特許第6052671号(P6052671)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6052671-樹脂組成物および成形体 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6052671
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】樹脂組成物および成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 81/06 20060101AFI20161219BHJP
   C08L 67/03 20060101ALI20161219BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20161219BHJP
   C08K 3/40 20060101ALI20161219BHJP
   C08L 27/18 20060101ALI20161219BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20161219BHJP
   B29K 81/00 20060101ALN20161219BHJP
【FI】
   C08L81/06
   C08L67/03
   C08K7/14
   C08K3/40
   C08L27/18
   B29C45/00
   B29K81:00
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-28177(P2013-28177)
(22)【出願日】2013年2月15日
(65)【公開番号】特開2013-209622(P2013-209622A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2016年1月15日
(31)【優先権主張番号】特願2012-43602(P2012-43602)
(32)【優先日】2012年2月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100148884
【弁理士】
【氏名又は名称】▲廣▼保 直純
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(72)【発明者】
【氏名】坂 祐一
(72)【発明者】
【氏名】前田 光男
【審査官】 大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−181284(JP,A)
【文献】 特開平05−171044(JP,A)
【文献】 特開2001−131412(JP,A)
【文献】 特開2002−020622(JP,A)
【文献】 特開2003−268252(JP,A)
【文献】 特開2010−275345(JP,A)
【文献】 特開2010−275413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 81/06
B29C 45/00
C08K 3/40
C08K 7/14
C08L 27/18
C08L 67/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ポリスルホンと、液晶ポリエステルと、ガラス繊維と、ガラスフレークと、を含有し、
前記芳香族ポリスルホンと、前記液晶ポリエステルと、前記ガラス繊維と、前記ガラスフレークとの合計を100質量部とするとき、前記芳香族ポリスルホンが55質量部以上85質量部以下、前記液晶ポリエステルが10質量部以上30質量部以下、前記ガラス繊維が0質量部より多く18質量部以下、前記ガラスフレークが3質量部以上35質量部以下含まれ、
前記液晶ポリエステルが、下記式(1)で表される繰返し単位と、下記式(2)で表される繰返し単位と、下記式(3)で表される繰返し単位とを含有し、
全繰返し単位の合計量を100モル%として、2,6−ナフチレン基を含む繰り返し単位の含有率が、40モル%以上75モル%未満である樹脂組成物。
(1)−O−Ar−CO−
(2)−CO−Ar−CO−
(3)−O−Ar−O−
(式中、Arは、フェニレン基、ナフチレン基またはビフェニリレン基を表し;Ar及びArは、それぞれ独立に、フェニレン基、ナフチレン基またはビフェニリレン基を表し;Ar、Ar又はArで表される前記基にある水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。)
【請求項2】
前記液晶ポリエステルが、上記式(1)で表される繰返し単位と、上記式(2)で表される繰返し単位と、上記式(3)で表される繰返し単位との合計量を100モル%として、上記式(1)で表される繰返し単位の含有率が30モル%以上80モル%以下、上記式(2)で表される繰返し単位の含有率が10モル%以上35モル%以下、上記式(3)で表される繰返し単位の含有率が10モル%以上35モル%以下である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記ガラスフレークは、平均粒径が130μm以上200μm以下であり、且つ、平均厚みが0.5μm以上1.0μm以下であるものを用いてなる請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記芳香族ポリスルホンと、前記液晶ポリエステルと、前記ガラス繊維と、前記ガラスフレークとの合計100質量部に対し、ポリテトラフルオロエチレンを0質量部より多く1.5質量部以下含有する請求項1から3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の樹脂組成物を射出成形することで得られる成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族ポリスルホン、液晶ポリエステル、ガラス繊維およびガラスフレークを含む樹脂組成物と、該樹脂組成物を用いて得られる成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気電子部品や自動車部品、雑貨など様々な用途分野において軽薄短小化が進んでおり、形成材料としてプラスチックを含む組成物(以下、樹脂組成物)が好適に用いられている。このような樹脂組成物においては、耐熱性や加工性の向上、中でも薄肉品成形時に重要な因子である溶融時の流動性(以下、単に「流動性」と称する)の向上が望まれている。
【0003】
例えば、芳香族ポリスルホンは、機械的強度や耐熱性に優れる一方で、流動性が低いことが知られている。これに対し特許文献1では、芳香族ポリスルホンの流動性を改良するために特定の半芳香族性液晶ポリエステル樹脂を配合する技術が開示されている。
【0004】
ところで、成形に用いる樹脂組成物が、冷却固化の際に樹脂の流動方向と、流動方向に直交する方向とで収縮量に差を有する場合、得られる成形体には反りが発生するおそれがある。反り量は、特に製品が薄肉であるほど大きくなる傾向があり、反り低減のための対策として様々な方法が検討されている。例えば、材料面から反りを抑制する方法として、ガラスフレークを充填材として使用する方法が検討されており、特許文献2には、ポリカーボネートを含む樹脂組成物においてガラスフレークを加えることで成形体の反りを抑制する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−181504号公報
