特許第6053029号(P6053029)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6053029
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】ゲル状組成物および吸水防止剤
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/06 20060101AFI20161219BHJP
   C04B 41/48 20060101ALI20161219BHJP
   C07F 7/18 20060101ALI20161219BHJP
   C09K 3/18 20060101ALI20161219BHJP
   C09D 183/06 20060101ALI20161219BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20161219BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20161219BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20161219BHJP
   E04B 1/66 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   C08L83/06
   C04B41/48
   C07F7/18 B
   C09K3/18 104
   C09D183/06
   C09D5/00 Z
   C09D7/12
   C08K5/09
   E04B1/66 A
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-216427(P2013-216427)
(22)【出願日】2013年10月17日
(65)【公開番号】特開2015-78305(P2015-78305A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2015年10月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(72)【発明者】
【氏名】青木 俊司
【審査官】 山村 周平
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−272859(JP,A)
【文献】 国際公開第2001/094487(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/00−83/16
C08K 3/00−13/08
C09D 1/00−201/10
C04B 41/00−41/91
C07F 7/00−7/30
E04B 1/00−1/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(1)で示されるオルガノアルコキシシランおよび/または該オルガノアルコキシシランの部分加水分解縮合物 100質量部
Si(OR4−a (1)
(式中、Rは、互いに独立に、炭素数1〜20の1価炭化水素基であり、Rは、互いに独立に、炭素数1〜8の1価炭化水素基であり、aは1、2または3である)
(B)下記式(2)で示されるジカルボン酸アルミニウム 0.3〜20質量部
(RCOO)Al(OH) (2)
(式中、Rは、互いに独立に、炭素数1〜25の1価炭化水素基である)
(C)炭素数6〜24の脂肪酸 0.3〜20質量部、及び
(D)炭素数6〜30のジカルボン酸 0.01〜10質量部
を含有する組成物。
【請求項2】
(E)シロキサン単位の合計数に対するジメチルシロキサン単位の個数が20%以上であるポリオルガノシロキサンを(A)成分100質量部に対して0.1〜50質量部となる量で更に含有する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
水および有機溶剤を含有しない、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
(D)成分が、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、及び、下記式で示される、ポリオルガノシロキサン鎖を有するジカルボン酸から選ばれる1種又は2種以上である、請求項1〜3のいずれか1項記載の組成物
HOOC−X−(RSiO)−RSi−X−COOH
(式中、Xは互いに独立に炭素数1〜10の2価のアルキレン基であり、Rは互いに独立に、水素原子、又は置換又は非置換の、炭素数1〜10の、酸素原子を有していても良い一価炭化水素基であり、tは0以上の整数であり、該ジカルボン酸の重量平均分子量が3,000以下となる数であり、但し、該ジカルボン酸の炭素数は6〜30である)。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物からなる吸水防止剤。
【請求項6】
請求項に記載の吸水防止剤を多孔質材料の表面に塗布して吸水防止性を付与する方法。
【請求項7】
多孔質材料が無機質である請求項記載の方法。
【請求項8】
請求項に記載の吸水防止剤で表面処理された多孔質材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オルガノアルコキシシランを含有するゲル状組成物に関する。また、本発明は、該ゲル状組成物から得られる吸水防止剤に関する。
【背景技術】
【0002】
建築用材、土木構造材として用いられる無機質の多孔質材料は、屋外の構造物に使用されると、降雨にさらされ吸水することによる劣化、低温化での凍害や海岸付近での塩害などによるひび割れ、カビ・藻類の付着などによる外観の低下が生じる。そこで、構造物の寿命を延ばすための対策が求められている。
【0003】
