特許第6052899号(P6052899)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6052899
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】光アクセスシステム
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/44 20060101AFI20161219BHJP
【FI】
   H04L12/44 200
   H04L12/44 B
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-28200(P2014-28200)
(22)【出願日】2014年2月18日
(65)【公開番号】特開2015-154376(P2015-154376A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2016年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001863
【氏名又は名称】特許業務法人アテンダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 徹也
(72)【発明者】
【氏名】槇林 康雄
(72)【発明者】
【氏名】則武 克誌
【審査官】 宮島 郁美
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0031049(US,A1)
【文献】 特開2006−262018(JP,A)
【文献】 飯田 大輔,桑野 茂,可児 淳一,寺田 純,将来無線アクセス・モバイル光ネットワークにおける動的TWDM−PONの適用,電子情報通信学会信学技報,2013年11月 7日,57-62
【文献】 鈴木 雅也,河村 憲一,安川 正祥,則武 克誌,LTE Split−RANにおける親子eNB間接続に関する一検討,2013年電子情報通信学会通信ソサエティ大会,2013年 9月17日,39
【文献】 寺田 純,奥村 幸彦,吉本 直人,将来無線アクセス・モバイル光ネットワークにおける光アクセスシステムの検討課題,電子情報通信学会信学技報,2013年11月,51-56
【文献】 飯田 大輔,桑野 茂,可児 淳一,寺田 純,動的TWDM−PON技術による無線アクセスネットワークの帯域利用向上,2013年電子情報通信学会通信ソサイエティ大会予稿集,2013年 9月17日,178
【文献】 飯田 大輔,桑野 茂,可児 淳一,寺田 純,無線アクセスネットワークに対する動的TWDM−PON技術の提案,2013年電子情報通信学会総合大会,2013年 3月19日,274
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L12/00−12/28,12/44−12/955
H04B10/00−10/90
H04B7/24−7/26,H04W4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの親局装置および1つもしくは複数の子局装置からなる通信システムにおける親局装置と子局装置との間の伝送路を提供する光アクセスシステムであって、
親局装置がOLTおよび波長振分器を介して、光ファイバと光パワースプリッタからなる複数のPONに接続され、子局装置がONUを介して前記PONのいずれかに接続されてなり、
有効化しようとする子局装置に対応するONUが所定のOLTと波長を占有して光接続されるようにOLTまたは/および波長振分器を制御する制御装置を具備し
前記OLTは、波長固定の送信器および受信器からなる送受信器を少なくとも1台具備し、
前記波長振分器は、光マトリクススイッチと、下り波長信号を合分波する第一のWDMフィルタと、上り波長信号を合分波する第二のWDMフィルタと、下り波長信号および上り波長信号を合分波する第三のWDMフィルタとからなり、光マトリクススイッチの一端はOLTの送信器および受信器に接続され、他端は第一のWDMフィルタおよび第二のWDMフィルタにそれぞれ接続され、
前記制御装置は、有効化対象の子局装置に対応するONUに対する割当OLTおよび割当波長を決定し、当該割当OLTおよび割当波長の送受信器が前記有効化対象の子局装置に対応するONUと光接続されるように前記波長振分器の光マトリクススイッチを制御し、
前記有効化対象の子局装置に対応するONUとその割当波長に関する対応情報を、OLTから前記PONごとの全波長の下り信号による報知情報として配布する
