【実施例1】
【0025】
図1は、本発明のセンサデータ送信装置の実施例1を示す。実施例1のセンサデータ送信装置は、
図6のマンホール5内の無線タグ20あるいは
図7(a) の電柱の無線タグ20に適用され、無線タグ20に対して電磁誘導方式で要求信号が伝送されることを想定している。
【0026】
図1において、実施例1のセンサデータ送信装置を構成するLF帯受信部23、制御部24、無線送信部25、測定用センサ26は、
図6に示す従来の無線タグ20の各部に対応する。電磁誘導用アンテナ21および送信アンテナ22は省略している。
【0027】
実施例1のセンサデータ送信装置の特徴は、電源部30として振動発電機31およびキャパシタ/二次電池32を備え、さらに起動用センサ33、測定用センサ26および無線送信部25に対する電力供給をオンオフするスイッチ部34,35を備え、制御部24で各部の制御を行うところにある。
【0028】
制御部24および起動用センサ33は電源部30から常時電力供給され、測定用センサ26および無線送信部25は制御部24の制御によりスイッチ部34,35を介して電力供給がオンオフする。LF帯受信部23は、キャパシタ/二次電池32からの電力供給は不要であり、電磁誘導方式による起電力で動作する。ここで、単位時間当たりの振動発電機31の発電量と各部の消費電力量の絶対値は、次の関係にあるものとする。無線送信部25>測定用センサ26>振動発電機31>起動用センサ33>制御部24>LF帯受信部23となり、別途、
図3を参照して具体的に説明する。
【0029】
振動発電機31は、センサデータを取得する対象物に直接または無線タグの筐体などを介して取り付けられ、対象物が振動する運動エネルギーを電気エネルギーに変換して発電する機能を有する。また、対象物の振動を増幅または振動に共振する機械的部材を介して振動発電機31に対象物の振動が伝達される構成でもよい。
【0030】
キャパシタ/二次電池32は、振動発電機31で発電された電気エネルギーを蓄積するとともに、センサデータ送信装置の各部に電力を供給する。なお、振動の大きさやその周期により発生するピーク電圧が低い場合には、振動発電機31とキャパシタ/二次電池32との間に昇圧回路を挿入して低いピーク電圧でも充電を可能とする構成でもよい。
【0031】
このような振動発電機31や昇圧回路の例としては、例えば次のような参考文献で公知になっている。
【0032】
参考文献1:微小な振動で発電する小型の「環境振動発電デバイス」を開発〜振動エネルギーを電力に変換するエコ技術〜 2008年11月11日 OMRON(http://www.omron.co.jp/press/2008/11/c1111.html )
参考文献2:CT3-C001 光エネルギーを効率よく活用する技術 極低電圧昇圧回路IC技術 NTT Technology Licensing Site (http://www.ntt-tec.jp/technology/CT3-C001.html)
【0033】
測定用センサ26は、センサデータを取得する対象物に直接または無線タグの筐体などを介して取り付けられ、対象物の振動を測定する振動センサまたは傾斜などを測定する傾斜センサなどが用いられる。
【0034】
起動用センサ33は、対象物に直接または無線タグの筐体などを介して取り付けられ、対象物の所定の変位、例えば所定値以上の振動を検出したときにトリガ信号を制御部24に出力する。起動用センサ33には、微小電力で動作する加速度センサや無電力で動作するラトルボール振動センサなどを用いることができる。
【0035】
図2は、本発明のセンサデータ送信装置の実施例1の制御手順を示す。
図2において、まず制御部24は、振動発電機31が振動発電し、キャパシタ/二次電池32に発電電力を供給しているか否かを判断する(S1)。ここで、振動発電が行われていない場合は、振動発電が開始されるまで待機する。振動発電が行われ、キャパシタ/二次電池32に発電電力が供給されている場合には、蓄電量が増加する(S2)。ここで、蓄電量とは、キャパシタ/二次電池32に電力が蓄積された量を指す。そしてこのキャパシタ/二次電池32から電力を取り出して、測定用センサ26や無線送信部25を駆動するため給電される際には、キャパシタ/二次電池32に残る電力の量が蓄電量となる。
【0036】
次に制御部24は、起動用センサ33からトリガ信号の出力があるか否かを監視する(S3)。ここで、起動用センサ33が対象物の所定の変位を感知してトリガ信号を出力すれば、制御部24は測定用センサ26の所定期間の駆動が可能な電力量を超える蓄電量がキャパシタ/二次電池32にあるか否かを確認する(S4)。蓄電量が十分でない場合は、測定用センサ26を駆動せずにステップS1に戻る。蓄電量が十分であれば、制御部24はスイッチ部34を制御して測定用センサ26に電力供給を行い、所定期間だけ駆動してセンサデータを取得する(S5)。測定用センサ26を所定期間だけ駆動した後は、スイッチ部34を制御して測定用センサ26への電力供給を停止する。
【0037】
