(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6052151
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】シリコン単結晶の製造方法
(51)【国際特許分類】
C30B 29/06 20060101AFI20161219BHJP
【FI】
C30B29/06 502B
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-255108(P2013-255108)
(22)【出願日】2013年12月10日
(65)【公開番号】特開2015-113245(P2015-113245A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2015年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】木村 明浩
(72)【発明者】
【氏名】星 亮二
【審査官】
末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−277042(JP,A)
【文献】
特開平07−157391(JP,A)
【文献】
特開2005−145742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 1/00−35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石英ルツボにシリコン多結晶を充填する工程と、
前記シリコン多結晶を充填した石英ルツボを、単結晶製造装置内においてヒーターにより前記石英ルツボの仮想温度以上シリコンの融点未満の温度で3時間以上加熱して前記石英ルツボの表面を改質する工程と、
前記石英ルツボを前記単結晶製造装置の外へ取り出すことなく、前記充填したシリコン多結晶を溶融して、又は、前記充填したシリコン多結晶とともに追加充填したシリコン多結晶を溶融して、シリコン融液を得る工程と、
前記シリコン融液からシリコン単結晶を引き上げる工程と
を有し、
前記石英ルツボの表面を改質する工程における加熱を、前記シリコン単結晶の引き上げを開始する時点における前記シリコン融液の融液面の位置から15cm下方の高さ位置には前記シリコン多結晶が充填されていない状態で行うことを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。
【請求項2】
前記石英ルツボの表面を改質する工程における温度を1350℃以上1415℃以下とすることを特徴とする請求項1に記載のシリコン単結晶の製造方法。
【請求項3】
前記石英ルツボの表面を改質する工程における加熱を、前記石英ルツボの湾曲部以下が覆われるだけ前記シリコン多結晶を充填した状態で行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシリコン単結晶の製造方法。
【請求項4】
前記石英ルツボの表面を改質する工程における前記ヒーターのヒータースリットの上端の位置を、前記シリコン単結晶の引き上げを開始する時点における前記シリコン融液の融液面の位置を下限とし、該融液面の位置よりも10cm上方の位置を上限とする領域内とすることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のシリコン単結晶の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン単結晶の製造方法に関する。本発明は特に、石英ルツボに保持したシリコン融液からシリコン単結晶を引き上げることによりシリコン単結晶を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン単結晶の製造方法として、石英ルツボに保持したシリコン融液からシリコン単結晶を引き上げる方法が広く行われている。このチョクラルスキー法(CZ法、引き上げ法とも呼ばれる)によるシリコン単結晶の製造方法においては、従来、シリコン単結晶の引き上げに先立って石英ルツボに対して処理を行うことがあった。
【0003】
特許文献1の「従来の技術」の欄には、シリコン多結晶団塊を充填した石英るつぼを、引上げ機のチャンバーにセットした後、チャンバーを密閉し、その内部雰囲気をアルゴンガスで置換し、その後、例えば減圧(50Torr)にし、その減圧下でシリコン多結晶の溶融点以下の温度でチャンバー内を加熱することが行われている、と記載されている。
【0004】
特許文献2には石英ガラスルツボの変形対策として、ルツボ外層にAlを添加する方法が記載されている。特許文献2の請求項10や段落0051には、さらに、石英ガラスルツボの加熱昇温過程において、外層温度を1200℃〜1350℃とすることで外層をクリストバライト化させ、粘性を向上させることが記載されている。
【0005】
特許文献3には石英ガラスルツボ表面に石英ガラス粉末層を設け、シリコン原料を加熱溶融する際に、その加熱温度によってルツボ表面の石英ガラス粉末層を結晶化させることによって石英ガラスルツボを強化する方法が開示されている。
【0006】
