特許第6052901号(P6052901)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6052901
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】マイクロミラー素子およびミラーアレイ
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/08 20060101AFI20161219BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   G02B26/08 E
   B81B3/00
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-50712(P2014-50712)
(22)【出願日】2014年3月13日
(65)【公開番号】特開2015-175914(P2015-175914A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2016年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(72)【発明者】
【氏名】碓氷 光男
(72)【発明者】
【氏名】橋本 悦
(72)【発明者】
【氏名】桑原 啓
(72)【発明者】
【氏名】中島 光雅
(72)【発明者】
【氏名】佐々 文洋
(72)【発明者】
【氏名】小舘 淳一
(72)【発明者】
【氏名】阪田 知巳
(72)【発明者】
【氏名】神 好人
【審査官】 山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0281266(US,A1)
【文献】 特開2013−101377(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/129988(WO,A1)
【文献】 特開2010−054628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/08
B81B 3/00
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材と、この支持部材に一端が固定されて他端が変位可能とされた可動梁と、この可動梁の前記他端にばね部材を介して接続されたミラーとを有する反射部と、
この反射部と離間した面上に前記可動梁と対向して配置された固定電極と
を備え、
前記可動梁は、開口を有し、
前記固定電極は、前記開口に向かって突出する突出部を有する
ことを特徴とするマイクロミラー素子。
【請求項2】
請求項1記載のマイクロミラー素子において、
前記可動梁は、延在方向に沿って複数の開口を有し、
前記固定電極は、複数の前記開口それぞれに向かって突出する複数の前記突出部を有する
ことを特徴とするマイクロミラー素子。
【請求項3】
請求項1または2記載のマイクロミラー素子において、
前記ミラーを挟んで対向配置された複数の前記可動梁と、
複数の前記可動梁それぞれと対向する複数の前記固定電極と
を有することを特徴とするマイクロミラー素子。
【請求項4】
請求項3記載のマイクロミラー素子において、
互いに平行に配置された複数の前記可動梁と、
互いに平行に配置された複数の前記固定電極と
を有することを特徴とするマイクロミラー素子。
【請求項5】
請求項1−4の何れか1項に記載のマイクロミラー素子において、
互いに平行に配置された隣り合う2つの前記固定電極の間に立設され、導体からなる壁状部材をさらに備える
ことを特徴とするマイクロミラー素子。
【請求項6】
請求項1−5のいずれか1項に記載のマイクロミラー素子を、前記可動梁がアレイ状に並ぶように複数配置したことを特徴とするマイクロミラーアレイ。
【請求項7】
請求項6記載のマイクロミラーアレイにおいて、
前記可動梁の上方に配設された平板状の板状部材をさらに備える
ことを特徴とするマイクロミラーアレイ。
【請求項8】
請求項6または7に記載のマイクロミラーアレイにおいて、
隣り合う前記マイクロミラー素子の前記固定電極の間に立設され、導体からなる壁状部材をさらに備える
ことを特徴とするマイクロミラーアレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロミラー素子およびミラーアレイに関するものである。
【背景技術】
【0002】
インターネット通信網などにおける基盤となる光ネットワークの分野では、多チャンネル化、波長分割多重化および低コスト化を実現する技術として、光MEMS(Micro Electro Mechanical System)技術が脚光を浴びており、この光MEMS技術を用いた光スイッチが開発されている(例えば、特許文献1参照。)。このMEMS技術を用いた光スイッチの構成部品として最も特徴的なものは、複数の可動反射体から構成されるマイクロミラー素子を配列したマイクロミラーアレイである。
【0003】
光スイッチは、光信号を電気信号に変換することなく経路切替を行うものであり、多重化された光信号であっても、これを波長毎に分波することなく経路を切り替えることが可能である。このような光スイッチは、例えば、使用している経路に障害が発生した際に、別の経路に信号を振り分けて、通信できる状態を維持するために用いられている。
また、近年、多重化された光を波長毎に分波した後で、それぞれの波長の光の経路を個別に選択する波長選択スイッチが開発されているが、ここにもマイクロミラー素子が使用されている。さらに、複数のミラーをより近づけて配置することを可能とするミラー素子を用いたミラーアレイも提案されている(例えば、特許文献2、非特許文献1参照。)。このようなミラーアレイの一例を図22図23を参照して説明する。
【0004】