ことを特徴とする光アクセスシステム。
【請求項2】
少なくとも1つの親局装置および1つもしくは複数の子局装置からなる通信システムにおける親局装置と子局装置との間の伝送路を提供する光アクセスシステムであって、
親局装置がOLTおよび波長振分器を介して、光ファイバと光パワースプリッタからなる複数のPONに接続され、子局装置がONUを介して前記PONのいずれかに接続されてなり、
有効化しようとする子局装置に対応するONUが所定のOLTと波長を占有して光接続されるようにOLTまたは/および波長振分器を制御する制御装置を具備し
前記OLTは、波長可変の送信器、波長可変フィルタおよび受信器からなる送受信器を少なくとも1台具備し、
前記波長振分器は、光カプラと、下り周回性AWGと、上り周回性AWGと、下り波長信号および上り波長信号を合分波するWDMフィルタとからなり、下り周回性AWGの一端は光カプラを介して各OLTの波長可変の送信器に接続され、その他端はWDMフィルタに接続され、上り周回性AWGの一端は光カプラを介して各OLTの受信器に接続され、その他端はWDMフィルタに接続され、
前記制御装置は、有効化対象の子局装置に対応するONUに対する割当OLTおよび割当波長を決定し、当該割当OLTの送受信器が前記有効化対象の子局装置に対応するONUと光接続されるように当該送受信器の送出波長を制御し、
前記有効化対象の子局装置に対応するONUとその割当波長に関する対応情報を、OLTから前記PONごとの全波長の下り信号による報知情報として配布する
ことを特徴とする光アクセスシステム。
【請求項3】
親局装置がC−RAN構成による移動無線通信システムにおけるBBUであり、子局装置がC−RAN構成による移動無線通信システムにおけるRRUである
ことを特徴とする請求項1に記載の光アクセスシステム。
【請求項4】
前記報知情報をCPRIのOAMフィールドを用いて配布する
ことを特徴とする請求項に記載の光アクセスシステム。
【請求項5】
前記報知情報のための割当波長としてFTTH用ONUに対する波長を用いる
ことを特徴とする請求項乃至のいずれかに記載の光アクセスシステム。
【請求項6】
FTTH用に用いられる複数のPONに対して、光パワースプリッタを介して波長多重することでFTTH用のPONに重畳される
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の光アクセスシステム。
【請求項7】
前記ONUは任意の波長を受信して前記対応情報を取得し、取得した対応情報に基づき自己に割り当てられた割当波長を判別し、波長設定を行う
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の光アクセスシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの親局装置および複数の子局装置からなる通信システムにおける親局装置と子局装置との間の伝送路をFTTH(Fiber to the Home)用光インフラを利用して提供する技術に関し、特に移動無線通信システムにおけるスモールセルを、FTTH用光インフラを利用して空間的・時間的なトラヒックの変動に応じて展開可能とする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
移動無線通信システムにおけるトラヒック(モバイルトラヒック)の急増に伴い、今後、従来のマクロセルよりセル半径の小さなスモールセルが大量に展開されると予想されている。スモールセルは、トラヒック需要の大きな任意の地点に選択的に配備することでコスト効率を高めることができる。
【0003】
一般に、平日の昼間ではオフィス街、休日や夕方では商業地、夜間は住宅地に多く人が存在する。そのため、トラヒック需要は空間的に粗密があり、またそれは時間とともに変動する。
【0004】
このようなトラヒック需要の変動に追従する仕組みとして、SON(Self Organizing Network)機能が3GPP(3rd Generation Partnership Program)で議論されている。SON機能を用いることで、例えば昼間はオフィス街に多くの通信リソースを割り当てるが、夜間は基地局機能を休止させたり、住宅地側への割り当てを増やすことなどにより、電波資源や電力などのリソースを空間的・時間的に調整したりすることが検討されている。
【0005】
