【実施例】
【0052】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、試料の調製および物性の分析に用いた装置および条件は、以下のとおりである。
【0053】
(1)GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)
装置:東ソー(株)製 HLC−8200 GPC
カラム:Shodex KF−804L+KF−805L
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン
検出器:UV(254nm)
検量線:標準ポリスチレン
(2)示差熱天秤(TG−DTA)
装置:(株)リガク製 TG−8120
昇温速度:10℃/分
測定温度:25℃−750℃
(3)UV/Vis照射示差走査熱量計(Photo−DSC)
装置:(株)NETZSCH製 Photo−DSC 204 F1 Phoenix
昇温速度:40℃/分
測定温度:25℃−350℃
(4)
1H NMRスペクトル
装置:日本電子(株)製 JNM−ECA700
測定溶媒:DMSO−d
6(重水素化ジメチルスルホキシド)
基準物質:テトラメチルシラン(0.00ppm)
(5)
13C NMRスペクトル
装置:日本電子(株)製 JNM−ECA700
測定溶媒:DMSO−d
6
基準物質:DMSO−d
6(39.5ppm)
(6)イオンクロマトグラフィー(イオウ定量分析)
装置:ダイオネクス社製 ICS−1500
カラム:ダイオネクス社製 IonPacAG12A + IonPacAS12A
溶媒:(NaHCO
32.7mmol+Na
2CO
30.3mmol)/L水溶液
検出器:電気伝導度
(7)スピンコーター
装置:ミカサ(株)製 1H−D7
(8)ホットプレート
装置:アズワン(株)製 ND−2
(9)プローブ型超音波照射装置(分散処理)
装置:Hielscher Ultrasonics社製 UIP1000
(10)抵抗率計(表面抵抗率測定)
装置A:三菱化学(株)製 ロレスタ−GP
プローブ:三菱化学(株)製 直列4探針プローブ ASP(探針間距離:5mm)
装置B:三菱化学(株)製 ハイレスタ−UP
プローブ:三菱化学(株)製 リングプローブURS
(11)ヘイズメーター(全光線透過率測定)
装置:日本電色工業(株)製 NDH5000
(12)超音波洗浄器(分散処理)
装置:東京硝子器械(株)製 FU−6H
(13)小型高速冷却遠心機(遠心分離)
装置:(株)トミー精工製 SRX−201
(14)紫外線可視分光光度計(吸光度測定)
装置:(株)島津製作所製 SHIMADZU UV−3600
測定波長:400〜1650nm
(15)エアブラシ
装置:アネスト岩田(株)製 Revolution HP−TR2
ノズル口径:0.5mm
ボトル容量:15mL
(16)湿式ジェットミル(分散処理)
装置:(株)常光製 ナノジェットパル(登録商標)JN20
【0054】
また、実施例における略号の意味は下記のとおりである。
CNT−1:未精製MWCNT[CNT社製 “C Tube 100” 外径10〜30nm]
CNT−2:中繊維径MWCNT[昭和電工(株)製 “VGCF−X” 外径15nm]
CNT−3:未精製SWCNT[Carbon Nanotechnologies社製 HiPco]
CNT−4:精製SWCNT[Unidym社製]
CNT−5:精製SWCNT[Hanwha Nanotech社製 ASP−100F]
CNT−6:精製SWCNT[KH Chemicals社製 KH SWCNT80]
PVP:ポリビニルピロリドン[東京化成工業(株)製 K15 Mw10,000]
Nafion:Nafion(登録商標)分散液[シグマ−アルドリッチ社製 No.510211 Nafion(登録商標)5wt%/低級アルコール50wt%/水45wt%]
BuOH:1−ブタノール
CHN:シクロヘキサノン
DMAc:N,N−ジメチルアセトアミド
DME:1,2−ジメトキシエタン
EtOH:エタノール
