(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。
【0012】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0014】
《中継装置の全体構成》
図1は、本発明の一実施の形態による中継装置において、その主要部の概略的な内部構成例を示すブロック図である。
図1に示す中継装置1は、スイッチング制御部2と、複数の通信ポート3と、プロセッサ(CPU)4と、EEPROM5と、外部記憶媒体を接続するための外部記憶媒体ポート6と、を備える。当該中継装置1は、所謂、レイヤ2レベルのフレーム中継を行うL2スイッチ、レイヤ3レベルのパケット中継を行うL3スイッチ、またはスイッチングハブ等であり、ボックス型の構成であってもシャーシ型の構成であってもよい。
【0015】
EEPROM5は、不揮発性の記憶部であり、現在設定値および初期設定値等が保持される。ここでは、記憶部としてEEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)を例とするが、勿論、フラッシュメモリ等であってもよい。スイッチング制御部2は、EEPROM(記憶部)5内の現在設定値に基づいて設定が行われ、複数の通信ポート3間でのフレームまたはパケットの中継を制御する。具体的には、スイッチング制御部2は、現在設定値による設定が反映された状態で、FDB(Forwarding DataBase)等に基づいてフレームまたはパケットの中継を制御する。現在設定値には、特に限定はされないが、VLAN(Virtual Local Area Network)の設定や、各種セキュリティの設定や、帯域制限の設定や、各種通信プロトコルの有効/無効の設定等を例として、中継装置の各種機能に対する様々な設定情報が含まれる。
【0016】
プロセッサ(CPU)4は、管理部を担い、EEPROM(記憶部)5やスイッチング制御部2の管理を含めて中継装置1全体を管理または制御する。この際に、CPU(管理部)4は、その機能の一つとして、外部記憶媒体ポート6に外部記憶媒体が接続されている場合に、所定の契機にて、外部記憶媒体ポートを介して外部記憶媒体の中から設定初期化命令の存在有無を検出する。そして、CPU(管理部)4は、設定初期化命令が存在する場合には、EEPROM(記憶部)5で保持される初期設定値をEEPROM(記憶部)5で保持される現在設定値に上書きする処理(以降、初期化処理と呼ぶ)を実行する。
【0017】
図2は、
図1の中継装置における前面の構成例を示す外観図であり、
図3は、
図1の中継装置における後面の構成例を示す外観図である。
図2に示すように、中継装置1の前面には、前述した複数の通信ポート3および外部記憶媒体ポート6に加えて、コンソールポート10と、視覚表示体11,12と、発音体13と、が設けられる。外部記憶媒体ポート6には、外部記憶媒体14が接続可能となっている。コンソールポート10には、例えば、管理用端末等が接続可能となっている。
図3に示すように、中継装置1の後面には、装置の電源状態のオンとオフとを切り替える電源スイッチ20と、電源ケーブル22が接続される電源ケーブル差込口21とが設けられる。
【0018】
図2において、視覚表示体11,12および発音体13のいずれか一方または両方は、前述した設定初期化命令に伴う処理(初期化処理)を実行中であることや、初期化処理の実行を完了したこと等をオペレータに通知するための手段となる。特に限定はされないが、初期化処理の実行を完了した際には、例えば、視覚表示体11,12の点灯や、あるいは、発音体13の発音等によってオペレータに通知する。また、初期化処理を実行中の際には、例えば、視覚表示体11の点滅や、初期化処理の完了時とは異なる色の点灯や、視覚表示体12による途中経過の表示や、発音体13の発音等によってオペレータに通知する。外部記憶媒体14は、前述した初期化処理を実行したい場合のほかに、設定情報の読み込みや保存を行いたい場合等で使用することができる。外部記憶媒体14は、特に限定はされないが、例えば、SDメモリカード等である。
【0019】
