(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0022】
図1、
図2(a)及び
図2(b)に示したように、一実施形態に係る有機EL素子10は、支持基板12と、陽極(第1の電極)14と、有機EL本体部16と、陰極(第2の電極)18と、封止部材20と、を備えている。一実施形態において、有機EL素子10は、引出電極22を備えてもよい。以下では断らない限り、引出電極22を備えた構成を説明する。
【0023】
説明の便宜のため、
図1、
図2(a)及び
図2(b)に示したように、支持基板12の厚さ方向をZ軸方向と称し、Z軸方向に直交する方向をX軸方向(第1の方向)及びY軸方向(第2の方向)とも称す。X軸方向及びY軸方向は互いに直交している。X軸方向は、後述する有機EL素子10の製造方法において、支持基板12の搬送方向に対応しており、Y軸方向は、支持基板12の幅方向に対応する。
【0024】
[支持基板]
支持基板12は、可視光(波長400nm〜800nmの光)に対して透光性を有する樹脂から構成されている。支持基板12は、フィルム状の基板であり得る。第1の実施形態において、支持基板12は可撓性を有する。支持基板12の厚さは、例えば、30μm以上500μm以下である。
【0025】
支持基板12は、例えば、プラスチックフィルムである。支持基板12の材料は、例えば、ポリエーテルスルホン(PES);ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、環状ポリオレフィン等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリビニルアルコール樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物;ポリアクリロニトリル樹脂;アセタール樹脂;ポリイミド樹脂;エポキシ樹脂を含む。
【0026】
支持基板12の材料は、上記樹脂の中でも、耐熱性が高く、線膨張率が低く、かつ、製造コストが低いことから、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂が好ましく、ポリエチレンレテフタレート、ポリエチレンナフタレートが特に好ましい。また、これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
支持基板12の主面12a上には、バリア膜が配置されていてもよい。バリア膜は、例えば、ケイ素、酸素及び炭素からなる膜、又は、ケイ素、酸素、炭素及び窒素からなる膜であり得る。具体的には、バリア膜の材料の例は、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素等である。バリア膜の厚さの例は、100nm以上10μm以下である。
【0028】
[陽極]
陽極14は、支持基板12の主面12a上に設けられている。陽極14には、光透過性を示す電極層が用いられる。光透過性を示す電極としては、電気伝導度の高い金属酸化物、金属硫化物及び金属等の薄膜を用いることができ、光透過率の高い薄膜が好適に用いられる。例えば酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、インジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide:略称ITO)、インジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide:略称IZO)、金、白金、銀、及び銅等からなる薄膜が用いられ、これらの中でもITO、IZO、又は酸化スズからなる薄膜が好適に用いられる。陽極14として、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体等の有機物の透明導電膜を用いてもよい。陽極14は、導電体(例えば金属)からなるネットワーク構造を有していてもよい。
【0029】
陽極14の厚さは、光の透過性、電気伝導度等を考慮して決定することができる。陽極14の厚さは、通常、10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0030】
陽極14の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法及び塗布法等を挙げることができる。
【0031】
