(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記オフ電圧調整手段が、前記Qスイッチに前記第1の調整用電圧が印加されているときに前記光検出器が計測した前記共振器から出力された光の強度と、前記Qスイッチに前記第2の調整用電圧が印加されているときに前記光検出器が計測した前記共振器から出力された光の強度との差に基づいて前記第1の電圧を調整する請求項2から5何れか1項に記載のレーザ装置。
前記オフ電圧調整手段は、前記Qスイッチへの印加電圧が前記第1の電圧の状態で前記レーザ媒質に励起光が照射された後で、かつQスイッチへの印加電圧が第2の電圧に変化される前に、前記光検出器が前記共振器から光が出力していることを検出すると、前記第1の電圧の調整を行う請求項1から8何れか1項に記載のレーザ装置。
アレキサンドライトを含むレーザ媒質を挟んで設けられた一対のミラーを含む共振器の光路上に配置され、印加電圧に応じて前記共振器のQ値を変化させるQスイッチであって、印加電圧がQスイッチオフに対応した第1の電圧のときの前記共振器のQ値を、印加電圧が、前記第1の電圧よりも低い、Qスイッチオンに対応した第2の電圧のときの前記共振器のQ値よりも低くするQスイッチに、前記共振器のQ値をレーザ発振しきい値を超える値にさせる調整用電圧を印加するステップと、
前記レーザ媒質に励起光を照射するステップと、
前記励起光の照射に起因して前記共振器から出力されるレーザ光を計測するステップと、
前記計測されたレーザ光の強度と前記調整用電圧とを用いて、前記第1の電圧を調整し、かつ前記Qスイッチに対して、前記調整後の第1の電圧が印加されたときの光共振器のQ値がレーザ発振しきい値以下となるように、前記第1の電圧の調整を行うステップとを有するQスイッチオフ電圧調整方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、アレキサンドライトレーザについては、共振器内の光学部品の損傷の確率が高いことが知られている。この原因について、非特許文献1では、マルチモードによる空間的及び時間的エネルギー集中が原因と分析されている。この問題に対し、非特許文献2には、TEM00モードに近づけることで光学部品の損傷を低減することが記載されている。しかしながら、アレキサンドライトは、室温では誘導放出断面積が小さいため、開口などを用いてTEM00モードに制限すると、大きなエネルギー損失が生じる。別の試みとして、非特許文献3には、光学部品の損傷しきい値に対し十分弱いエネルギー密度で発振させることが記載されている。しかし、エネルギー密度を下げるためにはアレキサンドライトのロッドの径を太くしなければならない。アレキサンドライトは、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)に比べて製造コストが高く、高コストとなるという問題がある。特許文献1においては、共振器内の光学部品の損傷を低減する手段は特に講じられていない。
【0008】
本発明は、上記に鑑み、アレキサンドライトをレーザ媒質とするレーザ装置であって、高効率かつ低コストで共振器内の光学部品の損傷の抑制が可能なレーザ装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、上記レーザ装置を含む光音響計測装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、アレキサンドライトを含むレーザ媒質と、レーザ媒質に励起光を照射する励起光源と、レーザ媒質を挟んで設けられた一対のミラーを含む共振器と、共振器の光路上に配置され、印加電圧に応じて共振器のQ値を変化させるQスイッチであって、印加電圧がQスイッチオフに対応した第1の電圧のときの共振器のQ値を、印加電圧が、第1の電圧よりも低い、Qスイッチオンに対応した第2の電圧のときの共振器のQ値よりも低くするQスイッチと、Qスイッチへ電圧を印加し、Qスイッチを駆動するQスイッチ駆動手段と、Qスイッチへの印加電圧が第1の電圧のときにレーザ媒質に励起光を照射させ、励起光の照射後に、Qスイッチへの印加電圧を第1の電圧から第2の電圧に変化させることでパルスレーザ光を出射させる発振制御手段と、共振器から出力される光を計測する光検出器と、前記Qスイッチに、共振器のQ値をレーザ発振しきい値を超える値にさせる調整用電圧が印加された状態でレーザ媒質に励起光を照射させ、光検出器が計測した、励起光の照射に起因して共振器から出力された光の強度に基づいて、第1の電圧を調整するオフ電圧調整手段とを備えたレーザ装置を提供する。
【0011】
オフ電圧調整手段は、Qスイッチに第1の電圧が印加されたときの光共振器のQ値がレーザ発振しきい値以下となるように、第1の電圧を調整することが好ましい。
【0012】
調整用電圧が、基準となる電圧よりもΔV1だけ高い第1の調整用電圧と、基準となる電圧よりもΔV2だけ高い第2の調整用電圧とを含んでいてもよい。ΔV1とΔV2とは同じ値であってもよいし、異なっていてもよい。
【0013】
