終了後、中間体合成例1で得られた3級アミノ基含有ポリオール(TAP−1)を84質量部添加し、4時間反応させた後、55℃に冷却し、「アミノシランA1100」〔日本ユニカー株式会社製、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン〕47質量部を添加して、1時間反応させることにより、末端イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー溶液を調製した。次いで、前記ウレタンプレポリマー溶液にヒドラジン水和物15質量部を加え、鎖伸長反応を1時間行った。
【0188】
次いで、酢酸エチルを1954質量部、酢酸を16質量部添加して、55℃で1時間保持した後、40℃に冷却し、イオン交換水3300質量部を添加することにより、水分散体を調製した。この水分散体を減圧蒸留することにより、不揮発分が35質量%で、pHが4.1である、カチオン性ポリウレタン樹脂水分散体(CUR−1)を得た。
なお、pHは、PHメーター(東亜ディーケーケー(株)製MM−60R)を用い、25℃の環境下で測定した値である。以下、同様の方法で、pHを測定した。
【0189】
〔製造例2〕カチオン性ポリウレタン樹脂水分散体(CUR−2)の製造
3級アミノ基含有ポリオール(TAP−1)の代わりに、合成例2で調製した3級アミノ基含有ポリオール(TAP−2)を78質量部使用すること、及び、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートの代わりに、トリレンジイソシアネートを186質量部使用すること以外は、製造例1と同様の方法で、不揮発分が35質量%でpHが4.4であるカチオン性ポリウレタン樹脂水分散体(CUR−2)を得た。
【0190】
〔製造例3〕カチオン性ポリウレタン樹脂水分散体(CUR−3)の製造
酢酸の代わりに、ジメチル硫酸を31質量部使用すること以外は、製造例1と同様の方法で、不揮発分が35質量%でpHが5.7であるカチオン性ポリウレタン樹脂水分散体(CUR−3)を得た。
【0191】
〔製造例4〕カチオン性ポリウレタン樹脂水分散体(CUR−4)の製造
酢酸の代わりに、ジメチル硫酸を31質量部使用すること以外は、製造例2と同様の方法で、不揮発分が35質量%でpHが5.6であるカチオン性ポリウレタン樹脂水分散体(CUR−4)を得た。
【0192】
〔製造例5〕カチオン性ポリウレタン樹脂水分散体(CUR−5)の製造
温度計、撹拌装置、還流冷却管及び滴下装置を備えた4ツ口フラスコに、「ニッポラン980R」〔日本ポリウレタン工業株式会社製、1,6−ヘキサンジオールとジメチルカーボネートとを反応させて得られるポリカーボネートポリオール、水酸基当量986g/当量〕705質量部、ネオペンチルグリコールと1,4−ブタンジオールとテレフタル酸とアジピン酸を反応させて得られるポリエステル(水酸基当量951g/当量)を352質量部加え、減圧度0.095MPa、にて120〜130℃で脱水を行った。
【0193】
次いで、70℃に冷却した後、分子量が1000のポリプロピレングリコール(水酸基当量500g/当量)295質量部と酢酸エチル666質量部を加えて、50℃まで冷却し、十分に撹拌混合した後、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート280質量部とオクチル酸第一錫0.3質量部を加え、70℃で2時間反応させた。
【0194】
反応終了後、中間体合成例1で得られた3級アミノ基含有ポリオール(TAP−1)を84質量部添加し、4時間反応させた後、55℃に冷却して「アミノシランA1100」〔日本ユニカー株式会社製、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン〕47質量部を添加して1時間反応させた。反応終了後、赤外分光光度計(FT/IR−460Plus、日本分光株式会社製)を用いて、反応生成物のイソシアネート基に起因する2280cm−1付近の吸収ピークが消失していることを確認した。
【0195】