無機質の多孔質材料としては、コンクリート、軽量コンクリート、軽量気泡コンクリート(ALC)、モルタル、種々のセメント板、石膏ボード、ケイ酸カルシウム板、レンガ、瓦、タイル、及び石などがある。これら多孔質材料の劣化を抑制するために、吸水防止剤を基材表面に塗布及び含浸させて基材の表層を疎水化し、水分や塩分が基材表面に浸透するのを抑制することがおこなわれている。該吸水防止剤としてシリコーン系の組成物が知られている。
【0004】
従来、シリコーン系の吸水防止剤としては、アルキルアルコキシシラン化合物を有機溶剤に希釈した溶剤型吸水防止剤があった。しかし、該吸水防止剤は、アルキルアルコキシシランの濃度が低く、また粘度が低いため、一回の塗布で十分な量のアルキルアルコキシシランを基材表面に含浸させることができず、また、基材表面に十分な厚みの疎水層を形成することができなかった。また、溶剤型吸水防止剤は塗布時に有機溶剤からVOC(揮発性有機物)を発生し、作業環境の低下や環境問題を生じていた。従って、近年は非溶剤系の吸水防止剤が望まれている。
【0005】
例えば、特許文献1〜5には、アルキルアルコキシシラン、界面活性剤(乳化剤)、水からなる水性エマルション組成物を吸水防止剤として使用することが記載されている。しかし、該水性エマルション組成物は、界面活性剤が塗布後の基材表面に残留するため、基材の表面を十分に疎水化できない。そのため、降雨時に基材の表面が部分的に濡れ色となって外観が低下するという問題や、十分な撥水性が得られないという問題がある。
【0006】
また、水性エマルションを基材表面に厚く塗布する場合や垂直面に塗布する場合、水性エマルションが流れ出てしまうという問題がある。そこで特許文献6には、アルキルアルコキシシラン、乳化剤、及び水からなる水性クリーム(ペースト状の含水組成物)を吸水防止剤として使用することが記載されている。しかし、該吸水防止剤はクリーム状であるため、基材表面に厚く塗布することは可能であるが、塗布後まもなくエマルションが破壊され低粘度であるアルキルアルコキシシランが分離してしまう。このため、傾斜面、垂直面、または下向き面に塗布した場合には、液だれが生じて有効成分(アルキルアルコキシシラン)が流失し、基材の表面に十分に含浸させることができない。
【0007】
さらに、特許文献7には、アルキルアルコキシシランとシクロデキストリンを水中に分散してなる吸水防止剤が記載されている。該吸水防止剤は、塗布後の基材表面に水溶性高分子であるシクロデキストリンが残留するため、基材の外観が低下したり、十分な撥水性が得られない。
【0008】
特許文献8には、アルキルアルコキシシランとシリカからなる吸水防止剤が記載されている。該組成物は、塗布後の表面に白色のシリカが残留し外観を損ねるため、ブラシなどでそれを除去する必要があり、広い面積に塗布した場合、その除去作業に要する負担は大きなものであった。
【0009】
特許文献9には、アルキルアルコキシシランと揺変剤からなる吸水防止剤が記載されている。通常、市販されている揺変剤はキシレン、ミネラルスピリット(ミネラルターペン)、ベンジルアルコール、エタノール、イソプロパノールなどの有機溶剤に溶解されているため、これを用いた吸水防止剤は有機溶剤を含有することになる。有機溶剤を含有しない揺変剤そのものは粉体であるためアルキルアルコキシシランに分散させることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭62−197369号公報
【特許文献2】特開平4−111979号公報
【特許文献3】特開平6−313167号公報
【特許文献4】特開平9−208938号公報
【特許文献5】特開2004−315631号公報
【特許文献6】特開平10−81824号公報
【特許文献7】特開2009−155641号公報
【特許文献8】特開2009−35704号公報
【特許文献9】特開2012−241100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記事情に鑑み、多孔質材料表面に優れた吸水防止性を与えることができる吸水防止剤を提供することを目的とする。特には、オルガノアルコキシシランを含有する吸水防止剤であって、塗布時に液だれを生じず、多孔質材料表面から有効成分(オルガノアルコキシシラン)を深く浸透させることができ、また外観を損なうことなく吸水防止性を付与することができるゲル状吸水防止剤であって、且つ、ゲルがちぎれやすく、塗布時の作業性がよいゲル状吸水防止剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、ジカルボン酸アルミニウムと炭素数6〜24の脂肪酸の併用が、オルガノアルコキシシランを良好にゲル化できることを見出した。しかし、これにより得られたゲルはちぎれにくく、容器からすくい取るときに長く伸びてしまう。そこで本発明者らはさらに鋭意検討した結果、ジカルボン酸アルミニウム、脂肪酸、及びオルガノアルコキシシランを含む組成物に、炭素数6〜30のジカルボン酸を添加することにより、ゲルが壊れやすくちぎれ易い性状となり、コテなどを用いて多孔質材料に塗布する際に、容器からゲルをすくい取りやすくなり、均一に塗布するための作業性が改善されることを見出した。
【0013】
また、ジカルボン酸アルミニウム、脂肪酸、ジカルボン酸、及びオルガノアルコキシシランを含むゲル状組成物は、基材に塗布した後に基材表面でオルガノアルコキシシランがゲル状組成物から遊離することがなく、またゲル状組成物の粘度が低くなることもない。そのため、該ゲル状組成物を多孔質材料表面に塗布すると、ゲル状態での粘度を保ったままオルガノアルコキシシランが徐々に多孔質材料の細孔に吸収される。さらに、傾斜面や垂直面に塗布する場合において、ゲル状組成物が液だれせずオルガノアルコキシシランが流出しないため、多孔質材料の表面から深くまでオルガノアルコキシシランを含浸することができる事も見出した。
【0014】
即ち、本発明は、
(A)下記式(1)で示されるオルガノアルコキシシランおよび/または該オルガノアルコキシシランの部分加水分解縮合物 100質量部
Si(OR4−a (1)
(式中、Rは、互いに独立に、炭素数1〜20の1価炭化水素基であり、Rは、互いに独立に、炭素数1〜8の1価炭化水素基であり、aは1、2または3である)
