特許第6053381号(P6053381)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6053381
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】ウェーハの分割方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20161219BHJP
   B23K 26/40 20140101ALI20161219BHJP
【FI】
   H01L21/78 B
   H01L21/78 Q
   B23K26/40
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-174336(P2012-174336)
(22)【出願日】2012年8月6日
(65)【公開番号】特開2014-33163(P2014-33163A)
(43)【公開日】2014年2月20日
【審査請求日】2015年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝
【審査官】 鈴木 和樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−294602(JP,A)
【文献】 特開2005−086111(JP,A)
【文献】 特開2010−098116(JP,A)
【文献】 特開2009−296008(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0155131(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B23K 26/38
B23K 26/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に所定の方向に延びる複数の第1の分割予定ラインと該複数の第1の分割予定ラインと交差して形成された複数の第2の分割予定ラインによって区画された複数の領域にデバイスが形成されたウェーハを、該第1の分割予定ラインおよび該第2の分割予定ラインに沿って分割するウェーハの分割方法であって、
ウェーハの表面側にエキスパンドテープを貼着するエキスパンドテープ貼着工程と、
該エキスパンドテープ貼着工程の後に、該エキスパンドテープ側を保持し、ウェーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線をウェーハの裏面側から集光点をウェーハの内部に位置付けて該第1の分割予定ラインに沿って照射し、ウェーハの内部に該第1の分割予定ライン第1の改質層を形成する第1の改質層形成工程と、
ウェーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線をウェーハの裏面側から集光点をウェーハの内部に位置付けて該第2の分割予定ラインに沿って照射し、ウェーハの内部に該第2の分割予定ライン第2の改質層を形成する第2の改質層形成工程と、
該第1の改質層形成工程および該第2の改質層形成工程を実施した後、該エキスパンドテープ側を保持してウェーハの裏面から研削手段により研削し仕上げ厚さへと薄化するとともに研削動作により該改質層を起点としてウェーハの表面に至るクラックを該分割予定ラインに沿って成長させる研削工程と、
該研削工程の後に、外力を付与して該第1の改質層が形成された該第1の分割予定ラインおよび該第2の改質層が形成された該第2の分割予定ラインに沿ってチップ間を離間させるエキスパンド工程と、を備え、
該第2の改質層形成工程において、所定の間隔を設けて各デバイスの1辺に対して少なくとも1回レーザー光線の照射を停止することで、内部に所定の間隔を隔てて非改質層領域を有する非連続改質層を形成し、
該研削工程においては、該改質層が形成された領域が該分割予定ラインに沿って分割され、
該エキスパンド工程において、該研削工程で分割されていない該非改質層領域が、該分割予定ラインに沿って分割され、
該第1の改質層は、連続した直線状であり、該デバイスが形成された領域を横断しており、
該非改質層領域は、該第1の分割予定ラインと該第2の分割予定ラインとが交差する交差点箇所である