スモールセル向けの基地局構成として、多数セクタ分のベースバンド処理を集中して行うC−RAN(Centralized Radio Access Network)構成が提案されている。
【0006】
C−RAN構成において、センタ基地局(親局)側に配備される多数セクタ分のベースバンド信号処理を行う装置をBBU(Base Band Unit)という。また、スモールセル(リモート)基地局(子局)側に配備され、CPRI(Common Public Radio Interface)などにより光張り出し接続されて移動端末との間で電波の送受信を行う装置をRRU(Remote Radio Unit)という。
【0007】
この構成により、高機能なベースバンド処理機能をセンタ基地局側に集中的に配備し、スモールセル基地局側には簡易な機能部のみを配備することで、基地局整備に要するコストの低減が期待される。
【0008】
C−RAN構成で用いられるCPRI信号は、ロス、遅延、遅延揺らぎなどについて、非常に厳しいQoS(Quality of Service)要件があるため、通常、CPRI信号伝送においては光ファイバを占有するか、もしくはWDM(Wavelength Division Multiplexing)技術を用いて波長を占有する伝送方式がとられる。
【0009】
また、C−RAN構成におけるBBU−RRU間の通信回線をMFH(Mobile Front Haul)という。
【0010】
前述のように、モバイルトラヒック需要は任意の位置で発生するため、RRUを収容する回線として、広く普及しているFTTH用光インフラを利用できることが望ましい。FTTH用光インフラとしては、光パワースプリッタによる光信号の多重・分離により多数ユーザで光ファイバを共有することで低コスト化が見込めるPON(Passive Optical Network)構成が用いられる。ここでは、PON構成における局側の光終端装置をOLT(Optical Line Terminal)といい、ユーザ側の光終端装置をONU(Optical Line Unit)という。これら局側およびユーザ側の装置としては、FTTH回線では、例えばGE−PON(Gigabit Ethernet(登録商標)-PON)システムにおけるGE−OLTやGE−ONUが用いられる。
【0011】
FTTH用光インフラに相乗りする形で、波長を占有したMFH回線を提供可能な光アクセス方式として、特許文献1に示す従来技術1がある。従来技術1ではPON上でのWDM技術を利用した通信方式において、ONUに占有波長を割り当てる方法が提案されている。
【0012】
従来技術1を、FTTH用光インフラに適用する方法を図1に示す。以下、FTTHサービスで用いられるOLTおよびONUをそれぞれFTTH用OLTおよびFTTH用ONUと呼ぶ。また、BBU−RRU間接続で用いられるOLTおよびONUをそれぞれスモールセル用OLTおよびスモールセル用ONUと呼び、従来技術1を用いることとする。ここでは、PONあたり上下各4波長まで用いることができるとする。
【0013】
図1では、FTTH用OLTとFTTH用ONUが、局内光パワースプリッタと局外光パワースプリッタを介して光ファイバ接続されている。ここでは従来技術1のOLTをスモールセル用OLT、従来技術1のONUをスモールセル用ONUとする。
【0014】
スモールセル用OLTは、局内光パワースプリッタを介してFTTH用光インフラに接続される。スモールセル用OLTと局内光パワースプリッタとの間に配置された波長合分波器は、各ONUに割り当てられる上下波長を合分波するために用いられる。スモールセル用ONUは、上下波長を合分波するWDMフィルタ、上り4波長のうち1波長を選択的に送出するTTx(Tunable Transmitter)、下り4波長のうち1波長を選択的に透過するTF(Tunable Filter)、下り波長を受信するRx(Receiver)からなる。
【0015】
スモールセル用OLT・スモールセル用ONU間通信においては、FTTH用とは異なるPONあたり上下各4波長のうち上下1波長ずつをスモールセル用ONUに割り当てることで、波長占有サービスを提供することができる。
【0016】
本構成を用いて、以下のようにBBU−RRU間接続を実現することができる。BBUは1ポートあたり1RRUを収容するとする。該当するPONで収容するRRU数のポート数だけ、BBUとスモールセル用OLTとを接続する。また、スモールセル用ONUとRRUを接続する。BBUの各ポートに対し収容するRRUを定めたとき、それを実現するようにスモールセル用ONUのTTxの送出波長およびTFの透過波長を設定すれば良い。
