(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
正極、負極、セパレータ及び電解液を含む二次電池であって、前記正極、負極及びセパレータの少なくともいずれかが、請求項1〜3のいずれか1項に記載の多孔膜を有する、二次電池。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0014】
〔概要〕
本発明の二次電池用多孔膜は、非導電性粒子及び多孔膜用バインダーを含む。本発明の二次電池用多孔膜において、非導電性粒子は、所定の形状を有する重合体の粒子である。
【0015】
〔非導電性粒子の形状〕
本発明において、非導電性粒子は、下記式(1)を満たす。
1.2≦(SB)/(SD)≦5.0 (1)
【0016】
式(1)中、SBは前記粒子の実際の比表面積を意味し、SDは前記粒子の理論比表面積を意味する。SB及びSDそれぞれの単位は面積/重量であり、通常m
2/gとしうる。
実際の比表面積SBは、ガス吸着法により測定される。ガス吸着法による測定は、例えば、全自動BET比表面積測定装置(製品名「Macsorb HM model-1208」(株)マウンテック製)を用いて行うことができる。
【0017】
理論比表面積SDは、非導電性粒子の個数平均粒子径及び比重の測定値から、かかる粒子径及び比重を有する真球の粒子の比表面積として求められる値である。
ここで、個数平均粒子径は、粒径−個数積算分布において、積算分布の値が50%となる粒径である。非導電性粒子の個数平均粒子径は、レーザー回折散乱粒度分布測定装置(例えば製品名「LS230」、ベックマン・コールター社製)を用いて測定しうる。
非導電性粒子の比重は、密度計、例えば乾式自動密度計(製品名「アキュピック1330−01」、(株)島津製作所製)を用いて測定される。
測定された個数平均粒子径を2r(m)、比重をG(g/cm
3)とすると、半径r(m)の真球状粒子の面積S′(m
2)及び体積V(m
3)はそれぞれ次式で表される。
S′=4πr
2
V=(4πr
3)/3
この場合、粒子1g当たりに含まれる粒子の個数Nは次式で表される。
N=1/VG
したがって、非導電性粒子の理論比表面積SD(m
2/g)は次式により求められる。
SD=S′N=S′/VG=3/rG
【0018】
比表面積比(SB)/(SD)の範囲は、前記の通り1.2〜5.0であり、1.3〜4.0であることが好ましく、1.4〜3.0であることがより好ましい。
比表面積比(SB)/(SD)の範囲が前記上限を超えると、充填密度の低下を招き、非導電性粒子同士の接触面積が減少する。それにより、多孔膜層の強度を維持できず、電池において使用する際に、電極間の距離の近接を起こしうる。その結果、サイクル試験中の容量低下、高温短絡試験での性能の低下等の不具合を起こしうる。
一方、比表面積比(SB)/(SD)の範囲が前記下限を下回ると、非導電性粒子同士の摩擦力が低下し、多孔膜層の強度を維持できず、粒子が密に詰まる。その結果、サイクル試験での性能の低下、高温短絡試験での性能の低下等の不具合を起こしうる。
【0019】
非導電性粒子の実際の比表面積SBの範囲は、4.8〜300m
2/gであることが好ましく、6.5〜120m
2/gであることがより好ましく、8.4〜60m
2/gであることがさらにより好ましい。非導電性粒子の理論比表面積SDの範囲は、4〜60m
2/gであることが好ましく、5〜30m
2/gであることがより好ましく、6〜20m
2/gであることがさらにより好ましい。
【0020】
非導電性粒子の個数平均粒径は、100〜1500nmであることが好ましく、200〜1200nmであることがより好ましく、300〜1000nmであることがさらにより好ましい。非導電性粒子の個数平均粒径をこの範囲内とすることにより、多孔膜強度の向上と空隙の確保とを両立することができ、ひいては耐短絡性及びその他の電池特性を向上させることができる。
【0021】
非導電性粒子は、その形状係数の算術平均値が1.20以下であり、1.17以下であることが好ましく、1.14以下であることがより好ましい。形状係数の算術平均値が前記上限を上回ると、非導電性粒子の充填密度が低下し、絶縁性が低下し、内部短絡が発生しうる。
【0022】
粒子の形状係数とは、観察される粒子の形状が、円形からどれだけ離れているかを示す指標である。形状係数の算術平均値は、粒子の形状を観察し、個々の粒子について、下記式(A)により形状係数を求め、その算術平均値を算出することにより求める。
形状係数=((最大径/2)
2×π)/投影面積 式(A)
【0023】
ここで、最大径とは、非導電性粒子の平面上への投影像を2本の平行線で挟んだとき、その平行線の間隔が最大となる粒子の幅をいう。また、投影面積とは、非導電性粒子の平面上への投影像の面積をいう。
粒子の形状の観察は、走査電子顕微鏡(例えば電界放出形走査電子顕微鏡(Hitachi S−4700:日立ハイテク社製))により非導電性粒子を拡大した画像を撮影することにより行う。観察倍率は、粒子の径に合わせて適宜調整しうるが、例えば50000倍とすることができる。得られた画像のノイズを除去し、画像解析ソフトウエア(例えば、analySIS Pro:オリンパス社製)を使用して画像の解析を行うことにより、形状係数の算術平均値を計算することができる。
【0024】
比表面積比(SB)/(SD)及び形状係数が前記の条件を満たす粒子は、球状度の高い球状の粒子であり、且つ表面に微細な凹凸を有する。本発明においては、非導電性粒子の形状をかかる特定の形状とすることにより、前記の通り、良好な性能を有する多孔膜を得ることができる。
【0025】
比表面積比(SB)/(SD)及び形状係数が前記の条件を満たす非導電性粒子は、以下に述べる非導電性粒子の製造方法において、条件を適宜調整することにより製造することができる。特にシード粒子の組成や分子量の制御により、これらの値を所望の範囲に調整することができる。
【0026】
〔非導電性粒子の材料:(メタ)アクリル系多官能単量体〕
本発明において、非導電性粒子は、重合体の粒子であり、(メタ)アクリル系多官能単量体単位を50重量%以上含む。
本願において、ある単量体の「単位」とは、かかる単量体が重合することにより形成される、重合体中の構造の単位である。
(メタ)アクリル系多官能単量体としては、ジアクリレート化合物、トリアクリレート化合物、テトラアクリレート化合物、ジメタクリレート化合物、及びトリメタクリレート化合物を挙げることができる。
ジアクリレート化合物としては、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2´−ビス(4−アクリロキシプロピロキシフェニル)プロパン、及び2,2´−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)プロパンを挙げることができる。
トリアクリレート化合物としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、及びテトラメチロールメタントリアクリレートを挙げることができる。
テトラアクリレート化合物としては、テトラメチロールメタンテトラアクリレートを挙げることができる。
ジメタクリレート化合物としては、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、及び2,2´−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパンを挙げることができる。
トリメタクリレート化合物としては、トリメチロールプロパントリメタクリレート、及びトリメチロールエタントリメタクリレートを挙げることができる。
(メタ)アクリル系多官能単量体としては、エチレングリコールジメタクリレートやトリメチロールプロパントリメタクリレートを用いることが好ましく、特に、エチレングリコールジメタクリレートを用いることが、密着力が向上し、粉落ちを低減することができるため好ましい。
【0027】
非導電性粒子は、重合性単量体組成物を重合して粒子の形状とすることにより得ることができる。重合性単量体組成物を構成する単量体は、所望の性状が得られるよう適宜選択することができる。例えば、重合性単量体組成物は、上に述べた(メタ)アクリル系多官能単量体と、必要に応じてそれ以外の、(メタ)アクリル系多官能単量体と共重合しうる任意の単量体を含むことができる。
【0028】
〔任意の単量体:極性基含有単量体〕
重合性単量体組成物は、極性基含有単量体を含有しうる。極性基含有単量体とは、分子構造中に極性基を含有し、且つ、(メタ)アクリル系多官能単量体と共重合しうる単量体である。極性基とは、水中で解離しうる官能基や分極を有する官能基のことをいい、具体的には、カルボキシル基、スルホン酸基、水酸基、アミド基、カチオン性基、シアノ基、エポキシ基などが挙げられる。
【0029】
極性基含有単量体としては、カルボキシル基を含有する単量体、スルホン酸基を含有する単量体、水酸基を含有する単量体、アミド基を含有する単量体、カチオン性単量体、シアノ基を含有する単量体、エポキシ基を含有する単量体及びこれらの塩を挙げることができる。
【0030】
カルボキシル基を含有する単量体としては、モノカルボン酸、ジカルボン酸、ジカルボン酸の無水物、及びこれらの誘導体などが挙げられる。
モノカルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2−エチルアクリル酸、イソクロトン酸、α−アセトキシアクリル酸、β−trans−アリールオキシアクリル酸、α−クロロ−β−E−メトキシアクリル酸、β−ジアミノアクリル酸などが挙げられる。
ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、メチルマレイン酸、ジメチルマレイン酸、フェニルマレイン酸、クロロマレイン酸、ジクロロマレイン酸、及びフルオロマレイン酸などが挙げられる。
ジカルボン酸誘導体としては、マレイン酸メチルアリル、マレイン酸ジフェニル、マレイン酸ノニル、マレイン酸デシル、マレイン酸ドデシル、マレイン酸オクタデシル、及びマレイン酸フルオロアルキルなどのマレイン酸エステルが挙げられる。
ジカルボン酸の酸無水物としては、無水マレイン酸、アクリル酸無水物、メチル無水マレイン酸、ジメチル無水マレイン酸などが挙げられる。
【0031】
スルホン酸基を含有する単量体としては、ビニルスルホン酸、メチルビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アクリル酸−2−スルホン酸エチル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸などが挙げられる。
【0032】
水酸基を含有する単量体としては、(メタ)アリルアルコール、3−ブテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オールなどのエチレン性不飽和アルコール;アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、マレイン酸ジ−2−ヒドロキシエチル、マレイン酸ジ−4−ヒドロキシブチル、イタコン酸ジ−2−ヒドロキシプロピルなどのエチレン性不飽和カルボン酸のアルカノールエステル類;一般式CH
2=CR
1−COO−(CnH
2nO)m−H(mは2ないし9の整数、nは2ないし4の整数、R
1は水素又はメチル基を表す)で表されるポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類;2−ヒドロキシエチル−2’−(メタ)アクリロイルオキシフタレート、2−ヒドロキシエチル−2’−(メタ)アクリロイルオキシサクシネートなどのジカルボン酸のジヒドロキシエステルのモノ(メタ)アクリル酸エステル類;2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;(メタ)アリル−2−ヒドロキシエチルエーテル、(メタ)アリル−2−ヒドロキシプロピルエーテル、(メタ)アリル−3−ヒドロキシプロピルエーテル、(メタ)アリル−2−ヒドロキシブチルエーテル、(メタ)アリル−3−ヒドロキシブチルエーテル、(メタ)アリル−4−ヒドロキシブチルエーテル、(メタ)アリル−6−ヒドロキシヘキシルエーテルなどのアルキレングリコールのモノ(メタ)アリルエーテル類;ジエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アリルエーテルなどのポリオキシアルキレングリコール(メタ)モノアリルエーテル類;グリセリンモノ(メタ)アリルエーテル、(メタ)アリル−2−クロロ−3−ヒドロキシプロピルエーテル、(メタ)アリル−2−ヒドロキシ−3−クロロプロピルエーテルなどの、(ポリ)アルキレングリコールのハロゲン及びヒドロキシ置換体のモノ(メタ)アリルエーテル;オイゲノール、イソオイゲノールなどの多価フェノールのモノ(メタ)アリルエーテル及びそのハロゲン置換体;(メタ)アリル−2−ヒドロキシエチルチオエーテル、(メタ)アリル−2−ヒドロキシプロピルチオエーテルなどのアルキレングリコールの(メタ)アリルチオエーテル類;などが挙げられる。
【0033】
アミド基を含有する単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどが挙げられる。
【0034】
カチオン性単量体としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0035】
シアノ基を含有する単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物が挙げられる。
【0036】
エポキシ基を含有する単量体としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどが挙げられる。
【0037】
カルボキシル基を含有する単量体、スルホン酸基を含有する単量体、水酸基を含有する単量体、アミド基を含有する単量体、カチオン性単量体、及びシアノ基を含有する単量体の塩としては、上に列挙した単量体と、それらと組み合わせうる適切なイオンとにより構成される、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、モノエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等の有機アミン塩などを挙げることができる。
【0038】
極性基含有単量体としては、カルボキシル基を含有する単量体、アミド基を含有する単量体が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、アクリルアミドが特に好ましい。
【0039】
その他の任意の単量体として、非架橋性の単量体を挙げることができる。例えば、スチレン、α−メチルスチレン、フルオロスチレン、ビニルピリジンなどの芳香族モノビニル化合物;メチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルエチルアクリレートなどのアクリル酸エステルモノマー;メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートなどのメタクリル酸エステルモノマー;ブタジエン、イソプレンなどの共役二重結合化合物;酢酸ビニルなどのビニルエステル化合物;4−メチル−1−ペンテンなどのα−オレフィン化合物を挙げることができる。
【0040】
上記の任意の単量体は、いずれか1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。上記任意の単量体の中でも、特にスチレンが、反応性の点から好ましい。
【0041】
〔単量体の割合〕
本発明では、非導電性粒子における(メタ)アクリル系多官能単量体単位の含有割合は、50重量%以上であり、60重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましい。(メタ)アクリル系多官能単量体単位の含有割合が前記下限を下回ると、高温環境で非導電性粒子同士が融着して、多孔膜の耐熱収縮性が低下し、高温短絡試験での性能の低下等の不具合を起こしうる。