また、従来より、シリコン単結晶の製造方法において、シリコン単結晶の有転位化を抑制し、無転位でシリコン単結晶を引き上げることができる割合を高める方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3−197390号公報
【特許文献2】特開2000−247778号公報
【特許文献3】特開2004−131317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、石英ルツボの内表面を改質することにより、シリコン単結晶の無転位化率を向上させることができるシリコン単結晶の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、石英ルツボにシリコン多結晶を充填する工程と、前記シリコン多結晶を充填した石英ルツボを、単結晶製造装置内においてヒーターにより前記石英ルツボの仮想温度以上シリコンの融点未満の温度で3時間以上加熱して前記石英ルツボの表面を改質する工程と、前記石英ルツボを前記単結晶製造装置の外へ取り出すことなく、前記充填したシリコン多結晶を溶融して、又は、前記充填したシリコン多結晶とともに追加充填したシリコン多結晶を溶融して、シリコン融液を得る工程と、前記シリコン融液からシリコン単結晶を引き上げる工程とを有することを特徴とするシリコン単結晶の製造方法を提供する。
【0010】
上記の温度及び時間の条件で加熱することにより、石英ルツボの表面を十分に改質することができる。すなわち、石英ルツボの仮想温度以上の温度で加熱するため、石英ルツボの表面を十分に改質することができる。また、シリコンの融点未満における加熱であるため、石英ルツボに充填したシリコン多結晶が溶融せずシリコン融液が発生しない。そのため、シリコン融液と石英ルツボとの反応がなく、石英ルツボの劣化が抑制される。また、シリコン多結晶を充填した状態で加熱を行うことにより、シリコン多結晶を追加充填する場合に石英ルツボへの衝撃やクラック導入を抑制することができる。上記条件で改質した石英ルツボを用いてシリコン単結晶を引き上げることにより、シリコン単結晶の無転位化率を向上させることができる。
【0011】
この場合、前記石英ルツボの表面を改質する工程における温度を1350℃以上1415℃以下とすることが好ましい。
【0012】
石英ルツボの仮想温度は1300℃程度であることが多いため、1350℃以上の温度で加熱することにより、より確実に、石英ルツボの表面を改質することができる。また、加熱温度が1415℃以下であれば、シリコンの融点未満であるばかりでなく、石英ルツボが軟化・変形することを抑制することもできる。
【0013】
また、前記石英ルツボの表面を改質する工程における加熱を、前記石英ルツボの湾曲部以下が覆われるだけ前記シリコン多結晶を充填した状態で行うことができる。
【0014】
このように、石英ルツボの湾曲部(R部)以下が覆われるだけシリコン多結晶を充填した状態で加熱を行うことにより、改質加熱後に行うシリコン多結晶を溶融する際にシリコン多結晶を追加充填するときに石英ルツボへの衝撃やクラック導入をより確実に回避することができる。
【0015】
また、前記石英ルツボの表面を改質する工程における加熱を、前記シリコン単結晶の引き上げを開始する時点における前記シリコン融液の融液面の位置から15cm下方の高さ位置には前記シリコン多結晶が充填されていない状態で行うことが好ましい。
【0016】
改質加熱工程において上記範囲にシリコン多結晶が存在しないことにより、その範囲におけるシリコン融液の生成もなく、また、石英ルツボとシリコン多結晶との接触によるキズ・凹みがない。これにより、石英ルツボの劣化を抑制することができる。
【0017】
また、前記石英ルツボの表面を改質する工程における前記ヒーターのヒータースリットの上端の位置を、前記シリコン単結晶の引き上げを開始する時点における前記シリコン融液の融液面の位置を下限とし、該融液面の位置よりも10cm上方の位置を上限とする領域内とすることが好ましい。
【0018】
ヒータースリットの上端の位置、すなわち、ヒーターの発熱部の上端の位置を上記領域内とすることにより、石英ルツボの内表面のうちシリコン単結晶の製造を開始する融液面の位置より下方を加熱改質することができる。その一方で、上記位置であれば、石英ルツボ上部を必要以上に加熱することがなく、石英ルツボ上部を加熱することによるルツボ上部の内側への倒れ込みを抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のシリコン単結晶の製造方法により、石英ルツボの表面を十分に改質した状態でシリコン単結晶を引き上げることができる。これにより、シリコン単結晶の無転位化率を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
上記のように、従来より、シリコン単結晶の無転位化率を向上させることができる方法が求められていた。
【0021】
本発明者らは、この問題について鋭意検討し、シリコン融液の原料であるシリコン多結晶を溶かす前、即ちシリコン多結晶の温度を融点以上にする前に、所定の条件で石英ルツボを加熱することにより、石英ルツボの表面を改質し、シリコン単結晶の無転位化率を向上させることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0022】
