特許第6053244号(P6053244)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6053244プリントヘッドの検査方法、プリント方法、プリントヘッドの検査装置及びプリンタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6053244
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】プリントヘッドの検査方法、プリント方法、プリントヘッドの検査装置及びプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20161219BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   B41J2/01 207
   B41J2/165 209
   B41J2/01 209
   B41J2/01 401
【請求項の数】20
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2016-521035(P2016-521035)
(86)(22)【出願日】2015年5月8日
(86)【国際出願番号】JP2015063296
(87)【国際公開番号】WO2015178225
(87)【国際公開日】20151126
【審査請求日】2016年10月5日
(31)【優先権主張番号】特願2014-104678(P2014-104678)
(32)【優先日】2014年5月20日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】山野辺 淳
(72)【発明者】
【氏名】京相 忠
(72)【発明者】
【氏名】角 克人
【審査官】 島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−51225(JP,A)
【文献】 特開2009−190281(JP,A)
【文献】 特開2014−4736(JP,A)
【文献】 特開2012−51225(JP,A)
【文献】 特開2008−272990(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 − 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の記録素子を備えたプリントヘッドの検査方法であって、
前記複数の記録素子を複数のグループにグループ分けし、前記グループの単位で前記複数の記録素子の検査順を設定し、
設定した前記検査順に従って前記複数の記録素子の検査を前記グループの単位で周期的に実施し、
前記検査において、前記複数の記録素子のうち、少なくとも1つの記録素子に異常が検出されると、前記異常が検出された前記記録素子を再検査対象に認定し、
再検査対象の前記記録素子が認定されると、前記検査順を変更することにより、少なくとも再検査対象の前記記録素子の再検査を変更前の前記検査順で実施される検査よりも前に割り込んで実施し、
前記再検査の結果、再検査対象の前記記録素子に再度異常が検出されると、再検査対象の前記記録素子を異常記録素子に認定する、
プリントヘッドの検査方法。
【請求項2】
前記再検査の結果、再検査対象の前記記録素子に再度異常が検出されない場合、再検査対象の前記記録素子を再検査対象に再度認定し、あらかじめ設定した回数まで前記再検査を割り込んで実施する、
請求項1に記載のプリントヘッドの検査方法。
【請求項3】
複数の記録素子を備えたプリントヘッドの検査方法であって、
前記複数の記録素子を複数のグループにグループ分けし、前記グループの単位で前記複数の記録素子の検査順を設定し、
設定した前記検査順に従って前記複数の記録素子の検査を前記グループの単位で周期的に実施し、
前記検査において、前記複数の記録素子のうち、少なくとも1つの記録素子に異常が検出されると、前記異常が検出された前記記録素子を再検査対象に認定し、
再検査対象の前記記録素子が認定されると、次に検査する前記グループの一部の前記記録素子を再検査対象の前記記録素子に置き換えて、再検査対象の前記記録素子の再検査を実施し、
前記再検査の結果、再検査対象の前記記録素子に再度異常が検出されると、再検査対象の前記記録素子を異常記録素子に認定する、
プリントヘッドの検査方法。
【請求項4】
前記再検査の結果、再検査対象の前記記録素子に再度異常が検出されない場合、再検査対象の前記記録素子を再検査対象に再度認定し、あらかじめ設定した回数まで前記再検査を実施する、
請求項3に記載のプリントヘッドの検査方法。
【請求項5】
前記プリントヘッドは、インクジェット方式のプリントヘッドであり、
前記記録素子は、前記プリントヘッドに備えられたノズルであり、
前記異常記録素子を異常ノズルとして認定する、
請求項1から4のいずれか1項に記載のプリントヘッドの検査方法。
【請求項6】
前記検査及び前記再検査は、前記ノズルからメディアに向けてインクを吐出させ、前記メディアにプリントされた画像を読み取ることにより実施される、
請求項5に記載のプリントヘッドの検査方法。
【請求項7】
前記ノズルから吐出させるインクの色ごとに前記ノズルをグループ分けする、
請求項5又は6に記載のプリントヘッドの検査方法。
【請求項8】
プリンタに組み込まれた前記プリントヘッドをプリントジョブの実行中に検査する、
請求項7に記載のプリントヘッドの検査方法。
【請求項9】
前記プリントヘッドは、プリントするメディアの幅に相当する幅を備えたラインヘッドであり、
前記プリンタは、余白をもって前記メディアにシングルパスで画像をプリントし、
前記メディアの余白領域にインクを吐出させることにより、前記プリントヘッドをプリントジョブの実行中に検査する、
請求項8に記載のプリントヘッドの検査方法。
【請求項10】
請求項5から9のいずれか1項に記載のプリントヘッドの検査方法でプリントヘッドを検査し、
前記異常ノズルを認定すると、認定された前記異常ノズルを不吐出化し、不吐出補正を行ってメディアに画像をプリントする、
プリント方法。
【請求項11】
複数の記録素子を備えたプリントヘッドの検査装置であって、
前記複数の記録素子を複数のグループにグループ分けし、前記グループの単位で前記複数の記録素子の検査順を設定する検査順設定部と、
前記検査順設定部によって設定された前記検査順に従って前記複数の記録素子の検査を前記グループの単位で周期的に実施する検査部と、
前記検査部により、前記複数の記録素子のうち、少なくとも1つの記録素子に異常が検出されると、前記異常が検出された前記記録素子を再検査対象に認定する再検査対象認定部と、
再検査対象の前記記録素子が認定されると、前記検査順を変更することにより、少なくとも再検査対象の前記記録素子の再検査を変更前の前記検査順で実施される検査よりも前に割り込んで実施する再検査部と、
前記再検査部による前記再検査の結果、再検査対象の前記記録素子に再度異常が検出されると、再検査対象の前記記録素子を異常記録素子に認定する異常記録素子認定部と、
を備えたプリントヘッドの検査装置。
【請求項12】
前記再検査部による前記再検査の結果、再検査対象の前記記録素子に再度異常が検出されない場合、再検査対象の前記記録素子を再検査対象に再度認定する第2の再検査対象認定部を更に備え、
前記再検査部は、あらかじめ設定した回数まで前記再検査を割り込んで実施する、
請求項11に記載のプリントヘッドの検査装置。
【請求項13】
複数の記録素子を備えたプリントヘッドの検査装置であって、
前記複数の記録素子を複数のグループにグループ分けし、前記グループの単位で前記複数の記録素子の検査順を設定する検査順設定部と、
前記検査順設定部で設定した前記検査順に従って前記複数の記録素子の検査を前記グループの単位で周期的に実施する検査部と、
前記検査部によって、前記複数の記録素子のうち、少なくとも1つの記録素子に異常が検出されると、前記異常が検出された前記記録素子を再検査対象に認定する再検査対象認定部と、
再検査対象の前記記録素子が認定されると、次に検査する前記グループの一部の前記記録素子を再検査対象の前記記録素子に置き換えて、再検査対象の前記記録素子の再検査を実施する再検査部と、
前記再検査部による前記再検査の結果、再検査対象の前記記録素子に再度異常が検出されると、再検査対象の前記記録素子を異常記録素子に認定する異常記録素子認定部と、
を備えたプリントヘッドの検査装置。
【請求項14】
前記再検査部による前記再検査の結果、再検査対象の前記記録素子に再度異常が検出されない場合、再検査対象の前記記録素子を再検査対象に再度認定する第2の再検査対象認定部を更に備え、
前記再検査部は、あらかじめ設定した回数まで前記再検査を実施する、
請求項13に記載のプリントヘッドの検査装置。
【請求項15】
前記プリントヘッドは、インクジェット方式のプリントヘッドであり、
前記記録素子は、前記プリントヘッドに備えられたノズルであり、
前記異常記録素子認定部は、前記異常記録素子を異常ノズルとして認定する異常ノズル認定部であり、
請求項11から14のいずれか1項に記載のプリントヘッドの検査装置。
【請求項16】