次いで、酢酸エチルを1954質量部、酢酸を16質量部添加し、55℃で1時間保持した後、40℃に冷却し、イオン交換水3300質量部を添加することにより、水分散体を調製した。得られた水分散体を減圧蒸留することにより、不揮発分が35質量%で、pHが4.5である、カチオン性ポリウレタン樹脂水分散体(CUR−5)を得た。
【0196】
〔製造例6〕カチオン性ポリウレタン樹脂水分散体(CUR−6)の製造
3級アミノ基含有ポリオール(TAP−1)の代わりに、3級アミノ基含有ポリオール(TAP−2)を78質量部使用すること、及び、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートの代わりに、トリレンジイソシアネートを186質量部使用すること以外は、製造例5と同様の方法で、不揮発分が35質量%で、pHが4.4であるカチオン性ポリウレタン樹脂水分散体(CUR−6)を得た。
【0197】
〔製造例7〕カチオン性ポリウレタン樹脂水分散体(CUR−7)の製造
「アミノシランA1100」を使用しないこと、及び、ヒドラジン水和物の使用量を20 質量部に変更すること以外は、製造例1と同様の方法で、不揮発分が35質量%で、pHが4.5であるカチオン性ポリウレタン樹脂水分散体(CUR−7)を得た。
【0198】
〔製造例8〕カチオン性ポリウレタン樹脂水分散体(CUR−8)の製造
「ニッポラン980R」〔日本ポリウレタン工業株式会社製、1,6−ヘキサンジオールとジメチルカーボネートとを反応させて得られるポリカーボネートポリオール、水酸基当量986g/当量。〕の使用量を1070質量部に変更すること、ネオペンチルグリコ−ルと1,4−ブタンジオールとテレフタル酸とアジピン酸を反応させて得られるポリエステル(水酸基当量g/当量951。)を使用しないこと、「アミノシランA1100」〔日本ユニカー株式会社製、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン〕を使用しないこと、ヒドラジン水和物の使用量を20質量部に変更すること、及び、酢酸の代わりにジメチル硫酸を31質量部使用すること以外は、実施例1と同様の方法で、不揮発分が35質量%で、pHが5.7であるカチオン性ポリウレタン樹脂水分散体(CUR−8)を得た。
【0199】
〔比較製造例1〕(水性ポリウレタン樹脂(HUR−1)の製造)
日本ポリウレタン工業(株)社製のポリカーボネートポリオール「ニッポランN981」(平均分子量=1000)1000部を減圧下100℃で脱水した。その後80℃まで冷却し、酢酸エチル1000部を加え十分に攪拌し溶解させた。
次に、2,2’−ジメチロールプロピオン酸100部を加え、次いでトリレンジイソシアネート400部を加えて75℃で5時間反応させ、ポリウレタンプレポリマーを得た。
イソシアネート値が1.80〜1.90%になったのを確認した後、40℃まで冷却し、トリエチルアミン75部加えて中和した後、水7000部を加えて溶解させた。次いで、鎖伸長剤として80%水加ヒドラジン36部を加え、鎖伸長反応を行った。
得られた半透明な反応生成物を減圧下、30〜60℃にて酢酸エチルを除去した後、水を加えて濃度調節を行い、不揮発分20%、Tg−15℃の、安定な半透明の水分散液である水性ポリウレタン樹脂(HUR−1)を得た。
【0200】
〔比較製造例2〕(水性ポリウレタン樹脂(HUR−2)の製造)
比較製造例1における日本ポリウレタン工業(株)社製のポリカーボネートポリオール「ニッポランN981」の代わりに、三菱化学(株)社製のポリテトラメチレンエーテルグリコール「PTMG−1000」(平均分子量=1000)を使用する以外は比較製造例1と同様の操作を行い、不揮発分20%、Tg−50℃の安定な半透明の水分散液である水性ポリウレタン樹脂(HUR−2)を得た。
【0201】
(シアンインク調製例 )
DIC(株)製のシアン顔料「FANTOGENBLUEFSJ−SD」20部、顔料分散剤としてビックケミー・ジャパン(株)社製の「Disperbyk−190」30部、イソプロピルアルコール5部、純水45部を攪拌混合した。次にビーズミルを用いて練肉分散した後、遠心分離機にかけて粗大粒子を取り除き、純水を加えて、顔料濃度15質量%に調製したシアン顔料分散液を得た。