本発明は、シリコン単結晶の製造方法において、以下の工程a〜dを有することを特徴とする。
(a)石英ルツボにシリコン多結晶を充填する工程、
(b)シリコン多結晶を充填した石英ルツボを、単結晶製造装置内においてヒーターにより石英ルツボの仮想温度以上シリコンの融点未満の温度で3時間以上加熱して石英ルツボの表面を改質する工程、
(c)石英ルツボを単結晶製造装置の外へ取り出すことなく、充填したシリコン多結晶を溶融して、又は、充填したシリコン多結晶とともに追加充填したシリコン多結晶を溶融して、シリコン融液を得る工程、
(d)シリコン融液からシリコン単結晶を引き上げる工程。
【0023】
仮想温度とは、室温の石英ガラスの物性が、その製造時の熱履歴によって異なった値をとり、それらの物性値が設定された温度を言う。即ち、石英ルツボを改質するには、その仮想温度以上での熱処理が必要である。また、石英ルツボの劣化(ルツボ内表面のクリストバライト化)の主原因はシリコン融液(メルト)と石英ルツボの反応であるため、シリコン融液を生成しないよう、シリコンの融点未満で加熱する必要がある。
【0024】
石英ルツボの仮想温度は、同一バッチ・同一条件で製造した石英ルツボを用いて、もしくは石英ルツボ製造の際に切り落とす上部の端材部を用いて、ラマン分光測定によって得ることができる。
【0025】
石英ルツボの改質には3時間以上の加熱が必要である。加熱時間の上限は特に限定されないが、15時間も行えば十分に改質される。また、15時間以下の加熱時間であれば経済的にも有利である。
【0026】
また、改質が終わった石英ルツボを単結晶製造装置(CZ機)の外へ取り出すことなく、連続して初期溶融、シリコン単結晶の引き上げを行うことにより、降温・昇温に要する時間を省略することができるため、効率的にシリコン単結晶を生産することができる。
【0027】
上記条件により石英ルツボの表面を十分に改質することができることは、従来の文献には示されていない。例えば、上記特許文献1では、引上装置内の炭素製品の清浄化を目的としており、本発明のように石英ルツボ改質を目的としたものではない。従って、加熱条件の具体的開示は無く、不適切な条件で加熱を行うと石英ルツボの改質が行えないだけでなく、石英ルツボが変形してシリコンの引上を行えない事態にもなりうる。特許文献2に記載された温度帯の熱処理では、石英ルツボの仮想温度以下の場合であることがあり、その場合、石英ルツボ内面を改質することはできず、シリコン単結晶の無転位化率は改善しない。
【0028】
特許文献3もルツボの変形対策であり、本発明のように石英ルツボ改質を目的としたものではない。従って、加熱条件の具体的開示は無く、不適切な条件で加熱を行うと石英ルツボの改質が行えないだけでなく、石英ルツボが変形してシリコンの引上を行えない事態にもなりうる。
【0029】
上記の石英ルツボの表面を改質する工程(工程b)における温度を1350℃以上1415℃以下とすることが好ましい。石英ルツボの仮想温度は1300℃程度であることが多いため、1350℃以上の温度で加熱することにより、より確実に、石英ルツボの表面を改質することができる。この加熱温度は、石英ルツボの改質をより確実に行うため、1350℃を超える温度がより好ましく、1375℃以上とすることがさらに好ましい。また、加熱温度を1415℃以下とすることにより、石英ルツボが軟化・変形することを抑制することもできる。また、このような加熱温度であればシリコンの融点より低く、より確実にシリコン融液の生成を防止することができる。
【0030】
また、上記の石英ルツボの表面を改質する工程(工程b)における加熱を、石英ルツボの湾曲部以下が覆われるだけシリコン多結晶を充填した状態で行うことが好ましい。
【0031】
石英ルツボの改質のためにはシリコン融液と石英ルツボの反応を起こさないことが重要である。反応防止の目的のためには、シリコン多結晶が石英ルツボ内に存在しなければ良い。しかしながら、改質加熱後に行うシリコン多結晶を溶融する際(工程c)における石英ルツボへの衝撃やクラック導入は避ける必要がある。そのため、単結晶製造装置へ石英ルツボを設置する際に少なくとも石英ルツボの湾曲部までシリコン多結晶を充填しておき、その状態で改質加熱を行うことが好ましい。シリコン多結晶を追加充填する際の石英ルツボへの衝撃やクラック導入を避けることにより、融液が漏れることなどをより確実に未然に防ぐことができる。
【0032】
また、上記の石英ルツボの表面を改質する工程(工程b)における加熱を、シリコン単結晶の引き上げを開始する時点におけるシリコン融液の融液面の位置から15cm下方の高さ位置にはシリコン多結晶が充填されていない状態で行うことが好ましい。
【0033】
石英ルツボは、シリコン融液との反応により劣化が進行する場合だけでなく、シリコン多結晶との接触によるキズ・凹みを起点としてクリストバライト化が進行する場合もある。そして、石英ルツボの劣化はルツボ円筒部で激しく、シリコン単結晶の製造を開始する融液面の位置から15cm下方までの範囲の劣化は特に著しい。よって、この範囲にシリコン多結晶が無い状態で改質を行えば、シリコン融液が生成することも、キズ・凹みができることもない。従って、上記範囲にシリコン多結晶を充填しないことにより、石英ルツボの劣化を抑制することができる。