【特許文献2】特開2010−275413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1にも用いられている液晶ポリエステルは、冷却固化の際に樹脂の流動方向と、流動方向に直交する方向とで収縮量に差を有することが知られている。そのため、上記特許文献1のような樹脂組成物を用いて、例えば板状の成形体を作成する際、液晶ポリエステルの性質に起因して、冷却固化の際に樹脂の流動方向と直交方向の熱収縮量の差により反りが発生するおそれがある。特許文献1の樹脂組成物は、流動性が改良されているため薄肉の成形体を成形しやすいが、上述の反りは、肉厚が薄く微細な形状を有する成形体で発生しやすいため、高品質な薄肉の成形体が得られにくい。
【0007】
一方、特許文献2には、記載された樹脂組成物を用いて得られる成形体の強度が優れること、および成形体の反りが抑制されることが開示されているが、薄肉の成形体を成形する際に重要となる、狭い金型内流路での流動性(以下、「薄肉流動性」と称する)の比較的低い樹脂材料への適用事例しか開示されていない。また、肉厚の薄い製品を製造する上で重要な因子である薄肉流動性に関しては充分に言及されていない。
【0008】
また、特許文献1,2においては、樹脂組成物の耐環境性、例えば耐熱水性の改善については検討されていない。ここで、本明細書において「耐熱水性」とは、樹脂組成物を形成材料として成形した成形体を熱水に接触させたときに、変化なく安定に形状を維持することが可能な性質のことを指す。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、芳香族ポリスルホンと液晶ポリエステルとを含み、薄肉流動性に優れ、且つ反りが抑制されると共に耐熱水性に優れる成形体を得ることが可能な樹脂組成物を提供することを目的とする。また、このような樹脂組成物を形成材料とし、薄肉部の成形不良および反りの発生が抑制され、更に耐熱水性に優れた成形体を提供することをあわせて目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様は、芳香族ポリスルホンと、液晶ポリエステルと、ガラス繊維と、ガラスフレークと、を含有し、前記芳香族ポリスルホンと、前記液晶ポリエステルと、前記ガラス繊維と、前記ガラスフレークとの合計を100質量部とするとき、前記芳香族ポリスルホンが55質量部以上85質量部以下、前記液晶ポリエステルが10質量部以上30質量部以下、前記ガラス繊維が0質量部より多く18質量部以下、前記ガラスフレークが3質量部以上35質量部以下含まれ、前記液晶ポリエステルが、下記式(1)で表される繰返し単位と、下記式(2)で表される繰返し単位と、下記式(3)で表される繰返し単位とを含有し、全繰返し単位の合計量を100モル%として、2,6−ナフチレン基を含む繰り返し単位の含有率が、40モル%以上75モル%未満である樹脂組成物を提供する。
(1)−O−Ar−CO−
(2)−CO−Ar−CO−
(3)−O−Ar−O−
(式中、Arは、フェニレン基、ナフチレン基またはビフェニリレン基を表し;Ar及びArは、それぞれ独立に、フェニレン基、ナフチレン基またはビフェニリレン基を表し;Ar、Ar又はArで表される前記基にある水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。)
【0011】
ここで、本明細書において「全繰返し単位の合計量」とは、液晶ポリエステルを構成する各繰返し単位の質量を各繰返し単位の式量で割ることにより、各繰返し単位の物質量相当量(モル)を求め、それらを合計した値を指す。
【0012】
本発明の一態様においては、前記液晶ポリエステルが、上記式(1)で表される繰返し単位と、上記式(2)で表される繰返し単位と、上記式(3)で表される繰返し単位との合計量を100モル%として、上記式(1)で表される繰返し単位の含有率が30モル%以上80モル%以下、上記式(2)で表される繰返し単位の含有率が10モル%以上35モル%以下、上記式(3)で表される繰返し単位の含有率が10モル%以上35モル%以下であることが望ましい。
【0013】
本発明の一態様においては、前記ガラスフレークは、平均粒径が130μm以上200μm以下であり、且つ、平均厚みが0.5μm以上1.0μm以下であるものを用いてなることが望ましい。
【0014】
本発明の一態様においては、前記芳香族ポリスルホンと、前記液晶ポリエステルと、前記ガラス繊維と、前記ガラスフレークとの合計100質量部に対し、ポリテトラフルオロエチレンを0質量部より多く1.5質量部以下含有することが望ましい。
【0015】
本発明の一態様は、上述の樹脂組成物を射出成形することで得られる成形体を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、薄肉流動性に優れ、且つ反りが抑制されると共に耐熱水性に優れる成形体を得ることが可能な樹脂組成物を提供することができる。また、このような樹脂組成物を形成材料とし、薄肉部の成形不良および反りの発生が抑制され、耐熱水性に優れた成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例における反り量の測定方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本実施形態の樹脂組成物は、芳香族ポリスルホンと、液晶ポリエステルと、ガラス繊維と、ガラスフレークと、を含有し、前記芳香族ポリスルホンと、前記液晶ポリエステルと、前記ガラス繊維と、前記ガラスフレークとの合計を100質量部とするとき、前記芳香族ポリスルホンが55質量部以上85質量部以下、前記液晶ポリエステルが10質量部以上30質量部以下、前記ガラス繊維が0質量部より多く18質量部以下、前記ガラスフレークが3質量部以上35質量部以下含まれ、前記液晶ポリエステルが、下記式(1)で表される繰返し単位と、下記式(2)で表される繰返し単位と、下記式(3)で表される繰返し単位とを含有し、全繰返し単位の合計量を100モル%として、2,6−ナフチレン基を含む繰り返し単位の含有率が、40モル%以上75モル%未満である。
(1)−O−Ar−CO−
(2)−CO−Ar−CO−
(3)−O−Ar−O−
(式中、Arは、フェニレン基、ナフチレン基またはビフェニリレン基を表し;Ar及びArは、それぞれ独立に、フェニレン基、ナフチレン基またはビフェニリレン基を表し;Ar、Ar又はArで表される前記基にある水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。)
【0019】
また、本実施形態の成形体は、上述の樹脂組成物を射出成形することで得られるものである。
以下、順に説明する。
【0020】
(芳香族ポリスルホン)
本実施形態の樹脂組成物には、主として芳香族ポリスルホンが含まれる。本実施形態で使用される芳香族ポリスルホンは、典型的には、2価の芳香族基(芳香族化合物から、その芳香環に結合した水素原子を2個除いてなる残基)とスルホニル基(−SO−)と酸素原子とを含む繰返し単位を有する樹脂である。
【0021】
芳香族ポリスルホンは、耐熱性や耐薬品性の点から、下記式(5)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(5)」ということがある。)を有することが好ましい。さらに、下記式(6)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(6)」ということがある。)や、下記式(7)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(7)」ということがある。)等の他の繰返し単位を1種以上有していてもよい。