IPA:イソプロパノール(2−プロパノール)
IPE:ジイソプロピルエーテル
MEK:メチルエチルケトン
MeOH:メタノール
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
PG:プロピレングリコール
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
PrOH:1−プロパノール
THF:テトラヒドロフラン
【0055】
[1]分散剤(トリアリールアミン系高分岐ポリマー)の合成
[合成例1]高分岐ポリマーPTPA−PBAの合成
窒素下、1L四口フラスコに、トリフェニルアミン[Zhenjiang Haitong Chemical Industry Co.,Ltd.製]80.0g(326mmol)、4−フェニルベンズアルデヒド[三菱ガス化学(株)製,4−BPAL]118.8g(652mmol(トリフェニルアミンに対して2.0eq))、パラトルエンスルホン酸一水和物[江南化工(株)製]12.4g(65mmol(トリフェニルアミンに対して0.2eq))、および1,4−ジオキサン160gを仕込んだ。この混合物を撹拌しながら85℃まで昇温し、溶解させ、重合を開始した。6時間反応させた後、反応混合物を60℃まで放冷した。この反応混合物をTHF560gで希釈し、28質量%アンモニア水80gを加えた。その反応溶液をアセトン2000gおよびメタノール400gの混合溶液へ投入することで再沈殿させた。析出した沈殿物をろ過し、減圧乾燥した後、得られた固体をTHF640gに再溶解させ、アセトン2000gおよび水400gの混合溶液へ投入することで再度再沈殿させた。析出した沈殿物をろ過し、130℃で6時間減圧乾燥して、下記式[A]で表される繰り返し単位を有する高分岐ポリマーPTPA−PBA115.1gを得た。
得られたPTPA−PBAの、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは17,000、多分散度Mw/Mnは3.82であった(ここでMnは同条件で測定される数平均分子量を表す。)。また、TG−DTAにより測定した5%重量減少温度は531℃、DSCにより測定したガラス転移温度(Tg)は159℃であった。
【0056】
【化7】
【0057】
[実施例1]高分岐ポリマーPTPA−PBA−SO
3Hの合成
窒素下、500mL四口フラスコに、合成例1で合成したPTPA−PBA2.0gおよび硫酸[関東化学(株)製]50gを仕込んだ。この混合物を撹拌しながら40℃まで昇温して溶解させ、スルホン化を開始した。8時間反応させた後、反応混合物を50℃まで昇温して、さらに1時間反応させた。この反応混合物を、純水250gへ投入することで再沈殿させた。沈殿物をろ過し、これを純水250gに加えて12時間静置した。沈殿物をろ過し、50℃で8時間減圧乾燥することで、紫色粉末として高分岐ポリマーPTPA−PBA−SO
3H(以下、単にPTPA−PBA−SO
3Hという)2.7gを得た。
得られたPTPA−PBA−SO
3Hの
1H−NMRスペクトルを
図1に、
13C−NMRスペクトルを
図2にそれぞれ示す。また、イオウ定量分析から算出したPTPA−PBA−SO
3Hのイオウ原子含有量は6.4質量%であった。この結果から求めたPTPA−PBA−SO
3Hのスルホ基含有量は、高分岐ポリマーPTPA−PBAの1繰り返し単位当り1個であった。
【0058】
[実施例15]高分岐ポリマーPTPA−PBA−SO
3H−TBAの合成
窒素下、50mL四口フラスコに、実施例1で合成したPTPA−PBA−SO
3H2.0gおよびメタノール18gを仕込んだ。この混合物を、室温(およそ25℃)で撹拌しながら溶解させ、トリ−n−ブチルアミン[関東化学(株)製]1.5g(8.2mmol(スルホン化ポリマーに対して2.0eq))を滴下した。30分間反応させた後、この反応混合物を、IPE200gへ投入することで再沈殿させた。沈殿物をろ過し、60℃で8時間減圧乾燥することで、淡緑色粉末として高分岐ポリマーPTPA−PBA−SO