陽極14は、有機EL本体部16で覆われる陽極本体部(第1領域)141と、有機EL本体部16で覆われていない部分、すなわち、陽極本体部141以外の残部である外部接続部(第2領域)142とを有する。外部接続部142は、陽極本体部141からみてY軸方向に配置されており陽極本体部141に隣接している。外部接続部142の一部は、封止部材20から引き出されており、外部接続部142は、陽極14に外部接続端子を接続するための接続領域として機能する。
【0032】
[引出電極]
引出電極22は、陽極14に対して所定の間隔をあけて配置されている。
図1に示した形態では、Y軸方向において、陽極14の外部接続部142と反対側に配置されている。引出電極22は、陰極18に電気的に接続されており、陰極18に電圧を印加するために陰極18に外部接続端子を電気的に接続するための接続領域として機能する。引出電極22の厚さは、陽極14の厚さと同等である。引出電極22の材料は、陽極14の材料と同様である。
【0033】
[有機EL本体部]
有機EL本体部16は、発光層161を含み、陽極14及び陰極18に印加された電圧に応じて、キャリアの移動及びキャリアの再結合などの有機EL素子10の発光に寄与する機能部である。
図1、
図2(a)及び
図2(b)に示した例では、有機EL本体部16は単層構造を有しており、発光層161から構成されている。
【0034】
発光層161は、陽極14上に設けられている有機層である。発光層161は、通常、主として蛍光及び/又はりん光を発光する有機物、或いは、該有機物とこれを補助するドーパントとから形成される。ドーパントは、例えば発光効率の向上や、発光波長を変化させるために加えられる。発光層161に含まれる有機物は、低分子化合物でも高分子化合物でもよい。発光層161を構成する発光材料としては、例えば公知の色素系材料、金属錯体系材料、高分子系材料、ドーパント材料を挙げることができる。
【0035】
発光層161の厚さは、通常約2nm〜200nmである。発光層161は、例えば、上記発光材料を含む塗布液を用いる塗布法により形成される。発光材料を含む塗布液の溶媒としては、発光材料を溶解するものであれば、限定されない。塗布法の例としてインクジェット印刷法が挙げられるが、他の公知の塗布法が採用されてもよい。
【0036】
有機EL本体部16は、陽極14のうち陽極本体部141を覆うように設けられている。これにより、陽極本体部141と他の電極(例えば、陰極18及び引出電極22)との短絡が防止されている。また、有機EL本体部16が、陽極14のうち陽極本体部141を覆っていることにより、有機EL本体部16の一部は、支持基板12の主面12a上にも配置されている。
【0037】
前述したように、
図1、
図2(a)及び
図2(b)では、有機EL本体部16は発光層161である形態を例示しているが、有機EL本体部16は、発光層161と、他の機能層を含む積層体でもよい。この場合の層構成の例について説明する。
【0038】
陽極14と発光層161との間に設けられる機能層の例としては、正孔注入層及び正孔輸送層が挙げられる。陰極18と発光層161との間に設けられる層の例としては、電子注入層及び電子輸送層が挙げられる。正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層及び電子注入層のそれぞれの材料は公知の材料を用いることができる。正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層及び電子注入層の厚さは、有機EL素子10の素子性能などに応じて適宜設定され得る。
【0039】
正孔注入層は、陽極14から発光層161への正孔注入効率を改善する機能を有する層である。正孔輸送層は、陽極14、正孔注入層または陽極14により近い正孔輸送層から発光層161への正孔注入を改善する機能を有する層である。正孔注入層および/または正孔輸送層が電子の輸送を堰き止める機能を有する場合には、これらの層が電子ブロック層と称される場合もある。
【0040】
電子注入層は、陰極18から発光層161への電子注入効率を改善する機能を有する層である。電子注入層は、後述するように、陰極18の一部を構成する場合もある。電子輸送層は、陰極18、電子注入層または陰極18により近い電子輸送層からの電子注入を改善する機能を有する層である。電子注入層および/または電子輸送層が正孔の輸送を堰き止める機能を有する場合には、これらの層が正孔ブロック層と称される場合もある。
【0041】
上述した各種の機能層を含む有機EL素子10の層構成の例を以下に示す。