ミラーアレイは、ミラー基板100と、このミラー基板100と対向配置された電極基板200と、ミラー基板100に形成された平面視矩形の開口部101にシールドキャップ300が嵌挿された構造を有している。
【0005】
ミラー基板100は、支持部102と、開口部101に形成された可動電極である可動梁103a,103bと、ミラー104と、可動梁103a,103bとミラー104との連結部となる支持ばね105a,105bとを有する。可動梁103a,103bの一端は、支持部102に固定されている。これにより、可動梁103aおよび可動梁103bは、各々の他端が、ミラー基板の法線方向(z軸方向)に変位可能な片持ち梁構造となっている。
【0006】
可動梁103aと可動梁103bの間には、屈曲可能な一対の支持ばね105a,105bにより連結されてミラー104が配置されている。ミラー104は、可動梁103aおよび可動梁103bと1列に配列されて可動梁103aと可動梁103bの間に回動可能に配置されている。支持ばね105aは、可動梁103aの他端とミラー104とを連結し、支持ばね105bは、可動梁103bの他端とミラー104とを連結している。図22図23の例では、y軸方向に平行な線上に、可動梁103a、支持ばね105a、ミラー104、支持ばね105b、可動梁103bが順に整列している。
【0007】
ミラー104は、一対の支持ばね105a,105bを通る、y軸と平行な第1の回動軸廻りに回動することができ、またミラー104の長さ方向と直交するx軸と平行な第2の回動軸廻りに回動することができる。ミラー104の表面には、金やアルミニウムなどから構成された反射膜が形成され、例えば赤外領域の光を反射可能としている。以上のような可動梁103a、支持ばね105a、ミラー104、支持ばね105bおよび可動梁103bの整列が1つのマイクロミラー素子のミラー基板側の構造を形成しており、このような構造が整列方向と垂直なx軸方向に沿って複数配置されて、ミラーアレイチップのミラー基板側の構造を形成している。
【0008】
一方、電極基板200の上には、1つのマイクロミラー素子毎に、可動梁103a,103bを駆動するための固定電極201a,201bと、ミラー104を駆動するためのミラー駆動電極202a,202bとが設けられている。また、1つのミラー104を駆動するためのミラー駆動電極202a,202bと隣接するミラー104を駆動するためのミラー駆動電極202a,202bとの間には、シールド壁203が形成されている。さらに、電極基板200の上には、所定距離離間してミラー基板100を固定するためのギャップ制御用バンプ204が形成されている。さらに、電極基板200内には、固定電極201a,201bに接続された配線205と、ミラー駆動電極202a,202bに接続された配線206とが形成されている。
【0009】
ミラー基板100と電極基板200とが接合されたとき、固定電極201a,201bは、それぞれ可動梁103a,103bと対向するように配置され、ミラー駆動電極202a,202bは、ミラー104と対向するように配置されている。固定電極201a,201bは、y軸と平行な方向、すなわち可動梁103a,103bの整列方向と平行な方向に沿って溝が形成された、断面が略U字状の形状となっている。
【0010】
固定電極201a,201bには、それぞれ可動梁103a、可動梁103bを駆動させるための駆動電圧(駆動信号)が、配線205を介して供給される。また、ミラー駆動電極202a,202bには、ミラー駆動電圧が、配線206を介して供給される。なお、可動梁103a,103b、ミラー104および支持ばね105a,105bは、接地等により等電位とされている。
【0011】
シールドキャップ300は、下面にy軸方向に沿って延在する溝301がx軸方向に形成されている。このようなシールドキャップ300は、ミラー基板100に接合されたとき、各溝301が対応する可動梁103a,103bと対向するように配置される。
【0012】
このようなミラーアレイにおける1つのマイクロミラー素子の動作について、図24図25を参照して説明する。
【0013】
まず、固定電極201a,201bに所定の駆動電圧を印加すると、発生した静電引力により、可動梁103a,103bは、支持部102に支持されている一端を支点としてたわみ、可動梁103a,103bの他端側が電極基板200に引き寄せられるように変位する。この結果、ミラー104は、電極基板200の側に引き寄せられ、傾いた状態となる。この傾いた状態は、ミラー104の配列方向(x軸)に平行なミラーの中央部を通る回転軸(主軸)を中心に、ミラーが回動していることとなる。マイクロミラー素子は、主軸に対して対称な構造をしているので、固定電極201a,201bに印加する駆動電圧を制御することにより、主軸を中心に正負の両方向にミラー104を回動させることができる。
【0014】
また、ミラー104直下に配置された2つのミラー駆動電極202a,202bに所定の駆動電圧を印加すると、発生した静電引力により、ミラー104は、一対の支持ばね105a,105bを通るy軸に平行な回転軸(副軸)を中心に回動する。マイクロミラー素子は、副軸に対しても対称な構造をしているので、ミラー駆動電極202a,202bに印加する駆動電圧を制御することにより、副軸を中心に正負の両方向にミラー104を回動させることができる。
【0015】
このようなマイクロミラー素子を狭い間隔で配列したマイクロミラーアレイにおいては、可動梁を駆動するとき、隣り合うマイクロミラー素子の固定電極による電界が干渉する場合がある。すると、可動梁が移動して、ミラーの回動角度が変動することがあった。このようなミラーの変動を防ぐためには、隣り合うマイクロミラー素子の電界の干渉を低減する必要があるが、このためには電界を可動梁毎に完全に分離するような電極構造を実現することが効果的である。そこで、図26に示すように、固定電極201a,201bを断面略U字状として電界が可動梁を取り囲むようにしている。さらに、ミラー104の上方には、シールドキャップ300を配設している。これらにより、可動梁毎に電界を分離して、干渉の低減を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2003−057575号公報