【0022】
(5)−Ph−SO−Ph−O−
(Ph及びPhは、それぞれ独立に、フェニレン基を表す。前記フェニレン基にある水素原子は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。)
【0023】
(6)−Ph−R−Ph−O−
(Ph及びPhは、それぞれ独立に、フェニレン基を表す。前記フェニレン基にある水素原子は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。Rは、アルキリデン基、酸素原子又は硫黄原子を表す。)
【0024】
(7)−(Ph−O−
(Phは、フェニレン基を表す。前記フェニレン基にある水素原子は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。nは、1〜3の整数を表す。nが2以上である場合、複数存在するPhは、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【0025】
Ph〜Phのいずれかで表されるフェニレン基は、p−フェニレン基であってもよいし、m−フェニレン基であってもよいし、o−フェニレン基であってもよいが、得られる樹脂の耐熱性、強度が高くなる観点からp−フェニレン基であることが好ましい。
【0026】
前記フェニレン基にある水素原子を置換していてもよいアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−へプチル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基及びn−デシル基等が挙げられ、その炭素数は、1〜10であることが好ましい。
【0027】
前記フェニレン基にある水素原子を置換していてもよいアリール基の例としては、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基等のような単環式芳香族基、1−ナフチル基及び2−ナフチル基等のような縮環式芳香族基が挙げられ、その炭素数は、6〜20であることが好ましい。
【0028】
前記フェニレン基にある水素原子を置換していてもよいハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
【0029】
前記フェニレン基にある水素原子がこれらの基で置換されている場合、フェニレン基が有する置換基の数は、前記フェニレン基毎に、それぞれ独立に、好ましくは1個または2個であり、より好ましくは1個である。
【0030】
Rであるアルキリデン基の例としては、メチレン基、エチリデン基、イソプロピリデン基及び1−ブチリデン基、1−ペンチリデン基等が挙げられ、その炭素数は、1〜5であることが好ましい。
【0031】
なお、本実施形態で使用される芳香族ポリスルホンは、繰返し単位(5)〜(7)を、それぞれ独立に、2種以上有してもよい。中でも、本実施形態で使用される芳香族ポリスルホンは、芳香族ポリスルホンの全繰返し単位の合計に対して、繰返し単位(5)を50モル%以上100モル%以下有することが好ましく、80モル%以上100モル%以下有することがより好ましく、繰返し単位として実質的に繰返し単位(5)のみ(100モル%)を有することがさらに好ましい。
【0032】
本実施形態で使用される芳香族ポリスルホンは、芳香族ポリスルホンを構成する繰返し単位に対応するジハロゲノスルホン化合物とジヒドロキシ化合物とを重縮合させることにより、製造することができる。
【0033】
例えば、繰返し単位(5)を有する樹脂は、ジハロゲノスルホン化合物として下記式(8)で表される化合物(以下、「化合物(8)」ということがある。)を用い、ジヒドロキシ化合物として下記式(9)で表される化合物を用いることにより、製造することができる。
【0034】
(8)X−Ph−SO−Ph−X
(Xは及びXは、それぞれ独立に、ハロゲン原子を表す。Ph及びPhは、前記と同義である。)
【0035】
(9)HO−Ph−SO−Ph−OH
(Ph及びPhは、前記と同義である。)
【0036】
また、繰返し単位(5)と繰返し単位(6)とを有する樹脂は、ジハロゲノスルホン化合物として化合物(8)を用い、ジヒドロキシ化合物として下記式(10)で表される化合物を用いることにより、製造することができる。
【0037】
(10)HO−Ph−R−Ph−OH
(Ph、Ph及びRは、前記と同義である。)
【0038】
また、繰返し単位(5)と繰返し単位(7)とを有する樹脂は、ジハロゲノスルホン化合物として化合物(8)を用い、ジヒドロキシ化合物として下記式(11)で表される化合物を用いることにより、製造することができる。
【0039】
(11)HO−(Ph−OH
(Ph及びnは、前記と同義である。)
【0040】
前記重縮合は、炭酸のアルカリ金属塩を用いて、溶媒中で行うことが好ましい。炭酸のアルカリ金属塩は、正塩である炭酸アルカリ(アルカリ金属の炭酸塩)であってもよいし、酸性塩である重炭酸アルカリ(炭酸水素アルカリ、アルカリ金属の炭酸水素塩)であってもよいし、両者の混合物であってもよく、炭酸アルカリとしては、炭酸ナトリウムや炭酸カリウムが好ましく用いられ、重炭酸アルカリとしては、重炭酸ナトリウムや重炭酸カリウムが好ましく用いられる。
【0041】
重縮合に用いる溶媒としては、ジメチルスルホキシド、1−メチル−2−ピロリドン、スルホラン(1,1−ジオキソチラン)、1,3-ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジイソプロピルスルホン、ジフェニルスルホン等の有機極性溶媒が好ましく用いられる。
【0042】
本実施形態で使用される芳香族ポリスルホンは、還元粘度が、好ましくは0.3dL/g以上であり、より好ましくは0.35dL/g以上0.50dL/g以下である。還元粘度が高いほど、耐熱性や強度・剛性が向上し易いが、あまり高いと、溶融温度や溶融粘度が高くなり易く、流動性が低くなり易い。
【0043】
前記重縮合において、仮に副反応が生じなければ、ジハロゲノスルホン化合物とジヒドロキシ化合物とのモル比が1:1に近いほど、炭酸のアルカリ金属塩の使用量が多いほど、重縮合温度が高いほど、また、重縮合時間が長いほど、得られる芳香族ポリスルホンの重合度が高くなり易く、還元粘度が高くなり易い。
【0044】
しかし実際は、副生する水酸化アルカリ(アルカリ金属の水酸化物)等により、ハロゲノ基のヒドロキシ基への置換反応や解重合等の副反応が生じ、この副反応により、得られる芳香族ポリスルホンの重合度が低下し易く、還元粘度が低下し易い。
【0045】
したがって、この副反応の度合いも考慮して、所望の還元粘度を有する芳香族ポリスルホンが得られるように、ジハロゲノスルホン化合物とジヒドロキシ化合物とのモル比、炭酸のアルカリ金属塩の使用量、重縮合温度及び重縮合時間を調整することが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物で使用される芳香族ポリスルホンは、以上のようなものである。
【0046】
(液晶ポリエステル)
本実施形態の樹脂組成物には液晶ポリエステルが含まれる。これにより、上述した芳香族ポリスルホンの流動性を改良することができる。