a)陽極/発光層/陰極
b)陽極/正孔注入層/発光層/陰極
c)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極
d)陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
e)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
f)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
g)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
h)陽極/発光層/電子注入層/陰極
i)陽極/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
【0042】
記号「/」は、記号「/」の両側の層同士が接合していることを意味している。上記a)の構成が
図1〜
図3に示した構成に対応する。
【0043】
有機EL素子10は単層の発光層161を有していても2層以上の発光層161を有していてもよい。上記a)〜i)の層構成のうちのいずれか1つにおいて、陽極14と陰極18との間に配置された積層構造を「構造単位A」とすると、2層の発光層161を有する有機EL素子10の構成として、例えば、下記j)に示す層構成を挙げることができる。2個ある(構造単位A)の層構成は互いに同じであっても、異なっていてもよい。
j)陽極/(構造単位A)/電荷発生層/(構造単位A)/陰極
【0044】
ここで電荷発生層とは、電界を印加することにより、正孔と電子とを発生する層である。電荷発生層としては、例えば酸化バナジウム、ITO、酸化モリブデンなどからなる薄膜を挙げることができる。
【0045】
「(構造単位A)/電荷発生層」を「構造単位B」とすると、3層以上の発光層161を有する有機EL素子10の構成として、例えば、以下のk)に示す層構成を挙げることができる。
k)陽極/(構造単位B)x/(構造単位A)/陰極
【0046】
記号「x」は、2以上の整数を表し、「(構造単位B)x」は、(構造単位B)がx段積層された積層体を表す。また複数ある(構造単位B)の層構成は同じでも、異なっていてもよい。
【0047】
電荷発生層を設けずに、複数の発光層161を直接的に積層させて有機EL素子10を構成してもよい。
【0048】
[陰極]
陰極18は、有機EL本体部16上に、有機EL本体部16の少なくとも一部を覆うように設けられている。陰極18は、支持基板12においてX軸方向の両側面である側面(第1側面)12bと側面(第2側面)12cとの間に渡って設けられている。第1の実施形態では、陽極14との短絡を防止するため、陰極18は、有機EL本体部16のうち、陽極14における外部接続部142側の端部16a(
図2(b)参照)以外の部分を覆うように設けられている。換言すれば、陰極18は、支持基板12の厚さ方向からみた場合、有機EL本体部16における外部接続部142側の端部16aが陰極18から露出するように設けられており、支持基板12の主面12aにも陰極18が設けられている。
【0049】
したがって、引出電極22を備える形態では、
図2(b)に示したように、陰極18は、引出電極22と陽極14との間の主面12a上にも設けられており、陰極18と引出電極22とは接続されている。このように、陰極18を設けても、前述したように、陽極本体部141は、有機EL本体部16で覆われていることから、陰極18と陽極14との短絡は防止されている。陰極18の材料の例については後述する。
【0050】
陰極18の厚さは、電気伝導度、耐久性を考慮して設定される。陰極18の厚さは、通常、10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0051】
[封止部材]
封止部材20は、有機EL本体部16を埋設するように、陰極18上に設けられている。封止部材20は、支持基板12の側面12bと側面12cとの間に渡って、少なくとも有機EL本体部16を封止するように支持基板12上に配置されている。封止部材20のY軸方向の幅は、支持基板12の幅より狭く、封止部材20は、外部接続部142の一部及び引出電極22の一部が封止部材20から露出するように(或いは引き出されるように)支持基板12上に設けられている。封止部材20は、封止基材201と、粘接着部202とを有する。
【0052】