【0042】
重合体における重合単位の割合は、通常、重合性単量体組成物中の単量体の割合と略一致する。従って、本願で用いる非導電性粒子は、重合性単量体組成物として(メタ)アクリル系多官能単量体を、単量体合計重量中の割合として、50重量%以上、好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上含むものを用いることにより製造しうる。
【0043】
〔非導電性粒子の製造方法〕
重合性単量体組成物を重合して非導電性粒子を得る方法は特に限定されないが、分散媒に重合性単量体組成物及び必要に応じて他の任意の成分を溶解又は分散させ、かかる分散液中で重合する方法を好ましく挙げることができる。
【0044】
乳化重合においては、重合を、複数の段階に分けて行うことが、所望の形状を得る上で好ましい。例えば、重合性単量体組成物を構成する単量体の一部を先に重合させることによりシードポリマーを形成し、続いてシードポリマーに他の単量体を吸収させ、続いてその状態で重合を行い、非導電性粒子を製造することができる。さらには、シードポリマーの形成に際し、重合をさらに複数の段階に分けて行うことができる。より具体的には例えば、以下の方法をとりうる。まず、重合性単量体組成物を構成する単量体の一部を用いてシードポリマーAを形成する。次に、かかるシードポリマーAと、重合性単量体組成物を構成する単量体の別の一部を用いてより大きなシードポリマーBを形成する。さらに、かかるシードポリマーBと、重合性単量体組成物を構成する単量体の残余とを用いて、非導電性粒子を形成することができる。
この場合、重合性単量体組成物のうちの極性基含有単量体の一部又は全部(好ましくは全部)を、シードポリマーを形成する際に用いることが、粒子の安定性確保のため好ましい。また、(メタ)アクリル系多官能単量体は、シードポリマーと単量体との反応において、シードポリマーと反応させる単量体として反応系に加えて重合を行うことが好ましい。シードポリマーを形成するための単量体としては、ブチルアクリレートを用いることが、(メタ)アクリル系多官能単量体の吸収が優れるため好ましい。
【0045】
このように複数の段階に分けて重合を行う場合も含まれるため、重合性単量体組成物は、重合に際してその全ての構成要素の単量体が混合物となった状態とされていなくてもよい。重合が複数の段階に分けて行われる場合、最終的に得られる非導電性粒子において、それを構成する重合単位が由来する単量体の組成が、上で述べた好ましい範囲であることが好ましい。
【0046】
重合性単量体組成物の重合に用いうる媒体としては、水、有機溶媒、及びこれらの混合物を挙げることができる。有機溶媒としては、ラジカル重合に不活性でかつ単量体の重合を阻害しないものを用いうる。有機溶媒の具体的としては、メタノール、エタノール、プロパノール、シクロヘキサノール、オクタノールなどのアルコール類、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチルなどのエステル類、シクロヘキサノンなどのケトン類、及びこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、分散媒として水などの水性の媒体を用い、重合として乳化重合を行うことができる。
【0047】
シードポリマーと単量体とを反応させる際のこれらの量比は、シードポリマー粒子1重量部に対する単量体の割合として、好ましくは2〜19重量部、より好ましくは3〜16重量部、さらにより好ましくは4〜12重量部である。この使用量を2重量部以上とすることにより、得られる粒子の機械的強度及び耐熱性を高めることができる。また、単量体の使用量を19重量部以下とすることにより、シードポリマー粒子の単量体吸収能力が不足しない範囲の量比とすることができ、シードポリマー粒子に吸収されない単量体量を少ない範囲に保ち、粒子径のコントロールを良好に行うことができ、幅広い粒子径分布を持つ粗大粒子や多量の微少粒子の発生を防ぐことができる。
【0048】
重合の具体的な操作としては、シードポリマー粒子の水性分散体に対してこれらを一時に投入する方法、重合を行いながら単量体を分割して又は連続的に添加する方法がある。重合が開始してシードポリマー粒子中において実質的に架橋が生ずる前にシードポリマー粒子に単量体を吸収させることが好ましい。
重合の中期以降に単量体を添加すると、単量体がシードポリマー粒子に吸収されないため、微少粒子が多量に生じて重合安定性が悪くなり、重合反応を維持することができない場合がある。そのためシードポリマー粒子に対してすべての単量体を重合開始前に添加するか、重合転化率が30%程度に達する前にすべての単量体の添加を終了させておくことが好ましい。特に重合の開始前にシードポリマー粒子の水性分散体に単量体を加えて撹拌し、シードポリマーにこれを吸収させた後に重合を開始することが好ましい。
【0049】
重合の反応系には、重合性単量体組成物及び媒体の他に、任意成分を加えることができる。具体的には、重合開始剤、連鎖移動剤、懸濁保護剤、界面活性剤等の成分を加えることができる。重合開始剤としては、一般の水溶性ラジカル重合開始剤あるいは油溶性のラジカル重合開始剤を用いることができるが、シードポリマー粒子に吸収されない単量体が水相で重合を開始することの少ない点で水溶性の重合開始剤を用いることが好ましい。水溶性のラジカル開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、クメンハイドロパーオキサイド、過酸化水素、あるいはこれら還元剤の組み合わせによるレドックス系開始剤が挙げられる。また、油溶性の重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、α,α´−アゾビスイソブチロニトリル、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイドなどを挙げることができる。油溶性の重合開始剤のなかでは、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを好ましく用いることができる。なお、重合反応においては、重クロム酸カリウム、塩化第2鉄、ハイドロキノンなどの水溶性の重合禁止剤を少量添加すると、微少粒子の発生を抑制することができるので好ましい。
【0050】
樹脂の分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、特に限定されるものではなく、例えばオクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル、ターピノーレン、四臭化炭素及びα−メチルスチレンダイマー等が使用される。
【0051】
界面活性剤としては通常のものを用いることができ、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物などのアニオン系乳化剤を例示することができる。さらに、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールモノステアレート、ソルビタンモノステアレートなどのノニオン系界面活性剤を併用することも可能である。好ましい懸濁保護剤としては、ポリビニルアルコール、カルボキシルメチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウムあるいは微粉末無機化合物などを挙げることができる。
【0052】
本発明において、重合時の系の安定性を確保しながら目的の粒子径で粒子径分布の狭い非導電性粒子を再現性よくコントロールして得るための最も好ましい重合開始剤と安定化剤の組み合わせは、重合開始剤として水溶性重合開始剤を用い、安定化剤としてその重合系でのC.M.C.濃度以下でかつその近傍濃度(具体的にはC.M.C.濃度の0.3〜1.0倍)の界面活性剤を用いるものである。
【0053】
〔多孔膜中の、非導電性粒子の含有割合〕
本発明の二次電池用多孔膜全重量を基準とした、非導電性粒子の含有割合の範囲は、その下限が好ましくは70重量%以上であり、より好ましくは80重量%以上である。一方上限は好ましくは97重量%以下であり、より好ましくは95重量%以下である。二次電池用多孔膜中の非導電性粒子の含有割合をこの範囲内とすることにより、非導電性粒子同士が接触部を有しつつ、イオンの移動が阻害されない程度に、非導電性粒子同士の隙間を形成できる。従って、非導電性粒子の平均粒径が前記範囲内であれば、多孔膜の強度が向上し、且つ電池の短絡を防止することができるため好ましい。
【0054】
〔多孔膜用バインダー〕
本発明の二次電池用多孔膜は、多孔膜用バインダーを含む。
本発明に用いる多孔膜用バインダーとしては、結着性を有するものであれば種々のものを用いることができる。例えば、ジエン重合体、(メタ)アクリル重合体、フッ素重合体、シリコン重合体などが挙げられる。中でも、得られる多孔膜における非導電性粒子の保持性や、柔軟性に優れ、かつ、酸化還元に安定であり寿命特性が優れる電池を得易い点から、(メタ)アクリル重合体が好ましい。また、(メタ)アクリル重合体は、本発明において用いる非導電性粒子との親和性という観点からも好ましい。(メタ)アクリル重合体は、アルミナ等の無機の粒子ではなく有機の重合体粒子を非導電性粒子として用いる多孔膜において、上記の特性が特に優れるため、本発明において特に好ましく用いうるものである。
【0055】
(メタ)アクリル重合体とは、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルモノマーの重合単位を含む重合体である。本願において、「(メタ)アクリル」はアクリル及び/又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」はアクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルモノマーとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、n−テトラデシルアクリレート、ステアリルアクリレートなどのアクリル酸アルキルエステル;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、n−テトラデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレートなどのメタクリル酸アルキルエステルが挙げられる。これらの中でも、アクリル酸アルキルエステルが好ましく、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、及び2−エチルヘキシルアクリレートからなる群から選ばれる1種以上が好ましく、ブチルアクリレートがより好ましい。
【0056】
(メタ)アクリル重合体における(メタ)アクリル酸エステルモノマーの重合単位の含有割合は、好ましくは50〜98重量%、より好ましくは60〜97.5重量%、特に好ましくは70〜95重量%である。
【0057】
(メタ)アクリル重合体は、(メタ)アクリル酸エステルモノマーの重合単位に加えて、それ以外の追加のモノマーの重合単位を含むことが好ましい。
追加のモノマーの重合単位としては、酸性基を有するビニルモノマーの重合単位、α,β−不飽和ニトリルモノマーの重合単位、架橋性基を有するモノマーの重合単位が挙げられる。
【0058】
酸性基を有するビニルモノマーとしては、−COOH基(カルボン酸基)を有する単量体、−OH基(水酸基)を有する単量体、−SO
3H基(スルホン酸基)を有する単量体、−PO
3H
2基を有する単量体、−PO(OH)(OR)基(Rは炭化水素基を表す)を有する単量体、及び低級ポリオキシアルキレン基を有する単量体が挙げられる。また、加水分解によりカルボン酸基を生成する酸無水物も同様に使用することができる。
カルボン酸基を有する単量体としては、モノカルボン酸、ジカルボン酸、ジカルボン酸の無水物、及びこれらの誘導体などが挙げられる。モノカルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2−エチルアクリル酸、イソクロトン酸、α−アセトキシアクリル酸、β−trans−アリールオキシアクリル酸、α−クロロ−β−E−メトキシアクリル酸、β−ジアミノアクリル酸などが挙げられる。ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、メチルマレイン酸、ジメチルマレイン酸、フェニルマレイン酸、クロロマレイン酸、ジクロロマレイン酸、フルオロマレイン酸、マレイン酸メチルアリル、マレイン酸ジフェニル、マレイン酸ノニル、マレイン酸デシル、マレイン酸ドデシル、マレイン酸オクタデシル、マレイン酸フルオロアルキルなどのマレイン酸エステル;が挙げられる。ジカルボン酸の酸無水物としては、無水マレイン酸、アクリル酸無水物、メチル無水マレイン酸、ジメチル無水マレイン酸などが挙げられる。
【0059】
水酸基を有する単量体としては、(メタ)アリルアルコール、3−ブテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オールなどのエチレン性不飽和アルコール;アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、マレイン酸ジ−2−ヒドロキシエチル、マレイン酸ジ−4−ヒドロキシブチル、イタコン酸ジ−2−ヒドロキシプロピルなどのエチレン性不飽和カルボン酸のアルカノールエステル類;一般式CH
2=CR
1−COO−(CnH
2nO)m−H(mは2ないし9の整数、nは2ないし4の整数、R
1は水素又はメチル基を表す)で表されるポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類;2−ヒドロキシエチル−2’−(メタ)アクリロイルオキシフタレート、2−ヒドロキシエチル−2’−(メタ)アクリロイルオキシサクシネートなどのジカルボン酸のジヒドロキシエステルのモノ(メタ)アクリル酸エステル類;2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;(メタ)アリル−2−ヒドロキシエチルエーテル、(メタ)アリル−2−ヒドロキシプロピルエーテル、(メタ)アリル−3−ヒドロキシプロピルエーテル、(メタ)アリル−2−ヒドロキシブチルエーテル、(メタ)アリル−3−ヒドロキシブチルエーテル、(メタ)アリル−4−ヒドロキシブチルエーテル、(メタ)アリル−6−ヒドロキシヘキシルエーテルなどのアルキレングリコールのモノ(メタ)アリルエーテル類;ジエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アリルエーテルなどのポリオキシアルキレングリコール(メタ)モノアリルエーテル類;グリセリンモノ(メタ)アリルエーテル、(メタ)アリル−2−クロロ−3−ヒドロキシプロピルエーテル、(メタ)アリル−2−ヒドロキシ−3−クロロプロピルエーテルなどの、(ポリ)アルキレングリコールのハロゲン及びヒドロキシ置換体のモノ(メタ)アリルエーテル;オイゲノール、イソオイゲノールなどの多価フェノールのモノ(メタ)アリルエーテル及びそのハロゲン置換体;(メタ)アリル−2−ヒドロキシエチルチオエーテル、(メタ)アリル−2−ヒドロキシプロピルチオエーテルなどのアルキレングリコールの(メタ)アリルチオエーテル類;などが挙げられる。
【0060】
スルホン酸基を有する単量体としては、ビニルスルホン酸、メチルビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アクリル酸−2−スルホン酸エチル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸などが挙げられる。
【0061】
−PO
3H
