特許第6053018号(P6053018)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6053018
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】結晶成長方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 11/14 20060101AFI20161219BHJP
【FI】
   C30B11/14
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-95523(P2013-95523)
(22)【出願日】2013年4月30日
(65)【公開番号】特開2014-214078(P2014-214078A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2015年8月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笹浦 正弘
(72)【発明者】
【氏名】今井 欽之
(72)【発明者】
【氏名】小林 潤也
【審査官】 今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−221101(JP,A)
【文献】 特開平07−247193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉内に設置されたるつぼ内の溶融原料に対して、鉛直方向に上高下低の軸方向温度分布を形成し、前記溶融原料を冷却することにより、前記るつぼの下方より上方に向かって結晶を成長させる結晶成長方法であり、
かつ、結晶成長を開始する前に前記溶融原料を結晶化温度より高温の温度で、一定時間保持する過加熱処理もしくはソーキング処理の工程を行う結晶成長方法において、
前記過加熱処理もしくはソーキング処理の工程を終了した後に、前記溶融原料を冷却し、前記るつぼの底部に設置された種子結晶設置位置が固液平衡温度になった時点で、前記るつぼ上方より種子結晶粒を投入することにより、前記種子結晶を前記種子結晶設置位置に運搬し、前記溶融原料をさらに冷却することで前記種子結晶粒を核として結晶を成長させることを特徴とする結晶成長方法。
【請求項2】
前記るつぼは、コーン状の形状と、前記コーン状の形状の最下部に水平平坦面とを具備し、前記種子結晶粒が重力により前記コーン状の形状をなす部位の内部を通って落下し、前記水平平坦面に落下静置し得ることを特徴とする請求項1に記載の結晶成長方法。
【請求項3】
前記るつぼは、コーン状の形状をなす部位と、前記コーン状の形状の最下部からさらにパイプが伸びた形状の部位と、前記パイプの底部に水平平坦面とを具備し、前記種子結晶粒が重力により前記コーン状の形状をなす部位の内部と前記パイプの内部とを通って落下し、前記水平平坦面に落下静置し得ることを特徴とする請求項1に記載の結晶成長方法。
【請求項4】
前記種子結晶粒は、前記種子結晶設置位置の口径より1mm以上小さい最大径であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の結晶成長方法。
【請求項5】
前記種子結晶粒は、所望の成長方向に対して鉛直な平面を有していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の結晶成長方法。
【請求項6】
前記種子結晶粒は、結晶化温度での結晶構造が立方晶で、かつ前記所望の成長方向が<001>方向の場合、
つの{001}平面で構成されていることを特徴とする請求項に記載の結晶成長方法。
【請求項7】
前記種子結晶粒は、結晶化温度での結晶構造が立方晶で、かつ前記所望の成長方向が<110>方向の場合、
4つの{110}平面で構成され、<110>方向でない方位に向かった面は曲面とすることを特徴とする請求項に記載の結晶成長方法。
【請求項8】
前記種子結晶粒は、結晶化温度での結晶構造が立方晶で、かつ前記所望の成長方向が<110>方向の場合、
前記種子結晶粒の形状を直方体とし、4つの{110}平面で構成され、<110>方向でない方位に向かった面の面積は前記{110}平面より小さいことを特徴とする請求項に記載の結晶成長方法。