【特許文献2】国際公開第2008/129988号
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】M. Usui et al., “Electrically Separated Two-Axis MEMS Mirror Array Module for Wavelength Selective Switches,” 2009 IEEE/LEOS International Conf. on Optical MEMS and Nanophotonics, ThB4, Clearwater Beach, FL USA, 2009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、断面略U字状の固定電極を用いたマイクロミラー素子を配列したマイクロミラーアレイでは、隣り合うマイクロミラー素子の固定電極同士も近接しているので、固定電極同士の絶縁性を確保するために所定の距離だけ固定電極を離間して配置する必要がある。このため、隣り合うマイクロミラー素子の間隔を狭くすることができず、結果として、マイクロミラーアレイを小型化することが困難であった。
【0019】
そこで、本発明は、小型化を実現することができるマイクロミラー素子およびマイクロミラーアレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上述したような課題を解決するために、本発明に係るマイクロミラー素子は、支持部材と、この支持部材に一端が固定されて他端が変位可能とされた可動梁と、この可動梁の前記他端にばね部材を介して接続されたミラーとを有する反射部と、この反射部と離間した面上に前記可動梁と対向して配置された固定電極とを備え、前記可動梁は、開口を有し、前記固定電極は、前記開口に向かって突出する突出部を有することを特徴とするものである。
【0021】
上記マイクロミラー素子において、前記可動梁は、延在方向に沿って複数の開口を有し、前記固定電極は、複数の前記開口それぞれに向かって突出する複数の前記突出部を有するようにしてもよい。
【0022】
また、上記マイクロミラー素子において、前記ミラーを挟んで対向配置された複数の前記可動梁と、複数の前記可動梁それぞれと対向する複数の前記固定電極とを有するようにしてもよい。
【0023】
また、上記マイクロミラー素子において、互いに平行に配置された複数の前記可動梁と、互いに平行に配置された複数の前記固定電極とを有するようにしてもよい。
【0024】
また、上記マイクロミラー素子において、互いに平行に配置された隣り合う2つの前記固定電極の間に立設され、導体からなる壁状部材をさらに備えるようにしてもよい。
【0025】
また、本発明に係るミラーアレイは、上述したいずれかのマイクロミラー素子を、前記可動梁がアレイ状に並ぶように複数配置したことを特徴とするものである。
【0026】
上記マイクロミラーアレイにおいて、前記可動梁の上方に配設された平板状の板状部材をさらに備えるようにしてもよい。
【0027】
また、上記マイクロミラーアレイにおいて、隣り合う前記マイクロミラー素子の前記固定電極の間に立設され、導体からなる前記壁状部材をさらに備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、可動梁が開口を有し、固定電極が開口に向かって突出する突出部を有することにより、隣り合うマイクロミラー素子の固定電極間で電界の干渉を低減することが可能となるので、隣り合う固定電極の距離を短くすることができ、結果として、小型化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、本発明の第1の実施の形態に係るマイクロミラー素子の構成を示す平面図である。
図2図2は、図1のI-I線断面図である。
図3図3は、ばね部材の構成を示す平面図である。
図4図4は、本発明の第1の実施の形態に係るマイクロミラー素子における動作を説明するための図である。
図5図5は、本発明の第1の実施の形態に係るマイクロミラー素子における動作を説明するための図である。
図6図6は、本発明の第1の実施の形態に係るマイクロミラーアレイの構成を示す平面図である。
図7図7は、図6のII-II線断面図である。
図8図8は、マイクロミラーアレイにおける電界の遮蔽効果を説明するための図である。
図9図9は、マイクロミラーアレイにおける電界の遮蔽効果を説明するための図である。
図10図10は、本発明の第2の実施の形態に係るマイクロミラー素子の構成を示す平面図である。
図11図11は、図10のIII-III線断面図である。
図12図12は、本発明の第2の実施の形態に係るマイクロミラー素子における動作を説明するための図である。
図13図13は、本発明の第2の実施の形態に係るマイクロミラー素子における動作を説明するための図である。
図14図14は、本発明の第2の実施の形態に係るマイクロミラーアレイの構成を示す平面図である。
図15図15は、図14のIV-IV線断面図である。
図16図16は、本発明の第3の実施の形態に係るマイクロミラー素子の構成を示す平面図である。
図17図17は、図16のV-V線断面図である。
図18図18は、本発明の第3の実施の形態に係るマイクロミラー素子における動作を説明するための図である。
図19図19は、本発明の第3の実施の形態に係るマイクロミラー素子における動作を説明するための図である。
図20図20は、本発明の第3の実施の形態に係るマイクロミラーアレイの構成を示す平面図である。
図21図21は、図20のVI-VI線断面図である。