(B)下記式(2)で示されるジカルボン酸アルミニウム 0.3〜20質量部
(RCOO)Al(OH) (2)
(式中、Rは、互いに独立に、炭素数1〜25の1価炭化水素基である)
(C)炭素数6〜24の脂肪酸 0.3〜20質量部、及び
(D)炭素数6〜30のジカルボン酸 0.01〜10質量部
を含有する組成物、及び該組成物からなる吸水防止剤を提供する。さらに本発明は、該吸水防止剤を多孔質材料表面に塗布して吸水防止性を付与する方法、並びに該吸水防止剤で表面処理された多孔質材料を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の組成物を多孔質材料の表面に塗布すると、ゲル状態での粘度を保ったまま有効成分(オルガノアルコキシシラン)が基材表面から深く浸透することができ、外観を損ねることなく多孔質材料表面に吸水防止性(撥水性)を付与することができる。また、本発明の組成物は均一に塗布するための作業性が良好である。従って、本発明の組成物は吸水防止剤として良好に使用することができる。さらに、本発明の組成物は水および有機溶剤を含有しない無溶剤型の形態とすることができる。無溶剤型の組成物は塗布時に有機溶剤によるVOC(揮発性有機物)が生じない。そのため、本発明の組成物は、特に建築用または土木用の無機質多孔質材料のための吸水防止剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施例10で得られたゲルにかかる負荷の変化を示すチャートである。
図2図2は、比較例3で得られたゲルにかかる負荷の変化を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0018】
(A)成分は、下記式(1)で示されるオルガノアルコキシシランおよび/またはその部分加水分解縮合物である。
Si(OR4−a (1)
【0019】
は互いに独立に、炭素数1〜20、好ましくは3〜20、さらに好ましくは6〜10の一価炭化水素基である。該一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基(2,4,4−トリメチルペンチル基を含む炭素数8のアルキル基)、デシル基、ドデシル基、ノルボルニル基、などのアルキル基、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基、などのアルケニル基があげられる。上記Rで示される基は、直鎖状、分岐状、または環状のいずれでもよい。さらに、フェニル基などのアリール基、スチリル基などのアラルキル基、3−アミノプロピル基、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル基などのアミノ基含有アルキル基、3−グリシドキシプロピル基などのエポキシ基含有アルキル基、トリフロロメチル基、3,3,3−トリフロロプロピル基などのフッ素含有基、などが例示できる。中でも、炭素数3以上のアルキル基が好ましく、炭素数6〜10のアルキル基がさらに好ましい。
【0020】
は互いに独立に、炭素数1〜8、好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜4の一価炭化水素基である。該一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、などのアルキル基が例示できる。中でも、メチル基、エチル基が特に好ましい。
【0021】
aは1、2、または3であり、特には1であることが好ましい。
【0022】
上記オルガノアルコキシシランとしては、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、イソオクチルトリエトキシシラン、2−エチルヘキシルトリメトキシシラン、2−エチルヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、トリフロロメチルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリメトキシシラン、などが例示できる。これらのうち、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、イソオクチルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、及びプロピルトリエトキシシランが好適である。上記オルガノアルコキシシランは、1種単独でも2種以上の混合物でもよい。
【0023】
本発明の(A)成分として、上記オルガノアルコキシシランが有するアルコキシ基の一部を加水分解させ、分子間で縮合反応させて得られたオリゴマーやポリマー(以下、部分加水分解縮合物という)を使用してもよい。また、上記オルガノアルコキシシランと、該オルガノアルコキシシランの部分加水分解縮合物とを混合して使用してもよい。オルガノアルコキシシランの部分加水分解縮合物は、酸触媒またはアルカリ触媒の存在下でオルガノアルコキシシランを加水分解及び縮合反応させて合成することができる。
【0024】
(B)成分は下記式(2)で示されるジカルボン酸アルミニウムである。
(RCOO)Al(OH) (2)
【0025】
上記式(2)中、Rは互いに独立に、炭素数1〜25、好ましくは3〜19の一価炭化水素基である。該一価炭化水素基は特にはアルキル基またはアルケニル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、などのアルキル基、これらの基の一部に不飽和結合を有するアルケニル基などを例示できる。該Rで示される基は、直鎖状、分岐状、または環状のいずれでもよい。中でも、1−エチルペンチル基が好ましい。
【0026】
上記式(2)で示されるジカルボン酸アルミニウムとしては、例えば、ジオクチル酸アルミニウム、ジステアリン酸アルミニウム、ジラウリン酸アルミニウム、及びジカプリン酸アルミニウムなどのアルミニウム石けん類が挙げられる。本発明においてジカルボン酸アルミニウムは1種単独であっても2種以上の混合物でもよい。
【0027】