【0047】
本実施形態で使用される液晶ポリエステルは、溶融状態で液晶性を示す液晶ポリエステルであり、450℃以下の温度で溶融するものであることが好ましい。なお、液晶ポリエステルは、液晶ポリエステルアミドであってもよいし、液晶ポリエステルエーテルであってもよいし、液晶ポリエステルカーボネートであってもよいし、液晶ポリエステルイミドであってもよい。液晶ポリエステルは、原料モノマーとして芳香族化合物のみを用いてなる全芳香族液晶ポリエステルであることが好ましい。
【0048】
本実施形態で使用される液晶ポリエステルの典型的な例としては、芳香族ヒドロキシカルボン酸と芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物とを重合(重縮合)させてなるもの、複数種の芳香族ヒドロキシカルボン酸を重合させてなるもの、芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物とを重合させてなるもの、及びポリエチレンテレフタレート等のポリエステルと芳香族ヒドロキシカルボン酸とを重合させてなるものが挙げられる。ここで、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンは、それぞれ独立に、その一部又は全部に代えて、重合可能な誘導体が用いられてもよい。
【0049】
芳香族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸のようなカルボキシ基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、カルボキシ基をアルコキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基に変換してなるもの(エステル)、カルボキシ基をハロホルミル基に変換してなるもの(酸ハロゲン化物)、及びカルボキシ基をアシルオキシカルボニル基に変換してなるもの(酸無水物)が挙げられる。芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジオール及び芳香族ヒドロキシアミンのようなヒドロキシ基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、ヒドロキシ基をアシル化してアシルオキシル基に変換してなるもの(アシル化物)が挙げられる。芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンのようなアミノ基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、アミノ基をアシル化してアシルアミノ基に変換してなるもの(アシル化物)が挙げられる。
【0050】
本実施形態で使用される液晶ポリエステルは、溶融時に光学異方性を示すポリエステルであり、下記式(1)で表される繰返し単位(以下、繰返し単位(1)という。)と、下記式(2)で表される繰返し単位(以下、繰返し単位(2)という。)と、下記式(3)で表される繰返し単位(以下、繰返し単位(3)という。)とを有し、全繰返し単位の合計量を100モル%として、2,6−ナフチレン基を含む繰り返し単位の含有率が、40モル%以上75モル%未満のものである。
(1)−O−Ar−CO−
(2)−CO−Ar−CO−
(3)−O−Ar−O−
(Arは、ナフチレン基、フェニレン基またはビフェニリレン基を表す。ArおよびArは、それぞれ独立に、ナフチレン基、フェニレン基またはビフェニリレン基を表す。Ar、ArまたはArで表される前記基にある水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基で置換されていてもよい。)
【0051】
Ar、Ar又はArで表される前記基にある水素原子と置換可能なハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。
【0052】
Ar、Ar又はArで表される前記基にある水素原子と置換可能なアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−へプチル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、ノニル基及びn−デシル基等が挙げられ、その炭素数は、1〜10であることが好ましい。
【0053】
Ar、Ar又はArで表される前記基にある水素原子と置換可能なアリール基の例としては、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基等のような単環式芳香族基、1−ナフチル基及び2−ナフチル基等のような縮環式芳香族基が挙げられ、その炭素数は、6〜20であることが好ましい。
【0054】
Ar、ArまたはArで表される前記基の水素原子がこれらの基で置換されている場合、その数は、Ar、Ar又はArで表される前記基毎に、それぞれ独立に、好ましくは1個または2個であり、より好ましくは1個である。
【0055】
繰返し単位(1)は、所定の芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し単位である。繰返し単位(1)としては、Arが2、6−ナフチレン基であるもの、すなわち6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸に由来する繰返し単位が好ましい。
【0056】
繰返し単位(2)は、所定の芳香族ジカルボン酸に由来する繰返し単位である。繰返し単位(2)としては、Arが2,6−ナフチレン基であるもの、すなわち2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来する繰返し単位、およびArが1,4−フェニレン基であるもの、すなわちテレフタル酸に由来する繰返し単位が好ましい。
【0057】
繰返し単位(3)は、所定の芳香族ジオールに由来する繰返し単位である。繰返し単位(3)としては、Arが1,4−フェニレン基であるもの、すなわちヒドロキノンに由来する繰返し単位、およびArが4,4’−ビフェニリレン基であるもの、すなわち4,4’−ジヒドロキシビフェニルに由来する繰返し単位が好ましい。
【0058】
本実施形態で使用される液晶ポリエステルは、2,6−ナフチレン基を含む繰返し単位の含有量は、全繰返し単位の合計量100モル%に対して、40モル%以上75モル%以下である。なお、2,6−ナフチレン基は、繰返し単位(1)、繰返し単位(2)、および繰返し単位(3)のいずれに含まれることとしてもよい。
【0059】
かかる所定の繰返し単位組成を有する液晶ポリエステルを用いることにより、耐水性に優れる樹脂組成物を得ることができる。この2,6−ナフチレン基の含有量は、好ましくは、全繰返し単位の合計量100モル%に対して50モル%以上75モル%以下、より好ましくは60モル%以上75モル%以下、さらに好ましくは70モル%以上75モル%以下である。
【0060】
また、本実施形態で使用される液晶ポリエステルは、繰返し単位(1)の含有量は、繰返し単位(1)、繰返し単位(2)および繰返し単位(3)の合計量100モル%に対して、好ましくは30モル%以上80モル%以下、より好ましくは40モル%以上70モル%以下、さらに好ましくは45モル%以上65モル%以下である。
【0061】