前記シアン水性顔料分散液を使用し、表1または表5の組成に従って得た混合液を0.5μmのフィルターで濾過して、シアンインク(C−1)〜(C−6)および(HC−7)を得た。
【0202】
(イエローインク調製例)
クラリアントジャパン(株)製のイエロー顔料「NOVOPERMYELLOW4G―01」20部、顔料分散剤としてビックケミー・ジャパン(株)社製の「Disperbyk−190」30部、イソプロピルアルコール5部、純水45部を攪拌混合した。次にビーズミルを用いて練肉分散した後、遠心分離機にかけて粗大粒子を取り除き、純水を加えて、顔料濃度15質量%に調製したイエロー顔料分散液を得た。
前記イエロー水性顔料分散液を使用し、表2の組成に従って得た混合液を0.5μmのフィルターで濾過して、イエローインク(Y−1)〜(Y−6)を得た。
【0203】
(マゼンタインク調製例)
BASF(株)製のマゼンタ顔料「IrgazinMagenta2012」20部、顔料分散剤としてビックケミー・ジャパン(株)社製の「Disperbyk−190」30部、イソプロピルアルコール5部、純水45部を攪拌混合した。次にビーズミルを用いて練肉分散した後、遠心分離機にかけて粗大粒子を取り除き、純水を加えて、顔料濃度15質量%に調製したマゼンタ顔料分散液を得た。
当該マゼンタ顔料分散液を使用し、表3または表5の組成に従って得た混合液を0.5μmのフィルターで濾過して、マゼンタインク(M−1)〜(M−6)、(HM−7)〜(HM−8)を得た。
【0204】
(ブラックインク調製例)
三菱化学(株)製のブラック顔料「カーボンブラック#960」20部、顔料分散剤としてビックケミー・ジャパン(株)社製の「Disperbyk−190」30部、イソプロピルアルコール5部、純水45部を攪拌混合した。次にビーズミルを用いて練肉分散した後、遠心分離機にかけて粗大粒子を取り除き、純水を加えて、顔料濃度15質量%に調製したブラック顔料分散液を得た。
当該ブラック顔料分散液を使用し、表4の組成に従って得た混合液を0.5μmのフィルターで濾過して、ブラックインク(K−1)〜(K−6)を得た。
【0205】
(第2のインク調整例)
表6〜表9の組成に従い、第2のインクを調整した。
【0206】
表1〜表9中の記載物質等の詳細は以下の通りである。特に表記がないものは、試薬をそのまま用いた。
アプトロックBW−5550(商品名):オレフィン系エマルション(三菱化学(株)製、pH:8、酸価:18mgKOH/g、固形分30%)
ハードレンNA−3002(商品名):オレフィン系エマルション(東洋紡績(株)製、pH:8、酸価:33mgKOH/g、固形分30%)
バイロナールMD−2000:ポリエステル系エマルション(東洋紡績(株)製、pH:6、水酸基価:6mgKOH/g、固形分40%)
サーフィノール440(商品名):エアープロダクツジャパン(株)製界面活性剤
ポリアリルアミンPAA−01(商品名):ニットウボウメディカル(株)製、有効成分濃度15%、平均分子量1,600(カタログ記載値))
ポリアリルアミンPAA−1112(商品名):ニットウボウメディカル(株)製、有効成分濃度15%、平均分子量1,000(カタログ記載値))
ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド(試薬、東京化成工業)
【0207】
【表1】
【0208】
【表2】
【0209】
【表3】
【0210】
【表4】
【0211】
【表5】
【0212】
【表6】
【0213】
【表7】
【0214】
【表8】
【0215】
【表9】
【0216】
*1 式量である。
*2 カタログ記載値である。
【0217】
(酸価の測定方法)
酸価の測定はJISのK0070に準拠した方法で測定した。なお本発明では、測定用溶剤として以下に示す溶剤を用いた。