上記において、基準となる電圧は調整前の第1の電圧であってもよいし、共振器内の温度に応じて定められた電圧であってもよい。
【0014】
ΔV1及びΔV2が、レーザ媒質に照射される励起光のエネルギーに依存して決定されてもよい。
【0015】
オフ電圧調整手段は、Qスイッチに第1の調整用電圧が印加されているときに光検出器が計測した共振器から出力された光の強度と、Qスイッチに第2の調整用電圧が印加されているときに光検出器が計測した共振器から出力された光の強度との差に基づいて第1の電圧を調整してもよい。
【0016】
オフ電圧調整手段が、周期的に第1の電圧の調整を行うこととしてもよい。
【0017】
オフ電圧調整手段は、前回の第1の電圧の調整時の温度からの温度変化がしきい値を超えると、第1の電圧の調整を行ってもよい。
【0018】
あるいは、オフ電圧調整手段が、Qスイッチへの印加電圧が第1の電圧の状態でレーザ媒質に励起光が照射された後で、かつQスイッチへの印加電圧が第2の電圧に変化される前に、光検出器が共振器から光が出力していることを検出すると、第1の電圧の調整を行うこととしてもよい。
【0019】
光検出器は、共振器外の光学素子からの散乱光を計測してもよい。
【0020】
あるいは、光検出器が、共振器の出力光から分割された光を計測してもよい。
【0021】
光検出器が、共振器を構成する一対のミラーのうち出力ミラーではないミラーから出力される光を計測することとしてもよい。
【0022】
本発明は、また、アレキサンドライトを含むレーザ媒質と、レーザ媒質に励起光を照射する励起光源と、レーザ媒質を挟んで設けられた一対のミラーを含む共振器と、共振器の光路上に配置され、印加電圧に応じて共振器のQ値を変化させるQスイッチであって、印加電圧がQスイッチオフに対応した第1の電圧のときの共振器のQ値を、印加電圧が、第1の電圧よりも低い、Qスイッチオンに対応した第2の電圧のときの共振器のQ値よりも低くするQスイッチと、共振器から出力される光を計測する光検出器と、Qスイッチへ電圧を印加し、Qスイッチを駆動するQスイッチ駆動手段と、Qスイッチへの印加電圧が第1の電圧のときにレーザ媒質に励起光を照射させ、励起光の照射後に、Qスイッチへの印加電圧を第1の電圧から第2の電圧に変化させることでパルスレーザ光を出射させる発振制御手段と、Qスイッチに、共振器のQ値をレーザ発振しきい値を超える値にさせる調整用電圧が印加された状態でレーザ媒質に励起光を照射させ、光検出器が計測した、励起光の照射に起因して共振器から出力される光の強度に基づいて、第1の電圧を調整するオフ電圧調整手段とを備えたレーザ装置と、レーザ光を被検体に向けて出射した後に被検体内で生じた光音響波を検出する検出手段と、検出された光音響波に基づいて信号処理を行う信号処理手段とを備えた光音響計測装置を提供する。
【0023】
本発明の光音響計測装置において、信号処理手段は、検出された光音響波に基づいて光音響画像を生成する画像生成手段であってもよい。
【0024】
さらに、本発明は、アレキサンドライトを含むレーザ媒質を挟んで設けられた一対のミラーを含む共振器の光路上に配置され、印加電圧に応じて共振器のQ値を変化させるQスイッチであって、印加電圧がQスイッチオフに対応した第1の電圧のときの共振器のQ値を、印加電圧が、第1の電圧よりも低い、Qスイッチオンに対応した第2の電圧のときの共振器のQ値よりも低くするQスイッチに、共振器のQ値をレーザ発振しきい値を超える値にさせる調整用電圧を印加するステップと、レーザ媒質に励起光を照射するステップと、励起光の照射に起因して共振器から出力されるレーザ光を計測するステップと、計測されたレーザ光の強度に基づいて、Qスイッチオフに対応した第1の電圧を調整するステップとを有するQスイッチオフ電圧調整方法を提供する。
【発明の効果】
【0025】
本発明のレーザ装置及びその制御方法は、Qスイッチに、共振器のQ値をレーザ発振しきい値を超える値にさせる調整用電圧を印加した状態でレーザ媒質に励起光を照射し、その励起光照射に起因して発生したレーザ光の強度を計測し、計測したレーザ光の強度に基づいてQスイッチオフに対応した第1の電圧を調整する。Qスイッチの複屈折性は温度が変わると変化するため、第1の電圧を印加してQスイッチをオフとするときに、ある温度下では共振器のQ値をレーザ発振しきい値以下にできても、別の温度下では共振器のQ値がレーザ発振しきい値を超えることがある。Qスイッチオフ時に共振器のQ値がレーザ発振しきい値を超えると、Qスイッチがオフになりきらず、レーザ媒質に対する励起光の照射時に共振器において局所的にレーザ発振が生じることがある。局所的にレーザ発振が生じた状態でQスイッチをオンに切り替えると、局所的にレーザ発振した部分に光が集中し、共振器内の光学部品の損傷を招く。本発明では、第1の電圧を調整することで、温度が変化した場合でもQスイッチオフを維持することが可能となり、Qスイッチオフ時にQスイッチがオフになりきらないことで生じる局所的なレーザ発振を抑制して、共振器内の光学部品の損傷を抑制できる。