図22図22は、従来のマイクロミラーアレイの構成を模式的に示す斜視図である。
図23図23は、従来のマイクロミラーアレイの断面図である。
図24図24は、従来のマイクロミラーアレイの動作を説明するための図である。
図25図25は、従来のマイクロミラーアレイの動作を説明するための図である。
図26図26は、従来のマイクロミラーアレイにおける電界遮蔽効果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[第1の実施の形態]
まず、本発明の第1の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0031】
<マイクロミラー素子の構成>
図1図2に示すように、本実施の形態に係るマイクロミラー素子1は、ミラー基板10と、このミラー基板10と対向配置された電極基板20とを備えている。
【0032】
ミラー基板10は、平面視略矩形の開口部11と、この開口部11の一組の対辺に位置し互いに平行に配設された一対の支持部材12と、開口部11内に形成され、支持部材12に一端が固定されて他端が変位可能とされた一対の可動梁13−1,13−2と、この可動梁の他端に接続されたミラー14と、可動梁13とミラー14とを連結するばね部材15−1,15−2とを備える。
なお、以下において、支持部材12の延在方向に沿った方向をx軸方向、このx軸方向に直交し、かつ、ミラー基板10の平面方向に沿った方向をy軸方向、ミラー基板10と電極基板20の距離方向をz軸方向とする。
【0033】
可動梁13−1,13−2は、平面視略矩形の板状に形成され、長手方向がy軸方向に沿い、一方の短辺(固定端)が支持部材12に固定され、他方の短辺(可動端)に対応するばね部材15−1,15−2が接続されており、ミラー14を挟んで対向配置されている。
また、可動梁13−1,13−2には、延在方向に沿って3つの開口13a〜13cが形成されている。本実施の形態において、開口13a〜13cは、可動梁13−1,13−2の略中央部から可動端の間に形成されている。
【0034】
ミラー14は、平面視矩形の板状に形成され、一組の対辺の中央部には対応するばね部材15−1,15−2が接続されている。
【0035】
ばね部材15−1,15−2は、図3に示すように、平面視略H字状に形成されている。
【0036】
一方、電極基板20には、可動梁13−1,13−2と対向する位置に、平面視略矩形の固定電極21−1,21−2が形成されている。また、電極基板20のミラー14と対向する位置には、ミラー駆動電極22−1,22−2が形成されている。また、電極基板20の上には、所定距離離間してミラー基板10を固定するためにz軸方向に突出したギャップ制御用バンプ23が形成されている。さらに、電極基板20内には、固定電極21−1,21−2に接続された配線24と、ミラー駆動電極22−1,22−2に接続された配線25とが形成されている。
【0037】
ここで、固定電極21−1,21−2は、対向配置された可動梁13−1,13−2の3つの開口13a〜13cに向かって突出する突出部21a〜21cを有する。
突出部21a〜21cの外形は、電極基板20の平面方向において、開口13a〜13cの外形よりも小さく、ミラー基板10の側から電極基板20を見たときに、開口13a〜13c内部に位置するように形成されている。これにより、可動梁13−1,13−2が電極基板20に向かって移動すると、突出部21a〜21cが開口13a〜13c内に位置するので、突出部21a〜21cが可動梁13−1,13−2に接触しない。
突出部21a〜21cのz軸方向の高さは、可動梁13−1,13−2と離間した位置であれば適宜自由に設定することができる。
【0038】
ミラー駆動電極22−1,22−2は、平面視略矩形に形成されており、x軸方向に並設されている。
【0039】
固定電極21−1,21−2およびミラー駆動電極22−1,22−2は、外部より配線24または配線25を介してそれぞれ独立に制御された電圧(以下、駆動電圧という)が印加されることにより、対向配置された可動梁13−1,13−2またはミラー14を静電引力により駆動させる。
【0040】
<マイクロミラー素子の動作>
次に、図4図5を参照して、本実施の形態に係るマイクロミラー素子1の動作について説明する。
【0041】
まず、固定電極21−1,21−2の何れか一方に駆動電圧を印加すると、その固定電極21−1,21−2に対向配置された可動梁13−1,13−2が固定電極21−1,21−2からの静電引力により固定電極21−1,21−2に向かって変位する。例えば、図4に示すように、固定電極21−2に駆動電圧を印加すると、可動梁13−2が固定電極21−2に向かって変位する。これにより、ミラー14は、x軸に平行な軸(以下、主軸と言う。)回りの一方の方向に回動する。逆に、固定電極21−1に駆動電圧を印加すると、可動梁13−1が固定電極21−1に向かって変位するので、ミラー14は、主軸回りの他方の方向に回動する。これにより、ミラー14を、主軸回りの両方向に回動させることができる。
【0042】
このように可動梁13−1,13−2を変位させたとき、突出部21a〜21cは、上述したように、その外形が可動梁13−1,13−2の開口13a〜13cの外形よりも小さく、ミラー基板10の側から電極基板20を見たときに開口13a〜13c内部に位置するように形成されているので、突出部21a〜21cが開口13a〜13c内に位置するため、可動梁13−1,13−2に接触しない。これにより、可動梁13−1,13−2は、円滑に変位できるので、結果として、ミラー4も円滑に回動することができる。
【0043】
また、可動梁13に働く静電引力は、固定電極と可動梁との距離が近いほど大きくなる。そこで、本実施の形態では、固定電極21−1,21−2に突出部21a〜21cを設けて、可動梁13−1,13−2との距離が近くなるようにしている。これにより、可動梁13−1,13−2を円滑に変位させることができる。