3H−TBA(以下、単にPTPA−PBA−SO
3H−TBAという)2.6gを得た。
得られたPTPA−PBA−SO
3H−TBAの
1H−NMRスペクトルを
図3に示す。
【0059】
[実施例16]高分岐ポリマーPTPA−PBA−SO
3H−TOAの合成
メタノールの使用量を8gに、トリ−n−ブチルアミンをトリ−n−オクチルアミン[東京化成工業(株)製]2.9g(8.2mmol(スルホン化ポリマーに対して2.0eq))にそれぞれ変更した以外は、実施例15と同様に操作し、淡緑色粉末として高分岐ポリマーPTPA−PBA−SO
3H−TOA(以下、単にPTPA−PBA−SO
3H−TOAという)3.0gを得た。
得られたPTPA−PBA−SO
3H−TOAの
1H−NMRスペクトルを
図4に示す。
【0060】
[2]樹脂薄膜の製造
[実施例2]
実施例1で得られたPTPA−PBA−SO
3Hを、樹脂濃度が10質量%となるようにNMP/CHN混合溶液(質量比1:1)に溶解させた。得られた溶液を、ガラス基板(5×5cm)上にスピンコーティング(200rpm×5秒間、次いで2000rpm×30秒間)して成膜した。この塗膜を100℃のホットプレートで2分間加熱し、PTPA−PBA−SO
3H薄膜を作製した。
【0061】
[比較例1]
PTPA−PBA−SO
3Hを合成例1で合成したPTPA−PBAに、溶媒をCHNにそれぞれ変更した以外は、実施例2と同様にしてPTPA−PBA薄膜を作製した。
【0062】
[比較例2]
PTPA−PBA−SO
3HをPVPに変更した以外は、実施例2と同様にしてPVP薄膜を作製した。
【0063】
実施例2および比較例1,2で得られた薄膜の表面抵抗率および全光線透過率を評価した。結果を表1に併せて示す。
【0064】
【表1】
【0065】
表1に示されるように、スルホ基を有する高分岐ポリマーからなる薄膜(実施例2)は、単独で導電性を有していることが明らかとなった。これに対し、スルホ基を持たない高分岐ポリマーからなる薄膜(比較例1)および公知の分散剤であるPVPからなる薄膜(比較例2)では導電性は認められず、本発明の高分岐ポリマーは高導電性な薄膜を得る上で有利であることが明らかとなった。
【0066】
[3]MWCNT含有組成物および薄膜の製造1
[実施例3]PTPA−PBA−SO
3Hを用いたNMP分散(1)
分散剤として実施例1で合成したPTPA−PBA−SO
3H0.50gを、分散媒としてNMP49.25gに溶解させ、この溶液へMWCNTとしてCNT−1 0.25gを添加した。この混合物に、プローブ型超音波照射装置を用いて室温(およそ25℃)で30分間超音波処理を行い、沈降物がなくMWCNTが均一に分散した黒色のMWCNT含有分散液を得た。
上記MWCNT含有分散液2.0gに、添加剤としてCHN0.50gを添加し、薄膜作製用の塗布液を調製した。得られた塗布液50μLを、スリット幅25.4μmのアプリケータを用いてガラス基板上に均一に展開し、100℃でおよそ2分間乾燥することで透明で均一なMWCNT/PTPA−PBA−SO
3H複合体薄膜を作製した。
【0067】
[実施例4]PTPA−PBA−SO
3Hを用いたNMP分散(2)
分散剤をPTPA−PBA−SO
3H0.25gに、分散媒をNMP49.50gにそれぞれ変更した以外は、実施例3と同様に操作し、MWCNT含有分散液およびMWCNT/PTPA−PBA−SO
3H複合体薄膜を作製した。
【0068】
[実施例5]PTPA−PBA−SO
3Hを用いたNMP/PrOH/水分散
分散剤をPTPA−PBA−SO
3H0.25gに、分散媒をNMP44.75g、PrOH2.5gおよび純水2.25gの混合溶媒にそれぞれ変更した以外は、実施例3と同様に操作し、MWCNT含有分散液およびMWCNT/PTPA−PBA−SO
3H複合体薄膜を作製した。
【0069】
[実施例6]PTPA−PBA−SO
3Hを用いたMeOH分散
