(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
熱可塑性樹脂が、ポリカーボネート、アクリルニトリル−スチレン樹脂、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、(ポリカーボネート)/(アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン)アロイ樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリプロピレン及びポリスチレンからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂である請求項5記載の樹脂組成物の製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来、家庭、オフィス、工場などで使用されている熱可塑性樹脂成形品、例えば電気器具、OA機器では、熱可塑性樹脂の多くが易燃性であるため、通常、その成形用原料に難燃剤を添加し、樹脂成形品の難燃性を向上させる工夫が求められている。
【0003】
しかしながら、多くの難燃剤は、樹脂を燃焼しにくくする効果をもたらすが、いったん燃焼しはじめると熱可塑性樹脂が液状になって、燃えながらドリップ(滴り)するので延焼するのを防ぐ効果は乏しい。これに対し、例えば、Underwriters′ Laboratories(以下、ULと略す)94の規格では、燃焼試験(Fire Test)の等級として、抗ドリップ性を条件とする難燃度が高いクラス(V−1、V−0)が設けられている。また、ドリップも防止してさらに安全性を高めるためにポリテトラフルオロエチレン(PTFE)パウダーや水性分散体を易燃性熱可塑性樹脂に難燃剤とともに溶融混合することが行なわれている。
【0004】
ポリテトラフルオロエチレンは耐熱性、耐薬品性、電気的絶縁性に優れ、撥水撥油性、非粘着性、自己潤滑性等の特異な表面特性を有するためコーティング剤に広く用いられている。また、高結晶性で分子間力が低いためわずかな応力で繊維化する性質を有しており、熱可塑性樹脂に配合した場合、成形加工性、機械的性質などが改良され、熱可塑性樹脂用添加剤としても使用されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、易燃性熱可塑性樹脂と難燃剤、不燃性繊維とともにポリテトラフルオロエチレンを0.1〜5%(質量%、以下同様)添加した組成物が、特許文献2には、ポリフェニレンエーテルやスチレン系樹脂に難燃剤とポリテトラフルオロエチレンを添加した組成物が、特許文献3には芳香族ポリカーボネートに有機アルカリ金属塩および/または有機アルカリ土類金属塩の難燃剤0.01〜10%とASTM D−1457タイプ3のPTFE0.01〜2.0%を添加した組成物が、特許文献4にはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)に難燃剤とポリテトラフルオロエチレンを添加した組成物が開示されている。
【0006】
また、芳香族ポリカーボネートとスチレン系樹脂とのポリマーアロイに関して、特許文献5には、有機臭素化合物とアンチモンまたはビスマス化合物などの難燃剤とPTFEを添加した組成物が、特許文献6〜9には、リン化合物とともにポリテトラフルオロエチレンを添加した組成物が、特許文献10には、有機または無機酸のアルカリ金属塩とともにポリテトラフルオロエチレンを添加した組成物が開示されている。ポリアミドに関しても、例えば、特許文献11には、リン酸エステルなどの難燃剤とともにポリテトラフルオロエチレンを添加した組成物が開示されている。また、特許文献12や特許文献13には、ポリテトラフルオロエチレンをポリオレフィンに配合してなる樹脂組成物が開示されている。また、特許文献14にはポリテトラフルオロエチレンと分散媒パウダーとを高せん断下で混合しポリテトラフルオロエチレンをあらかじめ繊維化した後にポリオレフィンと混合するポリオレフィン系樹脂組成物の製法が開示されている。
【0007】
ドリップ防止用のポリテトラフルオロエチレンとしては、テトラフルオロエチレン(TFE)を乳化重合してえられるラテックスを凝析・乾燥したポリテトラエチレンパウダー(通常、PTFEファインパウダーと呼ばれ、標準比重(SSG)が2.14〜2.23の範囲にあり、ASTM D−1457タイプ3に分類される)、あるいはそのラテックスに界面活性剤を加え濃縮・安定化して製造される水性分散体(通常、PTFEディスパージョンと呼ばれる)が使用される。
【0008】
ドリップ防止の機能は、ポリテトラフルオロエチレンパウダーが容易にフィブリル化する性質を有していることによる。すなわち、熱可塑性樹脂を溶融状態で前記ポリテトラエチレンパウダーや前記ディスパージョンと混合すると、混合の剪断力でポリテトラフルオロエチレン微粒子がフィブリル化し、熱可塑性樹脂中にそのフィブリルが分散する。熱可塑性樹脂の最終的な成形品にもフィブリルが分散したまま残ることによって燃焼時のドリップが防止される。
【0009】
しかし、易燃性熱可塑性樹脂とポリテトラフルオロエチレンを混合するには、溶融混合に先だって、易燃性熱可塑性樹脂の粉末、ペレットまたは液状のものと、前記ポリテトラフルオロエチレンパウダーや前記ディスパージョンとを混ぜ合わせる必要がある。しかし特に前記ポリテトラエチレンパウダーは常温でもフィブリル化しやすい性質のためポリテトラエチレンパウダー同士の凝集物が発生しやすく粉体の取り扱い性が劣り、混合する際の作業性に重大な問題がある。
【0010】
ドリップ防止剤としては、粉体の取り扱い性に優れるものが求められている。さらに、原料樹脂へ添加する際に予めポリテトラフルオロエチレンパウダーと原料樹脂とを予備混合する必要があるが、この時混合機や押出機フィーダー内で原料樹脂とポリテトラフルオロエチレンパウダーの混合粉末が凝集してブロッキングをおこし、作業性、生産性を著しく阻害するという問題があった。
【0011】
そこで、ポリテトラフルオロエチレンパウダーと有機系重合体粒子の混合物(PTFE含有混合粉末)の添加により、熱可塑性樹脂組成物の難燃性を向上させる試みがされている(特許文献15、特許文献16、特許文献17等)。すなわち、特許文献15には、ポリテトラフルオロエチレン分散液と、芳香族ビニル系重合体分散液とを、混合し、凝固して得られる粉体の添加により、難燃性が向上することが記載されている。特許文献16にはポリテトラフルオロエチレン分散液の存在下有機系単量体を重合して得られる粉体は取り扱い性に優れることが記載されている。特許文献17には、ポリカーボネート、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体およびポリオルガノシロキサン含有複合ゴム系グラフト共重合体から成る熱可塑性樹脂組成物は、難燃性、耐衝撃性に優れることが記載されている。
しかしながら、ドリップ防止剤としてのポリテトラフルオロエチレン含有混合粉末を熱可塑性樹脂に添加すると、同じ添加量でポリテトラフルオロエチレン単体のドリップ防止剤を添加した場合と比較して、ドリップ防止性能に寄与するポリテトラフルオロエチレンの添加量が少ないために十分なドリップ防止効果が得難く、十分な効果を得るためにドリップ防止剤の添加量が増え、コストが高くなるという問題があった。