封止基材201は、有機EL素子10において支持基板12と反対側に配置されている。封止基材201は、金属箔、透明なプラスチックフィルムの表面若しくは裏面又はその両面にバリア機能層を形成したバリアフィルム、或いはフレキシブル性を有する薄膜ガラス、プラスチックフィルム上にバリア性を有する金属を積層させたフィルム等からなり、ガスバリア機能、特に水分バリア機能を有する。金属箔としては、バリア性の観点から、銅箔、アルミニウム箔、ステンレス箔が好ましい。金属箔の厚さとしては、ピンホール抑制の観点から厚い程好ましいが、フレキシブル性の観点も考慮すると15μm〜50μmが好ましい。
【0053】
粘接着部202は、封止基材201における支持基板12側の表面に設けられており、封止基材201を、陽極14、有機EL本体部16及び陰極18が形成された支持基板12に接着させるために用いられるものである。粘接着部202は、少なくとも陽極本体部141、有機EL本体部16、及び、陰極18のうちX軸方向の両側面、すなわち、側面18a,18b以外の部分を覆っている。以下、説明のために、支持基板12上の構成において粘接着部202で覆われている部分を被覆部分と称す。粘接着部202の厚さは、上記被覆部分を被覆できる厚さであればよく、例えば、1μm〜100μm、より好ましくは5μm〜60μm、さらに好ましくは10μm〜30μmである。
【0054】
粘接着部202は、具体的には、光硬化性又は熱硬化性のアクリレート樹脂、或いは、光硬化性又は熱硬化性のエポキシ樹脂から構成される。その他一般に使用されるインパルスシーラーで融着可能な樹脂フィルム、例えばエチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリブタジエンフィルム等の熱融着性フィルムを使用することもできる。また、熱可塑性樹脂も使用することができる。
【0055】
粘接着部202に用いられる接着材としては、粘接着部202で覆われる上記被覆部分と粘接着部202との接着性が高く、また、著しい接着材熱収縮、上記被覆部分へのストレスによる被覆部分の剥離、粘接着部202からの被覆部分へ悪影響を及ぼす成分の発生、及びバリア性が高くダークスポットの発生・成長を抑制する効果が高い接着材が好ましい。
【0056】
図2(a)に示したように、有機EL素子10のX軸方向において、支持基板12の側面12b、陰極18の側面18a及び封止部材20の側面20aは揃っている。換言すれば、陰極18の側面18aは、側面12b及び側面20aとX軸方向において同じ位置に配置されている。第1の実施形態において、側面18aは、側面12b及び側面20aと面一である。同様に、有機EL素子10のX軸方向において、支持基板12の側面12bと反対側の側面12c、陰極18の側面18aと反対側の側面18b及び封止部材20の側面20aと反対側の側面20bは揃っている。換言すれば、陰極18の側面18bは、側面12c及び側面20bとX軸方向において同じ位置に配置されている。第1の実施形態において、側面18bは、側面12c及び側面20bと面一である。
【0057】
この構成では、陰極18の側面18a,18bは封止部材20によって覆われておらず露出している。よって、陰極18の材料は、水分の影響を実質的に受けない材料が好ましい。この観点から陰極18の材料としては、例えば、遷移金属酸化物、アルミニウム及び銀が挙げられる。陰極18は、一つの金属から構成されていてもよいし、例示した金属の合金から構成されていてもよい。さらに、陰極18は、多層構造を有してもよい。
【0058】
次に、
図3〜
図10を参照して有機EL素子10の製造方法について説明する。ここでは、
図3に示したように、可撓性を有すると共に長尺の支持基板12と、複数の陽極14と、複数の引出電極22とを有し、複数の陽極14が長手方向に離散的に設けられた長尺の電極付き基板24を利用して有機EL素子10を、ロールツーロール方式を利用して製造する場合について説明する。
【0059】
長尺の支持基板12の主面12a上には複数の有機EL素子形成領域26が仮想的に設定されており、各有機EL素子形成領域26に陽極14及び引出電極22が設けられている。よって、陽極14と引出電極22の数は同じであり、一つの陽極14に対して、一つの引出電極22が、支持基板12の長手方向に直交する方向(以下、「幅方向」とも称す)に所定の間隔を空けて配置されている。陽極14及び引出電極22は、例えば、陽極14及び引出電極22となる電極膜を形成した後、その電極膜を、例えば、フォトリソグラフィーなどの微細加工技術を用いて所定のパターンに加工することで形成され得る。