前記検査部は、前記ノズルからメディアに向けてインクを吐出させ、前記メディアにプリントされた画像を読み取って前記ノズルを検査し、
前記再検査部は、前記ノズルからメディアに向けてインクを吐出させ、前記メディアにプリントされた画像を読み取ることにより前記ノズルを再検査する、
請求項15に記載のプリントヘッドの検査装置。
【請求項17】
前記検査順設定部は、前記ノズルから吐出するインクの色ごとに前記ノズルをグループ分けし、前記グループの単位で前記ノズルの検査順を設定する、
請求項15又は16に記載のプリントヘッドの検査装置。
【請求項18】
複数のノズルを備えたインクジェット方式のプリントヘッドによってメディアに画像をプリントするプリンタであって、
請求項15から17のいずれか1項に記載のプリントヘッドの検査装置を備え、
プリントジョブの実行中にプリントヘッドを検査する、
プリンタ。
【請求項19】
前記プリントヘッドは、プリントするメディアの幅に相当する幅を備えたラインヘッドであり、
前記プリンタは、余白をもって前記メディアにシングルパスで画像をプリントし、
前記メディアの余白領域にインクを吐出させることにより、前記プリントヘッドをプリントジョブの実行中に検査する、
請求項18に記載のプリンタ。
【請求項20】
前記異常ノズル認定部が前記異常ノズルを認定すると、認定された前記異常ノズルを不吐出化し、不吐出補正を行う不吐出補正部を更に備える、
請求項18又は19に記載のプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプリントヘッドの検査方法、プリント方法、プリントヘッドの検査装置及びプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
記録素子がライン状又はマトリクス状に配列されたプリントヘッドは、記録素子に異常があると、プリントされる画像に画質欠陥が発生する。たとえば、インクジェット方式(色材、機能材料を含む液体(インク)を液滴に分離し、画像信号(プリント信号)に応じ、記録対象(メディア)に向けて液体を吐出することにより、色材及び機能材料をメディアに付着及び伝達させるマーキング方式)のプリントヘッドでは、記録素子であるノズルに不吐出や吐出方向不良などの異常があると、プリントされる画像にスジやムラなどの画質欠陥が発生する。
【0003】
プリントヘッドに備えられている各記録素子の状態を検査する方法として、テストチャートをプリントして各記録素子の状態を検査する方法が知られている。また、プリントジョブの実行中に各記録素子の状態を検査する方法として、用紙の余白領域にテストチャートをプリントして、各記録素子の状態を随時検査する方法が知られている。
【0004】
特許文献1には、シアン、マゼンタ、イエロ、黒の4色のインクを用いてカラープリントを行うインクジェットプリンタにおいて、プリントジョブの実行中に各ノズルの状態を検査する方法が記載されている。特許文献1に記載された方法によれば、1枚ごとにテストチャートをプリントするインクの色を切り換えて、インクの色ごとに順番にノズルの状態を検査する。すなわち、特許文献1には、1枚ごとにテストチャートをプリントするノズルの組み合わせを切り換えて、一定のグループ単位で順番にノズルの状態を検査する方法が記載されている。この方法によれば、テストチャートをプリントするために必要な領域(用紙の余白領域)を狭くできるという利点がある。また、1回の検査で処理するデータ量を少なくでき、処理の高速化が図れるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−4736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、プリントジョブの実行中に各記録素子の状態を随時検査する方法は、プリント速度が速くなると、しばしば誤検出が発生する。
【0007】
このような誤検出を防止するためには、ある記録素子に異常が検出された場合であっても、すぐに異常な記録素子と認定するのではなく、二度異常が検出された場合に、異常な記録素子と認定することが好ましい。
【0008】
しかしながら、この方法を特許文献1に記載された方法、すなわち、グループ単位で順番に各記録素子の状態を検査する方法に適用すると、二度目の検査を行うまでに間隔が開くため、異常の検出に時間を要するという欠点がある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、記録素子の異常を短期間で精度よく検出できるプリントヘッドの検査方法、プリント方法、プリントヘッドの検査装置及びプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
課題を解決するための手段は次のとおりである。
【0011】
[1]複数の記録素子を備えたプリントヘッドの検査方法であって、複数の記録素子を複数のグループにグループ分けし、グループの単位で複数の記録素子の検査順を設定し、設定した検査順に従って複数の記録素子の検査をグループの単位で周期的に実施し、検査において、複数の記録素子のうち、少なくとも1つの記録素子に異常が検出されると、異常が検出された記録素子を再検査対象に認定し、再検査対象の記録素子が認定されると、検査順を変更することにより、少なくとも再検査対象の記録素子の再検査を変更前の検査順で実施される検査よりも前に割り込んで実施し、再検査の結果、再検査対象の記録素子に再度異常が検出されると、再検査対象の記録素子を異常記録素子に認定する、プリントヘッドの検査方法。
【0012】
本態様では、プリントヘッドに備えられている複数の記録素子を複数のグループにグループ分けし、グループ単位で検査順(検査の順番)を設定し、設定した検査順に従ってグループ単位で記録素子の検査を周期的に実施する。検査の結果、記録素子に異常が検出されると、異常が検出された記録素子を再検査対象に認定する。そして、再検査対象の記録素子が認定されると、検査順を変更し、変更前の検査順で実施される検査よりも前に少なくとも再検査対象の記録素子を再検査する。すなわち、通常の検査順(設定された検査の順番)に従って次にその記録素子(再検査対象の記録素子)の検査を実施する前に再検査を実施する。再検査の結果、再検査対象の記録素子に再度異常が検出されると、再検査対象の記録素子を異常記録素子に認定する。これにより、誤検出を防止でき、正確に異常記録素子を検出できる。また、再検査する際、通常の検査サイクル(検査順)を無視して、割り込みにより再検査を行うので、短期間で異常を検出できる。
【0013】
[2]再検査の結果、再検査対象の記録素子に再度異常が検出されない場合、再検査対象の記録素子を再検査対象に再度認定し、あらかじめ設定した回数まで再検査を割り込んで実施する、上記[1]に記載のプリントヘッドの検査方法。
【0014】
本態様では、再検査の結果、再検査対象の記録素子に異常が検出されない場合、再検査対象の記録素子を再度再検査対象に認定し、あらかじめ設定した回数まで割り込んで再検査を行う。たとえば、2回まで割り込みを行う場合、1回目で異常と判定され、2回目で正常と判定された場合(異常が検出されない場合)、2回目の再検査が割り込みにより行われる。これにより、さらに精度よく記録素子の異常を検出できる。
【0015】
[3]複数の記録素子を備えたプリントヘッドの検査方法であって、複数の記録素子を複数のグループにグループ分けし、グループの単位で複数の記録素子の検査順を設定し、設定した検査順に従って複数の記録素子の検査をグループの単位で周期的に実施し、検査において、複数の記録素子のうち、少なくとも1つの記録素子に異常が検出されると、異常が検出された記録素子を再検査対象に認定し、再検査対象の記録素子が認定されると、次に検査するグループの一部の記録素子を再検査対象の記録素子に置き換えて、再検査対象の記録素子の再検査を実施し、再検査の結果、再検査対象の記録素子に再度異常が検出されると、再検査対象の記録素子を異常記録素子に認定する、プリントヘッドの検査方法。
【0016】
本態様では、プリントヘッドに備えられている複数の記録素子を複数のグループにグループ分けし、グループの単位で検査順を設定し、設定した検査順に従って記録素子をグループの単位で周期的に検査する。検査の結果、記録素子に異常が検出されると、異常が検出された記録素子を再検査対象に認定し、次に検査するグループの一部の記録素子を再検査対象の記録素子に置き換えて、再検査対象の記録素子を再検査する。再検査の結果、再検査対象の記録素子に再度異常が検出されると、再検査対象の記録素子を異常記録素子に認定する。これにより、誤検出を防止でき、正確に異常記録素子を検出できる。また、短期間で異常を検出できる。また、次に検査するグループの一部の記録素子を再検査対象の記録素子に置き換えて、再検査対象の記録素子を再検査するので、次のグループの検査の遅滞を防止できる。すなわち、置き換えられていない記録素子については、通常の周期で検査できるので、置き換えられていない記録素子の検査の遅滞を防止できる。
【0017】
[4]再検査の結果、再検査対象の記録素子に再度異常が検出されない場合、再検査対象の記録素子を再検査対象に再度認定し、あらかじめ設定した回数まで再検査を実施する、上記[3]に記載のプリントヘッドの検査方法。