また、可動梁の延在方向に沿って複数の突出部21a〜21cを設けているので、いずかの突出部が可動梁の開口内に位置することによりその突出部によって固定電極に向かって変位させる力が働かなくなっても、他の突出部が開口内に位置しないために固定電極に向かって変位する力が働くこととなる。結果として、可動梁を固定電極に向かって変位させ続けることができる。
【0044】
また、ミラー駆動電極22−1,22−2の何れか一方に駆動電圧を印加すると、そのミラー駆動電極22−1,22−2に対向配置されたミラー14が静電引力によりミラー駆動電極22−1,22−2に向かって変位する。例えば、図5に示すように、ミラー駆動電極22−2に駆動電圧を印加すると、ミラー14のミラー駆動電極22−2に対向する領域がミラー駆動電極22−2に向かって変位する。これにより、ミラー14は、y軸に平行な軸(以下、副軸と言う。)回りの一方の方向に回動する。逆に、ミラー駆動電極22−1に駆動電圧を印加すると、ミラー14のミラー駆動電極22−1に対向する領域がミラー駆動電極22−1に向かって変位するので、ミラー14は、副軸回りの他方の方向に回動する。これにより、ミラー14を、副軸回りの両方向に回動させることができる。
【0045】
このように、本実施の形態に係るマイクロミラー素子1は、主軸および副軸という2つの軸回りに回動させることができる。
【0046】
<マイクロミラーアレイの構成>
このようなマイクロミラー素子1をミラー14の短手方向、すなわちx軸方向に一列に配列することにより、図6図7に示すようなマイクロミラーアレイ2を構成することができる。
ここで、各マイクロミラーアレイ1は、互いに平行に配設された一対の支持部材12に沿って一列に配列されている。隣り合うマイクロミラー素子1の固定電極21−1,21−2の間には、ミラー14と同電位が印加される直方体状の壁状部材26が立設されている。
【0047】
また、ミラー基板10上には、板状部材30をさらに配設するようにしてもよい。この板状部材30は、平面視略矩形の平板状に形成され、可動梁13−1,13−2それぞれの上方に配設されている。このような板状部材30は、可動梁13−1,13−2が覆われるように位置決めして支持部材12の上端に固定することにより、ミラー基板10上に配設される。
【0048】
<マイクロミラーアレイにおける電界遮蔽効果>
このようなマイクロミラーアレイ2において電界遮蔽効果について、図8図9を参照して説明する。
【0049】
図8に示すマイクロミラーアレイ2には、隣り合う固定電極21−1,21−2の間に電界分離用の壁状部材26が形成されている。この壁状部材26は、ミラー14と同電位となるように接続されている。この構成により、可動梁13−1,13−2を駆動するとき、固定電極21−1,21−2によって形成される電界が壁状部材26によってマイクロミラー素子1毎に分離されるので、隣り合うマイクロミラー素子1に電界が干渉することを低減することができる。これにより、隣り合うマイクロミラー素子1の電界の影響を受けて動作することを防ぐことができる。
【0050】
また、可動梁13−1,13−2を駆動させて、突出部21a〜21cが可動梁13−1,13−2の開口13a〜13c内に位置すると、この開口13a〜13c内の突出部21a〜21cによって形成される電界がその開口13a〜13cによって遮蔽される。これによっても、隣り合うマイクロミラー素子1に電界が干渉することを低減することができ、結果として、隣り合うマイクロミラー素子1の誤動作を防ぐことができる。
【0051】
ここで、隣り合うマイクロミラー素子1の間に存在する壁状の部材は、壁状部材26のみである。これに対して、従来のマイクロミラーアレイは、固定電極が断面略U字状なので、隣り合うマイクロミラー素子1の間に2つの壁状の部材が存在することになる。したがって、本実施の形態では、従来よりも隣り合うマイクロミラー素子の距離を狭くすることができ、結果として、マイクロミラーアレイを小型化することができる。
【0052】
また、図9に示すように、可動梁13−1,13−2上方に平板状の板状部材30を設けることにより、可動梁13−1,13−2の上方に分布する電界についてもマイクロミラー素子1毎に分離することができる。
従来では、電界の干渉を低減するためにマイクロミラー素子の上方に設けるシールドキャップは、可動梁との接触を防ぐためにその可動梁直上に溝が位置するように配設する必要があった。
ところが、本実施の形態では、固定電極21−1,21−2に可動梁13−1,13−2が引き寄せられると、接地された可動梁13−1,13−2自身のシールド効果によりマイクロミラー素子1毎の電界が分離されるので、可動梁13−1,13−2上方に比較的離れた位置に板状部材30を配設しても、十分に電界の干渉を低減できる。したがって、従来のように板状部材に溝を設けない単純な平板構造でよいので、製造コストを低減できるとともに、ミラー基板10と板状部材30の位置合わせもより容易に行うことができる。
【0053】
<マイクロミラー素子およびマイクロミラーアレイの製造方法>
次に、本実施の形態に係るマイクロミラー素子およびマイクロミラーアレイの製造方法について説明する。
【0054】
ミラー基板10は、例えば、SOI(Silicon On Insulator)基板をMEMS技術によって加工することにより一体形成されている。SOI基板は、シリコンからなる厚い基体部の上に埋め込み絶縁層を介して薄いシリコンからなるSOI層を備えたものであり、このSOI層を加工することで、可動梁13−1,13−2、ミラー14およびばね部材15−1,15−2などの板状の構造体を形成することができる。このとき、可動梁13−1,13−2に接続する支持部材12などの周辺部も同時に形成する。これらの構造体を加工した後、基体部をドライエッチングにより掘り込み加工し、さらに埋め込み絶縁層を除去することにより、各部が可動可能な状態になる。ミラー14に形成する反射膜(図示せず)は、所望とする金属を例えばスパッタ法や蒸着法により堆積することで形成する。