【0060】
図3に示した例では、陽極14は、側面14aが電極付き基板24の縁部24aと同じ位置に形成されており、引出電極22は、その側面22aが電極付き基板24の縁部24aと反対側の縁部24bと同じ位置に形成されている。しかしながら、電極付き基板24の幅方向において、陽極14は、縁部24aから一定の距離を離して形成されていてもよいし、引出電極22も縁部24bから一定の距離を離して形成されていてもよい。
【0061】
有機EL素子10を製造する場合、有機EL本体部16を形成する本体部形成工程S10と、陰極18を形成する陰極形成工程S12と、有機EL本体部16を封止部材20で封止する封止工程S14と、有機EL素子10を切り出す切断工程S16とを備える。第1の実施形態では、
図4に概念的に示したように、巻出しロール28Aと巻取りロール28Bとの間に張り渡された長尺の可撓性の電極付き基板24を連続的に搬送ローラ30で搬送しながら、本体部形成工程S10、陰極形成工程S12及び封止工程S14をロールツーロール方式で実施した後、切断工程S16を実施する。以下、各工程について詳細に説明する。
【0062】
(有機EL本体部形成工程)
本体部形成工程S10では、電極付き基板24を、その長手方向に搬送しながら、
図5に示したように、陽極14のうち電極付き基板24の縁部24b側を覆う一方、縁部24a側を露出させるように、有機EL本体部16を例えば塗布法により形成する。例えば、
図5に示したように、有機EL本体部16が発光層161である場合には、発光層161となる材料を含む塗布液を、有機EL本体部16を形成する領域上に塗布し、乾燥させることで、有機EL本体部16としての発光層161を形成する。塗布法としては、インクジェット印刷法が例示される。
【0063】
有機EL本体部16が、発光層161以外の機能層を有する形態では、電極付き基板24を搬送しながら、陽極14側から順次、各機能層を、上述した発光層161と同様の方法で形成すればよい。有機EL本体部16の形成方法は、有機EL本体部16を形成できれば、塗布法に限定されない。
【0064】
陽極14において、有機EL本体部16で覆われている領域が
図1、
図2(a)及び
図2(b)に示した陽極本体部141であり、有機EL本体部16から露出している領域が外部接続部142である。
【0065】
(陰極形成工程)
陰極形成工程S12では、電極付き基板24をその長手方向に搬送しながら、
図6に示したように、有機EL本体部16上に陰極18を形成する。この際、第1の実施形態では、電極付き基板24の幅方向において、有機EL本体部16における外部接続部142側の端部16aが露出するように、陰極18を形成する。また、陰極18は、引出電極22に接するように形成する。この場合、
図6に示したように、引出電極22の一部を被覆するように形成してもよい。
【0066】
陰極18は、電極付き基板24の長手方向に沿って、複数の有機EL素子形成領域26に渡って連続的に形成される。すなわち、陰極形成工程S12で形成される陰極18は、搬送方向に沿って延在する長尺の陰極18である。陰極18の形成方法としては、有機EL本体部16の形成の場合と同様の塗布法を挙げることができる。ただし、陰極18は、真空蒸着法、スパッタリング法、又は金属薄膜を熱圧着するラミネート法で形成されてもよい。
【0067】
陰極18が積層構造を有する形態では、陰極18となるべき各層を、電極付き基板24を長手方向に搬送しながら、有機EL本体部16側に位置する層から順に形成すればよい。
【0068】
(封止工程)
封止工程S14では、陰極18が形成された電極付き基板24を長手方向に搬送しながら、複数の有機EL素子形成領域26に渡って陰極18側から電極付き基板24に封止部材20を貼合し、有機EL本体部16を封止部材20で封止する。この封止工程S14により、
図7に示したように、長手方向に延在する封止部材20が、複数の有機EL素子形成領域26に渡って貼合された電極付き基板24が得られる。
【0069】
具体的には、封止工程S14では、
図8に模式的に示したように、陰極形成工程S12を経た電極付き基板24に陰極18側から封止部材20を貼り合わせる。この際、封止部材20の粘接着部202側が電極付き基板24に位置するように、封止部材20を、電極付き基板24に貼合する。封止部材20の幅は、
図7に示したように、電極付き基板24の幅より狭く、封止部材20を電極付き基板24に貼合する際には、陽極14における外部接続部142の一部及び引出電極22の一部が露出するように電極付き基板24に貼合する。