分散媒をMeOH49.25gに、添加剤をPG0.50gにそれぞれ変更した以外は、実施例3と同様に操作し、MWCNT含有分散液およびMWCNT/PTPA−PBA−SO
3H複合体薄膜を作製した。
【0070】
[実施例7]PTPA−PBA−SO
3Hを用いたPG分散
分散媒をPG49.25gに変更し、さらに添加剤CHNを用いない以外は、実施例3と同様に操作し、MWCNT含有分散液およびMWCNT/PTPA−PBA−SO
3H複合体薄膜を作製した。
【0071】
[実施例8]PTPA−PBA−SO
3Hを用いたPGME/H
2O分散
分散媒をPGME44.33gおよび純水4.93gの混合溶媒に変更し、さらに添加剤CHNを用いない以外は、実施例3と同様に操作し、MWCNT含有分散液およびMWCNT/PTPA−PBA−SO
3H複合体薄膜を作製した。
【0072】
[実施例9]PTPA−PBA−SO
3Hを用いたMeOH/H
2O分散
分散媒をMeOH20.00gおよび純水29.25gの混合溶媒に、添加剤をIPA0.50gにそれぞれ変更した以外は、実施例3と同様に操作し、MWCNT含有分散液およびMWCNT/PTPA−PBA−SO
3H複合体薄膜を作製した。
【0073】
[実施例10]PTPA−PBA−SO
3Hを用いたIPA/H
2O分散
分散媒をIPA44.33gおよび純水4.93gの混合溶媒に、添加剤をNMP0.50gにそれぞれ変更した以外は、実施例3と同様に操作し、MWCNT含有分散液およびMWCNT/PTPA−PBA−SO
3H複合体薄膜を作製した。
【0074】
[比較例3]PTPA−PBAを用いたNMP分散(1)
分散剤を合成例1で合成したPTPA−PBA0.50gに変更した以外は、実施例3と同様に操作し、MWCNT含有分散液およびMWCNT/PTPA−PBA複合体薄膜を作製した。
【0075】
[比較例4]PTPA−PBAを用いたNMP分散(2)
分散剤を合成例1で合成したPTPA−PBA0.25gに、分散媒をNMP49.50gに、それぞれ変更した以外は実施例3と同様に操作し、MWCNT含有分散液およびMWCNT/PTPA−PBA複合体薄膜を作製した。
【0076】
[比較例5]PVPを用いたNMP分散
分散剤をPVP0.25gに、分散媒をNMP49.50gにそれぞれ変更した以外は、実施例3と同様に操作し、MWCNT含有分散液およびMWCNT/PVP複合体薄膜を作製した。
【0077】
[比較例6]PVPを用いたPG分散
分散剤をPVP0.50gに、分散媒をPG49.25gにそれぞれ変更した以外は、実施例3と同様に操作し、MWCNT含有分散液およびMWCNT/PVP複合体薄膜を作製した。
【0078】
[比較例7]Nafionを用いたNMP/低級アルコール/水分散
分散剤をNafion0.25g(Nafion分散液5.00g)に、分散媒をNMP44.75gにそれぞれ変更した以外は、実施例3と同様に操作し、MWCNT含有分散液およびMWCNT/Nafion複合体薄膜を作製した。
【0079】
[比較例8]Nafionを用いたPG/低級アルコール/水分散
分散剤をNafion0.50g(Nafion分散液10.00g)に、分散媒をPG39.75gにそれぞれ変更した以外は、実施例3と同様に操作し、MWCNT含有分散液およびMWCNT/Nafion複合体薄膜を作製した。
【0080】
上記実施例3〜10および比較例3〜8で得られたMWCNT含有分散液の分散性、並びに複合体薄膜の薄膜均一性、表面抵抗率および全光線透過率を評価した。なお、分散液の分散性および薄膜の均一性については、以下の基準に従って目視により評価した。結果を表2に併せて示す。
<分散性>超音波処理後30分静置した後の分散液の状態
○:凝集物のような塊が全く確認できず均一に分散している。
×:MWCNTの凝集物が見られる。
<薄膜均一性>
○:凝集物のような塊や膜ムラ(濃淡)が全く確認できない。
△:MWCNTの凝集物や膜ムラ(濃淡)が見られる。
×:MWCNTの凝集物や膜ムラ(濃淡)が薄膜の殆どの部分で見られ、膜としての評価ができない。
【0081】
【表2】