本発明では、開口などを用いてTEM00モードに制限しなくても共振器内の光学部品の損傷を抑制でき、エネルギー損失は少なくて済む。また、エネルギー密度を下げるためにレーザ媒質の径を太くする必要はなく、低コストで、共振器内の光学部品の損傷を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態のレーザ装置を示す。レーザ光源ユニット13は、レーザロッド51、フラッシュランプ52、ミラー53、54、Qスイッチ55、駆動手段56、発振制御手段57、オフ電圧調整手段58、及び光検出器59を備える。レーザロッド51は、レーザ媒質である。レーザロッド51には、アレキサンドライト結晶が用いられる。レーザロッド51から出射する光は所定の偏光軸を持つ。例えば、レーザロッド51から出射する光はP偏光である。
【0028】
フラッシュランプ52は、励起光源であり、レーザロッド51に励起光を照射する。フラッシュランプ52以外の光源を、励起光源として用いてもよい。ミラー53、54は、レーザロッド51を挟んで対向しており、ミラー53、54により共振器が構成される。光共振器内の光路は必ずしも直線状である必要はなく、ミラー53、54間の光路上にプリズムなどを設け、光軸を曲げてもよい。ミラー54はアウトプットカプラー(OC:output coupler)であり、ミラー54からレーザ光が出射する。共振器内には、Qスイッチ55が挿入される。Qスイッチ55は、印加電圧に応じて通過する光の偏光状態を変化させることで、共振器のQ値を変化させる。Qスイッチ55には、印加電圧に応じて通過する光の偏光状態を変化させる電気光学素子を用いることができる。共振器内に更に波長選択手段を挿入し、波長可変レーザとしてもよい。
【0029】
Qスイッチ55は、印加電圧がQスイッチオフに対応した第1の電圧のとき共振器を低Q状態にする。低Q状態とは、共振器のQ値がレーザ発振しきい値よりも低い状態を指す。第1の電圧は、例えばQスイッチ55を1/4波長板として働かせる電圧である。Qスイッチ55は、印加電圧がQスイッチオンに対応した第2の電圧のとき、共振器を高Q状態にする。高Q状態とは、共振器のQ値がレーザ発振しきい値よりも高い状態を指す。第2の電圧は、第1の電圧よりも低い。第2の電圧は、例えば0V(電圧印加なし)であり、このときQスイッチ55を透過する光の偏光状態は変化しない。
【0030】
Qスイッチ55に第1の電圧が印加されるとき、Qスイッチ55は1/4波長板として働き、レーザロッド51からQスイッチ55に入射したP偏光の光は、Qスイッチ55を通過して円偏光となり、ミラー53で反射してQスイッチ55に逆向きに入射する。Qスイッチ55に逆向きに入射した円偏光の光は、Qスイッチ55を通過してS偏光となり、S偏光でレーザロッド51に帰還する。レーザロッド51のS偏光のゲインは低く、レーザ発振は起こらない。一方、Qスイッチ55への印加電圧が0V(第2の電圧)のとき、レーザロッド51からQスイッチ55に入射したP偏光の光はP偏光のままQスイッチ55を透過し、ミラー53で反射する。ミラー53で反射したP偏光の光は、偏光状態を変化させずにQスイッチ55を透過し、P偏光でレーザロッド51に帰還する。レーザロッド51のP偏光のゲインは高く、レーザ発振が起こる。
【0031】
駆動手段56は、Qスイッチ55へ電圧を印加し、Qスイッチ55を駆動する。発振制御手段57は、駆動手段56を通じてQスイッチ55への印加電圧を制御する。また、フラッシュランプ52の点灯を制御する。発振制御手段57は、Qスイッチ55への印加電圧が第1の電圧のときにフラッシュランプ52を点灯し、レーザロッド51に励起光を照射させる。レーザロッド51の励起後、例えばアレキサンドライト結晶における反転分布密度が十分に高くなるタイミングで、Qスイッチ55への印加電圧を第1の電圧から第2の電圧に変化させる。共振器のQ値を低Qから高Qに急速に変化させることで、ジャイアントパルスが得られる。
【0032】
ここで、Qスイッチ55に用いられる電気光学素子の複屈折性は温度依存性を有しており、Qスイッチ55を1/4波長板として働かせる電圧は、温度に依存して変化する。共振器内の温度は時間経過と共に変化することがあり、ある時点では第1の電圧の印加時にQスイッチ55を1/4波長板として働かせることができても、別の時点では第1の電圧の印加時にQスイッチ55が1/4波長板として働かなくなることがある。Qスイッチオフ時にQスイッチ55が1/4波長板として働かなくなると、Qスイッチ55がオフになりきらず、すなわち共振器のQ値を十分に低くすることができなくなり、フラッシュランプ52の点灯時に、局所的にレーザ発振が起こることがある。本発明者らは、このような局所発振が、共振器内の光学部品の損傷の原因になり得ると考えた。そこで、本実施形態では、Qスイッチオフに対応する第1の電圧を調整し、温度が変化したときでも、Qスイッチオフ時にレーザ発振が起こらないようにする。
【0033】