【0012】
また、TFEの懸濁重合によりえられるポリテトラフルオロエチレンモールディングパウダー(標準比重が2.13〜2.23の範囲にあり、ASTM D−1457タイプ4、6、7に分類される)があり、これを易燃性熱可塑性樹脂の添加剤として用いることも提案されている(例えば、特許文献18参照。)。
【0013】
また、特許文献19では、ポリテトラフルオロエチレンラテックスからポリテトラフルオロエチレンパウダーを製造する際に、予めポリテトラフルオロエチレンラテックスに多量のフッ素系界面活性剤を共存させた上で凝析する粉体流動性に優れた0.52g/ml以上の高い見掛密度を有するポリテトラフルオロエチレンパウダーの製法が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、従来のポリテトラフルオロエチレンパウダーを用いたドリップ防止剤は、未だ凝集しやすい問題があり、取り扱い性が充分なものとはいえなかった。また樹脂中への分散性も良くないため、ドリップ防止効果を発現させるのに量が必要な場合があった。
【0016】
従って、本発明の目的は、取り扱い性に優れ、流動性・分散性がよいポリテトラフルオロエチレンパウダー組成物を提供することにある。また、該ポリテトラフルオロエチレンパウダー組成物をドリップ防止剤として含有する樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、斯かる実情に鑑み鋭意検討した結果、下記ポリテトラフルオロエチレンパウダー組成物が上記課題を解決することを見出し本発明を完成した。すなわち本発明は、以下の通りである。
【0018】
<1> ポリテトラフルオロエチレンパウダーの表面に、該ポリテトラフルオロエチレンパウダーの質量の少なくとも0.01質量%の量のシリカ微粒子が付着した粉末であって、
該シリカ微粒子が、
(A1)4官能性シラン化合物、その部分加水分解縮合生成物又はこれらの混合物を、加水分解及び縮合することによって実質的にSiO
2単位からなる親水性球状シリカ微粒子を得る工程と、
(A2)該親水性球状シリカ微粒子の表面に、R
1SiO
3/2単位(式中、R
1は置換又は非置換の炭素原子数1〜20の1価炭化水素基である)を導入する工程と、
(A3)R
23SiO
1/2単位(式中、各R
2は同一又は異なり、置換又は非置換の炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である)を導入する工程
とを含む方法により製造され、
粒子径が0.005〜1.00μmの範囲で、粒度分布D90/D10の値が3以下であり、かつ平均円形度が0.8〜1である疎水性球状シリカ微粒子(1)であることを特徴とするポリテトラフルオロエチレンパウダー組成物。
【0019】
<2> 前記疎水性球状シリカ微粒子(1)が、
(A1)一般式(I):
Si(OR
3)
4 (I)
(式中、各R
3は同一又は異種の炭素原子数1〜6の一価炭化水素基である)
で示される4官能性シラン化合物、その部分加水分解生成物又はこれらの混合物を、塩基性物質の存在下、親水性有機溶媒と水の混合液中で加水分解及び縮合することによって実質的にSiO
2単位からなる親水性球状シリカ微粒子の混合溶媒分散液を得、
(A2)得られた該親水性球状シリカ微粒子の混合溶媒分散液に、一般式(II):
R
1Si(OR
4)
3 (II)
(式中、R
1は置換又は非置換の炭素原子数1〜20の一価炭化水素基であり、各R
4は同一又は異種の炭素原子数1〜6の一価炭化水素基である)
で示される3官能性シラン化合物、その部分加水分解生成物又はこれらの混合物を添加して該親水性球状シリカ微粒子の表面を処理することにより、該親水性球状シリカ微粒子の表面にR
1SiO
3/2単位(R
1は前記の通りである)を導入して第一の疎水性球状シリカ微粒子の混合溶媒分散液を得、
(A3)得られた該第一の疎水性球状シリカ微粒子の混合溶媒分散液に、一般式(III):
R
23SiNHSiR
23 (III)
(式中、各R
2は同一又は異種の置換又は非置換の炭素原子数1〜6の一価炭化水素基である)
で示されるシラザン化合物、一般式(IV):
R
23SiX (IV)
(式中、R
2は一般式(III)で定義した通りであり、XはOH基又は加水分解性基である)で示される1官能性シラン化合物、又はこれらの混合物を添加して、前記第一の疎水性球状シリカ微粒子の表面をこれにより処理して、該第一の疎水性球状シリカ微粒子の表面にR
23SiO
1/2単位(R
2は一般式(III)で定義した通りである)を導入することにより第二の疎水性シリカ微粒子として得られる疎水性球状シリカ微粒子である、<1>記載のポリテトラフルオロエチレンパウダー組成物。
【0020】
<3> 前記ポリテトラフルオロエチレンパウダーに前記疎水性球状シリカ微粒子(1)をポリテトラフルオロエチレンパウダーの0.01〜5.0質量%で添加し、混合することにより、該ポリテトラフルオロエチレンパウダー表面に該疎水性球状シリカ微粒子(1)を付着させたことを特徴とする、<1>又は<2>に記載のポリテトラフルオロエチレンパウダー組成物。
【0021】
<4> <1>〜<3>の何れか1項記載のポリテトラフルオロエチレンパウダー組成物からなる熱可塑性樹脂用ドリップ防止剤。
【0022】
<5> 熱可塑性樹脂中に<1>〜<3>の何れか1項記載のポリテトラフルオロエチレンパウダー組成物を含有する樹脂組成物。
【0023】
<6>熱可塑性樹脂が、ポリカーボネート、アクリルニトリル−スチレン樹脂、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、(ポリカーボネート)/(アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン)アロイ樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリプロピレン及びポリスチレンからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂である<5>記載の樹脂組成物。
【0024】
<7>熱可塑性樹脂が、ポリカーボネートである<6>記載の樹脂組成物。
【0025】
<8>更に、難燃剤を含有する<5>〜<7>の何れか1項記載の樹脂組成物。
【発明の効果】
【0026】
本発明のポリテトラフルオロエチレンパウダー組成物は、良好な流動性及び安定性を備えるため、取り扱い性が良好で、これを樹脂に混合した場合、均一分散するため、少量で樹脂に好適なドリップ防止効果を付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明について詳細に説明する。
<ポリテトラフルオロエチレンパウダー成分>
本発明に用いるポリテトラフルオロエチレンパウダーは、公知のパウダーのうち、平均粒径が1〜1000μm、好ましくは10〜800μm、見掛け密度が0.20〜1.00g/cm
3 、好ましくは0.25〜0.95g/cm
3 、標準比重(SSG)が2.13〜2.23、好ましくは2.14〜2.20のものが好適に用いられる。
【0029】