繰返し単位(2)の含有量は、繰返し単位(1)、繰返し単位(2)および繰返し単位(3)の合計量100モル%に対して、好ましくは10モル%以上35モル%以下、より好ましくは15モル%以上30モル%以下、さらに好ましくは17.5モル%以上27.5モル%以下である。
【0062】
繰返し単位(3)の含有量は、繰返し単位(1)、繰返し単位(2)および繰返し単位(3)の合計量100モル%に対して、好ましくは10モル%以上35モル%以下、より好ましくは15モル%以上30モル%以下、さらに好ましくは17.5モル%以上27.5モル%以下である。
【0063】
すなわち、液晶ポリエステルは、繰返し単位(1)、繰返し単位(2)および繰返し単位(3)の合計を100モル%として、繰返し単位(1)の含有率が30モル%以上80モル%以下、繰返し単位(2)の含有率が10モル%以上35モル%以下、繰返し単位(3)の含有率が10モル%以上35モル%以下であることが好ましい。
【0064】
このような所定の繰返し単位組成を有する液晶ポリエステルは、耐熱性と成形性とのバランスに優れている。なお、繰返し単位(2)の含有量と繰返し単位(3)の含有量とは、実質的に等しいことが好ましい。
【0065】
また、液晶ポリエステルは、必要に応じて、繰返し単位(1)〜(3)以外の繰返し単位を有していてもよいが、その含有量は、全繰返し単位の合計量100モル%に対して、好ましくは0モル%以上10モル%以下、より好ましくは0モル%以上5モル%以下である。
【0066】
耐水性が高い液晶ポリエステルの典型的な例は、全繰返し単位の合計量100モル%に対して、Arが2、6−ナフチレン基である繰返し単位(1)(6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸に由来する繰返し単位)を、好ましくは40モル%以上74.8モル%以下、より好ましくは40モル%以上64.5モル%以下、さらに好ましくは50モル%以上58モル%以下有し;
Arが2,6−ナフチレン基である繰返し単位(2)(2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来する繰返し単位)を、好ましくは12.5モル%以上30モル%以下、より好ましくは17.5モル%以上30モル%以下、さらに好ましくは20モル%以上25モル%以下有し;
Arが1,4−フェニレン基である繰返し単位(2)(テレフタル酸に由来する繰返し単位)を、好ましくは0.2モル%以上15モル%以下、より好ましくは0.5モル%以上12モル%以下、さらに好ましくは2モル%以上10モル%以下有し;
Arが1,4−フェニレン基である繰返し単位(3)(ヒドロキノンに由来する繰返し単位)を、好ましくは12.5モル%以上30モル%以下、より好ましくは17.5モル%以上30モル%以下、さらに好ましくは20モル%以上25モル%以下有し;かつ、
Arが2,6−ナフチレン基である繰返し単位(2)の含有量が、Arが2,6−ナフチレン基である繰返し単位(2)およびArが1,4−フェニレン基である繰返し単位(2)の合計含有量に対して、好ましくは0.5モル倍以上、より好ましくは0.6モル倍以上のものである。
【0067】
本実施形態で使用される液晶ポリエステルは、繰返し単位(1)を与えるモノマー(所定の芳香族ヒドロキシカルボン酸)と、繰返し単位(2)を与えるモノマー(所定の芳香族ジカルボン酸)と、繰返し単位(3)を与えるモノマー(所定の芳香族ジオール)とを、2,6−ナフチレン基を有するモノマーの合計量(6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸および2,6−ナフタレンジオールの合計量)が、全モノマーの合計量100モル%に対して、40モル%以上75モル%以下になるようにして、重合(重縮合)させることにより製造することができる。
【0068】
その際、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸および芳香族ジオールは、それぞれ独立に、その一部または全部に代えて、その重合可能な誘導体を用いてもよい。芳香族ヒドロキシカルボン酸および芳香族ジカルボン酸のようなカルボキシ基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、カルボキシ基をアルコキシカルボニル基またはアリールオキシカルボニル基に変換してなるもの、カルボキシ基をハロホルミル基に変換してなるもの、カルボキシ基をアシルオキシカルボニル基に変換してなるものが挙げられる。芳香族ヒドロキシカルボン酸および芳香族ジオールのようなヒドロキシ基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、ヒドロキシ基をアシル化してアシルオキシル基に変換してなるものが挙げられる。
【0069】
また、本実施形態で使用される液晶ポリエステルは、構成する繰返し単位に対応する原料モノマーを溶融重合させ、得られた重合物(プレポリマー)を固相重合させることにより、製造することが好ましい。これにより、耐熱性や耐水性、強度が高い液晶ポリエステルを操作性良く製造することができる。溶融重合は触媒の存在下に行ってもよく、触媒の例としては、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモンなどの金属化合物や、N,N−ジメチルアミノピリジン、N−メチルイミダゾールなどの含窒素複素環式化合物が挙げられ、含窒素複素環式化合物が好ましく用いられる。
【0070】
本実施形態で使用される液晶ポリエステルは、その流動開始温度が、好ましくは280℃以上、より好ましくは290℃以上、さらに好ましくは295℃以上であり、また、好ましくは380℃以下、より好ましくは350℃以下である。流動開始温度が高いほど、耐熱性や耐水性が向上し易いが、あまり高いと、溶融させるために高温を要し、成形時に熱劣化しやすくなったり、溶融時の粘度が高くなり、流動性が低下したりする。
【0071】
なお、この流動開始温度は、フロー温度または流動温度とも呼ばれ、内径1mm、長さ10mmのノズルを持つ毛細管レオメータを用い、9.8MPa(100kgf/cm )の荷重下において、昇温速度4℃/分で液晶ポリエステルの加熱溶融体をノズルから押し出すときに、溶融粘度が4800Pa・s(48000ポアズ)を示す温度であり、液晶ポリエステルの分子量の目安となるものである(例えば、小出直之編「液晶ポリマー−合成・成形・応用−」第95〜105頁、(株)シーエムシー出版、1987年6月5日発行を参照)。
本実施形態の樹脂組成物で使用される液晶ポリエステルは、以上のようなものである。
【0072】
(ガラスフレーク)
本実施形態の樹脂組成物には、充填材としてガラスフレークが含まれている。上述した液晶ポリエステルは、芳香族ポリスルホンの流動性を改良することができる一方で、流れ方向の収縮率と、流れ方向に直交する方向の収縮率と、が異なる(収縮率に異方性がある)ため、成形体に反りが発生するおそれがある。これに対し、本実施形態の樹脂組成物では、ガラスフレークを含有することで、得られる成形体の反り量を低減させている。
【0073】
本実施形態で使用されるガラスフレークは、平均厚み0.5〜15μm、アスペクト比(平均粒径/平均厚み)2〜1,000の鱗片状ガラス(または、フレーク状ガラス)である。このようなガラスフレークは、一般的には、均一な厚みを有するフロートガラスなどの板状ガラスを粉砕することで製造されている。
【0074】
ここで、本明細書において、ガラスフレークの「平均粒径」とは、ガラスフレークの原料となる板状ガラスを粉砕した後、多段の篩を用いて選別された数値範囲を指す。