ことを特徴とするウェーハの分割方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハを個々のチップに分割するウェーハの分割方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェーハの切削加工には従来ダイシングソーと呼ばれる切削装置が使用されてきたが、近年になりレーザー加工装置によるレーザー加工により各デバイスに分割する技術が注目されている。このレーザー加工装置を使用したレーザー加工方法の一つに、ウェーハに対して透過性を有する波長のレーザービームを使用してウェーハの内部に脆弱な層(改質層)を形成し、強度が低下した改質層に沿って拡張装置等でウェーハに外力を付与することにより、ウェーハを各チップへ分割する技術が、例えば、特許文献1に開示されている。このレーザー加工方法では、ダイシングソーの加工では必ず発生する切削屑の発生がなく、切り代もほとんど無いため、分割予定ラインの縮小化に対応可能である。
【0003】
しかし、ウェーハの厚みが数十μm以下と薄くなるとレーザー光線がウェーハを透過しその反射光の影響等によりウェーハの内部に適切な位置に適切な改質層を形成することが困難になる、という問題が生じている。そこで、ある程度のウェーハの厚みを有した状態でウェーハ内部に改質層を形成し、その後仕上げ厚みまで研削している(特許文献2)。この分割方法によれば、適切な位置に適切な改質層の形成が可能であるとともに、研削で内部改質層も除去できるため、光デバイスウェーハの場合には輝度の向上が図れ、また通常のウェーハの場合には、抗折強度の向上が図れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3408805号公報
【特許文献2】特開2012−49164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記分割方法によると、研削時に内部改質層を起点に分割予定ラインに沿って分割され、チップ間には切り代がなく当接しているため、研削後の工程におけるハンドリングにおいて、チップ間の特に交差点箇所にチップ同士が擦れることによるクラックや欠けが生じてしまうという新たな問題が生じている。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、内部改質層を形成後に研削を行う場合においても、研削後のハンドリングの際のチップ同士の擦れによる交差点箇所のクラックや欠けを抑制するウェーハの分割方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のウェーハの分割方法は、表面に所定の方向に延びる複数の第1の分割予定ラインと該複数の第1の分割予定ラインと交差して形成された複数の第2の分割予定ラインによって区画された複数の領域にデバイスが形成されたウェーハを、該第1の分割予定ラインおよび該第2の分割予定ラインに沿って分割するウェーハの分割方法であって、ウェーハの表面側にエキスパンドテープを貼着するエキスパンドテープ貼着工程と、該エキスパンドテープ貼着工程の後に、該エキスパンドテープ側を保持し、ウェーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線をウェーハの裏面側から集光点をウェーハの内部に位置付けて該第1の分割予定ラインに沿って照射し、ウェーハの内部に該第1の分割予定ライン沿って第1の改質層を形成する第1の改質層形成工程と、ウェーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線をウェーハの裏面側から集光点をウェーハの内部に位置付けて該第2の分割予定ラインに沿って照射し、ウェーハの内部に該第2の分割予定ラインに沿って第2の改質層を形成する第2の改質層形成工程と、該第1の改質層形成工程および該第2の改質層形成工程を実施した後、該エキスパンドテープ側を保持してウェーハの裏面から研削手段により研削し仕上げ厚さへと薄化するとともに研削動作により該改質層を起点としてウェーハの表面に至るクラックを該分割予定ラインに沿って成長させる研削工程と、該研削工程の後に、外力を付与して該第1の分割予定ラインおよび該第2の分割予定ラインに沿ってチップ間を離間させるエキスパンド工程とを備え、該第2の改質層形成工程において又は該第1の改質層形成工程および該第2の改質層形成工程の両工程において、所定の間隔を設けて各デバイスの1辺に対して少なくとも1回レーザー光線の照射を停止することで、内部に所定の間隔を隔てて非改質層領域を有する非連続改質層を形成し、該研削工程においては、該改質層が形成された領域が該分割予定ラインに沿って分割され、該エキスパンド工程において、該研削工程で分割されていない該非改質層領域が、該分割予定ラインに沿って分割されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るウェーハの分割方法は、交差点箇所の片側または両側の分割予定ライン上の一部に改質層が形成されない。このため、研削後において交差点箇所が個片化されておらず、研削後のハンドリングの際にチップ交差点箇所が擦れることが抑制され、チップコーナー欠けやクラックの発生が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係るウェーハの分割方法のエキスパンドテープ貼着工程の説明図である。