【0070】
ロールツーロール方式では、
図9に模式的に示したように、電極付き基板24を搬送しながら、陰極18が形成された電極付き基板24上に、陰極18側から長尺の封止部材20を連続的に貼り合わせる。電極付き基板24と封止部材20とは、加熱ローラ32a,32bの間を通過する。これにより、電極付き基板24と封止部材20とは、加熱ローラ32a,32bによって、加熱されつつ圧力が付与される。これにより、粘接着部202が軟化し、粘接着部202と、粘接着部202で覆われるべき電極付き基板24上の構成要素とが密着する。
図9では、電極付き基板24上の構成及び封止部材20の構成の図示を省略している。
【0071】
図4に概念的に示したように、第1の実施形態では、陰極形成工程S12の後に、長尺の陰極18が形成された電極付き基板24を巻取りロール28Bに巻き取る。
【0072】
(切断工程)
切断工程S16では、封止工程S14を経て、一旦、巻き取られた電極付き基板24を更に繰り出して、
図10(a)に示したように搬送ローラ30で、電極付き基板24の長手方向に搬送する。そして、電極付き基板24を長手方向に搬送しながら、切断装置34で、隣接する有機EL素子形成領域26の間を、電極付き基板24の幅方向に切断して、
図10(b)に示したように、有機EL素子10を得る。
図10(a)では、切断装置34を模式的に図示している。
【0073】
上記例示した有機EL素子10の製造方法では、切断工程S16以外の工程を、ロールツーロール方式で連続して行った。ただし、例えば、電極付き基板24の縁部24a,24bと、有機EL素子形成領域26との間に隙間を設けている場合などでは、切断工程S16において電極付き基板24から有機EL素子形成領域26がくり抜かれ、電極付き基板24の一部が残存して搬送されるのであれば、切断工程S16も、封止工程S14までのロールツーロール方式に含めてもよい。
【0074】
逆に、本体部形成工程S10、陰極形成工程S12及び封止工程S14のそれぞれについてロールツーロール方式を採用してもよい。すなわち、本体部形成工程S10、陰極形成工程S12及び封止工程S14のそれぞれの工程で、一旦、電極付き基板24を巻き取った後に、次の工程を実施してもよい。
【0075】
上記製造方法では、電極付き基板24を予め準備したが、例えば、長尺の支持基板12に陽極14及び引出電極22を形成する工程を更に備えてもよい。
【0076】
有機EL素子10では、陰極18は所定方向(
図1において、X軸方向)に延在している。換言すれば、陰極18は、
図1及び
図2(a)に示したように、支持基板12の側面12bから側面12cに渡って設けられている。そのため、有機EL素子10を製造する際に、所定方向に直交する方向(Y軸方向又は幅方向)の幅さえ調整しておけば、所定方向における陰極18のパターニングが不要である。よって、有機EL素子10の製造が容易である。特に、インクジェット印刷法を利用する場合、陰極18の所定方向に直交する方向(Y軸方向又は幅方向)の幅は、例えば、塗布液を吐出すべきノズルを選択することで、容易に調整できる。
【0077】
また、支持基板12、陰極18及び封止部材20のそれぞれの両側面が一致している有機EL素子10は、上述した有機EL素子10の製造方法で好適に製造できる。具体的には、例示したように、電極付き基板24をその長手方向に搬送しながら、搬送方向に連続的に長尺の陰極18を形成し、その後、封止部材20で有機EL本体部16を封止した後、所定の位置で切断すれば、有機EL素子10が得られる。そのため、陰極が封止部材内に埋設されている形態で必要となる陰極のパターニングが不要である。したがって、上記有機EL素子10の製造方法では、有機EL素子10の生産性が向上する。また、このような製造方法は、例示したようにロールツーロール方式の製造方法に適している。そして、ロールツーロール方式では、長尺の電極付き基板24を搬送しながら連続的に有機EL素子10の製造方法の各工程を実施できるので、生産性の向上が更に向上する。
【0078】
有機EL素子10では、陰極18の側面18a及び側面18bは封止部材20で覆われておらず露出しているが、陰極18の材料として水分の影響を受けにくい材料を採用することで、有機EL素子10の劣化は防止できる。
【0079】
(第2の実施形態)
図11、
図12(a)及び