かかるポリテトラフルオロエチレンパウダーには、テトラフルオロエチレンの単独懸濁重合体粉末だけでなく、各種の変性ポリテトラフルオロエチレンパウダーも含まれてもよい。そうした変性ポリテトラフルオロエチレンパウダーとしては、例えば特公昭40−10428号、特公昭50−31524号、特公昭54−46794号またはWO95/16126号各公報に記載されているような、変性モノマーを0.001〜1.0重量%含むものが挙げられる。変性モノマーとしては、例えばクロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フルオロアルキルエチレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)などのフルオロオレフィンが好ましい。そのほか、少量の分散剤を添加した懸濁重合系で得られるPTFEモールディングパウダー(特公平5−80490号公報参照)も含まれる。さらに、これらの懸濁重合で得られた粒子を粉砕して造粒した造粒ポリテトラフルオロエチレンパウダー(特公昭44−22619号、特公昭58−14291号、特公平3−69927号、特公平3−39105号各公報参照)も使用できる。
【0030】
本発明で用いるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、標準比重(SSG)(ASTM D−1457)が2.13〜2.23、特に2.14〜2.20が好ましい。該標準比重が小さいほど高分子量を意味し、2.23を超える(分子量が小さくなる)とフィブリル化が不充分となりやすい。標準比重はいくら小さくても(分子量が大きくても)フィブリル化の性質には関係しないので、標準比重の下限は製造が容易であるかどうかによる。前記標準比重が2.14〜2.20のPTFEの数平均分子量は、下記式により算出した場合約15×10
5 〜9×10
6である。
【0031】
式:log
10(数平均分子量)=31.83−11.58×(標準比重)
【0032】
<疎水性球状シリカ微粒子>
ポリテトラフルオロエチレンパウダーの表面に付着せしめる疎水性球状シリカ微粒子について、詳細に説明する。
本発明で使用される疎水性球状シリカ微粒子は、
(A1)4官能性シラン化合物、その部分加水分解縮合生成物又はこれらの混合物を、加水分解及び縮合することによって実質的にSiO
2単位からなる親水性球状シリカ微粒子を得る工程と、
(A2)該親水性球状シリカ微粒子の表面に、R
1SiO
3/2単位(式中、R
1は置換又は非置換の炭素原子数1〜20の1価炭化水素基である)を導入する工程と、
(A3)R
23SiO
1/2単位(式中、各R
2は同一又は異なり、置換又は非置換の炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である)を導入する工程
とを含む方法により製造され、
粒子径が0.005〜1.00μmの範囲で、粒度分布D90/D10の値が3以下であり、かつ平均円形度が0.8〜1である疎水性球状シリカ微粒子(1)である。
【0033】
上記疎水性球状シリカ微粒子は粒子径が0.005〜1.00μmであり、好ましくは0.01〜0.30μm、特に好ましくは0.03〜0.20μmである。この粒子径が0.005μmよりも小さいと、ポリテトラフルオロエチレンパウダーの凝集が激しく、該ポリテトラフルオロエチレンパウダーをうまく取り出せない場合がある。また1.00μmよりも大きいと、ポリテトラフルオロエチレンパウダーに良好な流動性や充填性を付与できない場合があり、好ましくない。
【0034】
上記疎水性球状シリカ微粒子の粒度分布の指標であるD90/D10の値は、3以下である。ここで、D10及びD90はそれぞれ、粒子径の分布を測定することによって得られる値である。粉体の粒子径の分布を測定した場合に、小さい側から累積10%となる粒子径をD10、小さい側から累積90%となる粒子径をD90という。このD90/D10が3以下であることから、本発明における疎水性球状シリカ微粒子の粒度分布はシャープであることを特徴とする。このように粒度分布がシャープな粒子であると、ポリテトラフルオロエチレンパウダーの流動性を制御することが容易になる点で好ましい。上記D90/D10は、2.9以下であることがより好ましい。
なお、本発明において、微粒子の粒度分布は、動的光散乱法/レーザードップラー法ナノトラック粒度分布測定装置(日機装株式会社製、商品名:UPA−EX150)により測定し、その体積基準メジアン径を粒子径とした。なお、メジアン径とは粒度分布を累積分布として表した時の累積50%に相当する粒子径である。
【0035】
また上記疎水性球状シリカ微粒子の平均円形度は0.8〜1が好ましく、0.92〜1がより好ましい。ここで「球状」とは、真球だけでなく、若干歪んだ球も含む。このような「球状」の形状とは、粒子を二次元に投影した時の円形度で評価し、円形度が0.8〜1の範囲にあるものを云う。ここで円形度とは、(粒子面積と等しい円の周囲長)/(粒子周囲長)である。この円形度は電子顕微鏡等で得られる粒子像を画像解析することにより測定することができる。平均円形度は、電子顕微鏡により観察し、1次粒子100個を測定して、平均することにより得ることができる。
【0036】
本発明において、親水性球状シリカ微粒子が「実質的にSiO
2単位からなる」とは、該微粒子は基本的にはSiO
2単位から構成されているが該単位のみから構成されている訳ではなく、少なくとも表面に通常知られているようにシラノール基を多数個有することを意味する。また、場合によっては、原料である4官能性シラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合生成物に由来する加水分解性基(ヒドロカルビルオキシ基)が一部シラノール基に転化されずに若干量そのまま微粒子表面や内部に残存していてもよいことを意味する。
【0037】
以上のように、本発明においては、テトラアルコキシシラン等の加水分解によって得られる小粒径ゾルゲル法シリカをシリカ原体(疎水化処理前のシリカ)として、これに特定の表面処理を行なうことにより、粉体として得たときに疎水化処理後の粒子径がシリカ原体の一次粒子径を維持しており、凝集しておらず、小粒径であり、ポリテトラフルオロエチレンパウダーに良好な流動性を付与できる疎水性シリカ微粒子が得られる。
【0038】
小粒径のシリカ原体は、アルコキシ基の炭素原子数が小さいテトラアルコキシシランを用いること、溶媒として炭素原子数の小さいアルコールを用いること、加水分解温度を高めること、テトラアルコキシシランの加水分解時の濃度を低くすること、加水分解触媒の濃度を低くすることなど、反応条件を変更することにより、得ることができる。
【0039】
この小粒径のシリカ原体に、前述の通り、そして更に詳しく以下に述べるように、特定の表面処理を行なうことにより、所望の疎水性シリカ微粒子が得られる。
【0040】
次に、上記疎水性球状シリカ微粒子の製造方法の一つについて、以下に詳細に説明する。
【0041】
<疎水性球状シリカ微粒子(1)の製造方法>
本発明の疎水性球状シリカ微粒子は、
工程(A1):親水性球状シリカ微粒子の合成工程、
工程(A2):3官能性シラン化合物による表面処理工程、
