(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
微生物の菌体及び/又はその処理物を含有する液体は発泡しやすい。そのため、前記液体を保存している貯槽から充填容器に充填する際に発泡し、容器容積当たりの充填率が低下する問題がある。
本発明は、上記事情に鑑みて成されたものであり、微生物の菌体及び/又はその処理物を含有する液体を容器に効率よく充填できる充填装置及び充填方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する本発明は以下の態様を有する。
[1]保存貯槽に貯留された微生物の菌体及び/又はその処理物を含有する液体を容器に充填する充填装置であって、
前記容器の内部に入り、前記保存貯槽から移送された前記液体を前記容器内に吐出するノズルを備え、前記ノズルの液吐出部が、前記液体の充填途中より充填液中となるようにした充填装置。
[2]保存貯槽に貯留された微生物の菌体及び/又はその処理物を含有する液体を容器に充填する充填装置であって、
前記保存貯槽から移送された前記液体を前記容器内に吐出するノズルと、前記容器内の前記液体の充填状況を検知する検知手段と、前記ノズルから吐出される液体の流量を、前記容器内の前記液体の充填状況に応じて制御する流量制御手段とを備える充填装置。
[3]保存貯槽に貯留された微生物の菌体及び/又はその処理物を含有する液体を容器に充填する充填装置であって、
前記保存貯槽から移送された前記液体を前記容器内に吐出する上下動可能な可動ノズルと、前記容器内の前記液体の充填状況を検知する検知手段と、前記可動ノズルの先端の位置を、前記容器内の前記液体の充填状況に応じて制御するノズル位置制御手段とを備える充填装置。
[4]前記保存貯槽が当該充填装置の上方にあり、重力により前記液体を前記容器に充填するように構成されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の充填装置。
[5]前記微生物の菌体及び/又はその処理物が、ニトリルヒドラターゼ活性を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の充填装置。
[6]保存貯槽に貯留された微生物の菌体及び/又はその処理物を含有する液体を容器に充填する充填方法であって、
前記保存貯槽から移送された前記液体を前記容器内に吐出するノズルと、前記容器内の前記液体の充填状況を検知する検知手段と、前記ノズルから吐出される液体の流量を、前記容器内の前記液体の充填状況に応じて制御する流量制御手段とを備える充填装置の前記ノズルの先端を前記容器内に配置し、前記先端から前記液体を吐出させる充填工程を有し、
前記充填工程は、充填初期の流量及び/又は充填後期の流量を、最大流量よりも小さくすることを含む、前記充填方法。
[7]前記充填工程の充填初期における流量が、最大流量の1/2以下である、請求項6に記載の充填方法。
[8]前記充填工程の充填後期における流量が、最大流量の1/2以下である、請求項6又は7に記載の充填方法。
[9]保存貯槽に貯留された微生物の菌体及び/又はその処理物を含有する液体を容器に充填する充填方法であって、
前記保存貯槽から移送された前記液体を前記容器内に吐出する上下動可能な可動ノズルと、前記容器内の前記液体の充填状況を検知する検知手段と、前記可動ノズルの先端の位置を、前記容器内の前記液体の充填状況に応じて制御するノズル位置制御手段とを備える充填装置の前記可動ノズルの先端を前記容器内に配置し、前記先端から前記液体を吐出させる充填工程を有し、
前記充填工程の充填初期に前記可動ノズルの先端を前記容器の底面近傍に配置し、その後、前記容器内の前記液体の充填状況に応じて前記可動ノズルを上昇させる充填方法。
[10]前記微生物の菌体及び/又はその処理物が、ニトリルヒドラターゼ活性を有する、請求項6〜9のいずれか一項に記載の充填方法。
【0006】
すなわち、本発明は以下に関する。
(1)保存貯槽に貯留された微生物の菌体及びその処理物の少なくとも一方を含有する液体を容器に充填する充填装置であって