上記樹脂水溶液を乾燥固化した樹脂10gを300mlの三角フラスコに秤量し、エタノール:ベンゼン=1:2の混合溶媒約50ml加えて樹脂を溶解する。次いで、フェノールフタレイン指示薬を用い、あらかじめ標定された0.1mol/Lの水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、滴定に用いた水酸化カリウムエタノール溶液の量から、計算式(1)に従い酸価(mgKOH/g)を求める。
【0218】
【数1】
【0219】
式中、Aは樹脂の酸価(mgKOH/g)、Bは滴定に用いた0.1mol/L水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)、fは0.1mol/リットル水酸化カリウムエタノール溶液のファクター、Sは、樹脂の質量(g)、5.611は、水酸化カリウムの式量の1/10の値(56.11/10)である。
【0220】
なお樹脂によって、エタノール:ベンゼン=1:2の混合溶媒約50mlに溶解しないものは、エタノール50ml、あるいは、エタノール/純水=1:1の混合溶媒約50mlのどちらか溶解するほうを選択して、他は同じ操作にて滴定を行う。
【0221】
(水酸基価の測定方法)
水酸基価の測定はJISのK0070に準拠した方法で測定した。本発明では、測定用溶剤として以下に示す溶剤を用いた。
上記樹脂水溶液を乾燥固化した樹脂3gを100mlの三角フラスコに秤量し、無水酢酸溶液10.0mlを加え15分攪拌する。水2ml、ピリジン+水(3+1)10.0ml加え5分攪拌する。ピリジン10.0mlを加え、0.5mol/l水酸化カリウムエタノール水溶液で滴定を行い、計算式(2)に従い水酸基価(mgKOH/g)を求めた。
【0222】
【数2】
【0223】
式中、Aは樹脂の水酸基価(mgKOH/g)、Bはブランク値、Cは滴定に用いた0.5mol/l水酸化カリウムエタノール水溶液の量(ml)、fは滴定液のファクター、Dは濃度換算係数、Eは単位換算係数、Sは試料採取量である。
【0224】
(Tg(ガラス転移温度)の測定方法)
DSC測定は、デュポン社製熱分析装置DSC10を用い、JIS7122に準じて、昇温速度5℃/分にて測定した。
【0225】
(重量平均分子量(Mw)の測定方法)
Mwは、下記の条件でGPC測定により求めた。
[GPC測定条件]
測定装置:東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「SuperHZ−L」(内径4.6mm×2cm)
+東ソー株式会社製「TSKgelSuperHZ4000」(内径4.6mm×15cm)
+東ソー株式会社製「TSKgelSuperHZ3000」(内径4.6mm×15cm)
+東ソー株式会社製「TSKgelSuperHZ2000」(内径4.6mm×15cm)
+東ソー株式会社製「TSKgelSuperHZ1000」(内径4.6mm×15cm)
測定条件:カラム温度40℃
流速0.35ml/分
試料:樹脂水溶液を乾燥固化し、樹脂固形分換算で0.5質量%のテトラヒドロフラン(THF)溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(10μl)。
校正曲線:単分散標準ポリスチレンSTKstandardポリスチレン(東ソー株式会社製)分子量4000000〜250までのサンプルによる校正曲線を使用した。
【0226】
(実施例1〜126、比較例1〜4)
256ノズル×2列のピエゾ型インクジェットノズルを有するインクジェット記録装置(コニカミノルタ(株)製EB−100)に、各インクセットを装填し、被記録材としてOPPフィルム(フタムラ化学(株)製FOR#20、膜厚20μm)上への画像記録を行った。液滴サイズは約42plとし、360×360dpi(dpiとは2.54cmあたりのドット数)の解像度で射出できるようにし、駆動周波数2kHzにて駆動した。フィルムの表面が60℃程度になるようにヒーターにてプレヒートしながら、下記インク付与順番に従い印字を行い、乾燥(80℃/60秒)させた。
【0227】
(インク付与順番)