【0018】
本態様では、再検査の結果、再検査対象の記録素子に異常が検出されない場合、再検査対象の記録素子を再検査対象に再度認定し、あらかじめ設定した回数まで置き替えによる再検査を行う。たとえば、2回まで再検査する場合、1回目で異常と判定され、2回目で正常と判定された場合、2回目の再検査が置き替えにより実施される。これにより、さらに精度よく記録素子の異常を検出できる。
【0019】
[5]プリントヘッドは、インクジェット方式のプリントヘッドであり、記録素子は、プリントヘッドに備えられたノズルであり、異常記録素子を異常ノズルとして認定する、上記[1]から[4]のいずれか1に記載のプリントヘッドの検査方法。
【0020】
本態様では、インクジェット方式のプリントヘッドに備えられているノズルを検査する。
【0021】
[6]検査及び再検査は、ノズルからメディアに向けてインクを吐出させ、メディアにプリントされた画像を読み取ることにより実施される、上記[5]に記載のプリントヘッドの検査方法。
【0022】
本態様では、ノズルからメディアに向けてインクを吐出させ、メディアにプリントされた画像を読み取って、ノズルの検査及び再検査を行う。
【0023】
[7]ノズルから吐出させるインクの色ごとにノズルをグループ分けする、上記[5]又は[6]に記載のプリントヘッドの検査方法。
【0024】
本態様では、ノズルから吐出させるインクの色ごとにノズルをグループ分けし、グループ単位でノズルを検査する。
【0025】
[8]プリンタに組み込まれたプリントヘッドをプリントジョブの実行中に検査する、上記[7]に記載のプリントヘッドの検査方法。
【0026】
本態様では、プリンタに組み込まれたプリントヘッドをプリントジョブの実行中に検査する。これにより、プリントジョブの実行中に記録素子の異常を検出できる。
【0027】
[9]プリントヘッドは、プリントするメディアの幅に相当する幅を備えたラインヘッドであり、プリンタは、余白をもってメディアにシングルパスで画像をプリントし、メディアの余白領域にインクを吐出させることにより、プリントヘッドをプリントジョブの実行中に検査する、上記[8]に記載のプリントヘッドの検査方法。
【0028】
本態様では、メディアの余白領域にインクを吐出して、プリントジョブの実行中にノズルを検査する。
【0029】
[10]上記[5]から[9]のいずれか1に記載のプリントヘッドの検査方法でプリントヘッドを検査し、異常ノズルを認定すると、認定された異常ノズルを不吐出化し、不吐出補正を行ってメディアに画像をプリントする、プリント方法。
【0030】
本態様では、異常ノズルが検出された場合、異常ノズルと認定されたノズルを不吐出化し、不吐出補正を行ってメディアに画像をプリントする。
【0031】
[11]複数の記録素子を備えたプリントヘッドの検査装置であって、複数の記録素子を複数のグループにグループ分けし、グループの単位で複数の記録素子の検査順を設定する検査順設定部と、検査順設定部によって設定された検査順に従って複数の記録素子の検査をグループの単位で周期的に実施する検査部と、検査部により、複数の記録素子のうち、少なくとも1つの記録素子に異常が検出されると、異常が検出された記録素子を再検査対象に認定する再検査対象認定部と、再検査対象の記録素子が認定されると、検査順を変更することにより、少なくとも再検査対象の記録素子の再検査を変更前の検査順で実施される検査よりも前に割り込んで実施する再検査部と、再検査部による再検査の結果、再検査対象の記録素子に再度異常が検出されると、再検査対象の記録素子を異常記録素子に認定する異常記録素子認定部と、を備えたプリントヘッドの検査装置。
【0032】
本態様によれば、プリントヘッドに備えられている複数の記録素子が、検査順設定部によって複数のグループにグループ分けされ、グループ単位で記録素子の検査順が設定される。そして、設定された検査順に従って検査部で周期的に記録素子の検査が実施される。この検査の結果、記録素子に異常が検出されると、異常が検出された記録素子が、再検査対象認定部によって、再検査対象に認定される。再検査対象認定部で再検査対象の記録素子が認定されると、再検査部が、再検査対象の記録素子の再検査を実施する。この際、再検査部は、検査順設定部で設定した検査順を変更し、変更前の検査順で実施される検査よりも前に割り込んで再検査対象の記録素子の再検査を実施する。すなわち、通常の検査順(設定された検査の順番)に従って次に検査を実施する前に再検査対象の記録素子の再検査を実施する。この再検査の結果、再検査対象の記録素子に再度異常が検出されると、再検査対象の記録素子が、異常記録素子認定部によって、異常記録素子に認定される。これにより、誤検出を防止でき、正確に異常記録素子を検出できる。また、再検査する際、通常の検査サイクル(検査順)を無視して、割り込みにより再検査を行うので、短期間で異常を検出できる。
【0033】
[12]再検査部による再検査の結果、再検査対象の記録素子に再度異常が検出されない場合、再検査対象の記録素子を再検査対象に再度認定する第2の再検査対象認定部を更に備え、再検査部は、あらかじめ設定した回数まで再検査を割り込んで実施する、上記[11]に記載のプリントヘッドの検査装置。
【0034】
本態様によれば、再検査の結果、再検査対象の記録素子に異常が検出されない場合、第2の再検査対象認定部によって、再検査対象の記録素子が再度再検査対象に認定される。そして、あらかじめ設定された回数まで再検査が実施される。これにより、さらに精度よく記録素子の異常を検出できる。
【0035】
[13]複数の記録素子を備えたプリントヘッドの検査装置であって、複数の記録素子を複数のグループにグループ分けし、グループの単位で複数の記録素子の検査順を設定する検査順設定部と、検査順設定部で設定した検査順に従って複数の記録素子の検査をグループの単位で周期的に実施する検査部と、検査部によって、複数の記録素子のうち、少なくとも1つの記録素子に異常が検出されると、異常が検出された記録素子を再検査対象に認定する再検査対象認定部と、再検査対象の記録素子が認定されると、次に検査するグループの一部の記録素子を再検査対象の記録素子に置き換えて、再検査対象の記録素子の再検査を実施する再検査部と、再検査部による再検査の結果、再検査対象の記録素子に再度異常が検出されると、再検査対象の記録素子を異常記録素子に認定する異常記録素子認定部と、を備えたプリントヘッドの検査装置。
【0036】
本態様によれば、プリントヘッドに備えられている複数の記録素子が、検査順設定部によって複数のグループにグループ分けされ、グループ単位で記録素子の検査順が設定される。そして、設定された検査順に従って検査部で周期的に記録素子の検査が実施される。この検査の結果、記録素子に異常が検出されると、異常が検出された記録素子が、再検査対象認定部によって、再検査対象に認定される。再検査対象認定部で再検査対象の記録素子が認定されると、再検査部が、次に検査するグループの一部の記録素子を再検査対象の記録素子に置き換えて、再検査対象の記録素子を再検査する。再検査の結果、再検査対象の記録素子に再度異常が検出されると、異常記録素子認定部が、再検査対象の記録素子を異常記録素子に認定する。これにより、誤検出を防止でき、正確に異常記録素子を検出できる。また、短期間で異常を検出できる。また、次に検査するグループの一部の記録素子を再検査対象の記録素子に置き換えて、再検査対象の記録素子を再検査するので、次のグループの検査の遅滞を防止できる。すなわち、置き換えられていない記録素子については、通常の周期で検査できるので、置き換えられていない記録素子の検査の遅滞を防止できる。
【0037】
[14]再検査部による再検査の結果、再検査対象の記録素子に異常が検出されない場合、再検査対象の記録素子を再検査対象に再度認定する第2の再検査対象認定部を更に備え、再検査部は、あらかじめ設定した回数まで再検査を実施する、上記[13]に記載のプリントヘッドの検査装置。
【0038】
本態様によれば、再検査の結果、再検査対象の記録素子に異常が検出されない場合、第2の再検査対象認定部によって、再検査対象の記録素子が再度再検査対象に認定される。そして、あらかじめ設定された回数まで再検査が実施される。これにより、さらに精度よく記録素子の異常を検出できる。
【0039】
[15]プリントヘッドは、インクジェット方式のプリントヘッドであり、記録素子は、プリントヘッドに備えられたノズルであり、異常記録素子認定部は、異常記録素子を異常ノズルとして認定する異常ノズル認定部であり、上記[11]から[14]のいずれか1に記載のプリントヘッドの検査装置。
【0040】
本態様によれば、インクジェット方式のプリントヘッドに備えられているノズルが検査される。
【0041】
[16]検査部は、ノズルからメディアに向けてインクを吐出させ、メディアにプリントされた画像を読み取ってノズルを検査し、再検査部は、ノズルからメディアに向けてインクを吐出させ、メディアにプリントされた画像を読み取ることによりノズルを再検査する、上記[15]に記載のプリントヘッドの検査装置。
【0042】