オフ電圧調整手段58は、Qスイッチオフに対応した第1の電圧を調整する。光検出器59は、共振器から出射する光を計測する。光検出器59には、フォトダイオードやパワーモニタなどを用いることができる。オフ電圧調整手段58は、Qスイッチ55に、共振器のQ値をレーザ発振しきい値を超える値にさせる調整用電圧が印加された状態でレーザロッド51に励起光を照射させる。共振器のQ値はレーザ発振しきい値を超えていているため、励起光照射に起因して、出力側のミラー54からレーザ光が出射する。オフ電圧調整手段58は、光検出器59が検出した光の強度に基づいて、第1の電圧を調整する。オフ電圧調整手段58は、Qスイッチ55に第1の電圧が印加されたときに共振器のQ値がレーザ発振しきい値以下となるように、第1の電圧を調整する。第1の電圧は、理想的には、調整時の温度下でQスイッチ55を1/4波長板として働かせる電圧に調整される。
【0034】
図2は、Qスイッチ55の印加電圧と共振器から出射する光の強度との関係を示す。Qスイッチ55の印加電圧を変化させながらフラッシュランプ52を点灯し、各電圧のときに共振器から出射する光の強度を計測すると、
図2に示す結果が得られた。励起エネルギーは12.6Jである。この例では、Qスイッチ55を1/4波長板として働かせる電圧は2.2kVである。Qスイッチ55への印加電圧が2.2kVを中心とした0.8kVの範囲(2.2kV±0.4kV)にあるときは、共振器のQ値が十分に低く、レーザ発振は起こらない。
【0035】
Qスイッチ55への印加電圧が1.8kVよりも低い範囲、及び2.6kVよりも高い範囲では、共振器のQ値が十分に低くなく、レーザ発振が起こってミラー54から光(漏れ光)が出射する。ミラー54から出射する光の強度は、Qスイッチ55を1/4波長板として働かせる電圧との差が大きいほど強くなる。Qスイッチ55の印加電圧と共振器から出射する光の強度との関係を示すグラフは、Qスイッチ55を1/4波長板として働かせる電圧である2.2kVを中心として、電圧変化に対して対称性を有している。
【0036】
Qスイッチ55の温度が変化し、Qスイッチ55を1/4波長板として働かせる電圧が2.2kVから変化すると、印加電圧と共振器から出射する光の強度との関係は、Qスイッチ55を1/4波長板として働かせる電圧の変化の分だけ、電圧の高い側又は低い側にシフトする。励起時にQスイッチ55に印加される第1の電圧が、Qスイッチ55を1/4波長板として働かせる電圧を中心とした0.8kVの範囲から外れると、Qスイッチ55が完全にオフしなくなり、Qスイッチオフ時に望ましくないレーザ発振が起こる。
【0037】
図3は、励起エネルギーが13.5JのときのQスイッチ55の印加電圧と共振器から出射する光の強度との関係を示す。
図2では、レーザ発振が起こらない電圧範囲は2.2kVを中心とした0.8kVであったのに対し、
図3では、レーザ発振が起こらない電圧範囲は2.2kVを中心とした0.4kVとなっている。このように、励起エネルギーが増えると、レーザ発振が起こらない電圧範囲が狭くなる。
【0038】
図4は、温度とQスイッチオフ電圧との関係を示す。実線は、Qスイッチ55を1/4波長板として働かせる電圧を示す。Qスイッチ55を1/4波長板として働かせる電圧は、温度変化に対して負の傾きを有する。その傾きは、Qスイッチ55がKD
*P結晶を用いたポッケルスセルの場合、波長750nmにおいて−35V/℃である。破線は、レーザ発振が起こらない電圧の上限と下限とを示す。フラッシュランプ52の点灯時にQスイッチ55に印加される電圧が上限と下限との間の範囲にあれば、Qスイッチオフ時にレーザ発振が起こらない。上限と下限の差は、調整裕度に相当する。
【0039】
ここで、オフ電圧調整手段58が第1の電圧の調整時にQスイッチ55に印加する調整用電圧は、例えば基準となる電圧よりも所定の電圧(ΔV1)だけ高い第1の調整用電圧と、基準となる電圧よりも所定の電圧(ΔV2)だけ低い第2の調整用電圧とを含んでいてもよい。基準となる電圧は、例えば調整前の第1の電圧である。基準となる電圧は、共振器内の温度に応じて定められた電圧でもよい。例えば、温度と基準となる電圧とを対応付けて記憶するテーブルを参照し、テーブルから調整時の温度に対応する基準となる電圧を取得してもよい。
【0040】
上記のΔV1及びΔV2の値は、レーザロッド51に照射される励起光のエネルギーに応じて変化させてもよい。例えば、励起エネルギーとΔV1及びΔV2の値とを対応付けて記憶するテーブルを参照し、テーブルからレーザロッド51への励起エネルギーに対応するΔV1及びΔV2の値を取得してもよい。ΔV1とΔV2の値は互いに等しくてもよいし、異なっていてもよい。オフ電圧調整手段58は、Qスイッチ55に第1の調整用電圧が印加されているときに光検出器59が計測した光の強度と、Qスイッチ55に第2の調整用電圧が印加されているときに光検出器59が計測した光の強度との差に基づいて第1の電圧を調整する。
【0041】
図5は、Qスイッチ55への印加電圧と共振器から出射する光強度との関係を示す。