【0017】
また、従来技術1においては、ONUの波長設定方法が提案されている。従来技術1においては、ONUに配備されたTFを掃引して使用中かまたは未使用である波長を検出し、波長検出の後にGE−PON等で通常、行われるディスカバリ動作を行うことでONUの通信設定を行う。
【0018】
通常、通信回線の確立時は通信回線が利用可能かどうかを、ONUからのランダムアクセスにより始まる設定シーケンスを用いてディスカバリする動作を行う。ランダムアクセスを用いる場合は通信回線設定要求信号が時間的に衝突する可能性があるため、衝突の際にはランダムな時間待機した後に再度、要求信号を送出するなどの方法が用いられる。
【0019】
この動作を行うことで、ONUのプラグアンドプレイ接続を実現することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
図1に示す構成では、1台のFTTH用OLTから1台以上のFTTH用ONUまでの間を、局内光パワースプリッタおよび局外光パワースプリッタを介して光ファイバにより接続してなるものを単位とするPONに対し、光パワースプリッタを介してスモールセル用OLTを接続するために、PONごとにスモールセル用OLTが必要となる。
【0021】
前述したようにスモールセルの需要は空間的・時間的な粗密がある。一方、このような構成では各RRU、スモールセル用ONU、スモールセル用OLT、BBUのポートの関係がくくりついているために、スモールセルの需要が予想される全てのPONにおいてスモールセル用OLTおよびBBUのポートを配備しなければならず、空間的・時間的な需要の変動に対して過大な設備を必要とし、高コストであるという課題があった。
【0022】
また、従来技術1における通信設定方式では、波長掃引して使用波長を探索した後にランダムアクセスを伴うディスカバリ動作を行うが、スモールセル需要の時間的な変化は人の移動という比較的長い時間レンジで生ずるため、そのような長い時間レンジの追従のためには複雑な通信回線設定動作を伴うという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明では、前記目的を達成するため、
少なくとも1つの親局装置および1つもしくは複数の子局装置からなる通信システムにおける親局装置と子局装置との間の伝送路を提供する光アクセスシステムであって、
親局装置がOLTおよび波長振分器を介して、光ファイバと光パワースプリッタからなる複数のPONに接続され、子局装置がONUを介して前記PONのいずれかに接続されてなり、
有効化しようとする子局装置に対応するONUが所定のOLTと波長を占有して光接続されるようにOLTまたは/および波長振分器を制御する制御装置を具備し
前記OLTは、波長固定の送信器および受信器からなる送受信器を少なくとも1台具備し、
前記波長振分器は、光マトリクススイッチと、下り波長信号を合分波する第一のWDMフィルタと、上り波長信号を合分波する第二のWDMフィルタと、下り波長信号および上り波長信号を合分波する第三のWDMフィルタとからなり、光マトリクススイッチの一端はOLTの送信器および受信器に接続され、他端は第一のWDMフィルタおよび第二のWDMフィルタにそれぞれ接続され、
前記制御装置は、有効化対象の子局装置に対応するONUに対する割当OLTおよび割当波長を決定し、当該割当OLTおよび割当波長の送受信器が前記有効化対象の子局装置に対応するONUと光接続されるように前記波長振分器の光マトリクススイッチを制御し、
前記有効化対象の子局装置に対応するONUとその割当波長に関する対応情報を、OLTから前記PONごとの全波長の下り信号による報知情報として配布する
ことを特徴とする光アクセスシステムを提案する。
また、本発明では、
少なくとも1つの親局装置および1つもしくは複数の子局装置からなる通信システムにおける親局装置と子局装置との間の伝送路を提供する光アクセスシステムであって、
親局装置がOLTおよび波長振分器を介して、光ファイバと光パワースプリッタからなる複数のPONに接続され、子局装置がONUを介して前記PONのいずれかに接続されてなり、
有効化しようとする子局装置に対応するONUが所定のOLTと波長を占有して光接続されるようにOLTまたは/および波長振分器を制御する制御装置を具備し、
前記OLTは、波長可変の送信器、波長可変フィルタおよび受信器からなる送受信器を少なくとも1台具備し、