工程(A3):1官能性シラン化合物による表面処理工程
によって得られが、以下、各工程をより具体的に説明する。
【0042】
・工程(A1):親水性球状シリカ微粒子の合成工程
一般式(I):
Si(OR
3)
4 (I)
(式中、各R
3は同一又は異種の炭素原子数1〜6の一価炭化水素基である)
で示される4官能性シラン化合物、その部分加水分解生成物、又はこれらの混合物を、塩基性物質を含む親水性有機溶媒と水の混合液中で加水分解及び縮合することによって、親水性球状シリカ微粒子の混合溶媒分散液が得られる。
【0043】
上記一般式(I)中、R
3は、炭素原子数1〜6の一価炭化水素基であるが、好ましくは炭素原子数1〜4、特に好ましくは1〜2の1価炭化水素基である。R
3で表される1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基のようなアルキル基;フェニル基のようなアリール基が挙げられ、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基、特に好ましくはメチル基又はエチル基が挙げられる。
【0044】
上記一般式(I)で示される4官能性シラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン;及びテトラフェノキシシランが挙げられ、好ましくは、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン及びテトラブトキシシラン、特に好ましくは、テトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランが挙げられる。また、一般式(I)で示される4官能性シラン化合物の部分加水分解縮合生成物としては、例えば、メチルシリケート、エチルシリケート等のアルキルシリケートが挙げられる。
【0045】
前記親水性有機溶媒としては、一般式(I)で示される4官能性シラン化合物と、この部分加水分解縮合生成物と、水とを溶解するものであれば特に制限されず、例えば、アルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、酢酸セロソルブ等のセロソルブ類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類等が挙げられ、好ましくは、アルコール類、セロソルブ類であり、特に好ましくはアルコール類が挙げられる。該アルコール類としては、一般式(V):
R
5OH (V)
[式中、R
5は炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である]で示されるアルコールが挙げられる。
【0046】
上記一般式(V)中、R
5は、好ましくは炭素原子数1〜4、特に好ましくは1〜2の1価炭化水素基である。R
5で表される1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等のアルキル基、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基及びイソプロピル基、より好ましくはメチル基及びエチル基が挙げられる。一般式(V)で示されるアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等が挙げられ、好ましくはメタノール、エタノールが挙げられる。アルコールの炭素原子数が増えると、生成する球状シリカ微粒子の粒子径が大きくなる。従って、目的とする小粒径のシリカ微粒子を得るためには、メタノールが好ましい。
【0047】
また、上記塩基性物質としてはアンモニア、ジメチルアミン、ジエチルアミン等、好ましくは、アンモニア、ジエチルアミン、特に好ましくはアンモニアが挙げられる。これらの塩基性物質は、所要量を水に溶解した後、得られた水溶液(塩基性)を前記親水性有機溶媒と混合すればよい。
該塩基性物質の使用量は、一般式(I)で示される4官能性シラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合生成物のヒドロカルビルオキシ基の合計1モルに対して0.01〜2モルであることが好ましく、0.02〜0.5モルであることがより好ましく、0.04〜0.12モルであることが特に好ましい。このとき、塩基性物質の量が少ないほど小粒径のシリカ微粒子が得られる。
【0048】
上記加水分解及び縮合で使用される水の量は、一般式(I)で示される4官能性シラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合生成物のヒドロカルビルオキシ基の合計1モルに対して0.5〜5モルであることが好ましく、0.6〜2モルであることがより好ましく、0.7〜1モルであることが特に好ましい。水に対する上記親水性有機溶媒の比率(親水性有機溶媒:水)は、質量比で0.5〜10であることが好ましく、3〜9であることがより好ましく、5〜8であることが特に好ましい。親水性有機溶媒の量が多いほど小粒径のシリカ微粒子が得られる。
【0049】
一般式(I)で示される4官能性シラン化合物等の加水分解及び縮合は、周知の方法、即ち、塩基性物質を含む親水性有機溶媒と水との混合物中に、一般式(I)で示される4官能性シラン化合物等を添加することにより行われる。
【0050】
この工程(A1)で得られる親水性球状シリカ微粒子の混合溶媒分散液中のシリカ微粒子の濃度は一般に、3〜15質量%であり、好ましくは5〜10質量%である。
【0051】
・工程(A2):3官能性シラン化合物による表面処理工程
工程(A1)において得られた親水性球状シリカ微粒子の混合溶媒分散液に、一般式(II):
R
1Si(OR
4)
3 (II)
(式中、R
1は置換又は非置換の炭素原子数1〜20の一価炭化水素基、各R
4は同一又は異種の炭素原子数1〜6の一価炭化水素基である)で示される3官能性シラン化合物、又はその部分加水分解生成物、又はこれらの混合物を添加して、該親水性球状シリカ微粒子の表面をこれにより処理することにより、前記親水性球状シリカ微粒子の表面にR
1SiO
3/2単位(R
1は前記の通り)を導入して、第一の疎水性球状シリカ微粒子の混合溶媒分散液を得る。
【0052】
本工程(A2)は、次の工程である濃縮工程においてシリカ微粒子の凝集を抑制するために不可欠である。凝集を抑制できないと、得られるシリカ系粉体の個々の粒子は一次粒子径を維持できないため、流動性付与能が悪くなる。
【0053】
上記一般式(II)中、R
1は、好ましくは炭素原子数1〜3、特に好ましくは1〜2の1価炭化水素基である。R
1で表される1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基等のアルキル基、好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基又はイソプロピル基、特に好ましくは、メチル基又はエチル基が挙げられる。また、これらの1価炭化水素基の水素原子の一部又は全部が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、好ましくはフッ素原子で置換されていてもよい。
【0054】
上記一般式(II)中、R