図5を参照して、第1の電圧の調整について説明する。Qスイッチ55への印加電圧が、Qスイッチ55を1/4波長板として働かせる電圧を中心とした所定の範囲にあるときは、レーザ発振は起こらずに、共振器外部へ光が出射しない。Qスイッチ55への印加電圧が、Qスイッチ55を1/4波長板として働かせる電圧を中心とした所定の範囲よりも高い範囲における電圧変化に対する光強度の変化(傾き)をa(mJ/V)とする。また、Qスイッチ55への印加電圧が、Qスイッチ55を1/4波長板として働かせる電圧を中心とした所定の範囲よりも低い範囲における電圧変化に対する光強度の変化(傾き)を−a(mJ/V)とする。傾きa、−aの値は、励起エネルギーに応じてあらかじめ設定されている。
【0042】
第1の調整用電圧V1は、調整前の第1の電圧(Voff)よりもαだけ高い電圧(Voff+α)であり、第2の調整用電圧V2は、調整前の第1の電圧(Voff)よりもαだけ低い電圧(Voff−α)である。αの大きさは、レーザロッド51の励起エネルギーや共振器損失などに応じて適宜決められる。例えば励起エネルギーが13.5Jのとき、αは、共振器のQ値がレーザ発振しきい値以下となる範囲の幅である0.4kV(
図3参照)よりも高い0.6kVに設定される。Qスイッチ55に第1の調整用電圧V1が印加されている状態でフラッシュランプ52を点灯したときに光検出器59が計測した光の強度をA1とし、Qスイッチ55に第2の調整用電圧V2が印加されている状態でフラッシュランプ52を点灯したときに光検出器59が計測した光の強度をA2とする。
【0043】
Qスイッチ55に第1の調整用電圧V1が印加されているときに光検出器59が計測した光の強度と、Qスイッチ55に第2の調整用電圧V2が印加されているときに光検出器59が計測した光の強度との差をA1−A2と定義する。A1−A2>0であれば、調整前の第1の電圧Voffは、調整時の温度下でQスイッチ55を1/4波長板として働かせる電圧よりも高い電圧になっている。この場合、オフ電圧調整手段58は、第1の電圧を下げる方向に調整すればよい。上記とは逆に、A1−A2<0であれば、調整前の第1の電圧Voffは、調整時の温度下でQスイッチ55を1/4波長板として働かせる電圧よりも低い電圧になっている。この場合、オフ電圧調整手段58は、第1の電圧を上げる方向に調整すればよい。
【0044】
調整時の温度下でQスイッチ55を1/4波長板として働かせる電圧は、高電圧側と低電圧側とで計測される光強度が同じになる電圧、例えば計測される光強度がA1又はA2になる電圧を計算し、両電圧の中間の電圧を計算することで求めることができる。例えば、Qスイッチ55を1/4波長板として働かせる電圧よりも高電圧側で、計測される光強度が第2の調整用電圧V2が印加されるときと同じ強度A2となる電圧は、グラフの傾きと光強度の差とから、V1−(A1−A2)/aと計算できる。この電圧と第2の調整用電圧V2との中間の電圧は、{V1−(A1−A2)/a+V2}/2={Voff+α−(A1−A2)/a+Voff−α}/2=Voff−(A1−A2)/2aとなる。このようにして求めた電圧を、調整後の第1の電圧とすればよい。
【0045】
図6は、各部の動作波形を示す。レーザ出射時は、Qスイッチ55に、第1の電圧、例えば2.2kVの電圧が印加する(b)。Qスイッチ55に2.2kVの電圧が印加された状態でフラッシュランプ52を点灯し(a)、その後、一時的にQスイッチ55への印加電圧を0Vに下げる(b)。共振器内のQ値が変化することでQスイッチパルス発振が起こり、ミラー54からパルスレーザ光が出射する(c)。
【0046】
第1の電圧の調整時は、まず、Qスイッチ55に、第1の電圧よりも高い第1の調整用電圧、例えば2.8kVを印加する(b)。Qスイッチ55に2.8kVの電圧が印加された状態でフラッシュランプ52を点灯する(a)。共振器のQ値が発振しきい値を超えていることから、フラッシュランプ52の点灯後、共振器においてレーザ発振が起こり、ミラー54からロングパルス光が出射する(c)。光検出器59により、共振器から出射する光の強度を計測する。
【0047】
次いで、Qスイッチ55に、第1の電圧よりも低い第2の調整用電圧、例えば2.2kVを印加し(b)、Qスイッチ55に2.2kVの電圧が印加された状態でフラッシュランプ52を点灯する(a)。共振器のQ値が発振しきい値を超えていることから、フラッシュランプ52の点灯後、共振器においてレーザ発振が起こり、ミラー54からロングパルス光が出射する(c)。光検出器59により、共振器から出射する光の強度を計測する。第1の調整用電圧が印加されたときの光強度と第2の調整用電圧が印加されたときの光強度とに基づいて第1の電圧を調整する。
【0048】
続いて、共振器から出射する光の強度の計測について説明する。光検出器59は、共振器から出射した光の一部を分割し、分割された光を受光してその強度を計測してもよい。あるいは、共振器外部の光学素子からの散乱光を受光し、その強度を計測することとしてもよい。さらには、出力側のミラー54ではなく、リア側のミラー53から出射した光を受光し、その強度を計測してもよい。
【0049】