※表中、表面抵抗率欄の括弧内の数値は、膜ムラが酷く正確な測定が行えないため参考値。
【0082】
表2に示されるように、本発明の分散剤は、一般的な有機溶媒(NMP等)だけでなく親水性溶媒(アルコール、アルコール/水等)でも安定にCNTを分散し得ることがわかる。このため、本発明の分散剤を用いることで、幅広い溶媒系で分散液の調製が可能となる。
また、スルホ基のないPTPA−PBA(比較例3,4)と比べ、スルホ基を有する実施例3〜8の分散剤を用いた場合は表面抵抗率が1桁程度低く(10
3Ω/□レベル)、高導電性の膜を得る上で、本発明の分散剤が有利であることがわかる。
なお、PVPは一般的な有機溶媒、親水性溶媒ともに安定な分散液が得られるものの、薄膜の均一性が低く(比較例5,6)、Nafionは一般的な有機溶媒中ではMWCNTを分散できず(比較例7)、親水性溶媒では安定な分散液が得られるものの、成膜性が非常に悪い(比較例8)ことがわかる。
【0083】
[4]MWCNT含有組成物および薄膜の製造2
[実施例11]PTPA−PBA−SO
3Hを用いたNMP分散(1)
MWCNTをCNT−2 0.25gに変更した以外は、実施例3と同様に操作し、MWCNT含有分散液およびMWCNT/PTPA−PBA−SO
3H複合体薄膜を作製した。
【0084】
[実施例12]PTPA−PBA−SO
3Hを用いたNMP分散(2)
分散剤をPTPA−PBA−SO
3H0.25gに、分散媒をNMP49.50gに、MWCNTをCNT−2 0.25gに、それぞれ変更した以外は、実施例3と同様に操作し、MWCNT含有分散液およびMWCNT/PTPA−PBA−SO
3H複合体薄膜を作製した。
【0085】
[実施例17]PTPA−PBA−SO
3H−TBAを用いたPrOH分散
分散剤を実施例15で合成したPTPA−PBA−SO
3H−TBA0.50gに、分散媒をPrOH49.25gに、MWCNTをCNT−2 0.25gに、添加剤をPG0.50gに、それぞれ変更した以外は、実施例3と同様に操作し、MWCNT含有分散液およびMWCNT/PTPA−PBA−SO
3H−TBA複合体薄膜を作製した。
【0086】
[実施例18]PTPA−PBA−SO
3H−TOAを用いたPrOH分散
分散剤を実施例16で合成したPTPA−PBA−SO
3H−TOA0.50gに、分散媒をPrOH49.25gに、MWCNTをCNT−2 0.25gに、添加剤をPG0.50gに、それぞれ変更した以外は、実施例3と同様に操作し、MWCNT含有分散液およびMWCNT/PTPA−PBA−SO
3H−TOA複合体薄膜を作製した。
【0087】
[比較例9]PTPA−PBAを用いたNMP分散(1)
分散剤を合成例1で合成したPTPA−PBA0.50gに、MWCNTをCNT−2 0.25gに、それぞれ変更した以外は、実施例3と同様に操作し、MWCNT含有分散液およびMWCNT/PTPA−PBA複合体薄膜を作製した。
【0088】
[比較例10]PTPA−PBAを用いたNMP分散(2)
分散剤を合成例1で合成したPTPA−PBA0.25gに、分散媒をNMP49.50gに、MWCNTをCNT−2 0.25gに、それぞれ変更した以外は、実施例3と同様に操作し、MWCNT含有分散液およびMWCNT/PTPA−PBA複合体薄膜を作製した。
【0089】
[比較例11]PVPを用いたNMP分散
分散剤をPVP0.25gに、分散媒をNMP49.50gに、MWCNTをCNT−2 0.25gに、それぞれ変更した以外は、実施例3と同様に操作し、MWCNT含有分散液およびMWCNT/PVP複合体薄膜を作製した。
【0090】
[比較例12]Nafionを用いたNMP/低級アルコール/水分散
分散剤をNafion0.25g(Nafion分散液5.00g)に、分散媒をNMP44.75gに、MWCNTをCNT−2 0.25gに、それぞれ変更した以外は、実施例3と同様に操作し、MWCNT含有分散液およびMWCNT/Nafion複合体薄膜を作製した。
【0091】