4は、好ましくは炭素原子数1〜3、特に好ましくは1〜2の1価炭化水素基である。R
4で表される1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、好ましくは、メチル基、エチル基又はプロピル基、特に好ましくは、メチル基又はエチル基が挙げられる。
【0055】
一般式(II)で示される3官能性シラン化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン等の非置換若しくはハロゲン置換のトリアルコキシシラン等、好ましくは、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン及びエチルトリエトキシシラン、より好ましくは、メチルトリメトキシシラン及びメチルトリエトキシシラン、又は、これらの部分加水分解縮合生成物が挙げられる。
【0056】
一般式(II)で示される3官能性シラン化合物の添加量は、使用された親水性球状シリカ微粒子のSi原子1モル当り0.001〜1モル、好ましくは0.01〜0.1モル、特に好ましくは0.01〜0.05モルである。添加量が0.01モルより少ないと、得られる疎水性球状シリカ微粒子の分散性が悪くなるため、ポリテトラフルオロエチレンパウダーへの流動性化付与効果が現れず、1モルより多いとシリカ微粒子の凝集が生じ得る。
【0057】
この工程(A2)で得られる第一の疎水性球状シリカ微粒子の混合溶媒分散液中の該シリカ微粒子の濃度は通常3質量%以上15質量%未満、好ましくは5〜10質量%である。かかる濃度が低すぎると生産性が低下することがあり、高すぎるとシリカ微粒子の凝集が生じてしまうことがある。
【0058】
・濃縮工程
このようにして得られた第一の疎水性球状シリカ微粒子の混合溶媒分散液から前記親水性有機溶媒と水の一部を除去し、濃縮することにより、第一の疎水性球状シリカ微粒子の混合溶媒濃縮分散液とすることが好ましい。この際、疎水性有機溶媒をあらかじめ(濃縮工程前)、或いは濃縮工程中に加えてもよい。この際、使用する疎水性溶媒としては、炭化水素系又はケトン系溶媒が好ましい。具体的には該溶媒として、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられ、メチルイソブチルケトンが好ましい。前記親水性有機溶媒と水の一部を除去する方法としては、例えば留去、減圧留去などが挙げられる。得られる濃縮分散液はシリカ微粒子濃度が15〜40質量%であるものが好ましく、20〜35質量%であるものがより好ましく、25〜30質量%であるものが特に好ましい。15質量%より少ないと後工程の表面処理が円滑に進まないことがあり、40質量%より大きいとシリカ微粒子の凝集が生じてしまうことがある。
【0059】
濃縮工程は、次の工程(A3)において表面処理剤として使用される一般式(III)で表されるシラザン化合物及び一般式(IV)で表される一官能性シラン化合物がアルコールや水と反応して表面処理が不十分となり、その後に乾燥を行った時に凝集を生じ、得られるシリカ粉体は一次粒子径を維持できず、流動性付与能が悪くなる、といった不具合を抑制するという意義もある。
【0060】
・工程(A3):1官能性シラン化合物による表面処理工程
工程(A2)で得られた第一の疎水性球状シリカ微粒子の混合溶媒分散液に、一般式(III):
R
23SiNHSiR
23 (III)
(式中、各R
2は同一又は異種の置換又は非置換の炭素原子数1〜6の一価炭化水素基である)
で示されるシラザン化合物、又は一般式(IV):
R
23SiX (IV)
(式中、R
2は一般式(III)で定義した通りであり、XはOH基又は加水分解性基である)で示される1官能性シラン化合物又はこれらの混合物を添加し、これにより前記第一の疎水性球状シリカ微粒子の表面を処理し、該微粒子の表面にR
23SiO
1/2単位(但し、R
2は一般式(III)で定義の通り)を導入することにより、第二の疎水性球状シリカ微粒子を得る。この工程の処理により、第一の疎水性球状シリカ微粒子の表面に残存するシラノール基をトリオルガノシリル化する形でR
23SiO
1/2単位が該表面に導入される。
【0061】
上記一般式(III)及び(IV)中、R
2は、好ましくは炭素原子数1〜4、特に好ましくは1〜2の1価炭化水素基である。R
2で表される1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等のアルキル基、好ましくは、メチル基、エチル基又はプロピル基、特に好ましくは、メチル基又はエチル基が挙げられる。また、これらの1価炭化水素基の水素原子の一部又は全部が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、好ましくは、フッ素原子、で置換されていてもよい。
【0062】
Xで表される加水分解性基としては、例えば、塩素原子、アルコキシ基、アミノ基、アシルオキシ基が挙げられ、好ましくはアルコキシ基又はアミノ基、特に好ましくはアルコキシ基が挙げられる。
【0063】
一般式(III)で示されるシラザン化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン等、好ましくはヘキサメチルジシラザンが挙げられる。一般式(IV)で示される1官能性シラン化合物としては、例えば、トリメチルシラノール、トリエチルシラノール等のモノシラノール化合物;トリメチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン等のモノクロロシラン;トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のモノアルコキシシラン;トリメチルシリルジメチルアミン、トリメチルシリルジエチルアミン等のモノアミノシラン;トリメチルアセトキシシラン等のモノアシルオキシシランが挙げられ、好ましいものとしては、トリメチルシラノール、トリメチルメトキシシラン又はトリメチルシリルジエチルアミン、特に好ましいものとしては、トリメチルシラノール又はトリメチルメトキシシランが挙げられる。
【0064】
前記シラザン化合物又は/及び官能性シラン化合物の使用量は、使用した親水性球状シリカ微粒子のSi原子1モルに対して0.1〜0.5モル、好ましくは0.2〜0.4モル、特に好ましくは0.25〜0.35モルである。使用量が0.1モルより少ないと、得られる疎水性シリカ微粒子の分散性が悪くなるため、ポリテトラフルオロエチレンパウダーへの流動性付与効果が現れない。使用量が0.5モルより多いと、経済的に不利である。
【0065】
上記疎水性球状シリカ微粒子は、常圧乾燥、減圧乾燥等の常法によって粉体として得られる。
【0066】
<ポリテトラフルオロエチレンパウダー組成物>