一方、起動用センサ33がトリガ信号を出力していなければ(S3:No)、LF帯受信部23が外部のリーダ(
図6の10)から送信された送信要求を受信しているか否かを判断する(S6)。ここで、送信要求を受信していれば次のステップS7に進み、送信要求を受信していなければステップS1に戻る。なお、LF帯受信部23で要求信号を受信するタイミングは不定期なので、制御部24は要求信号を受信したタイミングで割り込みをかけてステップS6の判断処理を行う。制御部24は、送信要求を受信していれば、無線送信部25の駆動が可能な電力量を超える蓄電量がキャパシタ/二次電池32にあるか否かを確認する(S7)。蓄電量が十分でない場合は、無線送信部25を駆動せずにステップS1に戻る。蓄電量が十分であれば、制御部24はスイッチ部35を制御して無線送信部25に電力供給を行い、要求信号に対応する応答信号(センサデータ)を無線送信する(S8)。無線送信部25を駆動した後は、スイッチ部35を制御して無線送信部25への電力供給を停止する。なお、
図2に示した制御手順において、起動用センサ33の出力の有無の判断(S3)と、送信要求受信の有無の判断(S6)の順序が逆であっても構わない。
【0038】
図3は、本発明のセンサデータ送信装置の実施例1の動作例を示す。
図3において、横軸に時間、上側の縦軸に単位時間当たりの振動発電機31の発電量と各部の消費電力量の絶対値の大きい順に示し、下側の縦軸にキャパシタ/二次電池32に蓄積および残された電力の量である蓄電量を示す。すなわち、無線送信部25および測定用センサ26の消費電力量は、振動発電機31の発電量よりも大きい。したがって、例えば測定用センサ26を常時稼働させれば、発電量を上回る消費電力量となり、キャパシタ/二次電池32の蓄電量は徐々に低下して動作不能になる。起動用センサ33および制御部24の消費電力量は、振動発電機31の発電量よりも小さい。例えば、振動発電機31が発電しているときに、制御部24だけが動作する場合は、発電量が消費電力量より大きいので蓄電量は増える。
【0039】
以上の関係において、起動用センサ33がトリガ信号を出力した時刻t1では、測定用センサ26の所定期間の駆動が可能な電力量(測定用センサ駆動閾値)を超える蓄電量がキャパシタ/二次電池32にあるので、測定用センサ26を所定期間だけ駆動してセンサデータを取得する。その間、蓄電量はやや低下する。次に、LF帯受信部23が要求信号を受信した時刻t2では、無線送信部25の駆動が可能な電力量(無線送信部駆動閾値)を超える蓄電量がキャパシタ/二次電池32にあるので、無線送信部25を駆動して応答信号(センサデータ)を送信する。この無線送信部25の駆動により、キャパシタ/二次電池32の蓄電量は急激に低下する。
【0040】
次に、起動用センサ33がトリガ信号を出力した時刻t3では、キャパシタ/二次電池32の蓄電量は測定用センサ駆動閾値を超えていないので、測定用センサ26を駆動しない。次に、LF帯受信部23が要求信号を受信した時刻t4では、キャパシタ/二次電池32の蓄電量は無線送信部駆動閾値を超えていないので、無線送信部25を駆動しない。すなわち、起動用センサ33および無線送信部25は
、キャパシタ/二次電池32の蓄電量
が駆動に必要な消費電力量を上回っているときに限り駆動し、センサデータを取得し、応答信号(センサデータ)を送信する。また、起動用センサ33および無線送信部25が駆動しないときは、振動発電機31の発電量が
消費電力量を上回っているので徐々に蓄電量が大きくなり、起動用センサ33および無線送信部25の駆動に備えることになる。
【0041】
以上示したように、実施例1のセンサデータ送信装置では、対象物の振動を利用して発電し、振動を測定してセンサデータとして送信する。対象物としては、上記のようにマンホールや電柱の他に、振動するもので振動データを保守点検に利用するものであれば、例えば高層ビル、橋梁、トンネル、その他の建築物にも適用することができる。さらに、これまで
図1から
図3に参照して説明した実施例1において、振動発電に代えて、振動発電を含む太陽電池や温度差発電などの環境発電を単独または組合せて使用しても良い。どの環境発電を採用するのかは、適用対象の周囲の環境により判断する。例えば、高層ビルの外壁など体積の大きな対象物ではその表面と内側の温度差がある場合が多く、その温度差で発電できると期待される。
【実施例2】
【0042】
図4は、本発明のセンサデータ送信装置の実施例2を示す。実施例2のセンサデータ送信装置は、
図7(b) の高圧送電ケーブルの鉄塔の無線タグ20あるいは
図7(c) の高圧送電ケーブルの無線タグ20に適用され、無線タグ20に対して電波方式で要求信号が伝送されることを想定している。
【0043】
図4において、実施例2のセンサデータ送信装置は、実施例1の電源部30の振動発電機31に代えて電磁誘導発電機38を備え、実施例1のLF帯受信部23に代えて無線受信部36を備え、無線受信部36に対する電力供給をオンオフするスイッチ部37を備えたもので、その他の構成は実施例1と同様である。