図2図2は、実施形態に係るウェーハの分割方法の改質層形成工程の説明図である。
図3図3は、実施形態に係るウェーハの分割方法のレーザー光線照射対象領域を示す図である。
図4図4は、実施形態に係るレーザー光線照射対象領域を示す拡大図である。
図5図5は、実施形態に係るウェーハの分割方法の研削工程の説明図である。
図6図6は、研削工程後のウェーハを示す図である。
図7図7は、実施形態に係るウェーハの分割方法のエキスパンド工程の説明図である。
図8図8は、エキスパンド工程後のウェーハを示す図である。
図9図9は、実施形態の第1変形例に係るレーザー光線照射対象領域を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態に係るウェーハの分割方法につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0011】
[実施形態]
図1から図8を参照して、実施形態について説明する。本実施形態は、ウェーハの分割方法に関する。図1は、実施形態に係るウェーハの分割方法のエキスパンドテープ貼着工程の説明図、図2は、実施形態に係るウェーハの分割方法の改質層形成工程の説明図、図3は、実施形態に係るウェーハの分割方法のレーザー光線照射対象領域を示す図、図4は、実施形態に係るレーザー光線照射対象領域を示す拡大図、図5は、実施形態に係るウェーハの分割方法の研削工程の説明図、図6は、研削工程後のウェーハを示す図、図7は、実施形態に係るウェーハの分割方法のエキスパンド工程の説明図、図8は、エキスパンド工程後のウェーハを示す図である。
【0012】
本実施形態に係るウェーハの分割方法は、ウェーハW(図1参照)を分割する分割方法であって、ウェーハWに対してレーザー光線L(図2参照)を照射してウェーハWの内部に改質層K(図2参照)を形成し、個々のチップDT(図7参照)に分割する分割方法である。分割加工の対象としてのウェーハWは、例えば、シリコン、サファイア、ガリウムなどを母材とする半導体ウェーハや光デバイスウェーハである。
【0013】
ウェーハWは、図1に示すように、複数の第1の分割予定ラインS1と複数の第2の分割予定ラインS2によって区画された複数の領域にデバイスDが形成されている。デバイスDは、ウェーハWの表面WSに形成されている。第1の分割予定ラインS1は、所定の方向である第1方向D1に延びている。第2の分割予定ラインS2は、第1方向D1と交差する第2方向D2に延びている。本実施形態では第1方向D1と第2方向D2とは直交している。本実施形態では、分割予定ラインS1,S2によって区画された領域は、矩形、例えば正方形である。ウェーハWは、第1の分割予定ラインS1および第2の分割予定ラインS2に沿って分割される。
【0014】
本実施形態に係るウェーハの分割方法は、ウェーハWを第1の分割予定ラインS1および第2の分割予定ラインS2に沿って分割するものであって、エキスパンドテープ貼着工程、第1の改質層形成工程、第2の改質層形成工程、研削工程およびエキスパンド工程を含む。
【0015】
(エキスパンドテープ貼着工程)
エキスパンドテープ貼着工程では、ウェーハWの表面WS側にエキスパンドテープTが貼着される。ウェーハWの表面WSには、延性を有するエキスパンドテープTが貼着される。エキスパンドテープTの縁部は、環状フレームFに貼着される。これにより、ウェーハWは、エキスパンドテープTを介して環状フレームFに固定される。エキスパンドテープTは、紫外線硬化型の粘着テープであり、その粘着層Taは、紫外線により硬化する材料で構成されている。
【0016】
(改質層形成工程)
第1の改質層形成工程および第2の改質層形成工程は、エキスパンドテープ貼着工程の後で実行される。本実施形態では、第1の改質層形成工程の後で第2の改質層形成工程が実行されるが、これに限定されるものではなく、第2の改質層形成工程の後で第1の改質層形成工程が実行されてもよい。
【0017】
(第1の改質層形成工程)
第1の改質層形成工程は、ウェーハWの内部に第1の分割予定ラインS1に沿って第1の改質層K1(図4参照)を形成するものである。図2に示すように、第1の改質層形成工程および第2の改質層形成工程は、レーザー加工ユニット1によってなされる。レーザー加工ユニット1は、チャックテーブル2と、レーザー光線照射手段3と、図示しない移動手段とを含んで構成されている。チャックテーブル2は、ウェーハWを保持する保持手段であり、例えば、負圧による吸引力によってウェーハWを吸引保持する。チャックテーブル2は、保持面2aを構成する部分がポーラスセラミック等から形成された円盤形状であり、図示しない真空吸引経路を介して図示しない真空吸引源と接続されている。チャックテーブル2は、ウェーハWのエキスパンドテープT側を保持する。ウェーハWは、表面WS側をチャックテーブル2の保持面2aに向けて保持面2a上に載置される。チャックテーブル2は、エキスパンドテープTを介してウェーハWを吸引保持する。