本態様によれば、検査部による検査は、ノズルからメディアに向けてインクを吐出させ、メディアにプリントされた画像を読み取ることによって行われる。また、再検査部による再検査は、ノズルからメディアに向けてインクを吐出させ、メディアにプリントされた画像を読み取ることにより行われる。
【0043】
[17]検査順設定部は、ノズルから吐出するインクの色ごとにノズルをグループ分けし、グループの単位でノズルの検査順を設定する、上記[15]又は[16]に記載のプリントヘッドの検査装置。
【0044】
本態様によれば、ノズルから吐出するインクの色ごとにノズルがグループ分けされ、グループ単位でノズルの検査順が設定される。
【0045】
[18]複数のノズルを備えたインクジェット方式のプリントヘッドによってメディアに画像をプリントするプリンタであって、上記[15]から[17]のいずれか1に記載のプリントヘッドの検査装置を備え、プリントジョブの実行中にプリントヘッドを検査する、プリンタ。
【0046】
本態様によれば、プリントジョブの実行中にノズルの検査が行われる。
【0047】
[19]プリントヘッドは、プリントするメディアの幅に相当する幅を備えたラインヘッドであり、プリンタは、余白をもってメディアにシングルパスで画像をプリントし、メディアの余白領域にインクを吐出さることにより、プリントヘッドをプリントジョブの実行中に検査する、上記[18]に記載のプリンタ。
【0048】
本態様によれば、メディアの余白領域にインクを吐出することにより、プリントジョブの実行中にノズルの検査が行われる。
【0049】
[20]異常ノズル認定部が異常ノズルを認定すると、認定された異常ノズルを不吐出化し、不吐出補正を行う不吐出補正部を更に備える、上記[18]又は[19]に記載のプリンタ。
【0050】
本態様によれば、異常ノズルが検出された場合、異常ノズルと認定されたノズルが不吐出化され、不吐出補正が行われる。
【発明の効果】
【0051】
本発明によれば、記録素子の異常を短期間で精度よく検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】プリンタの一実施形態を示す構成図
図2】ノズル面の平面図
図3】プリンタの制御系のシステム構成を示すブロック図
図4】画像制御部の機能ブロック図
図5】プリントヘッド検査部の機能ブロック図
図6】テストチャートの一例を示す図
図7】テストチャートの一例を示す図
図8】テストチャートを用いたノズルの検査方法の概念図
図9】テストチャートを用いたノズルの検査方法の概念図
図10】用紙への画像のプリント例を示す図
図11】プリントヘッド検査部による各ノズルの検査の概念図
図12】割り込みによる再検査の概念図
図13】プリントヘッド検査部によるプリントヘッドの検査の手順を示すフローチャート
図14】プリントヘッド検査部によるプリントヘッドの検査の手順を示すフローチャート
図15】再検査して再検査対象のノズルに異常が検出されない場合に再度再検査を実施する場合の処理の手順を示すフローチャート
図16】再検査した再検査対象のノズルに異常がない場合に再度再検査を行う場合の検査の概念図
図17】ノズルのグループ分けの概念図
図18】小グループ単位で再検査する場合の概念図
図19】検査するグループの一部のノズルを再検査対象のノズルに置き換えて再検査対象のノズルの再検査を行う場合の処理の概念図
図20】連続紙に画像をプリントする場合の概念図
図21】単体の検査装置として構成した場合の検査方法の一例を示す概念図
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、添付図面に従って本発明を実施するための形態について詳説する。
【0054】
《プリンタの構成》
図1は、本発明に係るプリンタの一実施形態を示す構成図である。
【0055】
このプリンタ1は、メディアとしての枚葉紙(以下「用紙」という)Pにシアン、マゼンタ、イエロ、黒の4色のインクを用いてインクジェット方式でカラー画像をプリントするカラーインクジェットプリンタであり、主として、用紙Pを一定の搬送経路に沿って搬送する搬送部10と、搬送部10によって搬送される用紙Pにシングルパスで画像をプリントするプリント部20と、用紙Pにプリントされた画像を読み取る読取部30と、を備えて構成される。
【0056】
〈搬送部〉
搬送部10は、複数のドラム12A、12B、12Cを備え、ドラムからドラムへと用紙Pを受け渡しながら、用紙Pを一定の搬送経路に沿って搬送する。各ドラム12A、12B、12Cは、用紙Pを周面に巻き付けて回転することにより、用紙Pを搬送する。各ドラム12A、12B、12Cは、グリッパを備え、このグリッパで用紙Pの先端を把持して、用紙Pを外周面上に保持する。
【0057】
なお、搬送部10には、図示しない給紙装置から用紙Pが1枚ずつ給紙される。また、プリントを終えた用紙Pは、終端のドラム12Cから図示しない排紙トレイに順次排紙される。
【0058】
〈プリント部〉
プリント部20は、用紙Pの幅に相当する幅を有するライン型のプリントヘッド(いわゆるラインヘッド)を備え、このプリントヘッド22からシアン、マゼンタ、イエロ、黒の4色のインクをインクジェット方式で吐出させて、用紙Pに画像をプリントする。
【0059】
プリントヘッド22は、シアンのインクを吐出する吐出部24Cと、マゼンタのインクを吐出する吐出部24Mと、イエロのインクを吐出する吐出部24Yと、黒のインクを吐出する吐出部24Kと、を備えて構成される。
【0060】
各吐出部24C、24M、24Y、24Kは、ドラム12Bによって搬送される用紙Pの搬送経路上に一定の間隔をもって配置される。各吐出部24C、24M、24Y、24Kは、先端にノズル面26を備え、このノズル面26に備えられたノズルから用紙Pに向けてインクを吐出させる。
【0061】
図2は、ノズル面の平面図である。
【0062】
同図に示すように、ノズルNは一定の間隔をもって一列に配置される。このノズルNの配列方向は、搬送部10による用紙Pの搬送方向(図2の矢印Dの方向)と直交する方向とされる。
【0063】
〈読取部〉
読取部30は、イメージスキャナ32を備え、このイメージスキャナ32によって用紙Pにプリントされた画像を読み取る。イメージスキャナ32は、プリントヘッド22と同様に、ドラム12Bによって搬送される用紙Pの搬送経路上に配置される。
【0064】
《制御系》
図3は、プリンタの制御系のシステム構成を示すブロック図である。
【0065】
プリンタ1は、コンピュータ40を有する。コンピュータ40は、所定の制御プログラムを実行することにより、搬送部10を制御する搬送制御部、プリント部20を制御するプリント制御部、読取部30を制御する読取制御部として機能する。
【0066】
コンピュータ40には、外部機器と通信を行うための通信部42、プリンタ1の操作を行うための操作部44、各種情報を表示するための表示部46、各種データを記憶するための記憶部48等が接続される。プリンタ1でプリントする画像の画像データは、通信部42を介してコンピュータ40に取り込まれる。また、コンピュータ40が実行する制御プログラムや、制御に必要な各種データ等は記憶部48に格納される。
【0067】
コンピュータ40は、所定の制御プログラムを実行することにより、画像処理部50として機能する(図4参照)。画像処理部50は、通信部42を介して外部機器から取り込んだ画像データに対して所定の画像処理を施し、プリント部20でプリントするために必要なドットデータの生成処理を行う。
【0068】
図4は、画像制御部の機能ブロック図である。
【0069】
画像処理部50は、CMS(カラーマネージメントシステム)部52と、ガンマ変換部54と、ハーフトーン処理部56と、を備えて構成される。
【0070】
CMS部52は、入力された画像データに対し、色を目的のターゲットに合わせる色合わせ処理を実施し、かつ、使用するインク色であるシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)、黒(K)の4色に分解する処理(3−4変換(RGB−CMYK)や4−4変換(CMYK−CMYK))を実施する。これにより、CMYKの単色階調が得られる。
【0071】
ガンマ変換部54は、CMYKの画像データに対して色毎にキャリブレーション処理を施し、出力特性の調整(ガンマ変換)を行う。
【0072】
ハーフトーン処理部56は、ガンマ変換された各色の色データに対して誤差拡散法やディザマトリクス法を用いてハーフトーン処理を施し、各色のドットデータを生成する。
【0073】
また、コンピュータ40は、所定の制御プログラムを実行することにより、プリント部20に備えられたプリントヘッド22の検査を行うためのプリントヘッド検査部60として機能する。
【0074】
図5は、プリントヘッド検査部の機能ブロック図である。
【0075】
プリントヘッド検査部60は、プリントヘッド22に所定のテストチャートをプリントさせ、その出力結果に基づいて異常ノズルの有無を検査する。この際、プリントヘッド22に備えられている複数のノズルNを複数のグループにグループ分けし、グループ単位で周期的に検査を実施する。そして、検出精度を上げるため、異常を検出した場合は再検査を実施し、再検査でも異常が検出された場合に真に異常なノズルと認定する。また、真に異常なノズルを迅速に検出できるようにするため、再検査を実施する場合は、周期的に行われる検査に優先して実施する。すなわち、周期的に行われる検査の順番を変更して、割り込みにより再検査を実施する。