図12(b)を参照して第2の実施形態に係る有機EL素子10Aについて説明する。有機EL素子10Aは、陽極14上に絶縁層36を備える点で、有機EL素子10の構成と主に相違する。この相違点を中心にして有機EL素子10Aについて説明する。第2の実施形態でも断らない限り、有機EL本体部16は単層構造を有し、発光層161から構成されている。
【0080】
絶縁層36は、外部接続部142上において、有機EL本体部16に隣接して設けられている。有機EL本体部16の一部は、絶縁層36上に設けられてもよい。絶縁層36の材料の例は、感光性ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂であり、具体的には、レジスト材であり得る。絶縁層36の厚さの例は0.1μm〜10μmである。
【0081】
有機EL素子10Aにおいて、陰極18は、有機EL本体部16の端部16aも覆い、陰極18は、
図12(a)及び
図12(b)に示したように、絶縁層36上にも形成されている。換言すれば、陰極18と外部接続部142との間に絶縁層36が設けられている。
【0082】
有機EL素子10Aは、
図4に示した陰極形成工程S12前に、絶縁層36を形成する絶縁層形成工程を備える点以外は、有機EL素子10の製造方法と同様の方法で製造され得る。絶縁層形成工程では、電極付き基板24をその長手方向に搬送しながら、例えば、塗布法で絶縁層36を形成すればよい。塗布法の例は、インクジェット印刷法である。
【0083】
絶縁層形成工程は、有機EL本体部16の構成及び有機EL本体部16に対する絶縁層36の配置関係に応じて陰極形成工程S12前に適宜実施すればよい。
【0084】
例えば、
図11、
図12(a)及び
図12(b)に示したように、有機EL本体部16が発光層161のみから構成されており、絶縁層36の一部に有機EL本体部16が被さるように有機EL本体部16が設けられる構成では、本体部形成工程S10の前に、絶縁層形成工程を実施する。
【0085】
有機EL本体部16が、発光層161を含む多層構造である場合であって、絶縁層36の一部に有機EL本体部16が被さるように有機EL本体部16が設けられる構成では、例えば、本体部形成工程S10前又は本体部形成工程S10中に絶縁層形成工程を実施し得る。
【0086】
本体部形成工程S10前に絶縁層形成工程を実施する場合、本体部形成工程S10では、有機EL本体部16を構成する複数の機能層のうち、絶縁層36と同じ厚さまでは絶縁層36に隣接して各機能層を形成し、絶縁層36の厚さを超えてからは、絶縁層36の一部を覆うように残りの機能層を形成すればよい。
【0087】
本体部形成工程S10中に絶縁層形成工程を実施する場合、本体部形成工程S10では、有機EL本体部16を構成する複数の機能層のうち、所定の数の機能層を形成した後に、絶縁層36を形成する。その後、絶縁層36の一部を覆うように、有機EL本体部16の残りの機能層を形成すればよい。上記所定の数は、設計上において、所定の数の機能層の総厚が絶縁層36の厚さと実質的に同じ厚さとなる機能層の層数である。
【0088】
有機EL本体部16が絶縁層36の一部に被さらない構成では、有機EL本体部形成工程S10の前或いは本体部形成工程S10と陰極形成工程S12との間に絶縁層形成工程が実施されればよい。
【0089】
有機EL素子10Aは、陽極14上に絶縁層36を備える点で、有機EL素子10の構成と主に相違する点以外は、有機EL素子10の構成と実質的に同じである。よって、有機EL素子10Aは、少なくとも有機EL素子10Aと同様の作用効果を奏する。
【0090】
有機EL素子10Aでは、陽極14と陰極18との間に絶縁層36が設けられているので、陽極14と陰極18との短絡がより確実に防止される。有機EL本体部16が端部16aも含めて陰極18で覆われるので、有機EL本体部16に水分が到達し難く、有機EL本体の水分による劣化が更に防止され得る。よって、有機EL素子10Aの長寿命化が図れる。
【0091】
(第3の実施形態)
図13及び
図14を参照して第3の実施形態に係る有機EL素子10Bについて説明する。有機EL素子10Bは、吸湿部38を更に備える点で、有機EL素子10の構成と主に相違する。この相違点を中心にして有機EL素子10Bについて説明する。
【0092】
吸湿部38は、水分を捕獲する乾燥材である。吸湿部38は、水分の他に、酸素等を捕獲してもよい。吸湿部38は、有機EL本体部16において、陰極18から露出している外部接続部142側の端部16aを覆うように設けられている。吸湿部38は、水分を捕獲する乾燥材である。吸湿部38は、水分の他に、酸素等を捕獲してもよい。吸湿部38の形状は、端部16aを被覆可能な形状であれば限定されない。