、前記保存貯槽から移送された前記液体を前記容器内に吐出するノズル
と、前記容器内の前記液体の充填状況を検知する検知手段と、前記ノズルから吐出される液体の流量を、前記容器内の前記液体の充填状況に応じて制御する流量制御手段とを備え、
前記液体の充填初期の流量及び充填後期の流量の少なくとも一方が、最大流量よりも小さくなるようにした充填装置、
(2)保存貯槽に貯留された微生物の菌体及びその処理物の少なくとも一方を含有する液体を容器に充填する充填装置であって、
前記容器の内部に入り、前記保存貯槽から移送された前記液体を前記容器内に吐出するノズルと、前記容器内の前記液体の充填状況を検知する検知手段と、前記ノズルから吐出される液体の流量を、前記容器内の前記液体の充填状況に応じて制御する流量制御手段とを備え
、前記ノズルの液吐出部が、前記液体の充填途中より充填液中となり、前記液体の充填初期の流量及び充填後期の流量の少なくとも一方が、最大流量よりも小さくなるようにした充填装置、
(3)保存貯槽に貯留された微生物の菌体及びその処理物の少なくとも一方を含有する液体を容器に充填する充填装置であって、前記保存貯槽から移送された前記液体を前記容器内に吐出する上下動可能な可動ノズルと、前記容器内の前記液体の充填状況を検知する検知手段と、
前記ノズルから吐出される液体の流量を、前記容器内の前記液体の充填状況に応じて制御する流量制御手段と、前記可動ノズルの先端の位置を、前記容器内の前記液体の充填状況に応じて制御するノズル位置制御手段とを備え
、前記液体の充填初期の流量及び充填後期の流量の少なくとも一方が、最大流量よりも小さくなるようにした充填装置、
(4)前記充填初期の流量が、最大流量の1/2以下である、(1)〜(3)のいずれか一項に記載の充填装置。
(5)前記充填後期の流量が、最大流量の1/2以下である、(1)〜(4)のいずれか一項に記載の充填装置。
(
6)前記保存貯槽が当該充填装置の上部にあり、重力により前記液体を前記容器に充填するように構成されている、(1)〜(
5)のいずれか一項に記載の充填装置、
(
7)前記微生物の菌体及びその処理物の少なくとも一方が、ニトリルヒドラターゼ活性を有する、(1)〜(
6)のいずれか一項に記載の充填装置、
(
8)保存貯槽に貯留された微生物の菌体及びその処理物の少なくとも一方を含有する液体を容器に充填する充填方法であって、前記保存貯槽から移送された前記液体を前記容器内に吐出するノズルと、前記容器内の前記液体の充填状況を検知する検知手段と、前記ノズルから吐出される液体の流量を、前記容器内の前記液体の充填状況に応じて制御する流量制御手段とを備える充填装置の前記ノズルの先端を前記容器内に配置し、前記先端から前記液体を吐出させる充填工程を有し、前記充填工程は、充填初期の流量及び充填後期の流量の少なくとも一方を、最大流量よりも小さくすることを含む、前記充填方法
、
(9)保存貯槽に貯留された微生物の菌体及びその処理物の少なくとも一方を含有する液体を容器に充填する充填方法であって、前記保存貯槽から移送された前記液体を前記容器内に吐出する上下動可能な可動ノズルと、前記容器内の前記液体の充填状況を検知する検知手段と、
前記ノズルから吐出される液体の流量を、前記容器内の前記液体の充填状況に応じて制御する流量制御手段と、前記可動ノズルの先端の位置を、前記容器内の前記液体の充填状況に応じて制御するノズル位置制御手段とを備える充填装置の前記可動ノズルの先端を前記容器内に配置し、前記先端から前記液体を吐出させる充填工程を有し、
前記充填工程は、充填初期の流量及び充填後期の流量の少なくとも一方を、最大流量よりも小さくすることを含み、前記充填工程の充填初期に前記可動ノズルの先端を前記容器の底面近傍に配置し、その後、前記容器内の前記液体の充填状況に応じて前記可動ノズルを上昇させる充填方法、及び、
(10)前記充填工程の充填初期の流量が、最大流量の1/2以下である、(8)又は(9)に記載の充填方法、