上記実施例11,12,17,18および比較例9〜12で得られたMWCNT含有分散液の分散性、並びに複合体薄膜の薄膜均一性、表面抵抗率および全光線透過率を評価した。なお、分散液の分散性および薄膜の均一性については、前記の基準に従って目視により評価した。結果を表3に併せて示す。
【0092】
【表3】
※表中、表面抵抗率欄の括弧内の数値は、膜ムラが酷く正確な測定が行えないため参考値。
【0093】
表3に示されるように、酸性基を有する高分岐ポリマーからなる分散剤は、MWCNTの種類によらず同一の傾向を示すことがわかる。
【0094】
[5]SWCNT含有組成物および薄膜の製造1
[実施例13]PTPA−PBA−SO
3Hを用いたCNT−3の分散
分散剤として実施例1で合成したPTPA−PBA−SO
3H1.0mgを、分散媒としてNMP5.0mL、PrOH10mgおよび純水9mgの混合溶媒に溶解させ、この溶液へSWCNTとしてCNT−3 0.5mgを添加した。この混合物に、超音波洗浄器を用いて室温(およそ25℃)で60分間超音波処理を行った。この混合物を、小型高速冷却遠心機を用いて10,000Gで60分間の遠心分離処理を行い、SWCNT含有分散液を上澄み液として得た。
得られたSWCNT含有分散液の紫外可視近赤外吸収スペクトルを測定したところ、半導体性S
11バンド(1,400〜1,000nm)、S
22バンド(1,000〜600nm)および金属性バンド(600〜450nm)の吸収が明確に観察され、SWCNTが分散されていることが確認された。結果を
図5に示す。
上記SWCNT含有分散液2mLを、エアブラシを用いて、230℃のホットプレートで加熱しているガラス基板上部全面に15〜20秒間スプレー塗布することで、均一なSWCNT/PTPA−PBA−SO
3H複合体薄膜を作製した。なお、スプレーには圧力0.2MPaの窒素を使用し、被塗布基板の上方およそ20cmからスプレーした。
【0095】
[実施例19]PTPA−PBA−SO
3H−TBAを用いたCNT−3の分散
分散剤を実施例15で合成したPTPA−PBA−SO
3H−TBA1.0mgに、分散媒をPrOH5mLにそれぞれ変更し、遠心分離処理を行わなかった以外は、実施例13と同様に操作し、SWCNT含有分散液およびSWCNT/PTPA−PBA−SO
3H−TBA複合体薄膜を作製した。
得られたSWCNT含有分散液の紫外可視近赤外吸収スペクトルを測定したところ、半導体性S
11バンド、S
22バンド、および金属性バンドの吸収が明確に観察され、SWCNTが分散されていることが確認された。得られたSWCNT含有分散液の紫外可視近赤外吸収スペクトルを
図5に併せて示す。
【0096】
[実施例20]PTPA−PBA−SO
3H−TOAを用いたCNT−3の分散
分散剤を実施例15で合成したPTPA−PBA−SO
3H−TOA1.0mgに、分散媒をPrOH5mLにそれぞれ変更し、遠心分離処理を行わなかった以外は、実施例13と同様に操作し、SWCNT含有分散液およびSWCNT/PTPA−PBA−SO
3H−TOA複合体薄膜を作製した。
得られたSWCNT含有分散液の紫外可視近赤外吸収スペクトルを測定したところ、半導体性S
11バンド、S
22バンド、および金属性バンドの吸収が明確に観察され、SWCNTが分散されていることが確認された。得られたSWCNT含有分散液の紫外可視近赤外吸収スペクトルを
図5に併せて示す。
【0097】
[比較例13]PTPA−PBAを用いたCNT−3の分散
分散剤を合成例1で合成したPTPA−PBA1.0mgに変更した以外は、実施例13と同様に操作し、SWCNT含有分散液およびSWCNT/PTPA−PBA複合体薄膜を作製した。得られたSWCNT含有分散液の紫外可視近赤外吸収スペクトルを
図5に併せて示す。
【0098】
[比較例14]PVPを用いたCNT−3の分散
分散剤をPVP1.0mgに変更した以外は、実施例13と同様に操作し、SWCNT含有分散液およびSWCNT/PVP複合体薄膜を作製した。得られたSWCNT含有分散液の紫外可視近赤外吸収スペクトルを
図5に併せて示す。
【0099】