【0093】
吸湿部38の吸湿速度は、温度24℃、湿度55%RHの環境下において、1wt%/h以上であることが好ましい。
【0094】
有機EL素子10Bは、
図4に示した本体部形成工程S10と、陰極形成工程S12との間に、吸湿部38を形成する吸湿部形成工程を備える点以外は、有機EL素子10の製造方法と同様の方法で製造し得る。
【0095】
吸湿部形成工程では、本体部形成工程S10を経た電極付き基板24をその長手方向に搬送しながら、例えば、塗布法で吸湿部38を形成すればよい。塗布法の例は、インクジェット印刷法である。
【0096】
具体的には、吸湿部38は、吸湿部38の前駆体である液体ゲッター材を含む塗布液を塗布法により、有機EL本体部16の所定の位置に塗布する。具体的には、有機EL本体部16の端部16aを覆うように有機EL本体部16上及び外部接続部142上に上記塗布液を塗布する。続いて、塗布液を乾燥させた後、液体ゲッター材を硬化させることによって、吸湿部38が形成される。液体ゲッター材は、光反応性基を有する架橋性化合物(硬化成分)を含み得る。この場合、吸湿部38は、液体ゲッター材が塗布されて、塗布形成後、紫外線照射処理を行い、液体ゲッター材を硬化させて形成される。また、液体ゲッター材は、熱反応性基を有する架橋性化合物を含んでいてもよい。この場合、液体ゲッター材は、加熱処理により硬化させる。
【0097】
吸湿部38は、液体ゲッター材として、有機金属化合物、金属酸化物、ゼオライト等の多孔質物質のうちの少なくとも1種類を含んでいることが好ましい。さらに、有機金属化合物と金属酸化物を構成する金属は、アルミニウム、カルシウム、バリウムのうちの少なくとも1種類を含んでいることが好ましい。有機アルミニウム化合物、酸化カルシウム等は、水分の補水速度が速いため、さらに好ましい。
【0098】
また、吸湿部38は、バインダーを含んでいてもよく、特にアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、及び、アミド系樹脂のうちの少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0099】
有機EL素子10Bは、吸湿部38を備える点で、有機EL素子10の構成と主に相違する点以外は、有機EL素子10の構成と実質的に同じである。よって、有機EL素子10Bは、少なくとも有機EL素子10と同様の作用効果を奏する。
【0100】
有機EL素子10Bでは、有機EL本体部16のうち陰極18から露出している部分が吸湿部38で被覆されている。よって、有機EL本体部16のうち陰極18で覆われている部分は陰極18により有機EL本体部16への水分の到達が抑制され、有機EL本体部16のうち陰極18から露出している部分は、吸湿部38により有機EL本体部16への水分の到達が抑制される。したがって、有機EL本体部16に水分が到達し難く、有機EL本体の水分による劣化が更に防止されており、有機EL素子10Bの長寿命化が図れる。
【0101】
以上、本発明の種々の実施形態について説明した。しかしながら、本発明は上述した種々の実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0102】
陰極18は、
図15に模式的に示した有機EL素子10Cのように、上記第1〜第3の実施形態で説明した陰極としての第1陰極層181と、電子注入層として機能する第2陰極層182とを有してもよい。第2陰極層182の材料の例は、フッ化ナトリウム(NaF)が挙げられる。第2陰極層182を介して有機EL素子内への水分の侵入の影響を低減する観点から、第2陰極層182の厚さは薄いことが好ましく、例えば、1nm〜10nmである。
【解決手段】一実施形態に係る有機EL素子は、第1側面12bと、第1の方向において第1側面と反対側に位置する第2側面12cとを有する支持基板12と、支持基板上に設けられる第1の電極と、第1の電極上に設けられている有機EL本体部16と、第1側面から第2側面に渡って設けられており、有機EL本体部の少なくとも一部を覆う第2の電極18と、第1側面から第2側面に渡って第2の電極上に設けられており、少なくとも有機EL本体部を封止する封止部材と、を備え、第1の方向において、第2の電極及び封止部材のそれぞれの第1側面側の側面18a,20aは第1側面と揃っていると共に、第2の電極及び封止部材のそれぞれの第2側面側の側面18b,20bは第2側面と揃っている。