(11)前記充填工程の充填後期の流量が、最大流量の1/2以下である、(8)〜(10)のいずれか一項に記載の充填方法、
(
12)前記微生物の菌体及びその処理物の少なくとも一方が、ニトリルヒドラターゼ活性を有する、(
8)〜(
11)のいずれか一項に記載の充填方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、微生物の菌体及びその処理物の少なくとも一方を含有する液体を容器に効率よく充填できる充填装置及び充填方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の充填装置及び充填方法は、保存貯槽に貯留された微生物の菌体及びその処理物の少なくとも一方を含有する液体を容器に充填する充填装置及び充填方法である。
ここで、本発明に用いられる微生物の菌体は、生菌体でも死滅体でもよい。
菌体の処理物としては、菌体(生菌体又は死滅体)の破砕物、菌体からの抽出物、菌体又は抽出物を担体に固定化した固定化物等が挙げられる。前記抽出物としては、酵素(粗酵素又は精製酵素)が好ましい。
菌体又は抽出物を固定する方法としては、包括法、架橋法、又は担体結合法等が挙げられる。包括法とは、菌体又は酵素を高分子ゲルの微細な格子の中に包み込むか、半透膜性の高分子の皮膜によって被覆する方法である。架橋法とは、酵素を2個又はそれ以上の官能基を持った試薬(多官能性架橋剤)で架橋する方法である。担体結合法とは、水不溶性の担体に酵素を結合させる方法である。
固定化に用いられる担体としては、例えば、ガラスビーズ、シリカゲル、ポリウレタン、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、カラギーナン、アルギン酸、寒天、又はゼラチン等が挙げられる。
【0010】
微生物の菌体及びその処理物の少なくとも一方としては、生体触媒として利用できる酵素活性を有するものが好ましい。前記酵素活性としては、たとえばニトリルヒドラターゼ活性、ニトリラーゼ活性、又はアミダーゼ活性等が挙げられる。これらの中でも、ニトリルヒドラターゼ活性が好ましい。
ニトリルヒドラターゼ活性とは、ニトリル化合物のニトリル基に作用して対応するアミド化合物に変換させる活性を意味する。ニトリルヒドラターゼ活性の測定方法としては、例えば、反応温度10℃で10分間反応させたときの乾燥菌体1mgあたりの反応速度を測定する方法等が挙げられる。
本発明の保存貯槽に貯留された微生物の菌体及びその処理物の少なくとも一方を含有する液体を容器に充填する充填方法は、50〜500U/mgのニトリルヒドラターゼ活性を有する微生物の菌体及びその処理物の少なくとも一方を用いることが好ましい。
ニトリルヒドラターゼ活性を有する微生物の菌体及びその処理物の少なくとも一方としては、ニトリルヒドラターゼを含有する微生物の菌体、前記菌体から抽出されたニトリルヒドラターゼ、前記菌体又はニトリルヒドラターゼを固定化した固定化物等が挙げられる。
【0011】
ニトリルヒドラターゼを含有する微生物としては、ニトリル類をアミド類に変換する触媒活性(ニトリルヒドラターゼ活性)を有する微生物であれば、いずれも用いることができる。例えば、バチルス(Bacillus)属、バクテリジューム(Bacterinium)属、ミクロコンカス(MicrOcOccus)属、ブレビパクテリウム(Brevibacterium)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、ノカルジア(Nocardia)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ミクロバクテリウム(Microbacterium)属、ロドコッカス(Rhodococcus)属、ゴルドナ(Gordona)属、ビブリオ(Vibrio)属、ニトロソモナス(Nitrosomonas)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、アゾトバクター(Attotobacter)属、サンカロマイセス(Saccharomyces)属、エンドマイセス(Endomyces)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ペニシリウム(Penicillium)属、ムコール(Mucor)属、リゾパス(Rhizopus)属、アクロモバクター(Achromobacter)属、シュードノカルディア(Pscudonocardia)属、フザリウム(Fusarium)属、又はアグロバクテリウム(Agrobacterium)属等に属する微生物を挙げることができ、ロドコッカス(Rhodococcus)属が好ましい。
また、前記微生物由来のニトリルヒドラターゼ、ニトリラーゼ、又はアミダーゼ等の目的遺伝子を取得し、常法により、前記遺伝子をそのまま、又は人為的に改良して任意の宿主に前記遺伝子を導入した形質転換体を用いることもできる(Molecular Cloning 2nd Edition,Cold Spring Habor Laboratory Press,1989参照)。このような形質転換体としては、例えば、アクロモパクター(Achromobacter)属細菌のニトリルヒドラターゼで形質転換した大腸菌MT10770(FERM P−14756)(特開平8−266277号公報参照)、シュードノカルディア(Pseudonocardia)属細菌のニトリルヒドラターゼで形質転換した大腸菌MT10822(FERM BP−5785)(特開平9−275978号公報参照)、又はロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)種のニトリルヒドラターゼ(特開平4−211379号公報参照)で形質転換した微生物等を挙げることができる。
前記微生物は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0012】
微生物の菌体及びその処理物の少なくとも一方を含有する液体としては、微生物を液体培地で培養した培養液、培養液から分離し、所望により洗浄された休止菌体懸濁液、又は休止菌体懸濁液を低温下、超音波又は金属製のビーズ等で破砕した菌体破砕液等が挙げられる。
培養条件(液体培地の組成、pH、又は培養温度等)は、培養する微生物に応じた公知の培養条件が採用される。例えばニトリルヒドラターゼ活性を有する微生物の場合、炭素源(グルコース、又はフルクトース等の糖類)、窒素源(硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、若しくは硝酸アンモニウム等の無機窒素源、酵母エキス、ペプトン、若しくは肉エキス等の有機窒素源)及び所望により無機塩類、金属塩、又はビタミン等を添加した液体培地中で、20〜40℃、pH5〜9で培養する。培養は、適宜、振盪培養又は攪拌培養としてもよい。
【0013】
上記のようにして得られた微生物の菌体及びその処理物の少なくとも一方を含有する液体は、通常、保存貯槽に保存され、その後、前記液体を運搬又は貯蔵するための容器に充填される。
保存貯槽は、前記液体を製造後から容器に充填するまでの間保存するもので、工業的には、金属製で、貯留する液体の温度を保存に適した温度(例えば5℃以下)に制御できるものが好適に用いられる。
容器は、液体を充填するのに相応しい容器であれば特に限定されず、これまで、微生物の菌体及びその処理物の少なくとも一方を含有する液体を運搬又は貯蔵するために用いられている容器が利用できる。一般的には、金属製又は樹脂製の、ドラム又はタンク等が用いられる。ドラムとしては通常、内容積が200L程度のものが用いられる。タンクとしては通常、内容積が1〜10m
3程度のものが用いられる。
本発明の充填装置及び充填方法は、この保存貯槽から前記容器への充填の際に用いられる。
【0014】
本発明の充填装置は、容器の内部に入り、保存貯槽から移送された液体を容器内に吐出するノズルを備え、前記ノズルの液吐出部が、前記液体の充填途中より充填液中となるようにしたものである。