以上のように、本実施の形態による中継装置は、予め初期化を指示する命令(設定初期化命令)を格納しておいた外部記憶媒体14を外部記憶媒体ポート6に接続した状態で、所定の契機にて、当該設定初期化命令の存在有無を検出し、存在有りの場合に中継装置の設定情報を初期化する機能を備えている。具体的には、中継装置は、初期設定値を現在設定値に上書きする初期化処理を実行することで、中継装置の設定情報を初期化する。当該所定の契機は、例えば、装置の電源状態がオフからオンに変更された時や、あるいは、別途、
図2等に初期化用のスイッチ(ボタン等)を設け、当該スイッチがオペレータによって操作された時などとすることができる。さらに、当該初期化処理が実行中であることや、あるいは実行が完了したことは、視覚表示体11,12および/または発音体13によってオペレータに通知される。
【0020】
これらによって、オペレータは、当該外部記憶媒体14を準備して外部記憶媒体ポート6に接続する操作と、例えば、装置の電源をオフからオンに変更する操作とを行うことで、装置の初期化を実施でき、初期化するためのコマンド等を覚えたり、当該コマンドを発行するためのコンピュータ(管理用端末)の操作方法を憶えたりする必要はない。また、初期化処理の実行状況(実行中または実行完了)を確認するのにコンピュータは必要とされない。このようなことから、オペレータの管理業務を容易化することが可能になる。
【0021】
《中継装置の管理方法(初期化方法)の詳細》
図4は、
図1〜
図3の中継装置において、その管理(設定情報の初期化)に関連する詳細な構成例を示すブロック図である。
図4の中継装置1は、前述したスイッチング制御部2、通信ポート3、プロセッサ(CPU)4、EEPROM(記憶部)5、外部記憶媒体ポート6、コンソールポート10、視覚表示体11,12、および発音体13に加えて、電源30と、外部記憶媒体制御部31と、を備える。スイッチング制御部2は、具体的には、例えばスイッチングLSIや組み込みOS等によって構成される。電源30は、
図3に示した電源スイッチ20がオンに制御された際に、中継装置1全体に電力を供給する。
【0022】
外部記憶媒体制御部31は、プロセッサ(CPU)4と外部記憶媒体ポート6との間に設けられ、プロセッサ(CPU)4の命令に応じて、外部記憶媒体ポート6に接続される外部記憶媒体への実際のメモリアクセスを制御する。外部記憶媒体制御部31は、プロセッサ(CPU)4と共に管理部を担う。また、通信ポート3には、所定の通信モジュール32が接続される。通信モジュール32は、特に、限定はされないが、端末や、L2スイッチや、L3スイッチ等に該当する。
【0023】
図5(a)は、
図4における外部記憶媒体の主要なデータ構造の一例を示す図であり、
図5(b)は、
図4におけるEEPROM(記憶部)の主要なデータ構造の一例を示す図である。外部記憶媒体14には、
図5(a)に示すように、
図1等で述べた設定初期化命令を書き込み可能な設定初期化命令記憶領域40と、所望の外部設定値を書き込み可能な外部設定値記憶領域41と、が設けられる。
【0024】
設定初期化命令記憶領域40には、
図1等で述べたように、スイッチング制御部2に対して初期化処理を行いたい場合に、設定初期化命令が書き込まれる。設定初期化命令は、プロセッサ(CPU)4によって解釈可能な命令である。外部設定値記憶領域41には、スイッチング制御部2を現在設定値および初期設定値とは異なる設定値で動作させたいような場合に、この異なる設定値に該当する外部設定値が書き込まれる。
【0025】
EEPROM(記憶部)5には、
図5(b)に示すように、初期起動プログラム記憶領域42と、初期準備プログラム記憶領域43と、現在設定値記憶領域44と、初期設定値記憶領域45と、が設けられる。初期起動プログラム記憶領域42には、例えば、中継装置1の起動後(電源投入後)に最初に動作する初期起動プログラム(所謂ブートプログラム)が格納される。
【0026】
初期準備プログラム記憶領域43には、スイッチング制御部2等に対して実動作前の初期準備を行うための初期準備プログラムが格納される。具体的には、初期準備プログラムは、例えば、スイッチング制御部2内のレジスタや揮発性メモリ等に対して各種設定値の書き込み等を行う。初期設定値記憶領域45には、
図1等で述べた初期設定値(言い換えればデフォルト設定値)が格納される。現在設定値記憶領域44には、
図1等で述べた現在設定値が格納される。スイッチング制御部2内の各種設定値は、例えば、この現在設定値に基づいて定められる。この場合、スイッチング制御部2に対して初期化処理を行う場合には、現在設定値に、初期設定値が上書きされる。