【0044】
電磁誘導発電機38は、センサデータを取得する対象物に直接または無線タグの筐体などを介して取り付けられ、高圧送電ケーブルで発生する電磁界エネルギーを電気エネルギーに変換して発電する機能を有する。例えば、コイル状のアンテナと整流器あるいはインバータを組み合わせた装置で実現することができる。この電磁誘導発電機38は、高圧送電ケーブルが送電している間は常に発電が可能であり、振動発電機に比べて安定的な電源になりうる。ただし、電磁誘導発電機38に許容できる大きさは限られているため、単位時間当たりの発電量は振動発電機と同等程度とみなしている。
【0045】
制御部24および起動用センサ33は電源部30から常時電力供給され、測定用センサ26、無線送信部25および無線受信部36は制御部24の制御によりスイッチ部34,35,37を介して電力供給がオンオフする。ここで、単位時間当たりの電磁誘導発電機38の発電量と各部の消費電力量の絶対値は、次の関係にあるものとする。無線送信部25>測定用センサ26>電磁誘導発電機38>無線受信部36>起動用センサ33>制御部24となる。
【0046】
なお、スイッチ部34は、起動用センサ33から出力されるトリガ信号に応じて、測定用センサ26を所定期間だけ駆動する電力の供給制御に用いられる。スイッチ部35は、無線受信部36に受信される要求信号に応じて、無線送信部25を駆動する電力の供給制御に用いられる。スイッチ部37は、無線受信部36を間欠動作させるための電力の供給制御に用いられる。なお、無線受信部36の間欠動作は、例えば 0.1秒動作、 0.9秒動作停止を繰り返す。
【0047】
図5は、本発明のセンサデータ送信装置の実施例2の制御手順を示す。
図5において、まず電磁誘導発電機38は電磁誘導発電し、キャパシタ/二次電池32に発電電力が常時供給され、蓄電量が増加する(S11)。制御部24は、起動用センサ33からトリガ信号の出力があるか否かを監視する(S12)。ここで、起動用センサ33が対象物の所定の変位を感知してトリガ信号を出力すれば、制御部24は測定用センサ26の所定期間の駆動が可能な電力量を超える蓄電量がキャパシタ/二次電池32にあるか否かを確認する(S13)。この蓄電量とは、実施例1と同様に、キャパシタ/二次電池32に蓄積された電力の量である。また、測定用センサ26や無線送信部25の駆動で給電すると、キャパシタ/二次電池32に残る電力の量が蓄電量となる。蓄電量が十分でない場合は、測定用センサ26を駆動せずにステップS11に戻る。蓄電量が十分であれば、制御部24はスイッチ部34を制御して測定用センサ26に電力供給を行い、所定期間だけ駆動してセンサデータを取得する(S14)。測定用センサ26を所定期間だけ駆動した後は、スイッチ部34を制御して測定用センサ26への電力供給を停止する。
【0048】
一方、起動用センサ33がトリガ信号を出力していなければ(S12:No)、間欠動作している無線受信部36が送信要求を受信しているか否かを判断する(S15,S16)。ここで、送信要求を受信していれば次のステップS17に進み、送信要求を受信していなければステップS11に戻る。なお、無線受信部36で要求信号を受信するタイミングは不定期なので、制御部24は要求信号を受信したタイミングで割り込みをかけてステップS16の判断処理を行う。制御部24は、送信要求を受信していれば、無線送信部25の駆動が可能な電力量を超える蓄電量がキャパシタ/二次電池32にあるか否かを確認する(S17)。蓄電量が十分でない場合は、無線送信部25を駆動せずにステップS11に戻る。蓄電量が十分であれば、制御部24はスイッチ部35を制御して無線送信部25に電力供給を行い、要求信号に対応する応答信号(センサデータ)を無線送信する(S18)。無線送信部25を駆動した後は、スイッチ部35を制御して無線送信部25への電力供給を停止する。なお、
図5に示す実施例2の制御手順において、起動用センサ33の出力の有無の判断(S12)と、間欠動作している無線受信部36
における送信要求受信の有無の判断(S15,S16)の順序が逆であっても構わない。
【0049】
実施例2のセンサデータ送信装置の動作は、
図3に示す実施例1とほぼ同様である。ただし、無線受信部36が例えば1秒周期で 0.1秒だけ間欠動作しており、その分の電力消費が加わる。
【0050】
また、実施例2の測定用センサ26には、高圧送電ケーブルの振動を測定する振動センサまたは傾斜などを測定する傾斜センサなどが用いられるが、センサデータとして得られる振動の周期(固有振動周波数)から高圧送電ケーブルのたわみ量を推定することができる。そして、
図4および
図5に示した実施例2において、電磁誘導発電に代えて、あるいは電磁誘導発電に加えて、振動発電や太陽電池や温度差発電などの環境発電を単独または組合せて使用しても良い。この場合、1種類の環境発電を用いる場合よりも安定した発電となる。特に、どの環境発電を組合せて用いるかは、例えば地上なら太陽光の照射が期待できるので太陽電池と温度差発電を組み合わせるなど、適用の対象により選択する。