【0018】
レーザー光線照射手段3は、チャックテーブル2に保持されたウェーハWに対して透過性を有する波長(例えば、1064nm)のレーザー光線Lを照射する。第1の改質層形成工程では、ウェーハWに対して裏面WR側からレーザー光線Lが照射される。レーザー光線Lは、集光点をウェーハWの内部に位置付けて第1の分割予定ラインS1に沿って照射される。集光点は、後述する研削工程によって研削される領域(深さ位置)に位置付けられる。
【0019】
移動手段は、レーザー光線照射手段3とチャックテーブル2とを相対移動させる。移動手段は、チャックテーブル2をその中心軸線周りに回転させること、およびレーザー光線照射手段3とチャックテーブル2とをレーザー光線照射手段3の光軸と直交する方向に相対移動させることができる。ウェーハWに対してレーザー光線Lが照射されると、ウェーハWの内部に改質層Kが形成される。
【0020】
改質層Kは、密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲のそれとは異なる状態になった領域のことを意味する。改質層Kは、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域、およびこれらの領域が混在した領域等を例示できる。
【0021】
第1の改質層形成工程によって、ウェーハWの内部には、第1の分割予定ラインS1に沿って改質層K(第1の改質層K1)が形成される。レーザー加工ユニット1は、レーザー光線照射手段3によってレーザー光線Lを照射しながら、第1方向D1に沿ってレーザー光線照射手段3とチャックテーブル2とを相対移動させることにより、第1の改質層K1を形成する。図3および図4に示すように、ウェーハWには、第1の照射対象領域SL1および第2の照射対象領域SL2が定められている。照射対象領域SL1,SL2は、レーザー光線Lの照射対象の領域である。図4には、図3に示すウェーハWの一部Waの拡大図が示されている。
【0022】
第1の照射対象領域SL1は、第1の分割予定ラインS1に沿って延在している。第1の照射対象領域SL1は、第1の分割予定ラインS1に沿った、連続した線状の領域である。第1の照射対象領域SL1は、ウェーハWを分断する連続した1本の直線状に定められている。第1の照射対象領域SL1は、少なくともデバイスDが形成された領域を横断して延在していることが好ましく、その両端部がウェーハWの最外周まで達していることが好ましい。
【0023】
全ての第1の分割予定ラインS1に対して、第1の照射対象領域SL1に沿ったレーザー光線Lの照射がなされ、第1の改質層K1が形成されると、第1の改質層形成工程が終了する。
【0024】
(第2の改質層形成工程)
第2の改質層形成工程は、ウェーハWの内部に第2の分割予定ラインS2に沿って第2の改質層K2を形成するものである。第2の改質層形成工程において、レーザー加工ユニット1は、レーザー光線照射手段3によってレーザー光線Lを照射しながら、第2方向D2に沿ってレーザー光線照射手段3とチャックテーブル2とを相対移動させる。これにより、第2の分割予定ラインS2に沿ってレーザー光線Lを照射し、第2の改質層K2を形成する。レーザー光線照射手段3は、第1の改質層形成工程と同様に、チャックテーブル2に保持されたウェーハWに対して透過性を有する波長のレーザー光線Lを照射する。レーザー光線照射手段3は、ウェーハWに対して裏面WR側から、集光点をウェーハWの内部に位置付けてレーザー光線Lを照射する。
【0025】
第2の照射対象領域SL2は、第2の分割予定ラインS2に沿って延在している。第2の照射対象領域SL2は、各デバイスDの1辺(各チップDTの1辺)に対して少なくとも1回レーザー光線Lの照射が停止されるように定められている。
【0026】
本実施形態の第2の照射対象領域SL2は、第2方向D2に沿って所定の間隔を空けて連続的に配置された線状の領域である。第2の分割予定ラインS2に沿った1本の直線状の領域が、第1の分割予定ラインS1と第2の分割予定ラインS2とが交差する交差点箇所で分断されて、複数の第2の照射対象領域SL2が形成されている。第2の照射対象領域SL2は、互いに隣接するデバイスDの間に位置している。
【0027】