2基及び/又は−PO(OH)(OR)基(Rは炭化水素基を表す)を有する単量体としては、リン酸−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸メチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸エチル−(メタ)アクリロイルオキシエチルなどが挙げられる。
【0062】
低級ポリオキシアルキレン基を有する単量体としては、ポリ(エチレンオキシド)等のポリ(アルキレンオキシド)などが挙げられる。
【0063】
これらの中でも、後述する電極合剤層又は有機セパレータ層への密着性に優れること、及び正極活物質から溶出した遷移金属イオンを効率良く捕捉するという理由からカルボン酸基を有する単量体が好ましく、中でも、アクリル酸、メタクリル酸などのカルボン酸基を有する炭素数5以下のモノカルボン酸や、マレイン酸、イタコン酸などのカルボン酸基を1分子あたり2つ有する炭素数5以下のジカルボン酸が好ましい。さらには、作製したスラリーの保存安定性が高いという観点から、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸が好ましい。
【0064】
多孔膜用バインダーにおける酸性基を有するビニルモノマーの重合単位の含有割合は、好ましくは1.0〜3.0重量%、より好ましくは1.5〜2.5重量%である。
【0065】
α,β−不飽和ニトリルモノマーとしては、シアクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリル、及びこれらの混合物が挙げられる。中でも、多孔膜の機械的強度及び多孔膜中の結着力の向上という観点から、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルが好ましい。
【0066】
多孔膜用バインダーにおけるα,β−不飽和ニトリルモノマーの重合単位の含有割合は、好ましくは1.0〜50重量%、より好ましくは1.0〜40重量%、特に好ましくは1.0〜30重量%である。
【0067】
架橋性基を有するモノマーとしては、架橋性基を有し、且つ1分子あたり1つのオレフィン性二重結合を持つ単官能性単量体、1分子あたり2つ以上のオレフィン性二重結合を持つ多官能性単量体が挙げられる。
1分子あたり1つのオレフィン性二重結合を持つ単官能性単量体に含まれる架橋性基としては、エポキシ基、N−メチロールアミド基、オキセタニル基、及びオキサゾリン基からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、エポキシ基が架橋及び架橋密度の調節が容易な点でより好ましい。
【0068】
エポキシ基を含有する単量体としては、炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を含有する単量体とハロゲン原子及びエポキシ基を含有する単量体が挙げられる。
炭素−炭素二重結合及びエポキシ基を含有する単量体としては、たとえば、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ブテニルグリシジルエーテル、o−アリルフェニルグリシジルエーテルなどの不飽和グリシジルエーテル;ブタジエンモノエポキシド、クロロプレンモノエポキシド、4,5−エポキシ−2−ペンテン、3,4−エポキシ−1−ビニルシクロヘキセン、1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエンなどのジエン又はポリエンのモノエポキシド;3,4−エポキシ−1−ブテン、1,2−エポキシ−5−ヘキセン、1,2−エポキシ−9−デセンなどのアルケニルエポキシド;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルクロトネート、グリシジル−4−ヘプテノエート、グリシジルソルベート、グリシジルリノレート、グリシジル−4−メチル−3−ペンテノエート、3−シクロヘキセンカルボン酸のグリシジルエステル、4−メチル−3−シクロヘキセンカルボン酸のグリシジルエステルなどの不飽和カルボン酸のグリシジルエステル類;が挙げられる。
ハロゲン原子及びエポキシ基を有する単量体としては、たとえば、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリン、エピフルオロヒドリン、β−メチルエピクロルヒドリンなどのエピハロヒドリン;p−クロロスチレンオキシド;ジブロモフェニルグリシジルエーテル;が挙げられる。
【0069】
N−メチロールアミド基を含有する単量体としては、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどのメチロール基を有する(メタ)アクリルアミド類が挙げられる。
【0070】
オキセタニル基を含有する単量体としては、3−((メタ)アクリロイルオキシメチル)オキセタン、3−((メタ)アクリロイルオキシメチル)−2−トリフロロメチルオキセタン、3−((メタ)アクリロイルオキシメチル)−2−フェニルオキセタン、2−((メタ)アクリロイルオキシメチル)オキセタン、2−((メタ)アクリロイルオキシメチル)−4−トリフロロメチルオキセタンなどが挙げられる。
【0071】
オキサゾリン基を含有する単量体としては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン等が挙げられる。
【0072】
1分子あたり2つ以上のオレフィン性二重結合を持つ多官能性単量体としてはアリルアクリレート又はアリルメタクリレート、トリメチロールプロパン−トリアクリレート、トリメチロールプロパン−メタクリレート、ジプロピレングリコールジアリルエーテル、ポリグリコールジアリルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ヒドロキノンジアリルエーテル、テトラアリルオキシエタン、又は多官能性アルコールの他のアリル又はビニルエーテル、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリアリルアミン、トリメチロールプロパン−ジアリルエーテル、メチレンビスアクリルアミド及び/又はジビニルベンゼンが好ましい。特にアリルアクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパン−トリアクリレート及び/又はトリメチロールプロパン−メタクリレート等が挙げられる。
【0073】
1分子あたり2つ以上のオレフィン性二重結合を有する多官能性単量体の中でも、架橋密度が向上しやすいことから、架橋密度の向上及び共重合性が高いという観点の理由でアリルアクリレート又はアリルメタクリレート等のアリル基を有するアクリレート又はメタアクリレートが好ましい。
【0074】
多孔膜用バインダーにおける架橋性基を有するモノマーの重合単位の含有割合は、好ましくは0.01〜2.0重量%、より好ましくは0.05〜1.5重量%、特に好ましくは0.1〜1.0重量%の範囲である。多孔膜用バインダーにおける架橋性基を有するモノマーの重合単位の含有割合を前記範囲とすることにより、上記範囲内にあることで電解液への溶出を抑制し、優れた多孔膜強度と長期サイクル特性を示すことができる。
【0075】
本発明に用いる多孔膜用バインダーは、上述した単量体に基づく重合単位以外に、これらと共重合可能な単量体に基づく重合単位を含んでいてもよい。これらと共重合可能な単量体としては、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン原子含有単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビエルエーテル等のビニルエーテル類;メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、ブチルビニルケトン、ヘキシルビニルケトン、イソプロペニルビニルケトン等のビニルケトン類;N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の複素環含有ビニル化合物;アクリルアミド;が挙げられる。これらの単量体を、適宜の手法により、グラフト共重合させることにより、前記構成のバインダーが得られる。
【0076】
本発明の二次電池用多孔膜全重量を基準とした、多孔膜用バインダーの含有割合の範囲は、その下限が好ましくは3重量%以上であり、より好ましくは5重量%以上である。一方上限は好ましくは20重量%以下であり、より好ましくは15重量%以下である。バインダーの割合をこの範囲とすることにより、多孔膜強度の向上と空隙の確保とを両立することができ、ひいては耐短絡性及びその他の電池特性を向上させることができる。
【0077】
本発明の二次電池用多孔膜においては、非導電性粒子の含有量と、多孔膜用バインダーの含有量との比率は、(非導電性粒子重量)/(多孔膜用バインダー重量)の比として、5〜30の範囲内であることが好ましい。かかる比率をこの範囲とすることにより、耐高温短絡性と、優れたサイクル特性とを両立して維持することができる。
【0078】
本発明に用いる多孔膜用バインダーは、通常、分散媒(水又は有機溶媒)に分散された状態の分散液として調製及び保存され、これを多孔膜用スラリーの製造において材料として使用される。本発明においては、環境への負荷が少なく、乾燥速度が速いという観点から分散媒として水を用いることが好ましい。また、分散媒として有機溶媒を用いる場合、N−メチルピロリドン(NMP)等の有機溶剤が用いられる。
【0079】
多孔膜用バインダーが分散媒に粒子状で分散している場合において、粒子状で分散しているバインダーの個数平均粒径(分散粒子径)は、50〜500nmが好ましく、70〜400nmがさらに好ましく、最も好ましくは100〜250nmである。多孔膜用バインダーの個数平均粒径がこの範囲であると得られる多孔膜の強度及び柔軟性が良好となる。
【0080】
多孔膜用バインダーが分散媒に粒子状で分散している場合において、分散液中の固形分濃度は、通常15〜70重量%であり、20〜65重量%が好ましく、30〜60重量%がさらに好ましい。固形分濃度がこの範囲であると、後述する多孔膜用スラリーを製造する際における作業性が良好である。
【0081】
本発明に用いる多孔膜用バインダーのガラス転移温度(Tg)は、好ましくは−50〜25℃、より好ましくは−45〜15℃、特に好ましくは−40〜5℃である。多孔膜用バインダーのTgが前記範囲にあることにより、本発明の多孔膜が優れた強度と柔軟性を有するため、その結果として該多孔膜を用いた二次電池の出力特性を向上させることができる。なお、多孔膜用バインダーのガラス転移温度は、様々な単量体を組み合わせることによって調製可能である。
【0082】
本発明に用いるバインダーである重合体の製造方法は特に限定はされず、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法などのいずれの方法も用いることができる。重合反応としては、イオン重合、ラジカル重合、リビングラジカル重合などいずれの反応も用いることができる。重合に用いる重合開始剤としては、たとえば過酸化ラウロイル、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシピバレート、3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイドなどの有機過酸化物、α,α’−アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物、又は過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどがあげられる。
【0083】
〔重金属捕捉化合物〕
本発明の二次電池用多孔膜は、非導電性粒子及び多孔膜用バインダーに加えて、重金属捕捉化合物を含むことが好ましい。
本発明の二次電池用多孔膜は重金属捕捉化合物を含有することにより、該多孔膜を用いた二次電池の充放電時に電解液中に溶出する遷移金属イオンを捕捉することができるため、遷移金属イオンに起因した二次電池のサイクル特性と安全性の低下を防ぐことができる。
【0084】
重金属捕捉化合物としては、特に限定されず重金属捕捉機能を有する化合物を用い得る。重金属捕捉化合物は、好ましくは、アミノカルボン酸系キレート化合物、ホスホン酸系キレート化合物、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸及び酒石酸からなる群より選択される。これらの中でも特に、リチウムイオンを捕捉することなく、遷移金属イオンを選択的に捕捉可能なキレート化合物が用いられ、特に下記のようなアミノカルボン酸系キレート化合物及びホスホン酸系キレート化合物が好ましく用いられる。
【0085】
アミノカルボン酸系キレート化合物としては、エチレンジアミン四酢酸(以下において「EDTA」と表すことがある。)、ニトリロ三酢酸(以下において「NTA」と表すことがある。)、トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン四酢酸(以下において「DCTA」と表すことがある。)、ジエチレン−トリアミン五酢酸(以下において「DTPA」と表すことがある。)、ビス−(アミノエチル)グリコールエーテル−N,N,N’,N’−四酢酸(以下において「EGTA」と表すことがある。)、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン−N,N’,N’−三酢酸(以下において「HEDTA」と表すことがある。)及びジヒドロキシエチルグリシン(以下において「DHEG」と表すことがある。)からなる群より選択されることが好ましい。
【0086】
ホスホン酸系キレート化合物としては、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸(以下において「HEDP」と表すことがある。)が好ましい。
【0087】
重金属捕捉化合物の含有量は、多孔膜用バインダー100重量部(固形分換算)に対し、好ましくは0.001〜1.0重量部、より好ましくは0.005〜0.5重量部、特に好ましくは0.01〜0.3重量部である。重金属捕捉化合物の含有量が0.001重量部未満では、遷移金属イオンの捕捉能に乏しいため、二次電池のサイクル特性が低下する場合があり好ましく無い。また、1.0重量部を超えると、それ以上の遷移金属捕捉効果が望めないだけでなく、本発明の多孔膜を用いた二次電池のサイクル特性が低下する場合があり好ましくない。
【0088】
〔その他の多孔膜任意成分〕
多孔膜には、上記成分のほかに、さらに任意の成分が含まれていてもよい。かかる任意の成分としては、湿潤剤、分散剤、レベリング剤、酸化防止剤、上に述べた多孔膜用バインダー以外の結着剤、増粘剤、消泡剤や、電解液分解抑制等の機能を有する電解液添加剤等の成分を挙げることができる。これらは電池反応に影響を及ぼさないものであれば特に限られない。
【0089】
分散剤としてはアニオン性化合物、カチオン性化合物、非イオン性化合物、高分子化合物が例示される。分散剤は用いる非導電性粒子に応じて選択される。多孔膜中の分散剤の含有割合は、電池特性に影響が及ばない範囲が好ましく、具体的には10重量%以下である。
【0090】
湿潤剤又はレベリング剤としてはアルキル系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、金属系界面活性剤などの界面活性剤が挙げられる。前記界面活性剤を混合することにより、塗工時に発生するはじきを防止したり、電極の平滑性を向上させることができる。
【0091】
酸化防止剤としてはフェノール化合物、ハイドロキノン化合物、有機リン化合物、硫黄化合物、フェニレンジアミン化合物、ポリマー型フェノール化合物等が挙げられる。ポリマー型フェノール化合物は、分子内にフェノール構造を有する重合体であり、重量平均分子量が200〜1000、好ましくは600〜700のポリマー型フェノール化合物が好ましく用いられる。
【0092】