前記充填装置は、前記ノズルの液吐出部が、前記液体の充填途中より充填液中となるように制御する、制御装置を備えていることが好ましい。
本発明の充填装置において、保存貯槽から移送された液体を容器内に吐出するノズルが容器内部に入るとは、容器の上蓋から上蓋より内側にノズルの液吐出部が挿入されている事を言う。
また、充填途中よりノズルの液吐出部が充填液中となるようにしたとは、充填初期には充填液がないので不可能だが、充填液が容器内にたまった状態になった時より、ノズルの液吐出部が液中となるように、ノズルを液中に差し込んだ状態となるようにした事をいう。すなわち、ノズルの液吐出部が前記容器内の充填液中に位置することをいう。
このような状態で容器への液体の充填を行うことで、ノズルからの液体の吐出時における空気の巻き込みが抑制される。これにより発泡が抑制され、容器容積当たりの充填効率が向上する。
【0015】
本発明の充填装置は、前記ノズルのほか、容器内の液体の充填状況を検知する検知手段と、ノズルから吐出される液体の流量を、容器内の液体の充填状況に応じて制御する流量制御手段とを備えることが好ましい。
容器内の充填状況としては、充填量(充填された液体の重量)、充填率(容器の内容積に対する充填された液体の容積の割合)、又は充填段階等が挙げられる。
液体の充填状況を検知する検知手段としては、重量測定及び液面センサーにより換算された充填率を用いて充填状況を検知し、信号として制御装置に送る手段が挙げられる。具体的には、重量測定装置、液面センサー、又は流量センサー等が挙げられる。
前記制御装置は、検知手段から送られた信号を処理し、処理した信号を流量制御手段へ送る装置である。前記制御装置により処理された信号は流量制御手段へ送られ、必要に応じて流量制御手段を作動させ、液体の流量を制御する。前記制御装置は、コンピューターにより制御される装置であることが好ましい。
流量制御とは、配管又はノズル等の前記液体の流路に設置した流量制御バルブの開度により、容器内の液体の充填状況に応じて、液体の流量を制御できるようにすることである。流量制御バルブは、保存貯槽と充填用ノズルとを接続している配管や、ノズル内部あるいはノズルの吐出部に設けることができる。
流量制御手段としては、流量制御バルブ、弁、又はポンプの流量制御等が挙げられる。
【0016】
本発明の充填装置において、前記ノズルは、上下動可能な可動ノズルであることが好ましい。この場合、充填装置は、さらに、可動ノズルの先端の位置を、容器内の液体の充填状況に応じて制御するノズル位置制御手段を備えることが好ましい。
上下動可能な可動ノズルとは容器底面に対して直角方向に上下に動く事ができるノズルである。
上述のように前記検知手段により制御装置に送られた信号は、制御装置により処理される。前記ノズルが上下動可能な可動ノズルである場合、前記制御装置により処理された信号はノズル位置制御手段へ送られ、必要に応じてノズル位置制御手段を作動させ、ノズルの先端の位置を制御する。前記制御装置は、コンピューターにより制御される装置であることが好ましい。
ノズル位置制御手段とは容器内の液体の充填状況に応じて、ノズルの先端の位置(底面からノズルの先端までの高さ)を制御できるようになっているものであれば、如何なる方式でもかまわない。
ノズル位置制御手段としては、ノズル昇降装置、又はノズル伸縮装置等が挙げられる。
【0017】
本発明の充填装置においては、保存貯槽が前記充填装置の上部にあり、重力により液体を容器に充填するように構成されていることが好ましい。
保存貯槽が当該充填装置の上部にあり、重力により液体を容器に充填するとは、保存貯槽に貯留された微生物の菌体及びその処理物の少なくとも一方を含有する液体の液面が、常に、当該充填装置の上部、つまり充填装置内に置かれた容器の上蓋よりも高い位置にあり、ポンプを使用せずに重力と流量調節バルブの開度で、保存貯槽中の液体を容器に移送し充填することを言う。
【0018】
本発明の1つの側面の充填装置は、
微生物の菌体及びその処理物の少なくとも一方を含有する液体を貯留する保存貯槽と、
前記液体を運搬又は貯蔵するための容器と、