【0076】
図5に示すように、プリントヘッド検査部60は、検査順設定部62と、検査部64と、再検査対象認定部66と、再検査部68と、異常ノズル認定部(異常記録素子認定部)70と、を備えて構成される。検査順設定部62は、プリントヘッド22に備えられている複数のノズルNを複数のグループにグループ分けし、グループの単位でノズルNの検査順を設定する。検査部64は、検査順設定部62で設定された検査順に従ってノズルNの検査をグループの単位で周期的に実施する。再検査対象認定部66は、検査部64による検査の結果、ノズルNに異常が検出されると、異常が検出されたノズルNを再検査対象に認定する。再検査部68は、再検査対象のノズルNが認定されると、その再検査対象のノズルNを含むグループの再検査を割り込んで実施する。異常ノズル認定部70は、再検査部68による再検査の結果、再検査対象に認定されたノズルNに再度異常が検出されると、再検査対象に認定されたノズルNを異常ノズル(異常記録素子)に認定する。
【0077】
検査順設定部62は、プリントヘッド22に備えられている複数のノズルNを複数のグループにグループ分けし、グループの単位でノズルNの検査順を設定する。ここでは、吐出部24C、24M、24Y、24Kごとにグループ分けする。すなわち、ノズルNから吐出させるインクの色ごとにノズルNをグループ分けし、シアン、マゼンタ、イエロ、黒の色ごとにグループ分けする。また、検査順は、1番目にシアン、2番目にマゼンタ、3番目にイエロ、4番目に黒の順で設定する。
【0078】
検査部64は、検査順設定部62で設定された検査順に従ってグループの単位でノズルNの検査を周期的に実施する。シアンの吐出部24C、マゼンタの吐出部24M、イエロの吐出部24Y、黒の吐出部24Kの順で周期的にノズルNの異常を検査する。
【0079】
上記のように、検査は、プリントヘッド22に所定のテストチャート90をプリントさせることにより行う。検査部64は、プリントヘッド22に所定のテストチャート90をプリントさせ、プリントされたテストチャート90の画像を読取部30に読み取らせ、得られた画像を解析して、ノズルNの異常の有無を検査する。
【0080】
図6及び図7は、テストチャートの一例を示す図である。また、図8及び図9は、テストチャートを用いたノズルの検査方法の概念図である。
【0081】
テストチャート90としては、ノズルNの異常を検出できるものであればよく、たとえば、図6に示すように、ノズルチェックパターン(各ノズルからの吐出を階段状に打滴したもの)や、図7に示すように、等濃度パッチ(均一な濃度になるようなパッチを各ノズルから打滴したもの)等を用いることができる。テストチャート90として、図6に示すノズルチェックパターンや図7に示す等濃度パッチを使用することにより、不吐出、吐出方法不良を検出できる。
【0082】
たとえば、図6に示すノズルチェックパターンを使用した場合、ノズルが不吐出になると、図8(A)に示すように、不吐出になったノズル(ここでは、同図の左から3番目のノズルN3)のパターンがプリントされなくなる。したがって、プリントされていないパターンを検出することにより、不吐出のノズルを検出することができる。
【0083】
また、図6に示すノズルチェックパターンを使用した場合、ノズルに吐出方向不良が生じると、図8(B)に示すように、吐出方向不良が生じたノズル(ここでは、同図の左から3番目のノズル)のパターンが正規の位置(吐出方向不良が生じていない時にプリントされる位置)からずれてプリントされる。したがって、正規の位置からずれてプリントされたパターンを検出することにより、吐出方向不良が生じているノズルを検出することができる。
【0084】
また、たとえば、図7に示すパッチを使用した場合、ノズルが不吐出になると、図9(A)に示すように、不吐出になったノズル(ここでは、同図の左から3番目のノズルN3)の部分が欠けてパッチがプリントされる。したがって、プリントされたパッチの欠けた部分を検出することにより、不吐出のノズルを検出することができる。
【0085】
また、図7に示すパッチを使用した場合、ノズルに吐出方向不良が生じると、図9(B)に示すように、吐出方向不良が生じたノズルの近傍の濃度が変化する(同図に示す例では、左から3番目のノズルN3の吐出方向が右側(4番目のノズルN4側)にずれている例が示されている。)。したがって、プリントされたパッチの濃度が変化している部分を検出することにより、吐出方向不良が生じているノズルを検出することができる。
【0086】
このように、所定のテストチャート90をプリントすることにより、ノズルの不吐出、吐出方向不良を検出することができる。なお、ノズルNの異常は、これらに限らず、吐出するインクの体積の変化や速度の変化を異常として検出することもできる。
【0087】
再検査対象認定部66は、検査部64による検査の結果を取得し、異常が検出されたノズルNを再検査対象に認定する。そして、再検査対象のノズルNが認定されたことの情報、及び、認定した再検査対象のノズルNの情報を再検査部68及び異常ノズル認定部70に通知する。
【0088】
再検査部68は、再検査対象認定部66からの情報に基づいて、再検査対象に認定されたノズルNを含むグループの再検査を実施する。この際、通常の検査順(検査順設定部62で設定される検査の順番)を変更し、通常の検査順で検査対象として設定されていたグループの検査よりも前に、再検査を割り込んで実施する。
【0089】
上記のように、本実施の形態のプリンタ1では、シアン、マゼンタ、イエロ、黒の順で周期的にノズルNの検査を実施する。したがって、たとえば、シアンのノズルNで異常が検出された場合、次にマゼンタのノズルNの検査を行うのではなく、シアンのノズルNの再検査を割り込んで実施する。
【0090】
なお、再検査の方法は、検査部64による検査法と同じである。すなわち、プリントヘッド22に所定のテストチャート90をプリントさせ、プリントされたテストチャート90の画像を読取部30に読み取らせ、得られた画像を解析して、ノズルNの異常の有無を検査する。
【0091】
異常ノズル認定部70は、再検査部68による再検査の結果を取得し、同じノズルN(再検査対象に認定されたノズルN)に再度異常が検出されたか否かを判定する。そして、同じノズルNに再度異常が検出されると、そのノズルNを異常ノズルに認定する。
【0092】
コンピュータ40は、更に、所定の制御プログラムを実行することにより、不吐出補正部80として機能する。不吐出補正部80は、プリントヘッド検査部60によるプリントヘッド22の検査の結果、異常ノズルが認定されると、認定した異常ノズルを不吐出化(吐出を強制的に止める)し、不吐出補正を行う。不吐出補正は、公知の手法を用いることができる。たとえば、不吐出化したノズルの周囲のノズルからの吐出量を増やす処理(単位当たりのドット数を増やす、液滴量を増やす)を行って、不吐出補正を行うことができる。
【0093】
《プリンタの作用》
次に、上記のように構成される本実施の形態のプリンタ1の作用について説明する。
【0094】
〈基本動作〉
まず、プリンタ1の基本動作、すなわち、用紙Pへのプリント方法について説明する。
【0095】
プリンタ1は、外部機器(たとえば、ホストコンピュータ)からプリントジョブを受け付けて、そのプリントジョブを実行する。
【0096】
プリントジョブを受け付けると、そのプリントジョブに係る画像の画像データを画像処理部50で画像処理して、プリントに必要なドットデータを生成する。そして、プリントジョブの指令に従って実際にプリント処理を実行する。すなわち、ジョブで指定された枚数のプリントを実施する。
【0097】
用紙Pは、図示しない給紙装置から搬送部10に一定の間隔で周期的に給紙される。搬送部10は、給紙装置から給紙される用紙Pを所定の搬送経路に沿って順次搬送する。プリント部20は、搬送部10によって搬送される用紙Pにプリントヘッド22からシアン、マゼンタ、イエロ、黒の各色のインクを吐出して、用紙Pに画像をプリントする。画像がプリントされた用紙Pは、搬送部10の終端のドラム12Cから図示しない排紙トレイに順次排紙される。
【0098】
このように、プリンタ1は、外部機器からプリントジョブを受け付けて、プリントジョブを実行する。
【0099】
なお、複数のプリントジョブを受け付けた場合は、受け付け順にプリントジョブを処理する。
【0100】
〈プリントヘッドの検査方法〉
プリンタ1は、プリントジョブの実行中、プリントヘッド検査部60によってプリントヘッド22の検査を実施する。プリントヘッド検査部60は、用紙Pの余白領域にテストチャート90をプリントして、プリントジョブの実行中にプリントヘッド22の検査を実施する。したがって、用紙Pへの画像のプリントは、余白をもって行われる。
【0101】
図10は、用紙への画像のプリント例を示す図である。
【0102】
図10に示すように、プリントジョブに係る画像は、用紙Pの全面にプリントされるのではなく、用紙Pの搬送方向Dの後ろ側に所定の余白をもってプリントされる。テストチャート90は、この画像領域(用紙上に画像をプリントする領域)の後ろ側の余白領域にプリントされる。