上に述べた多孔膜用バインダー以外の結着剤としては後述の電極合剤層用結着剤に使用されるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリル酸誘導体、ポリアクリロニトリル誘導体、軟質重合体などを用いることができる。
【0093】
増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース系ポリマー及びこれらのアンモニウム塩並びにアルカリ金属塩;(変性)ポリ(メタ)アクリル酸及びこれらのアンモニウム塩並びにアルカリ金属塩;(変性)ポリビニルアルコール、アクリル酸又はアクリル酸塩とビニルアルコールの共重合体、無水マレイン酸又はマレイン酸もしくはフマル酸とビニルアルコールの共重合体などのポリビニルアルコール類;ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、変性ポリアクリル酸、酸化スターチ、リン酸スターチ、カゼイン、各種変性デンプン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体水素化物などが挙げられる。増粘剤の使用量がこの範囲であると、塗工性や、電極合剤層や有機セパレータとの密着性が良好である。本願において、「(変性)ポリ」は「未変性ポリ」又は「変性ポリ」を意味する。
【0094】
その他には、フュームドシリカやフュームドアルミナなどのナノ微粒子が挙げられる。前記ナノ微粒子を混合することにより多孔膜用スラリーのチキソ性をコントロールすることができ、さらにそれにより得られる多孔膜のレベリング性を向上させることができる。
【0095】
前記任意の成分の多孔膜中の含有割合は、電池特性に影響が及ばない範囲が好ましく、具体的には各成分10重量%以下であり、任意の成分の含有割合の合計が、40重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。
【0096】
〔多孔膜の製造方法〕
本発明の多孔膜を製造する方法としては、1)非導電性粒子、多孔膜用バインダー及び媒体を含む多孔膜用スラリーを所定の基材上に塗布してスラリー層を得、次いでスラリー層を乾燥する方法;2)非導電性粒子、多孔膜用バインダー及び媒体を含む多孔膜用スラリーに基材を浸漬後、これを乾燥する方法;が挙げられる。この中でも、1)の方法が、多孔膜の膜厚を制御しやすいことから最も好ましい。以下においては、この方法を本発明の二次電池用多孔膜の製造方法として説明する。
【0097】
〔多孔膜用スラリー〕
本発明の製造方法に用いる多孔膜用スラリーは、非導電性粒子、多孔膜用バインダー、及び媒体を含む。非導電性粒子、多孔膜用バインダーとしては、多孔膜で説明したものと同様のものが挙げられる。
【0098】
媒体としては、上記固形分(非導電性粒子、多孔膜用バインダー及び前記任意の成分)を均一に分散し得るものであれば特に制限されない。
多孔膜用スラリーに用いる媒体としては、水及び有機溶媒のいずれも使用できる。有機溶媒としては、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの環状脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;アセトン、エチルメチルケトン、ジイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどのケトン類;メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素など塩素系脂肪族炭化水素;芳酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトンなどのエステル類;アセトニトリル、プロピオニトリルなどのアシロニトリル類;テトラヒドロフラン、エチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル類:メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール類;N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド類があげられる。
これらの媒体は、単独で使用しても、これらを2種以上混合して混合媒体として使用してもよい。これらの中でも特に、非導電性粒子の分散性にすぐれ、沸点が低く揮発性が高い媒体が、短時間でかつ低温で除去できるので好ましい。具体的には、アセトン、トルエン、シクロヘキサノン、シクロペンタン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン、キシレン、水、若しくはN−メチルピロリドン、又はこれらの混合媒体が好ましい。
特に、多孔膜用バインダーとして上で説明した(メタ)アクリル重合体を用いる場合、媒体として水等の水系媒体を用い、多孔膜用スラリーを水性分散体として得ることが、製造プロセスや工程負荷を低減できるため特に好ましい。
【0099】
多孔膜用スラリーの固形分濃度は、該スラリーの塗布、浸漬が可能な程度でかつ、流動性を有する粘度になる濃度に適宜調整することができるが、一般的には10〜50重量%程度である。
固形分以外の成分は、乾燥の工程により揮発する成分であり、前記媒体に加え、例えば、非導電性粒子及び多孔膜用バインダーの調製及び添加に際しこれらを溶解又は分散させていた媒質をも含む。
本発明の多孔膜用スラリーは、本発明の多孔膜を形成するためのものであるので、多孔膜用スラリーの固形分全量中の、非導電性粒子、多孔膜用バインダー、及び任意成分(多孔膜の任意成分として上述した成分)の含有割合は、本発明の多孔膜について上述した通りの割合とすることができる。
【0100】
また、多孔膜用スラリーには、非導電性粒子、多孔膜用バインダー、媒体及び多孔膜の任意成分として上述した任意成分のほかに、さらに分散剤や電解液分解抑制等の機能を有する電解液添加剤等の任意の成分が含まれていてもよい。これらは電池反応に影響を及ぼさないものであれば特に限られない。
【0101】
〔多孔膜用スラリー製法〕
多孔膜用スラリーの製法は、特に限定はされず、上記非導電性粒子、多孔膜用バインダー、及び媒体と必要に応じ添加される任意の成分を混合して得られる。
本発明においては上記成分を用いることにより混合方法や混合順序にかかわらず、非導電性粒子が高度に分散された多孔膜用スラリーを得ることができる。混合装置は、上記成分を均一に混合できる装置であれば特に限定されず、ホモミキサー、ボールミル、サンドミル、顔料分散機、擂潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサーなどを使用することができるが、中でも適度な分散シェアを加えることができる、ホモミキサーを使用することが特に好ましい。
多孔膜用スラリーの粘度は、均一塗工性、スラリー経時安定性の観点から、好ましくは10mPa・S〜10,000mPa・S、更に好ましくは50〜500mPa・sである。前記粘度は、B型粘度計を用いて25℃、回転数60rpmで測定した時の値である。
【0102】
本発明の多孔膜の製造方法のある態様において、基材は、電池中の構成要素であって、多孔膜を有することが好ましい構成要素である。具体的には、二次電池用の電極若しくはセパレータを基材とし、この上に多孔膜を形成することが好ましい。
本発明の多孔膜の製造方法においては、電極や有機セパレータ以外の基材上に形成してもよい。本発明の多孔膜を、電極や有機セパレータ以外の基材上に形成した場合は、多孔膜を基材から剥離し、直接電池を組み立てる時に、電極上や有機セパレータ上に積層することにより使用することが出来る。この場合、基材としては、公知の剥離フィルム等の、適切な剥離フィルムを用いることができる。
【0103】
多孔膜用スラリーを基材上へ塗布する方法は特に制限されない。例えば、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗り法などの方法が挙げられる。中でも、均一な多孔膜が得られる点でディップ法やグラビア法が好ましい。
塗布により得られたスラリー層を乾燥する方法としては例えば温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、(遠)赤外線や電子線などの照射による乾燥法が挙げられる。乾燥温度は、使用する媒体の種類によってかえることができる。媒体を完全に除去するために、例えば、N−メチルピロリドン等の揮発性の低い媒体を用いる場合には送風式の乾燥機で120℃以上の高温で乾燥させることが好ましい。逆に揮発性の高い媒体を用いる場合には100℃以下の低温において乾燥させることもできる。多孔膜を後述する有機セパレータ上に形成する際は、有機セパレータの収縮を起こさずに乾燥させることが必要である為、100℃以下の低温での乾燥が好ましい。
【0104】
次いで、必要に応じ、金型プレスやロールプレスなどを用い、加圧処理により電極合剤層と多孔膜との密着性を向上させることもできる。ただし、この際、過度に加圧処理を行うと、多孔膜の空隙率が損なわれることがあるため、圧力及び加圧時間を適宜に制御する。
【0105】
〔多孔膜の形状〕
多孔膜の膜厚は、特に限定はされず、多孔膜の用途あるいは適用分野に応じて適宜に設定されるが、薄すぎると均一な膜を形成できず、逆に厚すぎると電池内での体積(重量)あたりの容量(capacity)が減ることから、1〜10μmが好ましく、2〜7μmがより好ましい。
【0106】
本発明の多孔膜は、二次電池電極の電極合剤層又は有機セパレータ層の表面に成膜され、電極合剤層の保護膜あるいはセパレータとして特に好ましく用いられる。多孔膜が成膜される二次電池電極は特に限定はされず、各種の構成の電極に対して、本発明の多孔膜は成膜されうる。また、多孔膜は、二次電池の正極、負極の何れの表面に成膜されてもよく、正極、負極の両者に成膜されてもよい。
【0107】
〔二次電池用電極〕
本発明の二次電池用電極は、集電体;電極活物質及び電極合剤層用結着剤を含み、前記集電体上に付着する電極合剤層;並びに前記電極合剤層の表面に積層された前記本発明の多孔膜;を有する。
【0108】
〔集電体〕
集電体は、電気導電性を有しかつ電気化学的に耐久性のある材料であれば特に制限されないが、耐熱性を有するとの観点から、例えば、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タンタル、金、白金などの金属材料が好ましい。中でも、リチウムイオン二次電池の正極用としてはアルミニウムが特に好ましく、リチウムイオン二次電池の負極用としては銅が特に好ましい。集電体の形状は特に制限されないが、厚さ0.001〜0.5mm程度のシート状のものが好ましい。集電体は、電極合剤層の接着強度を高めるため、予め粗面化処理して使用するのが好ましい。粗面化方法としては、機械的研磨法、電解研磨法、化学研磨法などが挙げられる。機械的研磨法においては、研磨剤粒子を固着した研磨布紙、砥石、エメリバフ、鋼線などを備えたワイヤーブラシ等が使用される。
また、電極合剤層の接着強度や導電性を高めるために、集電体表面に中間層を形成してもよい。
【0109】
〔電極活物質〕
本発明の二次電池用電極に用いられる電極活物質は、電極が利用される二次電池に応じて選択しうる。前記二次電池としては、リチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池が挙げられる。
【0110】
本発明の二次電池用電極を、リチウムイオン二次電池正極用に用いる場合、リチウムイオン二次電池正極用の電極活物質(正極活物質)は、無機化合物からなるものと有機化合物からなるものとに大別される。
無機化合物からなる正極活物質としては、遷移金属酸化物、リチウムと遷移金属との複合酸化物、遷移金属硫化物などが挙げられる。上記の遷移金属としては、Fe、Co、Ni、Mn等が使用される。正極活物質に使用される無機化合物の具体例としては、LiCoO
2、LiNiO
2、LiMnO
2、LiMn
2O
4、LiFePO
4、LiFeVO
4などのリチウム含有複合金属酸化物;TiS
2、TiS
3、非晶質MoS
2等の遷移金属硫化物;Cu
2V
2O
3、非晶質V
2O−P
2O
5、MoO
3、V
2O
5、V
6O
13などの遷移金属酸化物が挙げられる。これらの化合物は、部分的に元素置換したものであってもよい。有機化合物からなる正極活物質としては、例えば、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレンなどの導電性高分子化合物を用いることもできる。電気伝導性に乏しい、鉄系酸化物は、還元焼成時に炭素源物質を共存させることで、炭素材料で覆われた電極活物質として用いてもよい。また、これら化合物は、部分的に元素置換したものであってもよい。
【0111】
リチウムイオン二次電池用の正極活物質は、上記の無機化合物と有機化合物の混合物であってもよい。正極活物質の粒子径は、電池の任意の構成要件との兼ね合いで適宜選択されるが、レート特性、サイクル特性などの電池特性の向上の観点から、50%体積累積径が、通常0.1〜50μm、好ましくは1〜20μmである。50%体積累積径がこの範囲であると、充放電容量が大きい二次電池を得ることができ、かつ電極用スラリー及び電極を製造する際の取扱いが容易である。50%体積累積径は、レーザー回折で粒度分布を測定することにより求めることができる。
【0112】
本発明の二次電池用電極を、リチウムイオン二次電池負極用に用いる場合、リチウムイオン二次電池負極用の電極活物質(負極活物質)としては、たとえば、アモルファスカーボン、グラファイト、天然黒鉛、メゾカーボンマイクロビーズ、ピッチ系炭素繊維などの炭素質材料、ポリアセン等の導電性高分子化合物などがあげられる。また、負極活物質としては、ケイ素、錫、亜鉛、マンガン、鉄、ニッケル等の金属やこれらの合金、前記金属又は合金の酸化物や硫酸塩が用いられる。加えて、金属リチウム、Li−Al、Li−Bi−Cd、Li−Sn−Cd等のリチウム合金、リチウム遷移金属窒化物、シリコン等を使用できる。電極活物質は、機械的改質法により表面に導電付与材を付着させたものも使用できる。負極活物質の粒径は、電池の他の構成要件との兼ね合いで適宜選択されるが、初期効率、レート特性、サイクル特性などの電池特性の向上の観点から、50%体積累積径が、通常1〜50μm、好ましくは15〜30μmである。
【0113】
本発明の二次電池用電極を、ニッケル水素二次電池正極用に用いる場合、ニッケル水素二次電池正極用の電極活物質(正極活物質)としては、水酸化ニッケル粒子が挙げられる。水酸化ニッケル粒子は、コバルト、亜鉛、カドミウム等を固溶していてもよく、あるいは表面がアルカリ熱処理されたコバルト化合物で被覆されていてもよい。また、水酸化ニッケル粒子には、酸化イットリウムの他に、酸化コバルト、金属コバルト、水酸化コバルト等のコバルト化合物、金属亜鉛、酸化亜鉛、水酸化亜鉛等の亜鉛化合物、酸化エルビウム等の希土類化合物等の添加剤が含まれていてもよい。
【0114】
本発明の二次電池用電極を、ニッケル水素二次電池負極用に用いる場合、ニッケル水素二次電池負極用の電極活物質(負極活物質)は、水素吸蔵合金粒子は、電池の充電時にアルカリ電解液中で電気化学的に発生させた水素を吸蔵でき、なおかつ放電時にその吸蔵水素を容易に放出できるものとしうる。ニッケル水素二次電池負極用の電極活物質としては、特に限定はされないが、AB5型系、TiNi系及びTiFe系の水素吸蔵合金からなる粒子が好ましい。具体的には、例えば、LaNi5、MmNi5(Mmはミッシュメタル)、LmNi5(LmはLaを含む希土類元素から選ばれる少なくとも一種)及びこれらの合金のNiの一部をAl,Mn,Co,Ti,Cu,Zn,Zr,Cr及びB等から選択される1種以上の元素で置換した多元素系の水素吸蔵合金粒子を用いることができる。特に、一般式:LmNiwCoxMnyAlz(原子比w,x,y,zの合計値は4.80≦w+x+y+z≦5.40である)で表される組成を有する水素吸蔵合金粒子は、充放電サイクルの進行に伴う微粉化が抑制されて充放電サイクル寿命が向上するので好適である。
【0115】
〔電極合剤層用結着剤〕