図7は、光計測の第1の態様を示す。この例では、ミラー54から出射した光の光路上にビームスプリッタ61が設けられる。ビームスプリッタ61は、ミラー54から出射した光の一部を反射し、残りを透過する。ビームスプリッタ61は、ミラー54から出射した光の多くを透過し、一部のみを光検出器59方向へ反射する。光検出器59は、ビームスプリッタ61で反射した光を受光し、その強度を計測する。
【0050】
図8は、光計測の第1の態様の変形例を示す。この例では、ミラー54から出射した光の光路上に1/2波長板64と偏光子65とが設けられる。1/2波長板64は、光軸周りに回転可能に配置される。偏光子65は、特定方向の直線偏光を透過する。偏光子65には、例えば特定方向の直線偏光を透過し、それと直交する方向の直線偏光を反射する偏光ビームスプリッタを用いることができる。1/2波長板64を光軸周りに回転させることで、後段の偏光子65を透過・反射する光量の割合を変化させることができる。光検出器59は、使用されない方の光路上に配置され、偏光子65で分割された光の強度を計測する。
【0051】
図9は、光計測の第2の態様を示す。この例では、ミラー54から出射した光の光路上にシャッタ62が設けられる。シャッタ62は、第1の電圧の調整時に、ミラー54から出射した光の光路上に挿入される。第1の電圧の調整時にミラー54から出射したロングパルス光はシャッタで遮られる。光検出器59は、シャッタ62で散乱した光を受光し、その強度を計測する。
【0052】
散乱光を生じさせる光学素子はシャッタには限定されず、光検出器59が、シャッタ62以外の光学素子からの散乱光を受光するように構成してもよい。
図10は、光計測の第2の態様の変形例を示す。この変形例では、ミラー54から出射した光の光路上に、ミラーや、レンズ、拡散板などの光学素子63が設けられる。光学素子63は、例えばミラー54から出射した光を、光ファイバなどの導光部材に入射する際に用いられる。光学素子63に光が入射すると、一部が散乱され、散乱光が生じる。その散乱光を、光検出器59で計測することとしてもよい。
【0053】
図11は、光計測の第3の態様を示す。共振器内でレーザ発振が起こったとき、光の多くはアウトプットカプラーであるミラー54から出射するが、一部はリア側のミラー53からも出射する。光検出器59は、リア側のミラー53から出射した光を受光し、その強度を計測する。
【0054】
上記した光計測の各態様は、適宜組み合わせて使用することができる。
図12は、第1の態様と第2の態様とを組み合わせた例を示す。1/2波長板64と偏光子65とが設けられ、ミラー54から出射した光の一部を偏光子65で分割する点は第1の態様と同様である。
図12では、偏光子65で分割された光の進行先に、光を吸収するためのビームダンパ66が設けられる。光検出器59は、ビームダンパ66で散乱した光を受光し、その強度を計測する。
【0055】
次いで、第1の電圧の調整の動作手順を説明する。
図13は、第1の電圧の調整の動作手順を示す。オフ電圧調整手段58は、駆動手段56を通じて、Qスイッチ55に第1の調整用電圧を印加する(ステップS1)。オフ電圧調整手段58は、フラッシュランプ52を点灯し、レーザロッド51に励起光を照射させる(ステップS2)。レーザロッド51に励起光を照射すると、共振器においてレーザ発振が起こり、出力側のミラー54からロングパルス光が出射する。光検出器59は、ミラー54から出射する光の強度を計測する(ステップS3)。
【0056】
オフ電圧調整手段58は、駆動手段56を通じて、Qスイッチ55に第2の調整用電圧を印加する(ステップS4)。オフ電圧調整手段58は、フラッシュランプ52を点灯し、レーザロッド51に励起光を照射させる(ステップS5)。レーザロッド51に励起光を照射すると、共振器においてレーザ発振が起こり、出力側のミラー54からロングパルス光が出射する。光検出器59は、ミラー54から出射する光の強度を計測する(ステップS6)。
【0057】
オフ電圧調整手段58は、ステップS3で計測された光強度と、ステップ6で計測された光強度とに基づいて、第1の電圧を調整する(ステップS7)。オフ電圧調整手段58は、例えばステップS3で計測された光強度とステップ6で計測された光強度との差に基づいて第1の電圧の調整量を決定する。オフ電圧調整手段58は、駆動手段56に対し、調整された第1の電圧を設定する。駆動手段56は、調整後の第1の電圧をQスイッチ55に印加する。
【0058】
オフ電圧調整手段58は、周期的に第1の電圧の調整を行ってもよい。オフ電圧調整手段58は、例えば10分ごとや30分ごとに、定期的に第1の電圧の調整を行う。周期的に第1の電圧の調整を行うのに代えて、又はこれに加えて、共振器内の温度を温度センサなどでモニタし、前回の調整時からの温度変化がしきい値を超えたときに第1の電圧の調整を行うこととしてもよい。あるいは、Qスイッチ55への印加電圧が第1の電圧の状態でレーザロッド51に励起光が照射された後で、かつQスイッチ55への印加電圧が第2の電圧に変化される前に、光検出器59が共振器から光が出射しているか否かを検出し、出射している場合に第1の電圧の調整を行ってもよい。