[比較例15]Nafionを用いたCNT−3の分散
分散剤をNafion1.0mg(Nafion分散液20mg)に、分散媒をNMP5.0mLにそれぞれ変更した以外は、実施例13と同様に操作し、SWCNT含有分散液およびSWCNT/Nafion複合体薄膜を作製した。得られたSWCNT含有分散液の紫外可視近赤外吸収スペクトルを
図5に併せて示す。
【0100】
上記実施例13,19,20および比較例13〜15で得られたSWCNT複合体薄膜の表面抵抗率および全光線透過率を評価した。結果を表4に示す。
【0101】
【表4】
【0102】
[6]SWCNT含有組成物および薄膜の製造2
[実施例14]PTPA−PBA−SO
3Hを用いたCNT−4の分散
SWCNTをCNT−4に変更した以外は実施例13と同様に操作し、SWCNT含有分散液およびSWCNT/PTPA−PBA−SO
3H複合体薄膜を作製した。
得られたSWCNT含有分散液の紫外可視近赤外吸収スペクトルを測定したところ、半導体性S
11バンド(1,400〜1,000nm)、S
22バンド(1,000〜600nm)および金属性バンド(600〜450nm)の吸収が明確に観察され、SWCNTが分散されていることが確認された。結果を
図6に示す。
【0103】
[比較例16]PTPA−PBAを用いたCNT−4の分散
分散剤を合成例1で合成したPTPA−PBA1.0mgに、SWCNTをCNT−4に、それぞれ変更した以外は実施例13と同様に操作し、SWCNT含有分散液およびSWCNT/PTPA−PBA複合体薄膜を作製した。得られたSWCNT含有分散液の紫外可視近赤外吸収スペクトルを
図6に併せて示す。
【0104】
[比較例17]PVPを用いたCNT−4の分散
分散剤をPVP1.0mgに、SWCNTをCNT−4に、それぞれ変更した以外は実施例13と同様に操作し、SWCNT含有分散液およびSWCNT/PVP複合体薄膜を作製した。得られたSWCNT含有分散液の紫外可視近赤外吸収スペクトルを
図6に併せて示す。
【0105】
[比較例18]Nafionを用いたCNT−4の分散
分散剤をNafion1.0mg(Nafion分散液20mg)に、分散媒をNMP5.0mLに、SWCNTをCNT−4に、それぞれ変更した以外は実施例13と同様に操作し、SWCNT含有分散液およびSWCNT/Nafion複合体薄膜を作製した。得られたSWCNT含有分散液の紫外可視近赤外吸収スペクトルを
図6に併せて示す。
【0106】
上記実施例14および比較例16〜18で得られたSWCNT複合体薄膜の表面抵抗率および全光線透過率を評価した。結果を表5に併せて示す。
【0107】
【表5】
【0108】
表4,5に示されるように、スルホ基のない高分岐ポリマーPTPA−PBAからなる分散剤(比較例13,16)に比べ、スルホ基を有する高分岐ポリマーPTPA−PBA−SO
3HまたはPTPA−PBA−SO
3H−TBAからなる分散剤(実施例13,14,19)は表面抵抗率が1桁程度低く(10
5/□レベル)、高導電性の膜を得る上で、本発明の分散剤が有利であることがわかる。
なお、
図5,6に示されるように、PVPはSWCNTの種類によって分散能が大きく異なり、分散できるSWCNTに制限があり(比較例14,17)、NafionはSWCNTをほとんど分散できない(比較例15,18)ことがわかる。
分散性が悪いということは、CNTの凝集物が多いということであり、この凝集物の存在は、薄膜の不均一性の原因となるため、デバイスへの応用を困難とする。また、スプレー塗布等では凝集物はノズルを詰まらせる原因ともなる。
以上より、本発明の分散剤は、SWCNTを選ばず分散可能であり、複合体薄膜の表面抵抗率を大幅に低下させ得る、新規かつ有用な分散剤である。
【0109】
[7]SWCNT含有組成物および薄膜の製造3
[実施例21]PTPA−PBA−SO
3Hを用いたCNT−5の分散(1)
分散剤として実施例1で合成したPTPA−PBA−SO