本発明において、電極合剤層は、電極活物質の他に、結着剤(電極合剤層用結着剤)を含む。結着剤を含むことにより電極中の電極合剤層の結着性が向上し、電極の撒回時等の工程上においてかかる機械的な力に対する強度が上がり、また電極中の電極合剤層が脱離しにくくなることから、脱離物による短絡等の危険性が小さくなる。
【0116】
電極合剤層用結着剤としては様々な樹脂成分を用いることができる。例えば、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリアクリル酸誘導体、ポリアクリロニトリル誘導体などを用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0117】
更に、下に例示する軟質重合体も電極合剤層用結着剤として使用することができる。
ポリブチルアクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ブチルアクリレート・スチレン共重合体、ブチルアクリレート・アクリロニトリル共重合体、ブチルアクリレート・アクリロニトリル・グリシジルメタクリレート共重合体などの、アクリル酸又はメタクリル酸誘導体の単独重合体又はそれと共重合可能な単量体との共重合体である、アクリル系軟質重合体;
ポリイソブチレン、イソブチレン・イソプレンゴム、イソブチレン・スチレン共重合体などのイソブチレン系軟質重合体;
ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン・スチレンランダム共重合体、イソプレン・スチレンランダム共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ブタジエン・スチレン・ブロック共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン・ブロック共重合体、イソプレン・スチレン・ブロック共重合体、スチレン・イソプレン・スチレン・ブロック共重合体などジエン系軟質重合体;
ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、ジヒドロキシポリシロキサンなどのケイ素含有軟質重合体;
液状ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体(EPDM)、エチレン・プロピレン・スチレン共重合体などのオレフィン系軟質重合体;
ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリステアリン酸ビニル、酢酸ビニル・スチレン共重合体などビニル系軟質重合体;
ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エピクロルヒドリンゴムなどのエポキシ系軟質重合体;
フッ化ビニリデン系ゴム、四フッ化エチレン−プロピレンゴムなどのフッ素含有軟質重合体;
天然ゴム、ポリペプチド、蛋白質、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーなどのその他の軟質重合体などが挙げられる。これらの軟質重合体は、架橋構造を有したものであってもよく、また、変性により官能基を導入したものであってもよい。
【0118】
電極合剤層における電極合剤層用結着剤の量は、電極活物質100重量部に対して、好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは0.2〜4重量部、特に好ましくは0.5〜3重量部である。電極合剤層における電極合剤層用結着剤量が前記範囲であることにより、電池反応を阻害せずに、電極から活物質が脱落するのを防ぐことができる。
【0119】
電極合剤層用結着剤は、電極を作製するために溶液もしくは分散液として調製される。その時の粘度は、通常1mPa・s〜300,000mPa・sの範囲、好ましくは50mPa・s〜10,000mPa・sである。前記粘度は、B型粘度計を用いて25℃、回転数60rpmで測定した時の値である。
【0120】
本発明において、電極合剤層には、導電性付与材や補強材を含有していてもよい。導電付与材としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンブラック、グラファイト、気相成長カーボン繊維、カーボンナノチューブ等の導電性カーボンを使用することができる。黒鉛などの炭素粉末、各種金属のファイバーや箔などが挙げられる。補強材としては、各種の無機及び有機の球状、板状、棒状又は繊維状のフィラーが使用できる。導電性付与材を用いることにより電極活物質同士の電気的接触を向上させることができ、特にリチウムイオン二次電池に用いる場合に放電レート特性を改善したりすることができる。導電性付与材や補強剤の使用量は、電極活物質100重量部に対して通常0〜20重量部、好ましくは1〜10重量部である。
【0121】
電極合剤層は、電極合剤層用結着剤、電極活物質及び媒体を含むスラリー(以下、「電極合剤層形成用スラリー」と呼ぶことがある。)を集電体に付着させて形成することができる。
【0122】
媒体としては、前記電極合剤層用結着剤を溶解又は粒子状に分散するものを用いうるが、溶解するものが好ましい。電極合剤層用結着剤を溶解する媒体を用いると、電極合剤層用結着剤が表面に吸着することにより電極活物質などの分散が安定化する。
【0123】
電極合剤層形成用スラリーに用いる媒体としては、水及び有機溶媒のいずれも使用できる。有機溶媒としては、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの環状脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;エチルメチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトンなどのエステル類;アセトニトリル、プロピオニトリルなどのアシロニトリル類;テトラヒドロフラン、エチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル類:メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール類;N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド類があげられる。これらの媒体は、単独又は2種以上を混合して、乾燥速度や環境上の観点から適宜選択して用いることができる。
【0124】
電極合剤層形成用スラリーは、増粘剤を含有してもよい。電極合剤層形成用スラリーに用いる媒体に可溶な重合体が用いられる。増粘剤としては、本発明の多孔膜で例示した増粘剤を用いることができる。増粘剤の使用量は、電極活物質100重量部に対して、0.5〜1.5重量部が好ましい。増粘剤の使用量がこの範囲であると、塗工性、集電体との密着性が良好である。
【0125】
さらに、電極合剤層形成用スラリーには、上記成分の他に、電池の安定性や寿命を高めるため、トリフルオロプロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、カテコールカーボネート、1,6−ジオキサスピロ[4,4]ノナン−2,7−ジオン、12−クラウン−4−エーテル等が使用できる。また、これらは後述する電解液に含有せしめて用いてもよい。
【0126】
電極合剤層形成用スラリーにおける媒体の量は、電極活物質や電極合剤層用結着剤などの種類に応じ、塗工に好適な粘度になるように調整して用いる。具体的には、電極合剤層形成用スラリー中の、電極活物質、電極合剤層用結着剤及び導電性付与材などの任意の添加剤を合わせた固形分の濃度が、好ましくは30〜90重量%、より好ましくは40〜80重量%となる量に調整して用いられる。
【0127】
電極合剤層形成用スラリーは、電極活物質、電極合剤層用結着剤、必要に応じ添加される導電性付与材などの任意の添加剤、及び媒体を、混合機を用いて混合して得られる。混合は、上記の各成分を一括して混合機に供給し、混合してもよい。電極合剤層形成用スラリーの構成成分として、電極活物質、電極合剤層用結着剤、導電性付与材及び増粘剤を用いる場合には、導電性付与材及び増粘剤を媒体中で混合して導電付与材を微粒子状に分散させ、次いで電極合剤層用結着剤、電極活物質を添加してさらに混合することが好ましい。このような順序で混合を行うことにより、得られるスラリーの分散性を向上できる。混合機としては、ボールミル、サンドミル、顔料分散機、擂潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、ホバートミキサーなどを用いることができるが、ボールミルを用いると導電性付与材や電極活物質の凝集を抑制できるので好ましい。
【0128】
電極合剤層形成用スラリーの粒度は、好ましくは35μm以下であり、さらに好ましくは25μm以下である。スラリーの粒度が上記範囲にあると、導電材の分散性が高く、均質な電極が得られる。
【0129】
電極合剤層の製造方法は、前記集電体の少なくとも片面、好ましくは両面に電極合剤層を層状に結着させる方法としうる。例えば、前記電極合剤層形成用スラリーを集電体に塗布、乾燥し、次いで、120℃以上で1時間以上加熱処理して電極合剤層を形成する。電極合剤層形成用スラリーを集電体へ塗布する方法は特に制限されない。例えば、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗り法などの方法が挙げられる。乾燥方法としては例えば温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、(遠)赤外線や電子線などの照射による乾燥法が挙げられる。
【0130】
次いで、金型プレスやロールプレスなどを用い、加圧処理により電極の電極合剤層の空隙率を低くすることが好ましい。空隙率の好ましい範囲は5%〜15%、より好ましくは7%〜13%である。空隙率が高すぎると充電効率や放電効率が悪化する。空隙率が低すぎる場合は、高い体積容量が得難かったり、電極合剤層が剥がれ易く不良を発生し易いといった問題を生じる。さらに、硬化性の重合体を用いる場合は、硬化させることが好ましい。
【0131】
電極合剤層の厚みは、正極、負極とも、通常5〜300μmであり、好ましくは10〜250μmである。
【0132】
〔二次電池用セパレータ〕
本発明の二次電池用セパレータは、有機セパレータ層、及び前記セパレータ層上に積層された前記本発明の多孔膜を有する。
【0133】
有機セパレータ層としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂や芳香族ポリアミド樹脂を含んでなるセパレータなどの公知のものが用いられる。
本発明に用いる有機セパレータ層としては、電子伝導性がなくイオン伝導性があり、有機溶媒の耐性が高い、孔径の微細な多孔質膜が用いられ、例えばポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ塩化ビニル)、及びこれらの混合物あるいは共重合体等の樹脂からなる微多孔膜、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロオレフィン、ポリエーテルスルフォン、ポリアミド、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリアラミド、ポリシクロオレフィン、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂からなる微多孔膜又はポリオレフィン系の繊維を織ったもの、又はその不織布、絶縁性物質粒子の集合体等が挙げられる。これらの中でも、前述の多孔膜用スラリーの塗工性が優れ、セパレータ全体の膜厚を薄くし電池内の活物質比率を上げて体積あたりの容量を上げることができるため、ポリオレフィン系の樹脂からなる微多孔膜が好ましい。
有機セパレータ層の厚さは、通常0.5〜40μm、好ましくは1〜35μm、更に好ましくは5〜30μmである。この範囲であると電池内でのセパレータによる抵抗が小さくなり、また有機セパレータ層への塗工時の作業性が良い。
【0134】
本発明において、有機セパレータ層の材料として用いるポリオレフィン系の樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のホモポリマー、コポリマー、更にはこれらの混合物が挙げられる。ポリエチレンとしては、低密度、中密度、高密度のポリエチレンが挙げられ、突き刺し強度や機械的な強度の観点から、高密度のポリエチレンが好ましい。また、これらのポリエチレンは柔軟性を付与する目的から2種以上を混合しても良い。これらポリエチレンに用いる重合触媒も特に制限はなく、チーグラー・ナッタ系触媒やフィリップス系触媒やメタロセン系触媒などが挙げられる。機械強度と高透過性を両立させる観点から、ポリエチレンの粘度平均分子量は10万以上1200万以下が好ましく、より好ましくは20万以上300万以下である。ポリプロピレンとしては、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマーが挙げられ、一種類又は二種類以上を混合して使用することができる。また重合触媒も特に制限はなく、チーグラー・ナッタ系触媒やメタロセン系触媒などが挙げられる。また立体規則性にも特に制限はなく、アイソタクチックやシンジオタクチックやアタクチックを使用することができるが、安価である点からアイソタクチックポリプロピレンを使用するのが望ましい。さらに本発明の効果を損なわない範囲で、ポリオレフィンにはポリエチレン或いはポリプロピレン以外のポリオレフィン及び酸化防止剤、核剤などの添加剤を適量添加してもよい。
【0135】
ポリオレフィン系の有機セパレータ層を作製する方法としては、公知公用のものが用いられ、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンを溶融押し出しフィルム製膜した後に、低温でアニーリングさせ結晶ドメインを成長させて、この状態で延伸を行い非晶領域を延ばす事で微多孔膜を形成する乾式方法;炭化水素溶媒やその他低分子材料とポリプロピレン、ポリエチレンを混合した後に、フィルム形成させて、次いで、非晶相に溶媒や低分子が集まり島相を形成し始めたフィルムを、この溶媒や低分子を他の揮発し易い溶媒を用いて除去する事で微多孔膜が形成される湿式方法;などが選ばれる。この中でも、抵抗を下げる目的で、大きな空隙を得やすい点で、乾式方法が好ましい。
【0136】
本発明に用いる有機セパレータ層は、強度や硬度、熱収縮率を制御する目的で、任意のフィラーや繊維化合物を含んでも良い。また、前記多孔膜を積層する際に、密着性を向上させたり、電解液との表面張力を下げて液の含浸性を向上させる目的で、あらかじめ低分子化合物や高分子化合物で被覆処理したり、紫外線などの電磁線処理、コロナ放電・プラズマガスなどのプラズマ処理を行っても良い。特に、電解液の含浸性が高く前記多孔膜との密着性を得やすい点から、カルボン酸基、水酸基及びスルホン酸基などの極性基を含有する高分子化合物で被覆処理するのが好ましい。
【0137】
本発明のセパレータは、有機セパレータ層の片面のみに多孔膜を有していてもよく、有機セパレータ層の両面に多孔膜を有していてもよい。
【0138】
〔二次電池〕
本発明の二次電池は、正極、負極、セパレータ及び電解液を含む二次電池であって、前記正極、負極及びセパレータの少なくともいずれかが、前記本発明の多孔膜を有する。
【0139】
前記二次電池としては、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素二次電池等挙げられるが、安全性向上が最も求められており多孔膜導入効果が最も高いこと、加えてレート特性向上が課題として挙げられていることからリチウムイオン二次電池が好ましい。以下、リチウムイオン二次電池に使用する場合について説明する。
【0140】
〔電解液〕