【0103】
上記のように、プリントヘッド検査部60は、プリントヘッド22に備えられているノズルNを吐出するインクの色ごとに順番に検査する(シアン、マゼンタ、イエロ、黒の順番で検査する。)。
【0104】
この際、プリントヘッド検査部60は、1枚ごとに検査するインクの色を切り換えてノズルNの検査を行う。すなわち、1枚の用紙Pにすべての色のテストチャートをプリントするのではなく、1枚の用紙Pには1色のテストチャートをプリントし、1枚の用紙Pにプリントされるテストチャートの色を順番に切り換えて、各ノズルNをインクの色ごとに検査する。
【0105】
図11は、プリントヘッド検査部による各ノズルの検査の概念図である。
【0106】
図11に示すように、シアン、マゼンタ、イエロ、黒の順で一枚ずつテストチャートを切り換えてプリントし、順番に各色のノズルNを検査する。すなわち、最初にシアンのテストチャート90C、次にマゼンタのテストチャート90M、次にイエロのテストチャート90Y、次に黒のテストチャート90Kをプリントし、順番に各色のノズルNを検査する。
【0107】
このように、プリントヘッド検査部60は、プリントヘッド22に備えられているノズルNを色ごとにグループ分けし、グループ単位で順番に検査する。プリントヘッド検査部60は、異常を検出した場合は、検査順を変更し、異常を検出したノズルが属するグループの再検査を割り込んで実施する。
【0108】
図12は、割り込みによる再検査の概念図である。
【0109】
図12(A)に示すように、異常が検出されない場合は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)、黒(K)の検査順で周期的に検査が実施される。
【0110】
ここで、p枚目にシアン(C)のノズルNcXで異常が検出されたと仮定する。異常が検出されていなければ、p+1枚目は、マゼンタ(M)のノズルNmの検査の順番であるが、p枚目にシアン(C)のノズルNcXで異常が検出されると、図12(B)に示すように、p+1枚目の検査は、シアン(C)のノズルNcの検査に変更される。すなわち、シアン(C)のノズルNcの検査(再検査)が割り込んで実施される。
【0111】
このように、異常が検出されると、異常を検出したグループの検査(再検査)が割り込んで実施される。この結果、本来実施されるはずであったマゼンタ(M)のノズルNmの検査は、図12(C)に示すように、p+2枚目に実施されるように、検査の順番が組み換えられる。
【0112】
このように、プリントヘッド検査部60は、色ごと(グループごと)に順番にノズルNを検査し、異常を検出すると、異常を検出した色(グループ)のノズルの再検査を割り込んで実施する。そして、その再検査の結果、再度ノズルNcXで異常を検出すると、ノズルNcXを異常ノズルに認定する。
【0113】
図13及び図14は、プリントヘッド検査部によるプリントヘッドの検査の手順を示すフローチャートである。
【0114】
まず、プリントと同時に検査が行われる(ステップS10)。すなわち、用紙Pの余白領域にテストチャートがプリントされて、そのテストチャートのプリント結果に基づいて、ノズルの異常の有無が検査される。検査順に従った特定の色のテストチャートがプリントされる。
【0115】
次に、プリントジョブが終了したか否かが判定される(ステップS11)。プリントジョブが終了したと判定されると、処理は終了する。
【0116】
一方、プリントジョブが終了していないと判定されると(次のプリントがある場合)、検査結果からノズルの異常の有無が判定される(ステップS12)。
【0117】
検査したグループ(色)のノズルNに異常がないと判定されると、検査するグループの切り替えが行われる(ステップS13)。そして、切り換えられたグループの検査が行われる(ステップS10)。すなわち、検査順に従って次のグループ(色)の検査が行われる。たとえば、シアン、マゼンタ、イエロ、黒の検査順で検査される場合において、シアンのノズルの検査が行われた場合は、次にマゼンタのノズルの検査が行われる。
【0118】
一方、検査したグループ(色)のノズルNに異常があると判定されると、異常が検出されたノズルNが再検査対象に認定される(ステップS20)。そして、その再検査対象に認定されたノズルNが属するグループ(色)の検査(再検査)が割り込んで実施されるように、検査順が変更される(ステップS21)。これにより、本来次に行われるはずであったグループ(色)の検査に代えて、再検査対象に認定されたノズルNが属するグループ(色)の再検査が割り込んで実施される(ステップS22)。たとえば、シアン、マゼンタ、イエロ、黒の検査順で検査される場合において、シアンのノズルを検査して、異常が検出されると、シアンのノズルの再検査が割り込んで実施されるように、検査順が変更される。そして、シアンのノズルの再検査が割り込んで実施される。
【0119】
再検査の結果、再検査対象に認定されたノズルNの異常の有無が判定される(ステップS23)。すなわち、再検査対象に認定されたノズルN(前回の検査で異常が検出されたノズルN)に再度異常が検出されたか否かが判定される。
【0120】
再検査対象に認定されたノズルNに再度異常が検出されたと判定されると、その再検査対象のノズルN(二度続けて異常が検出されたノズルN)が、異常ノズルに認定される(ステップS24)。そして、異常ノズルが認定されると、異常ノズルが不吐出化され、不吐出補正が行われる(ステップS25)。この後、プリントジョブが終了したか否か判定され(ステップS26)、プリントジョブが終了した場合は、処理を終了する。一方、プリントジョブが終了していない場合(次のプリントがある場合)は、検査するグループの切り替えが行われ(ステップS27)、切り換えられたグループの検査が行われる(ステップS10)。すなわち、検査順に従って次のグループ(色)の検査が行われる。
【0121】
ステップS23において、再検査対象に認定されたノズルNに再度異常が検出されなかったと判定されると、再検査対象のノズルが正常なノズルと判定される(ステップS28)。この場合、前回の検査は、誤検出と判断される。この後、プリントジョブが終了したか否か判定され(ステップS26)、プリントジョブが終了した場合は、処理を終了する。一方、プリントジョブが終了していない場合(次のプリントがある場合)は、検査するグループの切り替えが行われ(ステップS27)、切り換えられたグループの検査が行われる(ステップS10)。すなわち、検査順に従って次のグループ(色)の検査が行われる。
【0122】
このように、本実施の形態のプリントヘッドの検査方法によれば、同じノズルが二度続けて異常と判定された場合に、真に異常なノズル(異常ノズル)と認定するので、精度よくプリントヘッドの異常を検出することができる。
【0123】
また、再検査する際、通常の検査順を変更して、再検査対象のノズルの検査を割り込んで実施するので、異常を早期に検出することができる。これにより、損紙の発生を抑制できる。
【0124】
《プリントヘッドの検査方法の変形例》
〈変形例1〉
上記実施の形態では、再検査して再検査対象のノズルに異常が検出されない場合、その再検査対象のノズルを正常なノズルと判定しているが、再検査して再検査対象のノズルに異常が検出されない場合、再検査対象に再度認定し、再検査を再度実施する構成としてもよい。これにより、更に精度よくノズルの異常を検出できる。
【0125】
なお、この場合、再度実施する再検査も割り込みにより実施する。
【0126】
また、この再度実施する再検査は、複数回実施する構成とすることもできる。すなわち、再検査により、異常が検出されない場合、あらかじめ設定された回数(打ち止め回数)まで繰り返し再検査を実施する構成とすることもできる。
【0127】
なお、再検査の結果から、再検査対象のノズルを再度再検査対象に認定する処理は、コンピュータ40が所定の制御プログラムを実行することにより実施する。すなわち、コンピュータ40は、所定の制御プログラムを実行することにより、第2の再検査対象認定部としての機能を実現する。
【0128】
図15は、再検査して再検査対象のノズルに異常が検出されない場合に再度再検査を実施する場合の処理の手順を示すフローチャートである。
【0129】
ステップS23において、再検査対象のノズルに異常がないと判定されると、再検査の実施回数jがカウントされる(ステップS30)。再検査の実施回数jは、再検査を繰り返すたびに1ずつカウントアップされる。
【0130】
次に、プリントジョブが終了したか否かが判定される(ステップS31)。プリントジョブが終了したと判定されると、処理は終了する。
【0131】
一方、プリントジョブが終了していないと判定されると(次のプリントがある場合)、再検査の実施回数jが、あらかじめ設定された規定の打ち止め回数Rを超えたか否かが判定される(ステップS32)。打ち止め回数Rが2回に設定されていれば、最大2回まで再検査が行われ、3回に設定されていれば、最大3回まで再検査が行われる。
【0132】