タイプA:第1のインクの付与後に第2のインクを付与。
タイプB:第2のインクの付与後に第1のインクを付与。
タイプC:第1のインクと第2のインクを同時付与。
【0228】
(pH測定方法)
MM−60R(東亜ディーケーケー(株)製)を用いて測定(インク温度25℃)した。
【0229】
(評価方法)
吐出性、及び得られた印字について、恒温恒湿室(室温25℃、湿度50%)において、以下(1)〜(5)の物性を評価した。
【0230】
(1)吐出性
連続12枚印刷後のノズルの目詰り等を評価した。
○:ノズル周辺にインク付着無く、ノズルの目詰り無し。
△:ノズル周辺にインク付着があるが、ノズルの目詰り無し。
×:ノズルの目詰り有り。
【0231】
(2)滲み性(ブリード)
○:網点ドット、ベタ部の境界でインクが滲まない。
△:網点ドット、ベタ部の境界で若干滲みがある。
×:網点ドット、ベタ部の境界が滲む。
【0232】
(3)ハジキ性
○:網点ドット、ベタ部でインクがはじかない。
△:網点ドット、ベタ部で若干インクがはじく。
×:網点ドット、ベタ部でインクがはじく。
【0233】
(4)ベタ部再現性
○:ベタ画像印字部で濃度ムラ無くインクが再現する。
△:ベタ画像印字部の濃度ムラが印字部に対して20%未満。
×:ベタ画像印字部の濃度ムラが印字部に対して20%以上。
評価結果を、表10〜34に示す。
【0234】
【表10】
【0235】
インク付与順番
タイプA:第1のインクの付与後に第2のインクを付与
タイプB:第2のインクの付与後に第1のインクを付与
タイプC:第1のインクと第2のインクを同時付与
インク混合比率(質量比):ヒドロキシ基及び/またはカルボキシル基を有する樹脂(固形分)/カチオン性ポリウレタン樹脂(A)(固形分)
【0236】
【表11】
【0237】
インク付与順番
タイプA:第1のインクの付与後に第2のインクを付与
タイプB:第2のインクの付与後に第1のインクを付与
タイプC:第1のインクと第2のインクを同時付与
インク混合比率(質量比):ヒドロキシ基及び/またはカルボキシル基を有する樹脂(固形分)/カチオン性ポリウレタン樹脂(A)(固形分)
【0238】
【表12】
【0239】
インク付与順番
タイプA:第1のインクの付与後に第2のインクを付与
タイプB:第2のインクの付与後に第1のインクを付与
タイプC:第1のインクと第2のインクを同時付与
インク混合比率(質量比):ヒドロキシ基及び/またはカルボキシル基を有する樹脂(固形分)/カチオン性ポリウレタン樹脂(A)(固形分)
【0240】
【表13】
【0241】
インク付与順番
タイプA:第1のインクの付与後に第2のインクを付与
タイプB:第2のインクの付与後に第1のインクを付与
タイプC:第1のインクと第2のインクを同時付与
インク混合比率(質量比):ヒドロキシ基及び/またはカルボキシル基を有する樹脂(固形分)/カチオン性ポリウレタン樹脂(A)(固形分)
【0242】
【表14】
【0243】
インク付与順番
タイプA:第1のインクの付与後に第2のインクを付与
タイプB:第2のインクの付与後に第1のインクを付与
タイプC:第1のインクと第2のインクを同時付与
インク混合比率(質量比):ヒドロキシ基及び/またはカルボキシル基を有する樹脂(固形分)/カチオン性ポリウレタン樹脂(A)(固形分)
【0244】
【表15】
【0245】
インク付与順番
タイプA:第1のインクの付与後に第2のインクを付与
タイプB:第2のインクの付与後に第1のインクを付与
タイプC:第1のインクと第2のインクを同時付与
インク混合比率(質量比):ヒドロキシ基及び/またはカルボキシル基を有する樹脂(固形分)/カチオン性ポリウレタン樹脂(A)(固形分)
【0246】
【表16】
【0247】
インク付与順番
タイプA:第1のインクの付与後に第2のインクを付与
タイプB:第2のインクの付与後に第1のインクを付与
タイプC:第1のインクと第2のインクを同時付与
インク混合比率(質量比):ヒドロキシ基及び/またはカルボキシル基を有する樹脂(固形分)/カチオン性ポリウレタン樹脂(A)(固形分)
【0248】