特には、ジカルボン酸アルミニウムは、上記式(2)においてRが1−エチルペンチル基であるジ(2−エチルヘキサン酸)アルミニウム(すなわち、ジオクチル酸アルミニウム)であるのが好ましい。該ジ(2−エチルヘキサン酸)アルミニウムは、式(RCOO)Al(OH)で示されるジソープを主成分とし、式(RCOO)Alで示されるトリソープ、および式(RCOO)Al(OH)で示されるモノソープを含んでいてもよい(上記式中、RCOOは2−エチルヘキサン酸残基を示す)。その場合、上記トリソープ及び/又はモノソープの含有量は、(B)成分の合計100質量%中に合計20質量%までとするのがよい。
【0028】
(B)成分の量は(A)成分100質量部に対して0.3〜20質量部、好ましくは0.5〜10質量部、特に好ましくは1〜8質量部とするのがよい。(B)成分の量が上記下限値未満では得られる組成物がゲル状にならなかったり、ゲル状になった後に経時で液相が分離したりすることがある。また、(B)成分の量が上記上限値超では、得られるゲルが硬くなりすぎて取扱いが困難になるため好ましくない。
【0029】
(C)成分は炭素数6〜24の脂肪酸であり、好ましくは炭素数6〜22の脂肪酸である。炭素数が6未満では得られる組成物がゲル状にならなかったり、液状のままで粘度が不足したり、液相が分離して良好なゲル状にならない。また、炭素数が24を超えると脂肪酸の融点が高くなり、配合時に高温で溶解させる必要があるなどの不都合がある。炭素鎖の形状は、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれでもよい。また、該脂肪酸は、飽和カルボン酸であっても不飽和カルボン酸であってもよい。
【0030】
該脂肪酸としては、例えば、カプロン酸(炭素数6)、カプリル酸(炭素数8)、2−エチルヘキサン酸(炭素数8)、カプリン酸(炭素数10)、ラウリン酸(炭素数12)、ミリスチン酸(炭素数14)、パルミチン酸(炭素数16)、イソパルミチン酸(炭素数16)、ステアリン酸(炭素数18)、イソステアリン酸(炭素数18)、オレイン酸(炭素数18)、リノール酸(炭素数18)、α−リノレン酸(炭素数18)、アラキジン酸(炭素数20)、ベヘン酸(炭素数22)、及びリグノセリン酸(炭素数24)を挙げることができる。上記脂肪酸は1種単独でも2種以上を混合して使用してもよい。
【0031】
上記のうち、特には直鎖のものが好適であり、カプロン酸(炭素数6)、カプリル酸(炭素数8)、カプリン酸(炭素数10)、ラウリン酸(炭素数12)、ミリスチン酸(炭素数14)、パルミチン酸(炭素数16)、ステアリン酸(炭素数18)、オレイン酸(炭素数18)、リノール酸(炭素数18)、α−リノレン酸(炭素数18)、アラキジン酸(炭素数20)、及びベヘン酸(炭素数22)がより好ましい。
【0032】
(C)成分の量は、(A)成分100質量部に対して0.3〜20質量部、好ましくは0.5〜10質量部、更に好ましくは0.5〜8質量部とするのがよい。(C)成分の量が上記下限値未満では、得られる組成物がゲル状にならない場合があり、また、ゲル状にするために60℃以上の高温や長時間を要する場合があるため好ましくない。また、(C)成分の量が上記上限値を超えると、得られるゲルが柔らかくなる場合や、得られる組成物が液状のままでゲル状にならない場合があるため好ましくない。
【0033】
(D)成分は炭素数6〜30のジカルボン酸であり、好ましくは炭素数10〜24のジカルボン酸である。炭素数が上記下限値未満では、得られる組成物が良好なゲル状にならない場合がある。即ち、組成物が液状のままで粘度が不足したり、液相が分離して良好なゲル状にならなかったり、ゲル状物中にジカルボン酸が溶解せずに残留する場合がある。また、炭素数が上記上限値を超えるとジカルボン酸の融点が高くなり、配合時に高温で溶解させる必要があるという不都合がある。炭素鎖の形状は、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれでもよい。また、該ジカルボン酸は、脂肪族ジカルボン酸であっても、芳香族ジカルボン酸であってもよい。好ましくは脂肪族ジカルボン酸である。また、脂肪族ジカルボン酸は、飽和脂肪族ジカルボン酸であっても、不飽和結合を有する脂肪族ジカルボン酸であってもよい。上記ジカルボン酸は1種単独でも2種以上を混合して使用してもよい。
【0034】
上記脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸(炭素数6)、ピメリン酸(炭素数7)、スベリン酸(炭素数8)、アゼライン酸(炭素数9)、セバシン酸(炭素数10)、ドデカン二酸(炭素数12)、テトラデカン二酸(炭素数14)、ヘキサデカン二酸(炭素数16)、エイコサン二酸(炭素数20)、8,13−ジメチルエイコサン二酸(炭素数22)、及び8,13−ジメチル−8,12−エイコサジエン二酸(炭素数22)を挙げることができる。芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸(炭素数8)、イソフタル酸(炭素数8)、及びテレフタル酸(炭素数8)を挙げることができる。
【0035】
また、本発明のジカルボン酸は、下記式で示されるような、ポリオルガノシロキサン鎖を有するジカルボン酸を包含する。
HOOC−X−(RSiO)−RSi−X−COOH
上記式中、tは0以上の整数である。該tの値は、上記ポリオルガノシロキサン含有ジカルボン酸の重量平均分子量が3,000以下となるような数であればよい。但し、該ポリオルガノシロキサン鎖を有するジカルボン酸の炭素数は6〜30である。重量平均分子量が上記上限値を超えると、吸水防止剤の基材への含浸性が低下する場合や、基材表面が濡れ色に着色してしまう場合がある。
【0036】
上記式中、Xは炭素数1〜10の2価のアルキレン基であり、例えばメチレン基、エチレン基、及びプロピレン基などが挙げられる。
【0037】