再検査の実施回数jが打ち止め回数Rを超えていると判定されると、再検査対象のノズルが正常なノズルと判定される(ステップS33)。この場合、前回の検査は、誤検出と判断される。この後、検査するグループ(色)の切り替えが行われ(ステップS34)、ステップS10に戻って、次のグループ(色)のノズルNの検査が行われる(ステップS10)。
【0133】
一方、再検査の実施回数jが打ち止め回数Rを超えていないと判定されると、再検査対象のノズルNが再度再検査対象に認定される(ステップS35)。この後、再検査対象に認定されたノズルNが属するグループ(色)の再検査が割り込んで実施されるように、検査順が変更され(ステップS21)。そして、再度、再検査が実施される(ステップS22)。すなわち、再検査対象に再度認定されたノズルNが属するグループ(色)の再検査が割り込んで実施される。
【0134】
このように、再検査の結果、再検査対象のノズルに異常がない場合、再度再検査を行って再検査対象のノズルの異常の有無を検出することにより、更に精度よくプリントヘッドの異常を検出することが可能になる。
【0135】
図16は、再検査した再検査対象のノズルに異常がない場合に再度再検査を行う場合の検査の概念図である。
【0136】
図16(A)に示すように、異常が検出されない場合は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)、黒(K)の検査順で周期的に検査が繰り返し実施される。
【0137】
ここで、p枚目にシアン(C)のノズルNcXで異常が検出されたと仮定する。
【0138】
異常が検出されていなければ、p+1枚目は、マゼンタ(M)のノズルNmの検査の順番であるが、p枚目にシアン(C)のノズルNcXで異常が検出されると、図16(B)に示すように、p+1枚目の検査は、シアン(C)のノズルNcの検査に変更される。すなわち、シアン(C)のノズルNcの再検査が割り込んで実施される。この結果、本来実施されるはずであったマゼンタ(M)のノズルNmの検査は、1枚繰り下げられて、p+2枚目に変更される。
【0139】
シアン(C)のノズルNcの再検査の結果、ノズルNcXで異常が検出されると、ノズルNcXが異常ノズルに認定される。この後、通常の検査順に戻って検査が続行される。すなわち、p+2枚目にマゼンタ(M)のノズルNmの検査が行われ、p+3枚目にイエロ(Y)のノズルNyの検査が行われる。
【0140】
一方、シアン(C)のノズルNcの再検査の結果、ノズルNcXで異常が検出されないと、図16(C)に示すように、p+2枚目の検査は、シアン(C)のノズルNcの検査(再検査)に再度変更される。すなわち、シアン(C)のノズルNcの再検査が再度割り込んで実施される。この結果、本来実施されるはずであったマゼンタ(M)のノズルNmの検査は、再度1枚繰り下げられて、p+3枚目に変更される。
【0141】
このように、再検査した再検査対象のノズルに異常が検出されない場合、規定の打ち止め回数に達するまで再検査を繰り返し実施する。すなわち、異常がないことが規定回数(=打ち止め回数)連続して確認されるまで、再検査が繰り返し実施される。これにより、より精度よくノズルの異常を検出することができる。
【0142】
〈変形例2〉
上記実施の形態では、通常の検査(再検査ではない検査)でノズルの異常が検出された場合、その異常が検出されたノズルを含むグループの全体の再検査が実施されるように構成されている。すなわち、たとえば、シアンのノズルの検査で異常が検出された場合、シアンのノズル全体の再検査が実施される。
【0143】
再検査は、必ずしも異常が検出されたノズルのグループ全体で行う必要はなく、異常が検出されたノズルだけで実施してもよい。すなわち、少なくとも異常が検出されたノズルの再検査が行われればよい。したがって、たとえば、各グループにグループ分けしたノズルを、グループ内で更に小グループに分割し、分割した小グループ単位で再検査を実施する構成とすることもできる。
【0144】
図17は、ノズルのグループ分けの概念図である。
【0145】
図17に示すように、プリントヘッド22に備えられるノズルをシアン、マゼンタ、イエロ、黒の吐出部24C、24M、24Y、24Kごと、すなわち、色ごとのグループ(大グループ)にグループ分けし、更に、各グループ(大グループ)内でノズルを小グループにグループ分けする。同図に示す例では、各グループ(大グループ)内でノズルを列方向に10等分割して、10の小グループにグループ分けしている。
【0146】
図18は、小グループ単位で再検査する場合の概念図である。
【0147】
図18(A)は、第1〜第10の小グループC−Gr1〜C−Gr10に分けられた吐出部24Cを示す概念図である。たとえば、図18(B)に示すように、シアン(C)のノズルのグループ(大グループ)を検査した結果、第1の小グループC−Gr1に属するノズルに異常が検出されたと仮定する。
【0148】
この場合、図18(C)に示すように、第1の小グループC−Gr1のノズルだけ再検査される。すなわち、第1の小グループC−Gr1に属するノズルだけでテストチャート
90cをプリントし、再検査が実施される。
【0149】
このように、再検査する際、異常が検出されたノズルが属するグループ(小グループ)だけ再検査することにより、インクの消費を抑えることができる。
【0150】
なお、本例の場合も再検査は、割り込みにより実施される。
【0151】
また、本例の場合も、再検査で異常が検出されない場合は、上記変形例1のように、再度再検査を実施する構成としてもよい。
【0152】
また、本例では小グループ単位で再検査を実施しているが、少なくとも再検査対象のノズルの再検査が実施されればよい。したがって、再検査は、再検査対象のノズルだけ実施する構成にすることもできる。
【0153】
〈変形例3〉
上記の変形例2では、異常が検出されたノズルが属するグループ(小グループ)だけ再検査する構成としている。この場合、テストチャートをプリントする領域(用紙Pの余白領域)に余白ができる。本例では、この余白領域を利用して、次のグループの検査を実施する構成とする。すなわち、基本的な検査順は変えずに、次に検査するグループの一部のノズルを再検査対象のノズルに置き換えて、再検査対象のノズルの再検査を実施する。以下に具体例を用いて説明する。
【0154】
図19は、検査するグループの一部のノズルを再検査対象のノズルに置き換えて再検査対象のノズルの再検査を行う場合の処理の概念図である。
【0155】
検査は、1番目にシアン、2番目にマゼンタ、3番目にイエロ、4番目に黒の検査順で実施される。
【0156】
ここで、図19(A)に示すように、シアン(C)のノズルのグループ(大グループ)を検査した結果、第1の小グループC−Gr1に属するノズルに異常が検出されたと仮定する。この場合、第1の小グループC−Gr1に属するノズルの再検査が実施される。そして、この再検査は、次に検査するグループ、すなわち、マゼンタ(M)の一部を再検査対象のノズルに置き換えて実施される。具体的には、マゼンタ(M)の第1の小グループM−Gr1の検査を中止して、シアン(C)の第1の小グループC−Gr1の再検査を実施する。この結果、図19(B)に示すように、用紙には、マゼンタ(M)のテストチャートの一部にシアン(C)のテストチャートがプリントされる。より具体的には、シアン(C)の第1の小グループC−Gr1でプリントしたテストチャート90cと、マゼンタ(M)の第2〜第10の小グループM−Gr2〜MGr10でプリントしたテストチャート90mとがプリントされる。
【0157】
検査順自体は、変更されないので、マゼンタ(M)の検査が終了すると、図19(C)に示すように、次は、イエロ(Y)のノズルの検査が実施される。
【0158】
このように、再検査する際、次に検査するグループの一部を再検査対象のノズルに置き換えて再検査が実施される。これにより、各グループの検査を遅滞なく行うことができる。
【0159】
なお、再検査は必ずしも小グループ単位で行う必要はなく、少なくとも再検査対象のノズルに対して行えばよい。
【0160】
また、本例の場合も、再検査で異常が検出されない場合は、上記変形例1のように、再度再検査を実施する構成としてもよい。この場合も次のグループの一部を再検査対象のノズルに置き換えて再検査が実施される。すなわち、上記例では、イエロ(Y)の一部をシアン(C)の再検査対象のノズルに置き換えて、再検査対象のノズルの再検査を実施する。
【0161】
〈その他の変形例〉
上記実施の形態では、同じノズルに対して2回異常が検出された場合に当該ノズルを異常ノズルと認定しているが、異常ノズルと認定するための条件は、これに限定されない。たとえば、同じノズルに対して3回異常が検出された場合に当該ノズルを異常ノズルと認定することもできる。すなわち、異常ノズルと認定するための異常検出回数の条件は適宜設定することができる。この場合、割り込みにより再検査が複数回実施される。
【0162】
また、この条件は、ノズルごとに設定することができ、たとえば、色ごとに条件を変えて設定することができる。
【0163】
《その他の実施の形態》
〈連続紙にプリントするプリンタへの適用〉
上記実施の形態では、枚葉紙に画像をプリントするプリンタに本発明を適用した場合を例に説明したが、本発明の適用は、これに限定されるものではなく、帯状の連続紙(ロール紙)に画像をプリントするプリンタにも同様に適用することができる。