本発明のポリテトラフルオロエチレンパウダー組成物は、前記ポリテトラフルオロエチレンパウダーに前記疎水性球状シリカ微粒子を添加し、該ポリテトラフルオロエチレンパウダーの表面上に物理吸着させて付着させてなるものである。該ポリテトラフルオロエチレンパウダーへの該疎水性球状シリカ微粒子の添加量は、該ポリテトラフルオロエチレンパウダーの0.01〜5.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜4.0質量%、特に0.01〜3.0質量%である。この添加量が0.01質量%より少ないと、ポリテトラフルオロエチレンパウダーの流動性が変化しない場合があり、好ましくない。またこの添加量が5.0質量%を超えると、コスト的に好ましくない場合がある。本発明のポリテトラフルオロエチレンパウダーは、通常前記ポリテトラフルオロエチレンパウダーと前記疎水性球状シリカ微粒子とから成る粉末であるが、任意に着色剤、カップリング剤のような添加剤を含んでもよい。
【0067】
ポリテトラフルオロエチレンパウダーに前記の疎水性シリカ微粒子を付着させるには、公知の混合方法によれば良く、ヘンシェルミキサー、V型ブレンダー、リボンブレンダー、らいかい機、ニーダーミキサー、バタフライミキサー、あるいは通常のプロペラ攪拌子による混合機を用いて、各成分の所定量を均一に混合すればよい。そうすれば簡単に疎水性シリカ微粒子をポリテトラフルオロエチレンパウダー表面に付着させることができる。
【0068】
ポリテトラフルオロエチレンパウダー組成物の流動性については、粉体流動性の指標である基本流動性エネルギーの測定により判断した。その基本流動性エネルギーは、粉体流動性分析装置FT−4(シスメックス(株)製)を用いて測定する。この装置の測定原理を説明する。垂直に置かれた筒状容器に粉体を充填し、該粉体中を垂直な軸棒の先端に設けられた二枚の回転翼(ブレード)を回転させながら一定の距離(高さH1からH2まで)下降させる。このときに粉体から受ける力をトルク成分と荷重成分とに分けて測定することにより、該ブレードがH1からH2まで下降するのに伴うそれぞれの仕事量(エネルギー)を求め、次いで両者のトータルエネルギー量を求める。こうして測定されたトータルエネルギー量が小さいほど粉体の流動性が良好であることを意味するので、粉体流動性の指標として使用できる。
【0069】
その基本流動性エネルギーの値が小さければ小さいほど粉体の流動性は良いと判断できるが、この値が1000mJ以下であれば流動性が優れていると判断できる。
特に好ましくは900mJ以下、更に好ましくは800mJ以下である。
【0070】
この値が1000mJ以上になると明らかに流動性の悪化傾向が見られ、粉体の移送性が極端に悪くなったり、作業性が悪化したり、分散性が悪化するため、期待される難燃性も望ましいものにならない等の悪影響が見られるようになる。
【0071】
本発明のポリテトラフルオロエチレンパウダー組成物は熱可塑性樹脂のドリップ防止剤として好適に用いることができる。
【0072】
本発明の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂中にドリップ防止剤、即ちポリテトラフルオロエチレンパウダー組成物を含有するものである。本発明の樹脂組成物は、上記ドリップ防止剤を含むため、取り扱い性に優れる。
【0073】
本発明の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、上記ドリップ防止剤0.01〜5質量部含有せしめることが好ましく、特に0.03〜2質量部、更に0.05〜1質量部含有せしめることが好ましい。ドリップ防止剤が0.01質量部よりも少ないと、所望のドリップ防止性が得られなくなるおそれがある。また5質量部を超えると、コスト的に不利な場合があり、好ましくない。
【0074】
本発明に用いる熱可塑性樹脂は、優れたドリップ防止効果の点で易燃性熱可塑性樹脂とすることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート(PC)、ブタジエンゴムグラフト共重合体(例えばABS樹脂)、アクリルゴムグラフト共重合体、シリコーン−アクリル複合ゴムグラフト共重合体、エチレンプロピレンゴムグラフト共重合体、HIPS、AS等のスチレン系樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE)、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂(PA)、PMMA等のアクリル樹脂、その他各種ポリマーアロイであるPET/PBT、PC/PBT、PBT/ABS、PC/ABS、PA/ABS、PPE/PBT、PPE/HIPS、PPE/PA等が挙げられる。中でも、ポリカーボネート、アクリルニトリル−スチレン(AS)樹脂、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、(ポリカーボネート)/(アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン)アロイ樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリプロピレン及びポリスチレンからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂が好ましい。
【0075】
また、難燃要求レベルの高い用途、例えば家電・OA機器で、ハウジングや各種機構部品に使用される樹脂、例えばPC、PC系アロイ樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテルなどの樹脂を対象にするとき、本発明のドリップ防止剤は優れたドリップ防止効果が奏される。例えば、熱可塑性樹脂としては、PC、PC/ABSアロイ樹脂、PC/PBTアロイ樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、及びポリフェニレンエーテルからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂がこれに該当する。中でも、ポリカーボネートが特に好ましい。
【0076】
本発明の樹脂組成物は、更に、難燃剤を含有せしめることができる。難燃剤を含むことにより、難燃性樹脂組成物として好適に使用できる。
【0077】
本発明において、難燃剤は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.001〜40質量部、特に0.01〜30質量部含有せしめることが好ましい。難燃剤が0.001質量部よりも少ないと、難燃効果が不足する傾向にあり、40質量部より多いと、経済的でないうえに、樹脂組成物の機械的性質(耐衝撃性など)が低下する傾向にある。
【0078】
難燃剤としては、例えば窒素、リン、アンチモン、ビスマスなどの周期律表5B族を含む化合物や、7B族のハロゲン化合物を含む化合物などが挙げられる。このうち、ハロゲン化合物としては、脂肪族、脂環族、芳香族有機ハロゲン化合物、たとえば臭素系のテトラブロモビスフェノールA(TBA)、デカブロモジフェニルエーテル(DBDPE)、オクタブロモジフェニルエーテル(OBDPE)、TBAエポキシ/フェノキシオリゴマー、臭素化架橋ポリスチレン、塩素系の塩素化バラフィン、パークロロシクロペンタデカンなどが挙げられる。リン化合物としては例えばリン酸エステル、ポリリン酸塩系などが挙げられる。また、アンチモン化合物はハロゲン化合物と組み合わせて使用することが好ましく、たとえば三酸化アンチモン、五酸化アンチモンなどが挙げられる。このほか、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化モリブデンも使用できる。これらの難燃剤は熱可塑性樹脂の種類に応じて、少なくとも1種と配合量を任意に選ぶことができ、これらに限定されるものではない。