【請求項9】
前記種子結晶粒は、結晶化温度での結晶構造が立方晶で、かつ前記所望の成長方向が<111>方向の場合、
8つの{111}平面で構成されていることを特徴とする請求項に記載の結晶成長方法。
【請求項10】
前記種子結晶は、結晶化温度での結晶構造が立方晶でない場合、
前記所望の成長方向に鉛直な平面で構成されていることを特徴とする請求項に記載の結晶成長方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶成長方法に関し、より詳細には、垂直ブリッジマン法、垂直温度勾配凝固法による結晶成長において、結晶成長前に溶融原料の元になる素原料を加熱中に生成した中間化合物を完全に分解し、素原料に含まれる不要成分を脱気する過加熱処理もしくはソーキング処理の工程を付与するも、種子結晶粒により成長結晶の方位を制御し、単結晶を製造するための結晶成長方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、酸化物結晶材料の作製方法として、成長容器内の溶融した原料をるつぼ壁に設置した種子結晶から水平方向に徐々に固化させる水平ブリッジマン法または水平温度勾配凝固法、成長容器を垂直に設置して温度勾配を与え、 成長容器を低温度側に移動させて結晶を固化する垂直ブリッジマン法(例えば、特許文献1参照)、成長容器を垂直に固定して温度勾配を一定に保持しながら炉全体の温度を冷却させて結晶を固化する垂直温度勾配凝固法などが知られている。
【0003】
図1を参照して、従来の垂直ブリッジマン法による結晶の作製方法について説明する。 るつぼ1内に種子結晶棒4と原料を充填し、結晶製造炉に設置する。原料は、素原料である単元素、酸化物、炭化物を所望の組成比となるよう秤量し、るつぼ1に充填する。溶媒として、結晶の構成成分である元素、酸化物、炭化物を過剰に追加したり、結晶の構成成分と異なる元素、酸化物、炭化物を追加して充填することもある。加熱ヒータ6により、 原料を加熱溶融して溶融原料2とする。結晶製造炉は、るつぼ1の下方が結晶化温度より低い低温領域であり、るつぼ1の上方が結晶化温度より高い高温領域である軸方向温度分布5を有する。加熱ヒータ6の出力を一定のままで、るつぼ1を低温領域へ、すなわち下部へ移動させることにより、溶融原料2を下方から徐々に冷却する。るつぼ1の移動により、結晶化温度に達した成長結晶3は、種子結晶棒4を核として結晶成長する。
【0004】
このとき、成長結晶3は、種子結晶棒4を核として順次成長するから、種子結晶棒4の結晶方位を継承し、種子結晶棒4の結晶方位と同じ結晶方位を有する成長結晶3として成長させることができる。なお、種子結晶棒4がない場合には、るつぼ1の底部から自然発生した成長核を核として順次結晶が成長する。
【0005】
加熱ヒータ6の出力を一定のままで、るつぼを下部へ移動させることに代えて、加熱ヒータ6の軸方向温度分布5の形状を変えない様に調整しながら加熱ヒータ6の出力を調整し冷却するのが垂直温度勾配凝固法である。詳しくは、図1において、軸方向温度分布5の形状を変えないで軸方向温度分布7に冷却する。結晶化温度に到達する領域は、るつぼ下方から上方に移動して行くので、垂直ブリッジマン法と同様に、成長結晶3は、種子結晶棒4を核として下方から順次成長するから、種子結晶棒4の結晶方位を継承し、種子結晶棒4の結晶方位と同じ結晶方位を有する成長結晶3として成長させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5342475号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】A. Reisman et al.,“Phase Diagram of the System KNbO3-KTaO3 by the Methods of Differential Thermal and Resistance Analysis”, J. American Ceramic Society, Vol.77, (1955)