3H20mgを、分散媒としてIPA25mLおよび純水25mLの混合溶媒に溶解させ、この溶液へSWCNTとしてCNT−5 10mgを添加した。この混合物に、湿式ジェットミル装置を用いて室温(およそ25℃)で、50MPa、20パスの分散処理を行った。この混合物を、小型高速冷却遠心機を用いて10,000Gで60分間の遠心分離処理を行い、SWCNT含有分散液を上澄み液として得た。
得られたSWCNT含有分散液の紫外可視近赤外吸収スペクトルを測定したところ、半導体性S
11バンド、S
22バンドおよび金属性バンドの吸収が明確に観察され、SWCNTが分散されていることが確認された。結果を
図7に示す。
上記SWCNT含有分散液2mLを、エアブラシを用いて、230℃のホットプレートで加熱しているガラス基板上部全面に15〜20秒間スプレー塗布することで、均一なSWCNT/PTPA−PBA−SO
3H複合体薄膜を作製した。なお、スプレーには圧力0.2MPaの窒素を使用し、被塗布基板の上方およそ20cmからスプレーした。
【0110】
[実施例22]PTPA−PBA−SO
3Hを用いたCNT−5の分散(2)
分散処理方法を、プローブ型超音波照射装置を用いた室温(およそ25℃)で30分間の超音波処理に変更した以外は実施例21と同様に操作し、SWCNT含有分散液およびSWCNT/PTPA−PBA−SO
3H複合体薄膜を作製した。得られたSWCNT含有分散液の紫外可視近赤外吸収スペクトルを
図7に併せて示す。
【0111】
[比較例19]PTPA−PBAを用いたCNT−5の分散
分散剤を合成例1で合成したPTPA−PBA20mgに、分散媒をNMP50mLに、それぞれ変更した以外は実施例21と同様に操作し、SWCNT含有分散液およびSWCNT/PTPA−PBA複合体薄膜を作製した。得られたSWCNT含有分散液の紫外可視近赤外吸収スペクトルを
図7に併せて示す。
【0112】
上記実施例21,22および比較例19で得られたSWCNT複合体薄膜の表面抵抗率および全光線透過率を評価した。結果を表6に示す。
【0113】
【表6】
【0114】
[8]SWCNT含有組成物および薄膜の製造4
[実施例23]PTPA−PBA−SO
3Hを用いたCNT−6の分散
SWCNTをCNT−6に変更した以外は実施例21と同様に操作し、SWCNT含有分散液およびSWCNT/PTPA−PBA−SO
3H複合体薄膜を作製した。得られたSWCNT含有分散液の紫外可視近赤外吸収スペクトルを
図8に示す。
また、得られたSWCNT複合体薄膜の表面抵抗率および全光線透過率を評価した。結果を表7に示す。
【0115】
【表7】
【0116】
表6,7に示されるように、超音波照射以外の分散処理でも、スルホ基のない高分岐ポリマーPTPA−PBAからなる分散剤(比較例19)に比べ、本発明の分散剤を用いた場合(実施例21)は、同程度の全光線透過率に対して表面抵抗率が1桁程度低く、高導電性の膜を得る上で、本発明の分散剤が有利であることがわかる。
また実施例13,14に加えて、実施例21〜23から、CNT−3,4,5,6のいずれのSWCNTに対しても分散が可能であり、SWCNTであれば種類を問わず分散することができることがわかる。
以上より、本発明の分散剤は、SWCNTの種類、分散処理方法を選ばず分散可能であり、複合体薄膜の表面抵抗率を大幅に低下させ得る、新規かつ有用な分散剤であると言える。
【0117】
[9]分散剤の溶媒溶解性
[実施例24]
実施例1,15,16で得られた各高分岐ポリマーについて、表8に示す各溶媒に対する溶解性を評価した。評価は、濃度が1質量%となるように各高分岐ポリマーをそれぞれの溶媒と混合し、25℃で30分間超音波処理を行った後に、以下の基準に従って目視で評価した。結果を表8に示す。
<溶解性評価基準>
○:凝集物のような塊が全く確認できず均一に溶解している。
△:ある程度の溶解は確認できるが、溶け残りがある。
×:ほとんど溶解せず、塊のままである。
【0118】
[比較例20,21]
合成例1で得られたPTPA−PBA、PVPについて、実施例24と同様に評価した。結果を表8に併せて示す。
【0119】
【表8】