【0027】
図6は、
図4の中継装置において、その起動時の処理内容の一例を示すフロー図である。
図6に示すように、まず、オペレータ等は、中継装置1を起動させるため、中継装置1の電源状態をオフからオンに変更する(ステップS101)。これを契機として、中継装置1(具体的にはCPU(管理部)4)は、初期起動プログラム記憶領域42に格納された初期起動プログラムを実行する(ステップS102)。なお、この初期起動プログラムを実行する契機は、中継装置1の電源投入に限らず、例えば、中継装置1に別途設けた初期化用のスイッチ(リセットボタン)の操作等であってもよい。
【0028】
以降、ステップS103〜S111の処理は、初期起動プログラムに基づくCPU(管理部)4の処理内容となる。ステップS103において、CPU(管理部)4は、外部記憶媒体ポート6に外部記憶媒体14が挿入されているか否かを判別する。外部記憶媒体14が挿入されている場合、CPU(管理部)4は、外部記憶媒体制御部31を介して外部記憶媒体14を読み込む(ステップS104)。
【0029】
次いで、CPU(管理部)4は、外部記憶媒体14の外部設定値記憶領域41に外部設定値が保存されているか否かを判別する(ステップS105)。外部設定値が保存されている場合、CPU(管理部)4は、EEPROM(記憶部)5の現在設定値記憶領域44に当該外部設定値をコピー(上書き)する(ステップS106)。一方、外部設定値が保存されていない場合、CPU(管理部)4は、外部記憶媒体14の設定初期化命令記憶領域40に設定初期化命令が保存されているか否かを判別する(ステップS110)。設定初期化命令が保存されている場合、CPU(管理部)4は、EEPROM(記憶部)5の現在設定値記憶領域44にEEPROM(記憶部)5の初期設定値記憶領域45に格納された初期設定値をコピー(上書き)する(ステップS111)。
【0030】
ステップS106またはステップS111の処理の後、CPU(管理部)4は、当該処理が完了したことをオペレータ等に通知するため、視覚表示体11,12に表示(例えば点灯)を行わせたり(ステップS107)、または、発音体13に発音を行わせたり(ステップS108)、あるいはその両方を行わせる。なお、前述したように、CPU(管理部)4は、ステップS106またはステップS111の処理の後に限らず、処理の最中にも、視覚表示体11,12や発音体13を用いてオペレータ等にその旨の通知を行ってもよい。これにより、オペレータ等は、例えば、設定初期化命令に伴う処理(ステップS111)を実行中であること又はその処理の実行を完了したことを容易に認識することができる。
【0031】
ここで、前述したステップS103で外部記憶媒体ポート6に外部記憶媒体14が挿入されていない場合や、ステップS110で外部記憶媒体14に設定初期化命令が保存されていない場合は、ステップS112に移行する。ステップS112は、EEPROM(記憶部)5の初期準備プログラム記憶領域43に格納された初期準備プログラムに基づくCPU(管理部)4の処理内容となる。当該ステップS112において、CPU(管理部)4は、スイッチング制御部2(具体的には、その中のレジスタや揮発性メモリ等)を代表とする各部に、EEPROM(記憶部)5の現在設定値記憶領域44に格納された現在設定値を設定する。
【0032】
一方、前述したステップS107およびステップS108ののち、CPU(管理部)4は、通信ポート3による通信動作を全て停止し、通信不可状態を構築する(ステップS109)。ステップS109の後は、再び、ステップS101の前の段階に戻る。この段階では、まだ、ステップS112による処理が行われていないため、ステップS106での外部設定値やステップS111での初期設定値は、スイッチング制御部2に反映されていない。
【0033】
そこで、ステップS109の後に、外部設定値や初期設定値をスイッチング制御部2に反映させるため、オペレータ等は、外部記憶媒体ポート6から外部記憶媒体14を取り外し、この状態で、再び中継装置1の電源投入を行う(ステップS101)。これに応じて、CPU(管理部)4は、ステップS103からステップS112へと移行し、外部設定値や初期設定値をスイッチング制御部2に反映させる。すなわち、CPU(管理部)4は、自身の中継装置1の電源状態がオフからオンに変更されたことを契機とし、かつ外部記憶媒体ポート6に外部記憶媒体14が接続されない場合に、ステップS112を実行する。