【0055】
一方、電極基板20は、一般的によく知られたLSI集積回路などの半導体装置の製造方法を用いることにより形成することができる。電極基板20の表面に形成する固定電極21−1,21−2およびミラー駆動電極22−1,22−2は、金めっき等により形成することができる。また、めっき形成プロセスを分けることにより、高さの異なる電極上の突起部や電界分離用の電極壁等を容易に形成することができる。
【0056】
また、主表面の結晶方位が(100)面の単結晶シリコン基板を、水酸化カリウムなどアルカリ溶液でエッチング加工し、シリコン基板に所定の深さの凹部を形成することで、支持構造体を備える電極基板20を形成するようにしてもよい。単結晶シリコンは、(111)面が(100)面や(110)面に比べて著しくアルカリによるエッチング速度が小さい。この現象を利用することでギャップ制御用バンプ23などの支持構造体を形成することができる。このようにして形成した電極基板20のギャップ制御用バンプ23に、ミラー基板10の開口部11の周囲を貼り合わせることにより、マイクロミラー素子が完成する。
【0057】
また、個別に用意した支持構造体を用いるようにしてもよい。例えば、はんだバンプやめっきなどにより形成した支持構造体を用いるようにしてもよい。また、ミラー部と電極部とを表面マイクロマシニングにより、積層して一体形成するようにしてもよい。
【0058】
このようなマイクロミラー素子1を複数配列したマイクロミラーアレイ2を製造する場合には、上述したマイクロミラー素子1の製造方法と同等の方法により、ミラー基板10に複数の可動梁13−1,13−2、ミラー14およびばね部材15−1,15−2を形成するとともに、電極基板20に複数の固定電極21−1,21−2およびミラー駆動電極22−1,22−2を形成する。また、隣り合うマイクロミラー素子1の固定電極21−1,21−2の間に壁状部材26を形成するとともに、隣り合うマイクロミラー素子1のミラー駆動電極22−1,22−2の間にも壁状部材26を形成する。これらの壁状部材26は、例えば、金めっき等により形成することができる。
このようにして形成したミラー基板10と電極基板20を貼り合わせた後、板状部材30をミラー基板10の支持部材12上端に固定することにより、マイクロミラーアレイ2が完成する。
【0059】
以上説明したように、本実施の形態によれば、可動梁13−1,13−2が開口13a〜13cを有し、固定電極21−1,21−2が開口13a〜13cに向かって突出する突出部21a〜21cを有することにより、隣り合うマイクロミラー素子1の固定電極21−1,21−2間で電界の干渉を低減することが可能となるので、隣り合う固定電極21−1,21−2の距離を短くすることができ、結果として、小型化を実現することができる。
【0060】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施について説明する。なお、本実施の形態は、第1の実施の形態にマイクロミラー素子において、可動梁と固定電極をそれぞれ3つずつ設けたものである。したがって、本実施の形態において、第1の実施の形態と同等の構成については、同じ名称および符号を付し、適宜説明を省略する。
【0061】
図10図11に示すように、本実施の形態に係るマイクロミラー素子1’は、ミラー基板10’と、このミラー基板10’と対向配置された電極基板20’とを備えている。
【0062】
ミラー基板10’は、平面視略矩形の開口部11と、この開口部11の一組の対辺に位置し互いに平行に配設された一対の支持部材12と、開口部11内に形成され、支持部材12に一端が固定されて他端が変位可能とされた3つの可動梁13−1〜13−3と、この可動梁の他端に接続されたミラー14と、可動梁13とミラー14とを連結するばね部材15−1〜15−3とを備える。
【0063】
可動梁13−1〜13−3は、平面視略矩形の板状に形成され、長手方向がy軸方向に沿い、一方の短辺(固定端)が支持部材12に固定され、他方の短辺(可動端)に対応するばね部材15−1〜15−3が接続されている。本実施の形態において、可動梁13−1は、一端が一方の支持部材12に固定され、他端がミラー14の一組の対辺のうち一方の辺の中央部に接続されたばね部材15−1が接続されている。一方、可動梁13−2,13−3は、一端が他方の支持部材12に固定され、他端がミラー14の一組の対辺のうち他方の辺の端部に接続されたばね部材15−2またはばね部材15−3が接続されている。
また、可動梁13−1〜13−3には、延在方向に沿って3つの開口13a〜13cが形成されている。
【0064】
一方、電極基板20’には、可動梁13−1〜13−3と対向する位置に、平面視略矩形の固定電極21−1〜21−3が形成されている。また、電極基板20’の上には、所定距離離間してミラー基板10’を固定するためにz軸方向に突出したギャップ制御用バンプ23が形成されている。また、電極基板20’内には、固定電極21−1〜21−3に接続された配線24が形成されている。さらに、固定電極21−2と固定電極21−3との間には、壁状部材26が立設されている。
ここで、固定電極21−1〜21−3は、対向配置された可動梁13−1〜13−3の3つの開口13a〜13cに向かって突出する突出部21a〜21cを有する。
【0065】
<マイクロミラー素子の動作>
次に、図12図13を参照して、本実施の形態に係るマイクロミラー素子1’の動作について説明する。
【0066】