第2方向D2において隣接する第2の照射対象領域SL2の間は、第2の改質層形成工程におけるレーザー光線Lの照射対象外の領域である。照射対象外の領域は、第1の照射対象領域SL1を中心とする第2方向D2の所定の長さの領域である。図3および図4に示すように、本実施形態では、第1の照射対象領域SL1と第2の照射対象領域SL2とは交点を有していない。照射対象外の領域の長さ(第2方向D2の長さ)は、第1の照射対象領域SL1から第2方向D2の両側にそれぞれ所定の長さとすることができる。
【0028】
第2の改質層形成工程によって、ウェーハWの内部には、第2の分割予定ラインS2に沿って改質層K(第2の改質層K2)が形成される。レーザー加工ユニット1は、レーザー光線照射手段3によってレーザー光線Lを照射しながら、第2方向D2に沿ってレーザー光線照射手段3とチャックテーブル2とを相対移動させることにより、第2の改質層K2を形成する。レーザー加工ユニット1は、第2の照射対象領域SL2に対してレーザー光線Lを照射し、隣接する第2の照射対象領域SL2の間の照射対象外の領域に対してはレーザー光線Lの照射を行わない。従って、第2の改質層形成工程では、各デバイスDの1辺に対して少なくとも1回レーザー光線Lの照射が停止(中止、中断)される。言い換えると、第2の改質層形成工程では、1本の第1の分割予定ラインS1と、これに隣接する第1の分割予定ラインS1との間の領域で少なくとも1回レーザー光線Lの照射が停止される。レーザー光線Lの照射は、1つの第2の照射対象領域SL2とこれに隣接する第2の照射対象領域SL2との間隔(所定の間隔)を設けて停止されることとなる。
【0029】
第2の改質層K2は、図4に示すように、第2の照射対象領域SL2に形成される。第2の改質層K2は、所定の間隔を隔てて形成され、第2方向D2において隣接する第2の改質層K2の間は、改質層が形成されない非改質層領域NKとなる。つまり、第2の改質層形成工程では、非改質層領域NKを間に挟んで第2の改質層K2が連続的に形成された非連続改質層が形成される。非連続改質層は、少なくとも2つの改質層Kと、第2方向D2において隣接する改質層Kの間に介在する非改質層領域NKとを有する。非改質層領域NKは、第1の分割予定ラインS1と第2の分割予定ラインS2とが交差する交差点箇所に位置している。
【0030】
全ての第2の分割予定ラインS2に対して、第2の照射対象領域SL2に沿ったレーザー光線Lの照射がなされ、第2の改質層K2が形成されると、第2の改質層形成工程が終了する。
【0031】
(研削工程)
研削工程は、第1の改質層形成工程および第2の改質層形成工程を実施した後で行われる。研削工程は、エキスパンドテープT側を保持してウェーハWの裏面WRから研削手段により研削し仕上げ厚さへと薄化するとともに研削動作により改質層Kを起点としてウェーハWの表面WSに至るクラックを分割予定ラインS1,S2に沿って成長させる工程である。研削工程では、改質層Kが形成された領域が分割予定ラインS1,S2に沿って分割される。改質層Kが形成された領域にはクラックが発生し、ウェーハWはクラックを境にして分割される。例えば、改質層Kが形成された領域のみにクラックが発生して分割され、改質層Kが形成されていない領域はクラックが発生せず、分割されないことが好ましい。
【0032】
研削工程は、図5に示す研削ユニット10によって実行される。研削ユニット10は、チャックテーブル11と、研削手段12と、図示しない移動手段とを含んで構成されている。チャックテーブル11は、ウェーハWのエキスパンドテープT側を保持する。チャックテーブル11は、例えば、レーザー加工ユニット1のチャックテーブル2と同様に、負圧によってウェーハWを吸引保持するものである。図5に示すように、ウェーハWは、表面WS側をチャックテーブル11の保持面11aに向けて保持面11a上に載置される。チャックテーブル11は、エキスパンドテープTを介してウェーハWを吸引保持する。
【0033】
研削手段12は、研削砥石12aを有しており、回転しながらウェーハWを研削する。移動手段は、チャックテーブル11を軸芯周りに回転させる機能を有している。研削ユニット10は、移動手段によりチャックテーブル11を回転させ、研削砥石12aをチャックテーブル11と同方向に回転させながらウェーハWの裏面WRに接触させる。研削ユニット10は、研削砥石12aを所定の送り速度で下方に研削送りして裏面WR側からウェーハWを研削して薄化する。研削砥石12aの研削送り量は、ウェーハWを予め定められた仕上げ厚さtへと薄化するように定められている。図5に示すように、改質層Kは、研削工程において研削されて除去される領域、言い換えると研削完了後に裏面WRとなる位置よりも表面WSから遠い側に形成される。
【0034】
研削砥石12aを研削送りする研削動作により、各改質層Kに対して研削ホイールからの研削負荷が加えられる。その結果、ウェーハWの内部には、改質層Kを起点として表面WSに至るクラックが分割予定ラインS1,S2に沿って形成される。図6に示すように、研削工程後のウェーハWには、分割予定ラインS1,S2に沿ってクラックCK1,CK2が形成されている。