上記式中、Rは互いに独立に、水素原子、または置換又は非置換の、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜8の、酸素原子を有していても良い一価炭化水素基である。該一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、イソプロペニル基等のアルケニル基;フェニル基、キシリル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、及びこれらの炭化水素基の水素原子の一部又は全部が塩素、フッ素、臭素等のハロゲン原子で置換されたクロロメチル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換一価炭化水素基等を挙げることができる。また、アルキル基の水素原子の一部が、ポリエーテル基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基またはこれらの基を含有する有機基で置換された基でもよい。
【0038】
上記ジカルボン酸として、市販品を使用することができる。該市販されているジカルボン酸としては、岡村製油株式会社製のものがあげられる。例えば、直鎖二塩基酸であるSL−12(炭素数12)及びSL−20(炭素数20)、分岐二塩基酸であるIPU−22(炭素数22)、IPS−22(炭素数22)、及びSB−20(炭素数12〜22の混合物)、直鎖二塩基酸と分岐二塩基酸の混合物であるULB−20(炭素数20)などが挙げられる。
【0039】
(D)成分の量は、(A)成分100質量部に対して0.01〜10質量部、好ましくは0.02〜5質量部、更に好ましくは0.03〜3質量部とするのがよい。(D)成分の量が上記下限値未満では、得られるゲル状組成物が硬くちぎれにくくなり、ヘラやコテですくい上げにくくなる場合がある。また、基材表面に塗布する際に薄く均一に伸ばすことが困難になり易く、塗布ムラの原因になるおそれがある。また、(D)成分の量が上記上限値を超えると、組成物をゲル状にするためには60℃以上の高温や長時間を要する場合があり、また、得られるゲル状組成物が経時で液状に戻る場合があるため好ましくない。
【0040】
本発明のゲル状組成物は上記(A)〜(D)成分に加え、さらに(E)シロキサン単位の合計数に対するジメチルシロキサン単位の個数が20%以上、好ましくは40%以上であるポリオルガノシロキサンを含有することができる。該(E)成分は、ゲル状組成物の撥水性を向上させる働きをする。
【0041】
該ポリオルガノシロキサンとしては、下記式(3)で表される化合物が挙げられる。
(RSiO0.5(RSiO)(RSiO1.5(SiO (3)
上記式中、p、r、及びsは0以上の整数であり、qは1以上の整数であり、p+q+r+sの値は、上記ポリオルガノシロキサンの重量平均分子量が5,000以下、好ましくは3,000以下となるような数であればよい。重量平均分子量が上記上限値を超えると、吸水防止剤の基材への含浸性が低下したり、基材表面が濡れ色に着色してしまう場合がある。なお、本発明において重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析によるポリスチレン換算の重量平均分子量である。上記ポリオルガノシロキサンは1種単独でも2種以上を併用してもよい。
【0042】
上記式(3)中、Rは互いに独立に、水素原子、または置換又は非置換の、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜8の、酸素原子を有していても良い一価炭化水素基である。該一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、イソプロペニル基等のアルケニル基;フェニル基、キシリル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、及びこれらの炭化水素基の水素原子の一部又は全部が塩素、フッ素、臭素等のハロゲン原子で置換されたクロロメチル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換一価炭化水素基等を挙げることができる。また、アルキル基の水素原子の一部が、ポリエーテル基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基またはこれらの基を含有する有機基で置換された基でもよい。
【0043】
また、上記式(3)で示される化合物中、Rで示される基の一部が、炭素数1〜6のアルコキシ基、水酸基、または水素原子であってもよい。特には、上記ポリオルガノシロキサンは、ケイ素原子に結合したアルコキシ基、又は水酸基を含有していることが好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、及びイソブトキシ基などが挙げられる。ただし、上記式(3)において、Rで示される基の合計個数のうち40%以上がメチル基であることが好ましい。但し、本発明において上記式(3)で示されるポリオルガノシロキサンは、RSiO(4−n)/2(nは0〜3の整数)で示されるシロキサン単位の合計数に対しジメチルシロキサン単位((CHSiO)の個数が20%以上、好ましくは40%以上である。
【0044】
上記の通り、本発明において上記式(3)で示されるポリオルガノシロキサンは、その分子中にケイ素原子に結合した水酸基またはアルコキシ基を有するシロキサン単位を有していてもよい。該シロキサン単位としては、例えば、(RO)RSiO0.5単位,(RO)RSiO単位、(RO)SiO1.5単位があげられる。Rとしては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、水素原子などがあげられる。ポリオルガノシロキサンが水酸基またはアルコキシ基を有する場合、その含有量は、ポリオルガノシロキサンの質量に対して好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下であるのがよい。水酸基またはアルコキシ基の含有量の下限は特に限定されない。ポリオルガノシロキサン中の水酸基またはアルコキシ基の含有量が上記上限値を超えると、ゲルの生成率が低下するため、好ましくない。