まず、固定電極21−1、または、固定電極21−2,21−3に駆動電圧を印加すると、その固定電極21−1〜21−3に対向配置された可動梁13−1または可動梁13−2,13−3が静電引力により固定電極21−1,21−2に向かって変位する。例えば、図12に示すように、固定電極21−2,21−3に駆動電圧を印加すると、可動梁13−2,13−3が固定電極21−2,21−3に向かって変位する。これにより、ミラー14は、x軸に平行な軸(以下、主軸と言う。)回りの一方の方向に回動する。逆に、固定電極21−1に駆動電圧を印加すると、可動梁13−1が固定電極21−1に向かって変位するので、ミラー14は、主軸回りの他方の方向に回動する。これにより、ミラー14を、主軸回りの両方向に回動させることができる。
【0067】
また、固定電極21−2,21−3の何れか一方に駆動電圧を印加すると、その固定電極21−2,21−3に対向配置された可動梁13−2または可動梁13−3が静電引力により固定電極21−2,21−3に向かって変位する。例えば、図13に示すように、固定電極21−3に駆動電圧を印加すると、可動梁13−3が固定電極21−2,21−3に向かって変位する。これにより、ミラー14は、ばね部材15−1との接続部を通る軸(以下、副軸と言う。)回りの一方の方向に回動する。逆に、固定電極21−2に駆動電圧を印加すると、可動梁13−2が固定電極21−2に向かって変位するので、ミラー14は、副回りの他方の方向に回動する。これにより、ミラー14を、副軸回りの両方向に回動させることができる。
【0068】
このように、本実施の形態に係るマイクロミラー素子1’は、主軸および副軸という2つの軸回りに回動させることができる。
【0069】
<マイクロミラーアレイの構成>
このようなマイクロミラー素子1’をx軸方向に一列に配列することにより、図14図15に示すようなマイクロミラーアレイ2’を構成することができる。
ここで、各マイクロミラーアレイ1’は、互いに平行に配設された一対の支持部材12に沿って一列に配列されている。第1の実施の形態に係るマイクロミラーアレイ2と大きく異なるのは、ミラー14を挟んで設けられている可動梁および固定電極の数が異なるので、その数が交互に入れ替わるようにマイクロミラー素子1’を配列していることである。これにより、マイクロミラー素子1’をより高密度に配設することができる。
【0070】
また、隣り合うマイクロミラー素子1’の固定電極21−1〜21−3の間には、ミラー14と同電位とされた直方体状の壁状部材26が立設されている。
さらに、ミラー基板10’上には、板状部材30をさらに配設するようにしてもよい。
【0071】
このような構成を有するマイクロミラー素子1’およびマイクロミラーアレイ2’は、上述した第1の実施の形態におけるマイクロミラー素子1およびマイクロミラーアレイ2と同等の方法により製造することができる。
【0072】
以上説明したように、本実施の形態によれば、可動梁13−1〜13−3が開口13a〜13cを有し、固定電極21−1〜21−3が開口13a〜13cに向かって突出する突出部21a〜21cを有することにより、隣り合うマイクロミラー素子1’の固定電極21−1〜21−3間で電界の干渉を低減することが可能となるので、隣り合う固定電極21−1〜21−3の距離を短くすることができ、結果として、小型化を実現することができる。
【0073】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施について説明する。なお、本実施の形態は、第1の実施の形態にマイクロミラー素子において、可動梁と固定電極をそれぞれ4つずつ設けたものである。したがって、本実施の形態において、第1の実施の形態と同等の構成については、同じ名称および符号を付し、適宜説明を省略する。
【0074】
図16図17に示すように、本実施の形態に係るマイクロミラー素子1”は、ミラー基板10”と、このミラー基板10”と対向配置された電極基板20”とを備えている。
【0075】
ミラー基板10”は、平面視略矩形の開口部11と、この開口部11の一組の対辺に位置し互いに平行に配設された一対の支持部材12と、開口部11内に形成され、支持部材12に一端が固定されて他端が変位可能とされた4つの可動梁13−1〜13−4と、この可動梁の他端に接続されたミラー14と、可動梁13とミラー14とを連結するばね部材15−1〜15−4とを備える。
【0076】
可動梁13−1〜13−4は、平面視略矩形の板状に形成され、長手方向がy軸方向に沿い、一方の短辺(固定端)が支持部材12に固定され、他方の短辺(可動端)に対応するばね部材15−1〜15−4が接続されている。本実施の形態において、可動梁13−1,13−4は、一端が一方の支持部材12に固定され、他端がミラー14の一組の対辺のうち一方の辺の端部に接続されたばね部材15−1またはばね部材15−4が接続されている。一方、可動梁13−2,13−3は、一端が他方の支持部材12に固定され、他端がミラー14の一組の対辺のうち他方の辺の端部に接続されたばね部材15−2またはばね部材15−3が接続されている。
また、可動梁13−1〜13−4には、延在方向に沿って3つの開口13a〜13cが形成されている。
【0077】
一方、電極基板20”には、可動梁13−1〜13−4と対向する位置に、平面視略矩形の固定電極21−1〜21−4が形成されている。また、電極基板20の上には、所定距離離間してミラー基板10を固定するためにz軸方向に突出したギャップ制御用バンプ23が形成されている。また、電極基板20内には、固定電極21−1〜21−4に接続された配線24が形成されている。さらに、固定電極21−1と固定電極21−4の間、および、固定電極21−2と固定電極21−3との間には、壁状部材26が立設されている。
ここで、固定電極21−1〜21−4は、対向配置された可動梁13−1〜13−4の3つの開口13a〜13cに向かって突出する突出部21a〜21cを有する。
【0078】
<マイクロミラー素子の動作>
次に、図18図19を参照して、本実施の形態に係るマイクロミラー素子1”の動作について説明する。