【非特許文献2】J. R. Carruthers et al., “ Nonstoichiometry and Crystal Growth of Lithium Niobate”, J. Appl. Phys., Vol.42, No.5, pp1846-1851 (1971)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方、軸方向温度分布が上方で低く下方で高く、垂直ブリッジマン法や垂直温度勾配凝固法と逆の軸方向温度分布を有するCZ法やTSSG法による結晶製造が、広く普及している。CZ法やTSSG法の場合、引き上げ軸の先端に取り付けられた種子結晶棒を、上方から溶融原料に浸して、成長結晶を育成する。種子結晶棒を核とした結晶成長を開始する前に、結晶化温度より高温の温度で、一定時間保持し、溶融原料の元になる素原料を加熱中に生成した中間化合物を完全に分解し、素原料に含まれる不要成分を脱気する過加熱処理もしくはソーキング処理の工程を行うことがある。これらの工程を行うことによって、製造したい結晶以外の化合物の析出を抑制したり、成長結晶内に含まれる不純物を低減する効果があるからである。
【0009】
垂直ブリッジマン法や垂直温度勾配凝固法でも同様に、種子結晶棒を核とした結晶成長を開始する前に、過加熱処理もしくはソーキング処理の工程を行えば、同様の効果が期待できる。しかしながら、垂直ブリッジマン法や垂直温度勾配凝固法では、加熱前にあらかじめるつぼ内に種子結晶棒が充填してあるので、結晶化温度より高温の温度に加熱することが難しい。なぜなら、結晶化温度より高温の温度に加熱すると、あらかじめ充填した種子結晶棒が溶融してしまうからである。
【0010】
従って、垂直ブリッジマン法や垂直温度勾配凝固法による結晶製造で、過加熱処理もしくはソーキング処理の工程を併用する場合、種子結晶棒をあらかじめ充填せず、るつぼ内で最も温度が低く最初に結晶成長が開始するるつぼの底部で自然発生した成長核を核として結晶成長する方法しか選択することができなかった。種子結晶棒がないので、成長結晶の成長方位はまちまちであり、方位制御の歩留まりに課題があった。
【0011】
本発明は、このような課題を克服するためになされたもので、その目的とするところは、垂直ブリッジマン法や垂直温度勾配凝固法で過加熱処理もしくはソーキング処理の工程を併用しながら種子結晶による方位制御を可能にし、結晶特性の均一な結晶を歩留まりよく製造するための結晶製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような目的を達成するために、本発明の一実施態様は、炉内に設置されたるつぼ内の溶融原料に対して、鉛直方向に上高下低の軸方向温度分布を形成し、前記溶融原料を冷却することにより、前記るつぼの下方より上方に向かって結晶を成長させる結晶成長方法であり、かつ、結晶成長を開始する前に前記溶融原料を結晶化温度より高温の温度で、一定時間保持する過加熱処理もしくはソーキング処理の工程を行う結晶成長方法において、前記過加熱処理もしくはソーキング処理の工程を終了した後に、前記溶融原料を冷却し、前記るつぼの底部に設置された種子結晶設置位置が固液平衡温度になった時点で、前記るつぼ上方より種子結晶粒を投入することにより、前記種子結晶粒前記種子結晶設置位置に運搬し、前記溶融原料をさらに冷却することで前記種子結晶粒を核として結晶を成長させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、垂直ブリッジマン法や垂直温度勾配凝固法において、過加熱処理もしくはソーキング処理の工程を行った後に、種子結晶粒を投入設置し成長結晶の成長方位を制御できるので、結晶品質に優れ、かつ成長方位のそろった結晶を歩留まりよく製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】従来の垂直ブリッジマン法または垂直温度勾配凝固法による結晶成長を説明する図である。
図2】実施例1にかかる垂直温度勾配凝固法による結晶成長を説明する図である。
図3】実施例2にかかる垂直ブリッジマン法による結晶成長を説明する図である。
図4】実施例1および2にかかる種子結晶粒を説明する図であり、(a)は正方晶<001>方向成長を、(b)および(c)は正方晶<110>方向成長を、(d)は正方晶<111>方向成長を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施例1]