リチウムイオン二次電池用の電解液としては、有機溶媒に支持電解質を溶解した有機電解液が用いられる。支持電解質としては、リチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、特に制限はないが、LiPF
6、LiAsF
6、LiBF
4、LiSbF
6、LiAlCl
4、LiClO
4、CF
3SO
3Li、C
4F
9SO
3Li、CF
3COOLi、(CF
3CO)
2NLi、(CF
3SO
2)
2NLi、(C
2F
5SO
2)NLiなどが挙げられる。中でも、溶媒に溶けやすく高い解離度を示すLiPF
6、LiClO
4、CF
3SO
3Liが好ましい。これらは、二種以上を併用してもよい。解離度の高い支持電解質を用いるほどリチウムイオン伝導度が高くなるので、支持電解質の種類によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
【0141】
リチウムイオン二次電池用の電解液に使用する有機溶媒としては、支持電解質を溶解できるものであれば特に限定されないが、ジメチルカーボネート(DMC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、メチルエチルカーボネート(MEC)などのカーボネート類;γ−ブチロラクトン、ギ酸メチルなどのエステル類;1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフランなどのエーテル類;スルホラン、ジメチルスルホキシドなどの含硫黄化合物類;が好適に用いられる。またこれらの溶媒の混合液を用いてもよい。中でも、誘電率が高く、安定な電位領域が広いのでカーボネート類が好ましい。用いる溶媒の粘度が低いほどリチウムイオン伝導度が高くなるので、溶媒の種類によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
【0142】
リチウムイオン二次電池用の電解液中における支持電解質の濃度は、通常1〜30重量%、好ましくは5重量%〜20重量%である。また、支持電解質の種類に応じて、通常0.5〜2.5モル/Lの濃度で用いられる。支持電解質の濃度が低すぎても高すぎてもイオン導電度は低下する傾向にある。用いる電解液の濃度が低いほど重合体粒子の膨潤度が大きくなるので、電解液の濃度によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
【0143】
〔セパレータ及び電極〕
セパレータとしては、多孔膜を有する本発明のセパレータを用いることができるが、その他のセパレータを用いることもできる。例えば、有機セパレータ層として上に例示したものをそのままセパレータとして用いることができる。
正極及び負極としては、多孔膜を有する本発明の二次電池用電極を用いることができるが、その他の電極を用いることもできる。例えば、上で述べた、集電体及びその上に付着する電極合剤層からなる積層物を、そのまま電極として用いることができる。
ただし、本発明の二次電池においては、正極、負極及びセパレータの少なくともいずれかが、多孔膜を有する。
【0144】
リチウムイオン二次電池の具体的な製造方法としては、正極と負極とをセパレータを介して重ね合わせ、これを電池形状に応じて巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口する方法が挙げられる。本発明の多孔膜は正極又は負極、セパレータのいずれかに形成されてなる。また独立で多孔膜のみでの積層も可能である。必要に応じてエキスパンドメタルや、ヒューズ、PTC素子などの過電流防止素子、リード板などを入れ、電池内部の圧力上昇、過充放電の防止をする事もできる。電池の形状は、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型など何れであってもよい。
【実施例】
【0145】
以下において、本発明を、実施例を参照してさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中の物の量比に関する記載において、「%」及び「部」は、別段断らない限り、重量比を表す。
【0146】
実施例及び比較例中において、諸物性の評価は、以下の通り行った。
【0147】
(非導電性粒子の個数平均粒子径)
レーザー回折散乱粒度分布測定装置(LS230:ベックマン・コールター社製)を用いて測定した。ここで個数平均粒子径とは、粒径−個数積算分布において、積算分布の値が50%となる粒径である。
【0148】
(非導電性粒子の比表面積(SB)の測定)
全自動BET比表面積測定装置(製品名「Macsorb HM model-1208」、(株)マウンテック製)を用い、ガス吸着法により測定した。
(非導電性粒子の比重の測定)
乾式自動密度計(製品名「アキュピック1330−01」、(株)島津製作所製)を用いて測定した。
【0149】
(非導電性粒子の理論比表面積(SD)の算出)
測定された個数平均粒子径の1/2の値(即ち半径)r、及び測定された比重Gから、式 SD=3/rG より求めた。
【0150】
(非導電性粒子の形状係数の算術平均)
電界放出形走査電子顕微鏡(Hitachi S−4700:日立ハイテク社製)により50000倍に非導電性粒子を拡大した写真を撮影し、ついでこの写真に基づいて画像解析ソフトウエア(analySIS Pro:オリンパス社製)を使用して写真画像の解析を行うことにより測定した。この際、画像中のノイズを除去し、非導電性粒子を任意に100個選択し、その形状を観察し、形状係数を下記式(A)にて算出した。
形状係数=((最大径/2)
2×π)/投影面積 式(A)
ここで、最大径とは、非導電性粒子の平面上への投影像を2本の平行線で挟んだとき、その平行線の間隔が最大となる粒子の幅をいう。また、投影面積とは、非導電性粒子の平面上への投影像の面積をいう。
【0151】
(非導電性粒子の金属イオン含有量測定)
誘導結合プラズマ発光分光分析装置ICP−AES(SPS−5100:エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を用いて、非導電性粒子に含まれる金属イオンを定量分析した。
非導電性粒子は550℃の電気炉で灰化したものを硝酸水溶液に溶解させ、アルミナは王水に溶解させたものを測定した。
なお、定量対象の金属イオンは、電池性能への影響が懸念される、Ca、Co、Cr、Cu、Fe、Mg、Ni、Znとし、これらのイオンの合計量を非導電性粒子の金属イオン含有量とした。得られた金属イオン含有量を元に、以下の基準に基づき評価した。
(評価基準)
良:50 ppm未満
不良:50 ppm以上
【0152】
(多孔膜付電極または多孔膜付セパレータの粉落ち性)
多孔膜付電極または多孔膜付セパレータを電極打ち抜き機で直径19mmの円形に打ち抜き、打ち抜き刃に対する多孔膜片付着の有無を目視で観察し、下記の基準により判定した。打ち抜き刃への多孔膜片の付着発生が遅いほど、電極合剤層上または有機セパレータ層上に形成した多孔膜層の粉落ち性が優れることを示す。なお、多孔膜片付着の有無は打ち抜き100回毎に行い、最大1000回まで確認した。
(評価基準)
A:1000回打ち抜いても多孔膜片の付着はみられない
B:501〜999回の打ち抜きで多孔膜片の付着が発生
C:101〜500回の打ち抜きで多孔膜片の付着が発生
D:100回以下の打ち抜きで多孔膜片の付着が発生
【0153】
(多孔膜付電極または多孔膜付セパレータの水分量)
電極またはセパレータを幅10cm×長さ10cmに切り出し試験片とする。試験片をドライルーム(温度25℃,露点−60℃以下)で3時間放置する。その後、電量滴定式水分計を用い、水分気化法(気化温度150℃)により試験片の水分量を測定し、多孔膜の単位体積あたりの水分量を算出し、下記基準で評価した。
(評価基準)
良:1000ppm未満
不良:1000ppm以上
【0154】
(サイクル特性)
10セルのコイン型電池を0.2Cの定電流法によって4.3Vに充電し、3.0Vまで放電する充放電を繰り返し、電気容量を測定する。10セルの平均値を測定値とし、60サイクル終了時の電気容量と5サイクル終了時の電気容量の比(%)で表される充放電容量保持率を求め、下記基準でサイクル特性を評価する。この値が高いほどサイクル特性に優れている。
(評価基準)
A:80%以上
B:70%以上80%未満
C:60%以上70%未満
D:60%未満
【0155】
(多孔膜付セパレータの局所加熱試験)
多孔膜付セパレータを幅2cm×長さ2cmに切り出し試験片とした。この試験片を、幅3cm×長さ3cm×厚み2mmのフッ素ゴム製シートの中央に配置し、試験片の両端をテープで固定した。このサンプルをセパレータを貼り付けた側を上にして、水平な台に固定した。次に、局所加熱試験機(太洋電機社製;本体RX−802AS、こて先RX−80HRT−0.5C)を250℃に設定し、こて先を10mm/secの速度でセパレータに貫通させ、こて先が2mm貫通したところで、10秒間保持し、10mm/secの速度でこて先を抜き取った。セパレータにできた貫通口の径をデジタル顕微鏡(キーエンス社製;デジタルマイクロスコープVHX−500F)で計測した。貫通口の径はこの試験を10回行い、その平均値とし、下記基準で評価した。この値が小さいほど耐熱性に優れている。
(評価基準)
A:0.40μm未満
B:0.40μm以上0.45未満
C:0.45μm以上0.50未満
D:0.50μm以上0.60未満
E:0.60μm以上
【0156】
(多孔膜付セパレータの信頼性試験)
多孔膜付セパレータを直径19mmの円形に打ち抜き、非イオン性界面活性剤(花王社製;エマルゲン210P)の3重量%メタノール溶液中に浸漬して風乾した。この円形のセパレータに電解液を含浸させ、一対の円形のSUS板(直径15.5mm)に挟み、(SUS板)/(円形のセパレータ)/(SUS板)という構成に重ね合わせた。ここで電解液はエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とをEC:DEC=1:2(20℃での容積比)で混合してなる混合溶媒にLiPF
6を1モル/リットルの濃度で溶解させた溶液を用いた。これを2032型コインセルに封入した。コインセルからリード線をとり、熱電対を付けてオーブンの中に入れた。振幅10mV、1kHzの周波数の交流を印加しながら、昇温速度1.6℃/分で200℃まで昇温させ、この間のセル抵抗を測定することで短絡の発生状況を確認した。この試験を10回行ない、下記の評価基準で評価した。
(評価基準)
良:短絡発生なし
不良:短絡発生あり
【0157】
(多孔膜付電極の信頼性試験)
セパレータ(湿式法により製造された単層のポリエチレン製セパレータ、厚さ16μm、実施例1で「有機セパレータ層」として用いられているものと同じ)を直径19mmの円形に打ち抜き、非イオン性界面活性剤(花王社製;エマルゲン210P)の3重量%メタノール溶液中に浸漬して風乾した。一方、測定対象の電極を直径19mmの円形に打ち抜いた。これらに電解液を含浸させ、これらを重ねて、一対の円形のSUS板(直径15.5mm)に挟み、(SUS板)/(円形のセパレータ)/(円形の電極)/(SUS板)という構成に重ね合わせた。円形の電極は、その多孔膜側の面がセパレータ側となるよう配置した。ここで電解液はエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とをEC:DEC=1:2(20℃での容積比)で混合してなる混合溶媒にLiPF
6を1モル/リットルの濃度で溶解させた溶液を用いた。これを2032型コインセルに封入した。コインセルからリード線をとり、熱電対を付けてオーブンの中に入れた。振幅10mV、1kHzの周波数の交流を印加しながら、昇温速度1.6℃/分で200℃まで昇温させ、この間のセル抵抗を測定することで短絡の発生状況を確認した。この試験を10回行ない、下記の評価基準で評価した。
(評価基準)
良:短絡発生なし
不良:短絡発生あり
【0158】
<実施例1>
(1−1.シードポリマー粒子Aの製造)
撹拌機を備えた反応器に、ドデシル硫酸ナトリウムを0.06部、過硫酸アンモニウムを0.23部、及びイオン交換水を100部入れて混合し混合物Aとし、80℃に昇温した。
一方、別の容器中でアクリル酸ブチル93.8部、メタクリル酸2.0部、アクリロニトリル2.0部、アリルグリシジルエーテル1.0部、N−メチロールアクリルアミド1.2部、ドデシル硫酸ナトリウム0.1部、及びイオン交換水100部を混合して、単量体混合物1の分散体を調製した。
この単量体混合物1の分散体を、4時間かけて、上で得た混合物A中に、連続的に添加して重合させた。単量体混合物1の分散体の連続的な添加中の反応系の温度は80℃に維持し、反応を行った。連続的な添加の終了後、さらに90℃で3時間反応を継続させた。
これにより、平均粒子径370nmのシードポリマー粒子Aの水分散体を得た。
【0159】
(1−2.非導電性粒子Aの製造)
次に、撹拌機を備えた反応器に、工程(1−1)で得たシードポリマー粒子Aの水分散体を固形分基準(即ちシードポリマー粒子A重量基準)で20部、単量体としてエチレングリコールジメタクリレート(共栄社化学株式会社、製品名:ライトエステルEG)を100部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを1.0部、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日油社製、商品名:パーブチルO)を4.0部、及びイオン交換水を200部入れ、35℃で12時間撹拌することで、シードポリマー粒子Aに単量体及び重合開始剤を完全に吸収させた。その後、これを90℃で5時間重合させた。その後、スチームを導入して未反応の単量体および開始剤分解生成物を除去した。
これにより、平均粒子径670nmの非導電性粒子Aの水分散体を得た。
得られた非導電性粒子について、個数平均粒子径、比表面積、形状係数の算術平均、及び金属イオン含有量を測定した。結果を表1に示す。
【0160】
(1−3.多孔膜用バインダーの製造)
撹拌機を備えた反応器に、ドデシル硫酸ナトリウムを0.06部、過硫酸アンモニウムを0.23部、及びイオン交換水を100部入れて混合し混合物Aとし、80℃に昇温した。
一方、別の容器中でアクリル酸ブチル83.8部、メタクリル酸2.0部、アクリロニトリル12.0部、アリルグリシジルエーテル1.0部、N−メチロールアクリルアミド1.2部、ドデシル硫酸ナトリウム0.1部、及びイオン交換水100部を混合して、単量体混合物1の分散体を調製した。
この単量体混合物1の分散体を、4時間かけて、上で得た混合物A中に、連続的に添加して重合させた。単量体混合物1の分散体の連続的な添加中の反応系の温度は80℃に維持し、反応を行った。連続的な添加の終了後、さらに90℃で3時間反応を継続させた。これにより、バインダーの水分散体を得た。
得られたバインダー水分散体を25℃に冷却後、これにアンモニア水を添加してpHを7に調整し、その後スチームを導入して未反応の単量体を除去した。その後、イオン交換水で固形分濃度調整を更に行いながら、200メッシュ(目開 約77μm)のステンレス製金網でろ過を行い、平均粒子径370nm、固形分濃度40%の多孔膜用バインダーの水分散液を得た。
【0161】
(1−4.多孔膜用スラリーの製造)
工程(1−2)で得た非導電性粒子Aの水分散体、工程(1−3)で得た多孔膜用バインダーの水分散液、カルボキシメチルセルロース(ダイセル化学社製、商品名:ダイセル1220)および湿潤剤(サンノプコ株式会社製、商品名:SNウエット980)を、固形分重量比が82:12:5:1となるように水中で混合して、固形分濃度20%の多孔膜用スラリーを得た。
【0162】
(1−5.多孔膜付セパレータの製造)
湿式法により製造された単層のポリエチレン製セパレータ(厚さ16μm)を、有機セパレータ層として用意した。この有機セパレータ層の一方の面に、工程(1−4)で得た多孔膜用スラリーを、乾燥後の厚みが5μmとなるように塗布してスラリー層を得、スラリー層を50℃で10分間乾燥し、多孔膜を形成した。続いて、有機セパレータ層のもう一方の面にも、同様に多孔膜を形成し、両面に多孔膜を有する、多孔膜付セパレータを得た。