【0035】
第1のクラックCK1は、第1の分割予定ラインS1に沿って形成されるクラックである。第1の照射対象領域SL1が第1の分割予定ラインS1の一端から他端まで連続した領域であることから、第1のクラックCK1は、第1の分割予定ラインS1に沿って連続して形成される。従って、ウェーハWは、第1のクラックCK1によって分割された状態となる。
【0036】
第2のクラックCK2は、第2の分割予定ラインS2に沿って形成されるクラックである。第2の照射対象領域SL2が所定の間隔を空けて定められていることから、第2のクラックCK2は、所定の間隔を空けて形成される。図6に示すように、第2方向D2において隣接する第2のクラックCK2は、第1のクラックCK1を間に挟んで形成される。第1のクラックCK1と第2のクラックCK2とは接続されないことが好ましいが、改質層KやウェーハWの状態やばらつきによってウェーハWの一部において第1のクラックCK1と第2のクラックCK2とが接続されることがあってもよい。
【0037】
(エキスパンド工程)
エキスパンド工程は、研削工程の後に実行される。エキスパンド工程は、外力を付与して第1の分割予定ラインS1および第2の分割予定ラインS2に沿ってチップDT間を離間させる工程である。エキスパンド工程において、研削工程で分割されていない非改質層領域NKが、第2の分割予定ラインS2に沿って分割される。エキスパンド工程は、図7に示す拡張装置15によってなされる。
【0038】
拡張装置15は、フレーム保持手段25と、押圧部材26と、図示しない移動手段とを含んで構成されている。フレーム保持手段25は、環状フレームFを保持する。フレーム保持手段25は、環状フレームFと、エキスパンドテープTのうち環状フレームFに貼着された部分とを一体に挟み込んで保持する。押圧部材26は、エキスパンドテープTを押圧して拡張させる部材である。押圧部材26は、円筒形状をなしており、その外径は環状フレームFの内径よりも小さい。また、押圧部材26の内径は、ウェーハWの外径よりも大きい。
【0039】
移動手段は、フレーム保持手段25と押圧部材26とを相対移動させる。フレーム保持手段25と押圧部材26とは軸芯が一致するように配置されており、移動手段はこの軸芯方向にフレーム保持手段25と押圧部材26とを相対移動させる。環状フレームFは、ウェーハWが貼着された粘着層Taを上方に向けてフレーム保持手段25によって保持される。押圧部材26は、エキスパンドテープTに対して下方から押し当てられ、エキスパンドテープTを上方に向けて押圧してエキスパンドテープTを拡張させる。押圧部材26が押し当てられる位置は、エキスパンドテープTにおけるウェーハWよりも径方向外側でかつ環状フレームFよりも径方向内側の位置である。
【0040】
押圧部材26によって押圧されたエキスパンドテープTが拡張すると、エキスパンドテープTに貼着されたウェーハWには、チップDTを互いに離間させる外力が作用する。この外力により、ウェーハWは、第1の分割予定ラインS1および第2の分割予定ラインS2に沿って個々のチップDTに分割される。エキスパンド工程において、第2のクラックCK2は、第2の分割予定ラインS2に沿って成長する。これにより、第2のクラックCK2は、互いに接続されて第2の分割予定ラインS2に沿ってウェーハWを分割する1本のクラックに成長する。その結果、第1の分割予定ラインS1および第2の分割予定ラインS2に沿ってチップDT間を離間し、ウェーハWを個々のチップDTに分割することができる。
【0041】
エキスパンド工程後のウェーハWは、図8に示すように、各チップDTに分割された状態となる。エキスパンド工程の後で、各チップDTをピックアップするピックアップ工程が実行される。ピックアップ工程は、例えば、拡張装置15によって行われる。この場合、拡張装置15は、図示しないピックアップ装置を有する。ピックアップ装置は、チップDTを吸引保持してエキスパンドテープTからチップDTを取り外す。なお、ピックアップ工程の前に、エキスパンドテープTに紫外線を照射して粘着層Taを硬化させる粘着層硬化工程が実行されることが好ましい。
【0042】
(実験結果について)
本実施形態に係るウェーハの分割方法による分割加工の実験結果について説明する。チップDTの1辺20mmに対して、照射対象外の領域の長さを第1の照射対象領域SL1から第2方向D2の両側にそれぞれ1mmずつとして実験したところ、良好な結果が得られた。実験では、研削工程で非改質層領域NKは分割されず、かつエキスパンド工程で非改質層領域NKにクラックが形成されて個々のチップDTに良好に分割された。また、交差点箇所の品質も良好であった。研削工程の後で搬送パッド等を用いずにウェーハWをハンドリングしても、個々のチップDTの角部に欠けやクラックが見られなかった。従って、本実施形態に係るウェーハの分割方法は、チップDTの品質向上や歩留まりの向上に有効である。