【0045】
(E)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.1〜50質量部の範囲であり、好ましくは0.5〜30質量部である。(E)成分の量が上記上限値を超えると、得られる吸水防止剤の基材への含浸性が低下したり、基材表面が濡れ色に着色してしまう場合がある。
【0046】
本発明の組成物は、さらにその他の添加剤を含有することができる。該添加剤としては、吸水防止剤に使用される公知の添加剤を使用することができ、例えば、防カビ剤、防藻剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、顔料、染料、増粘剤、溶剤、ワックス、及び上述したアルミニウム石けん以外の金属石けんなどが挙げられる。さらに、シリカ、アルミナ、チタニア、マイカ、タルク、などの無機充填剤、モンモリロナイト、ベントナイトなどの無機増粘剤などを配合することもできる。該添加剤の配合量は、従来の方法に従い、本発明の効果を損ねない範囲で適宜調整すればよい。
【0047】
また、本発明の組成物には、ゲルの強度を調整する目的で、炭化水素化合物、パラフィン類などを添加してもよい。但し、沸点または引火点がオルガノアルコキシシランより高い化合物を添加することは好ましいが、沸点または引火点がオルガノアルコキシシランより低い溶剤類を添加することは好ましくない。
【0048】
本発明の組成物は上記各成分を混合することにより調製することができ、ゲル状態を有する。混合方法及び使用する装置は従来公知の方法に従えばよく、特に限定されるものでない。例えば、パドル型やプロペラ型の撹拌翼を備えたミキサー、アンカーミキサー、ディスパーミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダー、などの回分式混合装置で用いられるミキサーや、スタチックミキサー、ラインミキサー、コロイドミルなどの連続式混合装置で用いられるミキサーを使用することができる。尚、「ゲル」とは一般に高粘度で流動性を失った分散系をいう。本発明の組成物から得られるゲルは特にはゼリー状である。
【0049】
混合温度は特に限定されないが、−10℃以上、使用するオルガノアルコキシシランの沸点以下であるのがよい。通常は、0〜80℃、10〜70℃とすればよい。必要に応じて30〜70℃に加熱してゲル化を促進させることができる。
【0050】
本発明の組成物は吸水防止剤として使用できる。該吸水防止剤を多孔質材料表面に塗布することにより、基材表面に吸水防止性を付与することができる。該吸水防止剤を塗布する対象となる基材としては、コンクリート、軽量コンクリート、軽量気泡コンクリート(ALC)、モルタル、種々のセメント板、石膏ボード、ケイ酸カルシウム板、レンガ、瓦、タイル、石、などの無機質の多孔質材料があげられる。また、珪藻土、粘土、漆喰などを主材料とする壁や、紙、木、皮革などの有機質の多孔質材料にも使用することができる。
【0051】
本発明の吸水防止剤を基材に塗布する量は特に制限されないが、例えば5〜1000g/mとすることができる。5g/m以下では吸水防止性が十分に発揮できない。1000g/m以上としても含浸深さが一定以上深くならず、乾燥に必要以上の時間を要してしまう。
【0052】
本発明の吸水防止剤を基材に塗布する方法は特に制限されず従来公知の方法に従えばよい。例えば、ハケ、ローラー、ヘラ、コテ、スプレー、吹付け、などが使用できる。通常、一度で所定量を塗布できるが、必要に応じて重ね塗りしてもよい。塗布後の乾燥は常温で放置すればよいが、40〜80℃程度に加温してもよい。
【0053】
本発明者らは、本発明において上記組成物がゲル化する機構を次のように考えている。例えば、種々の低極性の有機溶剤に、ジ(2−エチルヘキサン酸)アルミニウムを添加すると、ジ(2−エチルヘキサン酸)アルミニウムが有機溶媒中で高分子量の直鎖状の会合体を形成し、会合体どうしが絡み合い、その間隙に有機溶剤を取り込んでゲル化することができる。同様に、本発明の組成物においては、ジカルボン酸アルミニウムがオルガノアルコキシシラン中で会合体を形成し、その間隙にオルガノアルコキシシランが取り込まれていると考えられる。また、脂肪酸は、ジカルボン酸アルミニウムから形成される長鎖の会合体がオルガノアルコキシシランへ溶解することを助長する働きをしていると考えられる。さらにジカルボン酸は、長鎖の会合体を部分的に架橋させる働きをしていると考えられる。このため,ゲルを引っ張ったときの伸びが抑えられ、壊れやすくちぎれやすくなる。そのため、容器からすくい取りやすく、塗布するときには潰して薄く均一に塗布しやすくなる。一方、ジカルボン酸を使用しないゲルは壊れにくく、引っ張ると長く伸びてしまい、取り扱いにくい。また、本発明は、ジカルボン酸アルミニウムと脂肪酸とを併せてオルガノアルコキシシランに配合することにより、組成物を良好にゲル化することができる。本発明の組成物において、ジカルボン酸アルミニウム及び脂肪酸のいずれか一方を含まないと、オルガノアルコキシシランをゲル化することができない。
【0054】
本発明の組成物を多孔質材料に塗布すると、ゲル状態を保ったままオルガノアルコキシシランが細孔に吸収され基材表面から深く含浸することができる。その為、塗布時に液だれを起こすことなく、優れた吸水防止性(撥水性)を多孔質表面に付与することができる。ここで、ジカルボン酸アルミニウムは極性が低く水に対する親和性がないため、水に全く溶解せず、さらに分散もしない。また、脂肪酸も同様に極性が低いため、水に溶解しないか、ほとんど溶解しない。その為、オルガノアルコキシシランが基材中に含浸したのちも、水に親和性のある成分が基材表面に全く残留しないため、極めて良好な吸水防止性(撥水性)が得られる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0056】
[実施例1]
オクチルトリエトキシシラン90質量部、下記式(5)で示されるポリジメチルシロキサン10質量部
(CH(HO)SiO[(CHSiO]10Si(CH(OH)