【0163】
(1−6.正極の製造)
正極活物質としてのLiCoO
2 95部に、バインダーとしてのPVDF(ポリフッ化ビニリデン、呉羽化学社製、商品名:KF−1100)を固形分換算量で3部となるように加え、さらに、アセチレンブラック2部、及びN−メチルピロリドン20部を加えて、これらをプラネタリーミキサーで混合して、スラリー状の正極用電極組成物を得た。この正極組成物を厚さ18μmのアルミニウム箔の片面に塗布し、120℃で3時間乾燥した後、ロールプレスして全厚みが100μmの、正極合剤層を有する正極を得た。
【0164】
(1−7.負極の製造)
負極活物質としての粒径20μm、比表面積4.2m
2/gのグラファイト98部と、バインダーとしてのSBR(スチレン−ブタジエンゴム、ガラス転移温度:−10℃)の固形分換算量1部とを混合し、この混合物にさらにカルボキシメチルセルロースを1.0部加えて、これらをプラネタリーミキサーで混合して、スラリー状の負極用電極組成物を調製した。この負極用組成物を厚さ18μmの銅箔の片面に塗布し、120℃で3時間乾燥した後、ロールプレスして全厚みが100μmの、負極合剤層を有する負極を得た。
【0165】
(1−8.多孔膜付セパレータを有する二次電池の製造)
工程(1−6)で得られた正極を直径13mmの円形に切り抜いて、円形の正極を得た。工程(1−7)で得られた負極を直径14mmの円形に切り抜いて、円形の負極を得た。また、工程(1−5)で得た多孔膜付セパレータを直径18mmの円形に切り抜いて、円形の多孔膜付セパレータを得た。
ポリプロピレン製パッキンを設けたステンレス鋼製のコイン型外装容器の内底面上に円形の正極を載置し、その上に円形の多孔膜付セパレータを載置し、さらにその上に円形の負極を載置し、これらを容器内に収納した。円形の正極は、そのアルミニウム箔側の面が外装容器の底面側に向き、正極合剤層側の面が上側に向くよう載置した。円形の負極は、その負極合剤層側の面が円形の多孔膜付セパレータ側に向き、銅箔側の面が上側に向くよう載置した。
容器中に電解液を空気が残らないように注入し、ポリプロピレン製パッキンを介して外装容器に厚さ0.2mmのステンレス鋼のキャップをかぶせて固定し、電池缶を封止して、直径20mm、厚さ約3.2mmのリチウムイオンニ次電池(コインセルCR2032)を製造した。電解液としてはエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とをEC:DEC=1:2(20℃での容積比)で混合してなる混合溶媒にLiPF
6を1モル/リットルの濃度で溶解させた溶液を用いた。
【0166】
(1−9.評価)
得られた多孔膜付セパレータについて、水分量、粉落ち性、信頼性(耐高温短絡性)を評価した。また、得られた二次電池について、サイクル特性を評価した。結果を表1に示す。
【0167】
<実施例2>
(2−1.シードポリマー粒子Bの製造)
撹拌機を備えた反応器に、ドデシル硫酸ナトリウムを0.06部、過硫酸アンモニウムを0.23部、及びイオン交換水を100部入れて混合し混合物Bとし、80℃に昇温した。
一方、別の容器中でアクリル酸ブチル93.8部、メタクリル酸2.0部、アクリロニトリル2.0部、アリルグリシジルエーテル1.0部、N−メチロールアクリルアミド1.2部、ドデシル硫酸ナトリウム0.1部、t−ドデシルメルカプタン2.0部及びイオン交換水100部を混合して、単量体混合物2の分散体を調製した。
この単量体混合物2の分散体を、4時間かけて、上で得た混合物B中に、連続的に添加して重合させた。単量体混合物2の分散体の連続的な添加中の反応系の温度は80℃に維持し、反応を行った。連続的な添加の終了後、さらに90℃で3時間反応を継続させた。
これにより、平均粒子径370nmのシードポリマー粒子Bの水分散体を得た。
【0168】
(2−2.非導電性粒子Bの製造)
シードポリマー粒子Aに代えて、上記(2−1)で得たシードポリマー粒子Bを用いた以外は、実施例1の(1−2)と同様にして、非導電性粒子Bを得た。
【0169】
(2−3.二次電池等の製造及び評価)
工程(1−4)の多孔膜用スラリーの製造において、工程(1−2)で得た非導電性粒子Aの水分散体に代えて、上記工程(2−2)で得た非導電性粒子Bの水分散体を用いた他は、実施例1の工程(1−3)〜(1−9)と同様に操作し、多孔膜付セパレータ、及び二次電池を製造した。得られた二次電池及びその他の材料(非導電性粒子、多孔膜付きセパレータ等、二次電池の製造の過程で得られた材料)について、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0170】
<実施例3>
(3−1.非導電性粒子Cの製造)
撹拌機を備えた反応器に、実施例1の工程(1−1)で得たシードポリマー粒子Aの水分散体を固形分基準(即ちシードポリマー粒子A重量基準)で20部、単量体としてエチレングリコールジメタクリレート(共栄社化学株式会社、製品名:ライトエステルEG)を100部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを1.0部、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日油社製、商品名:パーブチルO)を4.0部、シクロヘキサノールを50部、及びイオン交換水を200部入れ、35℃で12時間撹拌することで、シードポリマー粒子Aに単量体及び重合開始剤を完全に吸収させた。その後、これを90℃で5時間重合させた。その後、スチームを導入して非反応性溶剤、未反応の単量体および開始剤分解生成物を除去した。
これにより、平均粒子径665nmの非導電性粒子Cの水分散体を得た。
【0171】
(3−2.二次電池等の製造及び評価)
工程(1−4)の多孔膜用スラリーの製造において、工程(1−2)で得た非導電性粒子Aの水分散体に代えて、上記工程(3−1)で得た非導電性粒子Cの水分散体を用いた他は、実施例1の工程(1−3)〜(1−9)と同様に操作し、多孔膜付セパレータ、及び二次電池を製造した。得られた二次電池及びその他の材料について、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0172】
<実施例4>
(4−1.非導電性粒子Dの製造)
撹拌機を備えた反応器に、実施例1の工程(1−1)で得たシードポリマー粒子Aの水分散体を固形分基準(即ちシードポリマー粒子A重量基準)で20部、単量体としてエチレングリコールジメタクリレート(共栄社化学株式会社、製品名:ライトエステルEG)を86部、単量体としてスチレンを14部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを1.0部、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日油社製、商品名:パーブチルO)を4.0部、及びイオン交換水を200部入れ、35℃で12時間撹拌することで、シードポリマー粒子Aに単量体及び重合開始剤を完全に吸収させた。その後、これを90℃で5時間重合させた。その後、スチームを導入して未反応の単量体および開始剤分解生成物を除去した。
これにより、平均粒子径675nmの非導電性粒子Dの水分散体を得た。
【0173】
(4−2.二次電池等の製造及び評価)
工程(1−4)の多孔膜用スラリーの製造において、工程(1−2)で得た非導電性粒子Aの水分散体に代えて、上記工程(4−1)で得た非導電性粒子Dの水分散体を用いた他は、実施例1の工程(1−3)〜(1−9)と同様に操作し、多孔膜付セパレータ、及び二次電池を製造した。得られた二次電池及びその他の材料について、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0174】
<実施例5>
(5−1.非導電性粒子Eの製造)
撹拌機を備えた反応器に、実施例1の工程(1−1)で得たシードポリマー粒子Aの水分散体を固形分基準(即ちシードポリマー粒子A重量基準)で3部、単量体としてエチレングリコールジメタクリレート(共栄社化学株式会社、製品名:ライトエステルEG)を100部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを1.0部、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日油社製、商品名:パーブチルO)を4.0部、及びイオン交換水を200部入れ、35℃で12時間撹拌することで、シードポリマー粒子Aに単量体及び重合開始剤を完全に吸収させた。その後、これを90℃で5時間重合させた。その後、スチームを導入して未反応の単量体および開始剤分解生成物を除去した。
これにより、平均粒子径670nmの非導電性粒子Eの水分散体を得た。
【0175】
(5−2.二次電池等の製造及び評価)
工程(1−4)の多孔膜用スラリーの製造において、工程(1−2)で得た非導電性粒子Aの水分散体に代えて、上記工程(5−1)で得た非導電性粒子Eの水分散体を用いた他は、実施例1の工程(1−3)〜(1−9)と同様に操作し、多孔膜付セパレータ、及び二次電池を製造した。得られた二次電池及びその他の材料について、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0176】
<実施例6>
(6−1.非導電性粒子Fの製造)
撹拌機を備えた反応器に、実施例1の工程(1−1)で得たシードポリマー粒子Aの水分散体を固形分基準(即ちシードポリマー粒子A重量基準)で20部、単量体としてエチレングリコールジメタクリレート(共栄社化学株式会社、製品名:ライトエステルEG)を100部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを1.0部、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日油社製、商品名:パーブチルO)を4.0部、トルエンを50部、及びイオン交換水を200部入れ、35℃で12時間撹拌することで、シードポリマー粒子Aに単量体及び重合開始剤を完全に吸収させた。その後、これを90℃で5時間重合させた。その後、スチームを導入して非反応性溶剤、未反応の単量体および開始剤分解生成物を除去した。
これにより、平均粒子径677nmの非導電性粒子Fの水分散体を得た。
【0177】
(6−2.二次電池等の製造及び評価)
工程(1−4)の多孔膜用スラリーの製造において、工程(1−2)で得た非導電性粒子Aの水分散体に代えて、上記工程(6−1)で得た非導電性粒子Fの水分散体を用いた他は、実施例1の工程(1−3)〜(1−9)と同様に操作し、多孔膜付セパレータ、及び二次電池を製造した。得られた二次電池及びその他の材料について、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0178】
<実施例7>
(7−1.非導電性粒子Gの製造)
撹拌機を備えた反応器に、実施例1の工程(1−1)で得たシードポリマー粒子Aの水分散体を固形分基準(即ちシードポリマー粒子A重量基準)で20部、単量体としてエチレングリコールジメタクリレート(共栄社化学株式会社、製品名:ライトエステルEG)を100部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを1.0部、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日油社製、商品名:パーブチルO)を4.0部、トルエンを100部、及びイオン交換水を200部入れ、35℃で12時間撹拌することで、シードポリマー粒子Aに単量体及び重合開始剤を完全に吸収させた。その後、これを90℃で5時間重合させた。その後、スチームを導入して非反応性溶剤、未反応の単量体および開始剤分解生成物を除去した。
これにより、平均粒子径680nmの非導電性粒子Gの水分散体を得た。
【0179】
(7−2.二次電池等の製造及び評価)
工程(1−4)の多孔膜用スラリーの製造において、工程(1−2)で得た非導電性粒子Aの水分散体に代えて、上記工程(7−1)で得た非導電性粒子Gの水分散体を用いた他は、実施例1の工程(1−3)〜(1−9)と同様に操作し、多孔膜付セパレータ、及び二次電池を製造した。得られた二次電池及びその他の材料について、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0180】
<実施例8>
(8−1.非導電性粒子Hの製造)
撹拌機を備えた反応器に、実施例1の工程(1−1)で得たシードポリマー粒子Aの水分散体を固形分基準(即ちシードポリマー粒子A重量基準)で20部、単量体としてエチレングリコールジメタクリレート(共栄社化学株式会社、製品名:ライトエステルEG)を100部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを1.0部、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日油社製、商品名:パーブチルO)を4.0部、シクロヘキサノールを100部、及びイオン交換水を200部入れ、35℃で12時間撹拌することで、シードポリマー粒子Aに単量体及び重合開始剤を完全に吸収させた。その後、これを90℃で5時間重合させた。その後、スチームを導入して非反応性溶剤、未反応の単量体および開始剤分解生成物を除去した。
これにより、平均粒子径655nmの非導電性粒子Hの水分散体を得た。
【0181】
(8−2.二次電池等の製造及び評価)
工程(1−4)の多孔膜用スラリーの製造において、工程(1−2)で得た非導電性粒子Aの水分散体に代えて、上記工程(8−1)で得た非導電性粒子Hの水分散体を用いた他は、実施例1の工程(1−3)〜(1−9)と同様に操作し、多孔膜付セパレータ、及び二次電池を製造した。得られた二次電池及びその他の材料について、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0182】
<実施例9>
(9−1.非導電性粒子Iの製造)
撹拌機を備えた反応器に、実施例1の工程(1−1)で得たシードポリマー粒子Aの水分散体を固形分基準(即ちシードポリマー粒子A重量基準)で20部、単量体としてエチレングリコールジメタクリレート(共栄社化学株式会社、製品名:ライトエステルEG)を60部、単量体としてスチレンを40部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを1.0部、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日油社製、商品名:パーブチルO)を4.0部、及びイオン交換水を200部入れ、35℃で12時間撹拌することで、シードポリマー粒子Aに単量体及び重合開始剤を完全に吸収させた。その後、これを90℃で5時間重合させた。その後、スチームを導入して、未反応の単量体および開始剤分解生成物を除去した。
これにより、平均粒子径666nmの非導電性粒子Iの水分散体を得た。
【0183】
(9−2.二次電池等の製造及び評価)
工程(1−4)の多孔膜用スラリーの製造において、工程(1−2)で得た非導電性粒子Aの水分散体に代えて、上記工程(9−1)で得た非導電性粒子Iの水分散体を用いた他は、実施例1の工程(1−3)〜(1−9)と同様に操作し、多孔膜付セパレータ、及び二次電池を製造した。得られた二次電池及びその他の材料について、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0184】
<実施例10>
(10−1.非導電性粒子Jの製造)
撹拌機を備えた反応器に、実施例1の工程(1−1)で得たシードポリマー粒子Aの水分散体を固形分基準(即ちシードポリマー粒子A重量基準)で20部、単量体としてトリメチロールプロパントリアクリレート(大阪有機化学工業株式会社、製品名:ビスコート#295)を100部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを1.0部、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日油社製、商品名:パーブチルO)を4.0部、及びイオン交換水を200部入れ、35℃で12時間撹拌することで、シードポリマー粒子Aに単量体及び重合開始剤を完全に吸収させた。その後、これを90℃で5時間重合させた。その後、スチームを導入して、未反応の単量体および開始剤分解生成物を除去した。