図2(a)および(b)を用いて、温度勾配凝固法による<001>方向成長のKTaxNb1-x3(0≦x≦1)単結晶の製造方法を説明する。
【0016】
結晶製造装置は、ヒータ26によって炉内温度ならびに軸方向温度分布が制御可能な電気炉を有し、電気炉内のるつぼ設置台28に白金製のるつぼ21を設置している。るつぼ21の底部にはテーパーが設けてあり、かつ最下部には水平平坦部が設けてある。テーパー角度を45°とし、水平平坦部は5mmφの円盤状とした。この水平平坦部は種子結晶設置位置29であり、熱電対を下から熱接触させて設置することで、その温度を計測できる様にしてある。
【0017】
るつぼ21の中に粉末原料を充填する。KTaxNb1-x3(0≦x≦1)溶質原料は、素原料粉末であるK2CO3とTa25とNb25とを所望の組成比となるように秤量する。溶媒としてKを選択し過剰のK2CO3も併せて秤量する。秤量した粉末原料は、混合後るつぼ21に充填する。粉末原料は、ヒータ26を加熱することで溶融し、溶融原料22となる。結晶成長開始前に、結晶化温度より100℃高い高温の炉内温度で24時間保持し、ソーキング処理の工程を行った。
【0018】
ソーキング処理後、ヒータ26の出力を調整し、予め決められた結晶成長に用いる上高下低の軸方向温度分布を実現する。軸方向温度分布の形状を保持しながらさらにヒータ26の出力を調整することで、るつぼ全体の温度を徐々に冷却して行く。種子結晶設置位置29の下に設置した熱電対により温度を測定し、結晶が溶融せずかつ結晶成長も生じない平衡液相線温度まで冷却する。この平衡液相線温度に達したら、あらかじめ準備しておいたKTaxNb1-x3単結晶で作製した種子結晶粒24をるつぼ上方より投下する。図4(a)に種子結晶粒の形状を示す。種子結晶粒24には、つの{001}面で構成された一辺2mmの立方体を用いた。ここで、{001}面は、高温の結晶化温度での立方晶構造における結晶面である。投入はるつぼ中心軸の延長線上の電気炉上部より行った。種子結晶粒24の投下により、溶融原料22の表面に波立ちが発生し、種子結晶粒24が溶融原料22内に運搬されたことが確認できた。さらに、種子結晶設置位置29の下に設置した熱電対に2〜5℃の温度低下が観測された。結晶の成長は、平衡液相線温度より低い温度まで冷却し過飽和状態を実現した結晶化温度から開始する為、2〜5℃の温度低下では結晶の成長は開始しない。種子結晶粒24投入後、引き続き、軸方向温度分布の形状を保持しながらヒータ26の出力を調整することで、るつぼ全体の温度を徐々に冷却して行く。この冷却によって、溶融原料22の過飽和状態が実現し、結晶化温度まで結晶23がるつぼ上方へ成長する。
【0019】
種子結晶粒24は室温から1000℃以上の温度まで、数秒で急加熱されるが、欠陥の少ない高品質な単結晶材から作製した種子結晶粒を用いると、割れることがなく、種子結晶として機能した。種子結晶粒が小さい為に、急加熱しても粒内外に温度差が生じ難く、熱ショックに耐性があったと考えられる。組成が不均一であったり、結晶欠陥が含まれたりする種子結晶粒は20回に1回の頻度で二分に割れることもあった。るつぼ21の底部に角度45°のテーパーを設けた場合、投入した一辺2mmの立方体の種子結晶粒24は、10回に9回の頻度で5mmφの水平平坦部に運搬でき、種子結晶粒24の{001}面が種子結晶設置位置29の水平平坦面に接して位置した。成長結晶23は種子結晶粒24を継承し成長しており、成長方位が制御されていることが確認できた。
【0020】
比較例として、ソーキング処理の工程を行わずに、結晶が溶融せずかつ結晶成長も生じない平衡液相線温度まで加熱し、種子結晶粒24をるつぼ上方より投下し、結晶を成長してみた。成長結晶に目視で確認できる空孔が発見できる結晶があった。また、成長過程で多結晶化する結晶もあった。空孔や多結晶化は、成長開始前にソーキング処理をした後に製造した結晶には認められない。ソーキング処理によって、粉末原料の加熱中に生成する中間化合物の溶融や、残留素原料に含まれる不要成分の脱気が十分にでき、結晶品質を向上できる効果を確認できた。
【0021】