前記波長振分器は、光カプラと、下り周回性AWGと、上り周回性AWGと、下り波長信号および上り波長信号を合分波するWDMフィルタとからなり、下り周回性AWGの一端は光カプラを介して各OLTの波長可変の送信器に接続され、その他端はWDMフィルタに接続され、上り周回性AWGの一端は光カプラを介して各OLTの受信器に接続され、その他端はWDMフィルタに接続され、
前記制御装置は、有効化対象の子局装置に対応するONUに対する割当OLTおよび割当波長を決定し、当該割当OLTの送受信器が前記有効化対象の子局装置に対応するONUと光接続されるように当該送受信器の送出波長を制御し、
前記有効化対象の子局装置に対応するONUとその割当波長に関する対応情報を、OLTから前記PONごとの全波長の下り信号による報知情報として配布する
ことを特徴とする光アクセスシステムを提案する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、FTTH用光インフラを構成する複数のPONを跨ったOLTの配備と、複数のPON内の各ONUに対し、OLTおよび利用波長の任意の割当が実現できるため、子局装置の需要に応じた親局装置のポート、OLTの増設や接続変更が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】従来のFTTH用光インフラを利用した光アクセスシステムの一例を示す構成図
図2】本発明の光アクセスシステムの全体の実施の形態を示す構成図
図3】本発明の光アクセスシステムの要部の第1の実施の形態を示す構成図
図4図3の光アクセスシステムにおけるテーブルの内容を示す説明図
図5図3の光アクセスシステムにおけるテーブルの内容を示す説明図
図6】本発明の光アクセスシステムの要部の第2の実施の形態を示す構成図
図7図6の光アクセスシステムにおけるテーブルの内容を示す説明図
図8図6の光アクセスシステムにおけるテーブルの内容を示す説明図
図9図6の光アクセスシステムにおけるAWGの入出力波長特性を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0026】
<全体構成>
本発明の光アクセスシステムの全体の実施の形態を図2に示す。
【0027】
本発明の光アクセスシステムは、局側に配備されるFTTH用OLT1とユーザ側に配備されるFTTH用ONU2を光ファイバ接続するための局内光パワースプリッタ3、局外光パワースプリッタ4、およびそれらを接続する光ファイバからなるPONにおいて、C−RAN構成におけるセンタ基地局側のBBU5がスモールセル用OLT10および波長振分器20を通じて局内光パワースプリッタ3に接続され、C−RAN構成におけるスモールセル基地局側のRRU6がスモールセル用ONU30を通じて局外光パワースプリッタ4を介して複数のPONに接続され、さらにスモールセル用OLT10および波長振分器20を制御する制御装置40を備えて構成される。
【0028】
スモールセル用OLT10および波長振分器20は、制御装置40からの指示に従い、任意のスモールセル用OLT10と任意のスモールセル用ONU30を、対応する局内光パワースプリッタ3を介して、該当するPONに光接続する機能を有する。
【0029】
制御装置40は、BBU5などの指示に従い、有効化しようとするRRU6に対応するスモールセル用ONU30が定められたスモールセル用OLT10と定められた送受信波長で光接続されるようにスモールセル用OLT10または/および波長振分器20を制御する機能を有するが、当該設定・制御を行うのは他のOSS(Operation Support System)などであっても良い。
【0030】
なお、本実施の形態におけるスモールセル用ONUの構成は従来技術1と同様である。
【0031】
<第1の要部構成>
本発明の光アクセスシステムの要部、ここでは図2中のスモールセル用OLT10、波長振分器20および制御装置40の第1の実施の形態を図3に示す。
【0032】
本実施の形態のOLT10は、送信器Txおよび受信器Rxからなる複数の送受信器11を備える。
【0033】
図3では、送信器Txが送出する波長は固定されており、また、1台のOLT10あたり4台の送受信器11を備えるものとしている。それらの送出波長をλ1,λ2,λ3,λ4とする。また、OLT10の送出波長を下り信号、ONU30の送出波長を上り信号と呼ぶ。本実施の形態では、上り信号の波長は各下り信号に対し一対一に対応付けられている波長を用いることとし、λ1〜λ4は上下波長の組を総称するものとする。
【0034】