これにより、平均粒子径672nmの非導電性粒子Jの水分散体を得た。
【0185】
(10−2.二次電池等の製造及び評価)
工程(1−4)の多孔膜用スラリーの製造において、工程(1−2)で得た非導電性粒子Aの水分散体に代えて、上記工程(10−1)で得た非導電性粒子Jの水分散体を用いた他は、実施例1の工程(1−3)〜(1−9)と同様に操作し、多孔膜付セパレータ、及び二次電池を製造した。得られた二次電池及びその他の材料について、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0186】
<実施例11>
(11−1.非導電性粒子Kの製造)
撹拌機を備えた反応器に、実施例1の工程(1−1)で得たシードポリマー粒子Aの水分散体を固形分基準(即ちシードポリマー粒子A重量基準)で20部、単量体としてネオペンチルグリコールジメタクリレート(日立化成工業株式会社、製品名:FA−125M)を100部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを1.0部、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日油社製、商品名:パーブチルO)を4.0部、及びイオン交換水を200部入れ、35℃で12時間撹拌することで、シードポリマー粒子Aに単量体及び重合開始剤を完全に吸収させた。その後、これを90℃で5時間重合させた。その後、スチームを導入して、未反応の単量体および開始剤分解生成物を除去した。
これにより、平均粒子径670nmの非導電性粒子Kの水分散体を得た。
【0187】
(11−2.二次電池等の製造及び評価)
工程(1−4)の多孔膜用スラリーの製造において、工程(1−2)で得た非導電性粒子Aの水分散体に代えて、上記工程(11−1)で得た非導電性粒子Kの水分散体を用いた他は、実施例1の工程(1−3)〜(1−9)と同様に操作し、多孔膜付セパレータ、及び二次電池を製造した。得られた二次電池及びその他の材料について、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0188】
<実施例12>
多孔膜用バインダーとして、工程(1−3)で得たものに代えて、SBR水分散体(日本ゼオン社製、製品名:BM−400B)を用いた他は、実施例1の(1−1)〜(1−2)及び(1−4)〜(1−9)と同様に操作し、非導電性粒子、多孔膜付セパレータ、及び二次電池を製造した。得られた二次電池及びその他の材料について、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0189】
<実施例13>
多孔膜用バインダーとして、工程(1−3)で得たものに代えて、PVDF(ポリフッ化ビニリデン、呉羽化学社製、商品名:KF−1100)を用いた他は、実施例1の(1−1)〜(1−2)及び(1−4)〜(1−9)と同様に操作し、非導電性粒子、多孔膜付セパレータ、及び二次電池を製造した。得られた二次電池及びその他の材料について、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0190】
<実施例14>
(14−1.多孔膜付正極の製造)
実施例1の工程(1−6)で得た正極の正極合剤層側の面に、実施例1の工程(1−4)で得た多孔膜用スラリーを、正極合剤層が完全に覆われ、乾燥後の多孔膜厚みが5μmとなるように塗布してスラリー層を得た。スラリー層を50℃で10分間乾燥し、多孔膜を形成し、多孔膜付正極を得た。得られた多孔膜付正極は、(多孔膜)/(正極合剤層)/(アルミ箔)の層構成を有していた。
【0191】
(14−2.二次電池等の製造及び評価)
下記の点を変更した他は、実施例1の工程(1−8)と同様に操作し、二次電池を製造した。
・工程(1−8)の電池の製造において、多孔膜付セパレータに代えて、有機セパレータ層(湿式法により製造された単層のポリエチレン製セパレータ、厚さ16μm、実施例1の工程(1−5)で有機セパレータ層として用いられているものと同じ)をそのままセパレータとして用いた。
・工程(1−8)の電池の製造において、正極に代えて、上記工程(14−1)で得た多孔膜付正極を用いた。円形の多孔膜付正極を外装容器内に載置するにあたっては、その多孔膜側の面が円形のセパレータ側に向き、アルミ箔側の面が上側に向くよう載置した。
得られた二次電池及びその他の材料について、実施例1と同様に評価した。但し、セパレータの信頼性試験は行わず、代わりに多孔膜付電極の信頼性試験を行った。結果を表2に示す。
【0192】
<実施例15>
(15−1.非導電性粒子AのNMP分散体の製造)
実施例1の工程(1−2)で得た非導電性粒子Aの水分散体100部(固形分濃度は20%)にN-メチル-2-ピロリドン(NMP)80部を添加し十分に混合した後、90℃減圧環境で系内の水を完全に除去して、非導電性粒子AのNMP分散体(固形分濃度は20%)を得た。
【0193】
(15−2.多孔膜用バインダーのNMP分散体の製造)
実施例1の工程(1−3)で得た多孔膜用バインダーの水分散体100部(固形分は40%)にNMP360部を添加し十分に混合した後、90℃減圧環境で系内の水を完全に除去して、多孔膜用バインダーのNMP分散体(固形分は10%)を得た。
【0194】
(15−3.多孔膜用スラリーの製造)
工程(15−1)で得た非導電性粒子AのNMP分散体および工程(15−2)で得た多孔膜用バインダーのNMP分散体を、固形分比が87:13となるよう混合して、固形分濃度18%の多孔膜用スラリーを得た。
【0195】
(15−4.多孔膜付負極の製造)
実施例1の工程(1−7)で得た負極の負極合剤層側の面に、実施例15の工程(15−3)で得た多孔膜用スラリーを、負極合剤層が完全に覆われ、乾燥後の多孔膜厚みが5μmとなるように塗布してスラリー層を得た。そして、スラリー層を80℃で10分間乾燥し、多孔膜層を形成し、多孔膜付負極を得た。得られた多孔膜付負極は、(多孔膜)/(負極合剤層)/(アルミ箔)の層構成を有していた。
【0196】
(15−5.二次電池等の製造及び評価)
下記の点を変更した他は、実施例1の工程(1−8)と同様に操作し、二次電池を製造した。
・工程(1−8)の電池の製造において、多孔膜付セパレータに代えて、有機セパレータ層(湿式法により製造された単層のポリエチレン製セパレータ、厚さ16μm)、実施例1の工程(1−5)で有機セパレータ層として用いられているものと同じ)をそのままセパレータとして用いた。
・工程(1−8)の電池の製造において、負極に代えて、上記工程(15−4)で得た多孔膜付負極を用いた。円形の多孔膜付負極を外装容器内に載置するにあたっては、その多孔膜側の面が円形のセパレータ側に向き、アルミ箔側の面が上側に向くように載置した。
得られた二次電池およびその他の材料について、実施例1と同様に評価した。但し、セパレータの信頼性試験は行わず、代わりに多孔膜付電極の信頼性試験を行った。結果を表3に示す。
【0197】
<比較例1>
(C1−1.シードポリマー粒子Cの製造)
撹拌機を備えた反応器に、ドデシル硫酸ナトリウムを0.06部、過硫酸アンモニウムを0.23部、及びイオン交換水を100部入れて混合し混合物Cとし、80℃に昇温した。一方、別の容器中でアクリル酸ブチル93.8部、メタクリル酸2.0部、アクリロニトリル2.0部、アリルグリシジルエーテル1.0部、N−メチロールアクリルアミド1.2部、ドデシル硫酸ナトリウム0.1部、t−ドデシルメルカプタン10部及びイオン交換水100部を混合して、単量体混合物3の分散体を調製した。この単量体混合物3の分散体を、4時間かけて、上で得た混合物C中に、連続的に添加して重合させた。単量体混合物3の分散体の連続的な添加中の反応系の温度は80℃に維持し、反応を行った。連続的な添加の終了後、さらに90℃で3時間反応を継続させた。これにより、平均粒子径370nmのシードポリマー粒子Cの水分散体を得た。
【0198】
(C1−2.非導電性粒子Lの製造)
シードポリマー粒子Aに代えて、上記(C1−1)で得たシードポリマー粒子Cを用いた以外は、実施例1の(1−2)と同様にして、非導電性粒子Lを得た。
【0199】
(C1−3.二次電池等の製造及び評価)
工程(1−4)の多孔膜用スラリーの製造において、工程(1−2)で得た非導電性粒子Aの水分散体に代えて、上記工程(C1−2)で得た非導電性粒子Lの水分散体を用いた他は、実施例1の工程(1−3)〜(1−9)と同様に操作し、多孔膜付セパレータ、及び二次電池を製造した。得られた二次電池及びその他の材料について、実施例1と同様に評価した。結果を表3に示す。
【0200】
<比較例2>
(C2−1.非導電性粒子Mの製造)
撹拌機を備えた容器に、イオン交換水を500部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを0.4部、アクリル酸を1.0部、エチレングリコールジメタクリレート(共栄社化学株式会社、製品名:ライトエステルEG)を85部、スチレンを15部、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日油社製、商品名:パーブチルO)を5部、シクロヘキサノールを200部添加し、粗い液滴が目視で確認できなくなるまで攪拌した。
これを、インライン型乳化分散機(太平洋機工社製、商品名:キャビトロン)を用いて、15,000rpmの回転数で1分間高速剪断攪拌して、重合性単量体組成物の分散液を得た。
得られた分散液を、撹拌機を備えた反応器に移し、90℃で12時間重合させた。その後、スチームを導入して非反応性溶剤、未反応の単量体および重合開始剤の分解生成物を除去した。
これにより、平均粒子径2700nmの非導電性粒子の水分散体を得た。この水分散体をメディア型分散機(ウィリー・エ・バッコーフェン社製、製品名:ダイノーミル)で処理することにより、非導電性粒子を解砕した。これにより、平均粒子径820nmの非導電性粒子Mの水分散体を得た。
【0201】
(C2−2.二次電池等の製造及び評価)
工程(1−4)の多孔膜用スラリーの製造において、工程(1−2)で得た非導電性粒子Aの水分散体に代えて、上記工程(C2−1)で得た非導電性粒子Mの水分散体を用いた他は、実施例1の工程(1−3)〜(1−9)と同様に操作し、多孔膜付セパレータ、及び二次電池を製造した。得られた二次電池及びその他の材料について、実施例1と同様に評価した。結果を表3に示す。
【0202】
<比較例3>
(C3−1.非導電性粒子Nの製造)
撹拌機を備えた反応器に、実施例1の工程(1−1)で得たシードポリマー粒子Aの水分散体を固形分基準(即ちシードポリマー粒子A重量基準)で20部、単量体としてエチレングリコールジメタクリレート(共栄社化学株式会社、製品名:ライトエステルEG)を50部、単量体としてスチレンを50部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを1.0部、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日油社製、商品名:パーブチルO)を4.0部、及びイオン交換水を200部入れ、35℃で12時間撹拌することで、シードポリマー粒子Aに単量体及び重合開始剤を完全に吸収させた。その後、これを90℃で5時間重合させた。その後、スチームを導入して、未反応の単量体および開始剤分解生成物を除去した。
これにより、平均粒子径666nmの非導電性粒子Nの水分散体を得た。
【0203】
(C3−2.二次電池等の製造及び評価)
工程(1−4)の多孔膜用スラリーの製造において、工程(1−2)で得た非導電性粒子Aの水分散体に代えて、上記工程(C3−1)で得た非導電性粒子Nの水分散体を用いた他は、実施例1の工程(1−3)〜(1−9)と同様に操作し、多孔膜付セパレータ、及び二次電池を製造した。得られた二次電池及びその他の材料について、実施例1と同様に評価した。結果を表3に示す。
【0204】
<比較例4>
(C4−1.非導電性粒子Oの製造)
エチレングリコールジメタクリレート(共栄社化学株式会社、製品名:ライトエステルEG)に代えて、ジビニルベンゼン(新日鐵化学株式会社製、製品名:DVB−960)を用いた以外は、実施例1の(1−2)と同様の操作を行ない、平均粒子径671nmの非導電性粒子Oの水分散体を得た。
【0205】
(C4−2.二次電池等の製造及び評価)
工程(1−4)の多孔膜用スラリーの製造において、工程(1−2)で得た非導電性粒子Aの水分散体に代えて、上記工程(C4−1)で得た非導電性粒子Oの水分散体を用いた他は、実施例1の工程(1−3)〜(1−9)と同様に操作し、多孔膜付セパレータ、及び二次電池を製造した。得られた二次電池及びその他の材料について、実施例1と同様に評価した。結果を表3に示す。
【0206】
<比較例5>
(C5−1.多孔膜用スラリーの製造)
平均粒径600nmのアルミナ、多孔膜用バインダー粒子及びカルボキシメチルセルロース(ダイセル化学社製、商品名:ダイセル1220)を、固形分重量比が94.8:3.8:1.4となるように水中で混合し、プラネタリーミキサーで分散処理することで多孔膜用スラリーを調製した。
【0207】
(C5−2.二次電池等の製造及び評価)
工程(1−5)の多孔膜付きセパレータの製造において、工程(1−4)で得た多孔膜用スラリーに代えて、上記工程(C5−1)で得た多孔膜用スラリーを用いた他は、実施例1の工程(1−5)〜(1−9)と同様に操作し、多孔膜付セパレータ、及び二次電池を製造した。得られた二次電池及びその他の材料について、実施例1と同様に評価した。結果を表3に示す。
【0208】
【表1】
【0209】
【表2】
【0210】
【表3】
【0211】
表中の略語の意味は、それぞれ以下の通りである。
形状係数:非導電性粒子の形状係数
(メタ)アクリル系多官能単量体割合:非導電性粒子の材料の単量体全体に占める(メタ)アクリル系単量体の割合。単位は重量%。
バインダー種:多孔膜用バインダー種類。アクリル:アクリル重合体、SBR:SBR水分散体(日本ゼオン社製、製品名:BM−400B)、PVDF:ポリフッ化ビニリデン。
バインダー含有割合:多孔膜中のバインダー含有割合。単位は重量%
個数平均粒径:非導電性粒子の個数平均粒径。単位はnm。
多孔膜形成対象:多孔膜を形成した対象。セパレータ、正極又は負極。
金属イオン量:非導電性粒子の金属イオン含有量。上に述べた通り評価した結果。
水分量:多孔膜付電極または多孔膜付セパレータの水分量。上に述べた通り評価した結果。
粉落ち:多孔膜付電極または多孔膜付セパレータの粉落ち性の評価結果。
局所加熱試験:多孔膜付セパレータの耐熱性の評価結果。
高温短絡試験:多孔膜付電極または多孔膜付セパレータの信頼性試験の評価結果。
電池サイクル特性:電池のサイクル特性試験の評価結果。
【0212】
表1〜表3の結果から明らかな通り、本発明の要件を満たす実施例1〜15においては、金属イオン量及び水分量について良好な結果が得られ、且つ、粉落ち、局所加熱試験、高温短絡試験及び電池サイクル特性において、バランスのとれた良好な結果が得られた。
これに対し、非導電性粒子として、(SB)/(SD)が所定範囲外である重合体の粒子を用いた場合(比較例1及び2)及び(メタ)アクリル系多官能単量体単位の種類又は割合が所定範囲外である重合体の粒子を用いた場合(比較例3及び4)は、金属イオン量及び水分量について良好な結果が得られたが、粉落ち、局所加熱試験、高温短絡試験、電池サイクル特性の少なくとも一つにおいて不良な結果が得られた。非導電性粒子でないアルミナ粒子を用いた場合(比較例5)は、高温短絡試験について良好な結果が得られたが、金属イオン量、水分量、多孔膜均一性、粉落ち及び電池サイクル特性において、不良な結果が得られた。