【0043】
なお、照射対象外の領域の長さは、これに限定されるものではなく、ウェーハWの材質や大きさ、デバイスDの1辺の長さ、仕上げ厚さt等に応じて適宜定めることができる。照射対象外の領域の長さは、研削工程において第2のクラックCK2(図6参照)がつながることなく互いに独立して形成され、かつエキスパンド工程においてウェーハWが個々のチップDTに分割されるように、実験結果等に基づいて適宜定めることができる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態に係るウェーハの分割方法によれば、研削工程ではウェーハWが個々のチップDTに分割されず、エキスパンド工程において個々のチップDTに分割される。このため、研削後のハンドリングの際のチップDT同士の擦れによる交差点箇所のクラックや欠けが抑制される。
【0045】
また、本実施形態に係るウェーハの分割方法では、研削前の元厚のウェーハWに対して改質層Kを形成する。従って、仕上げ厚さtが薄い場合にも、ウェーハWに良好に改質層Kを形成することができる。また、研削工程において除去される部分に改質層Kを形成しておくことができ、研削後のウェーハWに改質層Kが残ることを抑制することができる。その結果、ウェーハWに改質層Kが残存した場合と比較して、分割後のチップDTの抗折強度を向上させることができる。また、光デバイスウェーハの場合には輝度の向上を図ることができる。
【0046】
[実施形態の第1変形例]
図9を参照して、実施形態の第1変形例について説明する。図9は、実施形態の第1変形例に係るレーザー光線照射対象領域を示す拡大図である。図9に示すように、本変形例に係る第2の照射対象領域SL2は、それぞれ第1の照射対象領域SL1と交差している。隣接する第2の照射対象領域SL2の間の照射対象外の領域は、デバイスDの1辺の中央部に配置されている。言い換えると、第2の照射対象領域SL2は、第1の照射対象領域SL1から第2方向D2の両側に向けて延在する直線状の領域であり、その先端は、隣接する第1の照射対象領域SL1との中間点よりも手前側である。
【0047】
一つの第2の照射対象領域SL2の先端と、これに隣接する第2の照射対象領域SL2の先端との隙間の大きさは、適宜定めることができる。この隙間の大きさは、研削工程において第2の照射対象領域SL2に生成される第2のクラックCK2同士がつながることなく、かつエキスパンド工程においてウェーハWが個々のチップDTに分割されるように、実験結果等に基づいて適宜定められる。
【0048】
なお、第2の照射対象領域SL2は、上記の実施形態および本変形例に例示したものには限定されない。第2の照射対象領域SL2は、各デバイスDの1辺に対して少なくとも1回レーザー光線Lの照射が停止されるように、様々に定めることができる。
【0049】
[実施形態の第2変形例]
第2の改質層形成工程のみならず、第1の改質層形成工程においても、所定の間隔を設けて各デバイスDの1辺に対して少なくとも1回レーザー光線Lの照射が停止されるように、第1の照射対象領域SL1が定められてもよい。例えば、図3および図4に示す第2の照射対象領域SL2と同様の第1の照射対象領域SL1が、第1の分割予定ラインS1に沿って定められてもよい。あるいは、図9に示す第2の照射対象領域SL2と同様の第1の照射対象領域SL1が、第1の分割予定ラインS1に沿って定められてもよい。
【0050】
第1の改質層形成工程および第2の改質層形成工程においてそれぞれ非連続改質層を形成する場合に、いずれか一方の非改質層領域NKの長さを他方の非改質層領域NKの長さよりも大きくするようにしてもよい。
【0051】
上記の実施形態および変形例に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 レーザー加工ユニット
2,11 チャックテーブル
3 レーザー光線照射手段
10 研削ユニット
12 研削手段
15 拡張装置
CK1 第1のクラック
CK2 第2のクラック
D デバイス
DT チップ
F 環状フレーム
K1 第1の改質層
K2 第2の改質層
L レーザー光線
NK 非改質層領域
S1 第1の分割予定ライン
S2 第2の分割予定ライン
SL1 第1の照射対象領域
SL2 第2の照射対象領域
T エキスパンドテープ
W ウェーハ
WR 裏面
WS 表面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9