るつぼ21底部のテーパー角度が種々に異なるるつぼを準備し、種子結晶粒24が種子結晶設置位置29に運搬できる頻度を検討した。テーパー角度が45°以下の角度を有するるつぼを用いた場合、種子結晶設置位置29の水平平坦面に運搬できる頻度が90%であった。種子結晶設置位置29の水平平坦部サイズに対する運搬頻度も検討したところ、種子結晶設置位置39の水平平坦部口径を、種子結晶粒24の最大径に対して1mm以上のマージンを取った場合、ほぼ100%の頻度で、種子結晶粒24の面が水平平坦面に接して位置した。
【0022】
また、結晶成長方向を<110>方向にするため、4つの{110}平面で構成される種子結晶粒を準備し、結晶を製造した。図4(b)に種子結晶粒の形状を示す。{110}平面ではその平面のみで構成される立方体は作製できないので、その他の方位に向かった部分は曲面に成形して、種子結晶設置位置29の水平平坦部に静置しにくくした。本形状により、種子結晶粒24の{110}面が種子結晶設置位置29の水平平坦部に接する頻度を70%から80%に向上できた。図4(c)に種子結晶粒の形状を示す。種子結晶粒24の形状を立方体からその他の方位に向かった平面の面積が小さい直方体に変更することも、種子結晶粒24の{110}面が種子結晶設置位置29の水平平坦部に接する頻度を向上させる効果があった。図4(d)に種子結晶粒の形状を示す。結晶成長方向を<111>方向にするため、8つの{111}平面で構成される正八面体の種子結晶粒を準備し、結晶を製造した。本形状により、種子結晶粒24の{111}面が種子結晶設置位置29の水平平坦部に接して静置でき、<111>方向に成長した結晶を製造することができた。
【0023】
粉末原料に、元素置換やドーパント添加を行うことも可能である。例えば、溶質原料の炭酸カリウムに代えて、炭酸カリウムと炭酸リチウムまたは炭酸ナトリウムとの混合物とし、Ky1-yTaxNb1-x3の置換型単結晶(M=Li、Na)を製造することができる。また、溶質原料にIIa族のMg、Ca、Sr、Baを添加し、KTaxNb1-x3のIIa族ドープ単結晶を製造することもできる。
【0024】
[実施例2]
図3(a)および(b)を用いて、垂直ブリッジマン法による<001>方向成長のLiTaO3単結晶の製造方法を説明する。
【0025】
結晶製造装置は、ヒータ36によって炉内温度ならびに軸方向温度分布が制御可能な電気炉を有し、電気炉内のるつぼ設置台38に白金製のるつぼ31を設置している。るつぼ31の底部にはテーパーが設けてあり、かつ最下部には水平平坦部が設けてある。テーパー角度を30°とし、6mmφのパイプを設け、パイプ底部を水平平坦にした。この水平平坦部は種子結晶設置位置39であり、熱電対を下から熱接触させて設置することで、その温度を計測できる様にしてある。
【0026】
るつぼ31の中に粉末原料を充填する。LiTaO3原料は、素原料粉末であるLi2CO3とTa25とを1:1の組成比となるように秤量する。秤量した粉末原料は、混合後るつぼ21に充填する。粉末原料は、ヒータ36を加熱することで溶融し、溶融原料32となる。結晶成長開始前に、結晶化温度より150℃高い高温の炉内温度で10時間保持し、過加熱処理の工程を行った。
【0027】
過加熱処理後、ヒータ36の出力を調整し、予め決められた結晶成長に用いる上高下低の軸方向温度分布を実現する。ヒータ36の出力を一定とし、炉内温度と軸方向温度分布を保持し、るつぼ設置台38を下方に下降して行くことで、るつぼ下部の温度を徐々に冷却して行く。種子結晶設置位置39の下に設置した熱電対により温度を測定し、結晶が溶融せずかつ結晶成長も生じない固液平衡温度まで冷却する。この固液平衡温度に達したら、あらかじめ準備しておいたLiTaO3単結晶で作製した種子結晶粒34をるつぼ上方より投下する。図4(a)に種子結晶粒の形状を示す。種子結晶粒34には、つの{001}面で構成された一辺3mmの立方体を用いた。ここで、{001}面は、高温の結晶化温度での立方晶構造における結晶面である。投入はるつぼの軸中心を延長した電気炉上部より行った。種子結晶粒34の投下により、溶融原料32の表面に波立ちが発生し、種子結晶粒34が溶融原料32内に運搬されたことが確認できた。さらに、種子結晶設置位置39の下に設置した熱電対に2〜5℃の温度低下が観測された。結晶の成長は、固液平衡温度より低い温度まで冷却し過冷却状態を実現した結晶化温度から開始する為、2〜5℃の温度低下では結晶の成長は開始しない。種子結晶粒34投入後、引き続き、るつぼ設置台38を下方に下降して行くことで、るつぼ下部の温度を徐々に冷却して行く。この冷却によって、溶融原料32の過冷却状態が実現し、結晶化温度まで結晶33がるつぼ上方へ成長する。