前記保存貯槽から移送された前記液体を前記容器内に吐出するノズルと、
前記容器内の前記液体の充填状況を検知する検知手段と、
前記ノズルから吐出される液体の流量を、前記容器内の前記液体の充填状況に応じて制御する流量制御手段とを備えることが好ましい。
【0019】
本発明の別の側面の充填装置は、
微生物の菌体及びその処理物の少なくとも一方を含有する液体を貯留する保存貯槽と、
前記液体を運搬又は貯蔵するための容器と、
前記保存貯槽から移送された前記液体を前記容器内に吐出する上下動可能な可動ノズルと、
前記容器内の前記液体の充填状況を検知する検知手段と、
前記可動ノズルの先端の位置を、前記容器内の前記液体の充填状況に応じて制御するノズル位置制御手段とを備えることが好ましい。
【0020】
本発明の充填方法は、前記充填装置を用いる方法であり、前記液体の容器への充填を、前記ノズルの液吐出部が、前記液体の充填途中より充填液中となるように行う方法である。本発明の充填方法は、具体的には、ノズルの先端を容器内に配置し、前記先端から液体を吐出させる充填工程を有する。
本発明の充填方法は、好適には、前述したノズルと、検知手段と、流量制御手段とを備える充填装置を用いて行われる。
【0021】
前記充填工程においては、充填初期の流量及び充填後期の流量の少なくとも一方を、最大流量よりも小さくすることが好ましい。
充填初期とは容器への充填率が12.5%未満の段階を示し、充填後期とは充填率が97.5%以上の段階を示す。充填初期と充填後期との間の段階を充填中期といい、充填中期の流量が最大流量である。
前記流量とは、ノズルから吐出される液体の単位時間あたりの体積であり、流量計、又は重量測定装置等により測定される。
充填初期、つまり容器内に液体が殆どない状態における液体の流量が最大流量であると、吐出線速度が速く、液体と容器の内壁との接触、又は空気の巻き込み等により泡立ちが生じやすい。充填初期の液体の流量を、最大流量よりも小さくすることで、液体の泡立ちを抑制でき、容器容積当たりの充填効率を高めることができる。
また、充填後期の量を、最大流量よりも小さくすることで、充填終了時で充填量の調整がしやすくなり、容器容積当たりの充填効率を高めることができる。
初期、中期、又は後期の充填率の設定値は上記設定値に拘束されることはなく、充填容器の底面積及び高さ、並びに充填される菌液の粘度や泡立ちやすさにより最適化することが好ましい。
【0022】
液体の最大流量(充填中期の流量)は、可動ノズルの先端の弁における液体の吐出線速度が0.2〜3m/秒となるように設定することが好ましく、0.2〜2m/秒となるように設定することがより好ましい。
前記吐出線速度とは、吐出流量をノズル吐出口断面積で除した値であり、流量計、又は重量測定装置等により測定される。
充填初期の流量は、最大流量よりも少なければよいが、充填効率の向上効果に優れる点から、最大流量の1/2以下が好ましい。特には最大流量の1/5以下がより好ましい。
下限は特に限定されないが、充填に要する時間を考慮すると、最大流量の1/100以上が好ましい。
すなわち、充填初期の流量の範囲は、最大流量の1/100以上1/2以下が好ましく、1/100以上1/5以下がより好ましい。
充填後期の流量は、最大流量よりも少なければよいが、泡立ち抑制効果に優れる点から、最大流量の1/2以下が好ましい。特には最大流量の1/5以下がより好ましい。下限は特に限定されないが、充填に要する時間を考慮すると、最大流量の1/100以上が好ましい。
すなわち、充填後期の流量の範囲は、最大流量の1/100以上1/2以下が好ましく、1/100以上1/5以下がより好ましい。
【0023】
本発明の充填方法においては、ノズルとして上下動可能な可動ノズルを備え、さらに前記可動ノズルの先端の位置を、前記容器内の前記液体の充填状況に応じて制御するノズル位置制御手段を備えた充填装置を用い、充填工程の充填初期に、可動ノズルの先端を容器の底面近傍に配置し、その後、容器内の液体の充填状況に応じて、可動ノズルを上昇させることが好ましい。
容器の底面近傍とは、容器高さの、底面から20%の高さを示す。