【0079】
本発明の樹脂組成物は、上記各成分を公知の方法によってブレンドして製造できるが、ブレンドする順序、粉末状態でブレンドするか分散体の状態でブレンドするか、あるいはブレンド機械の種類とその組み合わせなど、方法は種々あるが特に限定されない。例えば、予め難燃剤と本発明のドリップ防止剤をブレンドしたあとで、混練り機に樹脂とともに供給したり、一部または全体が水性分散体もしくはオルガノゾルである熱可塑性樹脂に、本発明のドリップ防止剤をブレンドするなど、種々のブレンド方法が可能である。
【0080】
本発明の樹脂組成物には、更に、公知の添加剤、例えば紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料、成形助剤、炭酸カルシウム、ガラス繊維などを必要に応じて添加することができる。
【実施例】
【0081】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明する。なお、下記の実施例は、本発明を何ら制限するものではない。
【0082】
[疎水性球状シリカ微粒子の合成]
<合成例1>
・工程(A1):親水性球状シリカ微粒子の合成工程
攪拌機と、滴下ロートと、温度計とを備えた3リットルのガラス製反応器にメタノール989.5gと、水135.5gと、28%アンモニア水66.5gとを入れて混合した。この溶液を35℃となるように調整し、攪拌しながらテトラメトキシシラン436.5g(2.87モル)を6時間かけて滴下した。この滴下が終了した後も、さらに0.5時間攪拌を継続して加水分解を行うことにより、親水性球状シリカ微粒子の懸濁液を得た。
【0083】
・工程(A2):3官能性シラン化合物による表面処理工程
上記工程(A1)で得られた懸濁液に室温でメチルトリメトキシシラン4.4g(0.03モル)を0.5時間かけて滴下し、滴下後も12時間攪拌を継続し、シリカ微粒子表面を疎水化処理することにより、疎水性球状シリカ微粒子の分散液を得た。
【0084】
次いで、ガラス製反応器にエステルアダプターと冷却管とを取り付け、前工程で得られた分散液を60〜70℃に加熱してメタノールと水の混合物1021gを留去し、疎水性球状シリカ微粒子の混合溶媒濃縮分散液を得た。このとき、濃縮分散液中の疎水性球状シリカ微粒子の含有量は28質量%であった。
【0085】
・工程(A3):1官能性シラン化合物による表面処理工程
前工程で得られた濃縮分散液に、室温において、ヘキサメチルジシラザン138.4g(0.86モル)を添加した後、この分散液を50〜60℃に加熱し、9時間反応させることにより、該分散液中のシリカ微粒子をトリメチルシリル化した。次いで、この分散液中の溶媒を130℃、減圧下(6650Pa)で留去することにより、疎水性球状シリカ微粒子(1)186gを得た。
【0086】
工程(A1)で得られた親水性球状シリカ微粒子について、下記の測定方法1に従って測定を行った。また、上記の工程(A1)〜(A3)の各段階を経て得られた疎水性球状シリカ微粒子について、下記の測定方法2〜3に従って測定を行った。得られた結果を表1に示す。
【0087】
[測定方法1〜3]
1.工程(A1)で得られた親水性球状シリカ微粒子の粒子径測定
メタノールにシリカ微粒子懸濁液を、シリカ微粒子が0.5質量%となるように添加し、10分間超音波にかけることにより、該微粒子を分散させた。このように処理した微粒子の粒度分布を、動的光散乱法/レーザードップラー法ナノトラック粒度分布測定装置(日機装株式会社製、商品名:UPA−EX150)により測定し、その体積基準メジアン径を粒子径とした。なお、メジアン径とは粒度分布を累積分布として表した時の累積50%に相当する粒子径である。
【0088】
2.工程(A3)において得られた疎水性球状シリカ微粒子の粒子径測定及び粒度分布D90/D10の測定
メタノールにシリカ微粒子を、0.5質量%となるように添加し、10分間超音波にかけることにより、該微粒子を分散させた。このように処理した微粒子の粒度分布を、動的光散乱法/レーザードップラー法ナノトラック粒度分布測定装置(日機装株式会社製、商品名:UPA−EX150)により測定し、その体積基準メジアン径を粒子径とした。粒度分布D90/D10の測定は、上記粒子径測定した際の分布において小さい側から累積が10%となる粒子径をD10、小さい側から累積が90%となる粒子径をD90とし測定された値からD90/D10を計算した。
【0089】
3.疎水性球状シリカ微粒子の形状測定
電子顕微鏡(日立製作所製、商品名:S−4700型、倍率:10万倍)によって観察を行い、形状を確認した。「球状」とは、真球だけでなく、若干歪んだ球も含む。なおこのような粒子の形状は、粒子を二次元に投影した時の円形度で評価し、円形度が0.8〜1の範囲にあるものとする。ここで円形度とは、(粒子面積と等しい円の周囲長)/(粒子周囲長)である。平均円形度は上記電子顕微鏡により観察し、1次粒子100個を測定して、平均した値を用いた。
【0090】
<合成例2>
合成例1において、工程(A1)でメタノール、水及び28%アンモニア水の量を、メタノール1045.7g、水112.6g、28%アンモニア水33.2gに変えたこと以外は同様にして、疎水性球状シリカ微粒子(2)188gを得た。この疎水性球状シリカ微粒子を用いて合成例1における測定と同様に測定した。この結果を表1に示す。
【0091】
<合成例3>
・工程(A1):
撹拌機、滴下ロート及び温度計を備えた3リットルのガラス製反応器に、メタノール623.7g、水41.4g及び28%アンモニア水49.8gを添加して混合した。この溶液を35℃に調整し、撹拌しながら該溶液にテトラメトキシシラン1163.7g及び5.4%アンモニア水418.1gを同時に添加開始し、前者は6時間、そして後者は4時間かけて滴下した。テトラメトキシシラン滴下後も0.5時間撹拌を続けて加水分解を行い、シリカ微粒子の懸濁液を得た。
【0092】
・工程(A2):
こうして得られた懸濁液に室温でメチルトリメトキシシラン11.6g(テトラメトキシシランに対してモル比で0.01相当量)を0.5時間かけて滴下し、滴下後も12時間撹拌して、シリカ微粒子表面の処理を行った。
【0093】
該ガラス製反応器にエステルアダプターと冷却管を取り付け、上記の表面処理を施したシリカ微粒子を含む分散液にメチルイソブチルケトン1440gを添加した後、80〜110℃に加熱して、メタノール水を7時間かけて留去した。
【0094】
・工程(A3):
こうして得られた分散液に、室温でヘキサメチルジシラザン357.6gを添加し、120℃に加熱し、3時間反応させて、シリカ微粒子をトリメチルシリル化した。その後溶媒を減圧下で留去して球状疎水性シリカ微粒子(3)472gを得た。
【0095】
こうして得られたシリカ微粒子(3)について、合成例1と同様の測定を行った。結果を表1に示す。
【0096】
<合成例4>