OLT10は、BBU5および制御装置40と接続され、OLT−BBU間では主信号が送受信され、OLT−制御装置間では制御信号が送受信される。
【0035】
本実施の形態の波長振分器20は、光マトリクススイッチ(SW)21と、PON単位の下り波長信号を合分波する第一のWDMフィルタ22と、PON単位の上り波長信号を合分波する第二のWDMフィルタ23と、上り波長信号と下り波長信号を合分波する第三のWDMフィルタ24とからなる。
【0036】
光マトリクスSW21のOLT側ポートはOLT10の送信器Txならびに受信器Rxにそれぞれ接続され、ONU側ポートは第一のWDMフィルタ22および第二のWDMフィルタ23の各ポートにそれぞれ接続される。
【0037】
第一のWDMフィルタ22と第二のWDMフィルタ23のONU側ポートは第三のWDMフィルタ24により合波され、各PONに接続される。
【0038】
スモールセル用OLT10およびそれに配備される送受信器11は、スモールセルの需要に応じて順次増設することができる。図3には、第一(#1)のスモールセル用OLT10には4台の送受信器11が、第二(#2)のスモールセル用OLT10には2台の送受信器11が配備されている様子が示されている。
【0039】
図3では一台のBBU5から複数のOLT10に接続されている様子が示されているが、複数のBBU5から複数のOLT10に接続しても良く、その場合、スモールセルの需要に応じてBBU5も順次増設することができる。
【0040】
第一、第二、第三のWDMフィルタ22,23,24は、接続されるPONごとにそれぞれ配備される。光マトリクスSW21の接続設定は、制御装置40からの指示に従い行われる。
【0041】
図4に、制御装置40が備えるテーブル類を示す。
【0042】
制御装置40は、図4(a)に示すように、管理テーブルにおいて、利用する各PONを表すPON IDと、各PON配下に接続されているスモールセル用ONU30を表すONU IDを関連付けて管理する。
【0043】
ここでは、スモールセル用ONU30は設置時にPON単位に一意のIDが割り当てられ、当該ONU30および制御装置40で管理されるものとする。本実施の形態では、1台のOLT10あたり4波長までとしており、また1台のONU30あたり1波長を割り当て、1PONあたりスモールセル用ONU30は4台までとする。
【0044】
制御装置40は、図4(b)に示すように、OLT構成情報テーブルにおいて、配備されているOLT10を表すOLT IDと、OLT10ごとに配備されている送受信器11の波長を表すλ IDを関連付けて管理する。図4(b)においては、第一のOLTにλ1,λ2,λ3,λ4が、第二のOLTにλ1,λ2が配備されている様子が示されている。
【0045】
管理テーブルは、BBU5からの指示に従って、PON IDとONU IDの組に対してスモールセルが有効化されているか否かを管理する。図4(a)ではフラグとして表され、有効化されているものはY、有効化されていないものはNで表されている。
【0046】
制御装置40は、フラグがYであるPON IDとONU IDの組に対し割当OLTと割当波長を決定し、PON IDとONU IDに関連付けて管理する。例えば図4(a)では、PON ID=1かつONU ID=1のONUに対しては、第一のOLT10のλ1を割り当てる。その様子は<OLT ID, λ ID>として<1,1>と表されている。同様にして、フラグがYである各ONU30に対して、同一のPON内において重複なく各ONU30にそれぞれ波長が割り当てられる。
【0047】
管理テーブルは、PON IDごとに、当該PONにおける全ての波長とONUとの組み合わせの情報を報知情報として管理する。例えば図4(a)では、PON ID=1のPONにおいて、ONU ID=1にλ1、ONU ID=2にλ2、ONU ID=3にλ3、ONU ID=4にλ4が割り当てられており、その様子は<ONU ID, λ ID>の組として<1,1>, <2,2>, <3,3>, <4,4>と表されている。他のPON IDについても同様である。
【0048】
制御装置40は、図4(c)に示すように、光マトリクスSW設定管理テーブルにおいて、管理テーブルにおいて関連付けて管理されているOLT ID、λ ID、ONU IDの組の接続状態となるように光マトリクスSW21の入出力設定を管理し、光マトリクスSW21の設定を行う。例えば図3に示される接続構成においては、OLT側ポートを表すUSW IDとONU側ポートを表すLSW IDの組は図4(c)に表されている通りとなる。