【0059】
なお、第1の調整用電圧の印加と第2の調整用電圧の印加とは、どちらを先に行ってもよい。また、第1の調整用電圧の印加と第2の調整用電圧の印加は、必ずしも連続的に行う必要はなく、第1の調整用電圧を印加してロングパルス光を出射した後に通常のQスイッチパルス発振を行ってパルスレーザ光の出射を行い、その後、第2の調整用電圧を印加してロングパルス光の出射を行うこととしてもよい。
【0060】
引き続き、本発明の一実施形態のレーザ装置を含む光音響計測装置を説明する。
図14は、レーザ光源ユニット13を含む光音響計測装置を示す。光音響計測装置10は、超音波探触子(プローブ)11と、超音波ユニット12と、レーザ光源ユニット13とを備える。なお、本発明の実施形態では、音響波として超音波を用いるが、超音波に限定されるものでは無く、被検対象や測定条件等に応じて適切な周波数を選択してさえいれば、可聴周波数の音響波を用いても良い。
【0061】
レーザ光源ユニット13から出射したレーザ光は、例えば光ファイバなどの導光手段を用いてプローブ11まで導光され、プローブ11から被検体に向けて照射される。レーザ光の照射位置は特に限定されず、プローブ11以外の場所からレーザ光の照射を行ってもよい。レーザ光源ユニット13において第1の電圧の調整を行う際には、例えばレーザ光源ユニット13から被検体への光照射部までの間に設けられたシャッタなどを閉じ、Qスイッチ55(
図1)に調整用電圧を印加してフラッシュランプ52を点灯することで発生するロングパルス光が被検体などに照射されることを防ぐとよい。
【0062】
被検体内では、光吸収体が照射されたレーザ光のエネルギーを吸収することで超音波(音響波)が生じる。プローブ11は、音響波検出手段であり、例えば一次元的に配列された複数の超音波振動子を有している。プローブ11は、一次元配列された複数の超音波振動子により、被検体内からの音響波(光音響波)を検出する。また、プローブ11は、被検体に対する音響波(超音波)の送信、及び送信した超音波に対する被検体からの反射音響波(反射超音波)の受信を行う。
【0063】
超音波ユニット12は、受信回路21、AD変換手段22、受信メモリ23、データ分離手段24、光音響画像生成手段25、超音波画像生成手段26、画像合成手段27、制御手段28、及び送信制御回路29を有する。受信回路21は、プローブ11で検出された光音響波の検出信号を受信する。また、プローブ11で検出された反射超音波の検出信号を受信する。AD変換手段22は、受信回路21が受信した光音響波及び反射超音波の検出信号をデジタル信号に変換する。AD変換手段22は、例えば所定の周期のサンプリングクロック信号に基づいて、所定のサンプリング周期で光音響波及び反射超音波の検出信号をサンプリングする。AD変換手段22は、サンプリングした光音響波及び反射超音波の検出信号(サンプリングデータ)を受信メモリ23に格納する。
【0064】
データ分離手段24は、受信メモリ23に格納された光音響波の検出信号のサンプリングデータと反射超音波の検出信号のサンプリングデータとを分離する。データ分離手段24は、光音響波の検出信号のサンプリングデータを光音響画像生成手段25に入力する。また、分離した反射超音波のサンプリングデータを、超音波画像生成手段(反射音響波画像生成手段)26に入力する。
【0065】
光音響画像生成手段25は、プローブ11で検出された光音響波の検出信号に基づいて光音響画像を生成する。光音響画像の生成は、例えば、位相整合加算などの画像再構成や、検波、対数変換などを含む。超音波画像生成手段26は、プローブ11で検出された反射超音波の検出信号に基づいて超音波画像(反射音響波画像)を生成する。超音波画像の生成も、位相整合加算などの画像再構成や、検波、対数変換などを含む。
【0066】
画像合成手段27は、光音響画像と超音波画像とを合成する。画像合成手段27は、例えば光音響画像と超音波画像とを重畳することで画像合成を行う。合成された画像は、ディスプレイなどの画像表示手段14に表示される。画像合成を行わずに、画像表示手段14に、光音響画像と超音波画像とを並べて表示し、或いは光音響画像と超音波画像とを切り替えてすることも可能である。
【0067】
制御手段28は、超音波ユニット12内の各部を制御する。制御手段28は、例えばレーザ光源ユニット13にトリガ信号を送る。レーザ光源ユニット13の発振制御手段57(
図1)は、トリガ信号を受け取ると、フラッシュランプ52を点灯し、その後、Qスイッチ55への印加電圧を第1の電圧から第2の電圧に切り替えてパルスレーザ光を出射させる。制御手段28は、レーザ光の照射に合わせて、AD変換手段22にサンプリングトリガ信号を送り、光音響波のサンプリング開始タイミングを制御する。
【0068】
制御手段28は、超音波画像の生成時は、送信制御回路29に超音波送信を指示する旨の超音波送信トリガ信号を送る。送信制御回路29は、超音波送信トリガ信号を受けると、プローブ11から超音波を送信させる。制御手段28は、超音波送信のタイミングに合わせてAD変換手段22にサンプリグトリガ信号を送り、反射超音波のサンプリングを開始させる。