【0034】
ここで、ステップS109における通信ポート3の停止処理は、イーサネット(登録商標)特有のループ障害を防止するために設けられる。すなわち、前述したステップS108までの段階では、スイッチング制御部2の設定情報は不定であるため、ループ障害が発生する可能性がある。このループ障害は、少なくとも、オペレータ等がステップS107,S108の通知に応じて再び中継装置1の電源投入を行う(ステップS101)までの期間継続し得る。そこで、オペレータ等の作業に依存せずに、ループ障害を防止するため、ステップS109の処理を設けることが有益となる。
【0035】
なお、ループ障害を防止するため、ステップS108からステップS112に移行する方式も考えられる。ただし、この場合、外部記憶媒体ポート6に外部記憶媒体14が接続された状態を保つため、例えば、それに気が付かずに中継装置1の再起動が行われたような場合等で、不測の事態を招く恐れがある。そこで、この不測の事態を防止し、かつループ障害を防止するため、ステップS109を設けると共に、ステップS109ののちにステップS101に移行するフローを用いることが有益となる。なお、ステップS109に伴う通信不可状態は、例えば、ステップS101での電源投入によって解除される。
【0036】
以上のように、CPU(管理部)4は、EEPROM(記憶部)5で保持される初期設定値(または外部設定値)をEEPROM(記憶部)5で保持される現在設定値に上書きする第1処理(ステップS106,S111等)に加えて、当該現在設定値をスイッチング制御部2に設定する第2処理(ステップS112)を実行する。そして、第2処理は、外部記憶媒体ポート6に外部記憶媒体14が接続されない場合に実行される。これにより、前述したように、外部記憶媒体14の取り外しを忘れることによる不測の事態を防止できる。
【0037】
さらに、CPU(管理部)4は、少なくとも、前述した第1処理(ステップS106,S111等)を実行したのち前述した第2処理(ステップS112)の契機が生じるまでの間、複数の通信ポート3による通信動作を停止する。これによって、ループ障害を防止できる。なお、ここでは、ステップS101によって通信ポート3が通信可能状態になるような動作を前提としたが、場合によっては、例えば、ステップS101の直後等にステップS109を実行し、これに伴う通信不可の状態がステップS112の処理を完了したのちに解除されるようなフローとすることも可能である。この場合でも、少なくとも、第1処理を実行したのち第2処理の契機が生じるまでの間は、複数の通信ポート3による通信動作は停止することになる。
【0038】
以上、本実施の形態による中継装置またはその管理方法(初期化方法)を用いることで、前述したように、オペレータ等の管理業務を容易化することが可能になる。その結果、例えば、大規模なネットワークを運用している通信事業者と大量のスイッチングハブの保守業務を行っているベンダや販売代理店において、初期化作業時間の短縮等が図れる。この際には、例えば、管理責任者等が、設定初期化命令が格納された外部記憶媒体14を準備し、それをオペレータ等に渡して、オペレータ等に初期化作業を行わせるようなことが可能である。
【0039】
なお、外部記憶媒体14に格納される設定初期化命令は、通常のユーザが中身を確認できるテキスト形式の命令であっても、中身を確認できない暗号化された命令であってもよい。後者の場合、CPU(管理部)4は、暗号化された設定初期化命令を自身の中継装置1の固有情報と照合して照合に成功した場合に設定初期化命令に伴う処理(すなわち初期化処理)を実行する。これにより、初期化処理を実施できる者を限定することができるため、初期化処理の悪用を防ぐことができ、セキュリティの向上が図れる。この暗号化された設定初期化命令は、例えば、装置ベンダ等によって提供される。
【0040】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、前述した実施の形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。