【0079】
まず、固定電極21−1,21−4または固定電極21−2,21−3の一方に駆動電圧を印加すると、その固定電極に対向配置された可動梁が静電引力により固定電極に向かって変位する。例えば、図18に示すように、固定電極21−2,21−3に駆動電圧を印加すると、可動梁13−2,13−3が固定電極21−2,21−3に向かって変位する。これにより、ミラー14は、x軸に平行な軸(以下、主軸と言う。)回りの一方の方向に回動する。逆に、固定電極21−1,21−4に駆動電圧を印加すると、可動梁13−1,13−4が固定電極21−1,21−4に向かって変位するので、ミラー14は、主軸回りの他方の方向に回動する。これにより、ミラー14を、主軸回りの両方向に回動させることができる。
【0080】
また、固定電極21−1,21−2、または、固定電極21−3,21−4の一方に駆動電圧を印加すると、そのミラー駆動電極に対向配置された可動梁が静電引力により固定電極に向かって変位する。例えば、図19に示すように、固定電極21−3,21−4に駆動電圧を印加すると、可動梁13−3,13−4が固定電極21−3,21−4に向かって変位する。これにより、ミラー14は、y軸に平行な軸(以下、副軸と言う。)回りの一方の方向に回動する。逆に、固定電極21−1,21−2に駆動電圧を印加すると、可動梁13−1,13−2が固定電極21−1,21−2に向かって変位するので、ミラー14は、副軸回りの他方の方向に回動する。これにより、ミラー14を、副軸回りの両方向に回動させることができる。
【0081】
このように、本実施の形態に係るマイクロミラー素子1”は、主軸および副軸という2つの軸回りに回動させることができる。
【0082】
<マイクロミラーアレイの構成>
このようなマイクロミラー素子1”をx軸方向に一列に配列することにより、図20図21に示すようなマイクロミラーアレイ2”を構成することができる。
ここで、各マイクロミラーアレイ1”は、互いに平行に配設された一対の支持部材12に沿って一列に配列されている。
【0083】
また、隣り合うマイクロミラー素子1”の固定電極21−1〜21−4の間には、ミラー14と同電位とされた直方体状の壁状部材26が立設されている。
さらに、ミラー基板10”上には、板状部材30をさらに配設するようにしてもよい。
【0084】
このような構成を有するマイクロミラー素子1”およびマイクロミラーアレイ2”は、上述した第1の実施の形態におけるマイクロミラー素子1およびマイクロミラーアレイ2と同等の方法により製造することができる。
【0085】
以上説明したように、本実施の形態によれば、可動梁13−1〜13−4が開口13a〜13cを有し、固定電極21−1〜21−4が開口13a〜13cに向かって突出する突出部21a〜21cを有することにより、隣り合うマイクロミラー素子1”の固定電極21−1〜21−4間で電界の干渉を低減することが可能となるので、隣り合う固定電極21−1〜21−4の距離を短くすることができ、結果として、小型化を実現することができる。
【0086】
なお、第1〜第3の実施の形態において、可動梁が有する開口および固定電極が有する突出部の数量が3つの場合を例に説明したが、その数量は3つに限定されず、適宜自由に設定することができる。また、開口の平面形状についても矩形に限定されず、例えば、円形、六角形、台形、楕円形など適宜自由に設定することができる。同様に、突出部の形状についても直方体状に限定されず、円柱、角柱、円錐台、角錐台など適宜自由に設定することができる。
【0087】
また、第1〜第3の実施の形態において、可動梁が略矩形の平面形状を有する場合を例に説明したが、可動梁の平面形状はこれに限定されず、例えば、三角形、台形などにしたり、固定端から可動端に向かって幅が大きくなるようしたり適宜自由に設定することができる。特に、可動梁は、静電引力により変形するので、この変形量に自身の剛性が大きく影響するため、平面形状を適宜設定することにより、所望の特性で駆動させることができる。
【0088】
また、第1〜第3の実施の形態において、ミラー14が平面視略矩形の場合を例に説明したが、ミラー14の平面形状はこれに限定されず、例えば、平行四辺形、六角形、円形、楕円形、台形など適宜自由に設定することができる。これらの形状において、ばね部材が連結された端部から中央部に向かうにつれて面積を大きくすることにより、ミラー端部からの戻り光を抑制することもできる。
【0089】
また、第1〜第3の実施の形態において、ミラー基板の下方に固定電極を備えた電極基板を設けて、可動梁を下方に変位させる場合を例に説明したが、可動梁の上方に固定電極を配設したり、可動梁の上下両方に固定電極を設けるようにしてもよい。
【0090】
また、第1〜第3の実施の形態において、ばね部材の形状が平面視略H字状の場合を例に説明したが、ばね部材の形状はこれに限定されず、例えば、つづら折り状など適宜自由に設定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、ミラーなどの構造体を回動可能に支持する各種装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0092】
1,1’,1”…マイクロミラー素子、2,2’,2”…マイクロミラーアレイ、10,10’,10”…ミラー基板、11…開口部、12…支持部材、13−1〜13−4…可動梁、14…ミラー、15−1〜15−4…ばね部材、20,20’,20”…電極基板、21a〜21c…突出部、21−1〜21−4…固定電極、22−1,22−2…ミラー駆動電極、23…ギャップ制御用バンプ、24,25…配線、26…壁状部材、30…板状部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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