【0075】
さらに、ガラスフレークの「平均厚み」とは、ガラスフレークの原料である板状ガラスの厚みによって定まる値である。原料の板状ガラスの厚みは、干渉顕微鏡法を用いた測定で得られる値である。
【0076】
本実施形態で使用されるガラスフレークは、平均粒径が130μm以上200μm以下であることが好ましい。また、ガラスフレークは、平均厚みが0.5μm以上1.0μm以下であることが好ましい。すなわち、ガラスフレークは、平均粒径が130μm以上200μm以下であり、且つ、平均厚みが0.5μm以上1.0μm以下であることが好ましい。
【0077】
ガラスフレークの平均粒径が130μm以上である場合、および平均厚みが0.5μm以上である場合は、それぞれ平均粒径が130μm未満である場合、および平均厚みが0.5μm未満である場合と比べて、取り扱いが容易となり、また、樹脂の強化材としての効果が向上する。
【0078】
また、ガラスフレークの平均粒径が200μm以下である場合、および平均厚みが1.0μm以下である場合は、それぞれ平均粒径が200μmを超える場合、および平均厚みが1.0μmを超える場合と比べて、薄肉流動性や反りを抑制する効果が向上する。
本実施形態の樹脂組成物で使用されるガラスフレークは、以上のようなものである。
【0079】
(ガラス繊維)
本実施形態の樹脂組成物には、充填材としてガラス繊維も含まれている。樹脂組成物がガラス繊維を含むことで、ガラス繊維を含まない樹脂組成物よりも、得られる成形体の機械的強度(曲げ強度、衝撃強度)の向上を図ることができる。また、ガラス繊維を含むことにより、成形加工時に、溶融した樹脂組成物に含まれる樹脂の流動状態が乱され、得られる成形体の反りが低減することが期待できる。
【0080】
本実施形態で使用されるガラス繊維としては、チョップドガラス繊維、ミルドガラス繊維等、種々の方法で製造されたガラス繊維を例示することができる。
【0081】
ガラス繊維の繊維長は、1mm以上4mm以下であることが好ましい。ガラス繊維の繊維長が1mm以上である場合、繊維長が1mm未満のものと比べて樹脂の強化材としての効果が向上する。また、ガラス繊維の繊維長が4mm以下である場合、繊維長が4mmを超えるものと比べて樹脂組成物の薄肉流動性が向上する。
【0082】
ガラス繊維の繊維径(単繊維径)は、6μm以上15μm以下であることが好ましい。ガラス繊維の繊維径が6μm以上である場合、繊維径が6μm未満のものと比べて取り扱いが容易となる。また、ガラス繊維の繊維径が15μm以下である場合、繊維径が15μmを超えるものと比べて樹脂組成物の薄肉流動性が向上し、樹脂の強化材としての効果が向上する。
【0083】
ここで、「ガラス繊維の繊維長」は、JIS R3420「7.8 チョップドストランドの長さ」に記載された方法を用いて測定される値である。
また、「ガラス繊維の繊維径」は、JIS R3420「7.6 単繊維直径」に記載された方法のうち「A法」を用いて測定される値である。
本実施形態の樹脂組成物で使用されるガラス繊維は、以上のようなものである。
【0084】
(樹脂組成物)
本実施形態の樹脂組成物は、上記芳香族ポリスルホンと、液晶ポリエステルと、ガラス繊維と、ガラスフレークと、を含み、芳香族ポリスルホンと、液晶ポリエステルと、ガラスフレークと、ガラス繊維との合計を100質量部とするとき、芳香族ポリスルホンが55質量部以上85質量部以下、液晶ポリエステルが10質量部以上30質量部以下、ガラス繊維が0質量部より多く18質量部以下、ガラスフレークが3質量部以上35質量部以下含まれる。樹脂組成物に含まれる芳香族ポリスルホンは、55質量部以上70質量部以下であることが好ましい。
【0085】
また、本実施形態の樹脂組成物は、離型剤を含むこととしてもよい。樹脂組成物が離型剤を含むことで、離型剤を含まない樹脂組成物よりも、得られる成形体の表面光沢の向上を図ることができる。
【0086】
本実施形態で使用される離型剤としては、ポリテトラフルオロエチレン、トリステアリン酸グリセロール、シリコーンオイル、ワックスを例示することができる。本実施形態の樹脂組成物は、前記芳香族ポリスルホンと、前記液晶ポリエステルと、前記ガラス繊維と、前記ガラスフレークとの合計100質量部に対し、離型剤を0質量部より多く5質量部以下含有することが好ましく、0質量部より多く3質量部以下含有することがより好ましく、0質量部より多く2質量部以下含有することがさらに好ましい。
【0087】
中でも、本実施形態の樹脂組成物は、前記芳香族ポリスルホンと、前記液晶ポリエステルと、前記ガラス繊維と、前記ガラスフレークとの合計100質量部に対し、ポリテトラフルオロエチレンを0質量部より多く1.5質量部以下含有することが好ましい。
【0088】
以上のような樹脂組成物は、薄肉流動性に優れるものとなり、また、反りが抑制されると共に耐熱水性に優れた成形体を得ることが可能である。
【0089】
また、本実施形態の樹脂組成物は、本実施形態の樹脂組成物が有する機能を損なわない範囲で、充填材、添加剤、芳香族ポリスルホンおよび液晶ポリエステル以外の樹脂等の他の成分を1種以上含んでもよい。
【0090】
充填材は、繊維状充填材であってもよいし、板状充填材であってもよいし、繊維状及び板状以外で、球状その他の粒状充填材であってもよい。また、充填材は、無機充填材であってもよいし、有機充填材であってもよい。
【0091】
繊維状無機充填材の例としては、パン系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維;シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維等のセラミック繊維;及びステンレス繊維等の金属繊維が挙げられる。また、チタン酸カリウムウイスカー、チタン酸バリウムウイスカー、ウォラストナイトウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、窒化ケイ素ウイスカー、炭化ケイ素ウイスカー等のウイスカーも挙げられる。
【0092】
繊維状有機充填材の例としては、ポリエステル繊維及びアラミド繊維が挙げられる。
【0093】
板状無機充填材の例としては、タルク、マイカ、グラファイト、ウォラストナイト、硫酸バリウム及び炭酸カルシウムが挙げられる。マイカは、白雲母であってもよいし、金雲母であってもよいし、フッ素金雲母であってもよいし、四ケイ素雲母であってもよい。
【0094】
粒状無機充填材の例としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、ガラスビーズ、ガラスバルーン、窒化ホウ素、炭化ケイ素及び炭酸カルシウムが挙げられる。
【0095】
本実施形態の樹脂組成物がこれらの充填材を含む場合、充填材の含有量は、芳香族ポリスルホンと液晶ポリエステルの合計100質量部に対して、0質量部より多く100質量部以下であることが好ましい。
【0096】
添加剤の例としては、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、界面活性剤、難燃剤及び着色剤が挙げられる。本実施形態の樹脂組成物が添加剤を含む場合、添加剤の含有量は、芳香族ポリスルホンと液晶ポリエステルの合計100質量部に対して、0質量部より多く5質量部以下であることが好ましい。
【0097】