【0164】
図20は、連続紙に画像をプリントする場合の概念図である。
【0165】
図20に示すように、連続紙CFに画像をプリントする場合、各画像PIの間に形成される余白領域にテストチャート90C、90M、90Y、90Kをプリントし、プリントジョブの実行中にプリントヘッド22の検査及び再検査を実施する。
【0166】
〈グループ分け他の形態〉
上記実施の形態では、プリントヘッド22に備えられているノズルを吐出部ごと、すなわち、色ごとにグループ分けし、グループ単位で周期的にノズルの検査を行っているが、グループ分けの仕方は、これに限定されるものではない。
【0167】
たとえば、シアンとマゼンタのノズルを1つのグループ、イエロと黒のノズルを1つのグループとしてグループ分けすることもできる。この場合、たとえば、1番目にシアンとマゼンタのグループ、2番目にイエロと黒のグループを検査するように、検査順を設定することができる。また、この場合、1枚目の用紙にシアンのテストチャートとマゼンタのテストチャートとがプリントされ、2枚目の用紙にイエロのテストチャートと黒のテストチャートとがプリントされる。
【0168】
また、たとえば、1つの吐出部(色)を更に複数のグループにグループ分けして検査順を設定することもできる。たとえば、各吐出部のノズルを第1グループと第2グループとにグループ分けし、全体として8つのグループにグループ分けすることもできる。この場合、たとえば、1番目にシアンの第1グループ、2番目にシアンの第2グループ、3番目にマゼンタの第1グループ、4番目にマゼンタの第2グループ、5番目にイエロの第1グループ、6番目にイエロの第2グループ、7番目に黒の第1グループ、8番目に黒の第2グループを検査するように、検査順を設定することができる。あるいは、1番目にシアンの第1グループ、2番目にマゼンタの第1グループ、3番目にイエロの第1グループ、4番目に黒の第1グループ、5番目にシアンの第2グループ、6番目にマゼンタの第2グループ、7番目にイエロの第2グループ、8番目に黒の第2グループを検査するように、検査順を設定することができる。
【0169】
また、たとえば、単色のプリントヘッドの場合(たとえば、黒のみのモノクロヘッドの場合)は、奇数番のノズルと偶数番のノズルとにグループ分けして、グループ単位で検査する構成とすることができる。
【0170】
このように、グループ分けの仕方は様々であり、プリントヘッドの構成などに応じて適宜最適な方法でグループ分けされる。
【0171】
〈検査順の設定方法〉
検査順については、一定の規則に従って周期的に行われるものであれば、いかなる形態を採用することもできる。
【0172】
上記実施の形態では、シアン、マゼンタ、イエロ、黒の順で検査順を設定しているが、実施頻度に差をもたせて検査順を設定することもできる。たとえば、イエロについては、ノズルに異常が生じた場合であっても、画質への影響が少ないことから、他の色のノズルよりも検査の実行頻度を下げて検査順を設定することもできる。たとえば、他の色のノズルが2回検査されるのに対して、イエロの色のノズルが1回の割合で検査されるように、検査順を設定することができる。したがって、1番目にシアン、2番目にマゼンタ、3番目にイエロ、4番目に黒、5番目にシアン、6番目にマゼンタ、7番目に黒、というように、イエロ以外の色のノズルが2回検査されるのに対して、イエロの色のノズルが1回の割合でイエロの検査が実施されるように、検査順を設定することもできる。
【0173】
同様に、画質への影響が大きい色の検査の実行頻度を上げて検査順を設定することもできる。たとえば、1番目にシアン、2番目に黒、3番目にマゼンタ、4番目に黒、5番目にイエロ、6番目に黒、5番目にシアン、6番目に黒、7番目にマゼンタ、というように、黒の検査が1回おきに実施されるように、検査順を設定することもできる。
【0174】
また、検査順は、あらかじめ定めた設定規則に従って自動的に設定する構成とすることもできるし、オペレータが手動で設定する構成とすることもできる。
【0175】
〈再検査の実施タイミング〉
上記実施の形態では、異常を検出すると、異常を検出した直後に再検査対象ノズルを含むグループの再検査を割り込んで実施している。再検査は、必ずしも異常を検出した直後に実施する必要はない。通常の検査順で再検査対象のノズルが検査される前に実施されればよい。すなわち、たとえば、シアン、マゼンタ、イエロ、黒の順でグループ分けしたノズルを検査する場合において、シアンのノズルで異常が検出された場合、通常の検査順に従って次にシアンのノズルの検査が行われる前に、シアンのノズルの再検査が行われればよい。したがって、この場合、少なくとも黒のノズルの検査を実施する前にシアンのノズルの再検査を行えばよい。
【0176】
なお、再検査の実施タイミングを早めるほど、より短期間で異常ノズルの検出を行うことができる。
【0177】
〈単体の検査装置・方法としての応用例〉
上記実施の形態では、プリントジョブ中にプリントヘッドの状態を検査する方法として、本発明をプリンタに組み込んだ例で説明したが、本発明は単体の検査装置として構成することもできる。たとえば、工場出荷前のプリントヘッドを検査する検査装置として構成することもできる。
【0178】
単体の検査装置として構成する場合もプリントヘッドに備えられているノズルを複数のグループにグループ分けし、グループ単位でノズルを順番に検査し、異常を検出した場合は、異常を検出したグループの再検査を割り込んで実施する。
【0179】
図21は、単体の検査装置として構成した場合の検査方法の一例を示す概念図である。
【0180】
ここでは、上記実施の形態のように、シアン、マゼンタ、イエロ、黒の吐出部を有するプリントヘッドの検査方法の例を示している。
【0181】
同図に示すように、ノズルを色ごとにグループ分けし、グループ単位で周期的にテストチャートをプリントして、各ノズルを検査する。
【0182】
なお、図21では、イエロ(Y)のノズルで異常が検出された場合の例を示している。この場合、イエロのノズルの再検査が割り込んで実施される。
【0183】
各色のテストチャートは、1枚の用紙にプリントしてもよいし、用紙を切り換えてプリントしてもよい。図21では、1枚の用紙に各色のテストチャートをプリントした例を示している。
【0184】
〈他の記録方式のプリントヘッドへの適用〉
本発明は、記録素子がライン状又はマトリクス状に配列されたプリントヘッドの検査方法として有効に機能する。したがって、インクジェット方式以外のプリントヘッドであっても、記録素子がライン状又はマトリクス状に配列されたものであれば、その検査方法及び検査装置として有効に機能する。たとえば、記録素子としての発熱素子がライン状又はマトリクス状に配列されたサーマル方式のプリントヘッドの検査方法及び検査装置としても有効に機能する。
【0185】
また、ラインヘッドに限らず、シリアルヘッドを検査する場合についても、同様に適用することができる。
【0186】
また、上記のように、記録素子は、ライン状に限らずマトリクス状に配列されていてもよい。
【0187】
〈検査方法〉
上記実施の形態では、テストチャートをプリントし、その結果を読み取ってノズルの状態を検査する構成としているが、ノズルの状態を検査する方法は、これに限定されるものではない。ノズルから吐出されるインクの飛翔状態を撮影して、ノズルの状態を検査する方法や、ノズル面を電子カメラで撮影して、ノズルの状態を検査する方法など、他の方法を採用することもできる。
【0188】
〈異常ノズル認定後の対応〉
上記実施の形態では、異常ノズルの認定後、その異常ノズルを不吐出化し、不吐出補正処理を行ってプリントを継続する構成としているが、異常ノズル認定後の処理は、これに限定されるものではない。たとえば、プリントジョブを中止し、所定の警告を行う構成とすることもできる。
【0189】
〈その他〉
本発明の技術的範囲は、上記の実施形態に記載の範囲には限定されない。各実施形態における構成等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各実施形態間で適宜組み合せることができる。また、各実施形態を実施するためのコンピュータに実行させるプログラムも本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0190】
1…プリンタ、10…搬送部、12A、12B、12C…ドラム、20…プリント部、22…プリントヘッド、24C、24M、24Y、24K…吐出部、26…ノズル面、30…読取部、32…イメージスキャナ、40…コンピュータ、42…通信部、44…操作部、46…表示部、48…記憶部、50…画像処理部、52…CMS(カラーマネージメントシステム)部、54…ガンマ変換部、56…ハーフトーン処理部、60…プリントヘッド検査部、62…検査順設定部、64…検査部、66…再検査対象認定部、68…再検査部、70…異常ノズル認定部、80…不吐補正部、90…テストチャート、90C、90M、90Y、90K…テストチャート、90c、90m…テストチャート、P…用紙、N…ノズル
図1
図2
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