【表17】
【0249】
インク付与順番
タイプA:第1のインクの付与後に第2のインクを付与
タイプB:第2のインクの付与後に第1のインクを付与
タイプC:第1のインクと第2のインクを同時付与
インク混合比率(質量比):ヒドロキシ基及び/またはカルボキシル基を有する樹脂(固形分)/カチオン性ポリウレタン樹脂(A)(固形分)
【0250】
【表18】
【0251】
インク付与順番
タイプA:第1のインクの付与後に第2のインクを付与
タイプB:第2のインクの付与後に第1のインクを付与
タイプC:第1のインクと第2のインクを同時付与
インク混合比率(質量比):ヒドロキシ基及び/またはカルボキシル基を有する樹脂(固形分)/カチオン性ポリウレタン樹脂(A)(固形分)
【0252】
【表19】
【0253】
インク付与順番
タイプA:第1のインクの付与後に第2のインクを付与
タイプB:第2のインクの付与後に第1のインクを付与
タイプC:第1のインクと第2のインクを同時付与
インク混合比率(質量比):ヒドロキシ基及び/またはカルボキシル基を有する樹脂(固形分)/カチオン性ポリウレタン樹脂(A)(固形分)
【0254】
【表20】
【0255】
インク付与順番
タイプA:第1のインクの付与後に第2のインクを付与
タイプB:第2のインクの付与後に第1のインクを付与
タイプC:第1のインクと第2のインクを同時付与
インク混合比率(質量比):ヒドロキシ基及び/またはカルボキシル基を有する樹脂(固形分)/カチオン性ポリウレタン樹脂(A)(固形分)
【0256】
【表21】
【0257】
インク付与順番
タイプA:第1のインクの付与後に第2のインクを付与
タイプB:第2のインクの付与後に第1のインクを付与
タイプC:第1のインクと第2のインクを同時付与
インク混合比率(質量比):ヒドロキシ基及び/またはカルボキシル基を有する樹脂(固形分)/カチオン性ポリウレタン樹脂(A)(固形分)
【0258】
【表22】
【0259】
インク付与順番
タイプA:第1のインクの付与後に第2のインクを付与
タイプB:第2のインクの付与後に第1のインクを付与
タイプC:第1のインクと第2のインクを同時付与
インク混合比率(質量比):ヒドロキシ基及び/またはカルボキシル基を有する樹脂(固形分)/カチオン性ポリウレタン樹脂(A)(固形分)
【0260】
【表23】
【0261】
インク付与順番
タイプA:第1のインクの付与後に第2のインクを付与
タイプB:第2のインクの付与後に第1のインクを付与
タイプC:第1のインクと第2のインクを同時付与
インク混合比率(質量比):ヒドロキシ基及び/またはカルボキシル基を有する樹脂(固形分)/カチオン性ポリウレタン樹脂(A)(固形分)
【0262】
【表24】
【0263】
インク付与順番
タイプA:第1のインクの付与後に第2のインクを付与
タイプB:第2のインクの付与後に第1のインクを付与
タイプC:第1のインクと第2のインクを同時付与
インク混合比率(質量比):ヒドロキシ基及び/またはカルボキシル基を有する樹脂(固形分)/カチオン性ポリウレタン樹脂(A)(固形分)
【0264】
【表25】
【0265】
インク付与順番
タイプA:第1のインクの付与後に第2のインクを付与
タイプB:第2のインクの付与後に第1のインクを付与
タイプC:第1のインクと第2のインクを同時付与
インク混合比率(質量比):ヒドロキシ基及び/またはカルボキシル基を有する樹脂(固形分)/カチオン性ポリウレタン樹脂(A)(固形分)
【0266】
【表26】
【0267】
インク付与順番
タイプA:第1のインクの付与後に第2のインクを付与
タイプB:第2のインクの付与後に第1のインクを付与
タイプC:第1のインクと第2のインクを同時付与
インク混合比率(質量比):ヒドロキシ基及び/またはカルボキシル基を有する樹脂(固形分)/カチオン性ポリウレタン樹脂(A)(固形分)
【0268】
【表27】
【0269】
インク付与順番
タイプA:第1のインクの付与後に第2のインクを付与
タイプB:第2のインクの付与後に第1のインクを付与
タイプC:第1のインクと第2のインクを同時付与