【0028】
種子結晶粒34は室温から1000℃以上の温度まで、数秒で急加熱されるが、欠陥の少ない高品質な単結晶材から作製した種子結晶粒を用いると、割れることがなく、種子結晶として機能した。種子結晶粒が小さい為に、急加熱しても粒内外に温度差が生じ難く、熱ショックに耐性があったと考えられる。組成が不均一であったり、結晶欠陥が含まれたりする種子結晶粒は20回に1回の頻度で二分に割れることもあった。るつぼ31の底部に角度30°のテーパーを設けた場合、投入した一辺3mmの立方体の種子結晶粒34は、10回に10回の頻度で6mmφの水平平坦部に運搬でき、種子結晶粒34の{001}面が種子結晶設置位置29の水平平坦面に接して位置した。成長結晶23は種子結晶粒34を継承し成長しており、成長方位が制御されていることが確認できた。
【0029】
比較例として、過加熱処理の工程を行わずに、結晶が溶融せずかつ結晶成長も生じない固液平衡温度まで加熱し、種子結晶粒34をるつぼ上方より投下し、結晶を成長してみた。成長結晶に目視で確認できる空孔が発見できる結晶があった。また、成長過程で多結晶化する結晶もあった。空孔や多結晶化は、成長開始前に過加熱処理をした後に製造した結晶には認められない。過加熱処理によって、粉末原料の加熱中に生成する中間化合物の溶融や、残留素原料に含まれる不要成分の脱気が十分にでき、結晶品質を向上できる効果を確認できた。
【0030】
るつぼ31底部のテーパー角度が種々に異なるるつぼを準備し、種子結晶粒34が種子結晶設置位置39に運搬できる頻度を検討した。テーパー角度が45°以下の角度を有するるつぼを用いた場合、種子結晶設置位置39の水平平坦面に運搬できる頻度が90%であった。種子結晶設置位置39の水平平坦部サイズに対する運搬頻度も検討したところ、種子結晶設置位置39の水平平坦部口径を、種子結晶粒34の最大径に対して1mm以上のマージンを取った場合、ほぼ100%の頻度で、種子結晶粒34の面が水平平坦面に接して位置した。
【0031】
また、結晶成長方向を<110>方向にするため、4つの{110}平面で構成される種子結晶粒を準備し、結晶を製造した。図4(b)に種子結晶粒の形状を示す。{110}平面ではその平面のみで構成される立方体は作製できないので、その他の方位に向かった部分は曲面に成形して、種子結晶設置位置39の水平平坦部に静置しにくくした。本形状により、種子結晶粒24の{110}面が種子結晶設置位置39の水平平坦部に接する頻度を70%から80%に向上できた。図4(c)に種子結晶粒の形状を示す。種子結晶粒34の形状を立方体からその他の方位に向かった平面の面積が小さい直方体に変更することも、種子結晶粒34の{110}面が種子結晶設置位置29の水平平坦部に接する頻度を向上させる効果があった。図4(d)に種子結晶粒の形状を示す。結晶成長方向を<111>方向にするため、8つの{111}平面で構成される正八面体の種子結晶粒を準備し、結晶を製造した。本形状により、種子結晶粒34の{111}面が種子結晶設置位置39の水平平坦部に接して静置でき、<111>方向に成長した結晶を製造することができた。
【0032】
以上、LiTaO3結晶の製造について記載したが、Taに代えてNbを用いることで、LiNbO3結晶に適用できることは言うまでもない。
【0033】
また、実施例1および2では、結晶化温度での結晶構造が立方晶である結晶について説明したが、他の結晶構造に対しても、種子結晶粒の所望の成長方向に鉛直な平面に関して、取り得る最大数に構成したり、その他の面より面積を大きくした平面にすることで、種子結晶設置位置の水平平坦部へ静置する確率を上げることで適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0034】
1、21、31 るつぼ
2、22、32 溶融原料
3、23、33 結晶
4 種子結晶棒
5、25 軸方向温度分布
6、26、36 加熱ヒータ
7、27 垂直温度勾配凝固法での冷却後の軸方向温度分布
24、34 種子結晶粒
28、38 るつぼ設置台
29、39 種子結晶設置位置ならびに測温子
図1
図2
図3
図4