(5) 、
オクトープアルミT((CH(CHCH(C)COO)Al(OH)で示されるジ(2−エチルヘキサン酸)アルミニウム、ホープ製薬株式会社製)2.5質量部、オレイン酸2.5質量部、及びアジピン酸0.1質量部を、プラネタリーミキサーを用いて50℃で約4時間混合したところ、無色透明のゲル状組成物が得られた。該ゲル状組成物50gを容量100mLの容器に入れて容器を逆さにしたところ、ゲル状組成物は流出しなかった。
【0057】
[実施例2]
オクチルトリエトキシシラン90質量部、上記式(5)で示されるポリジメチルシロキサン10質量部、オクトープアルミT 2.5質量部、オレイン酸2.5質量部、及びセバシン酸0.1質量部をプラネタリーミキサーを用いて50℃で約4時間混合したところ、無色透明のゲル状組成物が得られた。該ゲル状組成物50gを容量100mLの容器に入れて容器を逆さにしたところ、ゲル状組成物は流出しなかった。
【0058】
[実施例3]
オクチルトリエトキシシラン90質量部、上記式(5)で示されるポリジメチルシロキサン10質量部、オクトープアルミT 2.5質量部、オレイン酸2.5質量部、及びジカルボン酸SB20(岡村製油株式会社製分岐二塩基酸、炭素数12〜22)0.1質量部を、プラネタリーミキサーを用いて50℃で約4時間混合したところ、無色透明のゲル状組成物が得られた。該ゲル状組成物50gを容量100mLの容器に入れて容器を逆さにしたところ、ゲル状組成物は流出しなかった。
【0059】
[実施例4]
オクチルトリエトキシシラン90質量部、上記式(5)で示されるポリジメチルシロキサン10質量部、オクトープアルミT 2.5質量部、オレイン酸2.5質量部、及びジカルボン酸IPS22(岡村製油株式会社製分岐二塩基酸、炭素数22)0.1質量部を、プラネタリーミキサーを用いて50℃で約4時間混合したところ、無色透明のゲル状組成物が得られた。該ゲル状組成物50gを容量100mLの容器に入れて容器を逆さにしたところ、ゲル状組成物は流出しなかった。
【0060】
[実施例5]
オクチルトリエトキシシラン90質量部、上記式(5)で示されるポリジメチルシロキサン10質量部、オクトープアルミT 2.5質量部、オレイン酸2.5質量部、及びジカルボン酸IPU22(岡村製油株式会社製分岐二塩基酸、炭素数22)0.1質量部を、プラネタリーミキサーを用いて50℃で約4時間混合したところ、無色透明のゲル状組成物が得られた。該ゲル状組成物50gを容量100mLの容器に入れて容器を逆さにしたところ、ゲル状組成物は流出しなかった。
【0061】
[実施例6]
オクチルトリエトキシシラン90質量部、上記式(5)で示されるポリジメチルシロキサン10質量部、オクトープアルミT 2.5質量部、オレイン酸1.0質量部、及びジカルボン酸IPU22を0.05質量部を、プラネタリーミキサーを用いて50℃で約4時間混合したところ、無色透明のゲル状組成物が得られた。該ゲル状組成物50gを容量100mLの容器に入れて容器を逆さにしたところ、ゲル状組成物は流出しなかった。
【0062】
[実施例7]
オクチルトリエトキシシラン97質量部、上記式(5)で示されるポリジメチルシロキサン3質量部、オクトープアルミT 2.5質量部、オレイン酸2.5質量部、及びジカルボン酸IPU22を0.1質量部を、プラネタリーミキサーを用いて50℃で約4時間混合したところ、無色透明のゲル状組成物が得られた。該ゲル状組成物50gを容量100mLの容器に入れて容器を逆さにしたところ、ゲル状組成物は流出しなかった。
【0063】
[実施例8]
オクチルトリエトキシシラン97質量部、上記式(5)で示されるポリジメチルシロキサン3質量部、オクトープアルミT 2.5質量部、オレイン酸1.0質量部、及びジカルボン酸IPU22を0.05質量部を、プラネタリーミキサーを用いて50℃で約4時間混合したところ、無色透明のゲル状組成物が得られた。該ゲル状組成物50gを容量100mLの容器に入れて容器を逆さにしたところ、ゲル状組成物は流出しなかった。
【0064】
[実施例9]
オクチルトリエトキシシラン100質量部、オクトープアルミT 2.5質量部、オレイン酸2.5質量部、及びジカルボン酸IPU22を0.1質量部を、プラネタリーミキサーを用いて50℃で約4時間混合したところ、無色透明のゲル状組成物が得られた。該ゲル状組成物50gを容量100mLの容器に入れて容器を逆さにしたところ、ゲル状組成物は流出しなかった。
【0065】
[実施例10]
オクチルトリエトキシシラン100質量部、オクトープアルミT 2.5質量部、オレイン酸1.0質量部、及びジカルボン酸IPU22を0.05質量部を、プラネタリーミキサーを用いて50℃で約4時間混合したところ、無色透明のゲル状組成物が得られた。該ゲル状組成物50gを容量100mLの容器に入れて容器を逆さにしたところ、ゲル状組成物は流出しなかった。
【0066】
[比較例1]
オクチルトリエトキシシラン90質量部、上記式(5)で示されるポリジメチルシロキサン10質量部、オクトープアルミT 2.5質量部、オレイン酸2.5質量部を、プラネタリーミキサーを用いて50℃で約4時間混合したところ、無色透明のゲル状組成物が得られた。該ゲル状組成物50gを容量100mLの容器に入れて容器を逆さにしたところ、ゲル状組成物は流出しなかった。
【0067】
[比較例2]
オクチルトリエトキシシラン97質量部、上記式(5)で示されるポリジメチルシロキサン3質量部、オクトープアルミT 2.5質量部、オレイン酸2.5質量部を、プラネタリーミキサーを用いて50℃で約4時間混合したところ、無色透明のゲル状組成物が得られた。該ゲル状組成物50gを容量100mLの容器に入れて容器を逆さにしたところ、ゲル状組成物は流出しなかった。
【0068】
[比較例3]
オクチルトリエトキシシラン100質量部、オクトープアルミT 2.5質量部、オレイン酸2.5質量部を、プラネタリーミキサーを用いて50℃で約4時間混合したところ、無色透明のゲル状組成物が得られた。該ゲル状組成物50gを容量100mLの容器に入れて容器を逆さにしたところ、ゲル状組成物は流出しなかった。
【0069】