インク混合比率(質量比):ヒドロキシ基及び/またはカルボキシル基を有する樹脂(固形分)/カチオン性ポリウレタン樹脂(A)(固形分)
【0270】
【表28】
【0271】
インク付与順番
タイプA:第1のインクの付与後に第2のインクを付与
タイプB:第2のインクの付与後に第1のインクを付与
タイプC:第1のインクと第2のインクを同時付与
インク混合比率(質量比):ヒドロキシ基及び/またはカルボキシル基を有する樹脂(固形分)/カチオン性ポリウレタン樹脂(A)(固形分)
【0272】
【表29】
【0273】
インク付与順番
タイプA:第1のインクの付与後に第2のインクを付与
タイプB:第2のインクの付与後に第1のインクを付与
タイプC:第1のインクと第2のインクを同時付与
インク混合比率(質量比):ヒドロキシ基及び/またはカルボキシル基を有する樹脂(固形分)/カチオン性ポリウレタン樹脂(A)(固形分)
【0274】
【表30】
【0275】
インク付与順番
タイプA:第1のインクの付与後に第2のインクを付与
タイプB:第2のインクの付与後に第1のインクを付与
タイプC:第1のインクと第2のインクを同時付与
インク混合比率(質量比):ヒドロキシ基及び/またはカルボキシル基を有する樹脂(固形分)/カチオン性ポリウレタン樹脂(A)(固形分)
【0276】
【表31】
【0277】
インク付与順番
タイプA:第1のインクの付与後に第2のインクを付与
タイプB:第2のインクの付与後に第1のインクを付与
タイプC:第1のインクと第2のインクを同時付与
インク混合比率(質量比):ヒドロキシ基及び/またはカルボキシル基を有する樹脂(固形分)/カチオン性ポリウレタン樹脂(A)(固形分)
【0278】
【表32】
【0279】
インク付与順番
タイプA:第1のインクの付与後に第2のインクを付与
タイプB:第2のインクの付与後に第1のインクを付与
タイプC:第1のインクと第2のインクを同時付与
インク混合比率(質量比):ヒドロキシ基及び/またはカルボキシル基を有する樹脂(固形分)/カチオン性ポリウレタン樹脂(A)(固形分)
【0280】
【表33】
【0281】
インク付与順番
タイプA:第1のインクの付与後に第2のインクを付与
タイプB:第2のインクの付与後に第1のインクを付与
タイプC:第1のインクと第2のインクを同時付与
インク混合比率(質量比):ヒドロキシ基及び/またはカルボキシル基を有する樹脂(固形分)/カチオン性ポリウレタン樹脂(A)(固形分)
【0282】
【表34】
【0283】
インク付与順番
タイプA:第1のインクの付与後に第2のインクを付与
タイプB:第2のインクの付与後に第1のインクを付与
タイプC:第1のインクと第2のインクを同時付与
インク混合比率(質量比):ヒドロキシ基及び/またはカルボキシル基を有する樹脂(固形分)/カチオン性ポリウレタン樹脂(A)(固形分)
【0284】
【表35】
【0285】
インク付与順番
タイプA:第1のインクの付与後に第2のインクを付与
タイプB:第2のインクの付与後に第1のインクを付与
タイプC:第1のインクと第2のインクを同時付与
インク混合比率(質量比):ヒドロキシ基及び/またはカルボキシル基を有する樹脂(固形分)/カチオン性ポリウレタン樹脂(A)(固形分)
【0286】
【表36】
【0287】
インク付与順番
タイプA:第1のインクの付与後に第2のインクを付与
タイプB:第2のインクの付与後に第1のインクを付与
タイプC:第1のインクと第2のインクを同時付与
インク混合比率(質量比):ヒドロキシ基及び/またはカルボキシル基を有さない樹脂(固形分)/カチオン性ポリウレタン樹脂(A)(固形分)
【0288】
この結果、実施例1〜182で得たインクセットは、いずれも滲み性、ハジキ性、ベタ部再現性は良好であった。一方、比較例1〜4は第1のインクにおけるバインダー樹脂としてヒドロキシ基及びカルボキシル基を有さない樹脂を用いた例であるが、印刷物の評価はいずれも×であった。比較例5〜7は第2のインクとしてカチオン性ポリウレタン樹脂(A)を用いない例であるが、所望の効果が得られなかった。