芳香族ポリスルホンおよび液晶ポリエステル以外の樹脂の例としては、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド等の芳香族ポリスルホン以外の熱可塑性樹脂;及びフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シアネート樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。本実施形態の樹脂組成物が芳香族ポリスルホンおよび液晶ポリエステル以外の樹脂を含む場合、芳香族ポリスルホンおよび液晶ポリエステル以外の樹脂の含有量は、芳香族ポリスルホンと液晶ポリエステルの合計100質量部に対して、0質量部より多く20質量部以下であることが好ましい。
【0098】
本実施形態の樹脂組成物は、芳香族ポリスルホン、液晶ポリエステル、ガラス繊維、ガラスフレークおよび必要に応じて用いられる他の成分を、押出機を用いて溶融混練し、ペレット化しておくことが好ましい。押出機としては、シリンダーと、シリンダー内に配置された1本以上のスクリューと、シリンダーに設けられた1箇所以上の供給口とを有するものが、好ましく用いられ、さらにシリンダーに設けられた1箇所以上のベント部を有するものが、より好ましく用いられる。
【0099】
本実施形態の樹脂組成物の成形法としては、溶融成形法が好ましく、その例としては、射出成形法、Tダイ法やインフレーション法等の押出成形法、圧縮成形法、ブロー成形法、真空成形法及びプレス成形が挙げられる。中でも射出成形法が好ましい。
【0100】
本実施形態の樹脂組成物からなる成形体である製品・部品の例としては、光ピックアップボビン、トランスボビン等のボビン;リレーケース、リレーベース、リレースプルー、リレーアーマチャー等のリレー部品;RIMM、DDR、CPUソケット、S/O、DIMM、Board to Boardコネクター、FPCコネクター、カードコネクター等のコネクター;ランプリフレクター、LEDリフレクター等のリフレクター;ランプホルダー、ヒーターホルダー等のホルダー;スピーカー振動板等の振動板;コピー機用分離爪、プリンター用分離爪等の分離爪;カメラモジュール部品;スイッチ部品;モーター部品;センサー部品;ハードディスクドライブ部品;オーブンウェア等の食器;車両部品;電池部品;航空機部品;及び半導体素子用封止部材、コイル用封止部材等の封止部材が挙げられる。
【0101】
本実施形態の成形体は、上述の樹脂組成物を用いて成形されるため、薄肉部の成形不良が抑制され、反りが少なく、さらに熱水に曝しても外観変化や物性低下が少ない良好な成形体となる。
【実施例】
【0102】
以下、本発明を以下の実施例に基づいて説明する。本発明はこれらの実施例に限定されない。
本実施例においては、以下の測定方法を用いて評価を行った。
【0103】
<芳香族ポリスルホンの還元粘度の測定>
芳香族ポリスルホン約1gを小数点以下4桁まで求めて精秤し、秤量した芳香族ポリスルホンを10mL(1dL)メスフラスコに入れ、全量が1dLになるまでN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を加え、1dLのDMF溶液(秤量した芳香族ポリスルホンの全量を含む)を調製し、この溶液の粘度(η)を、オストワルド型粘度管を用いて、25℃で測定した。また、溶媒であるDMFの粘度(η)を、オストワルド型粘度管を用いて、25℃で測定した。前記溶液の粘度(η)と前記溶媒の粘度(η)から、比粘性率((η−η)/η)を求め、この比粘性率を、前記溶液の濃度(精秤した芳香族ポリスルホン量(g)/dL)で割ることにより、芳香族ポリスルホンの還元粘度(dL/g)を求めた。
【0104】
<薄肉流動長の測定>
渦巻き状の流路(流路高さ0.5mm、幅8mm、ゲート位置:渦巻き中心部)を有する薄肉流動長測定用の金型を用い、渦巻き中心部のゲートから、溶融した樹脂組成物を射出成形して、流動長測定用の試験片(厚み0.5mm,幅8mm)を作成した。射出成形は、射出成形機(UH1000−80,日精樹脂工業(株))を用い、シリンダー温度380℃、金型温度150℃、射出速度100mm/秒,保圧1000kg/cmの条件で行った。
得られた試験片について、ゲート位置から渦巻き形状に沿った試験片端部までの長さを測定し、得られる値を流動した樹脂の長さとして薄肉流動長を求めた。
【0105】
<反り量の測定>
射出成形機(UH1000−80,日精樹脂工業(株))を用い、シリンダー温度380℃、金型温度150℃、射出速度100mm/秒,保圧700kg/cm、冷却時間25秒の条件で厚み0.5mm、直径64mmの円板状試験片を作成し、この試験片に生じる反り量を測定した。
【0106】
図1は、円板状試験片を示す模式図である。
図1(a)に示すように、円板状試験片の金型において、ゲート位置は円板の中心に位置しており、金型内に射出された溶融樹脂は、円板の中心から円周側に等方的に広がりながら試験片を形成する。液晶ポリエステルを含む樹脂組成物は、得られる円板状試験片10の半径方向(樹脂の流動方向)よりも円周方向(樹脂の流動方向と直交する方向)の方が、収縮率が大きい。そのため、円板状試験片10には反りが生じる。
【0107】
図1(b)(c)は、反りが生じた円板状試験片10の模式図であり、図1(b)は概略斜視図、図1(c)は図1(b)の線分A−Aにおける矢視断面図である。図1(b)(c)に示すように、反りが生じた円板状試験片10は、円板の中心付近が高く周囲が低くなるように弓なりに変形する。このような円板状試験片10について、上に凸となるように配置したときの上面における鉛直方向における円板中心部分(頂点部a)の高さ位置と、上面における円板周辺部分(周辺部b)の高さ位置とを、ダイヤルゲージを用いて測定し、頂点部aの高さと周辺部bの高さとの差を、反り量Hとして求めた。
なお、円板状試験片10は、反り量の測定の前に、23℃湿度50%の環境にて12時間以上状態調整を実施したものを用いた。
【0108】
<ダンベル試験片の作成>
射出成形機(PS40E5ASE,日精樹脂工業(株))を用い、シリンダー温度360℃、金型温度150℃、射出速度90mm/秒の条件において射出成形をすることで、ネック部幅5mm、ネック部長さ30mm、全長75mm、厚み0.8mmのダンベル試験片(以下、試験片と称する)を成形した。
【0109】
<熱水浸漬試験>
上記方法にて作成した試験片をガラス製の容器に入れ、試験片が充分に浸漬する量の純水を加えた状態で、プレッシャークッカー(PC−304R8,平山製作所)に投入した後、温度125℃、湿度100%の条件にて100時間、熱水浸漬試験を実施した。
【0110】
<曲げ強度の評価>
試験片について、支点間距離20mm,試験速度2mm/分、試験温度23℃の条件にて3点曲げ試験を実施した。曲げ強度の値については、3本の試験片についての結果の平均値を採用した。
【0111】
<曲げ強度の保持率の評価>
熱水浸漬試験前後のそれぞれの試験片について、上記方法にて曲げ試験を実施し、熱水浸漬試験前後の試験結果を比較し、下記式に基づいて曲げ強度の保持率を評価した。
(保持率)=(熱水浸漬試験後の曲げ強度)/(熱水浸漬試験前の曲げ強度)×100
【0112】
<熱水浸漬試験前後の外観変化の評価>
上記方法にて熱水浸漬試験を実施した後、試験片の外観に変化がないかを目視にて評価した。
【0113】
<製造例1(液晶ポリエステル1の製造)>