【0034】
また、上記の石英ルツボの表面を改質する工程(工程b)において、ヒーターのヒータースリットの上端の位置(ヒーターの主な発熱部の上端に相当)を所定範囲内とすることが好ましい。この範囲は、シリコン単結晶の引き上げを開始する時点におけるシリコン融液の融液面の位置を下限とし、該融液面の位置よりも10cm上方の位置を上限とする領域内である。
【0035】
シリコン融液と石英ルツボの反応により、石英ルツボの劣化・クリストバライト化は進行するので、シリコン単結晶の製造を開始する融液面の位置より上部ではルツボの劣化は起きない。従って、シリコン単結晶の製造を開始する融液面の位置より下方を加熱すれば改質には十分である。シリコン単結晶の製造を開始する融液面の位置を加熱するためには、ヒータースリットの上端の位置を、シリコン単結晶の製造を開始する融液面の位置を下限とすれば良い。また、石英ルツボ上部を加熱するとルツボ上部が内側に倒れ込み、単結晶製造装置(CZ機)の炉内部品と干渉してしまう恐れが生じるため、シリコン単結晶の製造を開始する融液面の位置より10cm上方の位置を上限とすることが好ましい。
【0036】
本発明のシリコン単結晶の製造方法における、石英ルツボへの加熱(工程b)は、従来のCZ法の引き上げの初期溶融を行う前に行うものである。言い換えれば、シリコン多結晶を溶融する前、即ちシリコン多結晶の温度を融点以上にする前に、石英ルツボを加熱するものである。従って、以後の初期溶融、シリコン単結晶引き上げは従来の手法を用いることができる。例えば、改質後に石英ルツボ内にシリコン多結晶を追加投入してもよいし、シリコン単結晶引き上げの際の磁場印加の有無はどちらでも良い。
【実施例】
【0037】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0038】
(実施例1〜9・比較例1〜5)
直径32インチ(81cm)の石英ルツボを用いて直径300mmのシリコン単結晶の引き上げを行った。石英ルツボへのシリコン多結晶充填量、加熱の際のヒータースリットの上端位置、加熱温度、加熱時間は表1の通りである。ヒータースリットの上端位置は、単結晶の製造を開始する融液面の位置(初期MLと表記)を基準とし、それより上方は+、下方は−とした。また、各実施例、比較例で用いた石英ルツボの製造の際に切り落とした上部の端材部を用いて測定した仮想温度の平均値、及び結晶を20本引き上げた時の無転位化率も表1に記した。
【0039】
比較例5は、初期溶融前にルツボへの加熱を行わなかった方法、即ち従来の方法である。
【0040】
【表1】
【0041】
・シリコン多結晶充填量
石英ルツボの湾曲部(R部)まで(実施例1)や初期ML−15cmまで(実施例2)に留めると無転位化率が高い。これは劣化が特に著しいルツボ円筒部にシリコン多結晶が存在せず、ルツボ改質効果が高いことを示している。ルツボ上部まで充填した場合(実施例3)は、実施例1、2に比べるとルツボ改質効果が小さかったが、従来の方法(比較例5)と比較して無転位化率が高く、ルツボ改質効果が明らかに得られている。一方、初めにシリコン多結晶を充填しない場合(比較例1)は、その後石英ルツボを冷却せずにシリコン多結晶の追加充填をする際に石英ルツボにクラックが入り、操業できない場合があった。
【0042】
・初期MLに対するヒータースリットの上端位置
初期MLに対するヒータースリットの上端位置が+10cm(実施例1)、0cm(実施例4)ではルツボが変形することなく改質でき、無転位化率は100%であった。一方、+11cm(実施例5)では無転位化率100%であったものの、ルツボ加熱中にルツボ上部がやや内側へ変形する場合があった。逆に−2cm(実施例6)では、実施例1に比べると効果が小さかったが、従来の方法(比較例5)に対してルツボ改質効果が明らかに得られていた。
【0043】
・加熱温度
石英ルツボの加熱温度が1350℃(実施例7)では、1400℃(実施例3)に比べるとルツボ改質効果が小さかったが、従来の方法(比較例5)に対してルツボ改質効果が明らかに得られた。石英ルツボの仮想温度よりも低い1300℃(比較例2)では、従来の方法(比較例5)と無転位化率は同等であった。これは加熱温度が低く、ルツボが改質されなかったためである。一方、シリコンの融点以上である1430℃(比較例3)でも従来の方法(比較例5)と無転位化率は同等であった。これはルツボ上部まで充填したシリコン多結晶が石英ルツボの加熱中に溶解を始め、ルツボの改質が終わる前にシリコン融液と石英ルツボの反応によりルツボが劣化したためと考えられる。
【0044】
・加熱時間
石英ルツボの加熱時間が3時間(実施例8)、15時間(実施例1)、16時間(実施例9)で十分なルツボ改質が認められた。一方、2時間(比較例4)では従来の方法(比較例5)と無転位化率は同等であり、ルツボ改質効果は認められなかった。よって、3時間以上の加熱時間が必要である。また、15時間の加熱時間で十分である。
【0045】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。