【0049】
各OLT10は、配備されている各送信器11から、制御装置40の管理テーブルに従い報知情報を下り信号に重畳させてONU30側に送信する。すなわち、OLT IDとλ IDごとに管理テーブルで設定されている報知情報を送信する。結果として、同一のPONで利用される下り全波長には、同一の報知情報が重畳されていることになる。
【0050】
各ONU30は、自己に割り当てられたONU IDを保持している。各ONU30は、通信接続設定を行う際には、下りの任意の波長を受信し、その波長に重畳されている報知情報を受信する。報知情報には、当該PON内での全てのONU30と割り当てられた波長の情報が含まれているため、ONU30は自己に割り当てられたONU IDから自己に割り当てられた波長を判別し、設定する。
【0051】
もしBBU5からの指示により有効化されるスモールセルの変更が生じた場合、制御装置40は、その変更を管理テーブルに反映する。
【0052】
図5は、図4に示される設定から変更が生じた場合の一例を表している。例えば図5(a)では、PON ID=1、ONU ID=4のONUが無効化され、PON ID=2、ONU ID=1のONUが有効化され、PON ID=1、ONU ID=4のONUに割り当てられていたOLT ID=1、λ ID=4がPON ID=2、ONU ID=1のONUに割り当てられている。
【0053】
この場合、PON ID=1内の報知情報は<ONU ID, λ ID>の組として<1,1>,<2,2>,<3,3>となる。また、PON ID=2内の報知情報は、PON ID=2内には他にONU ID=2にOLT ID=2、λ ID=1が割り当てられ、ONU ID=3にOLT ID=2、λ ID=2が割り当てられているため、<ONU ID, λ ID>の組として<1,4>, <2,1>, <3,2>となる。
【0054】
光マトリクスSW21の設定は、管理テーブルに従って図5(c)のようになる。
【0055】
各ONU30は、変更された報知情報に従って自己が使用する波長を判別し、設定する。
【0056】
以上の動作により、PONを跨ったスモールセル用OLTの配備と、複数PON内の各ONUに対しOLTおよび利用波長の任意の割当が実現できるため、スモールセル需要に応じたBBUのポート、OLTおよび送受信器の増設や接続変更が可能となる。またそのため、従来技術の課題を以下のように解決することができる。図4(a)に示すスモールセル有効化フラグに従うと、PON ID=1,2,3,4に対しOLTの送受信器およびBBUポートがそれぞれ4,0,1,1台/ポート必要であり、図5(a)に示すスモールセル有効化フラグに変化した場合にはそれぞれ3,3,0,0台/ポートが必要となる。従来技術では、各RRU、スモールセル用ONU、スモールセル用OLT、BBUのポートの関係がくくりついているために、スモールセルの需要が予想される全てのPONにおいてスモールセル用OLTおよびBBUのポートを配備しなければならない。そのため、図4(a)および図5(a)に示すスモールセル有効化フラグの状態のいずれにも対応できるようにするには、PON ID=1,2,3,4に対しOLTの送受信器およびBBUポートをそれぞれ4,3,1,1台/ポート、計9台/ポート用意しなければならなかった。一方、本実施の形態のOLTおよび波長振分器を用いた場合にはOLTの送受信器およびBBUポートは計6台/ポートだけで良い。このように、従来技術の課題であった空間的・時間的な需要の変動に対しての設備の過剰を抑制することができる。
【0057】
また、同一PON内におけるONUと波長の対応関係を報知情報として配布しONUの波長設定を行うため、簡易かつ高速にONUの波長設定を行うことができる。
【0058】
本実施の形態では、OLT10あたりの波長数は4までとしたが、OLT10あたりの波長数は任意のものが可能であり、またONU30あたり複数の波長が割り当てられるように構成しても良い。
【0059】
また、1ONUで複数波長を送受信しても良く、そのうち1波長は従来のFTTH用に用いられている波長であっても良い。さらに、ONUの設定やバックアップ回線としてFTTH用に用いられている波長を利用しても良い。
【0060】
また、報知情報などの設定信号は、CPRIのOAM(Operation and Maintenance)フィールドを用いて伝送しても良い。
【0061】
<第2の要部構成>
本発明の光アクセスシステムの要部、ここでは図2中のスモールセル用OLT10、波長振分器20および制御装置40の第2の実施の形態を図6に示す。