シリカ微粒子の合成の際に、テトラメトキシシランの加水分解温度を35℃の代りに20℃とした以外は、合成例3と同様にして各工程を行ったところ、疎水性球状シリカ微粒子(4)469gを得た。この疎水性球状シリカ微粒子(4)を用いて合成例1と同様の測定を行った。この結果を表1に示す。
【0097】
<比較合成例1>
攪拌機と温度計とを備えた0.3リットルのガラス製反応器に爆燃法シリカ(商品名:SOC1、アドマテクス社製)100gを仕込み、純水1gを攪拌下で添加し、密閉後、さらに60℃で10時間攪拌した。次いで、室温まで冷却した後、ヘキサメチルジシラザン2gを攪拌下で添加し、密閉後、さらに24時間攪拌した。120℃に昇温し、窒素ガスを通気しながら残存原料及び生成したアンモニアを除去し、疎水性球状シリカ微粒子(5)100gを得た。
【0098】
得られたシリカ微粒子(5)について、合成例1と同様の測定を行った。結果を表1に示す。
【0099】
<比較合成例2>
攪拌機と温度計とを備えた0.3リットルのガラス製反応器に爆燃法シリカ(商品名:SOC1、アドマテクス社製)100gを仕込み、純水1gを攪拌下で添加し、密閉後、さらに60℃で10時間攪拌した。次いで、室温まで冷却した後、メチルトリメトキシシラン1gを攪拌下で添加し、密閉後、さらに24時間攪拌した。次にヘキサメチルジシラザン2gを攪拌下で添加し、密閉後、さらに24時間攪拌した。120℃に昇温し、窒素ガスを通気しながら残存原料及び生成したアンモニアを除去し、疎水性球状シリカ微粒子(6)101gを得た。得られたシリカ微粒子(6)について、合成例1と同様の測定を行った。結果を表1に示す。
【0100】
<実施例1〜5、比較例1〜5>
上記の各疎水性球状シリカ微粒子(1)〜(6)を、表2に示す量でポリテトラフルオロエチレンパウダー(ダイキン工業(株)製、商品名ポリフロンTFE M−12。平均粒径25μm、見掛け密度0.29g/cm
3 、標準比重2.15)に添加し、サンプルミルにより3分撹拌混合を行った。得られた粉体状のポリテトラフルオロエチレンパウダー組成物について、粉体流動性の指標である基本流動性エネルギーの測定を行った。結果を表2に示す。なお、測定の詳細は以下の通りである。
また、実施例2、4の、球状疎水性シリカ微粒子をポリテトラフルオロエチレンパウダー表面に付着させたポリテトラフルオロエチレンパウダー組成物の電子顕微鏡写真及び比較例5の、球状疎水性シリカ微粒子をポリテトラフルオロエチレンパウダーに添加しない未処理のポリテトラフルオロエチレンパウダーの電子顕微鏡写真を夫々
図1、2及び3に示す。
【0101】
流動性は、粉体流動性分析装置FT−4(シスメックス(株)製)を用いて測定した。この装置の測定原理を説明する。垂直に置かれた筒状容器に粉体を充填し、該粉体中を垂直な軸棒の先端に設けられた二枚の回転翼(ブレード)を回転させながら一定の距離(高さH1からH2まで)下降させる。このときに粉体から受ける力をトルク成分と荷重成分とに分けて測定することにより、該ブレードがH1からH2まで下降するのに伴うそれぞれの仕事量(エネルギー)を求め、次いで両者のトータルエネルギー量を求める。こうして測定されたトータルエネルギー量が小さいほど粉体の流動性が良好であることを意味するので、粉体流動性の指標として使用する。この装置にて、ポリイミド樹脂組成物の安定性試験も行なった。
【0102】
・・条件:
容器:容積160ml(内径50mm、長さ79mm)のガラス製円筒型容器を使用した。
【0103】
ブレード:円筒型容器内の中央に鉛直に装入されるステンレス製の軸棒の先端に、水平に対向する形で二枚取り付けられている。ブレードは、直径48mmのものを使用する。H1からH2までの長さは69mmである。
【0104】
・・流動性試験:上記のようにして、測定容器に充填した粉体を静置した状態から流動させた場合の粉体流動特性をみる。ブレード先端の回転速度を100mm/secとし、トータルエネルギー量を7回連続して測定する。7回目のトータルエネルギー量(最も安定した状態であるので基本流動性エネルギーと称される)を表2に示す。トータルエネルギー量が小さいほど流動性が高い。
・・安定性試験:流動性試験に続いて、ブレードの回転速度を100mm/sec→70mm/sec→40mm/sec→10mm/secと変えた時のトータルエネルギー量を測定する。その時のFRI変動指数(FlowRateIndex)が1に近いほど、流動速度について安定していると言える。ここで、FRI変動指数=(10mm/sのデータ)/(100mm/sのデータ)。
【0105】
【表1】
<注>
1)工程(A1)で得られた分散液の親水性球状シリカ微粒子の粒子径
2)最終的に得られた疎水性球状シリカ微粒子の粒子径
【0106】
【表2】
【0107】
実施例6〜11、比較例6〜11
易燃性熱可塑性樹脂としてポリカーボネート樹脂(帝人化成(株)製、商品名パンライトL−1225W)100質量部、ドリップ防止剤として上記実施例1〜5及び比較例1〜5で調製したPTFEパウダー組成物1〜10をX質量部ならびに難燃剤としてテトラブロモビスフェノールA(帝人化成(株)製、商品名ファイヤーガードFG−7000)22.5質量部および三酸化アンチモン(日本精鉱(株)製、商品名ATOX−S)7.0質量部をタンブラー中において、室温で10分間予備混合し、40φの二軸混練り押出し機のスクリューフィーダーに仕込んだ。混練り押出しの条件として、押出温度290℃、スクリュー回転数130回転/分、供給量8kg/時を採用して、ペレット状の本発明の難燃性樹脂組成物をえた。このときの作業性を下記の点で評価した。
【0108】
この組成物から射出成形機(住友重機械(株)製、商品名SG50)を用いて、短冊試験片(長さ5インチ、幅1/2インチ、厚み1/8インチ)を作製し、つぎのUL94燃焼試験を行ない難燃性を調べた。結果を表3に示す。
【0109】
作業性:前記組成物を押出し機のスクリューフィーダーに仕込んだ予備混合原料の供給安定性および押出し機からのストランドの吐出安定性によって総合的に評価し、安定して作業できるときを良好(+)とし、原料のブリッジによる供給が途絶えたり、ストランドが切れるときを不良(−)とした。
【0110】
難燃性:UL94(プラスチック燃焼性試験法)に準じて行ない、5枚の試験片の成績に基づいて材料をUL94V−0、UL94V−1、UL94V−2の3段階で評価した。UL94Vクラスと判定基準は以下のとおりである。
【0111】
UL94V−0:下記(a)、(c)、(e)、(f)および(h)のいずれも満足すること。
UL94V−1:下記(b)、(d)、(e)、(g)および(h)のいずれも満足すること。
UL94V−2:下記(b)、(d)、(g)および(h)のいずれも満足すること。
【0112】
(a):1回の接炎後10秒以上燃えつづけない。
(b):1回の接炎後30秒以上燃えつづけない。
(c):5本各2回計10回の接炎後の合計燃焼時間が50秒以内燃えつづけない。
(d):5本各2回計10回の接炎後の合計燃焼時間が250秒以内燃えつづけない。
(e):火玉滴下で12インチ下の脱脂綿を燃やさない。
(f):2回目の接炎後のグローイング時間が30秒以内。
(g):2回目の接炎後のグローイング時間が60秒以内。
(h):クランプ部まで燃え上らないこと。
【0113】
【表3】
【0114】
表3の結果から、本発明品は、作業性に優れ、ドリップがないことが分かる。