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却器を備えた反応器に、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸1,034.99g(5.5モル)、2,6−ナフタレンジカルボン酸378.33g(1.75モル)、テレフタル酸83.07g(0.5モル)、ヒドロキノン272.52g(2.475モル:2,6−ナフタレンジカルボン酸およびテレフタル酸の合計量に対して0.225モル過剰)、無水酢酸1,226.87g(12モル)および触媒として1−メチルイミダゾール0.17gを入れた。反応器内のガスを窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下、攪拌しながら、室温から145℃まで15分かけて昇温し、145℃で1時間還流させた。
【0114】
次いで、副生酢酸および未反応の無水酢酸を留去しながら、145℃から310℃まで3時間30分かけて昇温し、310℃で3時間保持した後、固形状の反応混合物(プレポリマー)を取り出し、室温まで冷却した。
【0115】
プレポリマーを粉砕機で粒径約0.1mm〜1mmに粉砕した。粉砕物を窒素雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から302℃まで8時間40分かけて昇温し、302℃で5時間保持することにより、固相重合を行った。固相重合物を冷却して、粉末状の液晶ポリエステル1を得た。
【0116】
液晶ポリエステル1は、全繰返し単位の合計量を100モル%として、Arが2,6−ナフチレン基である繰返し単位(1)を55モル%、Arが2,6−ナフチレン基である繰返し単位(2)を17.5モル%、Arが1,4−フェニレン基である繰返し単位(2)を5モル%、およびArが1,4−フェニレン基である繰返し単位(3)を22.5モル%有していた。
【0117】
なお、得られた液晶ポリエステルについて繰返し単位の含有量は、以下のようにして分析し確認した。
液晶ポリエステルの試料約100mgをSUS製チューブに入れ、メタノール約5mLを加えて密栓し、サンドバス中300℃で40分間加熱処理することで、重合体を分解させた。
冷却後、内容物にテトラヒドロフラン(THF)を加えて回収し、50mLメスフラスコを用いてTHFで希釈した。
得られたTHF溶液を、ガスクロマトグラフ(アジレント・テクノロジー社製、Agilent6890N)を用いて分析し、各繰返し単位の含有量を測定した。
【0118】
<製造例2(液晶ポリエステル2の製造)>
製造例1と同様の反応器に、p−ヒドロキシ安息香酸911g(6.6モル)、テレフタル酸274g(1.65モル)、イソフタル酸91g(0.55モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル409g(2.2モル)、無水酢酸1,235g(12.1モル)および触媒として1−メチルイミダゾール0.17gを入れた。反応器内のガスを窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下、攪拌しながら、室温から150℃まで15分かけて昇温し、150℃で1時間還流させた。
【0119】
次いで、1−メチルイミダゾール1.7gを更に添加した後、副生酢酸および未反応の無水酢酸を留去しながら、150℃から320℃まで2時間50分かけて昇温し、トルクの上昇が認められた時点で、固形状の反応混合物(プレポリマー)を取り出し、室温まで冷却した。
【0120】
プレポリマーを粉砕機で粒径約0.1mm〜1mmに粉砕した。粉砕物を窒素雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から285℃まで5時間かけて昇温し、285℃で3時間保持することにより、固相重合を行った。固相重合物を冷却して、粉末状の液晶ポリエステル2を得た。
【0121】
上述の分析方法で確認したところ、液晶ポリエステル−2は、全繰返し単位の合計量を100モル%として、Arが1,4−フェニレン基である繰返し単位(1)を60モル%、Arが1,4−フェニレン基である繰返し単位(2)を15モル%、Arが1,3−フェニレン基である繰返し単位(2)を5モル%、およびArが4,4’−ビフェニリレン基である繰返し単位(3)を20モル%有していた。
【0122】
<実施例1>
ポリエーテルスルホン(スミカエクセルPES 3600P、住友化学(株)、還元粘度=0.36)を64質量部、液晶ポリエステル1を16質量部、ガラス繊維1(CS03JAPX−1,オーウェンスコーニングジャパン(株)、繊維径:10.5μm,繊維長:3.0mm)を15質量部、ガラスフレーク(MEG160FYX,日本板硝子(株)、平均粒径:160μm、平均厚み:0.7μm)を5質量部、熱安定剤としてTPP(リン酸トリフェニル,和光純薬工業(株))を、ポリエーテルスルホン、液晶ポリエステル1、ガラスフレーク、ガラス繊維1の合計100質量部に対して0.2質量部になるよう秤量し、混合することで樹脂組成物を調整した。
【0123】
得られた樹脂組成物を、2軸押出機(PCM30,(株)池貝)を用いて、シリンダー温度340℃で造粒し、目的組成物からなるペレットを作成した。得られたペレットを用い、上述の射出成形機を使用して各種試験片を作成し、上述の方法で曲げ強度、浸漬試験後の曲げ強度の保持率、浸漬試験後の外観の変化を評価した。
【0124】
<実施例2>
ガラス繊維1の代わりに、ガラス繊維2(CS03DE260S,日東紡績(株)、繊維径:6.5μm,繊維長:3.0mm)を用いたこと以外は、実施例1と同様に評価を行った。
【0125】
<実施例3>
添加剤1(ポリテトラフルオロエチレン,セフラルルーブI,セントラル硝子(株))を、芳香族ポリスルホン、液晶ポリエステル1、ガラス繊維1、ガラスフレークの合計100質量部に対し、1.0質量部添加したこと以外は、実施例1と同様に評価を行った。
【0126】
<実施例4>
添加剤2(トリステアリン酸グリセロール,MoldWiz INT−40DHT,Axel Plastics Research Laboratories,Inc)を、芳香族ポリスルホン、液晶ポリエステル1、ガラス繊維1、ガラスフレークの合計100質量部に対し、0.3質量部添加したこと以外は、実施例1と同様に評価を行った。
【0127】
<比較例1>
芳香族ポリスルホンを80質量部、ガラス繊維1を20質量部とし、液晶ポリエステル1およびガラスフレークを使用しなかったこと以外は、実施例1と同様に評価を行った。
【0128】
<比較例2>
液晶ポリエステル1の代わりに液晶ポリエステル2を用いたこと以外は、実施例1と同様に評価を行った。
【0129】
<比較例3>
液晶ポリエステル1の代わりに液晶ポリエステル2を用いたこと以外は、実施例2と同様に評価を行った。
【0130】
実施例1〜4、および比較例1〜3の結果について、下記表1に示す。
【0131】
【表1】
【0132】
測定の結果、実施例1〜4の組成物は、良好な薄肉流動性と、少ない反り量とを両立し、さらに、比較例1〜3に比べて熱水に晒された際にも高い強度保持率を有し、また外観を損なわないことが分かった。
【0133】
これらの結果から、本発明の樹脂組成物は薄肉流動性に優れ、また、反りが抑制されると共に耐熱水性に優れた成形体を得ることが可能であることが確認された。また、このような樹脂組成物を用いて得られる成形体は、薄肉部の成形不良が抑制され、反りが低減され、更に耐熱水性に優れたものとなることが分かった。
【符号の説明】
【0134】
10…円板状試験片、a…頂点部、b…周辺部、H…反り量
図1