【0062】
本実施の形態のOLT10は、波長可変の送信器TTx、波長可変フィルタTFおよび受信器Rxからなる複数の送受信器12を備える。1台のOLT10あたりの波長数は第1の実施の形態と同様に4とする。また、図6に示されているTTx、TFおよびRxの組を一つのOSU(Optical Subscriber Unit)と呼び、ここでは左から順にその識別子としてOSU IDを定義する。
【0063】
本実施の形態では、各OSUで波長可変送信器TTxと波長可変フィルタTFを用いることから、第1の実施の形態とは異なり、下り波長と上り波長の対応関係が常に同じであるとは限らない。そのため、下り波長を表すIDとしてDλ IDを、上り波長を表すIDとしてUλ IDを定義する。
【0064】
本実施の形態の波長振分器20は、4分岐カプラ25と、下り波長用・上り波長用それぞれの周回性AWG26,27と、上り波長と下り波長を合分波するWDMフィルタ28とからなる。
【0065】
4分岐カプラ25のOLT側ポートは、各OLT10の同OSU IDである波長可変送信器TTxに接続され、ONU側ポートは下り波長用周回性AWG26の各ポートに図6に示すように接続される。同様に、別の4分岐カプラのOLT側ポートは、各OLT10の同OSU IDである波長可変フィルタTFに接続され、ONU側ポートは上り波長用周回性AWG27の各ポートに図6に示すように接続される。
【0066】
下り波長用周回性AWG26と上り波長用周回性AWG27のONU側ポートはWDMフィルタ28により合波され、FTTH用光インフラである各PONに接続される。周回性AWG26,27は、図9に示すような周回性を有する入出力波長特性を備えている。
【0067】
図7に、制御装置40が備える管理テーブル類を示す。
【0068】
図7において有効化されているONU30は、図4におけるものと同じである。図9に示される入出力波長特性に従って、各ONU30に割り当てられる下り波長(Dλ ID)と上り波長(Uλ ID)の組が、OSU単位の増設を可能とするように決定されていることが特徴である。
【0069】
すなわち、スモールセルが有効化された対応する各ONU30に対して、図7(a)の上から順に図6の接続構成においてOLTおよびOSUを左から順に割り当てることを考える。この場合、図7(a)のPON ID=1、ONU ID=1に対してOSU ID=1を割り当てる際には、Dλ ID=1、Uλ ID=1であれば良いが、PON ID=1、ONU ID=2に対してOSU ID=2を割り当てる際には、Dλ ID=4、Uλ ID=2を設定することになる。
【0070】
このように、各ONUに対して下り波長と上り波長をそれぞれ指定する必要があるため、本実施の形態での報知情報は、各PONにおける、全ONU ID,Dλ ID,Uλ IDの組み合わせとなる。
【0071】
ONU30側の動作は第1の実施の形態と同様である。
【0072】
BBU5からの指示により有効化されるスモールセルの変更が生じた場合、制御装置40は、その変更を管理テーブルに反映する。図8において有効化されているONU30は、図5におけるものと同じである。この場合も、第1の実施の形態と同様に変更に従ってONU30の設定が変更される。
【0073】
第1の実施の形態では、OLT10側の送信器は波長ごとに異なるものを用いていたが、本実施の形態に示す構成によりOLT10側の送信器を波長に依存させず単一品種化することができる。
【0074】
また、第1の実施の形態ではOLT10側の送信器および受信器ごとに光マトリクスSWのポートを要し、大規模な光マトリクスSWを用いる必要があるが、本実施の形態に示す構成により簡易な光部品構成で波長振分器を構成することができる。
【符号の説明】
【0075】
1:FTTH用OLT、2:FTTH用ONU、3:局内光パワースプリッタ、4:局外光パワースプリッタ、5:BBU、6:RRU、10:スモールセル用OLT、11,12:送受信器、20:波長振分器、21:光マトリクススイッチ、22,23,24,28:WDMフィルタ、25:4分岐カプラ、26,27:周回性AWG、30:スモールセル用ONU、40:制御装置。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0076】
【特許文献1】特開2011−4270号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9