[比較例4]
オクチルトリエトキシシラン100質量部、オクトープアルミT 2.5質量部、オレイン酸2.5質量部、コハク酸0.1質量部を、プラネタリーミキサーを用いて50℃で約4時間混合したが、液状のままでゲルが生成しなかった。
【0070】
実施例1〜10及び比較例1〜3で得た各組成物の液だれ、外観、撥水性、及び含浸深さ、並びに、ゲルのちぎれ性、塗布性、及び壊れやすさを、以下に記載する方法により評価した。結果を表に示す。
【0071】
(1)液だれ
試験体としてJISR5201に準じて作成したモルタルテストピース(縦70mm×横70mm×高さ25mm)を使用した。該モルタルテストピースの縦70mm×横70mmを有する面上に、各組成物を200g/mとなる量で搭載し、ヘラを用いてなるべく均一になるように塗布した。塗布後すぐに、塗布面が垂直となるようにテストピースを静置し、塗布した組成物が流延するか否かを目視で観察した。
【0072】
(2)外観
上記(1)と同様にしてモルタルテストピースに各組成物を塗布した。該テストピースを25℃、50%RHで7日間放置し、養生した。その後、組成物を塗布した面に残る濡れ色の割合を目視で観察し、以下の指標により評価した。
5:塗布面の全面積のうち、濡れ色が残る部分の面積が5%以下(即ち、組成物を塗布していないテストピースと同程度の外観を有する)。
4:塗布面の全面積のうち、濡れ色が残る部分の面積が5%超〜25%未満。
3:塗布面の全面積のうち、濡れ色が残る部分の面積が25%以上〜75%未満。
2:塗布面の全面積のうち、濡れ色が残る部分の面積が75%以上〜95%未満。
1:塗布面の全面積のうち、濡れ色が残る部分の面積が95%以上。
【0073】
(3)撥水性
上記(1)と同様にしてモルタルテストピースに各組成物を塗布した。該テストピースを25℃、50%RHで7日間放置し、養生した。組成物を塗布した面にシャワーを用いて5分間流水をかけたのち、組成物を塗布した面の水のはじき度合及び濡れ色の割合を目視で観察し、以下の指標により評価した。
はじき
5:塗布面の全面積のうち、水をはじいた部分の面積が95%以上。
4:塗布面の全面積のうち、水をはじいた部分の面積が75%以上〜95%未満。
3:塗布面の全面積のうち、水をはじいた部分の面積が25%以上〜75%未満。
2:塗布面の全面積のうち、水をはじいた部分の面積が5%以上〜25%未満。
1:塗布面の全面積のうち、水をはじいた部分の面積が5%未満。
濡れ色
5:塗布面の全面積のうち、濡れ色が残る部分の面積が5%以下。
4:塗布面の全面積のうち、濡れ色が残る部分の面積が5%超〜25%未満。
3:塗布面の全面積のうち、濡れ色が残る部分の面積が25%以上〜75%未満。
2:塗布面の全面積のうち、濡れ色が残る部分の面積が75%以上〜95%未満。
1:塗布面の全面積のうち、濡れ色が残る部分の面積が95%以上。
【0074】
(4)含浸深さ
上記(1)と同様にしてモルタルテストピースに各組成物を塗布した。該テストピースを25℃、50%RHで7日間放置し、養生した。組成物を塗布した面を2分割するようにテストピースを垂直に割裂し、割裂面に水を噴霧した。水を吸収せず濡れ色に着色しない部分の深さを測定し、含浸深さとした。
【0075】
(5)ゲル状組成物のちぎれ性及び塗布性
容器からヘラを用いてゲル状組成物をすくい上げた時に、ゲル状組成物がちぎれてヘラの先端に載るようにすくい上げられるものを良好とした。一方、ゲル状組成物が伸びてちぎれずヘラの先端に載らないものを不良とした。また、上記(1)と同様にしてモルタルテストピースにヘラを用いて塗布したときに、ゲル状組成物を所定の厚みに均一に塗布できるものを良好とした。ゲル状組成物の一部が凝集して塗布ムラになるものを不良とした。
【0076】
(6)ゲル破断の有無
内径約37mm、深さ約50mmのプラスチック容器にゲル状組成物を30g入れ、常温で1日放置して脱泡し、表面が平滑になるようにした。テクスチャーアナライザー(ブルックフィールド社製CT3−1000)を用い、直径12.7mm、長さ35mmの円柱状プローブを、進入速度5mm/秒×5秒間でゲルの表面から深さ25mmまで押し下げ、5秒間静止し、5mm/秒×5秒間で引き上げた。この操作でゲルの破断が観察されたものを良好とし、ゲルが破断されずに元の状態に復元したものを不良とした。
【0077】
上記(6)の試験にて、実施例10と比較例3のゲルにかかる負荷の変化を測定した。得られたチャートを図1及び図2に示す。図1は実施例10で得たゲルにかかる負荷の変化を示すチャートである。該チャートは約4秒後に負荷曲線が変化している。これはゲルが破断していることを示す。図2は比較例3で得たゲルにかかる負荷の変化を示すチャートである。該チャートは、負荷曲線がプローブの進入にしたがって滑らかに変化している。これはゲルが破断していないことを示す。
【0078】
【表1】
【0079】
表1に示す通り、本発明の組成物から得られたゲルは壊れやすく、ちぎれ性及び塗布性が良好である。従って本発明のゲルは塗布時の作業性に優れる。一方、ジカルボン酸を含まない比較例の組成物から得られたゲルは壊れにくく、ちぎれ性及び塗布性が不十分である。さらに、本発明のゲルは垂直面に塗布した場合でも液だれを生じず、外観を損ねることなく、多孔質材料表面から深く含浸することができ、優れた吸水防止性(撥水性)を多孔質材料表面に付与することができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の組成物から得られるゲルは、垂直面に塗布した場合でも液だれを生じることなく、オルガノアルコキシシランが多孔質材料の表面から深く浸透することができ、また外観を損ねることなく、基材表面に吸水防止性を付与することができる。また、本発明の組成物は均一に塗布するための作業性に優れる。さらに、本発明の組成物は水および有機溶剤を含有しない無溶剤型の形態とすることができる。無溶剤型の組成物は塗布時に有機溶剤によるVOC(揮発性有機物)が発生しない。そのため本発明の組成物は、建築用または土木用の無機質多孔質材料のための吸水防止剤として特に有用である。
図1
図2