【0069】
本実施形態では、Qスイッチ55に第1の電圧が印加されるときがQスイッチオフに対応し、Qスイッチ55に第1の電圧よりも低い第2の電圧が印加されるときがQスイッチオンに対応している。第1の電圧の調整では、Qスイッチ55に、共振器のQ値がレーザ発振しきい値を超える調整用電圧を印加した状態でレーザロッド51に励起光を照射し、共振器から出射する光の強度を計測し、計測された光強度に基づいてQスイッチオフに対応した第1の電圧を調整する。第1の電圧の調整を行うことで、温度変化に起因してQスイッチ55を1/4波長板として働かせる電圧が変化したときでも、第1の電圧を、共振器のQ値をレーザ発振しきい値以下にする電圧に維持できる。
【0070】
Qスイッチ55の複屈折性は温度に依存して変化するため、Qスイッチ55に固定的に第1の電圧が印加し続けるとき、時間経過と共にQスイッチ55の温度が変化すると、ある時点で共振器のQ値がレーザ発振しきい値を超え、Qスイッチがオフになりきらずに局所的にレーザ発振が起こることがある。Qスイッチオフ時に局所的にレーザ発振が起こっている状態でQスイッチをオンに切り替えると、Qスイッチパルス発振時に光が局所的にレーザ発振していた部分に集中し、光学部品が損傷する可能性がある。本実施形態では、第1の電圧を調整することで、温度が変化したときでもQスイッチオフを維持することができ、Qスイッチオフ時の局所的なレーザ発振を抑制して、共振器内の光学部品の損傷を抑制することができる。
【0071】
ここで、非特許文献2では、開口などを用いてTEM00モードに制限することで、共振器内の光学部品の損傷を低減している。しかし、アレキサンドライトは、室温では誘導放出断面積が小さいため、開口などを用いてTEM00モードに制限すると、大きなエネルギー損失が生じる。これに対し、本実施形態では、開口などを設ける必要がないため、非特許文献2に比べてエネルギーの利用効率を向上できる。また、非特許文献3では、光学部品の損傷しきい値に対し十分弱いエネルギー密度で発振させることで、共振器内の光学部品の損傷を低減している。しかし、エネルギー密度を下げるためにはアレキサンドライトのロッドの径を太くしなければならず、高コストとなる。本実施形態は、非特許文献3とは異なり、レーザロッド51の径を太くする必要はなく、共振器内の光学部品の損傷の抑制を低コストで実現できる。
【0072】
なお、上記実施形態では、第1の電圧の調整時に2つの調整用電圧を印加し、それぞれにおいて共振器から出射する光の強度を計測することを説明したが、調整用電圧の印加は必ずしも2回必要ではなく、少なくとも1回印加すればよい。例えば、Qスイッチパルス発振を行うときで、Qスイッチオフ時に既に共振器から光が出射している場合、すなわちQスイッチ55への印加電圧が第1の電圧から第2の電圧に切り替えられる前に共振器から光が出射している場合は、そのときのQスイッチ55への印加電圧を調整用電圧の1つとみなし、調整用電圧をあと1回印加して第1の電圧を調整してもよい。
【0073】
Qスイッチオフ時に既に共振器から光が出射しており、そのときのQスイッチ55の印加電圧(調整前の第1の電圧)を調整用電圧の1つとみなす場合、調整前の第1の電圧が調整時の温度下でQスイッチ55を1/4波長板として働かせる電圧よりも高ければ、調整時の温度下でQスイッチ55を1/4波長板として働かせる電圧よりも低い側で共振器のQ値をレーザ発振しきい値よりも高くする電圧を、調整用電圧として印加すればよい。これとは逆に、調整前の第1の電圧が調整時の温度下でQスイッチ55を1/4波長板として働かせる電圧よりも低ければ、調整時の温度下でQスイッチ55を1/4波長板として働かせる電圧よりも高い側で共振器のQ値をレーザ発振しきい値よりも高くする電圧を、調整用電圧として印加すればよい。調整前の第1の電圧が、調整時の温度下でQスイッチ55を1/4波長板として働かせる電圧よりも高いか低いかは、共振器内の温度が高くなる方向へ変化しているか、低くなる方向へ変化しているかによって判断できる。
【0074】
上記実施形態では、光音響計測装置10においてプローブ11が光音響波と反射超音波の双方を検出するものとして説明したが、超音波画像の生成に用いるプローブと光音響画像の生成に用いるプローブとは、必ずしも同一である必要はない。光音響波と反射超音波とを、それぞれ別個のプローブで検出するようにしてもよい。また、上記実施形態では、レーザ装置が光音響計測装置の一部を構成する例について説明したが、これには限定されない。本発明のレーザ装置を、光音響計測装置とは異なる装置に用いることも可能である。
【0075】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明のレーザ装置、その制御方法、及び光音響計測装置は、上記実施形態にのみ限定されるものではなく、上記実施形態の構成から種々の修正及び変更を施したものも、本発明の範囲に含まれる。