液体の充填状況に応じて可動ノズルを上昇させるとは、充填液が容器内にたまった状態になった時から、可動ノズルの液吐出部が充填液中となるように、可動ノズルを液中に差し込んだ状態となるようにする事をいう。可動ノズルの液吐出部を充填液中に存在させることで、可動ノズルからの液体の吐出時における空気の巻き込みが抑制される。これにより発泡が抑制され、容器容積当たりの充填効率が向上する。
前記充填液に前記稼働ノズルを差し込んだ際の、充填液の液面から前記吐出部までの長さは、1〜50cmが好ましい。
また、液面の上昇にあわせて可動ノズルの液吐出部を上昇させることで、充填液中に浸漬しているノズルの体積を最小限に抑える事ができ、充填効率の向上へとつながる。
前記充填液中に浸漬しているノズルの体積は、0.00002〜0.005m
3が好ましい。
【0024】
以上説明したとおり、本発明の充填装置及び充填方法によれば、充填時に流量及びノズルの先端の位置の少なくとも一方を、容器内の液体の充填状況に応じて制御することで、充填時の発泡を抑制し、容器容積当たりの充填効率を向上させることができる。
【実施例】
【0025】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明するが、その趣旨の範囲において、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0026】
[実施例1]
(1)実施形態について
図1は、本実施例で用いた充填装置10の構成を示す概略図である。
充填装置10は、
微生物の菌体及びその処理物の少なくとも一方を含有する液体L(菌体懸濁液)を貯留する保存貯槽20に上流側末端が接続した配管1と;
配管1の下流側末端部に設けられた上下動可能な可動ノズル3と;
可動ノズル先端に設けられた弁2と;
可動ノズル3を上下に移動させるノズル昇降装置4と;
容器30の重量を測定する重量測定装置5と;
弁2、ノズル昇降装置4、重量測定装置5に電気的に接続する制御装置6と;
を備える。
重量測定装置5の上に容器30が置かれ、その上方に保存貯槽20が設置されている。
具体的に、弁2としては、ノズル先端に蓋があり、蓋を小開、全開することで流量調節を行うようになっているものを使用した。この弁2と重力により、保存貯槽20内の液体Lを容器30に充填できるようになっている。
可動ノズル3としては、追随式ロングノズル型を使用した。
ノズル昇降装置4としては、油圧式の昇降装置を使用した。
重量測定装置5としては、ロードセル式台秤を用いた。
【0027】
(2)菌体懸濁液の調製方法
ニトリルヒドラターゼ活性を有するロドコンカス・ロドクロス(Rhodococcus rhodochrous)J−1株(FERM BP−1478)を、グルコース2質量%、尿素1質量%、ペプトン0.5質量%、酵母エキス0.3質量%、塩化コパルト0.05質量%を含む培地(20℃におけるpH7.0)により好気的に培養した。培養終了後、培養菌体を遠心分離により回収し、これを50mMリン酸緩衝液(20℃におけるpH7.0)で洗浄した。洗浄した菌体に上記緩衝液を添加し菌体懸濁液(乾燥菌体換算10質量%)を得た。
【0028】
(3)菌体懸濁液の保存貯槽から容器への充填
9m
3容量のステンレス製の保存貯槽20に前記の菌体懸濁液(乾燥菌体換算10質量%)3000Lを添加し、容器30への充填を開始した。充填の際に、充填率が12.5%以下の充填前期及び充填率が97.5%以上の後期には弁2を少開とし0.5L/分で充填し、充填中期には弁2を全開とし20L/分で充填した。
充填時には、重量測定装置5での重量測定値に応じて、制御装置6により、可動ノズル3先端の弁2が菌体懸濁液に常に一定深さで浸漬する様に可動ノズル3の位置を制御した。
その結果、菌体懸濁液を、発泡を抑制しつつ容器30内に充填できた。
このように、菌体懸濁液を充填する際の発泡が抑制され、また、充填された菌体懸濁液中に浸漬している可動ノズル3の体積を最小限に抑える事ができたので、充填効率が向上した。